説明

基板の切断方法及び液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】切断ブレードによって凹部を有する各種基板を良好に切断することができる基板の切断方法、及び基板を良好に切断して歩留まりを向上することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】一方面側に凹部22を有する基板400を切断ブレード501で切断する際に、基板400の凹部22とは反対側の面を保持し、基板400を凹部22側の面から切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出する液体噴射ヘッドの製造方法、特に、液滴としてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等に用いられるインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドでは、液滴を吐出させるためのメカニズムに応じて各種方式のものが知られている。例えば、発熱素子等によって液体を沸騰させ、そのときに生じる気泡圧で液滴を吐出させるものや、液滴が充填された圧力室の容積を、圧電素子の変位によって膨張又は収縮させることでノズルから液滴を吐出させるものがある。さらに、例えば、静電気力を利用して圧力室の容積を変化させることで、ノズルから液滴を吐出させるようにした静電駆動方式のものもある。
【0003】
また、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法が、様々提案されているが、例えば、静電駆動方式のヘッドの製造方法としては、ノズルプレート、キャビティープレート及び電極基板がそれぞれ複数形成された3枚の基板を接合して積層基板を形成した後、この積層基板の両面に粘着シートを貼着し、この積層基板をガラス基板である電極基板側から切断ブレード等によって切断することにより、同時に複数個のヘッドを得るようにした方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−254689号公報
【特許文献2】特開2006−18127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、このように積層基板をガラス製の電極基板側からから切断ブレードによって切断することで電極基板にチッピングが生じにくくなるという効果がある。しかしながら、チッピングが生じにくいのは、電極基板と粘着シートとの境界部分だけであり、他の部分、例えば、電極基板とキャビティープレートとの境界部分、あるいはノズルプレートと粘着シートとの境界部分等、各基板の境界部分においては、チッピングが発生してしまう。
【0006】
電極基板のキャビティープレート側の面には、静電気力を発生させるための電極(個別電極、共通電極)が形成されているため、電極基板とキャビティープレートとの境界部分でチッピングが発生すると、これらの電極が破損して導通不良を起こす虞がある。
【0007】
また、ノズルプレートの表面部分にチッピングが発生すると、圧力室にインクを良好に充填できずドット抜け等の問題が発生する虞がある。例えば、圧力室にインクを充填する場合、ノズルプレートの表面に各ノズルを覆うようにゴムパットを装着し、このゴムパット内を吸引することで、ノズルを介して圧力室を吸引して圧力室内にインクを充填させている。このとき、ノズルプレートの表面にチッピングが生じていると、ノズルプレートとゴムパットとの間に隙間が生じてしまい、良好に吸引することができなくなる。このため、圧力室内に確実にインクを充填することができず、ドット抜け等の問題が発生してしまう。
【0008】
ここで、ノズルプレートの表面に、その厚さ方向の一部が除去されたノズル段差部を有しこのノズル段差部内にノズルが開口するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。そして、上記のようなチッピングの問題は、ノズルプレートの表面にノズル段差部のような凹部が形成されている場合には、特に生じやすい。また、このようなノズル段差部を有する場合には、積層基板に割れが生じてしまうという問題もある。
【0009】
さらに、積層基板の表面に粘着シートを貼着し、この貼着シート上から積層基板を切断すると、切り屑や切断ブレードの摩耗屑が多く発生してしまう。例えば、この切り屑等が電極に付着すると、電極とFPC等の配線を接続する際に接続不良が起こる等の問題がある。さらに、貼着シート上から積層基板を切断すると切断ブレードに粘着テープが焼き付いてしまうせいか、摩耗量が大幅に増加するという問題もある。
【0010】
なお、このような問題は、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法だけでなく、他の液滴を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法においても存在する。さらに、液体噴射ヘッドの製造方法だけでなく、基板を切断ブレードで切断する場合は、同様に、このような問題が生じる虞がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、切断ブレードによって凹部を有する各種基板を良好に切断することができる基板の切断方法を提供することを目的とする。また、基板を良好に切断して歩留まりを向上することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、一方面側に凹部を有する基板を切断ブレードで切断する基板の切断方法であって、前記基板の前記凹部とは反対側の面を保持し、当該基板を前記凹部側の面から切断することを特徴とする基板の切断方法にある。
かかる本発明では、基板の割れやチッピングの発生を防止することができ、基板を高精度に切断することができる。
【0013】
ここで、前記基板の凹部とは反対側の面が平坦面であり、所定のステージ上に前記基板の全面を密着させて保持した状態で、当該基板を切断することが好ましい。これにより、基板の割れやチッピングの発生をより確実に防止することができる。
【0014】
また、前記基板は、凹部を有する第1の基板と該第1の基板の前記凹部とは反対側の面に接合されるガラス基板からなる第2の基板とを含む積層基板であってもよい。ガラス基板からなる第2の基板には割れ等が発生しやすいが、本発明の切断方法では、このような第2の基板を含む積層基板であっても高精度に切断することができる。
【0015】
また、本発明は、液滴を噴射する複数のノズルが形成されると共に該ノズルが開口する領域に凹部であるノズル段差部を有する第1の基板と、前記ノズルに連通する圧力室を有すると共に該圧力室内に液滴を噴射するための圧力を発生させる圧力発生手段を有する第2の基板とを接合して積層基板を形成後、この積層基板を切断ブレードで切断して個々の液体噴射ヘッドに分離する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記積層基板の前記第2の基板側の面を保持し、当該積層基板を前記第1の基板の前記ノズル段差部側の面から切断することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる本発明では、積層基板を高精度に切断して高品質な液体噴射ヘッドを製造することができ、また不良発生率を大幅に低減することができる。
【0016】
ここで、前記積層基板の前記第2の基板側表面に保護シートを貼着した状態で、当該積層基板を切断することが好ましい。これにより、積層基板を保護して、例えば、保持ステージ上に良好に固定することができる。
【0017】
また、前記ノズル段差部内に短冊状の封止テープを貼着して前記ノズルを封止した状態で、前記積層基板を切断することが好ましい。これにより、積層基板を切断する際に、ノズルが異物等によって詰まってしまうのを防止することができる。
【0018】
さらに、前記第2の基板を、前記圧力室と当該圧力室の一方面側を構成する振動板とを有する第3の基板と、前記振動板を静電気力により変形させるための電極が設けられた第4の基板とを接合することによって形成するようにしてもよい。本発明では、このように複数枚の基板が積層された積層基板であっても良好に切断することができる。
【0019】
また、前記第1の基板がシリコン基板からなり、前記第4の基板がガラス基板からなるものであってもよい。ガラス基板からなる第4の基板には割れ等が発生しやすいが、本発明の切断方法では、このような第4の基板を含む積層基板であっても高精度に切断することができる。
【0020】
さらに、前記積層基板の表面に所定圧力で冷却水を吹き付けながら、当該積層基板を切断することが好ましい。これにより、例えば、電極への切り屑や、切断ブレードの摩耗屑の付着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図であり、図2は、その断面図である。図示したインクジェット式記録ヘッドは、いわゆる静電駆動方式のヘッドであり、キャビティ基板10と、このキャビティ基板10の両面にそれぞれ接合されるノズルプレート20及び電極基板30とで構成されている。
【0022】
キャビティ基板10は、例えば、面方位(100)又は(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面側に開口する圧力室(キャビティ)11がその幅方向に複数並設されている。また、本実施形態では、図2に示すように、キャビティ基板10には、複数の圧力室11が並設された列が2列形成されている。さらに、キャビティ基板10には、各列の圧力室11に共通するインク室となる共通インク室12が形成されており、この共通インク室12は、後述するインク供給路を介して各圧力室11に連通されている。また、共通インク室12の底壁には、共通インク室12にインクを供給するためのインク供給孔13が形成されている。また、キャビティ基板10には、共通インク室12の外側に、後述する個別電極に接続される個別端子部を露出させるための貫通孔14が形成されている。
【0023】
なお、各圧力室11の底壁は、圧力室11内に圧力変化を生じさせるための振動板15として機能し、且つこの振動板15を変位させる静電気力を発生させるための共通電極としての役割を兼ねている。そして、キャビティ基板10の貫通孔14近傍には、ノズルプレート20の後述する露出孔内に露出されて図示しない駆動配線が接続される共通端子部16が形成されている。
【0024】
ノズルプレート20は、キャビティ基板10と同様に、面方位(100)又は(110)のシリコン単結晶基板からなり、各圧力室11に連通する複数のノズル21が形成されている。そして、このノズルプレート20は、キャビティ基板10の開口面側に接合され、圧力室11及び共通インク室12の一方の面を形成している。また、ノズルプレート20のキャビティ基板10とは反対側の面には、ノズル21に対応する領域に亘って厚さ方向の一部を除去したノズル段差部22が形成されている。
【0025】
ここで、各ノズル21は、インク滴が吐出される側に設けられてノズル段差部22内に開口する略円形の小径部21aと、小径部21aよりも大きい径を有し小径部21aと圧力室11とを連通する大径部21bとからなる。そして、全てのノズル21(小径部21a)は、このノズル段差部22内に開口している。
【0026】
また、このノズルプレート20のキャビティ基板10との接合面には、圧力室11と共通インク室12との境界に対応する領域に、これら各圧力室11と共通インク室12とを連通するインク供給路23が形成されている。また、ノズルプレート20には、共通インク室12の外側に対応する位置に、キャビティ基板10の貫通孔14に連通し、後述する個別端子部と共に共通端子部16を露出させる露出孔24が形成されている。
【0027】
このノズルプレート20の表面、本実施形態では、ノズル段差部22内には、例えば、フッ素含有シランカップリング化合物等からなる撥水撥油性材料からなる撥水撥油膜25が形成されている。これにより、ノズルプレート20の表面(ノズル面)へのインク滴の付着を抑えている。
【0028】
一方、電極基板30は、シリコン単結晶基板に近い熱膨張率を有する、例えば、ホウ珪酸ガラス等のガラス基板からなり、キャビティ基板10の振動板15側の面に接合されている。この電極基板30の振動板15に対向する領域には、各圧力室11に対応して凹部31が形成されている。また、電極基板30には、キャビティ基板10のインク供給孔13に対応する位置に、このインク供給孔13に連通するインク導入孔32が形成されている。そして、図示しないインクタンクからこのインク導入孔32及びインク供給孔13を介して共通インク室12にインクが充填されるようになっている。
【0029】
また、各凹部31には、振動板15を変位させる静電気力を発生させるための個別電極33が、振動板15との間に所定の間隔を確保した状態でそれぞれ配置されている。また、凹部31内には、キャビティ基板10の貫通孔14に対向する領域に、図示しない駆動配線が接続される個別端子部34が形成されており、この個別端子部34と個別電極33とはリード電極35によって接続されている。なお、図示しないが、これら各個別電極33及びリード電極35は絶縁膜によって封止され、また個別端子部34と共通端子部16との間には、接続配線を介して駆動電圧パルスを印加するための発振回路が接続されている。
【0030】
そして、このようなインクジェット式記録ヘッドでは、発振回路によって個別電極33と振動板15(キャビティ基板10)との間に駆動電圧を印加すると、これら個別電極33と振動板15との隙間に発生する静電気力によって振動板15が個別電極33側に撓み変形して、圧力室11の容積が拡大し、駆動電圧の印加を解除すると、振動板15が元の状態に復帰し、圧力室11の容積が収縮する。そして、このとき発生する圧力室11内の圧力変化によって、圧力室11内のインクの一部が、ノズル21からインク滴として吐出される。
【0031】
以下、本発明に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を、図3〜図5を参照して説明する。まず、図3(a)に示すように、上述した複数のノズルプレート20が一体的に形成されたノズルプレート用ウェハ200と、複数のキャビティ基板10が一体的に形成されたキャビティ基板用ウェハ100と、複数の電極基板30が一体的に形成された電極基板用ウェハ300とをそれぞれ用意し、キャビティ基板用ウェハ100の両面に、ノズルプレート用ウェハ200と電極基板用ウェハ300とをそれぞれ接合して積層基板400を形成する。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、ノズル段差部22の幅となるように、粘着性を有する粘着テープである封止テープ50を短冊状に切り出して用意し、この短冊状の封止テープ50をノズル段差部22内に貼着して各ノズル21を封止する。なお、封止テープ50としては、例えば、紫外線剥離型のダイシングテープ等が用いられる。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、電極基板用ウェハ300の大きさとなるように切り出した粘着シートである保護シート70を用意し、この保護シート70を積層基板400の電極基板用ウェハ300側の表面に貼着する。なお、ここで使用される保護シート70としては、封止テープ50と同様に、例えば、紫外線剥離型のダイシングテープ等が用いられる。
【0034】
そして、このように短冊状の封止テープ50及び保護シート70を貼着した状態で積層基板400を、例えば、図4に一点鎖線で示す切断ラインに沿って切断ブレードによって切断することにより、個々のインクジェット式記録ヘッドを切り出す。
【0035】
具体的には、図5(a)に示すように、電極基板用ウェハ300側を下側として積層基板400を保持ステージ500上に固定する。すなわち、保護シート70を介して積層基板400を保持ステージ500上に固定する。ここで、積層基板400のノズル段差部22側の面とは反対側の面、つまり積層基板400を構成する電極基板用ウェハ300側の表面は平坦面となっている。そして、この平坦面である電極基板用ウェハ300表面の全面を保持ステージ500に密着させて保持することが好ましい。これにより、積層基板400を極めて良好に保持ステージ上に保持することができる。なお、積層基板400の固定方法は、特に限定されないが、例えば、保持ステージ500に設けた図示しない吸引孔を介して積層基板400を吸引して、積層基板400が保持ステージ500上に吸引保持されるようにする。電極基板用ウェハ300の表面は極めて平坦であるため、積層基板400を良好に保持することができる。また、保護シート70によって積層基板400の表面が保護されているため、積層基板400に傷や割れを生じさせることなく、積層基板400が保持ステージ500上に良好に保持される。
【0036】
そして、図5(b)に示すように、このように積層基板400を保持ステージ500上に保持した状態で、凹部であるノズル段差部22が形成されたノズルプレート用ウェハ200側から積層基板400を切断ブレード501によって切断する。その後は、切り出されたインクジェット式記録ヘッドの表面に貼り付けられている封止テープ50及び保護シート70に、紫外線を照射して保護シート70の粘着力を低下させ、この封止テープ50及び保護シート70を剥離する。
【0037】
以上説明したように、積層基板400をノズルプレート用ウェハ200側から切断することにより、ノズルプレート用ウェハ200、キャビティ基板用ウェハ100及び電極基板用ウェハ300に割れが発生するのを防止することができる。
【0038】
ここで、従来のように、例えば、積層基板400のノズルプレート用ウェハ200側を保持ステージ500上に保持すると、積層基板400と保持ステージ500との間に部分的に空間が形成されてしまう。具体的には、このように積層基板400のノズルプレート用ウェハ200側を保持する場合、一般的には、図6(a)に示すように、ノズルプレート用ウェハ200の表面に保護シート70Aが貼着されており、封止テープ50に対向する部分の保護シート70Aと保持ステージ500との間に若干の空間S1が形成されてしまう。また、図6(b)に示すように、貫通孔14及び露出孔24に対向する部分にも保護シート70で塞がれた空間S2が形成されてしまう。この状態で、積層基板400を切断ブレード501で切断すると、上記空間S1,S2が存在することで積層基板400が十分に固定できていないせいか積層基板400が振動してしまうことがある。また、この空間S1,S2に対向する部分の積層基板400が変形してしまうことがある。そして、このような振動、あるいは変形によって積層基板400に割れが生じてしまう虞がある。
【0039】
また上述した製造方法によれば、各ウェハの境界部分、あるいは電極基板用ウェハ300と保護シート70との境界部分で、チッピングが発生するのを防止することができる。特に、ガラス基板である電極基板用ウェハ300にはチッピングが発生し易いが、本発明の製造方法であれば、この電極基板用ウェハ300のチッピングも抑えられる。
【0040】
したがって、電極(個別電極、共通電極)が破損して導通不良を起こしてしまうのを防止することができる。さらに、ノズルプレート20の表面にチッピングが生じていないことで、ノズル21を介して圧力室11を良好に吸引することができる。つまり、圧力室内に確実にインクを充填することができ、ドット抜け等の発生も抑制することができる。
【0041】
またインクジェット式記録ヘッドを装置(プリンタ)に固定する際の基準となる切断端面精度も向上することができる。例えば、ノズルプレート用ウェハ200側を保持ステージ500上に保持して切断した場合、ノズル列の中心から切断端面までの距離のバラツキは、±0.03mm程度であったものが、±0.01mm程度まで減少した。
【0042】
また、積層基板400を高精度に切断することに伴って、切り屑や切断ブレード501の摩耗屑の発生も大幅に低減される。特に、本実施形態では、ノズルプレート用ウェハ200の表面には、短冊状の封止テープ50が貼着されているものの、保護シートが貼着されていないため、切り屑や切断ブレード501の摩耗屑の発生量が大幅に低減され、切断ブレード501の刃先の変形も抑えられる。例えば、切断ブレード501の摩耗量は、従来の10%程度と極めて少なく抑えることができる。したがって、切り屑等が電極に付着することによって発生する導通不良も防止することができる。また、切断ブレード501の刃先のメンテナンス(ツルーイング)頻度も大幅に減少し、生産性が向上する。
【0043】
なお、ノズルプレート用ウェハ200側を保持ステージ500上に保持して切断した場合の合計不良率は、最大で58%、平均で3%程度であったが、上述の製造方法では、ほぼ0%となった。
【0044】
また、切断ブレード501によって積層基板400を切断する際には、積層基板400の表面に所定圧力で冷却水を吹き付けるようにするのが好ましい。これにより、切断ブレード501を冷却できると共に、切り屑等が電極に付着するのをより確実に防止することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。また本実施形態では、静電駆動方式のインクジェット式記録ヘッドを一例として本発明を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、圧電素子の変位によってインク滴を吐出させる方式、あるいは、発熱素子等によってインクを加熱することでインク滴を吐出させる方式等、あらゆる方式のインクジェット式記録ヘッドの製造方法に採用することができる。また、勿論、本発明は、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、他のあらゆる液滴を吐出する液体噴射ヘッドにも採用することができる。他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0046】
さらに、本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法に限定されず、表面に凹部を有するあらゆる基板を切断ブレードで切断する際に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施形態に係る記録ヘッドの概略斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図3】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程を示す概略斜視図である。
【図4】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程を示す平面図である。
【図5】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程を示す概略斜視図である。
【図6】従来技術に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 キャビティ基板、 11 圧力室、 12 共通インク室、 13 インク供給孔、 14 貫通孔、 15 振動板、 16 共通端子部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル、 22 ノズル段差部、 23 インク供給路、 24 露出孔、 25 撥水撥油膜、 30 電極基板、 31 凹部、 32 インク導入孔、 33 個別電極、 34 個別端子部、 35 リード電極、 50 封止テープ、 70 保護シート、 100 キャビティ基板用ウェハ、 200 ノズルプレート用ウェハ、 300 電極基板用ウェハ、 400 積層基板、 500 保持ステージ、 501 切断ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面側に凹部を有する基板を切断ブレードで切断する基板の切断方法であって、前記基板の前記凹部とは反対側の面を保持し、当該基板を前記凹部側の面から切断することを特徴とする基板の切断方法。
【請求項2】
前記基板の凹部とは反対側の面が平坦面であり、所定のステージ上に前記基板の全面を密着させて保持した状態で、当該基板を切断することを特徴とする基板の切断方法。
【請求項3】
前記基板が、凹部を有する第1の基板と該第1の基板の前記凹部とは反対側の面に接合されるガラス基板からなる第2の基板とを含む積層基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板の切断方法。
【請求項4】
液滴を噴射する複数のノズルが形成されると共に該ノズルが開口する領域に凹部であるノズル段差部を有する第1の基板と、前記ノズルに連通する圧力室を有すると共に該圧力室内に液滴を噴射するための圧力を発生させる圧力発生手段を有する第2の基板とを接合して積層基板を形成後、この積層基板を切断ブレードで切断して個々の液体噴射ヘッドに分離する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記積層基板の前記第2の基板側の面を保持し、当該積層基板を前記第1の基板の前記ノズル段差部側の面から切断することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記積層基板の前記第2の基板側表面に保護シートを貼着した状態で、当該積層基板を切断することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記ノズル段差部内に短冊状の封止テープを貼着して前記ノズルを封止した状態で、前記積層基板を切断することを特徴とする請求項4又は5に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記第2の基板を、前記圧力室と当該圧力室の一方面側を構成する振動板とを有する第3の基板と、前記振動板を静電気力により変形させるための電極が設けられた第4の基板とを接合することによって形成することを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記第1の基板がシリコン基板からなり、前記第4の基板がガラス基板からなることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記積層基板の表面に所定圧力で冷却水を吹き付けながら、当該積層基板を切断することを特徴とする請求項4〜8の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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