説明

基板のプラズマ処理方法

【課題】プラズマ処理中に基板の縁部およびトレイに付着した副生成物の除去を行って、製品の品質を向上させる。
【解決手段】基板が収容される複数の基板収容孔が設けられ、この基板収容孔の内壁から突出する基板支持部を有するトレイを基板ステージのトレイ支持部上に載置するとともにそれぞれの基板保持部上に基板を載置して、基板保持部の端縁よりはみ出した基板の縁部と基板支持部とを離間させた状態とする基板載置工程と、チャンバ内を減圧するとともに処理ガスを供給して、それぞれの基板に対するプラズマ処理を行う第1プラズマ処理工程と、トレイおよびそれぞれの基板が基板ステージ上に載置された状態にて、チャンバ内を減圧するとともに処理ガスを供給してプラズマ処理を実施し、第1プラズマ処理工程の実施により基板の縁部と基板支持部とに付着した副生成物を除去する第2プラズマ処理工程とを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに収容された状態で搬送が行われる複数の基板に対して、プラズマ処理を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDデバイスの製造工程において、デバイスからの光の外部取出し効率を向上させるために、サファイア基板の表面に凹凸構造を形成する工程としてエッチング処理(プラズマ処理)が行われている。このようなエッチング処理では、複数の基板がトレイに収容された状態にて取り扱われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、トレイには複数の基板収容孔が形成されており、基板収容孔の内壁から突出された基板支持部にサファイア基板の縁部が支持されることで、複数の基板がトレイに収容されるように構成されている。プラズマ処理装置のチャンバ内には基板ステージが配置されており、基板ステージの上面には、トレイ支持部と、このトレイ支持部から上向きに突出する複数の基板保持部とが設けられている。
【0004】
エッチング処理を行う際には、トレイに収容された状態で複数の基板をチャンバ内に搬入して、トレイ支持部上にトレイを載置することで、複数の基板を基板保持部上に載置するとともに、基板の縁部を基板支持部から離間した状態とする。このような状態にて、基板保持部に内蔵されたESC(静電チャック)によりそれぞれの基板を静電吸着して、基板保持部に保持させた状態にて、基板に対するエッチング処理が行われる。エッチング処理が完了すると、ESCによる吸着保持を解除して、トレイ支持部からトレイを持ち上げるとともに、基板支持部により基板の縁部を再び支持した状態にて、複数の基板をチャンバ内から搬出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−109771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようなエッチング処理方法では、基板ステージにおいてそれぞれの基板保持部に保持された状態の基板の縁部と、トレイにおける基板支持部とは、互いに離間した状態にあるため、エッチング処理中にサファイア基板およびトレイ(例えばSiCにて形成されている。)から発生した副生成物(デポ)が、基板の縁部やトレイの基板収容孔の内壁に付着する。エッチング処理が終了した後、トレイ支持部よりトレイを持ち上げてそれぞれの基板を搬出する際に、トレイの基板保持部と基板の縁部とが当接し、付着している副生成物が基板保持部上に落下する場合がある。基板保持部上にこのような副生成物が落下すると、次の基板に対するエッチング処理を行う際に、落下した副生成物が噛み込み、基板の確実な保持が阻害される場合がある。このような場合にあっては、エッチング処理中に基板の冷却を十分に行うことができず、製品不良が生じるという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、トレイに収容された状態で搬送が行われる複数の基板に対してプラズマ処理を行う方法において、プラズマ処理中に基板の縁部およびトレイに付着した副生成物の除去を行って、製品の品質を向上させることができる基板のプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、基板が収容される複数の基板収容孔が設けられ、この基板収容孔の内壁から突出する基板支持部を有するトレイを用いて、基板支持部にその縁部が支持されて基板収容孔に収容された状態の複数の基板をチャンバ内に搬入する基板搬入工程と、
チャンバ内において、トレイ支持部とこのトレイ支持部から上向きに突出する複数の基板保持部とを有する基板ステージに対して、トレイ支持部上にトレイを載置するとともにそれぞれの基板保持部上に基板を載置することで、基板保持部の端縁よりはみ出した基板の縁部と基板支持部とを離間させた状態とする基板載置工程と、
チャンバ内へ処理ガスを供給すると共にチャンバ内の圧力を調整して、それぞれの基板に対するプラズマ処理を行う第1プラズマ処理工程と、
トレイおよびそれぞれの基板が基板ステージ上に載置された状態にて、チャンバ内へ処理ガスを供給すると共にチャンバ内の圧力を調整してプラズマ処理を実施し、第1プラズマ処理工程の実施により基板の縁部と基板支持部とに付着した副生成物を除去する第2プラズマ処理工程と、
第2プラズマ処理工程の終了後、基板支持部により基板の縁部を支持した状態にて、トレイとともにそれぞれの基板をチャンバ内より搬出する基板搬出工程と、を含む、基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、第1プラズマ処理工程の終了後、第2プラズマ処理工程を実施する際に、第1プラズマ処理工程における処理ガスとは異なる種類の処理ガスに切り換えるとともに、第1プラズマ処理工程における圧力よりも高い圧力にて第2プラズマ処理工程を行う、第1態様に記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、第1プラズマ処理工程において、それぞれの基板を静電吸着により基板保持部に吸着保持するとともに、基板と基板保持部の間に所定の圧力で供給される冷却ガスにより冷却しながら、プラズマ処理を行い、
第1プラズマ処理工程の終了後、第2プラズマ処理工程を実施する際に、第1プラズマ処理工程における静電吸着の駆動電圧よりも低い駆動電圧に切り換えて静電吸着を行う、第2態様に記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、第2プラズマ処理工程を実施する際に、第1プラズマ処理工程における冷却ガスの圧力よりも低い圧力に切り換える、第3態様に記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、第2プラズマ処理工程を実施する際の静電吸着の駆動電圧と第2プラズマ処理工程におけるチャンバ内部の圧力と冷却ガスとの差圧がゼロである、第4態様に記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、基板としてサファイア基板を用い、第1プラズマ処理工程において、サファイア基板の表面に微小な凹凸構造を形成するプロセスを、プラズマ処理として行う、第3態様に記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、第1プラズマ処理工程における処理ガスとしてBClを用い、
第2プラズマ処理工程における処理ガスとしてO/CFを用いる、第6態様に記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0016】
本発明の第8態様によれば、第2プラズマ処理工程の終了後、除電プラズマを発生させて、基板と基板保持部との間の残留静電吸着力を低減させる除電工程を実施する、第3から第7態様のいずれか1つに記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【0017】
本発明の第9態様によれば、第2プラズマ処理工程において、除去した副生成物を基板保持部の側面に集積させる、第1態様から第8態様のいずれか1つに記載の基板のプラズマ処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、チャンバ内の基板ステージへの複数の基板の基板載置工程において、基板保持部の端部よりはみ出した基板の縁部とトレイの基板支持部とを離間させた状態として、この状態において第1プラズマ処理工程を実施して、その後、基板の縁部とトレイの基板支持部とを離間させた状態のまま、第1プラズマ処理工程の実施により基板の縁部と基板支持部とに付着した副生成物を、第2プラズマ処理工程を行うことにより除去することができる。よって、その後、トレイの基板支持部に基板の縁部を再び支持させて、トレイに収容させた状態にて複数の基板をチャンバから搬出する際に、トレイと基板との接触により副生成物が落下することを防止することができる。したがって、基板のプラズマ処理方法における製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一の実施形態にかかるドライエッチング装置の構成図
【図2】トレイ、基板および基板ステージの斜視図
【図3】トレイ、基板および基板ステージの斜視図(トレイ載置状態)
【図4】トレイおよび基板とステージ上部との関係を示す断面図
【図5】ドライエッチング装置が備える制御部の主要な構成を示すブロック図
【図6】本実施形態のエッチング処理方法の手順を示すフローチャート
【図7A】デポの付着状態を示す説明図
【図7B】デポの付着状態を示す説明図(分解状態)
【図8】トレイ搬出処理の手順を示す動作説明図
【図9】本発明の変形例1にかかる基板保持部の側面の近傍を示す部分断面図
【図10】本発明の変形例2にかかるクリーニング処理中のトレイの動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の一例としてICP(誘導結合プラズマ)型のドライエッチング装置1の構成図を図1に示す。
【0022】
ドライエッチング装置1は、その内部が基板2にプラズマ処理を行う処理室を構成するチャンバ(真空容器)3を備える。チャンバ3の上端開口は石英等の誘電体により形成された天板4により密閉状態で閉鎖されている。天板4の下面側は誘電体により形成された天板カバー部6により覆われている。天板4上にはICPコイル5が配置されており、ICPコイル5はコイルカバー部10により覆われている。ICPコイル5にはマッチング回路を含む第1の高周波電源部7が電気的に接続されている。天板4と対向するチャンバ3内の底部側には、バイアス電圧が印加される下部電極としての機能及び基板2の保持台としての機能を有する基板ステージ9が配置されている。チャンバ3には、例えばロードドック室(図示せず)と連通する開閉可能な搬入出用のゲートバルブ3aが設けられており、図示しない搬送機構が備えるハンド部により基板2が保持されて、開放状態のゲートバルブ3aを通して基板2の搬入・搬出動作が行われる。また、チャンバ3に設けられたエッチング用のガス導入口3bには、ガス供給部12が接続されている。ガス供給部12には、複数種類のガスの供給ライン(例えば、BCl、Cl、Ar、O、CF)が備えられており、それぞれのガス種のライン毎に設けられた開閉バルブ12a、12b、および流量調整部12cの開閉動作および開度が選択的に制御されることにより、ガス導入口3bから所望の流量および仕様の処理ガスを供給できる。さらに、チャンバ3に設けられた排気口3cには、真空ポンプや圧力制御弁等から構成される圧力制御部13が接続されている。
【0023】
次に、本実施形態のドライエッチング装置1にて取り扱われる基板2を保持するトレイ15について、図2および図3の模式斜視図を用いて説明する。
【0024】
トレイ15は薄板円板状のトレイ本体15aを備える。トレイ15の材質としては、例えばアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)等のセラミクス材や、アルマイトで被覆したアルミニウム、表面にセラミクスを溶射したアルミニウム、樹脂材料で被覆したアルミニウム等の金属がある。Cl系プロセスの場合にはアルミナ、イットリア、炭化シリコン、窒化アルミニウム等、F系プロセスの場合には石英、水晶、イットリア、炭化シリコン、アルマイトを容射したアルミニウム等を採用することが考えられる。なお、本実施形態では、炭化シリコンを主材料として形成されたトレイ15が用いられる。
【0025】
トレイ本体15aには、上面15bから下面15cまで厚み方向に貫通する4個の基板収容孔19が設けられている。基板収容孔19は、上面15b及び下面15cから見てトレイ本体15aの中心に対して等角度間隔で配置されている。図4(A)及び(B)に詳細に示すように、それぞれの基板収容孔19の内壁15dには、孔中心に向けて突出する基板支持部21が設けられている。本実施形態では、基板支持部21は内壁15dの全周に設けられており、平面視で円環状である。
【0026】
それぞれの基板収容孔19にはそれぞれ1枚の基板2が収容される。基板収容孔19に収容された基板2は、その外周縁部2aの下面部分が基板支持部21の上面21aに支持される。また、基板収容孔19はトレイ本体15aを厚み方向に貫通するように形成されているので、トレイ本体15aの下面側から見ると、基板収容孔19により基板2の下面が露出した状態とされている。
【0027】
トレイ本体15aには、外周縁を部分的に切り欠いたノッチ15eが形成されており、搬送時などでトレイ15を取り扱う際に、センサ等を用いてトレイ15の向きを容易に確認できる。
【0028】
次に、図1〜図3、図4を参照して、基板ステージ9について説明する。
【0029】
図1に示すように、基板ステージ9は、セラミクス等の誘電体部材により形成されたステージ上部23と、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により形成され、バイアス電圧が印加される下部電極として機能する金属ブロック24と、絶縁体25と、金属製のシールド27とを備える。基板ステージ9の最上部に配置されるステージ上部23は、金属ブロック24の上面に固定されており、ステージ上部23および金属ブロック24の外周が絶縁体25により覆われて、さらに絶縁体25の外周が金属により形成されたシールド27により覆われている。
【0030】
図2に示すように、ステージ上部23は円板状に形成されており、ステージ上部23の上端面は、トレイ15の下面15cを支持するトレイ支持部28となっている。また、トレイ15のそれぞれの基板収容孔19と対応する短円柱状の4個の基板保持部29がトレイ支持部28から上向きに突出している。さらにステージ上部23上には、トレイ支持部28を囲むように配置され、ステージ上部23から上向きに突出して形成された環状のガイドリング30が配置されている。このガイドリング30は、ステージ上部23において、トレイ15の配置位置を案内する役目を担っている。
【0031】
ここで、トレイ15、基板2、および基板保持部29等の関係について、図4(A),(B)を参照して説明する。基板保持部29の外径R1は、基板支持部21の先端面(内周端面)21bの内径R2よりも小さく設定されている。したがって、トレイ15がトレイ支持部28上に配置された状態において、基板収容孔19に形成された基板支持部21と、基板保持部29との間には、互いに接触しないような隙間が確保される。
【0032】
また、トレイ本体15aの下面15cから基板支持部21の上面21aまでの高さH1は、トレイ支持部28から基板保持部29における保持面31までの高さH2よりも低く設定されている。したがって、トレイ15の下面15cがトレイ支持部28上に配置された状態では、基板保持部29の保持面31により基板2が押し上げられ、トレイ15の基板支持部21から基板2が浮き上がった状態となる。言い換えれば、基板収容孔19に基板2を収容しているトレイ15をステージ上部23上に配置すると、基板収容孔19に収容された基板2は基板支持部21の上面21aから浮き上がり、基板2の縁部2aと基板支持部21の上面21aとが互いに離間した状態にて、基板2の下面が基板保持部29の保持面31上に配置される。なお、図3および図4(B)に示すように、それぞれの基板2が基板保持部29上に配置されて、トレイ15から離間した状態では、基板2の上面とトレイ15の上面15bとはほぼ同じ高さに位置された状態となる。
【0033】
また、基板保持部29の外径R1は、基板2の外径R3よりも小さく設定されている。したがって、基板2が基板保持部29上に配置されて、トレイ15から離間した状態では、図4(B)に示すように、基板2の縁部2aが基板保持部29の外周端部より径方向外向きに突出してはみ出した状態とされる。
【0034】
また、図1に示すように、ステージ上部23に設けられた個々の基板保持部29の保持面31付近にはESC電極(静電吸着用電極)40が内蔵されている。これらのESC電極40は電気的に互いに絶縁されており、直流電源を内蔵するESC駆動電源部41から静電吸着用の直流電圧が印加される。
【0035】
図1に示すように、それぞれの基板保持部29の保持面31には冷却ガス供給口44が設けられており、それぞれの冷却ガス供給口44は冷却ガス供給路47を通じて共通の冷却ガス供給部45に接続されている。なお、本実施形態では、冷却ガスとしてヘリウム(He)が用いられ、プラズマ処理中において、基板保持部29の保持面31と基板2との間に冷却ガスが供給されることで基板2の冷却が行われる。
【0036】
金属ブロック24には、バイアス電圧としての高周波を印加する第2の高周波電源部56が電気的に接続されている。第2の高周波電源部56はマッチング回路を備えている。
【0037】
また、金属ブロック24内には、金属ブロック24を冷却するための冷媒流路60が形成されており、冷却ユニット59より温度調節された冷媒が冷媒流路60に供給されることで、金属ブロック24が冷却される。
【0038】
図1に示すように、基板ステージ9には、トレイ支持部28上に配置された状態のトレイ15をその下面側から押し上げて(突き上げて)トレイ15とともにそれぞれの基板2を上昇させる複数本のトレイ押上ロッド18が備えられている。それぞれのトレイ押上ロッド18は、トレイ支持部28の上面より突出した押上位置と、トレイ支持部28内に格納された格納位置との間で駆動機構17により昇降駆動される。
【0039】
次に、ドライエッチング装置1が備える制御部70の構成について、図5に示すブロック図を用いて説明する。
【0040】
図5に示すように、ドライエッチング装置1が備えるそれぞれの構成部である、第1の高周波電源部7、第2の高周波電源部56、ESC駆動電源部41、ゲートバルブ3a、搬送機構、駆動機構17、ガス供給部12、冷却ユニット59、および圧力制御部13の動作が他の構成部の動作と関連付けられながら統括的に制御部70により制御される。また、制御部70には、オペレータによる操作や入力を行うための操作・入力部71と、ドライエッチング装置1における運転情報などを表示する表示部72とが備えられている。
【0041】
また、本実施形態のドライエッチング装置1では、基板2として例えばサファイア基板が取り扱われ、エッチング処理(プラズマ処理)として、サファイア基板2の表面に微小な凹凸構造を形成する加工(PSS:Paterned Sapphire Substrate)が行われる。なお、このように基板2の表面に微小な凹凸構造を形成する加工を基板表面の粗面化加工または表面テキスチャ加工と言うこともできる。
【0042】
ドライエッチング装置1では、このようなエッチング処理を行うために、トレイ15に保持された複数の基板2をチャンバ3内に搬入して、基板ステージ9上に載置するトレイ搬入処理(基板搬入工程および基板載置工程)と、搬入された基板2に対してエッチング処理によりPSS加工を行うエッチング処理(第1プラズマ処理工程)と、エッチング処理の実施により基板2およびトレイ15に付着した副生成物をプラズマ処理により除去するクリーニング処理(第2プラズマ処理工程)と、除電プラズマを発生させて基板2と基板保持部29との間の残留静電吸着力を低減させる除電処理(除電工程)と、それぞれの基板2をトレイ15に保持させた状態にてチャンバ3内より搬出するトレイ搬出処理(基板搬出工程)とが予め設定されたプログラムを実行することにより連続的に実施される。そのため、制御部70には、これらのプログラムおよびプログラムを実行する演算部により構成され、各種処理を実行する処理部として、搬送処理部73、エッチング処理部74、クリーニング処理部75、および除電処理部76が備えられている。また、エッチング処理、クリーニング処理、および除電処理を実施するための各種運転条件を記憶する運転条件記憶部77が制御部70には備えられている。
【0043】
次に、上述したような構成を有するドライエッチング装置1を用いて、複数の基板2に対してエッチング処理を行う方法について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以降に説明するそれぞれの処理は、ドライエッチング装置1が備える制御部70によりそれぞれの構成部が予め設定されたプログラムおよび運転条件に基づいて制御されることにより実施される。
【0044】
(トレイ搬入処理)
まず、図6のフローチャートにおけるトレイ搬入処理(ステップS1)を実施する。具体的には、ドライエッチング装置1において、ゲートバルブ3aを開放状態とさせる。その後、4個の基板収容孔19にそれぞれ基板2が収容された状態のトレイ15を、搬送機構のハンド部により保持して、例えばロードロック室からゲートバルブ3aを通ってチャンバ3内に搬入する。
【0045】
チャンバ3内では、駆動機構17によって駆動されたトレイ押上ロッド18が上昇し、ハンド部からトレイ押上ロッド18の上端にトレイ15が移載される。トレイ15の移載後、ハンド部はロードロック室に待避し、ゲートバルブ3aが閉鎖される。
【0046】
上端にトレイ15を支持したトレイ押上ロッド18は、その押上位置から基板ステージ9内に格納される格納位置に向けて降下する。トレイ15は下面15cが基板ステージ9のステージ上部23のトレイ支持部28まで降下し、トレイ15はステージ上部23のトレイ支持部28によって支持される。トレイ15がトレイ支持部28に向けて降下する際に、ステージ上部23の基板保持部29がトレイ15の対応する基板収容孔19内にトレイ15の下面15c側から進入する。トレイ15の下面15cがトレイ支持部28に当接する前に、基板保持部29の上端面である保持面31が、基板2の下面に当接する。さらにトレイ15を下降させてトレイ15の下面15cをトレイ支持部28上に載置すると、それぞれの基板2の縁部2aが基板支持部21の上面21aから持ち上げられて、トレイ15と基板2とが互いに離間した状態となる。なお、トレイ15は、ガイドリング30によりその配置位置が位置決めされるため、それぞれの基板2は基板保持部29に対して高い位置決め精度で配置される。
【0047】
その後、それぞれの基板保持部29に内蔵されたESC電極40に対してESC駆動電源部41から直流電圧を印加する。
【0048】
(エッチング処理)
次に、エッチング処理(ステップS2)を実施する。具体的には、ガス供給部12からチャンバ3内にエッチング処理用のガスが供給されるとともに、圧力制御部13によりチャンバ3内は所定圧力に調整される。続いて、第1の高周波電源部7からICPコイル5に高周波電圧を印加する。これによりチャンバ3内にプラズマが発生する。
【0049】
また、チャンバ3内にプラズマが発生することにより基板2と基板保持部29の間に静電吸着力が発生し、それぞれの基板保持部29の保持面31に基板2が静電吸着される。基板2の下面はトレイ15を介することなく保持面31上に直接配置されている。したがって、基板2は保持面31に対して高い密着度で保持される。その後、それぞれの基板保持部29の保持面31と基板2の下面との間に存在する空間内に、冷却ガス供給口44を通して冷却ガス供給部45から冷却ガスが供給され、この空間に冷却ガスが充填される。冷却ガスが十分に充填された状態(所定の圧力に保たれた状態)にて、第2の高周波電源部56により基板ステージ9の金属ブロック24にバイアス電圧を印加し、チャンバ3内で発生したプラズマを基板ステージ9側へ引き寄せる。これにより、基板2に対するエッチング処理が行われて、基板2の表面に対するPSS加工が実施される。1枚のトレイ15で4枚の基板2を基板ステージ9上に載置できるので、バッチ処理が可能である。
【0050】
エッチング処理中は、冷却ガスによる冷却に加えて、冷却ユニット59によって冷媒流路60中で冷媒を循環させて金属ブロック24を冷却し、それによってステージ上部23及び保持面31に保持された基板2が冷却される。したがって、エッチング処理において、基板2の温度が確実に制御される。所定の処理時間経過すると、第2の高周波電源部56による基板ステージ9の金属ブロック24へのバイアス電圧の印加を停止するとともに、エッチング処理用のガスの供給を停止して、基板2に対するエッチング処理が完了する。
【0051】
(クリーニング処理)
ここで、このようなエッチング処理が行われた直後の基板2およびトレイ15の状態を図7Aおよび図7Bの説明図に示す。図7Aに示すように、トレイ支持部28上にトレイ15が載置され、それぞれの基板保持部29上に基板2が保持されている状態では、トレイ15の基板支持部21の上面21aと基板2の縁部2aの下面との間には、互いに接触しないような隙間が設けられている。このような状態にてエッチング処理が行われると、基板2の縁部2aの下面やその近傍(部分A)、基板2の縁部2aにて隠れてしまっているトレイ15の基板支持部21の上面21aおよびその近傍部分(部分B)では、エッチング処理の際に生じる副生成物であるデポ(デポジション(堆積物))が付着し易い。なお、図中参照符号91は生成されたプラズマ、92はシース、93は付着したデポを模式的に示したものである。
【0052】
特に、トレイ15を用いて複数の基板2を支持しながら搬送を行うという形態では、基板2の縁部2aをトレイ15の基板支持部21に支持させる必要があるため、基板2を基板保持部29上に配置した状態にて、基板保持部29の外周端部よりも基板2の縁部2aがはみ出すような状態となる。さらに、基板2の縁部2aとトレイ15の基板支持部21とは互いに離間した状態にてエッチング処理が行われることになる。そのため、エッチング処理の際に、生成されたプラズマが比較的侵入し難い部位である基板2の縁部2aの下面やトレイ15の基板支持部21等にエッチング処理の副生成物であるデポ93が付着して残り易くなる。このように基板2とトレイ15との間に付着したデポ93を除去する処理が次のクリーニング処理である。
【0053】
エッチング処理が完了し、バイアス電圧の印加およびエッチング処理用のガスの供給が停止された後、クリーニング処理を実施する(ステップS3)。具体的には、ガス供給部12からチャンバ3内にエッチング処理用のガスとは異なる種類のクリーニング処理用のガスが供給されるとともに、圧力制御部13によりチャンバ3内を所定圧力に調整する。続いて、第1の高周波電源部7からICPコイル5に高周波電圧を印加してチャンバ3内にプラズマを発生させる。この際、第2の高周波電源部56によるバイアス電圧は印加しない。このプラズマにより基板2の縁部2aおよびトレイ15の基板支持部21ならびにその近傍に付着しているデポが除去される。
【0054】
ここで、基板2の縁部2aの下面とトレイ15の基板支持部21との間の隙間の奥側には、基板保持部29の側面26が位置している。この隙間は、縁部2aの下面と基板支持部21とが互いに接触しない程度の隙間として設けられているため、隙間の奥側に位置する基板保持部29の側面26は、クリーニング処理時に生成されるプラズマに曝されにくい。そのため、クリーニング処理により除去されたデポの多くを、基板保持部29の側面26に付着して堆積させることができる。さらに、クリーニング処理を繰り返すと、デポを重ねて集積させることができる。すなわち、クリーニング処理により除去されたデポを、側面26に局所的に集積させることができ、このようなデポの集積作用を利用することで、連続運転後のメンテナンス時などにおいて、例えば側面26に対して重点的に拭き取りなどを行うことにより、効率的なメンテナンス作業を実施することができる。
【0055】
このクリーニング処理では、チャンバ3内の圧力は、エッチング処理における圧力よりも高い圧力に調整される。このようにクリーニング処理において、チャンバ3内の空間を高い圧力とすることにより、生成されるプラズマの等方性的な特性を強めることができ、基板2の縁部2aとトレイ15の基板支持部21との間の隙間にプラズマをより侵入させ易くすることができ、付着しているデポを効果的に除去できる。また、生成されるプラズマを上記隙間へ侵入させやすくするために、第2の高周波電源部56により金属ブロック24にバイアス電圧を印加してもよい。この場合、クリーニング処理中に印加するバイアス電圧はエッチング処理中におけるバイアス電圧よりも低くすることが望ましい。
【0056】
また、クリーニング処理では、ESC駆動電源部41からESC電極40に対して印加される直流電圧を、エッチング処理中に印加される直流電圧よりも低くすることが望ましい。上述したようにクリーニング処理では、チャンバ3内の圧力を高めることなどによりプラズマの等方性的な特性を強めるようにしている。そのため、基板2の縁部2aとトレイ15の基板支持部21との間の隙間にプラズマが侵入することにより、基板保持部29の近傍に電子が多く存在することになる。一方、基板保持部29を含むステージ上部23を構成する誘電体部材には、基板保持部29の保持面31における静電吸着力を確保するために低抵抗型のセラミックス(体積抵抗率(25℃)が1010〜1011Ω・cm)が使用されている。このため、基板保持部29の近傍に電子が多く存在する状態でエッチング処理の場合と同等の電圧をESC電極40に印加すると絶縁破壊を生じるおそれがある。そこで、クリーニング処理を行う際には、基板保持部29に内蔵されるESC電極40に印加される直流電圧をエッチング処理の場合に印加する電圧よりも低くするかゼロとすることにより、ESC電極40の周囲に絶縁破壊が生じることを防止している。
【0057】
また、クリーニング処理においては、このようにESC電極40への印加電圧が下げられているため、基板2に対する静電吸着力も下がることになる。そのため、冷却ガス供給部45から供給されて、基板2と基板保持部29との間に充填される冷却ガスのチャンバ内部との差圧についても、静電吸着力の大きさに応じて低く設定するか、静電吸着力の大きさに関係なくゼロに設定、すなわち冷却ガスの供給を遮断する。
【0058】
その後、所定時間が経過すると、第2の高周波電源部56による基板ステージ9の金属ブロック24へのバイアス電圧の印加を停止するとともに、クリーニング処理用のガスの供給を停止して、基板2およびトレイ15に対するクリーニング処理が完了する。なお、クリーニング処理におけるバイアス電圧と冷却ガスの圧力の設定条件としては、両者ともゼロとする条件が最も好ましい。
【0059】
(除電処理)
続いて、残留静電吸着力を低減させるための除電処理を実施する(ステップS4)。具体的には、ガス供給部12からチャンバ3内にクリーニング処理用のガスとは異なる種類の除電処理用のガス(ArやHe等の不活性ガスやエッチングに寄与しにくいO等のガス等。)が供給されるとともに、圧力制御部13によりチャンバ3内を所定圧力に調整する。また、ESC駆動電源部41によるESC電極40への直流電圧の印加を停止する。続いて、第1の高周波電源部7からICPコイル5に高周波電圧を印加する。このとき、印加される高周波電圧は、クリーニング処理の際に印加される電圧よりも低く設定される。この状態において、チャンバ3内に生成されたプラズマにより、基板2と基板保持部29との間に残留している静電吸着力を低減させる。なお、前述のクリーニング処理において冷却ガスを供給している場合は、除電処理に先立ち、冷却ガス供給部45からの冷却ガスの供給を停止して、基板2と基板保持部29との間に充填されている冷却ガスを抜いておく。
【0060】
その後、所定時間経過すると、第1の高周波電源部7によるICPコイル5への高周波電圧の印加を停止する。
【0061】
(トレイ搬出処理)
続いて、チャンバ3内からそれぞれの基板2をトレイ15とともに搬出するトレイ搬出処理を実施する(ステップS5)。具体的には、図8(A),(B)に示すように、駆動機構17によりそれぞれのトレイ押上ロッド18を上昇させる。トレイ押上ロッド18が上昇すると、その上端でトレイ15の下面15cが押し上げられ、ステージ上部23のトレイ支持部28からトレイ15が浮き上がる。トレイ押上ロッド18とともにトレイ15がさらに上昇すると、図8(B)に示すように、トレイ15の基板支持部21と基板2の縁部2aの下面とが接触して、それぞれの基板2がトレイ15により支持された状態にて押し上げられ、基板保持部29の保持面31から浮き上がる。
【0062】
その後、ゲートバルブ3aが開放されて、搬送機構のハンド部81がチャンバ3内に挿入される。その後、図8(C),(D)に示すように、4個の基板収容孔19にそれぞれ基板2が収容された状態のトレイ15が、トレイ押上ロッド18からハンド部81に受け渡されて、ゲートバルブ3aを通して、トレイ15に支持された状態の基板2が搬出される。
【0063】
なお、それぞれのトレイ押上ロッド18を用いてトレイ15を押し上げる動作は、除電用のプラズマを用いて除電処理が行われている間に、並行して実施してもよい。
【0064】
このように本実施形態の基板2に対するエッチング処理方法によれば、基板2の縁部2aがトレイ15の基板支持部21により支持された状態でトレイ15による複数の基板2の搬送が行われ、基板2の縁部2aとトレイ15の基板支持部21とが互いに接触しない程度に離間した状態にて基板2に対するエッチング処理が行われる形態において、基板2のエッチング処理の際に基板2の縁部2aとトレイ15の基板支持部21とに付着した副生成物であるデポを、このエッチング処理に続けてクリーニング処理を実施することにより、生成されたプラズマを用いて効果的に除去することができる。
【0065】
よって、その後、トレイ15の基板支持部21に基板2の縁部2aを再び支持させて、トレイ15に収容させた状態にて複数の基板2をチャンバ3から搬出する際に、トレイ15と基板2との接触によりデポが落下することを防止することができる。したがって、このようなデポが基板保持部29上等に落下して、次の処理を行う際にコンタミネーションが生じることなどのトラブルの発生を回避することができ、基板のエッチング処理方法における製品の品質を向上させることができる。
【0066】
特に、このようなトレイ15を用いて基板2が取り扱われる形態では、エッチング処理が行われる際に、基板2の縁部2aとトレイ15の基板支持部21との間は、生成されたプラズマが侵入し難いように設定することが好ましい。一方、この隙間に侵入して基板2の縁部2aおよびトレイ15の基板支持部21の表面に付着したデポを、クリーニング処理の実施により除去するためには、生成されたプラズマをこの隙間に効果的に侵入させる必要がある。本実施形態では、クリーニング処理にて生成されるプラズマの等方性的な特性を高めることにより、この隙間にプラズマを効果的に侵入させて付着したデポの除去を行うことができる。
【0067】
なお、エッチング処理中にプラズマが基板2の下面側に侵入するのを防止するためには、基板2の縁部2aとトレイ15の基板収容孔19の内壁15dとの間の隙間が0.1〜0.2mm程度、基板2の縁部2aの下面とトレイ15の基板支持部21の上面21aとの間の隙間が0.2〜0.3mm程度、基板保持部29の側壁と基板支持部21の先端(内壁端)との隙間が0.5mm程度であることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態のエッチング処理方法において、基板2としてサファイア基板を用いて処理を行う場合には、それぞれの処理の運転条件は、次のように設定することができる。これらの運転条件は、制御部70の運転条件記憶部77に予め記憶されている。なお、これらの運転条件は一例であり、処理される基板の種類や処理内容などにより最適な条件に設定することができる。
【0069】
エッチング処理:
処理ガス種・流量: BCl、200cc
処理圧力: 0.6Pa
ICPコイル印加パワー: 1400W
バイアス: 1600W
ESC電極への印加電圧: 2.0kV
冷却ガス圧力: 2.0kPa
処理時間: 10min
【0070】
クリーニング処理:
処理ガス種・流量: O、200cc/CF、200cc
処理圧力: 8.0Pa
ICPコイル印加パワー: 1800W
バイアス: 0W
ESC電極への印加電圧: 1.0kV
冷却ガス圧力: 1.0kPa
処理時間: 2min
【0071】
除電処理:
処理ガス種・流量: Ar、200cc
処理圧力: 8.0Pa
ICPコイル印加パワー: 200W
バイアス: 0W
ESC電極への印加電圧: 0kV
冷却ガス圧力: 0kPa
処理時間: 10sec
【0072】
基板2の縁部2aの下面とトレイ15の基板支持部21との間の隙間により、基板保持部29の側面26はクリーニング処理のプラズマに曝されにくいので、クリーニング処理により除去されたデポの多くを、側面26に付着して堆積させることができる。すなわち、クリーニング処理により除去されたデポを、側面26に局所的に集積させることができ、このようなデポの集積作用を利用することで、連続運転後のメンテナンス時などにおいて、例えば側面26に対して重点的に拭き取りなどを行うことにより、効率的なメンテナンス作業を実施することができる。
【0073】
ここで、クリーニング処理の実施による側面26へのデポの集積効果を、より効果的に利用するような幾つかの変形例について、図9、10を用いて説明する。
【0074】
(変形例1)
図9は、変形例1によるステージ上部23における基板保持部29の側面26の近傍を示す部分断面図である。図9(A)に示すように、基板保持部29の外周には、環状の溝32が形成されている。このような構成では、溝32が形成されていることにより側面26の面積を拡大することができるため、側面26に、より多くのデポを付着して堆積させることができる。したがって、メンテナンス作業をより効率的なものにすることができる。
【0075】
側面の面積を拡大させるような構成は、図9(A)の構成に限られない。例えば、図9(B)に示すように、側面26が傾斜面として形成されても良い。また、この場合の傾斜方向はどちら向きでも良い。
【0076】
あるいは、デポを集積させた後にデポの拭き取り作業を円滑に行うために、図9(C)に示すように、側面26とトレイ支持部28との境界部分に、曲面部33を形成しても良い。
【0077】
(変形例2)
上記実施形態では、トレイ15がトレイ支持部28上に載置された状態にてクリーニング処理が実施されるような場合を例として説明したが、図10(A)、(B)に示すように、クリーニング処理中において、トレイ押上ロッド18によりトレイ15の突き上げ動作を行い、トレイ15をトレイ支持部28より離間させた状態とさせても良い。このようにクリーニング処理中に突き上げ動作を行うことにより、クリーニング効果と側面26へのデポの再付着による集積効果とのバランスを考慮して、基板2の縁部2aの下面とトレイ15の基板支持部21との間の隙間の大きさを制御することができ、効率的なクリーニング処理を実現できる。
【0078】
なお、本発明は上述の構成に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、サファイア基板に代えて、シリコン基板に対しても本実施形態のエッチング処理方法を適用できる。
【0079】
さらに円盤状の基板に代えて、四角形状の基板に対しても本実施形態のエッチング処理方法を適用できる。このような四角形状基板としては、例えば、太陽光パネル基板がある。太陽光パネル基板では、太陽光を効率的に吸収するために基板の表面に微小な凹凸構造がエッチング処理や表面テキスチャ加工により形成され、凹凸構造がエッチング処理により形成される点においてはサファイア基板と共通する。また、このような太陽光パネル基板では、シリコン系材料により形成されるものが多く、また、トレイを用いた基板の搬送が採用されている。
【0080】
また、上述の構成では、トレイ15の基板収容孔19の内壁の全周囲に渡って形成された基板支持部21により、基板2の縁部2aの全周囲が支持されるような例について説明したが、基板支持部21が基板収容孔19の内壁の一部について形成されて、基板2の縁部2aがその外周の一部において支持されるような構成を採用しても良い。
【0081】
また、基板2と基板保持部29との間に残留する静電吸着力の大きさが低い場合等には、除電処理を実施しないようにすることもできる。
【0082】
また、本実施形態のエッチング処理方法を複数枚のトレイ15に対して連続的に実施した後、チャンバ3内にトレイ15を載置しない状態にてクリーニング処理を実施して、チャンバ3内に付着しているデポを除去するようにしても良い。
【0083】
また、基板保持部29の側壁を傾斜させるように構成することで、デポを付着し難くすることもできる。
【0084】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、トレイに収容された状態で搬送が行われる複数の基板に対してプラズマ処理を行う方法に有用であり、特に、基板表面に微小な凹凸構造を形成する基板の粗面化処理や表面テキスチャ加工をエッチング処理により行うような方法に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 ドライエッチング装置
2 基板
2a 縁部
3 チャンバ
3a ゲートバルブ
4 天板
5 ICPコイル
6 天板カバー部
7 第1の高周波電源部
9 基板ステージ
10 コイルカバー部
12 ガス供給部
13 圧力制御部
15 トレイ
15a トレイ本体
17 駆動機構
18 トレイ押上ロッド
19 基板収容孔
21 基板支持部
23 ステージ上部
24 金属ブロック
25 絶縁体
26 側面
28 トレイ支持部
29 基板保持部
30 ガイドリング
31 保持面
32 溝
33 曲面部
40 ESC電極
41 ESC駆動電源部
45 冷却ガス供給部
56 第2の高周波電源部
59 冷却ユニット
70 制御部
71 操作・入力部
72 表示部
73 搬送処理部
74 エッチング処理部
75 クリーニング処理部
76 除電処理部
77 運転条件記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容される複数の基板収容孔が設けられ、この基板収容孔の内壁から突出する基板支持部を有するトレイを用いて、基板支持部にその縁部が支持されて基板収容孔に収容された状態の複数の基板をチャンバ内に搬入する基板搬入工程と、
チャンバ内において、トレイ支持部とこのトレイ支持部から上向きに突出する複数の基板保持部とを有する基板ステージに対して、トレイ支持部上にトレイを載置するとともにそれぞれの基板保持部上に基板を載置することで、基板保持部の端縁よりはみ出した基板の縁部と基板支持部とを離間させた状態とする基板載置工程と、
チャンバ内へ処理ガスを供給すると共にチャンバ内の圧力を調整して、それぞれの基板に対するプラズマ処理を行う第1プラズマ処理工程と、
トレイおよびそれぞれの基板が基板ステージ上に載置された状態にて、チャンバ内へ処理ガスを供給すると共にチャンバ内の圧力を調整してプラズマ処理を実施し、第1プラズマ処理工程の実施により基板の縁部と基板支持部とに付着した副生成物を除去する第2プラズマ処理工程と、
第2プラズマ処理工程の終了後、基板支持部により基板の縁部を支持した状態にて、トレイとともにそれぞれの基板をチャンバ内より搬出する基板搬出工程と、を含む、基板のプラズマ処理方法。
【請求項2】
第1プラズマ処理工程の終了後、第2プラズマ処理工程を実施する際に、第1プラズマ処理工程における処理ガスとは異なる種類の処理ガスに切り換えるとともに、第1プラズマ処理工程における圧力よりも高い圧力にて第2プラズマ処理工程を行う、請求項1に記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項3】
第1プラズマ処理工程において、それぞれの基板を静電吸着により基板保持部に吸着保持するとともに、基板と基板保持部の間に所定の圧力で供給される冷却ガスにより冷却しながら、プラズマ処理を行い、
第1プラズマ処理工程の終了後、第2プラズマ処理工程を実施する際に、第1プラズマ処理工程における静電吸着の駆動電圧よりも低い駆動電圧に切り換えて静電吸着を行う、請求項2に記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項4】
第2プラズマ処理工程を実施する際に、第1プラズマ処理工程における冷却ガスの圧力よりも低い圧力に切り換える、請求項3に記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項5】
第2プラズマ処理工程を実施する際の静電吸着の駆動電圧と、第2プラズマ処理工程におけるチャンバ内部の圧力と冷却ガスとの差圧がゼロである、請求項4に記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項6】
基板としてサファイア基板を用い、第1プラズマ処理工程において、サファイア基板の表面に微小な凹凸構造を形成するプロセスを、プラズマ処理として行う、請求項3に記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項7】
第1プラズマ処理工程における処理ガスとしてBClを用い、
第2プラズマ処理工程における処理ガスとしてO/CFを用いる、請求項6に記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項8】
第2プラズマ処理工程の終了後、除電プラズマを発生させて、基板と基板保持部との間の残留静電吸着力を低減させる除電工程を実施する、請求項3から7のいずれか1つに記載の基板のプラズマ処理方法。
【請求項9】
第2プラズマ処理工程において、除去した副生成物を基板保持部の側面に集積させる、請求項1から8のいずれか1つに記載の基板のプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−99781(P2012−99781A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14335(P2011−14335)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】