説明

基材連続処理装置

【課題】
各処理室間のゲートバルブ等を設けずに長尺の基板を搬送し、且つ、各処理室を真空に保持し、連続的に成膜処理することである
【解決手段】
基板連続処理装置は、第1組の前処理室,成膜処理室,後処理室の連結可能な連続体からなり、またこの連続体と合体でき得る第2組の前処理密封室,成膜処理密封室,後処理密封室の連結可能な連続体で構成される。また第2組の前処理密封室,成膜処理密封室,後処理密封室には、基板が通過でき得る溝が設けられ、前処理室密封,成膜処理密封室及び後処理密封室にはシールするために、1つ若しくは複数の密封材(Oリング等)を設置するための、密封材用取り付け溝を設置してなる構成により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には長尺基材に連続若しくは断続的に薄膜を形成する処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来長尺の基材に連続的に薄膜を形成するには、前処理室から基材を搬送させて、薄膜形成処理室で成膜した後、基材を冷却させるための冷却処理室などで構成された連続処理装置で行われているのが現状である。しかしながらこの装置で薄膜を形成した場合、形成膜中に不純物等の混入(コンタミネーション)が生じて目的の形成膜の電気的性能の低下を招いている。この大きな原因と考えられるものに連続処理装置での各処理室間に設けられている真空をそれぞれ遮断するため、ゲートバルブが取り付けられている処理装置で薄膜形成が一般的に行われている。ゲートバルブの開閉時このコンタミネーションが起こる。また、特開平3
− 3 0 4 1 9 号公報あるいは特開平5 − 2 5 1 3 6 1 号公報で開示されているように、このゲートバルブを介在させることにより、長尺の基材が分断せざるを得ないため、基材ごとゲートバルブの弁体ごと押し付けて、弁座に弁体を閉じることになる。このことにより、基材の変形、傷等が生ずるため、製品の不良が多くなる。例えば特許公報平4−68390号公報に開示されているように、この形成膜がアモルファスシリコン半導体膜の場合、形成された膜中に微小空所(マイクロボイド)やダングリングボンドなどが起きて、その他の薄膜内のエネルギギャップ内に高密度の局在化が起こり、低い光導電性と短いキャリヤ寿命をもたらす。その結果光応答技術等への応用には不適当である。故に、従来から現在まで長尺の基材に連続的に薄膜を形成させる装置には、基材を送り出す機構と、それを巻き取る機構及び薄膜形成機構が、装置内部に組み込まれる構造の装置を一般的に利用するのが通例であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−30419号公報
【特許文献2】特開平5−251361号公報
【特許文献3】特許公報平4−68390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、各処理室間のゲートバルブ等を設けずに長尺の基板を搬送し、且つ、各処理室を真空に保持し、連続若しくは断続的に成膜処理することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、基板連続処理装置を次のように構成したものである。
すなわち、本発明の基板連続処理装置は、第1組の前処理室,成膜室,後処理室の連結可能な連続体からなり、またこの連続体と合体でき得る第2組の前処理密封室,成膜処理密封室,後処理密封室の連結可能な連続体で構成される。また第2組の前処理密封室,成膜処理密封室,後処理密封室には、基板が通過でき得る溝が設けられ、前処理密封室及び後処理密封室には、成膜処理密封室との接続時の真空を保持するために、密封材(Oリング等)を設置するための密封材用取り付け溝を、基板が通過する溝の外周部に設置してなる構成にすることにより、本課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の処理装置によれば、長尺の基材は元々送り出し側手段と巻き取り側手段が設置された第2組の連続体にあるため、長尺の基材の装填及び保守が簡単になり、もう一方の分割された第1組の処理室連続体に、第2組の連続体がカセットのように勘合するため、ゲートバルブを介在させた従来のRoll to Roll式装置のような、長尺の基材を搬送させるための複雑な機構と成膜機構を処理室内に設置する必要性がなくなり、保守性が向上し、長尺の基材を交換する操作を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は基材連続処理装置の実施方法を示した外観図である。(実施例1)
【図2】図2は基材連続処理装置が分離された状況の実施方法を示した外観図である。(実施例1)
【図3】図3は第1組の連続体と第2の連続体のシール部の部分詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は上記のように長尺基材が連続処理装置を通過できるように、この連続処理装置を第1組の連続体と、第2組の連続体に分割し、且つ基材が第2組の連続体通過でき得るように溝を設置し、且つこの第2組の連続体に密封するための1つ若しくは複数の密封材と、それらを取り付けるための溝を設ける構成にした。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明装置の1実施例の外観図であって、1は第1組の連結可能な複数の処理室から成る連続体で、3は前処理室で、4は成膜室で、5は後処理室である。2は第1組に対向する連続体であり、1つ若しくは複数の溝及び密封手段を持つ処理室から成る連続体である。また、この溝を構成するのに、単独の溝に溝の調整用として、溝のある調整板等を備えたものでも良く、特に限定されるものではない。
【0010】
図2は、本発明装置の1実施例の分解図であって、図1の第1組の連続体1と第2組の連続体2が分離している状態と、シール部材6及び溝7を示している。
【0011】
図3は、本発明装置の1実施例の第2組の連続体の前処理密封室の密封手段を示す立体図である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明によれば、長尺の基材に連続的に処理(コーティング等)することが可能であるため、基材にコーティングできるものであるなら、材質を限定するものではない。産業上においては、金属工業,化学工業,印刷工業,繊維工業,木材工業,光学分野,精密機械工業,食品工業,飲料水工業等基材がロールにできるもの且つコーティング可能なものであれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0013】
1 第1組の連結可能な複数の処理室からなる連続体
2 第1組に対向する第2組の1つ若しくは複数の密封手段を持つ処理室からなる連続体
3 前処理密封室
4 成膜処理密封室
5 後処理密封室

シール部材
7 溝
8 前処理室
9 成膜処理室
10 後処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに、第1組の連結可能な複数の処理室からなる連続体と、第1組の連続体に対向して、第2組の連結可能な複数の処理室からなる連続体が設けられ、第1組若しくは第2組の連続体に1つ若しくは複数の密封手段を持つ連続体とで構成する処理装置において、各第1組若しくは第2組の連続体に、密封するための1つ若しくは複数の溝を設置し、当該連続体に基材を通過させるための溝を設置したことを特徴とした処理装置。
【請求項2】
前記第2組の連続体が、基材を送り出す手段、及び巻き取る手段からなることを特徴とする特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項3】
前記第1組の連続体が、少なくとも1つの基材を加熱する手段からなることを特徴とする特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項4】
前記第1組の連続体が、少なくとも1つの基材を冷却する手段からなることを特徴とする特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項5】
前期基材は金属である特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項6】
前期基材は合成樹脂である特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項7】
前期基材は繊維である特許の請求範囲第1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前期基材は紙である特許の請求範囲第1項に記載の処理装置。
【請求項9】
前期基材は木材である特許の請求範囲第1項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記第1組の連結可能な複数の処理室からなる連続体にプラズマ発生手段を用いることを特徴とする特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項11】
前記基材を加熱する手段は、少なくとも1つ以上の加熱要素と熱反射遮蔽要素からなることを特徴とする特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項12】
前記基材を冷却する手段は、少なくとも1つ以上の冷却要素からなることを特徴とする特許の請求範囲第1項記載の処理装置。
【請求項13】
前期基材が板状である特許の請求範囲第1項記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87315(P2013−87315A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227570(P2011−227570)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(711010828)高田テック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】