説明

基板の処理方法およびその処理装置並びに電気光学装置用基板の製造方法

【課題】基板上の配線または素子の静電破壊を抑制できる基板の処理方法および基板の処理装置を提供する。
【解決手段】処理ステージ211に載置された基板210を鉛直軸Y周りに回転させ、基板210の一方の面に処理液を供給することにより基板210を処理する基板210の処理方法において、処理ステージ211上に基板210を載置する工程Aと、基板210の上に霧状の液体を供給する工程Bと、工程Bの後に、基板210の上に処理液を供給する工程Cと、を備える。このように、帯電した基板210に霧状の処理液を供給することで、基板210からの急激な電荷移動を抑制でき、基板210上の配線または素子の静電破壊を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する基板上に薬液などの処理液を供給して基板を処理する、基板の処理方法および基板の処理装置並びに電気光学装置用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用基板、電気光学装置用基板などの基板の処理において、回転する基板上に薬液などの処理液を供給して基板を処理する処理装置が知られている。
このような基板の処理装置において、基板を処理ステージに載置したときに基板が帯電し、処理液を供給したときに処理液を通して電荷の流れが起こり、基板に形成された絶縁膜を突き破る静電破壊が生ずる問題がある。
この問題を解消するために、例えば特許文献1に、イオン化エアーを基板に噴射させることで静電気を除去する基板の処理装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−66163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような基板の処理装置では、基板の広い範囲にわたってイオン化エアーを噴射させて、確実にしかも短時間に除電することは困難であり、静電気を除去する充分な効果が得られない。このため、基板に静電破壊が生ずる問題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる基板の処理方法は、処理ステージに載置された基板を鉛直軸周りに回転させ、該基板の一方の面に処理液を供給することにより前記基板を処理する基板の処理方法であって、前記処理ステージ上に前記基板を載置する工程Aと、前記基板の上に霧状の液体を供給する工程Bと、前記工程Bの後に、前記基板の上に前記処理液を供給する工程Cと、を備えることを特徴とする。
【0007】
この方法によれば、上記工程Bにおいて処理ステージに載置された基板に霧状の液体を供給する。処理ステージに載置された基板が帯電している状態において、基板に霧状の液体を供給することで、基板からの急激な電荷移動が抑制されて基板の静電破壊を防止することができる。そして、その後、所定の処理を行うことで、基板上の配線または素子の静電破壊を抑制可能な基板の処理方法を提供できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる基板の処理方法において、前記霧状の液体は、水、炭酸水および薬液のうち、少なくとも一つを含むことが望ましい。
【0009】
この方法によれば、霧状の液体は、基板の処理工程に応じて水、炭酸水および薬液の中から選択することが可能であり、様々な処理工程に対応できる基板の処理方法を提供できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる基板の処理方法において、前記基板は、該基板上にスイッチング素子または容量素子を具備して構成される電気光学装置用基板であって、前記スイッチング素子または前記容量素子を前記電気光学装置用基板上に形成する工程において、前記工程A乃至Cをこの順で実施することを特徴とする。
【0011】
この方法によれば、電気光学装置の製造工程において、静電破壊が生じやすいスイッチング素子および容量素子に静電破壊が生じることなく形成することが可能となり、電気光学装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる基板の処理装置は、基板を鉛直軸周りに回転させ、該基板の一方の面に処理液を供給することにより前記基板を処理する基板の処理装置であって、前記基板が載置される処理ステージと、前記基板上に霧状の液体を供給するミスト供給ノズルと、前記基板上に前記処理液を供給する処理液供給ノズルと、が備えられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、基板に霧状の液体を供給するミスト供給ノズルが備えられていることから、処理ステージに載置された基板に霧状の液体を供給できる。処理ステージに載置された基板が帯電している状態において、基板に霧状の液体を供給することで、急激な電荷移動が抑制されて基板上の配線または素子の静電破壊を抑制することができる。
このように、本適用例によれば、基板上の配線または素子の静電破壊を抑制できる基板の処理装置を提供できる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる基板の処理装置において、前記ミスト供給ノズルから、水、炭酸水および薬液のうち、少なくとも一つの霧状の液体が前記基板上に供給されることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、霧状の液体は、基板の処理工程に応じて水、炭酸水および薬液の中から選択することができ、様々な処理工程に対応できる基板の処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態の説明に先立ち、本実施形態の理解のために基板上の配線または素子が静電破壊される原因について考察する。
図10は、ウェット処理装置における基板に形成された素子に静電破壊が生ずる状態を説明する説明図である。
【0017】
図10(a)に示すように、ウェット処理装置には基板210が載置されて処理が行われる処理ステージ211と、処理ステージ211に設けられ基板210をチャックするチャックピン212と、処理ステージ211の周りに配置され薬液などを捕集するカップ250を備えている。
処理ステージ211に載置される前の基板210は、表面に絶縁膜が形成され静電気として中性の状態である。
また、処理ステージ211およびカップ250はフッ素樹脂などで形成され、処理ステージ211の回転による空気との摩擦などにより、負の静電気を帯びている。
【0018】
そして、図10(b)に示すように、基板210が処理ステージ211に載置されチャックピン212で保持されると、基板210内の自由電子が処理ステージ211およびカップ250からの斥力を受けて基板210内で電荷の偏りが生じる。電荷の偏りは処理ステージ211から遠い位置にある基板210の上面側に偏り、基板210は負の帯電値を示す。
【0019】
次に、図10(c)に示すように、負に帯電した処理液供給ノズル222が基板210に接近すると、基板210の自由電子はさらに斥力を受ける。
ここで、図10(d)に示すように、処理液供給ノズル222から処理液が吐出され、処理液が基板210に触れたとき、斥力を受けていた電荷が処理液に逃げる。また、この処理液が基板210に触れる直前において、処理液と基板210の間で放電が発生する。電荷は基板210内を移動して処理液の接触位置で基板210上の絶縁膜を通り抜けて、処理液へ移動する。このようにして、基板210上の絶縁膜を破壊する静電破壊が生ずると考えられる。例えば基板210の絶縁膜の下に素子が形成されている場合には、絶縁膜が破壊されることで素子としての機能を失う。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態)
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本実施形態における基板の処理装置としてのウェット処理装置の概略構成を示す模式断面図である。図2はウェット処理装置の概略斜視図である。
【0021】
以下に述べる本実施形態は、液晶装置、プラズマディスプレイ装置、有機エレクトロルミネッセンス装置などの電気光学装置用の基板において、基板のエッチング、洗浄などを行う処理装置の一例である。
【0022】
ウェット処理装置201は、処理室202内に、基板210の被処理面210aを上向きに支持し鉛直軸Y周りに回転させる処理ステージ211と、処理ステージ211上に支持されている基板210の被処理面210a上に霧状の液体を供給するミスト供給ノズル221と、処理液を供給する処理液供給ノズル222と、を備えている。このミスト供給ノズル221および処理液供給ノズル222は、処理ステージ211上方に進入、退出可能に構成されている。
ここで、処理液とは純水、炭酸水などの洗浄液、エッチング液などの薬液などを指している。エッチング液としては、例えば、フッ酸、希フッ酸、フッ酸と硝酸との混合液である混酸(フッ硝酸)および水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0023】
また、ウェット処理装置201には、図示しないが、処理室202内に基板210を搬入および搬出する基板搬送装置や、処理室202内に窒素ガスなどを供給するガス供給装置などが設けられている。また、処理室202の底部には開口部204が設けられ、処理液回収経路256を経て、回収液貯蔵タンク272に繋がっている。
【0024】
なお、以下の説明において、純水と複数種類の薬液とを特に明確に区別して述べる場合を除き、電気光学装置用の基板上に供給される液体である純水と複数種類の薬液とを一括して、単に処理液と称する。
【0025】
円板状の処理ステージ211上面には、基板210を挟持するための複数のチャックピン212が設けられている。また、処理ステージ211の下面には、回転軸213が突設されている。処理ステージ211は、回転軸213が、処理室202内に設けられた基台214に軸受を介して支持されることにより、鉛直軸Y周りに回転自在に構成されている。
【0026】
また、基台214の下方には、基板回転駆動手段としてのモータ218が設けられており、モータ218の回転駆動力は、モータ218の回転軸に嵌合されたドライブプーリ216、ベルト217および回転軸213の下端に嵌合されたドリブンプーリ215を介して、回転軸213へ伝えられる。すなわち、ウェット処理装置201では、モータ218の作動により、処理ステージ211が回転駆動される。
【0027】
ミスト供給ノズル221と、処理液供給ノズル222は、処理液を貯留するタンクや、このタンクから処理液を送出するためのポンプおよびバルブなどを備えた処理液供給手段220に連通されており、ウェット処理の工程に応じて、純水と複数種類の薬液とを個別に基板210の被処理面210a上に供給する。
【0028】
ウェット処理装置201には、処理ステージ211および基台214を囲うように、処理液回収用のカップ250が配設されている。カップ250は、処理ステージ211および基台214の側面部を覆うような、鉛直軸Yを中心軸とした略円筒状の形状を有し、処理液回収経路255に連通され、回収液貯蔵タンク271に繋がっている。
【0029】
カップ250は、処理液に対する耐液性を有する材料により構成されており、本実施形態では、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)もしくは塩化ビニルにより構成されている。なお、カップ250は、全体がPTFEまたは塩化ビニルにより構成される必要はなく、表面がPTFEまたは塩化ビニルにより被覆された構成であってもよい。
【0030】
上述した基板搬送装置、モータ218、処理液供給手段220は、制御手段219に電気的に接続されている。制御手段219は、演算装置、入出力装置および記憶装置などを具備して構成され、基板搬送装置、モータ218、ミスト供給ノズル221、処理液供給ノズル222の動作を制御する装置である。すなわち、制御手段219により、ウェット処理装置201の動作が制御されている。
【0031】
以上の構成のウェット処理装置201は、以下の動作を行い、基板210の処理が行われる。
図3はウェット処理装置を用いた基板処理の一例を示すフローチャートである。図4は基板処理工程を説明する説明図である。以下、図3のフローチャートに従い、図4を参照して基板処理工程について説明する。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、基板210を処理ステージ211に載置し、チャックピン212で保持する(ステップS10)。この状態は、図10(b)で説明したように、基板210内で電荷の偏りが生じ、基板210は負の帯電値を示している。
次に、図4(b)に示すように、ミスト供給ノズル221が処理ステージ211上方に移動して、エッチング液などの薬液を霧状した液体を基板210上に供給する(ステップS11)。
【0033】
このとき、霧状の薬液を供給する前では、図10(c)で説明したように、負に帯電した処理液供給ノズル222が基板210に接近すると、基板210の自由電子はさらに斥力を受ける。そして、霧状の薬液が基板210に供給されるが、薬液が霧状、つまり粒子状の液体が基板210に供給されるため、基板210から薬液に急激な電荷移動が起こらず、基板210の静電破壊を防止することができる。
【0034】
続いて、図4(c)に示すように、ミスト供給ノズル221が後退して、処理液供給ノズル222が回転する処理ステージ211上方に移動して、エッチング液などの薬液を基板210上に供給する(ステップS12)。
図4(d)に示すように、所定の時間にて処理が終わると、その後、処理液供給ノズル222から吐出する処理液が純水に切り替わり、基板210に純水を供給する(ステップS13)。このようにして、純水により薬液が洗い流されて基板210がリンスされる。
最後に、図4(e)に示すように、処理液供給ノズル222が後退して、処理ステージ211を高速に回転して基板210をスピン乾燥する(ステップS14)。
なお、上記の基板の処理方法では、霧状の薬液を基板210上に供給した後に、液状の薬液を供給して基板の処理をしているが、霧状の薬液を供給し続けて基板の処理を行ってもよい。
【0035】
また、ウェット処理装置を用いた他の基板の処理方法として、図5のフローチャートに示す実施も可能である。
ステップS20にて、基板210を処理ステージ211に載置し、チャックピン212で保持する。
次に、ステップS21にて、ミスト供給ノズル221が処理ステージ211上方に移動して、純水を霧状した液体を基板210上に供給する。
続いて、ステップS22にて、処理液供給ノズル222が回転する処理ステージ211上方に移動して、エッチング液などの薬液を基板210上に供給する。
そして所定の時間にて処理が終わると、ステップS23にて、処理液供給ノズル222から吐出する処理液が純水に切り替わり、基板210に純水を供給する。このようにして、純水により薬液が洗い流されて基板210がリンスされる。
最後に、ステップ24にて、処理ステージ211を高速に回転して基板210をスピン乾燥する。
このように、霧状の液体はエッチング液などの薬液でも、純水、炭酸水などを用いても実施することが可能である。
【0036】
以上、本実施形態の基板の処理方法では、処理ステージ211に載置された基板210に霧状の液体を供給する。処理ステージ211に載置された基板210が帯電している状態において、基板210に霧状の液体を供給することで、基板210からの急激な電荷移動が抑制されて基板210上の配線または素子の静電破壊を防止することができる。そして、その後、所定の処理を行うことで、基板210上の配線または素子の静電破壊を抑制できる基板210の処理方法を提供できる。
【0037】
また、霧状の液体は、基板210の処理工程に応じて水、炭酸水および薬液の中から選択することができ、様々な処理工程に対応できる基板210の処理方法を提供できる。
【0038】
さらに、本実施形態のウェット処理装置201では、基板210に霧状の液体を供給するミスト供給ノズル221が備えられていることから、処理ステージ211に載置された基板210に霧状の液体を供給できる。処理ステージ211に載置された基板210が帯電している状態において、基板210に霧状の液体を供給することで、急激な電荷移動が抑制されて基板210の静電破壊を抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、基板210上の配線または素子の静電破壊を抑制できるウェット処理装置201を提供できる。
【0039】
また、霧状の液体は、基板210の処理工程に応じて水、炭酸水および薬液の中から選択することができ、様々な処理工程に対応できるウェット処理装置201を提供できる。
【0040】
次に、上記で説明した基板の処理方法を電気光学装置の製造に利用した実施形態について説明する。
まず、本実施形態の電気光学装置に係る実施形態の全体構成について、図6および図7を参照して説明する。ここで、図6は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図7は、図6のH−H’断面図である。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとって説明する。
【0041】
図6および図7において、本実施形態に係る電気光学装置500では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0042】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などからなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱などにより硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズなどのギャップ材が散らばって設けられている。なお、当該液晶装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層50中に含まれてよい。
【0043】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。なお、このような額縁遮光膜53の一部または全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0044】
シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101および外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。さらに、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0045】
また、対向基板20上の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10上にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。上下導通材106および上下導通端子によって、TFTアレイ基板10と対向基板20との間の電気的な導通がなされる。
【0046】
図7において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線などの配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状またはストライプ状の遮光膜23が設けられており、さらには最上層部分に配向膜22が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種または数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0047】
なお、図6および図7に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104などに加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥などを検査するための検査回路などを形成してもよい。
【0048】
本発明の本実施形態における電気光学装置の画素部における構成について、図8を参照して説明する。ここに図8は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線などの等価回路である。図9は、画素部における積層構造を説明するための概略断面図である。
【0049】
図8において、本実施形態における電気光学装置500の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのスイッチング素子であるTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0050】
また、TFT30のゲートにゲート電極3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線11aおよびゲート電極3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで選択された走査線11aの画素に書き込まれる。
【0051】
画素に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極9aと対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0052】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に容量素子70を付加する。この容量素子70は、走査線11aに並んで設けられ、固定電位側容量電極が、一定電位に固定された容量配線400に電気的に接続されている。
【0053】
以下に、データ線6a、走査線11a、ゲート電極3aおよびTFT30などからなる、上述のような回路動作が実現される電気光学装置の具体的な構成について、図9を参照して説明する。
【0054】
まず、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6aおよび走査線11aが設けられている。データ線6aは、後述するようにアルミニウム膜などを含む積層構造からなり、走査線11aは、例えば導電性のポリシリコン膜などからなる。平面的に見て走査線11aとデータ線6aとが交差する箇所において、走査線11aとデータ線6aとの間の層に、半導体層1aとゲート電極3aを有して構成されるTFT30が設けられている。また、走査線11aは、ゲート電極3aとコンタクトホール12cvを介して電気的に接続されている。
【0055】
TFTアレイ基板10の側には、図9に示すように、前記の画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理などの所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO膜などの透明導電性膜からなる。他方、対向基板20の側には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その上層側には、ラビング処理などの所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は、上述の画素電極9aと同様に、例えばITO膜などの透明導電性膜からなる。
【0056】
このように対向配置されたTFTアレイ基板10および対向基板20間には、前述のシール材52(図6および図7参照)により囲まれた空間に液晶などの電気光学物質が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、電圧が印加されていない状態においては配向膜16および22により所定の配向状態をとる。
【0057】
一方、TFTアレイ基板10上には、前記の画素電極9aおよび配向膜16の他、これらを含む各種の構成が積層構造をなして備えられている。この積層構造は、図9に示すように、下から順に、走査線11aを含む第1層、ゲート電極3aを含むTFT30などを含む第2層、容量素子70を含む第3層、データ線6aなどを含む第4層、容量配線400などを含む第5層、前記の画素電極9aおよび配向膜16などを含む第6層(最上層)からなる。また、第1層および第2層間には下地絶縁膜12が、第2層および第3層間には第1層間絶縁膜41が、第3層および第4間には第2層間絶縁膜42が、第4層および第5層間には第3層間絶縁膜43が、第5層および第6層間には第4層間絶縁膜44が、それぞれ設けられており、前述の各要素間が短絡することを防止している。また、これら各種の絶縁膜12、41、42、43および44には、例えば、TFT30の半導体層1a中の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホールなどもまた設けられている。以下では、これらの各要素について、下層側から順に説明を行う。
【0058】
まず、第1層には、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Moなどの高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの、或いは導電性ポリシリコンなどからなる走査線11aが設けられている。
【0059】
次に、第2層として、ゲート電極3aを含むTFT30が設けられている。TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、その構成要素としては、上述したゲート電極3a、例えばポリシリコン膜からなりゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、ゲート電極3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1dおよび高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0060】
また、本実施形態では、この第2層に、上述のゲート電極3aと同一膜として中継電極719が形成されている。中継電極719とゲート電極3aとは同一膜として形成されており、後者が例えば導電性ポリシリコン膜などからなる場合においては、前者もまた、導電性ポリシリコン膜などからなる。
【0061】
走査線11aの上、かつ、TFT30の下には、例えばシリコン酸化膜などからなる下地絶縁膜12が設けられている。
【0062】
前述の第2層上の第3層には、容量素子70が設けられている。容量素子70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1eおよび画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極としての下部電極71と、固定電位側容量電極としての上部電極である容量電極300とが、誘電体層75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0063】
より詳細には、下部電極71は、例えば金属、合金、導電性のポリシリコンまたは導電性の金属シリサイド(例えばWSi)などからなる単層膜もしくは多層膜から構成される。ここでは、一具体例として、下部電極71は、リン(P)がイオン注入されたポリシリコンから構成され、その膜厚は約150nmである。なお、下部電極71は、画素電位側容量電極としての機能を持つ他、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能を持ち、中継電極719を介して画素電極9aと電気的に接続されている。
【0064】
誘電体層75は、約5〜30nm程度の膜厚を有する高温酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)、高密度プラズマ酸化膜(HDP(High Density Plasma)膜)などの酸化シリコン膜、或いは窒化シリコン膜などの絶縁性材料から構成される。ここでは、一具体例として、誘電体層75は、下層に酸化シリコン膜、上層に窒化シリコン膜を積層した二層構造を有する。なお、誘電体層75は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜などというような三層構造、或いはそれ以上の積層構造やHfO2、Ta25、TiO2、MgOなどの金属酸化膜を少なくとも1つ有するように構成されてもよい。また、誘電体層75は、単層構造としてもよい。
【0065】
容量電極300は、容量素子70の固定電位側容量電極として機能する。本実施形態において、容量電極300を固定電位とするために、容量電極300は、固定電位とされた後述する容量配線400と電気的に接続されている。また、容量電極300は、TFT30に上側から入射しようとする光を遮る機能を有している。この容量電極300の構成材料は、下部電極71と同様に、例えば金属、合金、導電性のポリシリコンまたは導電性の金属シリサイド(例えばWSi)などからなる単層膜もしくは多層膜から構成される。ここでは、一具体例として、容量電極300は、上層から順に、WSi層およびポリシリコン層という二層構造により構成され、その膜厚は約150nmである。WSi層およびポリシリコン層からなる二層構造を有する容量電極300は、WSi層の存在によりTFT30に対する遮光性を有し、ポリシリコン層の存在により良好な電気伝導性を有する。また、このWSi層は、他に、アルミニウムなどの金属からなる層とすることもできる。
【0066】
以上説明したTFT30ないしゲート電極3aおよび中継電極719の上、かつ、容量素子70の下には、例えば、窒化シリコン膜または酸化シリコン膜などからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0067】
そして、この第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ソース領域1dと後述するデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール81が、後述する第2層間絶縁膜42を貫通して形成されている。また、第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと容量素子70を構成する下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール83が形成されている。さらに、この第1層間絶縁膜41には、容量素子70を構成する画素電位側容量電極としての下部電極71と中継電極719とを電気的に接続するためのコンタクトホール881が形成されている。また、第1層間絶縁膜41には、中継電極719と後述する第2中継電極6a2とを電気的に接続するためのコンタクトホール882が、後述する第2層間絶縁膜42を貫通して形成されている。
【0068】
前述の第3層の上層である第4層には、データ線6aが設けられている。このデータ線6aは、例えば、下層より順に、アルミニウム層41A、窒化チタン層41TN、窒化シリコン層401の三層構造を有する膜として形成されている。
【0069】
また、この第4層には、データ線6aと同一膜として、容量配線用中継層6a1および第2中継電極6a2が形成されている。
【0070】
また容量素子70の上、かつ、データ線6aの下には、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜などからなる第2層間絶縁膜42が形成されている。この第2層間絶縁膜42には、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続する、前記のコンタクトホール81が形成されているとともに、前記容量配線用中継層6a1と容量素子70の上部電極たる容量電極300とを電気的に接続するコンタクトホール801が形成されている。さらに、第2層間絶縁膜42には、第2中継電極6a2と中継電極719とを電気的に接続するための、前記のコンタクトホール882が形成されている。
【0071】
前述の第4層の上層である第5層には、容量配線400が形成されている。容量配線400は、画素電極9aが配置された図6に示す画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。
【0072】
また、第4層には、容量配線400と同一膜として、第3中継電極402が形成されている。第3中継電極402は、後述のコンタクトホール804および89を介して、第2中継電極6a2と画素電極9aとを電気的に接続する機能を有する。
【0073】
容量配線400および第3中継電極402は、下層にアルミニウムからなる層、上層に窒化チタンからなる層の二層構造を有している。
【0074】
データ線6aの上、かつ、容量配線400の下には、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜などからなる第3層間絶縁膜43が形成されている。この第3層間絶縁膜43には、前記の容量配線400と容量配線用中継層6a1とを電気的に接続するためのコンタクトホール803、および、第3中継電極402と第2中継電極6a2とを電気的に接続するためのコンタクトホール804がそれぞれ形成されている。
【0075】
第6層には、上述したように画素電極9aがマトリクス状に形成され、画素電極9a上に配向膜16が形成されている。そして、この画素電極9a下には、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜などからなる第4層間絶縁膜44が形成されている。この第4層間絶縁膜44には、画素電極9aおよび前記の第3中継電極402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が形成されている。
【0076】
すなわち、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとの間は、このコンタクトホール89、第3中継層402、コンタクトホール804、第2中継層6a2、コンタクトホール882、中継電極719、コンタクトホール881、下部電極71およびコンタクトホール83を介して、電気的に接続されることとなる。
【0077】
上記の構成を有する電気光学装置である液晶装置のTFTアレイ基板10を製造する場合、特に、TFT30のゲート絶縁膜である絶縁膜2をパターニングした後の工程および容量素子70の誘電体層75をパターニングした後の工程において、帯電したTFTアレイ基板10に処理液が供給される際の放電により、絶縁膜2および誘電体層75が静電破壊されやすい。その結果、液晶装置の歩留まりの悪化や、表示品位の低下を招いてしまう。
【0078】
このような、液晶装置の画素スイッチング素子であるTFT30や、容量素子70の形成工程において、上記の基板の処理方法を用いれば、回路素子の静電破壊を効果的に防止することが可能である。例えば、TFT30の絶縁膜2の形成後における、ゲート電極3aのエッチング後のレジスト剥離処理もしくは剥離処理後の洗浄処理または、その後の洗浄処理において、本実施形態の基板の処理方法を適用することにより、電気光学装置における不良の発生を効果的に防止することが可能である。また、容量素子70の誘電体層75の形成後における、容量電極300のエッチング後のレジスト剥離処理または剥離処理後の洗浄処理にも同様に不良の発生を効果的に防止することができる。
【0079】
もちろん、TFTアレイ基板10の他の製造工程においても、本実施形態の基板の処理方法は有効であり、例えば、TFT30の絶縁膜2形成後の工程にも適用すれば、より液晶装置の歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】ウェット処理装置の概略構成を示す模式断面図。
【図2】ウェット処理装置の概略斜視図。
【図3】ウェット処理装置を用いた基板処理の一例を示すフローチャート。
【図4】基板処理工程を説明する説明図。
【図5】ウェット処理装置を用いた他の基板処理の例を示すフローチャート。
【図6】TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板の側から見た電気光学装置の平面図。
【図7】図6のH−H’断面図。
【図8】画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線などの等価回路。
【図9】画素部における積層構造を説明するための概略断面図。
【図10】ウェット処理装置における基板上の配線または素子に静電破壊が生ずる状態を説明する説明図。
【符号の説明】
【0081】
201…ウェット処理装置、202…処理室、210…基板、211…処理ステージ、212…チャックピン、213…回転軸、214…基台、215…ドリブンプーリ、216…ドライブプーリ、217…ベルト、218…モータ、219…制御手段、220…処理液供給手段、221…ミスト供給ノズル、222…処理液供給ノズル、250…カップ、255,256…処理液回収経路、271,272…回収液貯蔵タンク、500…電気光学装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ステージに載置された基板を鉛直軸周りに回転させ、該基板の一方の面に処理液を供給することにより前記基板を処理する基板の処理方法であって、
前記処理ステージ上に前記基板を載置する工程Aと、
前記基板の上に霧状の液体を供給する工程Bと、
前記工程Bの後に、前記基板の上に前記処理液を供給する工程Cと、を備えることを特徴とする基板の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板の処理方法において、
前記霧状の液体は、水、炭酸水および薬液のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の基板の処理方法において、
前記基板は、該基板上にスイッチング素子または容量素子を具備して構成される電気光学装置用基板であって、
前記スイッチング素子または前記容量素子を前記電気光学装置用基板上に形成する工程において、前記工程A乃至Cをこの順で実施することを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。
【請求項4】
基板を鉛直軸周りに回転させ、該基板の一方の面に処理液を供給することにより前記基板を処理する基板の処理装置であって、
前記基板が載置される処理ステージと、
前記基板上に霧状の液体を供給するミスト供給ノズルと、
前記基板上に前記処理液を供給する処理液供給ノズルと、
が備えられていることを特徴とする基板の処理装置。
【請求項5】
請求項5に記載の基板の処理装置において、
前記ミスト供給ノズルから、水、炭酸水および薬液のうち、少なくとも一つの霧状の液体が前記基板上に供給されることを特徴とする基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−194192(P2009−194192A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34104(P2008−34104)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】