説明

基板の処理装置および基板の処理方法

【課題】基板の処理速度を向上させることができる基板の処理装置および処理方法を提供すること。
【解決手段】処理装置1は、基板2が槽11内の液体Lに浸漬した状態で、供給口111から排出口112へ向かって液体を流す際に、鉛直方向上方側から下方側に向かって基板面に沿って流れる流体の流れを乱す手段18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の処理装置および基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板は、以下のようにして製造されている。
基材の両面に銅箔が貼り付けられた両面銅貼積層板を用意する。この両面銅貼積層板にビアホールを形成し、さらに、ビアホールおよび両面銅貼積層板上にめっきを行う。その後、両面銅貼積層板を加工して回路を形成する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−186737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の基板の製造方法では、めっきを行う際に、両面銅貼積層板をめっき液に浸漬させている。しかしながら、この製造方法では、めっき膜を所望の速度で得ることがむずかしかった。
この原因としては、めっき液の滞留が考えられる。めっき液をバブリング等で撹拌することも行われているが、めっき槽は比較的大きいため、バブリング等で撹拌しても、めっき液の滞留を確実に抑制することは非常に困難であった。
なお、このような課題は、めっきを行う場合のみならず、両面銅貼積層板を水に浸して水洗する場合や、エッチング液に両面銅貼積層板を浸してエッチングを行う場合等にも生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、基板に対し液体を接触させて、前記基板を処理する基板の処理装置において、
内部に前記液体が供給されるとともに、供給された前記液体に前記基板を浸漬させる槽と、
前記槽内部に配置される前記基板の基板面が鉛直方向に平行となるように前記基板を保持する保持部とを備え、
前記槽の前記液体の供給口は、前記保持部で保持された前記基板よりも鉛直方向上方にあり、
前記槽の前記液体の排出口は、前記保持部で保持された前記基板よりも鉛直方向下方にあり、
前記基板が前記槽内の前記液体に浸漬した状態で、前記供給口から前記排出口へ向かって液体を流す際に、基板面に沿って流れる流体の流れを乱す手段を備える基板の処理装置が提供される。
【0006】
この発明によれば、基板を槽内の液体中に浸漬させた状態で、槽内の液体を鉛直方向上方側から、下方側に向かって基板の基板面に沿って流すことができる。さらに、流れを乱す手段を備えるため、基板面に沿って流れる流体の流れを乱すことができる。
基板面に沿って流れる流体の流れを乱すことで、基板面に沿って流れる液体の少なくとも一部が新鮮な液体に入れ替わりやすくなり、基板面により新鮮な液を接触させることができる。これにより基板の処理速度を向上させることができる。
さらに、本発明では、供給口が鉛直方向上側、排出口が鉛直方向下側に形成されているので、槽内の液体を鉛直方向上方側から、下方側に向かって流している。液体が重力に従って流れることとなるので、液体をスムーズに流すことができる。
なお、ここで、基板面に沿って流れる流体の流れを乱すとは、基板面に沿って流れる流体の流れのベクトルに対し、このベクトルと交差する方向の流れのベクトルが作用することを意味する。
【0007】
また、本発明によれば、上述した基板の処理装置を使用した基板の処理方法も提供することができる。
すなわち、本発明によれば上述した基板の処理装置を使用した基板の処理方法であって、
前記基板の基板面が鉛直方向と平行となるように、前記保持部に前記基板を保持させる工程と、
前記基板を前記槽内の前記液体中に浸漬させるとともに、前記供給口から前記排出口へ向かって液体を流す工程とを含み、
前記供給口から前記排出口へ向かって液体を流す前記工程では、前記流れを乱す手段により、前記基板面に沿って流れる流体の流れを乱す基板の処理方法も提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の処理速度を向上させることができる基板の処理装置および処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる処理装置を示す断面図である。
【図2】障害物を示す平面図および断面図である。
【図3】基板の処理工程を示す図である。
【図4】基板面に沿って流れるエッチング液が乱れる様子を示す図である。
【図5】処理装置の槽の平面図である。
【図6】障害物の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、図1を参照して、本実施形態の基板の処理装置1の概要について説明する。
処理装置1は、基板2に対し液体Lを接触させて、基板2を処理する装置である。処理装置1は、内部に液体Lが供給されるとともに、供給された液体Lに基板2を浸積させる槽11と、槽11内部に配置される基板2の基板面が鉛直方向に略平行となるように前記基板2を保持する保持部13とを備える。
槽11の液体Lの供給口111は、保持部13で保持された基板2よりも鉛直方向上方にあり、槽11の液体Lの排出口112は、保持部13で保持された基板2よりも鉛直方向下方にある。
また、処理装置1は、基板2が槽11内の液体Lに浸漬した状態で、供給口111から排出口112へ向かって液体を流す際に、鉛直方向上方側から下方側に向かって基板面に沿って流れる流体の流れを乱す手段(以下、障害物という)18を備える。
【0011】
次に、処理装置1について詳細に説明する。
液体Lは薬液、本実施形態では、エッチング液Lであり、たとえば、塩化第二鉄溶液等である。処理装置1は、本実施形態ではエッチング装置である。
槽11は、直方体形状であり、たとえば、硬質塩ビ槽である。
槽11には、エッチング液Lが供給される。槽11の側面には、エッチング液Lの供給口111が形成されている。この供給口111は、槽11内に配置される基板2よりも鉛直方向上方に位置する。
また、槽11の底面には、エッチング液Lの排出口112が形成されている。排出口112は、本実施形態では、槽11の底面に形成された複数の貫通孔で構成されている。このように複数個の貫通孔で排出口112を構成することで、エッチング液Lを基板2の基板面に沿ってスムーズに排出することができる。ただし、貫通孔は一つであってもよい。
排出口112は、槽11内に配置される基板2よりも鉛直方向下方側に位置する。また、排出口112は、供給口111よりも鉛直方向下方側に位置している。
必要に応じて、排出口112に、配管およびポンプを接続し、ポンプでエッチング液Lを吸引することで、排出口112から排出されるエッチング液Lの流速を調整してもよい。
なお、本実施形態では、排出口112と、第二槽14とは配管で接続されておらず、排出口112から排出されるエッチング液Lは、第二槽14内に自然落下する。
また、必要に応じて、槽11から排出されるエッチング液Lの量を調整する調整手段を設けてもよい。たとえば、一部の排出口112をふさぐ栓を前記調整手段として設けてもよく、また、排出口112の大きさを調整する調整手段(たとえば、排出口112の一部をふさぎ、排出口112の開口度合いを調整する板材)を設けてもよい。
なお、本実施形態では、エッチングを行う際、槽11内には、基板2が一枚配置される。
【0012】
保持部13は、基板2を保持するとともに、基板2を槽11内のエッチング液L中に浸漬させるものである。保持部13は、基板2を保持し上下方向に駆動可能であり、槽11内に基板2を配置したり、槽11から基板2を除去したりする。
保持部13に保持された基板2は、基板面が鉛直方向と略平行となるように槽11内に配置されることとなる。
なお、図示しない揺動手段を用い、保持部13を上下方向に揺動させることで、基板2を障害物18に対して相対的に移動させてもよいし、障害物18を上下方向に揺動させることで、基板2を障害物18に対して相対的に移動させてもよい。
このようにすることで、基板2の基板面に縞状のエッチングむらが発生することを確実に抑制することができる。
【0013】
次に、障害物18について説明する。
障害物18は、基板面に沿って流れる流体の流れを乱すものであり、基板面表面に乱流を発生させる。本実施形態では、図2に示す障害物18を使用する。図2(A)は、基板面側からみた障害物18の平面図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B方向の断面図である。
この障害物18は、平板に複数の貫通孔181,182を形成したものである。より具体的には、平面矩形形状の平板に貫通孔181と、複数の貫通孔182とを形成したものである。
障害物18の表裏面は、基板面と平行となっている。
貫通孔181は、平面矩形形状の開口で構成され、平板の前記表裏面を貫通している。この貫通孔181は、障害物18を槽11内に設置する際の把持部となる部分である。
貫通孔182は平面矩形形状の開口で構成され、平板の表裏面を貫通している。貫通孔182は、複数個形成され、いずれも同一の大きさ形状である。本実施形態では、貫通孔182は、四角筒状(直方体状)であり、平面矩形形状(長方形形状)の開口を有する。貫通孔182は、平板の表裏面を貫通している。
各貫通孔182は、障害物18の表裏面に沿った方向、すなわち、貫通方向と直交する延在方向が互いに平行であり、一定の間隔をあけて形成されている。たとえば、図2(B)に示すように、貫通孔182の高さ寸法H1は、10mmであり、幅寸法W1は2mmであり、4mm間隔で形成されている。
【0014】
ここで、隣接する貫通孔182間の領域は、直方体となり、棒状の部材183となる。すなわち、障害物18は、互いに平行に延在する複数の部材183を備える。各部材183は、たとえば、高さ寸法H2が4mmであり、幅寸法W2が2mmであり、複数の部材183は、10mm間隔で配置されている。なお、各部材183の高さ寸法H2の好ましい範囲は、基板面に沿って流れるエッチング液Lの流れを乱す観点から1〜20mmであり、W2は1〜10mmである。また、各部材183間の間隔の好ましい範囲は、基板面に沿って流れるエッチング液Lの流れを乱す観点から、1〜20mmである。なお、部材183は3個以上設けられることが好ましい。
【0015】
各部材183は、槽11内に障害物18を配置した際に、基板2の基板面と対向し、基板面に沿って水平方向に延在する。各部材183の水平方向の長さ寸法は、基板2の幅寸法(図1の奥行き方向の寸法)と同等以上である。したがって、各部材183は、基板2の全幅にわたって基板面と対向し、延在することとなる。
また、障害物18を基板2の基板面と対向配置させ、基板面側から平面視した際、複数の部材183は、基板2の基板面の上端側から下端側にわたって等間隔で配列されることとなる。
ここで障害物18の材料としては、エッチング液Lに対し耐久性のあるものであればよく、たとえば、硬質塩ビ等である。
以上のような障害物18は、平面矩形形状の板材に対し、貫通孔181,182をくりぬくことで製造することができる。
【0016】
さらに、処理装置1は、槽11へ供給するためのエッチング液Lが充填された第二槽(調整槽)14を備える。第二槽14は、槽11からオーバーフローしたエッチング液Lを受ける役割も果たすため、第二槽14は槽11の鉛直方向下方側に配置される。
第二槽14のエッチング液Lの排出口と、槽11の供給口111とは、配管16で接続されている。配管16および配管16に接続されているポンプP1を介してエッチング液Lが第二槽14から槽11へと供給される。なお、第二槽14では、エッチング液Lの各成分の濃度を定期的に調整する。
また、配管16には、フィルターFが設けられている。配管16を通るエッチング液L中の異物をフィルターFで除去することができる。
【0017】
次に、処理装置1を使用した基板2の処理方法について説明する。
はじめに、図3(A)に示すような基板2を用意する。この基板2はフレキシブル回路基板用の基板である。
この基板2は、絶縁層21と、この絶縁層21の表裏面に貼り付けられた金属膜22(たとえば、銅膜)とを有する。絶縁層21の厚みは、たとえば、5μm以上、100μm以下であり、金属膜22の厚みは、たとえば、1μm以上、50μm以下である。基板2全体の厚みは、たとえば、10μm以上、200μm以下である。
なお、金属膜22上には開口が形成されたマスクMが設けられており、マスクMの開口から露出する部分がエッチング液Lによりエッチングされる。なお、図1では、マスクMの図示を省略している。
【0018】
はじめに、図1に示すように、第二槽14から槽11へ、配管16およびポンプP1を介して、エッチング液Lを供給する。槽11内をエッチング液Lで満たしておく。なお、障害物18は、各部材183の延在方向が水平方向となるように、あらかじめ槽11内に設置しておく。
その後、基板2を保持部13に保持させて、基板2を槽11内に配置し、基板2をエッチング液L中に浸漬させる。このとき、基板2の基板面が鉛直方向と平行となり、基板2の基板面が各部材183と対向するように、基板2を槽11内に配置する。
次に、供給口111から排出口112へむけてエッチング液Lを流す。これにより、槽11内のエッチング液Lは、鉛直方向上側から、鉛直方向下側に向かって、流れることとなる(矢印Y1参照)。
また、エッチングを行う間、基板2全体がエッチング液L中に浸漬した状態となる。
供給口111から排出口112へむけてエッチング液Lを流すと、図4に示すように、部材183により、基板面に沿って上下方向に流れるエッチング液Lには乱れが生じる。すなわち、部材183により、基板面に接して流れるエッチング液Lに乱流が発生することとなる。
より詳細に説明すると、部材183により部材183の下流側には、回転方向の異なるカルマン渦が千鳥状に発生することとなる。これにより、基板面に対し水平方向にエッチング液Lが動くこととなる。すなわち、基板面に対し、エッチング液Lが水平方向に近づいたり、遠ざかったりすることとなる(矢印Y3参照)。基板面に沿って上下方向に流れるエッチング液Lのベクトルに対し、基板面と交差する方向のベクトル、主として水平方向の流れのベクトルが作用することとなり、基板面に沿って上下方向に流れるエッチング液Lに水平方向の乱れが生じる。そして、基板面に接して流れるエッチング液Lに乱流が発生することとなる。
【0019】
ここで、障害物18の部材183と基板2との間の距離(水平方向に沿った距離)をd(m)、基板面に沿って流れるエッチング液Lの流速をu(m/s)、エッチング液Lの動粘性係数をν(m/s)とした場合、ud/νの値が2000以上であることが好ましい。このようにすることで、確実に乱流を発生させることができる。ud/νの値の上限値は特に限定されない。
ここで、基板面に沿って流れるエッチング液Lの流速u(m/s)は、以下のようにして計測することができる。
排出口112から単位時間当たりに排出されるエッチング液Lの排出量V1(m/s)を測定する。次に、図5に示すように、槽11の水平方向に沿った断面積S(m)を算出する。そして、u=V1/Sで算出することができる。
【0020】
さらに、エッチングを行う際、第二槽14から槽11へは随時エッチング液Lが供給されており、エッチング液Lの第二槽14から槽11への供給量は、槽11から排出されるエッチング液Lの量よりも多い。従って、槽11の上部からは、エッチング液Lがオーバーフローする。オーバーフローしたエッチング液Lは、矢印Y2方向に流れ、第二槽14で回収される。
さらに、第二槽14には、槽11の排出口112からのエッチング液Lが供給される。
第二槽14内のエッチング液Lは、配管16およびポンプP1を介して再度槽11に供給されることとなる。
【0021】
以上のようなエッチングの工程により、金属膜22が選択的に除去されることとなる(図3(B))。
【0022】
次に、槽11からエッチングが施された基板2を取り出し、洗浄する。
以上の工程により、図3(B)に示すように、基板2に対しエッチング処理したフレキシブル回路基板を得ることができる。
【0023】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、基板2を槽11内のエッチング液L中に浸漬させた状態で、槽11内のエッチング液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって基板2の基板面に沿って流している。これにより基板2表面付近でエッチング液Lが滞留してしまうことが防止される。
これに加え、本実施形態では、障害物18により、基板面に沿って流れるエッチング液の流れを乱している。これにより、基板面に沿って流れるエッチング液Lの少なくとも一部が新鮮なエッチング液Lに入れ替わりやすくなり、基板面により新鮮なエッチング液Lを接触させることができる。そのため、基板2の処理速度を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態では、槽11内のエッチング液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって流している。エッチング液Lが重力に従って流れることとなるので、エッチング液Lをスムーズに流すことができる。また、エッチング液Lを重力に従って流すことで、エッチング液Lの流れが安定したものとなる。
さらに、エッチング液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって重力に従って流すことで、処理装置1の装置構成の複雑化を抑制できる。
【0025】
本実施形態では、基板2の上方の供給口111から基板2の下方の排出口112へむけてエッチング液Lを流すため、基板面の鉛直方向において、基板2の処理速度の違いが生じやすい。たとえば、障害物18を用いない場合、基板面の供給口111側に近い部分のエッチング速度は、排出口112に近い部分のエッチング速度に比べて速くなりやすい。
そこで、部材183を複数設け、基板面に対向させるとともに、鉛直方向上側から下側に向かって間隔をあけて配列させている。このように、部材183を、間隔をあけて配置することで乱流が発生する箇所を適宜設定することができる。これにより、基板面の鉛直方向に沿った処理速度の違いを修正することが可能となる。
本実施形態では、各部材183の大きさ形状を等しくし、部材183を基板面の鉛直方向上側から下側にわたって等間隔で配置することで、等間隔で均一な大きさの乱流を発生させることができる。これにより、基板面の鉛直方向における処理速度の違いを修正して、処理速度の均一化をはかることができる。
【0026】
また、部材183を直方体の棒状とし、部材183の長手方向を基板2の幅方向に沿うように部材183を配置している。これにより、基板2の幅方向(図1奥行き方向)に均一な乱れを発生させることができる。
【0027】
さらに、各部材183を直方体の棒状とすることで、基板面の鉛直方向上側から下側にわたって均一な大きさのエッチング液Lの乱れを発生させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、平板に複数の貫通孔181,182を形成することで障害物18を構成している。そのため、障害物18の製造が容易となる。
【0029】
さらに、本実施形態では、基板2を槽11内のエッチング液L中に浸漬させた状態で、槽11内のエッチング液Lを鉛直方向上方側から、下方側に向かって基板2の基板面に沿って流し、排出している。他方向からのエッチング液Lの供給、排出がないので、エッチング液L中に異物が混入していても、槽11内から異物を容易に排出することができる。そのため基板2に異物が付着することを抑制することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、槽11からエッチング液Lをオーバーフローさせてエッチングを行っている。オーバーフローさせることで、基板2がエッチング液Lに浸漬した状態を確実に維持しながらエッチング液Lを基板2に対し施すことができる。
【0031】
また、本実施形態では、槽11内に基板2を一枚配置して、エッチングを行っている。そのため、槽11は、基板2および障害物18を配置でき、基板2の基板面側でエッチング液Lを流すことができる程度の大きさでよい。これにより、処理装置1の大型化を抑制することができる。
【0032】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、板材に貫通孔181,182を形成することで、障害物18を作製していたが、障害物はこれに限られるものではない。たとえば、図6に示すように、複数の正多角柱状(たとえば直方体や正三角柱)の部材381を用意して、これを一対の桟382にかけわたし、障害物38を構成してもよい。
この場合も、複数の部材381が基板面と対向し、水平方向に延在するように障害物38を配置することが好ましい。また、複数の部材381は等間隔で配置されていることが好ましい。
さらに、障害物の流れを乱す部材を円柱状の部材としてもよい。
【0033】
ただし、本発明者が乱流発生のシミュレーションを行ったところ、部材を正多角柱、特に直方体とし、基板面の上流側から下流側にかけて等間隔で配置した場合に、基板面の上流側から下流側にかけて均一な大きさの乱流が発生することがわかっている。したがって、部材は、多角柱、特に直方体とすることが好ましい。なお、シミュレーションは、以下の条件で行っている。
各部材間の鉛直方向の隙間10mm、流速0.74m/s、エッチング液の密度1040kg/m、粘度1×10−3(Pa・s)。部材が直方体の場合には、長手方向と直交し、鉛直方向に沿った断面を2×4mmとした。部材が円柱状の場合には径を2mmとした。
【0034】
また、前記実施形態では、障害物18を板材で構成したが、これに限らず、たとえば、図7に示すように、槽11の内壁と障害物48とを一体化してもよい。
この障害物48は、離間配置された部材481で構成される。各部材481は、槽11の内壁に形成された凸部であり、基板面と対向する。部材481は、たとえば、直方体の棒状であり、基板面に沿って水平方向に延在する。各部材481は、同一の大きさ形状であり、基板面の上端側から下端側にわたって等間隔に配列されていることが好ましい。
【0035】
さらに、前記実施形態では、部材183は、基板面の上端側から下端側にわたって等間隔に配置されていたが、これに限られるものではない。
たとえば、基板面の上端側の処理速度が速く、下端側の処理速度が遅い場合には、基板面の下端側にのみ対向するように、部材183を配置してもよい。
また、基板面の所定の領域のみ処理速度を速めたい場合には、基板面の一部の領域にのみ対向する障害物を設置すればよい。
たとえば、従来、ひとつの基板面においてエッチング量を異なるものとする場合、エッチング液に基板を浸した後、所定の部分にマスクを形成し、マスクから露出する部分のみを再度エッチングする必要があった。
これに対し、本発明の処理装置を使用することで、局所的にエッチング速度を速めることができるので、従来のような再エッチングが不要となる。これにより、基板を迅速に処理することができ、生産性を向上させることができる。
【0036】
さらに、前記実施形態では、処理装置をエッチング装置としたが、これに限らず、めっき装置、現像装置、剥離装置、水洗装置等としてもよい。エッチング液をめっき液、現像液、剥離液、水のいずれかに替えればよい。ただし、電解めっきを行う場合には、槽11内に陽極を配置する必要がある。
【符号の説明】
【0037】
1 処理装置
2 基板
11 槽
13 保持部
14 第二槽
16 配管
18 障害物
21 絶縁層
22 金属膜
38 障害物
48 障害物
111 供給口
112 排出口
181 貫通孔
182 貫通孔
183 部材
381 部材
382 桟
481 部材
F フィルター
H1 寸法
H2 寸法
L エッチング液(液体)
M マスク
P1 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対し液体を接触させて、前記基板を処理する基板の処理装置において、
内部に前記液体が供給されるとともに、供給された前記液体に前記基板を浸漬させる槽と、
前記槽内部に配置される前記基板の基板面が鉛直方向に平行となるように前記基板を保持する保持部とを備え、
前記槽の前記液体の供給口は、前記保持部で保持された前記基板よりも鉛直方向上方にあり、
前記槽の前記液体の排出口は、前記保持部で保持された前記基板よりも鉛直方向下方にあり、
前記基板が前記槽内の前記液体に浸漬した状態で、前記供給口から前記排出口へ向かって液体を流す際に、基板面に沿って流れる流体の流れを乱す手段を備える基板の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板の処理装置において、
前記流れを乱す手段は、基板面に沿って流れる流体の流れを乱す複数の部材で構成され、
前記複数の部材は、前記基板の基板面に対し対向配置され、鉛直方向上側から下側に向かって間隔をあけて配列されている基板の処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板の処理装置において、
各前記部材は、水平方向に延在する棒状の部材であり、同一の大きさ形状である基板の処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板の処理装置において、
前記複数の部材は、同一の大きさの直方体の棒状の部材であり、
複数の部材が前記基板面の鉛直方向上端側から下端側にわたって等間隔で配列されている基板の処理装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の基板の処理装置において、
前記流れを乱す手段は、平板で構成され、
前記平板には、一対の対向する板面を貫通するとともに、貫通方向と直交する方向に延在する複数の貫通孔が形成され、
前記複数の貫通孔は、延在方向が互いに平行であり、
隣接する前記貫通孔に挟まれた領域が前記部材となる基板の処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の基板の処理装置において、
前記流れを乱す手段は、前記槽の内壁に取り付けられている基板の処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の基板の処理装置において、
前記流れを乱す手段は、前記基板の基板面に対し対向配置され、
前記基板を前記流れを乱す手段に対して鉛直方向に沿って相対的に移動させる手段を備える基板の処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の基板の処理装置において、
当該液体は、エッチング液であり、
当該基板の処理装置は基板をエッチングするエッチング装置である基板の処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の基板の処理装置において、
当該液体は、めっき液であり、
当該基板の処理装置は基板をめっきするめっき装置である基板の処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の基板の処理装置において、
当該液体は、水であり、
当該基板の処理装置は基板を水洗する水洗装置である基板の処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の基板の処理装置を使用した基板の処理方法であって、
前記基板の基板面が鉛直方向と平行となるように、前記保持部に前記基板を保持させる工程と、
前記基板を前記槽内の前記液体中に浸漬させるとともに、前記供給口から前記排出口へ向かって液体を流す工程とを含み、
前記供給口から前記排出口へ向かって液体を流す前記工程では、前記流れを乱す手段により、前記基板面に沿って流れる流体の流れを乱す基板の処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板の処理方法において、
前記流れを乱す手段は、前記基板の基板面に対し平行に対向配置され、
前記流れを乱す手段と、前記基板の基板面との間の距離をd(m)、
基板面に沿って流れる流体の流速をu(m/s)、
前記液体の動粘性係数をν(m/s)とした場合、
ud/νの値が2000以上である基板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46770(P2012−46770A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186875(P2010−186875)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】