説明

基板の処理方法および処理装置

【課題】貫通孔内に所望の処理を施すことができる処理方法および処理装置を提供すること。
【解決手段】処理装置1は、内部に液体Lが供給されるとともに、供給された前記液体Lに基板2を浸積させる槽11を備える。処理装置1は、第一供給口111Aから第一排出口111Bに向かって液体Lを流すとともに、第二供給口112Aから第二排出口112Bに向かって液体Lを流すと、液体Lが、鉛直方向上方側から下方側に向かって前記基板2の一方の基板面および他方の基板面に沿って流れるように構成され、基板2の一方の面における液体Lの平均流速と、他方の面における液体Lの平均流速とを異ならせる調整手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板は、以下のようにして製造されている。
基材の両面に銅箔が貼り付けられた両面銅貼積層板を用意する。この両面銅貼積層板にビアホールを形成し、さらに、ビアホールおよび両面銅貼積層板上にめっきを行う。その後、両面銅貼積層板を加工して回路を形成する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−186737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の基板の製造方法では、めっきを行う際に、両面銅貼積層板をめっき液に浸漬させている。しかしながら、この製造方法では、ビアホール内に所望のめっき膜を安定的に得ることが難しかった。
【0005】
なお、このように、ビアホール内に所望の処理を実施できないという課題は、めっきを行う場合のみならず、両面銅貼積層板を水に浸して水洗する場合等にも生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基板の一方の基板面側から他方の基板面側にむかって貫通する貫通孔が形成された基板の前記貫通孔に液体を接触させて、前記基板を処理する基板の処理方法であって、
前記液体が供給される槽であり、前記基板を保持し、保持した前記基板とともに当該槽を、第一槽および第二槽に区画する隔壁を備える前記槽を用意する工程と、
前記基板を前記隔壁に保持させて、前記槽内に前記基板を設置する工程と、
前記第一槽および第二槽内に液体を供給して前記基板を前記液体に浸漬させた状態とし、前記第一槽および第二槽それぞれから前記めっき液を排出することで、前記液体を前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流すとともに、前記貫通孔内に前記液体を接触させる工程とを含み、
前記液体を前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流すとともに、前記貫通孔内に前記液体を接触させる前記工程において、
前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とが異なる基板の処理方法が提供される。
【0007】
この発明によれば、基板の一方の基板面に沿って流れる液体の平均流速と、基板の他方の基板面に沿って流れる液体の平均流速とが異なっている。これにより、液体が貫通孔内に引き込まれることとなる。したがって、貫通孔内を液体で確実に処理することができる。
【0008】
また、本発明によれば、上述した処理方法を実施するための処理装置も提供できる。
すなわち、本発明によれば、
基板の一方の基板面側から他方の基板面側にむかって貫通する貫通孔が形成された基板の前記貫通孔内に液体を接触させて、前記基板を処理する基板の処理装置において、
内部に前記液体が供給され、供給された前記液体に前記基板を浸積させるとともに、前記基板を保持し、保持した前記基板とともに槽を、第一槽および第二槽に区画する隔壁を備える槽と、
前記槽の第一槽および第二槽内にそれぞれに前記液体を供給する供給手段とを備え、
当該基板の処理装置は、前記供給手段から供給された前記液体が、前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流れるとともに、前記基板の貫通孔に接触するように構成され、
前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とを異ならせる調整手段を有する基板の処理装置が提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貫通孔内に所望の処理を施すことができる処理方法および処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる処理装置を示す断面図である。
【図2】隔壁を示す図である。
【図3】隔壁を示す図である。
【図4】基板のめっき処理工程を示す図である。
【図5】基板のめっき処理工程を示す図である。
【図6】基板の貫通孔中に電解めっき液が入っていく様子を示す模式図である。
【図7】本発明の変形例にかかる処理装置を示す断面図である。
【図8】本発明の変形例にかかる処理装置を示す断面図である。
【図9】本発明の変形例にかかる処理装置を示す断面図である。
【図10】本発明の変形例にかかる処理装置を示す断面図である。
【図11】処理装置を槽の上側からみた際の断面図である。
【図12】本発明の変形例にかかる処理装置を示す断面図である。
【図13】本発明の変形例にかかる処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、図1を参照して、本実施形態の基板の処理装置1の概要について説明する。
処理装置1は、基板2の一方の基板面側から他方の基板面側にむかって貫通する貫通孔201(図4参照)が形成された基板2の前記貫通孔201内に液体Lを接触させて、基板2を処理するものである。
処理装置1は、内部に前記液体Lが供給されるとともに、供給された前記液体Lに前記基板2を浸積させる槽11を有する。槽11内には、基板2の一対の基板面が鉛直方向と略平行となるように基板2を保持し、保持した前記基板2とともに前記槽11を、第一槽111および第二槽112に区画する隔壁113が形成されている。
第一槽111の液体の第一供給口111Aおよび前記第二槽112の液体の第二供給口112Aは、前記隔壁113で保持された前記基板2よりも鉛直方向上方にあり、第一槽111の液体の第一排出口111Bおよび前記第二槽112の液体の第二排出口112Bは、前記隔壁113で保持された前記基板2よりも鉛直方向下方にある。
当該基板の処理装置1は、第一供給口111Aから第一排出口111Bに向かって前記液体Lを流すとともに、前記第二供給口112Aから第二排出口112Bに向かって前記液体Lを流すと、前記液体Lが、鉛直方向上方側から下方側に向かって前記基板2の一方の基板面および他方の基板面に沿って流れるように構成され、基板2の一方の基板面に沿って流れる液体Lの平均流速(平均線速)と、基板2の他方の基板面に沿って流れる液体Lの平均流速(平均線速)とを異ならせる調整手段を有する。
【0012】
次に、処理装置1について詳細に説明する。
液体Lは薬液、本実施形態では、電解めっき液Lである。すなわち、処理装置1は、本実施形態では電解めっき装置である。
槽11は、たとえば、硬質塩ビ槽であり、本実施形態では、直方体あるいは立方体形状である。
槽11は、隔壁113を備える。この隔壁113は、たとえば、槽11の底面部に立設され、基板2の一対の基板面が鉛直方向と略平行となるように基板2を保持する。そして、隔壁113は、保持した基板2とともに槽11を、第一槽111および第二槽112に区画する。
ここで、図2および図3に隔壁113を示す。図2は、図1のx軸方向から見た図であり、図3は、隔壁113の分解図である。
本実施形態では、隔壁113は、一対の板材113Aで構成される。板材113Aの中央部には、開口113A1が形成されており、この一方の板材113Aの開口113A1をふさぐように、基板2を配置する。そして、他方の板材113Aを重ね合わせ、基板2の周縁部を板材113Aで挟む。これにより、隔壁113に基板2が保持されることとなる。
槽11の底面部には、隔壁113をはめ込むための、凹部(図示略)が形成されている。
【0013】
図1に示すように、槽11の側壁には、電解めっき液Lの第一供給口111Aが形成されている。第一供給口111Aから第一槽111内に電解めっき液Lが供給される。第一供給口111Aは、隔壁113に保持された基板2よりも鉛直方向上方に位置している。そして、第一槽111内の電解めっき液Lは、基板2の基板面に沿って流れ、第一排出口111Bから排出される。
第一排出口111Bは、槽11の底面部に形成されており、隔壁113に保持された基板2よりも鉛直方向下方に位置している。
ここで、第一排出口111Bは、ひとつの貫通孔であってもよく、複数あってもよい。
【0014】
槽11の側壁には、電解めっき液Lの第二供給口112Aが形成されている。第二供給口112Aから第二槽112内に電解めっき液Lが供給される。第二供給口112Aは、隔壁113に保持された基板2よりも鉛直方向上方に位置している。そして、第一槽111内の電解めっき液Lは、基板2の基板面に沿って流れ、第二排出口112Bから排出される。
第二排出口112Bは、槽11の底面部に形成されており、隔壁113に保持された基板2よりも鉛直方向下方に位置している。
ここで、第二排出口112Bは、ひとつの貫通孔であってもよく、複数あってもよい。
本実施形態では、第一排出口111Bは、ひとつの貫通孔で構成され、第二排出口112Bはひとつの貫通孔で構成されている。そして、第一排出口111Bの開口径は、第二排出口112Bの開口径よりも大きい。
【0015】
なお、本実施形態では、排出口111B,112Bと、槽14とは配管で接続されておらず、排出口111B,112Bから排出される電解めっき液Lは、槽14内に自然落下する。
【0016】
また、槽11内には、複数の陽極12が設置されている。本実施形態では、陽極12は2つ設置されている。一方の陽極12は、槽11内に配置された基板2の一方の基板面と対向するように配置され、他方の陽極12は、槽11内に配置された基板2の他方の基板面と対向するように配置されている。陽極12は、たとえば、含リン銅である。
【0017】
処理装置1は、槽11へ供給するための電解めっき液Lが充填された槽(調整槽)14を備える。槽14は、槽11からオーバーフローした電解めっき液Lを受ける役割も果たすため、槽14は槽11の鉛直方向下方側に配置される。
ここで、槽14内の電解めっき液Lを撹拌するために、バブリング装置(図示略)を槽14に接続してもよい。このようにすることで、槽14内の電解めっき液Lの濃度を均一なものとすることができる。
槽14と、槽11の第一供給口111Aとは、配管16で接続されている。配管16および配管16に接続されているポンプP1を介して電解めっき液Lが槽14から槽11へと供給される。
また、槽14と、槽11の第二供給口112Aとは、配管17で接続されている。配管17および配管17に接続されているポンプP2を介して電解めっき液Lが槽14から槽11へと供給される。
【0018】
次に、処理装置1を使用した基板2の処理方法について説明する。
はじめに、図4(A)に示すような基材20を用意する。
この基材20は、絶縁層21と、この絶縁層21の表裏面に貼り付けられた金属膜22(たとえば、銅膜)とを有する。絶縁層21の厚みは、たとえば、5μm以上、100μm以下であり、金属膜22の厚みは、たとえば、1μm以上、50μm以下である。基材20全体の厚みは、たとえば、10μm以上、200μm以下である。
【0019】
次に、図4(B)に示すように、一対の金属膜22および絶縁層21を貫通する貫通孔201を形成する。次に、金属膜22上および貫通孔201内部に無電解めっきを施す。これにより、基板2が得られる。
【0020】
その後、基板2上に金属膜22の一部を被覆するマスクMを配置し、処理装置1を使用して、貫通孔201内部および金属膜22上に電解めっきを施す(図5(A)参照)。
電解めっきは以下のように行う。
はじめに、図1に示すように、槽14から槽11の第一槽111へ、配管16およびポンプP1を介して、電解めっき液Lを供給する。また、槽14から第二槽112へ配管17およびポンプP2を介して、電解めっき液Lを供給し、槽11内を電解めっき液Lで満たしておく。
なお、槽11からは電解めっき液Lがオーバーフローするとともに、槽11内が電解めっき液Lで満ちるように、槽11へ電解めっき液Lを供給しつづける。
その後、基板2を隔壁113に保持させて、基板2を槽11内に配置し、基板2を電解めっき液L中に浸漬させる。このとき、基板2の基板面が鉛直方向と略方向となるように、基板2が槽11内に配置される。その後、陰極(図示略)および陽極12間を通電することで、基板2に対する電解めっきが開始される。電解めっきを行う際、槽14から、第一槽111および第二槽112へは随時電解めっき液Lが供給される。これにより、槽11内の電解めっき液Lは、鉛直方向上側から、鉛直方向下側に向かって、流れることとなる(矢印Y1、Y2参照)。鉛直方向上側から鉛直方向下側に向かって流れる電解めっき液Lは、基板2の一対の基板面に沿って流れ、さらには、貫通孔201内部にも供給される。
なお、電解めっきを行う間、基板2全体が電解めっき液L中に浸漬した状態となる。
【0021】
ここで、本実施形態では、第一排出口111Bの開口径が、第二排出口112Bの開口径よりも大きいため、基板2の一方の基板面(第一槽111側の面)を流れる電解めっき液Lの平均流速は、他方の基板面(第二槽112側の面)を流れる電解めっき液Lの平均流速よりも速くなっている。そのため、図6の拡大断面図に示すように、一方の基板面を流れる電解めっき液Lと、他方の基板面を流れる電解めっきLとの速度差が生じることで、流れが遅い側から速い側へ向かって電解めっき液Lが貫通孔201内に引き込まれ、貫通孔201内に電解めっきが施されることとなる。これにより、貫通孔201内に電解めっきが施されることとなる。したがって、第一排出口111B、第二排出口112Bが調整手段となる。
【0022】
なお、基板2の基板面を流れる電解めっき液Lの平均流速は、第一排出口111Bから排出される電解めっき液Lの単位時間当たりの流量V1、第二排出口112Bから排出される電解めっき液Lの単位時間当たりの流量V2から、算出することができる。
まず、第一排出口111Bから排出される電解めっき液Lの単位時間当たりの流量V1を計測する。また、第二排出口112Bから排出される電解めっき液Lの単位時間当たりの流量V2を計測する。本実施形態では、槽11の形状が直方体あるいは立方体であるため、図11に示すように基板2と隔壁113と槽11とで囲まれる面積S1でV1を割ることで、基板2の一方の基板面を流れる電解めっき液Lの平均流速を算出することができる。
同様にして、図11に示すように基板2と隔壁113と槽とで囲まれる面積S2でV2を割ることで、基板2の他方の基板面を流れる電解めっき液Lの平均流速を算出することができる。
また、図12に示すように、隔壁113および基板2で構成される壁面が傾斜しているような場合もある。この場合には、計算シミュレーション等により、基板2の基板面を流れる電解めっき液Lの平均流速を算出することが可能である。
なお、基板2の一方の基板面を流れる電解めっき液Lの平均流速と、基板2の他方の基板面を流れる電解めっき液Lの平均流速との差は、10m/s以上であることが好ましい。
なお、図6の拡大断面図では、マスクMを省略している。
また、図11の図面では、陽極12を省略しているが、陽極12の厚み等を考慮して、平均流速を算出してもよい。
【0023】
さらに、電解めっきを行う際、槽14から第一槽111へは随時電解めっき液Lが供給されており、電解めっき液Lの槽14から第一槽111への供給量は、第一槽111から排出される電解めっき液Lの量よりも多い。同様に、電解めっきを行う際、槽14から第二槽112へは随時電解めっき液Lが供給されており、電解めっき液Lの槽14から第二槽112への供給量は、第二槽112から排出される電解めっき液Lの量よりも多い。
従って、第一槽111、第二槽112の上部からは、電解めっき液Lがオーバーフローする。オーバーフローした電解めっき液Lは、矢印Y3方向に流れ、槽14で回収される。
さらに、槽14には、第一排出口111B、第二排出口112Bからの電解めっき液Lが供給される。
槽14内の電解めっき液Lは、配管16、17およびポンプP1、P2を介して再度槽11に供給されることとなる。
なお、必要に応じて、槽14内の電解めっき液Lの金属濃度等を分析し、槽14内の電解めっき液Lの金属濃度等を調整してもよい。
また、配管16から第一槽111内に供給される単位時間あたりの電解めっき液Lの量は、配管17から第二槽112内に供給される単位時間あたりの電解めっき液Lの量と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
以上のような電解めっきの工程により、図5(A)に示すように、貫通孔201内にビアとなる導電体26が形成されるとともに、金属膜22上に電解めっきによる金属膜が形成される(金属膜23は、金属膜22と金属膜22上のめっき膜を示す)。
【0025】
次に、槽11から電解めっきが施された基板2を取り出し、洗浄する。
その後、マスクMが形成されていた部分の金属膜22をフラッシュエッチングにより除去し、図5(B)に示すように、第一回路層25、第二回路層24を形成する。
以上の工程により、基板2に対し電解めっき処理したフレキシブル回路基板27を得ることができる。
【0026】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
基板2の一方の基板面(第一槽111側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)は、他方の基板面(第二槽112側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)よりも速くなっている。そのため、図6の拡大断面図に示すように、一方の基板面を流れる電解めっき液Lと、他方の基板面を流れる電解めっきLとの速度差が生じることで、流れが遅い側から速い側へ向かって電解めっき液Lが貫通孔201内に引き込まれ、貫通孔201内に電解めっきが施されることとなる。これにより、貫通孔201内に電解めっきを確実に施すことができ、貫通孔201内のめっき膜にボイド等が発生してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態では、基板2を槽11内の電解めっき液L中に浸漬させた状態で、槽11内の電解めっき液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって基板2の基板面に沿って流している。
これにより基板2表面付近で電解めっき液Lが滞留してしまうことが防止され、基板2には、常に新鮮な電解めっき液Lが接触することとなる。これにより、基板2に対し所望のめっき膜を安定的に成膜することができる。
【0027】
また、本実施形態では、槽11内の電解めっき液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって流している。電解めっき液Lが重力に従って流れることとなるので、電解めっき液Lをスムーズに流すことができる。また、電解めっき液Lを重力に従って流すことで、電解めっき液Lの流れが安定したものとなる。
さらに、電解めっき液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって重力に従って流すことで、処理装置1の装置構成の複雑化を抑制できる。
さらに、本実施形態では、基板2を槽11内の電解めっき液L中に浸漬させた状態で、槽11内の電解めっき液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって基板2の基板面に沿って流し、排出している。
これにより、電解めっき液L中に異物が混入していても、槽11内から異物を排出することができる。そのため基板2に異物が付着することを抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態では、基板2はフレキシブル回路基板用の基板であり、その厚みが10〜200μmと比較的薄いものとなっている。
このような基板2を電解めっきL中に浸漬させた場合、電解めっき液L中で基板2がふらついてしまう。そのため、基板2が陽極に近づいたり、離れたりすることで、基板2に対し所望の電解めっきを施すことが難しいことがある。
これに対し、本実施形態では、基板2を電解めっき液L中で浸漬させた状態で、電解めっき液Lを流している。基板2の一方の基板面側および他方の基板面側で、電解めっき液Lが鉛直方向上方側から、下方側に向かって流れるため、基板2が電解めっき液L中でふらつくことが防止される。これにより、基板2に対し所望の電解めっきを施すことができる。また、基板2のふらつきを防止できるので、基板2にしわが発生したり、基板2が破損してしまうことを抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、槽11から電解めっき液Lをオーバーフローさせて電解めっきを行っている。オーバーフローさせることで、基板2が電解めっき液Lに浸漬した状態を確実に維持しながら電解めっきを基板2に対し施すことができる。
【0030】
また、本実施形態では、槽11内に基板2を一枚配置して、電解めっきを行っている。そのため、槽11は、基板2を配置でき、基板2の基板面側で電解めっき液Lを流すことができる程度の大きさでよい。これにより、処理装置1の大型化を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、第一排出口111Bの開口径を、第二排出口112Bの開口径よりも大きくし、基板2の一方の基板面(第一槽111側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)を他方の基板面(第二槽112側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)よりも速くなるようにしたが、これに限られるものではない。
たとえば、図7に示すように、第一排出口111Bに配管18を接続し、ポンプP3で電解めっき液を吸引する。同様に、第二排出口112Bに配管19を接続し、ポンプP4で電解めっき液を吸引する。ポンプP3の吸引力を、ポンプP4の吸引力よりも大きくすることで、基板2の一方の基板面(第一槽111側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)を他方の基板面(第二槽112側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)よりも速くしてもよい。この場合には、第一排出口111Bの大きさは、第二排出口112Bよりも大きくてもよいが、第一排出口111Bの大きさを、第二排出口112Bの大きさと同じとしてもよい。
【0032】
さらに、図8に示すように、第一槽内の電解めっき液を上方から下方に向かって加圧して、第一排出口から排出させる第一加圧手段31と、第二槽内の電解めっき液を上方から下方に向かって加圧して、第一排出口から排出させる第二加圧手段32とを設け、第一加圧手段から電解めっき液に加わる圧力を、第二加圧手段から電解めっき液に加わる圧力よりも大きくすることで、基板2の一方の基板面(第一槽111側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)を他方の基板面(第二槽112側)を流れる電解めっき液Lの平均流速(線速)よりも速くしてもよい。この場合には、第一排出口111Bの大きさは、第二排出口112Bよりも大きくてもよいが、第一排出口111Bの大きさを、第二排出口112Bの大きさと同じとしてもよい。
さらに、ポンプP3、P4と、加圧手段31、32両方を備えるものとしてもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、電解めっき装置1であるとしたが、これに限られるものではない。図9に示すように、処理装置1の陽極を取り除き、本発明の処理装置を無電解めっき装置1Aとしてもよい。
図9に示す処理装置1Aは、処理装置1から陽極を取り除いた点以外は、処理装置1と同じである。槽14、槽11内には、無電解めっき液Lが充填されている。
また、図9に示す処理装置1Aを基板表面の金属層等をエッチングするエッチング装置としてもよい。さらに、処理装置1Aを現像装置としてもよい。基板表面の感光性樹脂層に光を照射し、未露光部分を除去するための現像液を槽14、槽11内に充填し、処理装置1Aにより、基板表面の感光性樹脂層の未露光部分を除去してもよい。
さらに、処理装置1Aを、基板に形成されたマスク等を剥離処理する剥離装置としてもよい。この場合には、マスク等を剥離するための剥離液を槽14、槽11内に充填すればよい。
【0034】
また、図10に示すように、本発明の処理装置を水洗装置1Bとしてもよい。水洗装置1Bは、処理装置1の陽極を取り除くとともに、槽14A〜14Cを設けた点以外は、処理装置1と同じ構成である。
水洗装置1Bの槽14A内には基板洗浄前の水が充填されている。
槽14Aから槽11へ水が供給され、槽11内で水が鉛直方向上方側から下方側にむかって流れ、基板2が洗浄される。
その後、排出口112からは洗浄後の水が排出され槽14Bに供給される。
槽14B内の水は、槽(浄化槽)14Cに供給され、槽14C内で水が清浄化され、金属等の不純物が除される。槽14C内で清浄化された水は、槽14Aに供給される。槽14Aに供給された水は、再度槽11に供給されることとなる。
このような水洗装置1Bにおいては、基板2には常にきれいな水が接触することとなり、基板2が汚染されてしまうことを防止できる。また、貫通孔201内の洗浄を確実に実施することができる。
さらには、基板を水槽に単に浸漬させて水洗する方法では、一つの水槽で確実に洗浄することが難しく、水槽を複数設けて、多段階で水洗する必要がある。
これに対し、水洗装置1Bを使用すれば、基板2には常にきれいな水が接触するため、多段階で水洗を行う必要がなく、基板2の処理プロセスを簡略化することができる。
なお、水洗装置1Bにおいて、槽14B内の水を槽14Cにて清浄化せずに、廃棄してもよい。
【0035】
さらに、前記実施形態では、槽11内で基板2の基板面が鉛直方向と平行となるように配置したが、これに限らず、図13に示すように、槽11内で基板2の基板面が鉛直方向と直交するように、配置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 処理装置
1A 処理装置
1B 水洗装置
2 基板
11 槽
12 陽極
14 槽
14A 槽
14B 槽
14C 槽
16 配管
17 配管
18 配管
19 配管
20 基材
21 絶縁層
22 金属膜
23 金属膜
24 第二回路層
25 第一回路層
26 導電体
27 フレキシブル回路基板
31 第一加圧手段
32 第二加圧手段
111 第一槽
111A 第一供給口
111B 第一排出口
112 第二槽
112A 第二供給口
112B 第二排出口
113 隔壁
113A 板材
113A1 開口
201 貫通孔
L 電解めっき液(液体)
M マスク
P1 ポンプ
P2 ポンプ
P3 ポンプ
P4 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の基板面側から他方の基板面側にむかって貫通する貫通孔が形成された基板の前記貫通孔に液体を接触させて、前記基板を処理する基板の処理方法であって、
前記液体が供給される槽であり、前記基板を保持し、保持した前記基板とともに当該槽を、第一槽および第二槽に区画する隔壁を備える前記槽を用意する工程と、
前記基板を前記隔壁に保持させて、前記槽内に前記基板を設置する工程と、
前記第一槽および第二槽内に液体を供給して前記基板を前記液体に浸漬させた状態とし、前記第一槽および第二槽それぞれから前記液体を排出することで、前記液体を前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流すとともに、前記貫通孔内に前記液体を接触させる工程とを含み、
前記液体を前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流すとともに、前記貫通孔内に前記液体を接触させる前記工程において、
前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とが異なる基板の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板の処理方法において、
前記槽内において、前記基板は一対の基板面が鉛直方向と略平行となるように前記隔壁に保持され、
前記第一槽および前記第二槽において、前記液体を鉛直方向上側から下側にむかって流すことで、前記基板の一方の基板面および他方の基板面にそって前記液体を流す基板の処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板の処理方法において、
前記第一槽の第一排出口と、前記第二の槽の第二排出口との大きさとを異なる大きさとすることで、前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とを異なるものとする基板の処理方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板の処理方法において、
前記第一槽の第一排出口に接続された排液用の第一ポンプの吸引力と、前記第二の槽の第二排出口に接続された排液用の第二ポンプの吸引力とを異なるものとすることで、前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とを異なるものとする基板の処理方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板の処理方法において、
前記第一槽内に供給された前記液体を加圧して第一槽の第一排出口から排出させるとともに、第二槽内に供給された前記液体を加圧して第二槽の第二排出口から排出させ、
前記第一槽内に供給された前記液体への加圧力と、前記第二槽に供給された前記液体への加圧力とを異なる圧力とすることで、前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とを異なるものとする基板の処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板の処理方法において、
前記液体は、めっき液であり、
前記液体を前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流すとともに、前記貫通孔内に前記液体を接触させる前記工程において、
前記基板の前記貫通孔内にめっき処理を行う基板の処理方法。
【請求項7】
基板の一方の基板面側から他方の基板面側にむかって貫通する貫通孔が形成された基板の前記貫通孔内に液体を接触させて、前記基板を処理する基板の処理装置において、
内部に前記液体が供給され、供給された前記液体に前記基板を浸積させるとともに、前記基板を保持し、保持した前記基板とともに槽を、第一槽および第二槽に区画する隔壁を備える槽と、
前記槽の第一槽および第二槽内にそれぞれに前記液体を供給する供給手段とを備え、
当該基板の処理装置は、前記供給手段から供給された前記液体が、前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流れるとともに、前記基板の貫通孔に接触するように構成され、
前記基板の一方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速と、前記基板の他方の基板面に沿って流れる前記液体の平均流速とを異ならせる調整手段を有する基板の処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板の処理装置において、
前記第一槽の液体の第一供給口および前記第二槽の液体の第二供給口は、前記隔壁で保持された前記基板よりも鉛直方向上方にあり、
前記第一槽の液体の第一排出口および前記第二槽の液体の第二排出口は、前記隔壁で保持された前記基板よりも鉛直方向下方にあり、
当該基板の処理装置は、前記第一供給口から第一排出口に向かって前記液体を流すとともに、前記第二供給口から第二排出口に向かって前記液体を流すと、前記液体が、鉛直方向上方側から下方側に向かって前記基板の一方の基板面および他方の基板面に沿って流れるように構成される基板の処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の基板の処理装置において、
前記調整手段は、前記第一槽の液体の第一排出口と、この第一排出口と大きさが異なる前記第二槽の液体の第二排出口とを含んで構成される基板の処理装置。
【請求項10】
請求項7または8に記載の基板の処理装置において、
前記調整手段は、前記第一槽の第一排出口に接続された排液用の第一ポンプと、
前記第二の槽の第二排出口に接続された排液用の第二ポンプとで構成され、
前記第一ポンプの吸引力は第二ポンプの吸引力とは異なる基板の処理装置。
【請求項11】
請求項7または8に記載の基板の処理装置において、
前記調整手段は、前記第一槽内に供給された前記液体を加圧して第一槽の第一排出口から排出させる第一加圧手段と、
第二槽内に供給された前記液体を加圧して第二槽の第二排出口から排出させる第二加圧手段とで構成され、
第一加圧手段からの前記液体に加わる加圧力と、第二加圧手段からの前記液体への加圧力とが異なる基板の処理装置。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載の基板の処理装置において、
前記液体は、めっき液であり、
当該処理装置は、前記基板の前記貫通孔内にめっき処理を行う装置である基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−256444(P2011−256444A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132902(P2010−132902)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】