基板、基板を備えた表示装置及び基板の製造方法
【課題】 異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる基板、基板を備えた表示装置及び基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板Sは、表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材1と、コア部材の表面全体を被覆した有機材料又は無機材料で形成されたバリア層5とを備えている。バリア層5は、コア部材1の凹部内に充填されている。
【解決手段】 基板Sは、表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材1と、コア部材の表面全体を被覆した有機材料又は無機材料で形成されたバリア層5とを備えている。バリア層5は、コア部材1の凹部内に充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板、基板を備えた表示装置及び基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表される平型表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴を生かして、OA機器、情報端末、時計、テレビなどの各種分野で利用されている。中でもTFT(薄膜トランジスタ)を用いた液晶表示装置は、その応答性の高さから携帯端末やコンピュータなど多くの情報を表示するモニタとして多用されている。
【0003】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報端末機器では性能面もさることながら、デザイン性、携帯性などの観点から、より薄くしかもより軽い表示装置の要求が高まっている。例えば、液晶表示装置のより一層の薄型化構造を実現するための技術が提案されている。
【0004】
一般的にTFTを形成する基板材料は耐熱性などの観点から、石英基板やガラス基板が用いられている。そこで、これらの基板を機械的または化学的に研磨するなどの処理を行うことで、薄板化や軽量化を図ることができる。さらに軽量化を狙う方法として、これらのガラス基板を一旦除去してTFT等が形成された多層構造体のみを別の軽量な樹脂基板などに転写したプラスチック基板などの薄板基板パネルの実用化が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−341214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記薄型の基板では、基板自体の薄型化や柔軟性が向上したことに伴い、基板単体でのガス遮蔽性能が従来ガラス基板に対して劣る傾向にあり、薄型基板を利用する表示装置の信頼性を低下させるなどの問題が生じてしまう。
【0007】
これに対し、薄型基板にガス遮蔽性能を有する薄膜を形成し、薄型基板のガスバリア性の向上を図るなどの検討がなされている。ガス遮蔽層を薄板基板の表面に形成する場合、薄板基板の表面の凹凸を少なくすることを目的に平坦化層を形成することが一般的である。ここで、平坦化層をアンダーコーティング(U.C.)層と呼ぶ場合もある。U.C.層は通常の塗布プロセスにて形成される。U.C.層によって平坦化された面には、更にガスバリア性に優れた無機薄膜が形成されることも少なくない。
【0008】
ところで、従来構成のバリア層付き非ガラス基板では、これらU.C.層や無機薄膜層はベースとなる非ガラス基板の表面や内部に潜在的に形成されているクラック、凹凸、基板表面から連続的に繋がる空洞など異物侵入のパスとなる部位を完全にカバーするには十分ではなく、バリア層を形成するための積層数や膜厚の増加といった高コスト化に繋がる問題が存在す。
【0009】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる基板、基板を備えた表示装置及び基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る基板は、
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材と、
前記コア部材の表面全体を被覆した有機層又は無機層を有するバリア層と、を備え、
前記バリア層は、前記コア部材の凹部内に充填されている。
【0011】
また、一実施形態に係る基板の製造方法は、
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材を用意し、
前記コア部材を減圧された環境内に置き、前記コア部材の凹部内を脱気し、
前記コア部材の凹部内が脱気された状態で、前記コア部材を有機材料又は無機材料中に浸漬し、
前記コア部材の置かれる環境を、前記減圧された環境から大気圧の環境に替え、前記コア部材の凹部内に前記有機材料又は無機材料を含浸させ、
前記有機材料又は無機材料中から取り出した前記コア部材の表面全体を被覆した有機層又は無機層を有するバリア層を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る基板を示す断面図である。
【図2】図2は、上記第1の実施形態に係る基板の製造工程を示す図であり、コア部材を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に続く基板の製造工程を示す図であり、製造装置内にコア部材が搬入されている状態を示す概略図である。
【図4】図4は、図3に続く基板の製造工程を示す図であり、コア部材を有機材料中に浸漬している状態を示す概略図である。
【図5】図5は、図4に続く基板の製造工程を示す図であり、コア部材の置かれる環境を、減圧された環境から大気圧の環境に替え、コア部材の凹部内に有機材料を含浸させている状態を示す概略図である。
【図6】図6は、図5に続く基板の製造工程を示す図であり、コア部材にバリア層5が形成された状態を示す断面図である。
【図7】図7は、図6に示したバリア層5付のコア部材を示す断面図であり、バリア層5付のコア部材がバリア性を示している状態を示す図である。
【図8】図8は、従来のプロセスでアンダーコーディング層(バリア層)が成膜されたコア部材を示す断面図であり、アンダーコーディング層付のコア部材がバリア性を示していない状態を示す図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る液晶表示装置を示す断面図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る液晶表示装置の製造工程を示す図であり、ガラス基板50上にアレイパターンを形成し、液晶表示装置を製造している途中の状態を示す図である。
【図11】図11は、上記第2の実施形態に係る実施例1の液晶表示装置、比較例1の液晶表示装置及び比較例2の液晶表示装置における、時間に対する保持率の変化をグラフで示した図である。
【図12】図12は、上記基板の変形例を示す断面図である。
【図13】図13は、上記液晶表示装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る基板及び基板の製造方法について詳細に説明する。始めに、基板の構成について説明する。
図1に示すように、基板Sは、シート状のコア部材1(薄板基板)、バリア層5及びバリア層6を備えている。
【0014】
コア部材1は、非ガラス基板である。例えば、コア部材1には、エンジニアリングプラスチックが用いられ、ガラス基板に対し軽量化や耐衝撃性の向上を図ることができる。エンジニアリングプラスチック材料としては、耐熱性や透明性に優れるPEN、PES、ポリイミド、高耐熱性ポリカーボネート、ポリアラミド樹脂などを挙げることができる。基板Sが、表示装置用途であったり、プロセス温度を満足する必要があったりする場合、コア部材1に、紙、木片、セラミック、ウレタン樹脂などを利用することも可能である。
【0015】
コア部材1は、表面に開口した凹部を有している。コア部材1の凹部は、異物侵入パスとなる部位である。コア部材1の凹部は、クラック2、表面凹凸3、コア部材1の表面から連続的に繋がる内部空洞4の少なくとも1つである。この実施形態において、コア部材1には、クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4が多数、存在している。
【0016】
バリア層5は、コア部材1の表面に接する側のバリア層である。バリア層5は、コア部材1の表面全体を有効的に被覆した有機材料又は無機材料で形成されている。バリア層5は、塗布型の有機材料、又は塗布型の無機材料で形成されている。バリア層5は、コア部材1の凹部内、即ち、クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4の内部に充填されている。バリア層5は、ガスバリア性、イオンバリア性及び水蒸気バリア性を併せ持っている。
【0017】
バリア層5の材料としては、硬化型のアクリル、エポキシ、ポリイミド、ポリシロキサンなどを利用することが可能である。基板Sが、表示装置用途であったり、プロセスに適合する必要があったりする場合でも、上記の材料をバリア層5に概ね利用することができる。また、コア部材1の凹部(クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4)にバリア層5を充填する際、塗布膜の硬化収縮が少ない材料(バリア層5の材料)の方が、コア部材1を有効に被覆することが出来るため好ましい。
【0018】
他のバリア層であるバリア層6は、バリア層5の表面全体に積層され、有機材料又は無機材料で形成されている。バリア層5の表面をバリア層6で覆うことにより、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【0019】
この実施形態において、コア部材1はプラスチックで形成され、バリア層5は有機材料で形成され、バリア層6は無機材料で形成されている。
基板Sは、上記のように形成されている。このため、基板Sをバリア層付き非ガラス基板と呼ぶことができる。
【0020】
次に、基板Sの製造方法について説明する。特に、バリア層5を形成する際に、コア部材1の凹部に有機材料を有効に充填する方法について説明する。
図2に示すように、基板Sの製造が開始されると、まず、プラスチックで形成されたコア部材1を用意する。用意したコア部材1には凹部(クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4)が存在している。続いて、コア部材1の表面の脱脂処理を行う。
【0021】
図3に示すように、次いで、用意したコア部材1を製造装置10を用いて処理する。
ここで、製造装置10の構成について説明する。製造装置10は、真空チャンバ11と、容器(槽)13と、排気機構14とを備えている。真空チャンバ11はステージ12を有し、ステージ12は開閉可能な窓部を有している。窓部を閉状態に切替えることで、真空チャンバ11を気密に閉塞することができる。窓部を開状態に切替えることで、真空チャンバ11内への容器13の出入りを許可することができる。容器13には有機材料が入っている。排気機構14は、ホース15及びステージ12に形成された開口部を介して真空チャンバ11内に気密に連通されている。
【0022】
コア部材1を製造装置10を用いて処理する際、まず、コア部材1を真空チャンバ11内に搬入し、次いで排気機構14を稼働させて真空チャンバ11内を真空排気する。これにより、コア部材1の表面に吸着したガスや、欠陥領域である凹部内に残存するガスの脱ガス処理を行うことができる。この脱ガス処理は、真空チャンバ11内の真空度を1Pa以下、コア部材1の温度を100℃として行った。上記のように、コア部材1を減圧された環境内に置き、コア部材1の凹部内を脱気した。
【0023】
図4に示すように、次いで、排気機構14の稼働を維持し、真空チャンバ11内の真空度を1Pa以下に維持した状態で、ステージ12の窓部を開状態に切替え、真空チャンバ11内に有機材料の入った容器13を搬入する。すなわち、コア部材1の凹部内が脱気された状態に維持される。続いて、図示しない搬送機構を用い、コア部材1全体を容器13内の有機材料(溶液)中に浸漬する。
【0024】
図5に示すように、その後、排気機構14の稼働を停止し、コア部材1の全面が有機材料で覆われた状態で、真空チャンバ11内を大気圧に戻す。上記のように、コア部材1の置かれる環境を、減圧された環境から大気圧の環境に替えることにより、コア部材1の凹部内に有機材料を含浸させることができる。
【0025】
その後、容器13内の有機材料(製造装置10)の中からコア部材1を取り出し、コア部材1の表面全体を被覆した有機材料を硬化させる。例えば、有機材料が紫外線硬化型である場合は紫外線を照射して硬化させればよく、また、有機材料が熱硬化型である場合は加熱して硬化させればよい。
図6に示すように、これにより、コア部材1の表面全体を被覆したバリア層5を有機材料で形成することができる。
【0026】
次いで、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い、バリア層5が形成されたコア部材1上に、無機材料であるSiONを100nm成膜する。
図1に示すように、これにより、SiONでバリア層5の表面全体に積層されたバリア層6を形成することができ、基板Sの製造が終了する。
【0027】
上記のように構成された第1の実施形態に係る基板及び基板の製造方法によれば、コア部材1には、コア部材1の表面付近のクラック2や表面凹凸3、あるいはコア部材1の表面から連続的に繋がる内部空洞4など、コア部材1の内部への異物侵入パスとなるような所謂欠陥が多数存在する。
【0028】
図8に示すように、従来は、これら欠陥領域をリカバリする目的で、通常の塗布プロセスや薄膜プロセス(真空蒸着、CVD、スパッタなど)でアンダーコーディング層などを成膜していたが、コア部材1の最表面部に存在する欠陥以外のクラック2や内部空洞4など潜在的な欠陥のリカバリが不十分になることが多く、外部からの異物(ガス、イオン性不純物、水蒸気など)の浸入経路となり易い。
【0029】
図7に示すように、これに対し、この実施形態では、コア部材1のクラック2や内部空洞4などに残存するガスを一旦真空チャンバ11内にて脱ガス処理し、同状態を維持してコア部材1を溶液状の有機材料中に浸漬している。その後、コア部材1の表面が有機材料で覆われた状態にて、コア部材1を大気圧環境に戻すことで負圧状態になったクラック2や内部空洞4内に有機材料を有効に充填することが可能となる。
【0030】
コア部材1はガス透過性を示すものであるが、コア部材1への外部からの異物(ガス、イオン性不純物、水蒸気など)の浸入を低減することができるため、コア部材1中の異物の通り抜けを低減することができる。上記のように、バリア層5により、コア部材1に起因する基板Sのバリア性の低下を改善することができる。しかも、バリア層5の1層のみで上記効果を得ることができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
さらに、上記有機材料に低分子系の材料を用いることで、コア部材1を構成する分子間へのバリア層材料の浸透も可能となるため、コア部材1との密着性も改善され、副次的にバリア層5の性能のアップに繋げることができる。
【0032】
またさらに、バリア層6は、バリア層5の表面全体に積層され、SiON(ガスバリア性に富んだ無機材料)で形成されている。これにより、基板Sが、液晶表示装置や有機EL表示装置用途であったりする場合の信頼性を確保することができる。
上記のことから、異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる基板S及び基板Sの製造方法を得ることができる。また、十分な薄さ及び柔軟性を有する基板Sを得ることができる。
【0033】
次に、第2の実施形態に係る液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
図9に示すように、液晶表示装置は、多層配線基板として、アクティブマトリクス型のアレイ基板20と、このアレイ基板に対向配置された対向基板30と、これら両基板間に挟持された液晶層40と、を有している。
【0035】
アレイ基板20は、透明な絶縁基板としての基板Sと、基板S上に形成され、多層配線構造を有したアレイパターン21とを備えている。詳述しないが、アレイパターン21は、マトリクス状に設けられた複数の画素部を有している。また、アレイパターン21は、図示しない複数の走査線、複数の信号線、スイッチング素子としての複数のTFT(薄膜トランジスタ)及び画素電極を有している。
【0036】
アレイ基板20は、スペーサとして、アレイパターン21上に形成された複数の柱状スペーサを有している。その他、アレイ基板20は、アレイパターン21上に形成された図示しない配向膜を有している。
【0037】
対向基板30は、透明な絶縁基板としての他の基板Sと、他の基板S上に順に形成された対向電極及び配向膜を含む対向パターン31とを有している。この実施形態において、上記基板S及び他の基板Sは、上記第1の実施形態の基板Sと同様に形成されている。
【0038】
アレイ基板20及び対向基板30間の隙間は、柱状スペーサにより保持されている。アレイ基板20および対向基板30は、これら両基板の周縁部に配置されたシール材により接合されている。液晶層40は、滴下注入により、アレイ基板20及び対向基板30間に形成されている。
【0039】
次に、液晶表示装置の製造方法について説明する。
図10に示すように、液晶表示装置の製造が開始されると、まず、ガラス基板50を用意し、ガラス基板50上に、アレイパターン21、柱状スペーサ及び配向膜を形成する。一方、ガラス基板50とは別に基板Sを用意し、基板S上に対向パターン31を形成する。
【0040】
その後、ガラス基板50の周縁部又は基板Sの周縁部にシール材を設け、シール材を設けた側の基板(ガラス基板50又は基板S)上に、液晶材料を滴下し、ガラス基板50及び基板Sを貼り合せる。続いて、シール材を硬化させ、シール材により、ガラス基板50及び基板Sを接合する。
【0041】
次いで、ガラス基板50を常法にて完全に削除し、ガラス基板50を削除した面(アレイパターン21の表面)に、基板Sを貼り付ける。
これにより、液晶表示装置の製造が終了する。
【0042】
ここで、本願発明者は、実施例1の液晶表示装置、比較例1の液晶表示装置及び比較例2の液晶表示装置における、時間に対する保持率の変化について調査した。この際、液晶表示装置を高温(60℃)かつ高湿(90%)の環境に置き、画素電極及び対向電極間に電圧を印加し、液晶表示装置を周期的に駆動することにより行った。
【0043】
実施例1の液晶表示装置は、図9に示した液晶表示装置であり、図1に示した基板Sで形成されている。
比較例1の液晶表示装置は、基板S以外、実施例1と同様に形成されている。比較例1の基板Sは、通常の塗布プロセスや薄膜プロセス(真空蒸着、CVD、スパッタなど)でコア部材1にバリア層5及びバリア層6を設けて形成されている。
比較例2の液晶表示装置は、基板S以外、実施例1と同様に形成されている。比較例2の基板Sは、コア部材1にバリア層5及びバリア層6を設けること無しに形成されている。
【0044】
上記保持率とは、画素電極及び対向電極の電荷の保持率を示している。このため、液晶層40への異物の侵入が多い程、画素電極及び対向電極の電荷のリークが進み、上記保持率は低下することになる。
【0045】
図11に示すように、実施例1の液晶表示装置においては2個を保持率(信頼性)について調査したところ、何れも高い保持率(95%以上)を維持している結果を得ることができた。さらに、この調査結果から、基板Sの替りにガラス基板を利用した場合と同等の保持率を維持できることが確認できた。
【0046】
また、比較例1の液晶表示装置においては2個を、比較例2の液晶表示装置においては1個を、保持率(信頼性)について調査したところ、何れも高い保持率(95%以上)を維持する結果は得られなかった。
【0047】
上記のように構成された第2の実施形態に係る液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法によれば、液晶表示装置は、第1の実施形態と同様に形成された基板Sを用いて形成されている。このため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。コア部材1は、バリア層5だけでなく、バリア層6でも覆われているため、基板Sを、信頼性の求められる液晶表示装置に利用することができる。
【0048】
上記のことから、異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法を得ることができる。また、十分な薄さ及び柔軟性を有する液晶表示装置を得ることができる。
【0049】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0050】
例えば、基板Sは、少なくとも、コア部材1と、コア部材1の表面全体を被覆した単一のバリア層とを備えていればよい。この際、バリア層は、有機材料又は無機材料で形成され、コア部材1の凹部内に充填されていればよい。
【0051】
コア部材1を被覆するバリア層は、単層構造、2層構造に限らず、3層以上の積層構造であってもよい。例えば、表示装置のタイプ(液晶、有機EL、電気泳道型素子、電子粉流体)によっては、バリア層を3層以上の積層構造とすることも効果的である。
【0052】
図12に示すように、例えば、図1に示した基板Sにさらにバリア層7を設けて基板Sを形成することができる。バリア層7は、バリア層6の表面全体に積層され、有機材料又は無機材料で形成されている。ここで、CVD法を用いて無機材料で形成されたバリア層6上にバリア層7を形成する際、バリア層5と同様の製造プロセスを適応することで更なる信頼性アップを図ることができる。
【0053】
図13に示すように、図10に示したガラス基板50を完全に削除せずに、常法にて20μm乃至50μmの厚さに研磨した場合、研磨されたガラス基板50の表面に、バリア層の設けられていないコア部材1を貼り付けてもよい。なお、上記の場合、研磨されたガラス基板50がバリア層として機能する。
【0054】
バリア層6をバリア層5上に積層する際は、バリア層5上にガスバリア性に富んだ無機材料を従来プロセス(真空蒸着、CVD、スパッタなど)によって積層することが好ましい。無機材料としては、SiOX、SiN、SiON、Al2O3などの金属酸化物薄膜やDLC(ダイアモンドライクカーボン)のような高ガスバリア材を用いることができる。
【0055】
この発明の表示装置は、液晶表示装置に限定されるものではなく、有機EL表示装置など各種の表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
S…基板、1…コア部材、2…クラック、3…表面凹凸、4…内部空洞、5,6,7…バリア層、10…製造装置、11…真空チャンバ、12…ステージ、13…容器、14…排気機構、20…アレイ基板、30…対向基板、40…液晶層、50…ガラス基板。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板、基板を備えた表示装置及び基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表される平型表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴を生かして、OA機器、情報端末、時計、テレビなどの各種分野で利用されている。中でもTFT(薄膜トランジスタ)を用いた液晶表示装置は、その応答性の高さから携帯端末やコンピュータなど多くの情報を表示するモニタとして多用されている。
【0003】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報端末機器では性能面もさることながら、デザイン性、携帯性などの観点から、より薄くしかもより軽い表示装置の要求が高まっている。例えば、液晶表示装置のより一層の薄型化構造を実現するための技術が提案されている。
【0004】
一般的にTFTを形成する基板材料は耐熱性などの観点から、石英基板やガラス基板が用いられている。そこで、これらの基板を機械的または化学的に研磨するなどの処理を行うことで、薄板化や軽量化を図ることができる。さらに軽量化を狙う方法として、これらのガラス基板を一旦除去してTFT等が形成された多層構造体のみを別の軽量な樹脂基板などに転写したプラスチック基板などの薄板基板パネルの実用化が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−341214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記薄型の基板では、基板自体の薄型化や柔軟性が向上したことに伴い、基板単体でのガス遮蔽性能が従来ガラス基板に対して劣る傾向にあり、薄型基板を利用する表示装置の信頼性を低下させるなどの問題が生じてしまう。
【0007】
これに対し、薄型基板にガス遮蔽性能を有する薄膜を形成し、薄型基板のガスバリア性の向上を図るなどの検討がなされている。ガス遮蔽層を薄板基板の表面に形成する場合、薄板基板の表面の凹凸を少なくすることを目的に平坦化層を形成することが一般的である。ここで、平坦化層をアンダーコーティング(U.C.)層と呼ぶ場合もある。U.C.層は通常の塗布プロセスにて形成される。U.C.層によって平坦化された面には、更にガスバリア性に優れた無機薄膜が形成されることも少なくない。
【0008】
ところで、従来構成のバリア層付き非ガラス基板では、これらU.C.層や無機薄膜層はベースとなる非ガラス基板の表面や内部に潜在的に形成されているクラック、凹凸、基板表面から連続的に繋がる空洞など異物侵入のパスとなる部位を完全にカバーするには十分ではなく、バリア層を形成するための積層数や膜厚の増加といった高コスト化に繋がる問題が存在す。
【0009】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる基板、基板を備えた表示装置及び基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る基板は、
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材と、
前記コア部材の表面全体を被覆した有機層又は無機層を有するバリア層と、を備え、
前記バリア層は、前記コア部材の凹部内に充填されている。
【0011】
また、一実施形態に係る基板の製造方法は、
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材を用意し、
前記コア部材を減圧された環境内に置き、前記コア部材の凹部内を脱気し、
前記コア部材の凹部内が脱気された状態で、前記コア部材を有機材料又は無機材料中に浸漬し、
前記コア部材の置かれる環境を、前記減圧された環境から大気圧の環境に替え、前記コア部材の凹部内に前記有機材料又は無機材料を含浸させ、
前記有機材料又は無機材料中から取り出した前記コア部材の表面全体を被覆した有機層又は無機層を有するバリア層を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る基板を示す断面図である。
【図2】図2は、上記第1の実施形態に係る基板の製造工程を示す図であり、コア部材を示す断面図である。
【図3】図3は、図2に続く基板の製造工程を示す図であり、製造装置内にコア部材が搬入されている状態を示す概略図である。
【図4】図4は、図3に続く基板の製造工程を示す図であり、コア部材を有機材料中に浸漬している状態を示す概略図である。
【図5】図5は、図4に続く基板の製造工程を示す図であり、コア部材の置かれる環境を、減圧された環境から大気圧の環境に替え、コア部材の凹部内に有機材料を含浸させている状態を示す概略図である。
【図6】図6は、図5に続く基板の製造工程を示す図であり、コア部材にバリア層5が形成された状態を示す断面図である。
【図7】図7は、図6に示したバリア層5付のコア部材を示す断面図であり、バリア層5付のコア部材がバリア性を示している状態を示す図である。
【図8】図8は、従来のプロセスでアンダーコーディング層(バリア層)が成膜されたコア部材を示す断面図であり、アンダーコーディング層付のコア部材がバリア性を示していない状態を示す図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る液晶表示装置を示す断面図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る液晶表示装置の製造工程を示す図であり、ガラス基板50上にアレイパターンを形成し、液晶表示装置を製造している途中の状態を示す図である。
【図11】図11は、上記第2の実施形態に係る実施例1の液晶表示装置、比較例1の液晶表示装置及び比較例2の液晶表示装置における、時間に対する保持率の変化をグラフで示した図である。
【図12】図12は、上記基板の変形例を示す断面図である。
【図13】図13は、上記液晶表示装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る基板及び基板の製造方法について詳細に説明する。始めに、基板の構成について説明する。
図1に示すように、基板Sは、シート状のコア部材1(薄板基板)、バリア層5及びバリア層6を備えている。
【0014】
コア部材1は、非ガラス基板である。例えば、コア部材1には、エンジニアリングプラスチックが用いられ、ガラス基板に対し軽量化や耐衝撃性の向上を図ることができる。エンジニアリングプラスチック材料としては、耐熱性や透明性に優れるPEN、PES、ポリイミド、高耐熱性ポリカーボネート、ポリアラミド樹脂などを挙げることができる。基板Sが、表示装置用途であったり、プロセス温度を満足する必要があったりする場合、コア部材1に、紙、木片、セラミック、ウレタン樹脂などを利用することも可能である。
【0015】
コア部材1は、表面に開口した凹部を有している。コア部材1の凹部は、異物侵入パスとなる部位である。コア部材1の凹部は、クラック2、表面凹凸3、コア部材1の表面から連続的に繋がる内部空洞4の少なくとも1つである。この実施形態において、コア部材1には、クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4が多数、存在している。
【0016】
バリア層5は、コア部材1の表面に接する側のバリア層である。バリア層5は、コア部材1の表面全体を有効的に被覆した有機材料又は無機材料で形成されている。バリア層5は、塗布型の有機材料、又は塗布型の無機材料で形成されている。バリア層5は、コア部材1の凹部内、即ち、クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4の内部に充填されている。バリア層5は、ガスバリア性、イオンバリア性及び水蒸気バリア性を併せ持っている。
【0017】
バリア層5の材料としては、硬化型のアクリル、エポキシ、ポリイミド、ポリシロキサンなどを利用することが可能である。基板Sが、表示装置用途であったり、プロセスに適合する必要があったりする場合でも、上記の材料をバリア層5に概ね利用することができる。また、コア部材1の凹部(クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4)にバリア層5を充填する際、塗布膜の硬化収縮が少ない材料(バリア層5の材料)の方が、コア部材1を有効に被覆することが出来るため好ましい。
【0018】
他のバリア層であるバリア層6は、バリア層5の表面全体に積層され、有機材料又は無機材料で形成されている。バリア層5の表面をバリア層6で覆うことにより、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【0019】
この実施形態において、コア部材1はプラスチックで形成され、バリア層5は有機材料で形成され、バリア層6は無機材料で形成されている。
基板Sは、上記のように形成されている。このため、基板Sをバリア層付き非ガラス基板と呼ぶことができる。
【0020】
次に、基板Sの製造方法について説明する。特に、バリア層5を形成する際に、コア部材1の凹部に有機材料を有効に充填する方法について説明する。
図2に示すように、基板Sの製造が開始されると、まず、プラスチックで形成されたコア部材1を用意する。用意したコア部材1には凹部(クラック2、表面凹凸3及び内部空洞4)が存在している。続いて、コア部材1の表面の脱脂処理を行う。
【0021】
図3に示すように、次いで、用意したコア部材1を製造装置10を用いて処理する。
ここで、製造装置10の構成について説明する。製造装置10は、真空チャンバ11と、容器(槽)13と、排気機構14とを備えている。真空チャンバ11はステージ12を有し、ステージ12は開閉可能な窓部を有している。窓部を閉状態に切替えることで、真空チャンバ11を気密に閉塞することができる。窓部を開状態に切替えることで、真空チャンバ11内への容器13の出入りを許可することができる。容器13には有機材料が入っている。排気機構14は、ホース15及びステージ12に形成された開口部を介して真空チャンバ11内に気密に連通されている。
【0022】
コア部材1を製造装置10を用いて処理する際、まず、コア部材1を真空チャンバ11内に搬入し、次いで排気機構14を稼働させて真空チャンバ11内を真空排気する。これにより、コア部材1の表面に吸着したガスや、欠陥領域である凹部内に残存するガスの脱ガス処理を行うことができる。この脱ガス処理は、真空チャンバ11内の真空度を1Pa以下、コア部材1の温度を100℃として行った。上記のように、コア部材1を減圧された環境内に置き、コア部材1の凹部内を脱気した。
【0023】
図4に示すように、次いで、排気機構14の稼働を維持し、真空チャンバ11内の真空度を1Pa以下に維持した状態で、ステージ12の窓部を開状態に切替え、真空チャンバ11内に有機材料の入った容器13を搬入する。すなわち、コア部材1の凹部内が脱気された状態に維持される。続いて、図示しない搬送機構を用い、コア部材1全体を容器13内の有機材料(溶液)中に浸漬する。
【0024】
図5に示すように、その後、排気機構14の稼働を停止し、コア部材1の全面が有機材料で覆われた状態で、真空チャンバ11内を大気圧に戻す。上記のように、コア部材1の置かれる環境を、減圧された環境から大気圧の環境に替えることにより、コア部材1の凹部内に有機材料を含浸させることができる。
【0025】
その後、容器13内の有機材料(製造装置10)の中からコア部材1を取り出し、コア部材1の表面全体を被覆した有機材料を硬化させる。例えば、有機材料が紫外線硬化型である場合は紫外線を照射して硬化させればよく、また、有機材料が熱硬化型である場合は加熱して硬化させればよい。
図6に示すように、これにより、コア部材1の表面全体を被覆したバリア層5を有機材料で形成することができる。
【0026】
次いで、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い、バリア層5が形成されたコア部材1上に、無機材料であるSiONを100nm成膜する。
図1に示すように、これにより、SiONでバリア層5の表面全体に積層されたバリア層6を形成することができ、基板Sの製造が終了する。
【0027】
上記のように構成された第1の実施形態に係る基板及び基板の製造方法によれば、コア部材1には、コア部材1の表面付近のクラック2や表面凹凸3、あるいはコア部材1の表面から連続的に繋がる内部空洞4など、コア部材1の内部への異物侵入パスとなるような所謂欠陥が多数存在する。
【0028】
図8に示すように、従来は、これら欠陥領域をリカバリする目的で、通常の塗布プロセスや薄膜プロセス(真空蒸着、CVD、スパッタなど)でアンダーコーディング層などを成膜していたが、コア部材1の最表面部に存在する欠陥以外のクラック2や内部空洞4など潜在的な欠陥のリカバリが不十分になることが多く、外部からの異物(ガス、イオン性不純物、水蒸気など)の浸入経路となり易い。
【0029】
図7に示すように、これに対し、この実施形態では、コア部材1のクラック2や内部空洞4などに残存するガスを一旦真空チャンバ11内にて脱ガス処理し、同状態を維持してコア部材1を溶液状の有機材料中に浸漬している。その後、コア部材1の表面が有機材料で覆われた状態にて、コア部材1を大気圧環境に戻すことで負圧状態になったクラック2や内部空洞4内に有機材料を有効に充填することが可能となる。
【0030】
コア部材1はガス透過性を示すものであるが、コア部材1への外部からの異物(ガス、イオン性不純物、水蒸気など)の浸入を低減することができるため、コア部材1中の異物の通り抜けを低減することができる。上記のように、バリア層5により、コア部材1に起因する基板Sのバリア性の低下を改善することができる。しかも、バリア層5の1層のみで上記効果を得ることができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
さらに、上記有機材料に低分子系の材料を用いることで、コア部材1を構成する分子間へのバリア層材料の浸透も可能となるため、コア部材1との密着性も改善され、副次的にバリア層5の性能のアップに繋げることができる。
【0032】
またさらに、バリア層6は、バリア層5の表面全体に積層され、SiON(ガスバリア性に富んだ無機材料)で形成されている。これにより、基板Sが、液晶表示装置や有機EL表示装置用途であったりする場合の信頼性を確保することができる。
上記のことから、異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる基板S及び基板Sの製造方法を得ることができる。また、十分な薄さ及び柔軟性を有する基板Sを得ることができる。
【0033】
次に、第2の実施形態に係る液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法について説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
図9に示すように、液晶表示装置は、多層配線基板として、アクティブマトリクス型のアレイ基板20と、このアレイ基板に対向配置された対向基板30と、これら両基板間に挟持された液晶層40と、を有している。
【0035】
アレイ基板20は、透明な絶縁基板としての基板Sと、基板S上に形成され、多層配線構造を有したアレイパターン21とを備えている。詳述しないが、アレイパターン21は、マトリクス状に設けられた複数の画素部を有している。また、アレイパターン21は、図示しない複数の走査線、複数の信号線、スイッチング素子としての複数のTFT(薄膜トランジスタ)及び画素電極を有している。
【0036】
アレイ基板20は、スペーサとして、アレイパターン21上に形成された複数の柱状スペーサを有している。その他、アレイ基板20は、アレイパターン21上に形成された図示しない配向膜を有している。
【0037】
対向基板30は、透明な絶縁基板としての他の基板Sと、他の基板S上に順に形成された対向電極及び配向膜を含む対向パターン31とを有している。この実施形態において、上記基板S及び他の基板Sは、上記第1の実施形態の基板Sと同様に形成されている。
【0038】
アレイ基板20及び対向基板30間の隙間は、柱状スペーサにより保持されている。アレイ基板20および対向基板30は、これら両基板の周縁部に配置されたシール材により接合されている。液晶層40は、滴下注入により、アレイ基板20及び対向基板30間に形成されている。
【0039】
次に、液晶表示装置の製造方法について説明する。
図10に示すように、液晶表示装置の製造が開始されると、まず、ガラス基板50を用意し、ガラス基板50上に、アレイパターン21、柱状スペーサ及び配向膜を形成する。一方、ガラス基板50とは別に基板Sを用意し、基板S上に対向パターン31を形成する。
【0040】
その後、ガラス基板50の周縁部又は基板Sの周縁部にシール材を設け、シール材を設けた側の基板(ガラス基板50又は基板S)上に、液晶材料を滴下し、ガラス基板50及び基板Sを貼り合せる。続いて、シール材を硬化させ、シール材により、ガラス基板50及び基板Sを接合する。
【0041】
次いで、ガラス基板50を常法にて完全に削除し、ガラス基板50を削除した面(アレイパターン21の表面)に、基板Sを貼り付ける。
これにより、液晶表示装置の製造が終了する。
【0042】
ここで、本願発明者は、実施例1の液晶表示装置、比較例1の液晶表示装置及び比較例2の液晶表示装置における、時間に対する保持率の変化について調査した。この際、液晶表示装置を高温(60℃)かつ高湿(90%)の環境に置き、画素電極及び対向電極間に電圧を印加し、液晶表示装置を周期的に駆動することにより行った。
【0043】
実施例1の液晶表示装置は、図9に示した液晶表示装置であり、図1に示した基板Sで形成されている。
比較例1の液晶表示装置は、基板S以外、実施例1と同様に形成されている。比較例1の基板Sは、通常の塗布プロセスや薄膜プロセス(真空蒸着、CVD、スパッタなど)でコア部材1にバリア層5及びバリア層6を設けて形成されている。
比較例2の液晶表示装置は、基板S以外、実施例1と同様に形成されている。比較例2の基板Sは、コア部材1にバリア層5及びバリア層6を設けること無しに形成されている。
【0044】
上記保持率とは、画素電極及び対向電極の電荷の保持率を示している。このため、液晶層40への異物の侵入が多い程、画素電極及び対向電極の電荷のリークが進み、上記保持率は低下することになる。
【0045】
図11に示すように、実施例1の液晶表示装置においては2個を保持率(信頼性)について調査したところ、何れも高い保持率(95%以上)を維持している結果を得ることができた。さらに、この調査結果から、基板Sの替りにガラス基板を利用した場合と同等の保持率を維持できることが確認できた。
【0046】
また、比較例1の液晶表示装置においては2個を、比較例2の液晶表示装置においては1個を、保持率(信頼性)について調査したところ、何れも高い保持率(95%以上)を維持する結果は得られなかった。
【0047】
上記のように構成された第2の実施形態に係る液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法によれば、液晶表示装置は、第1の実施形態と同様に形成された基板Sを用いて形成されている。このため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。コア部材1は、バリア層5だけでなく、バリア層6でも覆われているため、基板Sを、信頼性の求められる液晶表示装置に利用することができる。
【0048】
上記のことから、異物遮蔽性に優れ、低コスト化を図ることのできる液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法を得ることができる。また、十分な薄さ及び柔軟性を有する液晶表示装置を得ることができる。
【0049】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0050】
例えば、基板Sは、少なくとも、コア部材1と、コア部材1の表面全体を被覆した単一のバリア層とを備えていればよい。この際、バリア層は、有機材料又は無機材料で形成され、コア部材1の凹部内に充填されていればよい。
【0051】
コア部材1を被覆するバリア層は、単層構造、2層構造に限らず、3層以上の積層構造であってもよい。例えば、表示装置のタイプ(液晶、有機EL、電気泳道型素子、電子粉流体)によっては、バリア層を3層以上の積層構造とすることも効果的である。
【0052】
図12に示すように、例えば、図1に示した基板Sにさらにバリア層7を設けて基板Sを形成することができる。バリア層7は、バリア層6の表面全体に積層され、有機材料又は無機材料で形成されている。ここで、CVD法を用いて無機材料で形成されたバリア層6上にバリア層7を形成する際、バリア層5と同様の製造プロセスを適応することで更なる信頼性アップを図ることができる。
【0053】
図13に示すように、図10に示したガラス基板50を完全に削除せずに、常法にて20μm乃至50μmの厚さに研磨した場合、研磨されたガラス基板50の表面に、バリア層の設けられていないコア部材1を貼り付けてもよい。なお、上記の場合、研磨されたガラス基板50がバリア層として機能する。
【0054】
バリア層6をバリア層5上に積層する際は、バリア層5上にガスバリア性に富んだ無機材料を従来プロセス(真空蒸着、CVD、スパッタなど)によって積層することが好ましい。無機材料としては、SiOX、SiN、SiON、Al2O3などの金属酸化物薄膜やDLC(ダイアモンドライクカーボン)のような高ガスバリア材を用いることができる。
【0055】
この発明の表示装置は、液晶表示装置に限定されるものではなく、有機EL表示装置など各種の表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
S…基板、1…コア部材、2…クラック、3…表面凹凸、4…内部空洞、5,6,7…バリア層、10…製造装置、11…真空チャンバ、12…ステージ、13…容器、14…排気機構、20…アレイ基板、30…対向基板、40…液晶層、50…ガラス基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材と、
前記コア部材の表面全体を被覆した有機材料又は無機材料で形成されたバリア層と、を備え、
前記バリア層は、前記コア部材の凹部内に充填されている基板。
【請求項2】
前記バリア層は、ガスバリア性、イオンバリア性、及び水蒸気バリア性を示す請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記コア部材の凹部は、クラック、表面凹凸、及び前記コア部材の表面から連続的に繋がる内部空洞の少なくとも1つである請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記バリア層は、塗布型の有機材料、又は塗布型の無機材料で形成されている請求項1に記載の基板。
【請求項5】
前記バリア層の表面全体に積層され、有機材料又は無機材料で形成された他のバリア層をさらに備えている請求項1に記載の基板。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の基板を備えた表示装置。
【請求項7】
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材を用意し、
前記コア部材を減圧された環境内に置き、前記コア部材の凹部内を脱気し、
前記コア部材の凹部内が脱気された状態で、前記コア部材を有機材料又は無機材料中に浸漬し、
前記コア部材の置かれる環境を、前記減圧された環境から大気圧の環境に替え、前記コア部材の凹部内に前記有機材料又は無機材料を含浸させ、
前記有機材料又は無機材料中から取り出した前記コア部材の表面全体を被覆したバリア層を有機材料又は無機材料で形成する基板の製造方法。
【請求項1】
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材と、
前記コア部材の表面全体を被覆した有機材料又は無機材料で形成されたバリア層と、を備え、
前記バリア層は、前記コア部材の凹部内に充填されている基板。
【請求項2】
前記バリア層は、ガスバリア性、イオンバリア性、及び水蒸気バリア性を示す請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記コア部材の凹部は、クラック、表面凹凸、及び前記コア部材の表面から連続的に繋がる内部空洞の少なくとも1つである請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記バリア層は、塗布型の有機材料、又は塗布型の無機材料で形成されている請求項1に記載の基板。
【請求項5】
前記バリア層の表面全体に積層され、有機材料又は無機材料で形成された他のバリア層をさらに備えている請求項1に記載の基板。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の基板を備えた表示装置。
【請求項7】
表面に開口した凹部を有するシート状のコア部材を用意し、
前記コア部材を減圧された環境内に置き、前記コア部材の凹部内を脱気し、
前記コア部材の凹部内が脱気された状態で、前記コア部材を有機材料又は無機材料中に浸漬し、
前記コア部材の置かれる環境を、前記減圧された環境から大気圧の環境に替え、前記コア部材の凹部内に前記有機材料又は無機材料を含浸させ、
前記有機材料又は無機材料中から取り出した前記コア部材の表面全体を被覆したバリア層を有機材料又は無機材料で形成する基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−3538(P2013−3538A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137775(P2011−137775)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】
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