基板とその一方の面上に堆積させた層とを含む構造体の製造方法
本発明は、電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板(10)と前記基板(10)の一方の面上に材料を堆積させることにより形成された層(20)とを含む構造体(1)の製造方法に関し、この方法は、前記基板(10)の面(1B)が堆積した材料の層(20)により覆われ、前記基板の他の面(1A)が露出している前記構造体(1)を形成するように、−一方で前記基板(10)を、他方で残りの部分を画定する脆化区域を含む脆化された基板を形成する工程、−前記脆化された基板の2つの面のそれぞれの上に前記材料の層を堆積させる工程、−前記脆化された基板をへき開する工程を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板と、前記基板の片側上に材料を堆積させることにより形成された層とを含む構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最先端技術においては、例えばPECVD(「プラズマ化学蒸着(Plasma-Enhanced Chemical Vapour Deposition)」の頭字語)のような適合技術により薄層が堆積される基板の側を選択できることが示されている。しかし、この方法は、複雑であり、金属汚染を引き起こすことがあり、かつ堆積層が分離することがある。
【0003】
非選択的技術を使用すると、基板の両面上に堆積が起こる。次いで、望んでいない面上に堆積した層を除去することができる。この目的のため、例えば、保存したい層を別の材料上に結合させてその層を保護し、次いで、保護されていない側上の層を除去するためにエッチングを行う。しかし、この層の性質に応じて(特に、この層がSiN、AlNまたはダイヤモンドである場合)、その除去は非常に困難なことがあり、基板の材料と比較して、選択性がない。
【0004】
RIEエッチング(「反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)」の頭字語)を使用することもでき、この方法の説明は、Stanley Wolf及びRichard N. Tauberの研究「VLSI Eraのためのシリコン処理、Vol.1: 処理技術(Silicon Processing for the VLSI Era, Vol.1: Process Technology)」, Lattice Press、第2版、(1999年11月1日)、ISBN-10: 0961672161、「14、VLSI用のドライエッチング(Dry Etching for VLSI)」に記載されている。このプラズマにより支援されるドライエッチングは、清浄にすべき面を、他の面を保護する必要無しに、選択することができるが、その効率は、除去する材料に依存する。その上、この比較的困難な技術は、例えばNF3またはSF6のような毒性が非常に高いガスおよび汚染物質を使用する必要がある。従って、特殊な操作条件、特に特殊な隔離を伴う。
【0005】
この問題は、例えばSopSiC(「多結晶SiC上のシリコン(Silicon on Polycrystalline SiC)の頭字語」)またはSiCopSiC(「多結晶SiC上の炭化ケイ素(Silicon on Polycrystalline SiC)の頭字語」)基板の裏面上に多結晶シリコンの層を形成する際に起こる。
【0006】
SopSiC基板は、主として赤外放射線に透明であるので、前面上で分子線エピタキシー(MBE)を行うのに好適な温度を得るために、この基板の裏面を通して十分に加熱することはできない。
【0007】
裏面上に堆積させた多結晶シリコンの層は、赤外放射線を吸収し、高温に加熱することができ、それによって、エピタキシーを達成するのに必要な温度に到達するようにSopSiC基板を伝導により加熱することができる。
【0008】
これに関しては、米国特許第5,296,385号、米国特許出願公開第2004/0152312号、欧州特許第0449524号、国際公開第2006/082467号および仏国特許第0754172号を参照するとよい。
【0009】
現在の方法では、SopSiC基板上の面を選択せずに、すなわち基板の両面上に、多結晶シリコンを堆積させ、次いでエッチングを行い、望ましくない面上に形成された層を除去する。
【0010】
図1Aに関して、単結晶シリコンの基板520中への注入により、層500と境界を定める脆化区域510が形成される。
【0011】
図1Bに関して、SopSiCとして指定される構造体100は、SiO2の結合層300により、単結晶シリコンの基板520を多結晶SiC(p-SiCとも呼ばれる)の基板400上に結合し、層500を支持基板400上に転写することにより、形成される。
【0012】
図1Cに関して、構造体100の結合は、水蒸気の雰囲気下で温度約800℃〜1200℃で、アニールすることにより安定化され、この温度は、シリコンおよびSiCの熱酸化により、すなわち層400および500の表面上にあるシリコンの消費により、構造体100の両側におけるSiO2の層110及び120の形成に貢献する。
【0013】
図1Dに関して、次に、前に得られた構造体上の面を区別せずに、多結晶シリコン(p-Siとも呼ばれる)の層200を堆積させる。この目的のため、LPCVD技術(低圧化学蒸着)を温度620℃で用いることができる。
【0014】
図1Eに関して、単結晶シリコンの層500の側に位置するp-Siの層200を、SopSiC構造体からRIEエッチングにより除去する。
【0015】
図1Fに関して、単結晶シリコン層500の側に位置するSiO2の層110を、SiO2を選択的に溶解させるHF溶液の作用により、SopSiC構造体から除去し、シリコンを無傷で残す。
【0016】
最後に、単結晶シリコンの層500の表面を洗浄し、MBEによるエピタキシー用に調製する。
【0017】
この方法は、工程数が多く、選択的エッチングを行うために複雑で経費のかかる技術を使用していることが分かる。
【0018】
その上、強力な断熱材であるSiO2の層120が、多結晶シリコンの裏面層200と多結晶SiCの層400との間に形成され、この裏面層による加熱の効率を低下させる。このSiO2層120を小さくするためには、補足的なエッチング工程が必要であり、実行するのに非常に経費がかかる。
【0019】
従って、本発明の目的の一つは、簡単で、実行するのにあまりコストをかけずに低コストで実行でき、RIE型のエッチングを行わずに済む、非選択的な堆積技術を使用し、基板の片面上にのみ材料の層が堆積している構造体を製造する方法を提案することである。
【発明の概要】
【0020】
本発明によれば、電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板と前記基板の一方の面上に材料を堆積させることにより形成された層とを含む構造体の製造方法であって、
前記基板の一面が堆積した材料の層により覆われ、前記基板の他の面が露出している前記構造体を形成するように、
−一方で前記基板を、他方で残りの部分を画定する脆化区域を含む脆化された基板を形成する工程と、
−前記脆化された基板の2つの面のそれぞれに前記材料の層を堆積させる工程と、
−前記脆化された基板をへき開(cleavage)する工程と
を含むことを特徴とする、方法が提供される。露出している、とは本発明では、前記基板の前記面が層により覆われていないことを意味する。
【0021】
一実施態様では、へき開の熱量(thermal budget)が、堆積により与えられる熱量よりも大きい。従って、堆積工程は、へき開工程の前に行う。
【0022】
第二の実施態様では、へき開の熱量が、堆積により与えられる熱量よりも少ない。
【0023】
従って、へき開工程は、堆積工程の最中に行うことができる。脆化された基板は、へき開した部分が互いに分離しないように、保持するのが好ましく、特に有利な方法では、堆積工程の際に基板を水平に保持する。
【0024】
好ましい実施態様では、へき開工程は、層の材料の堆積チャンバ内で行う。
【0025】
本発明の実施の変形では、本方法は、
−前記脆化された基板の両面上に前記材料を非晶質形態で堆積させる工程と、
−前記脆化された基板のへき開工程と、
−前記材料を結晶化するのに好適な温度でアニールする工程と
を連続的に含む。
【0026】
本発明の他の可能な特徴により、
−前記脆化区域が、前記基板中へのイオン種の注入により形成され、
−前記基板が、支持基板およびシード層を含む複合材料基板であり、
−前記基板が、下記の材料、すなわちAl2O3、ZnO、III/V族の材料およびそれらの三元および四元合金、Si、SiC、多結晶SiC、ダイヤモンド、Geおよびそれらの合金の一種類を含み、
−前記堆積材料が、下記の材料、すなわち非晶質Si、単結晶Si、多結晶Si、Ge、SiC、多結晶SiC、非晶質SiC、III/V族の材料及びそれらの三元及び四元合金、Al2O3、SiO2、Si3N4およびダイヤモンドの中から選択され、
−前記基板が、SopSiCまたはSiCopSiC型の複合構造体であり、堆積材料の層が多結晶シリコンであり、
−前記方法が、こうして形成された前記構造体の前記基板の前記露出された面上に分子線エピタキシーを行うことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の他の特徴、目的および効果は、下記の説明を読むことにより、かつ添付の図面から、より明確になる。
【図1A】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1B】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1C】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1D】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1E】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1F】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図2A】図2A〜2Cは、ソース基板における脆化区域の形成を例示する。
【図2B】図2A〜2Cは、ソース基板における脆化区域の形成を例示する。
【図2C】図2A〜2Cは、ソース基板における脆化区域の形成を例示する。
【図3A】図3A及び3Bは、本発明の第一実施態様の工程を例示する。
【図3B】図3A及び3Bは、本発明の第一実施態様の工程を例示する。
【図4A】図4A及び4Bは、本発明の第二実施態様の工程を例示する。
【図4B】図4A及び4Bは、本発明の第二実施態様の工程を例示する。
【図5A】図5A〜5Cは、本発明の第三実施態様の工程を例示する。
【図5B】図5A〜5Cは、本発明の第三実施態様の工程を例示する。
【図5C】図5A〜5Cは、本発明の第三実施態様の工程を例示する。
【図6】図6は、本発明の方法により得られる構造体およびその構造および残りの構造を例示する。
【図7A】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7B】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7C】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7D】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7E】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7F】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7G】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7H】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図8A】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図8B】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図8C】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図8D】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図9A】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【図9B】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【図9C】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【図9D】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般的に、本発明は、バルクまたは複合材料(すなわち異なった材料の複数の層を含む)でもよい基板12の製造を含み、基板12は脆化区域11を含み、その区域に従って、基板12はへき開されることができる。
【0029】
「へき開」(cleavage)または「破砕」は、基板を、最初の基板の表面に対して平行な平面に従って、2つの層に分割し、これらの層を後で除去または分離できるようにする作用を意味し、それによって形成された2つの層は、独立しているが、毛管現象または吸引効果により、それらの間に特定の密着性を創出することができる。従って、除去工程は、へき開の後に来る工程であり、へき開とは区別される。以下の説明で、へき開した基板という時は、それらの2つの層は互いにまだ、接触していると理解されなければならない。
【0030】
脆化区域を形成した後に、その脆化された基板の2つの面上に材料を堆積させ、脆化された基板をへき開する。
【0031】
以下に詳細に説明する場合に応じて、へき開工程は、堆積工程の最中または後に行うことができる。
【0032】
最後に、上記の堆積およびへき開工程に続いて、基板12の部分10から形成された構造体1を得るために、2つのへき開した部分を基板12から除去するが、注入を受けた面は露出しており、他の面は堆積した材料で被覆されている。露出した面は、後における使用、例えばエピタキシーのために調製することができる。
【0033】
本発明の方法の様々な工程をここで詳細に説明する。
【0034】
本発明は、バルク基板10にも、複合材料基板、すなわち少なくとも2つの異なった材料の層から、または異なった結晶特徴を有する材料から形成された基板にも適用できる。
【0035】
バルク基板の場合、続いて堆積層で被覆しないこの基板の面を選択する。選択の問題は、基板の材料が極性である場合、または後で意図する使用、例えばエピタキシーに応じて、課せられる。例えば粗さ、または密度もしくは欠陥に応じて、当業者は、基板の面の一方または他方を選択することになろう。下記の説明では、「前面」は、基板の、露出されたままにする必要がある面を称し、「裏面」は、堆積材料で被覆する面を称する。
【0036】
支持基板とシード層とを含む複合材料基板上におけるエピタキシーの場合、一般的にエピタキシーされる材料の格子パラメータに適合するその格子パラメータにより選択される材料においては、前面はシード層の自由表面になる。
【0037】
基板10は、下記の材料、すなわち、Al2O3、ZnO、III/V族の材料(例えばGaAs、InP、InSb、GaSb、InN、GaN、AlN、p-AlN、P-BN、BNおよび例えばInGaN、AlGaN、InAlGaNのようなそれらの三元および四元合金)、あるいは例えばSi、SiC、p-SiC、Geおよびそれらの合金のようなIV族の材料からも選択することができる。複合材料基板の中で、例えばGaN、AlN、AlGaN及びInGaNのようなIII/N二元、三元、四元材料のエピタキシーに特に良く適合する材料として、例えばSopSiCまたはSiCopSiC型の基板を挙げることができる。
【0038】
基板10がバルクである場合、分離し易くするために、それを通して注入を行い、除去を意図する面上に補強材の機能を有する基板を結合することが好ましい。
【0039】
堆積させる材料は、下記の材料、すなわち非晶質Si、単結晶または多結晶Si、非晶質SiC、単または多結晶SiC、Ge、III/V族の材料(InP、GaAs、AlN、p-AlN...)、Al2O3、SiO2、Si3N4、ダイヤモンドの中から選択することができる。
【0040】
本発明が、MBEに使用することを意図する赤外線に対して透明な基板に関する場合、堆積させる材料は、赤外線を吸収させるために選択する。一般的に、後で行う熱処理の際に基板に対するより優れた密着性を確保するために、非晶質層よりも、結晶層を堆積させることが求められる。
【0041】
好ましくは、本発明は、MBEによりエピタキシーを行うために赤外線に対して原則的に、透明な基板に関する。
【0042】
これらの基板の材料は、例えばSiC、サファイア(Al2O3)、GaN、AlN(単結晶ならびに多結晶)、BN、ZnO、InSbまたはダイヤモンドの中から選択することができる。これらの材料は、複合材料基板10の場合に支持基板を形成する。
【0043】
事実、シード層が吸収性材料から形成されていても、複合材料基板10のアセンブリーは、原則的に、赤外線に対して透明なままである。その場合、基板10の、エピタキシーに使用する面と反対側の面上に堆積させる材料は、赤外線を吸収する材料、例えばシリコン(非晶質、単結晶、多結晶)、Ge、InPおよびGaAs、の中から選択される。
【0044】
脆化区域の形成
バルク基板12に関する図2Aで、ある材料の層を面の一方の上に堆積させようとする基板の調製後、本方法の第一工程は、この基板12中に、基板をそれに従ってへき開することができる脆化区域11を造り出すことである。
【0045】
典型的には、この脆化区域は、基板中にイオン種を注入することにより、形成される。当業者は、注入すべき基板に応じて、注入する種および脆化区域の所望の深さ、注入の条件(線量およびエネルギー)を決定することができる。
【0046】
脆化区域の深さは、露出した状態に維持する基板の面上に堆積させる材料の層と共に除去される基板の厚さを規定する。従って、注入は、最終的に堆積層により被覆する必要がない基板の面を通して行うのが好ましい。当業者には、一般的に、初期基板の材料損失を制限するように、脆化区域の深さを小さくすることが重要であろう。
【0047】
脆化区域により、基板12中に2つの層(つまり、最終的な構造体に属する基板10および残りの部分)を画定することができるが、これらの2層は、この段階では独立していない。
【0048】
へき開する適切な熱量を使用することは、本発明の範囲内である。熱量とは、規定された時間中に決められた範囲の温度を作用させることを意味する。
【0049】
へき開の熱量は、前に行った注入の条件および検討される材料によって異なる。典型的には、注入する種の線量を下げる場合、へき開を行うのにより多くの熱量を適用する必要がある。熱量は、当業者が決定することができる。
【0050】
上記の図2Aに例示する場合、基板10は、バルクであり、基板12もバルクである。
【0051】
実施の変形では、バルク基板10を得るために、図2Bに関して、基板10Aの、最終的に堆積層で覆う必要がない基板表面上に補強材10Bを結合させることにより、複合材料基板12を最初に形成することが有利である場合がある。
【0052】
この場合、脆化区域11は、基板10A中に、露出注入により、すなわちバルク基板を画定するために注入が超えるには厚すぎる補強材を結合する前に、形成する。補強材の存在により、基板10Aの、堆積層と共に除去されることになる薄い層に剛性を与えることにより、へき開した部分が基板12から分離し易くなる。
【0053】
基板10が複合材料である場合、やはり複合材料であり、図2Cに関して、支持基板10Cと、シード層10Dを画定するように予め脆化されたソース基板10Eとを含む基板12が形成される。注入は、結合の前に、ソース基板10Eを支持基板10C上に結合するのに役立つ酸化物層10Fを使用して行う(これに関しては、例1及び2の詳細な説明参照)。
【0054】
第一の場合:堆積により与えられる熱量が、へき開に必要な熱量より小さい
堆積とは、本明細書では、分子線エピタキシー(MBE)またはCVD、すなわちLPCVD(「低圧化学蒸着」)、PECVD(「プラズマ強化化学蒸着」)もしくはMOCVD(「金属有機化学蒸着」)、と呼ばれる技術を意味する。
【0055】
材料の堆積により与えられる熱量が、へき開の熱量より小さい場合、この方法は、順に
−脆化された基板上に材料を堆積、すなわち図3Aに関して、層21を基板12の前面に、層20を裏面に堆積させること、
−脆化された基板をへき開すること(図3Bに、脆化区域11の場所にある太い破線により、図式的に示す)、
−へき開した基板の2つの部分を分離すること
を含む。
【0056】
へき開は、原則的に熱量の作用により行うが、刃の挿入または機械的圧力の作用により仕上げることができる。
【0057】
第二の場合:堆積により与えられる熱量が、へき開に必要な熱量より大きい
へき開に必要な熱量が、材料の堆積により与えられる熱量より小さい場合、2つの異なった実施方法が可能である。
【0058】
・第一選択肢では、下記の工程、すなわち
−必要な熱量を与えることにより、(図4Aに図式的に示すように)脆化された基板12をへき開すること、
−面を選択せずに、層21を前面に、層20を裏面に堆積させる方法に適合する温度で、材料を堆積させること(図4B)、
−へき開した基板の2つの部分を分離すること
を順に行う。
【0059】
この場合、へき開が堆積工程の際に行われ、事実、堆積自体を考慮して作用させ、かつへき開に必要な熱量を与える温度勾配が、堆積工程の一部であることを考慮する。
【0060】
材料堆積の前に行うへき開は、この場合、破砕の後に、材料が隙間に定着するのを避けるために、2つのへき開した部分が分離しないように、脆化された基板を保持するのに好ましい。これに関して、堆積工程の際に、上側部分の重量下で、2つの部分が互いに接触した状態に維持されるように、基板12を水平に配置するのが好ましい。
【0061】
・第二選択肢は、下記の工程、すなわち
−脆化された基板上に材料を非晶質形態で堆積させること、
この目的のため、へき開に必要な熱量よりも小さい熱量を作用させる。図5Aに関して、非晶質層21Aが前面に、非晶質層20Aが裏面に形成される。
−へき開用の熱量を与えることにより、非晶質材料で被覆された脆化された基板のへき開を行うこと(図5B)、
−温度を増加することにより、堆積した材料を結晶化させ、図5Cに関して、結晶層21および20を基板の前面および裏面にそれぞれ形成すること、
−へき開した基板の2つの部分を分離すること
からなる。
【0062】
堆積およびへき開工程の順はどうであれ、材料堆積で与えられた熱量が、脆化された基板の破砕の熱量に貢献している。その上、堆積およびへき開の操作は、温度勾配および作用させる熱量の簡単な適合により、同じ筺体内で行うことができる。これによって、ただ一つの層によって被覆された基板10を得るのに必要な工程の数を制限することができる。しかし、破砕された材料が、堆積チャンバを汚染することがある粒子を生じる場合、へき開をチャンバの外で行うのが好ましい。へき開を堆積の前に行う場合、へき開した部分を堆積まで接触した状態に維持するように脆化された基板12を扱う。
【0063】
分離
最後に、全ての場合で、へき開した基板の2つの部分を分離する。この目的のために、吸引系を備え、基板を取り扱うことができる2個のピンセットを使用することができる。図6に関して、所望の面(裏面1B)上で堆積層20で被覆された基板10を含む最終的な構造体1と、他の面上で堆積層21で被覆された基板12の残りの部分を含む残りの構造体2とが得られる。この残りの構造体2は、廃棄することができるが、堆積層21を除去し、ソース基板12の残りの部分を再使用の前に研磨することにより、リサイクルすることもできる。
【0064】
後の工程
続いて、堆積層21を除去した最終的な構造体1の前面1Aは、後に続く使用(例えば分子線エピタキシー)を考慮して、調製することができる。
【0065】
複合構造体1を製造する場合、異なった層間の結合エネルギーを強化するために、この構造体の安定化アニールを行うことが好ましい。
【0066】
被覆されていない転写された層10Dが空気と接触して自然の酸化物を形成する材料(例えばシリコン)から形成されている場合(図2Cと比較)、安定化アニールの際にSiO2を形成する際の層の部分的消費を考慮して、所望の層10Dの最終的な厚さを得るために、ソース基板10E中の注入深さを規定する必要があり、酸化物を除去した後に転写された層10Dの最終的な厚さは、この事実から、転写された初期厚さより薄くなる。同様に、堆積層20の材料が、自然の酸化物を形成する材料である場合、酸化物の形成により消費される厚さを与え、従って、より大きな厚さの材料を堆積する必要がある。
【0067】
本発明の方法を行うための異なった例を説明する。
【0068】
例1:複合材料基板SopSiC上への裏面層の形成
変形1:堆積工程の際にへき開を行う
図7Aに関して、単結晶シリコンのソース基板1200を酸化し、厚さ約2000ÅのSiO2の層3000を形成する。
【0069】
図7Bに関して、シード層1000を画定するように、層3000を通してこのソース基板1200の中に注入して、脆化区域1100を形成する。注入エネルギーは、当業者により、得ようとする深さに応じて決定され、注入の線量は、5.10e16原子/cm2の領域にある。
【0070】
図7Cに関して、表面を好適な様式で調製した脆化された構造体12を形成するように、SiO2の層3000を介して、脆化されたソース基板1200を、多結晶SiCの支持体4000と接触させることにより、親水性結合を行う。
【0071】
この脆化された構造体12を堆積チャンバ内に、へき開後に2つの部分が分離しないように配置し、次いで、この構造体を350℃に加熱し、単結晶Siとp-SiCとの間の結合の第一安定化を行う。
【0072】
図7Dに関して、へき開が勾配の途中で起こるように温度350℃〜620℃にするための温度勾配を作用させる。
【0073】
図7Eに関して、面を選択せずに、620℃で多結晶シリコンの堆積を6時間30分行う。これによって、構造体12の面のそれぞれの上に、厚さ5マイクロメートルの2つの層20および21が形成される。
【0074】
チャンバを開く前に、適切な勾配で温度を下げる。
【0075】
図7Fに関して、例えばピンセットを使用し、へき開した部分を構造12から分離する。これによって、基板SopSiC10の単結晶シリコンの面が露出される。
【0076】
図7Gに関して、第二の安定化アニールを、水蒸気の雰囲気下、900℃で行い、これによって、2つの面のそれぞれの上にSiO2の層50が形成される。酸化物の形成は、SopSiC基板の2つの面、特に注入により脆化区域のレベルに劣化した単結晶シリコン上に存在するシリコンの消費により行われ、これによって欠陥濃度が高いこの区域が除去される。
【0077】
図7Hに関して、SiO2の層50は、HFの溶液を使用して除去し、HFは、SiO2に対して選択的であり、シリコンを攻撃しない。
【0078】
最後に、SopSiCの単結晶シリコンの表面を清浄し、後で行うエピタキシー用に調製する。
【0079】
単結晶シリコンの残りの基板は、例えばその2つの表面を研磨することにより、リサイクルすることができる。
【0080】
変形2:堆積後にへき開を行う
この方法は、第一変形の図7A〜7Cに関して説明した工程と同じ工程で開始する。
【0081】
図8Aに関して、脆化された基板を堆積チャンバ内に配置する。
【0082】
へき開は堆積の後に行うので、へき開した部分が分離する問題が生じることはなく、基板は、例えば垂直に配置することができる。基板を350℃に加熱し、単結晶シリコンとp-SiCとの間の密着性結合の第一安定化を行い、次いで、基板の両側に2つの層20Aおよび21Aを形成するように非晶質シリコンを350℃で堆積させる。
【0083】
図8Bに関して、620℃までの温度勾配を作用させ、これによって、脆化区域に従って基板12を破砕することができる。
【0084】
図8Cに関して、620℃までの温度勾配を続いて作用させ、層20および21における層20Aおよび21Aのシリコンを結晶化させる。
【0085】
図8Dに関して、構造体のへき開部分をチャンバの外側で分離する。SopSiC10の単結晶シリコンの前面には堆積物が無い。
【0086】
この方法は、前の変形の図7Gおよび7Hに関して説明した工程と同じ工程で完了する。
【0087】
基板SopSiCの裏面にp-Siの層を形成する、上に説明した2つの変形を行う特別な例で、本方法により、p-Siの裏面を使用してSopSiCの赤外線吸収効率を増加することができるが、これは、図1A〜1Fに関して説明した公知の方法と反対に、基板SopSiCとp-Siとの間にSiO2の絶縁層が全く存在しないためである(図1Fの層120と比較)。この効果は、支持基板が空気中で自然の酸化物を形成する全ての複合材料基板の製造に一般的な様式で確認することができる。
【0088】
さらに、SopSiCを製造するためのへき開する材料がシリコンであるので、へき開の際に形成される粒子はシリコンである。これらの粒子は、シリコンの堆積チャンバを汚染せず、へき開をチャンバ内で実行できるので有利である。
【0089】
例2:複合材料基板SiCopSiC上への多結晶Siの裏面層の形成
図9Aに関して、単結晶SiCの基板1200を、一方で、酸素下、1150℃で2時間酸化し、厚さ約5000オングストロームのSiO2の層3000を形成する。
【0090】
次いで、この層を通して、5.10e16原子/cm2の領域にある線量で注入することにより、この基板の中に脆化区域1100を形成する。エネルギーは、当業者により、所望の注入深さに応じて決定される。
【0091】
他方、多結晶SiCの支持体4000の前面上に厚さ5000ÅのSiO2酸化物の層6000を堆積させる。
【0092】
次に、酸化物層3000および6000の表面を、結合のために活性化させる。この目的のため、酸化物3000の研磨を行い、500Åを除去し、粗さを抑える。同様に、酸化物6000の研磨を行い、2500Åを除去し、表面を平滑にする。研磨技術は、当業者には良く知られており、特に、化学的-機械的研磨(CMP)を行うことができる。
【0093】
SiCの基板1200およびp-SiCの支持体4000を酸化物層3000および6000により結合させ、2つの調製された面を接触させる。得られた構造体を図9Aに示す。
【0094】
図9Bに関して、脆化された構造体12を堆積チャンバ内に配置する。構造体12は、垂直または水平に配置することができる。構造体12の各面上に厚さ5マイクロメートルの2つの層20および21を形成するように620℃までの温度勾配を作用させ、多結晶シリコンを6時間30分堆積させる。
【0095】
図9Cに関して、1000℃に加熱し、単結晶SiCの基板1200をへき開させる。
【0096】
図9Dに関して、2つのへき開した部分をチャンバの外側で分離する。これによって、基板10(SiCopSiC)が得られ、その、単結晶SiCの前面が露出される。
【0097】
後に続く工程は、第一例の変形1の図7Gおよび7Hに関して説明した工程と同じである。
【0098】
単結晶SiCのソース基板1200の残りの部分は、堆積したシリコン(層21)を分離し、表面を研磨することにより、リサイクルすることができる。
【0099】
例3:単結晶SiCのバルク基板上への多結晶Siの裏面層の形成
図2に関して、SiCの基板12の表面の近くに位置する脆化区域を、5.10e16原子/cm2の領域にある線量で注入することにより形成し、脆化された基板を堆積チャンバ内に配置する。
【0100】
図3Aに関して、面を区別せずに、多結晶Siの堆積を温度620℃で行う。それによって、2つの層20および21が脆化された基板12上に形成される。
【0101】
図3Bに関して、脆化区域11に沿って基板12をへき開させるために温度勾配を900℃まで作用させる。
【0102】
図6に関して、2つのへき開した部分を堆積チャンバの外側で分離し、基板10を回収し、その面1Bを堆積した多結晶Si(層20)で被覆し、他の面1Aを露出させ、後で行うエピタキシー用に調製することができる。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板と、前記基板の片側上に材料を堆積させることにより形成された層とを含む構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最先端技術においては、例えばPECVD(「プラズマ化学蒸着(Plasma-Enhanced Chemical Vapour Deposition)」の頭字語)のような適合技術により薄層が堆積される基板の側を選択できることが示されている。しかし、この方法は、複雑であり、金属汚染を引き起こすことがあり、かつ堆積層が分離することがある。
【0003】
非選択的技術を使用すると、基板の両面上に堆積が起こる。次いで、望んでいない面上に堆積した層を除去することができる。この目的のため、例えば、保存したい層を別の材料上に結合させてその層を保護し、次いで、保護されていない側上の層を除去するためにエッチングを行う。しかし、この層の性質に応じて(特に、この層がSiN、AlNまたはダイヤモンドである場合)、その除去は非常に困難なことがあり、基板の材料と比較して、選択性がない。
【0004】
RIEエッチング(「反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)」の頭字語)を使用することもでき、この方法の説明は、Stanley Wolf及びRichard N. Tauberの研究「VLSI Eraのためのシリコン処理、Vol.1: 処理技術(Silicon Processing for the VLSI Era, Vol.1: Process Technology)」, Lattice Press、第2版、(1999年11月1日)、ISBN-10: 0961672161、「14、VLSI用のドライエッチング(Dry Etching for VLSI)」に記載されている。このプラズマにより支援されるドライエッチングは、清浄にすべき面を、他の面を保護する必要無しに、選択することができるが、その効率は、除去する材料に依存する。その上、この比較的困難な技術は、例えばNF3またはSF6のような毒性が非常に高いガスおよび汚染物質を使用する必要がある。従って、特殊な操作条件、特に特殊な隔離を伴う。
【0005】
この問題は、例えばSopSiC(「多結晶SiC上のシリコン(Silicon on Polycrystalline SiC)の頭字語」)またはSiCopSiC(「多結晶SiC上の炭化ケイ素(Silicon on Polycrystalline SiC)の頭字語」)基板の裏面上に多結晶シリコンの層を形成する際に起こる。
【0006】
SopSiC基板は、主として赤外放射線に透明であるので、前面上で分子線エピタキシー(MBE)を行うのに好適な温度を得るために、この基板の裏面を通して十分に加熱することはできない。
【0007】
裏面上に堆積させた多結晶シリコンの層は、赤外放射線を吸収し、高温に加熱することができ、それによって、エピタキシーを達成するのに必要な温度に到達するようにSopSiC基板を伝導により加熱することができる。
【0008】
これに関しては、米国特許第5,296,385号、米国特許出願公開第2004/0152312号、欧州特許第0449524号、国際公開第2006/082467号および仏国特許第0754172号を参照するとよい。
【0009】
現在の方法では、SopSiC基板上の面を選択せずに、すなわち基板の両面上に、多結晶シリコンを堆積させ、次いでエッチングを行い、望ましくない面上に形成された層を除去する。
【0010】
図1Aに関して、単結晶シリコンの基板520中への注入により、層500と境界を定める脆化区域510が形成される。
【0011】
図1Bに関して、SopSiCとして指定される構造体100は、SiO2の結合層300により、単結晶シリコンの基板520を多結晶SiC(p-SiCとも呼ばれる)の基板400上に結合し、層500を支持基板400上に転写することにより、形成される。
【0012】
図1Cに関して、構造体100の結合は、水蒸気の雰囲気下で温度約800℃〜1200℃で、アニールすることにより安定化され、この温度は、シリコンおよびSiCの熱酸化により、すなわち層400および500の表面上にあるシリコンの消費により、構造体100の両側におけるSiO2の層110及び120の形成に貢献する。
【0013】
図1Dに関して、次に、前に得られた構造体上の面を区別せずに、多結晶シリコン(p-Siとも呼ばれる)の層200を堆積させる。この目的のため、LPCVD技術(低圧化学蒸着)を温度620℃で用いることができる。
【0014】
図1Eに関して、単結晶シリコンの層500の側に位置するp-Siの層200を、SopSiC構造体からRIEエッチングにより除去する。
【0015】
図1Fに関して、単結晶シリコン層500の側に位置するSiO2の層110を、SiO2を選択的に溶解させるHF溶液の作用により、SopSiC構造体から除去し、シリコンを無傷で残す。
【0016】
最後に、単結晶シリコンの層500の表面を洗浄し、MBEによるエピタキシー用に調製する。
【0017】
この方法は、工程数が多く、選択的エッチングを行うために複雑で経費のかかる技術を使用していることが分かる。
【0018】
その上、強力な断熱材であるSiO2の層120が、多結晶シリコンの裏面層200と多結晶SiCの層400との間に形成され、この裏面層による加熱の効率を低下させる。このSiO2層120を小さくするためには、補足的なエッチング工程が必要であり、実行するのに非常に経費がかかる。
【0019】
従って、本発明の目的の一つは、簡単で、実行するのにあまりコストをかけずに低コストで実行でき、RIE型のエッチングを行わずに済む、非選択的な堆積技術を使用し、基板の片面上にのみ材料の層が堆積している構造体を製造する方法を提案することである。
【発明の概要】
【0020】
本発明によれば、電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板と前記基板の一方の面上に材料を堆積させることにより形成された層とを含む構造体の製造方法であって、
前記基板の一面が堆積した材料の層により覆われ、前記基板の他の面が露出している前記構造体を形成するように、
−一方で前記基板を、他方で残りの部分を画定する脆化区域を含む脆化された基板を形成する工程と、
−前記脆化された基板の2つの面のそれぞれに前記材料の層を堆積させる工程と、
−前記脆化された基板をへき開(cleavage)する工程と
を含むことを特徴とする、方法が提供される。露出している、とは本発明では、前記基板の前記面が層により覆われていないことを意味する。
【0021】
一実施態様では、へき開の熱量(thermal budget)が、堆積により与えられる熱量よりも大きい。従って、堆積工程は、へき開工程の前に行う。
【0022】
第二の実施態様では、へき開の熱量が、堆積により与えられる熱量よりも少ない。
【0023】
従って、へき開工程は、堆積工程の最中に行うことができる。脆化された基板は、へき開した部分が互いに分離しないように、保持するのが好ましく、特に有利な方法では、堆積工程の際に基板を水平に保持する。
【0024】
好ましい実施態様では、へき開工程は、層の材料の堆積チャンバ内で行う。
【0025】
本発明の実施の変形では、本方法は、
−前記脆化された基板の両面上に前記材料を非晶質形態で堆積させる工程と、
−前記脆化された基板のへき開工程と、
−前記材料を結晶化するのに好適な温度でアニールする工程と
を連続的に含む。
【0026】
本発明の他の可能な特徴により、
−前記脆化区域が、前記基板中へのイオン種の注入により形成され、
−前記基板が、支持基板およびシード層を含む複合材料基板であり、
−前記基板が、下記の材料、すなわちAl2O3、ZnO、III/V族の材料およびそれらの三元および四元合金、Si、SiC、多結晶SiC、ダイヤモンド、Geおよびそれらの合金の一種類を含み、
−前記堆積材料が、下記の材料、すなわち非晶質Si、単結晶Si、多結晶Si、Ge、SiC、多結晶SiC、非晶質SiC、III/V族の材料及びそれらの三元及び四元合金、Al2O3、SiO2、Si3N4およびダイヤモンドの中から選択され、
−前記基板が、SopSiCまたはSiCopSiC型の複合構造体であり、堆積材料の層が多結晶シリコンであり、
−前記方法が、こうして形成された前記構造体の前記基板の前記露出された面上に分子線エピタキシーを行うことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の他の特徴、目的および効果は、下記の説明を読むことにより、かつ添付の図面から、より明確になる。
【図1A】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1B】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1C】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1D】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1E】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図1F】図1A〜1Fは、先行技術の非選択的堆積方法の工程を例示する。
【図2A】図2A〜2Cは、ソース基板における脆化区域の形成を例示する。
【図2B】図2A〜2Cは、ソース基板における脆化区域の形成を例示する。
【図2C】図2A〜2Cは、ソース基板における脆化区域の形成を例示する。
【図3A】図3A及び3Bは、本発明の第一実施態様の工程を例示する。
【図3B】図3A及び3Bは、本発明の第一実施態様の工程を例示する。
【図4A】図4A及び4Bは、本発明の第二実施態様の工程を例示する。
【図4B】図4A及び4Bは、本発明の第二実施態様の工程を例示する。
【図5A】図5A〜5Cは、本発明の第三実施態様の工程を例示する。
【図5B】図5A〜5Cは、本発明の第三実施態様の工程を例示する。
【図5C】図5A〜5Cは、本発明の第三実施態様の工程を例示する。
【図6】図6は、本発明の方法により得られる構造体およびその構造および残りの構造を例示する。
【図7A】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7B】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7C】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7D】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7E】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7F】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7G】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図7H】図7A〜7Hは、本発明の第一変形による、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第一例を例示する。
【図8A】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図8B】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図8C】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図8D】図8A〜8Dは、SopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用の第二変形を例示する。
【図9A】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【図9B】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【図9C】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【図9D】図9A〜9Dは、SiCopSiC基板上へのp-Si裏面層の堆積の本発明の応用例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般的に、本発明は、バルクまたは複合材料(すなわち異なった材料の複数の層を含む)でもよい基板12の製造を含み、基板12は脆化区域11を含み、その区域に従って、基板12はへき開されることができる。
【0029】
「へき開」(cleavage)または「破砕」は、基板を、最初の基板の表面に対して平行な平面に従って、2つの層に分割し、これらの層を後で除去または分離できるようにする作用を意味し、それによって形成された2つの層は、独立しているが、毛管現象または吸引効果により、それらの間に特定の密着性を創出することができる。従って、除去工程は、へき開の後に来る工程であり、へき開とは区別される。以下の説明で、へき開した基板という時は、それらの2つの層は互いにまだ、接触していると理解されなければならない。
【0030】
脆化区域を形成した後に、その脆化された基板の2つの面上に材料を堆積させ、脆化された基板をへき開する。
【0031】
以下に詳細に説明する場合に応じて、へき開工程は、堆積工程の最中または後に行うことができる。
【0032】
最後に、上記の堆積およびへき開工程に続いて、基板12の部分10から形成された構造体1を得るために、2つのへき開した部分を基板12から除去するが、注入を受けた面は露出しており、他の面は堆積した材料で被覆されている。露出した面は、後における使用、例えばエピタキシーのために調製することができる。
【0033】
本発明の方法の様々な工程をここで詳細に説明する。
【0034】
本発明は、バルク基板10にも、複合材料基板、すなわち少なくとも2つの異なった材料の層から、または異なった結晶特徴を有する材料から形成された基板にも適用できる。
【0035】
バルク基板の場合、続いて堆積層で被覆しないこの基板の面を選択する。選択の問題は、基板の材料が極性である場合、または後で意図する使用、例えばエピタキシーに応じて、課せられる。例えば粗さ、または密度もしくは欠陥に応じて、当業者は、基板の面の一方または他方を選択することになろう。下記の説明では、「前面」は、基板の、露出されたままにする必要がある面を称し、「裏面」は、堆積材料で被覆する面を称する。
【0036】
支持基板とシード層とを含む複合材料基板上におけるエピタキシーの場合、一般的にエピタキシーされる材料の格子パラメータに適合するその格子パラメータにより選択される材料においては、前面はシード層の自由表面になる。
【0037】
基板10は、下記の材料、すなわち、Al2O3、ZnO、III/V族の材料(例えばGaAs、InP、InSb、GaSb、InN、GaN、AlN、p-AlN、P-BN、BNおよび例えばInGaN、AlGaN、InAlGaNのようなそれらの三元および四元合金)、あるいは例えばSi、SiC、p-SiC、Geおよびそれらの合金のようなIV族の材料からも選択することができる。複合材料基板の中で、例えばGaN、AlN、AlGaN及びInGaNのようなIII/N二元、三元、四元材料のエピタキシーに特に良く適合する材料として、例えばSopSiCまたはSiCopSiC型の基板を挙げることができる。
【0038】
基板10がバルクである場合、分離し易くするために、それを通して注入を行い、除去を意図する面上に補強材の機能を有する基板を結合することが好ましい。
【0039】
堆積させる材料は、下記の材料、すなわち非晶質Si、単結晶または多結晶Si、非晶質SiC、単または多結晶SiC、Ge、III/V族の材料(InP、GaAs、AlN、p-AlN...)、Al2O3、SiO2、Si3N4、ダイヤモンドの中から選択することができる。
【0040】
本発明が、MBEに使用することを意図する赤外線に対して透明な基板に関する場合、堆積させる材料は、赤外線を吸収させるために選択する。一般的に、後で行う熱処理の際に基板に対するより優れた密着性を確保するために、非晶質層よりも、結晶層を堆積させることが求められる。
【0041】
好ましくは、本発明は、MBEによりエピタキシーを行うために赤外線に対して原則的に、透明な基板に関する。
【0042】
これらの基板の材料は、例えばSiC、サファイア(Al2O3)、GaN、AlN(単結晶ならびに多結晶)、BN、ZnO、InSbまたはダイヤモンドの中から選択することができる。これらの材料は、複合材料基板10の場合に支持基板を形成する。
【0043】
事実、シード層が吸収性材料から形成されていても、複合材料基板10のアセンブリーは、原則的に、赤外線に対して透明なままである。その場合、基板10の、エピタキシーに使用する面と反対側の面上に堆積させる材料は、赤外線を吸収する材料、例えばシリコン(非晶質、単結晶、多結晶)、Ge、InPおよびGaAs、の中から選択される。
【0044】
脆化区域の形成
バルク基板12に関する図2Aで、ある材料の層を面の一方の上に堆積させようとする基板の調製後、本方法の第一工程は、この基板12中に、基板をそれに従ってへき開することができる脆化区域11を造り出すことである。
【0045】
典型的には、この脆化区域は、基板中にイオン種を注入することにより、形成される。当業者は、注入すべき基板に応じて、注入する種および脆化区域の所望の深さ、注入の条件(線量およびエネルギー)を決定することができる。
【0046】
脆化区域の深さは、露出した状態に維持する基板の面上に堆積させる材料の層と共に除去される基板の厚さを規定する。従って、注入は、最終的に堆積層により被覆する必要がない基板の面を通して行うのが好ましい。当業者には、一般的に、初期基板の材料損失を制限するように、脆化区域の深さを小さくすることが重要であろう。
【0047】
脆化区域により、基板12中に2つの層(つまり、最終的な構造体に属する基板10および残りの部分)を画定することができるが、これらの2層は、この段階では独立していない。
【0048】
へき開する適切な熱量を使用することは、本発明の範囲内である。熱量とは、規定された時間中に決められた範囲の温度を作用させることを意味する。
【0049】
へき開の熱量は、前に行った注入の条件および検討される材料によって異なる。典型的には、注入する種の線量を下げる場合、へき開を行うのにより多くの熱量を適用する必要がある。熱量は、当業者が決定することができる。
【0050】
上記の図2Aに例示する場合、基板10は、バルクであり、基板12もバルクである。
【0051】
実施の変形では、バルク基板10を得るために、図2Bに関して、基板10Aの、最終的に堆積層で覆う必要がない基板表面上に補強材10Bを結合させることにより、複合材料基板12を最初に形成することが有利である場合がある。
【0052】
この場合、脆化区域11は、基板10A中に、露出注入により、すなわちバルク基板を画定するために注入が超えるには厚すぎる補強材を結合する前に、形成する。補強材の存在により、基板10Aの、堆積層と共に除去されることになる薄い層に剛性を与えることにより、へき開した部分が基板12から分離し易くなる。
【0053】
基板10が複合材料である場合、やはり複合材料であり、図2Cに関して、支持基板10Cと、シード層10Dを画定するように予め脆化されたソース基板10Eとを含む基板12が形成される。注入は、結合の前に、ソース基板10Eを支持基板10C上に結合するのに役立つ酸化物層10Fを使用して行う(これに関しては、例1及び2の詳細な説明参照)。
【0054】
第一の場合:堆積により与えられる熱量が、へき開に必要な熱量より小さい
堆積とは、本明細書では、分子線エピタキシー(MBE)またはCVD、すなわちLPCVD(「低圧化学蒸着」)、PECVD(「プラズマ強化化学蒸着」)もしくはMOCVD(「金属有機化学蒸着」)、と呼ばれる技術を意味する。
【0055】
材料の堆積により与えられる熱量が、へき開の熱量より小さい場合、この方法は、順に
−脆化された基板上に材料を堆積、すなわち図3Aに関して、層21を基板12の前面に、層20を裏面に堆積させること、
−脆化された基板をへき開すること(図3Bに、脆化区域11の場所にある太い破線により、図式的に示す)、
−へき開した基板の2つの部分を分離すること
を含む。
【0056】
へき開は、原則的に熱量の作用により行うが、刃の挿入または機械的圧力の作用により仕上げることができる。
【0057】
第二の場合:堆積により与えられる熱量が、へき開に必要な熱量より大きい
へき開に必要な熱量が、材料の堆積により与えられる熱量より小さい場合、2つの異なった実施方法が可能である。
【0058】
・第一選択肢では、下記の工程、すなわち
−必要な熱量を与えることにより、(図4Aに図式的に示すように)脆化された基板12をへき開すること、
−面を選択せずに、層21を前面に、層20を裏面に堆積させる方法に適合する温度で、材料を堆積させること(図4B)、
−へき開した基板の2つの部分を分離すること
を順に行う。
【0059】
この場合、へき開が堆積工程の際に行われ、事実、堆積自体を考慮して作用させ、かつへき開に必要な熱量を与える温度勾配が、堆積工程の一部であることを考慮する。
【0060】
材料堆積の前に行うへき開は、この場合、破砕の後に、材料が隙間に定着するのを避けるために、2つのへき開した部分が分離しないように、脆化された基板を保持するのに好ましい。これに関して、堆積工程の際に、上側部分の重量下で、2つの部分が互いに接触した状態に維持されるように、基板12を水平に配置するのが好ましい。
【0061】
・第二選択肢は、下記の工程、すなわち
−脆化された基板上に材料を非晶質形態で堆積させること、
この目的のため、へき開に必要な熱量よりも小さい熱量を作用させる。図5Aに関して、非晶質層21Aが前面に、非晶質層20Aが裏面に形成される。
−へき開用の熱量を与えることにより、非晶質材料で被覆された脆化された基板のへき開を行うこと(図5B)、
−温度を増加することにより、堆積した材料を結晶化させ、図5Cに関して、結晶層21および20を基板の前面および裏面にそれぞれ形成すること、
−へき開した基板の2つの部分を分離すること
からなる。
【0062】
堆積およびへき開工程の順はどうであれ、材料堆積で与えられた熱量が、脆化された基板の破砕の熱量に貢献している。その上、堆積およびへき開の操作は、温度勾配および作用させる熱量の簡単な適合により、同じ筺体内で行うことができる。これによって、ただ一つの層によって被覆された基板10を得るのに必要な工程の数を制限することができる。しかし、破砕された材料が、堆積チャンバを汚染することがある粒子を生じる場合、へき開をチャンバの外で行うのが好ましい。へき開を堆積の前に行う場合、へき開した部分を堆積まで接触した状態に維持するように脆化された基板12を扱う。
【0063】
分離
最後に、全ての場合で、へき開した基板の2つの部分を分離する。この目的のために、吸引系を備え、基板を取り扱うことができる2個のピンセットを使用することができる。図6に関して、所望の面(裏面1B)上で堆積層20で被覆された基板10を含む最終的な構造体1と、他の面上で堆積層21で被覆された基板12の残りの部分を含む残りの構造体2とが得られる。この残りの構造体2は、廃棄することができるが、堆積層21を除去し、ソース基板12の残りの部分を再使用の前に研磨することにより、リサイクルすることもできる。
【0064】
後の工程
続いて、堆積層21を除去した最終的な構造体1の前面1Aは、後に続く使用(例えば分子線エピタキシー)を考慮して、調製することができる。
【0065】
複合構造体1を製造する場合、異なった層間の結合エネルギーを強化するために、この構造体の安定化アニールを行うことが好ましい。
【0066】
被覆されていない転写された層10Dが空気と接触して自然の酸化物を形成する材料(例えばシリコン)から形成されている場合(図2Cと比較)、安定化アニールの際にSiO2を形成する際の層の部分的消費を考慮して、所望の層10Dの最終的な厚さを得るために、ソース基板10E中の注入深さを規定する必要があり、酸化物を除去した後に転写された層10Dの最終的な厚さは、この事実から、転写された初期厚さより薄くなる。同様に、堆積層20の材料が、自然の酸化物を形成する材料である場合、酸化物の形成により消費される厚さを与え、従って、より大きな厚さの材料を堆積する必要がある。
【0067】
本発明の方法を行うための異なった例を説明する。
【0068】
例1:複合材料基板SopSiC上への裏面層の形成
変形1:堆積工程の際にへき開を行う
図7Aに関して、単結晶シリコンのソース基板1200を酸化し、厚さ約2000ÅのSiO2の層3000を形成する。
【0069】
図7Bに関して、シード層1000を画定するように、層3000を通してこのソース基板1200の中に注入して、脆化区域1100を形成する。注入エネルギーは、当業者により、得ようとする深さに応じて決定され、注入の線量は、5.10e16原子/cm2の領域にある。
【0070】
図7Cに関して、表面を好適な様式で調製した脆化された構造体12を形成するように、SiO2の層3000を介して、脆化されたソース基板1200を、多結晶SiCの支持体4000と接触させることにより、親水性結合を行う。
【0071】
この脆化された構造体12を堆積チャンバ内に、へき開後に2つの部分が分離しないように配置し、次いで、この構造体を350℃に加熱し、単結晶Siとp-SiCとの間の結合の第一安定化を行う。
【0072】
図7Dに関して、へき開が勾配の途中で起こるように温度350℃〜620℃にするための温度勾配を作用させる。
【0073】
図7Eに関して、面を選択せずに、620℃で多結晶シリコンの堆積を6時間30分行う。これによって、構造体12の面のそれぞれの上に、厚さ5マイクロメートルの2つの層20および21が形成される。
【0074】
チャンバを開く前に、適切な勾配で温度を下げる。
【0075】
図7Fに関して、例えばピンセットを使用し、へき開した部分を構造12から分離する。これによって、基板SopSiC10の単結晶シリコンの面が露出される。
【0076】
図7Gに関して、第二の安定化アニールを、水蒸気の雰囲気下、900℃で行い、これによって、2つの面のそれぞれの上にSiO2の層50が形成される。酸化物の形成は、SopSiC基板の2つの面、特に注入により脆化区域のレベルに劣化した単結晶シリコン上に存在するシリコンの消費により行われ、これによって欠陥濃度が高いこの区域が除去される。
【0077】
図7Hに関して、SiO2の層50は、HFの溶液を使用して除去し、HFは、SiO2に対して選択的であり、シリコンを攻撃しない。
【0078】
最後に、SopSiCの単結晶シリコンの表面を清浄し、後で行うエピタキシー用に調製する。
【0079】
単結晶シリコンの残りの基板は、例えばその2つの表面を研磨することにより、リサイクルすることができる。
【0080】
変形2:堆積後にへき開を行う
この方法は、第一変形の図7A〜7Cに関して説明した工程と同じ工程で開始する。
【0081】
図8Aに関して、脆化された基板を堆積チャンバ内に配置する。
【0082】
へき開は堆積の後に行うので、へき開した部分が分離する問題が生じることはなく、基板は、例えば垂直に配置することができる。基板を350℃に加熱し、単結晶シリコンとp-SiCとの間の密着性結合の第一安定化を行い、次いで、基板の両側に2つの層20Aおよび21Aを形成するように非晶質シリコンを350℃で堆積させる。
【0083】
図8Bに関して、620℃までの温度勾配を作用させ、これによって、脆化区域に従って基板12を破砕することができる。
【0084】
図8Cに関して、620℃までの温度勾配を続いて作用させ、層20および21における層20Aおよび21Aのシリコンを結晶化させる。
【0085】
図8Dに関して、構造体のへき開部分をチャンバの外側で分離する。SopSiC10の単結晶シリコンの前面には堆積物が無い。
【0086】
この方法は、前の変形の図7Gおよび7Hに関して説明した工程と同じ工程で完了する。
【0087】
基板SopSiCの裏面にp-Siの層を形成する、上に説明した2つの変形を行う特別な例で、本方法により、p-Siの裏面を使用してSopSiCの赤外線吸収効率を増加することができるが、これは、図1A〜1Fに関して説明した公知の方法と反対に、基板SopSiCとp-Siとの間にSiO2の絶縁層が全く存在しないためである(図1Fの層120と比較)。この効果は、支持基板が空気中で自然の酸化物を形成する全ての複合材料基板の製造に一般的な様式で確認することができる。
【0088】
さらに、SopSiCを製造するためのへき開する材料がシリコンであるので、へき開の際に形成される粒子はシリコンである。これらの粒子は、シリコンの堆積チャンバを汚染せず、へき開をチャンバ内で実行できるので有利である。
【0089】
例2:複合材料基板SiCopSiC上への多結晶Siの裏面層の形成
図9Aに関して、単結晶SiCの基板1200を、一方で、酸素下、1150℃で2時間酸化し、厚さ約5000オングストロームのSiO2の層3000を形成する。
【0090】
次いで、この層を通して、5.10e16原子/cm2の領域にある線量で注入することにより、この基板の中に脆化区域1100を形成する。エネルギーは、当業者により、所望の注入深さに応じて決定される。
【0091】
他方、多結晶SiCの支持体4000の前面上に厚さ5000ÅのSiO2酸化物の層6000を堆積させる。
【0092】
次に、酸化物層3000および6000の表面を、結合のために活性化させる。この目的のため、酸化物3000の研磨を行い、500Åを除去し、粗さを抑える。同様に、酸化物6000の研磨を行い、2500Åを除去し、表面を平滑にする。研磨技術は、当業者には良く知られており、特に、化学的-機械的研磨(CMP)を行うことができる。
【0093】
SiCの基板1200およびp-SiCの支持体4000を酸化物層3000および6000により結合させ、2つの調製された面を接触させる。得られた構造体を図9Aに示す。
【0094】
図9Bに関して、脆化された構造体12を堆積チャンバ内に配置する。構造体12は、垂直または水平に配置することができる。構造体12の各面上に厚さ5マイクロメートルの2つの層20および21を形成するように620℃までの温度勾配を作用させ、多結晶シリコンを6時間30分堆積させる。
【0095】
図9Cに関して、1000℃に加熱し、単結晶SiCの基板1200をへき開させる。
【0096】
図9Dに関して、2つのへき開した部分をチャンバの外側で分離する。これによって、基板10(SiCopSiC)が得られ、その、単結晶SiCの前面が露出される。
【0097】
後に続く工程は、第一例の変形1の図7Gおよび7Hに関して説明した工程と同じである。
【0098】
単結晶SiCのソース基板1200の残りの部分は、堆積したシリコン(層21)を分離し、表面を研磨することにより、リサイクルすることができる。
【0099】
例3:単結晶SiCのバルク基板上への多結晶Siの裏面層の形成
図2に関して、SiCの基板12の表面の近くに位置する脆化区域を、5.10e16原子/cm2の領域にある線量で注入することにより形成し、脆化された基板を堆積チャンバ内に配置する。
【0100】
図3Aに関して、面を区別せずに、多結晶Siの堆積を温度620℃で行う。それによって、2つの層20および21が脆化された基板12上に形成される。
【0101】
図3Bに関して、脆化区域11に沿って基板12をへき開させるために温度勾配を900℃まで作用させる。
【0102】
図6に関して、2つのへき開した部分を堆積チャンバの外側で分離し、基板10を回収し、その面1Bを堆積した多結晶Si(層20)で被覆し、他の面1Aを露出させ、後で行うエピタキシー用に調製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板(10)と前記基板(10)の一方の面上に材料を堆積させることにより形成された層(20)とを含む構造体(1)の製造方法であって、
前記基板(10)の一面(1B)が前記堆積した材料の層(20)により覆われ、前記基板の他の面(1A)が露出している前記構造体(1)を形成するように、
−一方で前記基板(10)を、他方で残りの部分を画定する脆化区域(11)を含む脆化された基板(12)を形成する工程と、
−前記脆化された基板(12)の2つの面のそれぞれに前記材料の層(20、21)を堆積させる工程と、
−前記脆化された基板(12)をへき開する工程と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記へき開の熱量が、前記堆積により与えられる熱量よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積工程が、前記へき開工程の前に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記へき開の熱量が、前記堆積により与えられる熱量よりも少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記へき開工程が、前記堆積工程の最中に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脆化された基板(12)が、前記堆積工程の間に、へき開した部分が互いに分離しないように、保持される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記脆化された基板(12)が、前記堆積工程の間、水平に保持される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記へき開工程が、前記層(20、21)の材料の堆積チャンバ内で行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
−脆化された基板(12)の両面上に材料(20)を非晶質形態で堆積させる工程と、
−前記脆化された基板(12)のへき開工程と、
−前記材料(20)を結晶化するのに好適な温度でアニールする工程と
を連続的に含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記脆化区域(11)が、前記基板(12)中へのイオン種の注入により形成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(10)が、支持基板(10C)とシード層(10D)とを含む複合材料基板である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板(10)が、次の材料、すなわちAl2O3、ZnO、III/V族の材料およびそれらの三元および四元合金、Si、SiC、多結晶SiC、ダイヤモンド、Geおよびそれらの合金の一種を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
堆積される前記材料が、次の材料、すなわち非晶質Si、単結晶Si、多結晶Si、Ge、SiC、多結晶SiC、非晶質SiC、III/V族の材料およびそれらの三元および四元合金、Al2O3、SiO2、Si3N4およびダイヤモンドの中から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板(10)が、SopSiCまたはSiCopSiC型の複合材料構造体であり、堆積材料の前記層(20)が多結晶シリコンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造体(1)の前記基板(10)の前記露出された面(1A)上に分子線エピタキシーが行われる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
電子工学、光学、光電子工学または光起電力工学用の、基板(10)と前記基板(10)の一方の面上に材料を堆積させることにより形成された層(20)とを含む構造体(1)の製造方法であって、
前記基板(10)の一面(1B)が前記堆積した材料の層(20)により覆われ、前記基板の他の面(1A)が露出している前記構造体(1)を形成するように、
−一方で前記基板(10)を、他方で残りの部分を画定する脆化区域(11)を含む脆化された基板(12)を形成する工程と、
−前記脆化された基板(12)の2つの面のそれぞれに前記材料の層(20、21)を堆積させる工程と、
−前記脆化された基板(12)をへき開する工程と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記へき開の熱量が、前記堆積により与えられる熱量よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積工程が、前記へき開工程の前に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記へき開の熱量が、前記堆積により与えられる熱量よりも少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記へき開工程が、前記堆積工程の最中に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脆化された基板(12)が、前記堆積工程の間に、へき開した部分が互いに分離しないように、保持される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記脆化された基板(12)が、前記堆積工程の間、水平に保持される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記へき開工程が、前記層(20、21)の材料の堆積チャンバ内で行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
−脆化された基板(12)の両面上に材料(20)を非晶質形態で堆積させる工程と、
−前記脆化された基板(12)のへき開工程と、
−前記材料(20)を結晶化するのに好適な温度でアニールする工程と
を連続的に含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記脆化区域(11)が、前記基板(12)中へのイオン種の注入により形成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(10)が、支持基板(10C)とシード層(10D)とを含む複合材料基板である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板(10)が、次の材料、すなわちAl2O3、ZnO、III/V族の材料およびそれらの三元および四元合金、Si、SiC、多結晶SiC、ダイヤモンド、Geおよびそれらの合金の一種を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
堆積される前記材料が、次の材料、すなわち非晶質Si、単結晶Si、多結晶Si、Ge、SiC、多結晶SiC、非晶質SiC、III/V族の材料およびそれらの三元および四元合金、Al2O3、SiO2、Si3N4およびダイヤモンドの中から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板(10)が、SopSiCまたはSiCopSiC型の複合材料構造体であり、堆積材料の前記層(20)が多結晶シリコンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造体(1)の前記基板(10)の前記露出された面(1A)上に分子線エピタキシーが行われる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【公表番号】特表2010−541230(P2010−541230A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526267(P2010−526267)
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062670
【国際公開番号】WO2009/040337
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(503368410)エス.オー.アイ.テック、シリコン、オン、インシュレター、テクノロジーズ (49)
【氏名又は名称原語表記】S.O.I.TEC SILICON ON INSULATOR TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062670
【国際公開番号】WO2009/040337
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(503368410)エス.オー.アイ.テック、シリコン、オン、インシュレター、テクノロジーズ (49)
【氏名又は名称原語表記】S.O.I.TEC SILICON ON INSULATOR TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】
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