説明

基板の処理システム

【課題】洗浄によりウェハに付着した水分を完全に除去し、当該基板を水分を除去した状態で成膜装置に搬送する。
【解決手段】 洗浄装置3に隣接して水分除去装置4を設ける。水分除去装置4では、ウェハWに高温ガスを供給してウェハWに付着した水分を完全に除去する。水分除去装置4と成膜装置5、6との間の搬送部7は、ケーシング21で覆う。ケーシング21内には、乾燥気体を供給し、搬送部7内を乾燥雰囲気にする。水分除去装置4で水分の除去されたウェハWを、乾燥雰囲気内を通して成膜装置5、6に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおける前工程では、例えばウェハ表面にゲート絶縁膜やゲート電極膜を形成する成膜処理が行われている。
【0003】
前記ゲート絶縁膜、ゲート電極膜等の成膜処理は、通常減圧環境下で、基板に原料をガス状態又はプラズマ状態で供給し、基板表面における化学触媒反応によって基板表面に薄膜を堆積させるCVD装置や、膜材料をイオン衝撃によってスパッタさせて、基板表面に物理的に薄膜を堆積させるスパッタリング装置などの成膜装置で行われている。
【0004】
ところで、これらの成膜装置においてウェハに成膜処理が施される前には、ウェハに付着している有機物や金属などの不純物を除去するウェハの洗浄処理が行われる。これは、ウェハに不純物が付着していると、当該不純物によって膜形成が妨げられてウェハに所望の膜が形成されないためである。上記洗浄処理は、上記成膜装置と独立して設けられた洗浄装置において、ウェハに洗浄液を供給することによって行われている。また、洗浄装置では、例えばウェハを洗浄液で洗浄した後に、ウェハを高速回転させるウェハの振り切り乾燥が行われている(特許文献1参照。)。
【0005】
したがって、ウェハは、上記洗浄装置において洗浄液を用いて洗浄され、振り切り乾燥された後、上記成膜装置に搬送されて成膜されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−219424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した洗浄装置で行われる振り切り乾燥では、実際には、ウェハに付着した水分が完全に除去されていなかった。また、洗浄装置から成膜装置にウェハを搬送する際に、ウェハに大気中の水分が付着することがあった。このようにウェハ上に水分が残っている状態で成膜処理が行われると、上述したようにその水分が上述の成膜装置における膜形成を妨害し、良質の膜が形成されない。特に近年、数nm程度にまで薄膜化が進んでいるので、僅かな水分の付着であっても膜形成に大きな影響を及ぼし好ましくない。また洗浄装置には、洗浄液を用いない乾式のものもあるが、湿式に比べて一般的に洗浄能力が低く、そもそも不純物を十分に除去できないという問題がある。それ故、洗浄装置は、湿式を用いる方が望ましい。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、洗浄によりウェハなどの基板に付着した水分を完全に除去し、当該基板を水分を除去した状態で成膜装置などの他の処理装置に搬送することのできる基板の処理システムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の基板の処理システムは、基板の処理システムであって、洗浄液を用いて基板を洗浄する洗浄装置と、前記洗浄装置で洗浄された基板に付着した水分を除去する水分除去装置と、前記水分除去装置で水分の除去された基板を乾燥雰囲気内を通して基板の他の処理装置に搬送するための搬送部と、を備え、前記水分除去装置は、当該水分除去装置内を減圧する減圧装置と、当該水分除去装置内の全体に酸素ガス以外のガスを供給するためのガス供給部とを備え、前記搬送部は、基板の搬送通路を覆うケーシングを備え、前記搬送部には、前記搬送通路のケーシング内の雰囲気を減圧する減圧機構と、前記搬送通路のケーシング内に乾燥気体を供給する乾燥気体供給部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、洗浄装置で洗浄された基板を専用の水分除去装置で乾燥し、当該乾燥された基板を乾燥雰囲気内を通して他の処理装置に搬送できる。したがって、基板から水分を完全に除去し、当該水分を除去した状態で基板を搬送し、他の処理装置において基板を処理できる。この結果、基板の搬送先の処理装置において水分に妨げられない適正な処理を行うことができる。しかも基板を洗浄装置、水分除去装置、搬送部に順に搬送する際に、徐々に減圧されていき、圧力変動による基板への負担を低減できる。また乾燥気体供給部から乾燥気体を供給することによって、ケーシング内を乾燥雰囲気に維持し、搬送中の基板に水分が付着することを防止できる。
【0011】
前記水分除去装置内の圧力を、前記洗浄装置内の圧力よりも低く、かつ前記搬送部内の圧力よりも高くするようにしてもよい。また、前記乾燥気体は、酸素ガス以外の気体であってもよい。
【0012】
前記減圧機構は、前記搬送通路内の圧力が前記他の処理装置内の圧力と前記水分除去装置内の圧力の間になるように制御できる制御部を備えていてもよい。つまり、搬送通路内の圧力をP、他の処理装置内の圧力をP、水分除去装置内の圧力をPとした場合、減圧機構は、P<P<Pになるように制御する制御部を備えていてもよい。かかる場合、例えば他の処理装置における処理が高い減圧度で行われても、水分除去装置、搬送部、他の処理装置の順に減圧度を上げることができるので、急激な減圧変動による基板の破損を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄された基板を、水分を除去した状態で次の処理装置に搬送できるので、当該処理装置において水分に妨げられない適正な処理が行われ、歩留まりの向上を図ることができる。また圧力変動による基板への負担を低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる基板処理システム1の構成の概略を示す平面図である。
【0015】
基板処理システム1は、この処理システムに対して外部からウェハWを搬入出するための搬入出部2と、洗浄液を用いてウェハWを洗浄する洗浄装置3と、ウェハWに付着した水分を除去する水分除去装置4と、ウェハW上に所定の膜を形成する2台の成膜装置5、6と、これらの装置間及び装置と搬入出部2間のウェハWの搬送を行うための搬送部7とを一体に接続した構成を有している。例えば搬入出部2のX方向正方向側(図1の右側)に搬送部7が接続されており、その搬送部7の背面側であるY方向正方向側(図1の上側)に、水分除去装置4と、第1の成膜装置5及び第2の成膜装置6が接続されている。水分除去装置4のさらに背面側には、洗浄装置3が接続されている。つまり、水分除去装置4は、洗浄装置3と搬送部7との間に配置されている。
【0016】
搬入出部2は、例えばカセット載置台10と搬送チャンバ11とがX方向に並列されて一体となった構成を有している。カセット載置台10には、25枚のウェハWを多段に配置させて収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)などの密閉性を有するカセット12が載置できる。カセット載置台10には、カセット12をY方向(図1の上下方向)に沿って、例えば2つ載置できる。搬送チャンバ11は、例えば全体がケース13に覆われており、搬送チャンバ11内に清浄な気体を供給し、搬送チャンバ11内を清浄な雰囲気に維持できる。搬送チャンバ11には、カセット12から取り出されたウェハWの位置合わせを行うアライメントステージ14が設けられている。さらに搬送チャンバ11には、カセット12、アライメントステージ14及び搬送部7に対しアクセスしウェハWを搬送するウェハ搬送体15が設けられている。
【0017】
搬送部7は、X方向沿って長い搬送通路20を有し、搬送通路20のX方向負方向側の一端部は、搬入出部2の搬送チャンバ11に接続されている。搬送部7は、搬送通路20の全体を覆い、内部を密閉可能なケーシング21を備えている。搬送通路20には、搬送通路20に沿って延びるレール22が設けられている。レール22上には、ステージ23が設けられており、このステージ23は、レール22に取り付けられたモータ24によってレール22上をX方向に移動可能である。ステージ23上には、ウェハ搬送機構25が設けられている。したがって、ウェハ搬送機構25は、X方向に沿って移動自在である。
【0018】
ウェハ搬送機構25は、ウェハWを保持する2本のピンセット26と、当該ピンセット26を支持し所定の水平方向に進退自在な多関節型のアーム27を備えている。このアーム27は、垂直軸周りのθ方向に回転自在であり、ピンセット26を所定の方向に向けることができる。したがって、ウェハW搬送機構25は、搬送部7に接続された各搬入出部2、水分除去装置4、成膜装置5、6の正面に移動し、ピンセット26を水平方向に進退させることによって、各搬入出部2、水分除去装置4、成膜装置5、6に対しウェハWを搬入出することができる。
【0019】
搬送部7のケーシング21には、搬送通路20内に例えば水分濃度が1.2%以下、好ましくは0.1ppm以下の乾燥気体を供給する乾燥気体供給部としてのガス供給管30が接続されている。ガス供給管30は、搬送部7の外部に設置されたガス供給源31に通じており、乾燥気体はこのガス供給源31から供給される。ガス供給管30には、バルブ32、マスフローコントローラ33が接続されており、搬送通路20内には、所定の圧力のガスが供給される。なお、本実施の形態では、乾燥気体として、酸素ガス以外のガス、例えば窒素ガスが用いられる。
【0020】
搬送部7のケーシング21には、ケーシング21の外部に設置された真空ポンプなどの排気装置34に通じる排気管35が接続されている。排気装置34には、排気圧を制御できる制御部36が設けられており、ケーシング21内を所定の圧力にまで減圧できる。なお、本実施の形態では、排気装置34、排気管35、制御部36により減圧機構が構成されている。
【0021】
搬送部7と搬送チャンバ11との接続部には、ウェハWを搬送するための搬送口40が設けられており、この搬送口40には、ゲートバルブ41が設けられている。このゲートバルブ41によって、搬送チャンバ11の雰囲気と搬送部7との雰囲気を遮断できる。
【0022】
上述したように搬送部7の背面側には、水分除去装置4、成膜装置5、6が長手方向(X方向)に沿って搬入出部2側から順に接続されている。搬送部7と各装置4〜6との接続部には、それぞれウェハWの搬送口50、51、52が設けられており、各搬送口50〜52には、ゲートバルブ53、54、55が設けられている。したがって、搬送部7と各装置4〜6との雰囲気を遮断できる。また、水分除去装置4の背面側の洗浄装置3との接続部にも、搬送口56とそのゲートバルブ57が設けられている。
【0023】
洗浄装置3は、例えば図2に示すように筐体60内に、ウェハWを水平に保持するチャック61を備えている。チャック61は、例えば図示しない吸着機構によりウェハWを吸着保持することができる。チャック61は、回転モータ62によって回転可能に構成されている。この回転モータ62によって、チャック61上のウェハWを所定の速度で回転できる。チャック61の外方側には、チャック61の周りを囲むように、上面が開口し有底の略円筒形状を有するカップ63が設けられている。回転によりウェハWから飛散する液体は、このカップ63により受け止められ回収される。カップ63の底部には、例えば排出口64が設けられており、カップ63で回収した液体は、排出口64から排出される。
【0024】
ウェハWに洗浄液を供給する洗浄ノズル65は、カップ63の外側の待機位置からチャック61上の処理位置まで、例えば図示しない移動アームによって移動できる。洗浄ノズル65は、例えばウェハWの直径より長い細長形状を有し、その底部には、長手方向に沿って複数の吐出孔66が直線状に並設されている。洗浄ノズル65には、筐体60の外部に設置された洗浄液供給源67に連通する供給管68が接続されている。したがって、洗浄液供給源67からの洗浄液が洗浄ノズル65に供給されると、複数の吐出孔66からウェハWの直径より長い直線状に洗浄液が吐出される。そして、ウェハWを回転させながら、ウェハW全面に洗浄液を供給することによって、ウェハWの表面に付着した不純物を洗い落とすことができる。また、筐体60には、筐体60の外部に設置されたガス供給装置69に連通する給気部としてのガス給気管Hが接続されている。ガス供給装置69は、ガス給気管Hを通じて筐体60内に酸素ガス以外のガス、例えば窒素ガスを供給することができる。したがって、この窒素ガスの供給によって、筐体60内を低酸素雰囲気にすることができる。
【0025】
水分除去装置4は、図3に示すように内部が密閉可能で、外形が略直方体形状の筐体70を有している。筐体70内には、ウェハWを水平に支持するチャック71が設けられている。チャック71は、筐体70の中心よりも搬送部7のあるゲートバルブ53側に設けられている。チャック71は、例えば上面が開口した略円筒形状に形成されており、平面から見て環状で水平の上端部71aを有している。チャック71は、この上端部71aでウェハWの周縁部を支持する。チャック71の上端部71aには、ウェハWの水平方向の位置ずれを防止するピン72が複数立設されている。ピン72は、例えば図4に示すように上端部71a上に置いたウェハWの外形に沿った位置に等間隔に設けられており、各ピン72によりウェハWの側面を外方から抑えることによってウェハWの位置ずれを防止できる。チャック71は、図3に示すように回転モータ73により垂直軸周りに回転自在であり、チャック71に保持されたウェハWは、所定の速度で回転できる。なお、本実施の形態においては、チャック71と回転モータ73によってウェハWの回転機構を構成している。
【0026】
チャック71上のウェハWに対向する位置には、ウェハWの表面に高温ガスを供給する第1のガス供給ノズル74が設けられている。第1のガス供給ノズル74は、ウェハWの中心から等距離離れた、例えば2箇所に設けられている。チャック71の内側の中空部には、第2のガス供給ノズル75が設けられている。第2のガス供給ノズル75の上面には、例えば2つのガス吹き出し口75aが設けられており、チャック71に支持されたウェハWの裏面に高温ガスを供給できる。ガス吹き出し口75aは、図4に示すように平面から見てウェハWの中心部を円心とする同心円上に等間隔に設けられている。なお、本実施の形態において、第1のガス供給ノズル74と第2のガス供給ノズル75が高温ガス供給部として用いられている。
【0027】
第1及び第2のガス供給ノズル74、75には、図3に示すようにガス供給装置76に連通したガス供給管77が接続されている。ガス供給管77には、バルブ78、マスフローコントローラ79が設けられており、第1及び第2のガス供給ノズル74、75からは所定量の高温ガスを噴出できる。また、ガス供給装置76は、例えば高温ガスの加熱機構80を備えている。したがって、ガス供給装置76においてガスを高温にし、第1及び第2のガス供給ノズル74、75からは所定温度の高温ガスを噴出できる。なお、本実施の形態では、高温ガスの種類として、ウェハWの表面と反応しない、例えば酸素含有量が4ppm以下の窒素ガスが用いられている。
【0028】
また、筐体70には、筐体70内の全体にガスを供給するガス供給口80が設けられている。ガス供給口80には、筐体70の外部に設置されたガス供給源81に連通するガス供給部としての供給管82が接続されている。供給管82には、バルブ83、マスフローコントローラ84が設けられている。なお、本実施の形態では、ガス供給口80から導入されるガスとして、前記第1及び第2のガス供給ノズル74、75から噴出される高温ガスと同じ種類の酸素濃度が4ppm以下の窒素ガスが用いられている。
【0029】
筐体70の底部には、筐体70の外部に設置されたポンプなどの排気装置85に連通した排気部としての排気管86が接続されている。したがって、第1及び第2のガス供給ノズル74、75やガス供給口80から供給された窒素ガスを排気することができる。また、排気管86からの排気によって筐体70内を減圧させることができる。排気管86には、水分濃度測定部材としての水分濃度センサ87が設けられている。水分濃度センサ87の測定結果は、例えばシャッタとしてのゲートバルブ53の開閉を制御する制御部88に出力できる。制御部88は、例えば筐体70内の水分濃度に基づいてゲートバルブ83の開閉を制御する。したがって、制御部88は、例えば筐体70内の水分濃度が予め設定しておいたしきい値以下になった時にゲートバルブ53を開放することができる。
【0030】
チャック71の隣であって、筐体70の中央部よりも洗浄装置3側には、チャック71と洗浄装置3との間のウェハWの搬送を行うウェハ搬送体90が設けられている。ウェハ搬送体90は、例えばウェハWを保持するピンセット91と、当該ピンセット91を支持し直線的に進退させる多関節型のアーム92を有している。アーム92は、回転自在であり、ピンセット91の向きを変えることができる。したがって、チャック71上のウェハWをピンセット91で支持し向きを変えて、ウェハWを搬送口56を通じて洗浄装置3内に搬送することができる。
【0031】
第1の成膜装置5は、例えばプラズマを用いてウェハWの表面にゲート絶縁膜を形成するためのプラズマ処理装置である。第1の成膜装置5は、例えば図5に示すように上面が開口し、有底円筒状の真空容器100を有している。真空容器100の上面の開口部には、円盤形状で中空のガス供給部101が前記開口部を塞ぐように設けられている。ガス供給部101の下面には、多数のガス供給孔101aが形成されており、ガス供給部101内に導入される反応ガス、例えばシラン(SiH)ガスが真空容器100内にシャワー状に供給される。ガス供給部101の上側には、アンテナ102が設けられている。アンテナ102には、真空容器100の外部に設置されたマイクロ波供給装置103に連通する同軸導波管104が接続されている。アンテナ102は、垂直方向の複数の貫通孔102aを備えており、マイクロ波供給装置103から同軸導波管104を通じて伝搬されたマイクロ波は、アンテナ102の貫通孔102a、ガス供給部101を介して真空容器100内に放射される。このマイクロ波の放射により、真空容器100の上部にプラズマ発生領域Pを形成できる。
【0032】
真空容器100内であって、ガス供給部101に対向する位置には、ウェハWを載置する載置台106が設けられている。載置台106には、例えば交流電源107からの給電によって発熱するヒータ108が内蔵されており、このヒータ108の発熱によって載置台106上のウェハWを加熱できる。真空容器100の側壁の上部付近には、ガス供給管109が接続されている。このガス供給管109は、例えば真空容器100の内周面に沿って環状に複数設けられている。ガス供給管109は、例えば酸素ガスや希ガス等の反応ガスの供給源110に接続されている。この各ガス供給管109と前記ガス供給部101からの反応ガスの導入によって、プラズマ発生領域Pに反応ガスが供給され、アンテナ102からのマイクロ波によって反応ガスがプラズマ化される。真空容器100の底部には、ターボ分子ポンプなどの排気装置111に通じる排気管112に接続されており、真空容器100内は所定の圧力に減圧できる。
【0033】
次に、第2の成膜装置6の構成を説明する。第2の成膜装置6は、例えばウェハWにゲート電極膜を形成するためのCVD処理装置である。第2の成膜装置6は、図6に示すように内部を密閉可能な筐体120を有し、筐体120内には、ウェハWを載置する載置台121が設けられている。載置台121は、筐体120の外部に設置された交流電源122からの給電によって発熱するヒータ123が内蔵されている、このヒータ123の発熱によって載置台121上のウェハWを加熱できる。また、載置台121には、図示しない回転機構が設けられており、載置台121上のウェハWを所定の回転速度で回転できる。
【0034】
筐体120内の上部であって、載置台121に対向する位置には、ウェハWの表面全面に反応ガスを供給するためのガス供給ヘッド124が設けられている。ガス供給ヘッド124は、例えば略円筒形状に形成されている。ガス供給ヘッド124の下面には、多数のガス噴出口125が形成されている。ガス供給ヘッド124の上面の中央部には、筐体120の外部に設置されたガス供給装置126に連通するガス導入管127が接続されている。本実施の形態では、ガス供給装置126から供給されるガスとして、例えばシランガスが用いられる。
【0035】
筐体120の下部には、真空ポンプなどの排気装置128に通じる排気管129が接続されており、この排気管129からの排気によって、筐体120内の雰囲気を排出したり、筐体120内を減圧できる。
以上のように、基板処理システム1を構成する搬入出部2、搬送部7、洗浄装置3、水分除去室4、第1の成膜装置5及び第2の成膜装置は、各々で個別に雰囲気制御できるので、結果的に基板処理システム1内の全体を雰囲気制御できる。
【0036】
基板処理システム1は、以上のように構成されており、次に基板処理システム1の作用について説明する。ウェハWの処理時には、搬送部7のケーシング21にガス供給管30から乾燥した窒素ガスが供給され、搬送部7内が乾燥した低酸素雰囲気に維持される。また、排気管34から排気が行われ、搬送部7内は所定の圧力に減圧される。例えば搬送部7内の圧力は、第1の成膜装置5と第2の成膜装置6内の圧力よりも高い圧力に維持される。本実施の形態においては、第1の成膜装置5における成膜処理は、1.33Pa〜665Pa程度で行われ、第2の成膜装置6における成膜処理は、1.33Pa〜1330Pa程度で行われるので、搬送部7内は、それよりも高い、例えば133×10Pa程度の減圧雰囲気に維持される。
【0037】
洗浄装置3の筐体60内には、ガス給気管Hから窒素ガスが供給され、筐体60内が低酸素雰囲気に維持される。洗浄装置3内は、例えば常圧に維持され、水分除去装置4内は、排気管86からの排気によって、搬送部7の圧力と洗浄装置3の圧力との間の133×10〜常圧の圧力に維持される。この結果、ウェハWの搬送順の洗浄装置3、水分除去装置4、搬送部7、第1の成膜装置5の順に減圧度が高くなっている。また、水分除去装置4内には、ガス供給口80から窒素ガスが常時供給されており、水分除去装置4内は、低酸素雰囲気に維持されている。なお、搬送チャンバ11内の圧力は、ほぼ常圧に維持されている。基板処理システム1内の複数のゲートバルブ41、53、54、55、57は、通常は閉鎖されており、ウェハWが通過する時のみ開放される。
【0038】
そして、カセット載置台10にカセット12が載置されると、ウェハ搬送体15によりカセット12から未処理のウェハWが1枚取り出され、アライメントステージ14に搬送される。アライメントステージ14において位置合わせの行われたウェハWは、搬送口40を通じて搬送部7内に搬送され、ウェハ搬送機構25に受け渡される。ウェハ搬送機構25に受け渡されたウェハWは、搬送口50から水分除去装置4内に搬送され、チャック71に受け渡される。そして、チャック71に受け渡されたウェハWは、ウェハ搬送体90によって洗浄装置3に搬送される。
【0039】
洗浄装置3では、低酸素雰囲気の下、ウェハWを回転させながらウェハWに洗浄液を供給することによって、ウェハWから有機物等の不純物が洗い落とされる。洗浄が終了したウェハWは、低酸素雰囲気内に維持された状態で、ウェハ搬送体90によって水分除去装置4内に搬送され、図3に示すようにチャック71上に支持される。
【0040】
チャック71上にウェハWが支持されると、回転モータ73によりチャック71が回転され、ウェハWが、例えば2000rpm以上、好ましくは3000rpm以上の低速度で回転される。続いて第1のガス供給ノズル74と第2のガス供給ノズル75から高温、例えば50℃〜100℃程度の窒素ガスが噴出され、回転しているウェハWの表面と裏面に高温ガスが吹き付けられる。この高温ガスの吹き付けによって、ウェハWの両面に付着していた水分が蒸発し除去される。このとき、ウェハWに吹き付けられる高温ガスの総供給量は、例えば室内の相対湿度からウェハWに付着している水分の分子量を算出し、当該分子量の水分を蒸発させるのに必要な熱量から求めるようにしてもよい。
【0041】
制御部88では、水分濃度センサ87により水分除去装置4内の水分濃度を常時モニタリングしており、例えば上記高温ガスの供給は、水分除去装置4内の水分濃度が予め設定しておいたしきい値以下に低下するまで行われる。水分濃度がしきい値より下がると、高温ガスの供給が停止され、ウェハWの回転も停止される。また、水分濃度がしきい値よりも下がったことをトリガとして、制御部88によりゲートバルブ53が開放される。
【0042】
ゲートバルブ53が開放されると、ウェハ搬送機構25のピンセット26が水分除去装置4内に進入し、ウェハWを受け取って搬送部7に搬出する。その後ウェハ搬送機構25は、レール22上を第1の成膜装置5の正面まで移動し、搬送口51からウェハWを第1の成膜装置5内に搬入する。この間、ウェハWは、乾燥雰囲気内を通過するので、ウェハWに水分が付着することはない。
【0043】
第1の成膜装置5に搬送されたウェハWは、載置台106上に載置され、真空容器100内を減圧した状態で、ガス供給管109やガス供給部101から酸素ガスやシラン(SiH)ガスなどの反応ガスが供給され、当該反応ガスがマイクロ波によってプラズマ化される。そして、当該プラズマによってウェハWの表面で化学反応が起こり、ウェハWの表面にシリコン酸化膜等のゲート絶縁膜が形成される。ゲート絶縁膜が形成されたウェハWは、ウェハ搬送機構25により搬送部7に搬送され、搬送部7を通じて第2の成膜装置6に搬送される。
【0044】
第2の成膜装置6では、筐体120内を減圧し、ウェハWを加熱した状態で、ウェハWに対し反応ガスである例えばシランガスが供給され、ウェハWの表面で化学反応を起こさせてウェハW上に多結晶シリコン若しくはTaN、Ta、W、TiNなどのメタル材料等のゲート電極膜が形成される。
【0045】
ゲート電極膜が形成されると、ウェハWは、ウェハ搬送機構25によって搬送部7に搬出され、搬送部7を通じて搬送チャンバ11の近傍まで搬送される。そして、搬送口40を通じて搬送チャンバ11内に搬送され、ウェハ搬送体15によってカセット12に戻される。こうして一連のウェハWの洗浄及び成膜処理が終了する。
【0046】
以上の実施の形態によれば、洗浄装置3の隣に水分除去装置4を設置し、水分除去装置4から第1の成膜装置5までの搬送通路20を有する搬送部7を乾燥雰囲気に維持できるようにしたので、水分除去装置4においてウェハWから水分を十分に除去し、その状態を維持しながらウェハWを第1の成膜装置5に搬送することができる。この結果、ウェハWから水分を完全に取り除いた状態で成膜処理を行うことができ、成膜処理が水分に妨げられることなく適正に行われる。
【0047】
水分除去装置4に、第1のガス供給ノズル74と第2のガス供給ノズル75を設けたので、ウェハWの両面に高温の窒素ガスを供給し、ウェハWから完全に水分を除去することができる。このとき、回転モータ73によりウェハWを回転させるようにしたので、ウェハWの全面に高温のガスが満遍なく供給され、水分をより確実に除去できる。また、高温のガスには、酸素の含有量が4ppm以下の窒素ガスが用いられたので、ウェハWの酸化を防止し、ウェハ表層膜の変質を防止できる。さらに、洗浄装置3にガス給気管Hを設け、洗浄装置3の筐体60内を低酸素雰囲気にし、水分除去装置4にもガス供給管82を設け、ケーシング70内を低酸素雰囲気にしたので、洗浄装置3でウェハWに水分が付着してから水分除去装置4で水分が除去されるまでの間、ウェハWを始終低酸素雰囲気内に維持することができる。この結果、水分が付着して酸素と反応し易くなったウェハWが酸素と反応することを防止できる。つまりウェハWが酸化され、ウェハの表層膜が変質することが防止できる。
【0048】
水分除去装置4の排気管86に水分濃度センサ87を設けたので、水分除去装置4内に水分が無くなったこと、すなわちウェハWに水分が無くなったことを検出できる。また、水分濃度センサ87の計測結果に基づいてゲートバルブ53の開閉を制御する制御部88を備えたので、ウェハWから水分が除去される前に過ってゲートバルブ53が開放されウェハWが成膜装置5に搬送されることが防止できる。
【0049】
搬送部7に、排気管35や排気装置34を備えた減圧機構を設けたので、搬送部7内の圧力を第1の成膜装置5及び第2の成膜装置6内の圧力よりも高く、水分除去装置4内の圧力よりも低くすることができる。こうすることにより、高い減圧状態で処理の行われる第1の成膜装置5にウェハWを搬送する際に、ウェハWを段階的に減圧雰囲気に慣らしていくことができる。この結果、急激な圧力変動によるウェハWの破損を防止できる。この点、水分除去装置4も洗浄装置3の常圧よりも低い圧力に維持したので、ウェハWが洗浄装置3から搬送部7に搬送される際にも、周辺雰囲気を徐々に減圧していくことができる。
【0050】
以上の実施の形態では、水分除去装置4内における水分の除去を第1及び第2のガス供給ノズル74、75からの高温ガスを用いて行っていたが、ウェハWを輻射熱によって加熱する加熱部材としてのヒータを用いて行ってもよい。かかる場合、例えば図7に示すように、ウェハWの上面側と下面側に、交流電源100からの給電により発熱するヒータ101が配置される。このヒータ101は、ウェハWと非接触になる位置に配置されている。そして、ウェハWに付着した水分を除去する際には、ウェハWを回転しながら、ウェハWの両面にヒータ101から輻射熱が供給されてウェハWが加熱される。かかる場合、ウェハWが輻射熱によって加熱されるので、熱がウェハW全面に偏り無くより確実に供給され、ウェハWに付着した水分を残らず除去できる。なお、ウェハWを加熱する加熱部材は、ヒータに限られず、赤外線ランプや、照射するガスを加熱してそのガスを吹き付けることによってウェハWを加熱する熱伝導を利用した他の加熱部材であってもよい。
【0051】
以上の実施の形態で記載した基板処理システム1は、成膜装置で形成された膜の膜厚を測定する膜厚測定部材を備えていてもよい。例えば図8に示すように搬送部7内の搬送通路20上に、レーザ光を用いて膜厚を測定する膜厚測定部材としての膜厚測定用プローブ110が設けられる。膜厚測定用プローブ110は、例えばケーシング21の上面に取り付けられ、上方から下方に向けてレーザ光を照射できるようになっている。そして、例えば第1の成膜装置5でゲート絶縁膜が形成されたウェハWが搬送部7を通って第2の成膜装置6に搬送される際に、膜厚測定用プローブ110によってゲート絶縁膜の膜厚が測定される。また、第2の成膜装置6においてゲート電極膜が形成されたウェハWが搬入出部2に搬送される際に、膜厚測定プローブ110によってゲート電極膜の膜厚が測定される。かかる基板処理システム1によれば、成膜装置と同じシステム内で膜厚検査を行うことができる。また、膜厚の不具合を早期に検出することができるので、例えば直ちに成膜装置を停止させてレシピを修正することによって、不良のウェハWが多量に製造されることを抑制できる。なお、膜厚測定用プローブの設置位置は、搬送部7に限られず、例えば各成膜装置内に設けてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施の形態の一例について説明したが、本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば基板処理システム1における洗浄装置3、水分除去装置4、第1の成膜装置5及び第2の成膜装置6の配置は、任意に変更できる。また、第1の成膜装置5や第2の成膜装置6は、ゲート絶縁膜、ゲート電極膜を成膜する装置に限られず、他の膜を成膜する装置、例えばスパッタリング装置等であってもよい。また、成膜装置の数も2台に限られず、任意に選択できる。さらに、基板処理システム1には、第1及び第2の成膜装置に代えて、CVD或いはPVDを用いたメタル形成装置、バリアメタル形成装置等の他の処理装置を設けてもよい。本発明に適用される基板は、ウェハに限られず、LCD基板、フォトマスク用のガラス基板等の他の基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態にかかる基板処理システムの構成の概略を示す横断面の説明図である。
【図2】洗浄装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図3】水分除去装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図4】水分除去装置のチャックの平面図である。
【図5】第1の成膜装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図6】第2の成膜装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図7】ヒータを備えた水分除去装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図8】膜厚測定用プローブを備えた基板処理システムの構成の概略を示す横断面の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板処理システム
3 洗浄装置
4 水分除去装置
5 第1の成膜装置
6 第2の成膜装置
7 搬送部
21 ケーシング
74 第1のガス供給ノズル
75 第2のガス供給ノズル
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理システムであって、
洗浄液を用いて基板を洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置で洗浄された基板に付着した水分を除去する水分除去装置と、
前記水分除去装置で水分の除去された基板を乾燥雰囲気内を通して基板の他の処理装置に搬送するための搬送部と、を備え、
前記水分除去装置は、当該水分除去装置内を減圧する減圧装置と、当該水分除去装置内の全体に酸素ガス以外のガスを供給するためのガス供給部とを備え、
前記搬送部は、基板の搬送通路を覆うケーシングを備え、
前記搬送部には、前記搬送通路のケーシング内の雰囲気を減圧する減圧機構と、前記搬送通路のケーシング内に乾燥気体を供給する乾燥気体供給部が設けられていることを特徴とする、基板の処理システム。
【請求項2】
前記水分除去装置内の圧力を、前記洗浄装置内の圧力よりも低く、かつ前記搬送部内の圧力よりも高くすることを特徴とする、請求項1に記載の基板の処理システム。
【請求項3】
前記乾燥気体は、酸素ガス以外の気体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の基板の処理システム。
【請求項4】
前記減圧機構は、前記搬送通路内の圧力が前記他の処理装置内の圧力と前記水分除去装置内の圧力の間になるように制御できる制御部を備えたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の基板の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−91920(P2008−91920A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257665(P2007−257665)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2003−57202(P2003−57202)の分割
【原出願日】平成15年3月4日(2003.3.4)
【出願人】(000205041)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】