説明

基板の温度計測装置及び方法、基板の温度調整装置及び方法

【課題】処理前に基板温度を計測する基板の温度計測装置及び方法、基板温度が所定の温度範囲内にない場合に再加熱、冷却を行う基板の温度調整装置及び方法を提供する。
【解決手段】搬送ロボットで搬送された基板が停止する成膜室の入口の手前の位置であり、当該位置の基板の裏面側に、加熱した基板の裏面の温度を計測する温度計測装置を設け、当該温度計測装置により、加熱した基板の裏面の温度を計測し(S5)、計測した基板の裏面の温度が所定の温度範囲内にない場合(S6)、所定の温度範囲より大きい場合には、搬送ロボットで保持した状態で基板を冷却し(S7→S8)、所定の温度範囲より小さい場合には、搬送ロボットで再び加熱室へ搬送し、加熱室で加熱する(S7→S2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の温度計測装置及び方法、基板の温度調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)などの半導体基板に真空中で成膜などの処理を行う場合、成膜室において、処理前に処理条件となる所定の温度に加熱し、その後、成膜などの処理を行っている。成膜などの処理時間に対し、加熱時間が同等以上の場合、成膜室とは別に加熱室を設け、この加熱室で予め所定の温度に加熱しておくと、生産性が向上する。Si基板については、ランプ加熱などの加熱装置が既に知られており、加熱した基板の表面温度を測定する測定装置も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、LED(Light Emitting Diode)デバイスには、サファイアなどの透明基板が使用されている。サファイア基板においても、真空中で成膜などの処理を行う場合には、処理前に処理条件となる所定の温度に加熱することが望ましい。又、成膜などの処理時間に対し、加熱時間が同等以上の場合、成膜室とは別に加熱室を設け、この加熱室で予め所定の温度に加熱しておくと、Si基板の場合と同様に、生産性が向上することになる。
【0005】
サファイア基板の場合、静電吸着しようとしても、Si基板などと比較して、その吸着力が弱い。そのため、Si基板のように、成膜室内の支持台上に静電吸着させ、支持台との熱伝導により基板温度を制御(基板を加熱)することが難しい。従って、成膜室とは別に加熱室を設けて、加熱することが望ましく、更に、サファイア基板の加熱を、ヒータなどによる熱輻射により行うことが望ましい。しかしながら、このようなサファイア基板用の加熱装置はまだなく、サファイア基板用の加熱装置を有する加熱室を設けても、それだけでよい訳では無い。ここで、サファイア基板の加熱時における問題点を、図9を参照して説明する。
【0006】
成膜などの処理前に、サファイア基板を加熱室で輻射加熱する場合、ヒータ出力やヒータ温度と加熱時間の関係からサファイア基板の到達温度を予め計測しておき、成膜などの処理に適正な適正温度Tpに加熱できる予定時間Et経過後に、サファイア基板を加熱室から取り出し、その後、成膜室へ搬入し、成膜を行うことになる。
【0007】
この場合、ヒータの不安定性があったり、サファイア基板の個体差(サファイア基板上に積層した膜の個体差など)が大きかったりすると、基板温度の加熱温度に変動ΔTaが生じる。又、サファイア基板を加熱室から取り出した後、予期せぬ待ち時間Wtがあったりしても、基板温度に変動ΔTbが生じる。基板温度に変動ΔTa、ΔTbが生じると、成膜時における基板温度が一定せず、適正温度Tpからずれた基板温度で成膜が行われるので、成膜される膜の膜質(エッチングレート、透過率など)が変動し、デバイスの歩留まりが悪化することになる。
【0008】
このように、単に、サファイア基板を加熱するだけでなく、成膜などの処理前に、加熱したサファイア基板の基板温度を計測し、基板温度が所定の温度範囲内にあることを確認し、基板温度が所定の温度範囲内にない場合に再加熱、冷却を行う機能を備える装置が望まれているが、このような装置はまだなく、このような装置を基板搬送室の一部に加えたものもなかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、処理前に基板温度を計測する基板の温度計測装置及び方法、基板温度が所定の温度範囲内にない場合に再加熱、冷却を行う基板の温度調整装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1の発明に係る基板の温度計測装置は、
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する基板の温度計測装置であって、
前記搬送ロボットで搬送された前記基板が停止する前記処理室の入口の手前の位置であり、当該位置の前記基板の裏面側に前記温度計測装置を設けたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第2の発明に係る基板の温度計測装置は、
上記第1の発明に記載の基板の温度計測装置において、
前記温度計測装置を放射温度計としたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第3の発明に係る基板の温度計測装置は、
上記第2の発明に記載の基板の温度計測装置において、
前記放射温度計の計測経路に遮光カバーを設けたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第4の発明に係る基板の温度計測装置は、
上記第1の発明に記載の基板の温度計測装置において、
前記温度計測装置を熱電対又は抵抗温度計としたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第5の発明に係る基板の温度計測方法は、
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する基板の温度計測方法であって、
前記加熱室で加熱した前記基板を前記搬送ロボットで前記処理室の入口の手前の位置まで搬送し、
当該位置の前記基板の裏面側に設けた放射温度計を用いて、加熱した前記基板の裏面の温度を計測することを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第6の発明に係る基板の温度計測方法は、
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する基板の温度計測方法であって、
前記加熱室で加熱した前記基板を前記搬送ロボットで前記処理室の入口の手前の位置まで搬送し、
当該位置の前記基板の裏面側に設けた基板支持台に前記基板を載置し、
前記基板支持台上に設けた熱電対又は抵抗温度計を用いて、加熱した前記基板の裏面の温度を計測することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第7の発明に係る基板の温度調整装置は、
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の温度を調整する基板の温度調整装置であって、
前記搬送ロボットで搬送された前記基板が停止する前記処理室の入口の手前の位置であり、当該位置の前記基板の裏面側に、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する温度計測装置を設け、
当該温度調整装置は、
前記温度計測装置により、加熱した前記基板の裏面の温度を計測し、
計測した前記基板の裏面の温度が所定の温度範囲内にない場合、前記所定の温度範囲より大きい場合には、前記搬送ロボットで保持した状態で前記基板を冷却し、前記所定の温度範囲より小さい場合には、前記搬送ロボットで再び前記加熱室へ搬送し、前記加熱室で加熱することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第8の発明に係る基板の温度調整方法は、
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の温度を調整する基板の温度調整方法であって、
前記搬送ロボットで搬送された前記基板が停止する前記処理室の入口の手前の位置であり、当該位置の前記基板の裏面側に、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する温度計測装置を有し、
前記温度計測装置により、加熱した前記基板の裏面の温度を計測し、
計測した前記基板の裏面の温度が所定の温度範囲内にない場合、前記所定の温度範囲より大きい場合には、前記搬送ロボットで保持した状態で前記基板を冷却し、前記所定の温度範囲より小さい場合には、前記搬送ロボットで再び前記加熱室へ搬送し、前記加熱室で加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1から第6の発明によれば、成膜室へ基板を搬入する直前の位置で基板の温度を計測し、成膜室での基板の成膜前に基板の温度を確認できるので、デバイスの歩留まりの向上、生産性の向上につながる。
【0019】
第7から第8の発明によれば、成膜室へ基板を搬入する直前の位置で基板の温度を計測し、所定の温度範囲内にない場合には、冷却又は再加熱を行い、成膜室での基板の成膜前に基板の温度を所定の温度範囲内に調整するので、成膜した膜質が一定となり、デバイスの歩留まりが向上し、生産性の向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る基板の温度計測装置及び温度調整装置を備えた装置の実施形態の一例(実施例1)として、成膜処理装置を示す概略図である。
【図2】図1に示した成膜処理装置における基板の温度計測装置を示す断面図である。
【図3】図1に示した成膜処理装置の加熱室を示す断面図である。
【図4】図1に示した成膜処理装置における基板の温度計測方法及び温度調整方法を説明するフローチャートである。
【図5】本発明に係る基板の温度計測方法及び温度調整方法の実施形態の他の一例(実施例2)を説明するフローチャートである。
【図6】図5に示したフローチャートによる温度調整を説明するグラフである。
【図7】本発明に係る基板の温度計測装置の実施形態の他の一例(実施例3)を示す断面図である。
【図8】本発明に係る基板の温度計測装置の実施形態の他の一例(実施例4)を示す断面図である。
【図9】サファイア基板の加熱時における問題点を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る基板の温度計測装置及び方法、基板の温度調整装置及び方法の実施形態のいくつかを、図1〜図8を参照して説明する。なお、ここでは、基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置として、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの成膜処理装置を例に取って説明を行うが、プラズマを生成可能な他の装置、例えば、プラズマエッチング装置などへも適用可能である。
【0022】
(実施例1)
最初に、装置構成の説明を行う。ここで、図1は、本実施例の基板の温度計測装置及び温度調整装置を備えた成膜処理装置を示す概略図であり、図2は、その成膜処理装置における基板の温度計測装置を示す断面図、図3は、その成膜処理装置の加熱室を示す断面図である。
【0023】
本実施例において、成膜処理装置10は、ロードポート20、搬送室30、加熱室40及び成膜室50(処理室)を有する。ロードポート20は、ドア弁d1を介して、搬送室30と接続されており、ドア弁d1の開閉により、ロードポート20と搬送室30とを連通状態にしたり、ロードポート20を搬送室30から閉鎖した状態にしたりしている。
【0024】
同様に、加熱室40は、ドア弁d2を介して、搬送室30と接続されており、ドア弁d2の開閉により、加熱室40と搬送室30とを連通状態にしたり、加熱室40を搬送室30から閉鎖した状態にしたりしており、同じく、成膜室50は、ドア弁d3を介して、搬送室30と接続されており、ドア弁d3の開閉により、成膜室50と搬送室30とを連通状態にしたり、成膜室50を搬送室30から閉鎖した状態にしたりしている。
【0025】
ロードポート20において、カセット21には、複数の小径の基板Wを載置したトレイ22を複数収容しており、このカセット21をロードポート20の内部にセットしている。このトレイ22は、図2に示すように、複数の貫通孔22aを有し、この貫通孔22aの内側に設けた保持部22b上に基板Wを載置する構造である。本実施例の場合、基板Wとしては、サファイアなどの透明基板が好適である。
【0026】
なお、以降の説明においては、基板Wを載置したトレイ22を用いて説明を行うが、トレイ22に代えて、トレイ22と同じ大きさの基板をカセット21に複数収容する場合でも、後述する基板の温度計測装置及び方法、基板の温度調整装置及び方法は適用可能である。この場合には、トレイ22を基板と読み替えればよい。
【0027】
搬送室30において、その中央部分には、搬送ロボット31が配設されている。そして、搬送ロボット31のアーム31aに設けられたロボットハンド31bを用いて、1枚のトレイ22を保持し、ロードポート20、加熱室40及び成膜室50に対する搬送を行っている。例えば、ドア弁d1を開け、ロードポート20へアーム31aを伸ばし、トレイ22をロボットハンド31b上に乗せて、トレイ22をカセット21から引き出す。その後、ドア弁d2又はドア弁d3を開け、加熱室40又は成膜室50へアーム31aを伸ばし、トレイ22を加熱室40又は成膜室50の内部に搬送することになる。
【0028】
そして、成膜室50のドア弁d3の手前の位置であって、搬送室30の底面30aに計測用窓33が設けられており、図2に示すように、計測用窓33の下方に本実施例の温度計測装置34が設けられている。計測用窓33及び温度計測装置34を設ける位置は、成膜室50の入口であるドア弁d3の手前の位置であって、搬送ロボット31のアーム31aを成膜室50側へ伸ばす前の停止位置がよく、これにより、成膜室50へトレイ22を搬入する前の停止状態でトレイ22を保持し、そして、トレイ22を搬入する直前のタイミングで基板Wの温度を計測している。
【0029】
温度計測装置34は、対象物の温度を非接触、短時間で計測する放射温度計であり、計測用窓33及びトレイ22の貫通孔22aを介して、トレイ22の保持部22bに支持された基板Wの裏面を覗くように、基板Wに裏面側の方に配置されている。これは、基板Wの表面には、基板材料以外の材料の膜、例えば、基板がサファイアである場合には、サファイア以外の材料の膜が成膜されているため、何も成膜されていない基板Wの裏面から温度を計測するためである。そのため、基板Wを保持するトレイ22には貫通孔22aが設けられて、基板Wの裏面が下方側に配置された温度計測装置34側から覗けるようになっている。従って、基板Wの裏面から放出された赤外線IRは、計測用窓33を透過して、温度計測装置34へ入射し、入射した赤外線IRに基づいて、基板Wの温度が計測されることになる。
【0030】
本実施例の場合、成膜室50での成膜の前に、後述する加熱室40でトレイ22を加熱するが、上述したように、温度計測装置34を成膜室50のドア弁d3の手前に設けているので、成膜室50にトレイ22を搬送する直前に基板Wの温度を確認することになり、より適切な温度で成膜室50での成膜を開始することができ、成膜時における基板温度の不安定性を解消することが可能である。
【0031】
又、本実施例の場合、温度計測装置34としては、波長6〜14μmの赤外線IRを計測する放射温度計が好適であり、計測用窓33としては、波長6〜14μmの赤外線IRを透過するフッ化ガラスなどが好適である。このとき、温度計測装置34として用いる放射温度計は、予め、計測経路に含まれる計測用窓33などを実際の装置と一致させた状態で校正を行っておく。
【0032】
加熱室40は、ドア弁d2を介して、搬送室30の側面に別途設けられており、トレイ22と共に基板Wを輻射加熱する構造となっている。特に、サファイアは吸収波長帯が狭いため、加熱には輻射加熱が好適である。
【0033】
具体的には、図3に示すように、トレイ22の上面を輻射加熱するヒータ41aと、トレイ22の下面(裏面)を輻射加熱する41bを有しており、ヒータ41aが支持部44aにより加熱室40の天井側に支持されており、ヒータ41bが支持部44bにより加熱室40の底面側に支持されている。ヒータ41bの上面には支持ピン42が複数設けられており、この支持ピン42によりトレイ22が支持されて、トレイ22の両面をヒータ41a、41bで加熱可能な構造となっている。ヒータ41a、41bの外周側には、断熱のためのシールド板43が設けられており、このシールド板43により外部への熱の放出を防止し、シールド板43の内部の温度を一定に保つようにしている。
【0034】
成膜室50は、公知のプラズマCVD装置から構成される。成膜室50の内部には、トレイ22を載置する支持台51が設けられており、この支持台51上に基板Wと共にトレイ22を載置して、所望の成膜処理が行われることになる。
【0035】
そして、成膜処理装置10において、ロードポート20、搬送室30、加熱室40及び成膜室50は、制御装置(図示省略)により統合的に制御されて、各トレイ22の基板Wへの成膜処理が実施されることになる。本実施例の場合、基板の温度調整装置は、搬送室30、加熱室40、そして、温度計測装置34からなり、これらを統合的に制御することで、本実施例の基板の温度調整方法が実施されることになる。
【0036】
ここで、図4を参照して、本実施例の基板の温度計測装置及び温度調整装置における基板の温度計測方法及び温度調整方法を説明する。
【0037】
最初に、複数の小径の基板Wを載置したトレイ22をカセット21に複数収容し、そのカセット21をロードポート20にセットする(ステップS1)。なお、カセット21にトレイ22のみを複数収容して、ロードポート20にカセット21をセットし、各々のトレイ22に基板Wを載置する載置室を別途設け、この載置室でトレイ22に複数の小径の基板Wを載置した後、後述する手順を実施するようにしてもよい。
【0038】
次に、ロードポート20を減圧(真空引き)し、その後、ドア弁d1を開け、搬送ロボット31を用いて、トレイ22をカセット21から引き出す。その後、ドア弁d2を開け、加熱室40の支持ピン42上へトレイ22を搬入する(ステップS2)。
【0039】
次に、ドア弁d2を閉めた後、加熱室40において、ヒータ41a、41bの輻射加熱により、基板Wと共にトレイ22を加熱する(ステップS3)。ここでは、ヒータ41a、41bの出力や温度と加熱時間の関係から基板Wの到達温度を予め計測しておくと共に、成膜処理に適正な適正温度に加熱できる予定時間を求めておく。そして、その予定時間を経過後に、ドア弁d2を開け、トレイ22を加熱室40から搬出する(ステップS4)。
【0040】
次に、搬送ロボット31のロボットハンド31b上にトレイ22を乗せた状態で、計測用窓33の真上まで移動し、トレイ22に保持された基板Wの裏面を温度計測装置34が覗けるようにする。そして、トレイ22が成膜室50に搬入される直前のタイミングにおいて、加熱された基板Wの温度が温度計測装置34により計測される(ステップS5)。つまり、基板W及びトレイ22が加熱された後、トレイ22が成膜室50に搬入されるまでに、待ち時間があったとしても、トレイ22が成膜室50に搬入される直前のタイミングで基板Wの温度を計測している。
【0041】
次に、計測された基板Wの温度が、成膜処理に適切な適正温度を含む所定の温度範囲内にあるかどうかを確認し、所定の温度範囲内にあれば、ステップS9へ進み、所定の温度範囲内に無ければ、ステップS7へ進む(ステップS6)。
【0042】
基板Wの温度が所定の温度範囲内にない場合、更に、基板Wの温度が所定の温度範囲内より大きいか、小さいかを確認し、大きい場合には、ステップS8へ進み、小さい場合には、ステップS2へ戻る(ステップS7)。
【0043】
基板Wの温度が所定の温度範囲内より小さい場合には、再度、トレイ22を加熱室40へ搬入し(ステップS2)、計測した基板Wの温度に基づいて、適正温度になる所定の時間の間、再加熱が行われ(ステップS3)、その後、トレイ22を加熱室40から搬出し(ステップS4)、温度計測装置34で基板Wの温度を計測することになる(ステップS5)。
【0044】
一方、基板Wの温度が所定の温度範囲内より大きい場合には、ロボットハンド31b上にトレイ22を乗せた状態で、トレイ22を冷却(搬送室30内の減圧雰囲気による自然冷却)する(ステップS8)。その後、再度、温度計測装置34で基板Wの温度を計測する(ステップS5)。なお、トレイ22の冷却時に、基板Wの温度変化を温度計測装置34によりリアルタイムで監視しておき、基板Wの温度が所定の温度範囲内になった時点で、ステップS9へ進むようにしてもよい。又、別途、トレイ22を冷却する冷却室を設けたり、搬送室30内部にトレイ22を冷却する冷却台を設けたりしてもよい。
【0045】
基板Wの温度が所定の温度範囲内にある場合には、ドア弁d3を開け、成膜室50の支持台51上へトレイ22を搬入する(ステップS9)。その後、ドア弁d3を閉め、成膜室50で所望の成膜処理が実施される(ステップS10)。この成膜処理の際には、成膜室50へトレイ22を搬入する直前に、所定の温度範囲内にあることを確認している。その結果、成膜時における基板温度が一定となり、適正な基板温度で成膜が行われるので、成膜される膜の膜質(エッチングレート、透過率など)が安定し、デバイスの歩留まりが向上することになる。
【0046】
このようなステップS1〜S10の手順が、各トレイ22に対して実施され、全てのトレイ22及び全ての基板Wに対して、適正な基板温度での成膜が実施されることになる。
【0047】
(実施例2)
本実施例は、実施例1で示した基板の温度計測装置及び温度調整装置を備えた成膜処理装置を前提とするものであり、実施例1と、基板の温度計測方法は同じであるが、基板の温度調整方法には違いがある。従って、ここでは、装置構成の説明は省略し、図5、図6を参照して、本実施例の基板の温度調整方法を説明する。なお、図5は、本実施例の基板の温度計測方法及び温度調整方法を説明するフローチャートであり、図6は、図5に示したフローチャートによる温度調整を説明するグラフである。
【0048】
最初に、実施例1の図4に示したステップS1と同様に、複数の小径の基板Wを載置したトレイ22をカセット21に複数収容し、そのカセット21をロードポート20にセットする(ステップS11)。
【0049】
次に、ロードポート20を減圧(真空引き)し、その後、ドア弁d1を開け、搬送ロボット31を用いて、トレイ22をカセット21から引き出す。その後、実施例1の図4に示したステップS2と同様に、ドア弁d2を開け、加熱室40の支持ピン42上へトレイ22を搬入する(ステップS12)。
【0050】
次に、実施例1の図4に示したステップS3と同様に、ドア弁d2を閉めた後、加熱室40において、ヒータ41a、41bの輻射加熱により、基板Wと共にトレイ22を加熱する(ステップS13)。そして、実施例1の図4に示したステップS4と同様に、予定時間を経過後に、ドア弁d2を開け、トレイ22を加熱室40から搬出する(ステップS14)。
【0051】
次に、搬送ロボット31のロボットハンド31b上にトレイ22を乗せた状態で、計測用窓33の真上まで移動し、トレイ22に保持された基板Wの裏面を温度計測装置34が覗けるようにする。そして、実施例1の図4に示したステップS5と同様に、トレイ22が成膜室50に搬入される直前のタイミングにおいて、加熱された基板Wの温度が温度計測装置34により計測される(ステップS15)。
【0052】
このように、本実施例において、ステップS11〜S15は、実施例1の図4に示したステップS1〜S5と同じであり、基板の温度計測方法は実施例1と同じである。そして、以降の手順に示す基板の温度調整方法が実施例1とは相違する。
【0053】
計測された基板Wの温度に基づいて、成膜室50で必要な加熱時間を算出する(ステップS16)。例えば、成膜室50において、Ar(アルゴン)などの不活性ガスを導入し、そのプラズマを生成すると、プラズマにより、トレイ22及び基板Wを加熱することができる。又、Arなどの不活性ガスを導入し、圧力を高くすると、支持台51自体の熱をガスが伝熱することにより、トレイ22及び基板Wを加熱することができる。このような加熱方法を用いて、トレイ22及び基板Wを適正温度まで加熱するために必要な加熱時間を予め求めておけばよい。つまり、計測された基板Wの温度と、適正温度まで必要な加熱時間との関係を予め求めておく。
【0054】
このような関係を求めておくと、図6に示すように、計測された基板Wの温度がT2の場合、適正温度Tpまで必要な加熱時間Htを算出することができる。なお、図6では、加熱時間0が、基板Wの計測時の温度(初期温度)である。同様に、計測された基板Wの温度がT1(T1<T2)の場合、適正温度Tpまで必要な加熱時間[Ht+Δt1]を算出することができ、計測された基板Wの温度がT3(T3>T2)の場合、適正温度Tpまで必要な加熱時間[Ht−Δt3]を算出することができる。
【0055】
温度T1、T3が温度T2と近い場合には、温度T2より低い温度T1のときには、Δt1は小さく、温度T2のときの加熱時間Htから微増した加熱時間[Ht+Δt1]となり、一方、温度T2より高い温度T3のときにも、Δt3は小さく、温度T2のときの加熱時間Htから微減した加熱時間[Ht−Δt3]となり、加熱時間の微調整で適正温度Tpまで加熱可能である。
【0056】
なお、本実施例において、成膜室50では加熱しかできない。そのため、計測された基板Wの温度が適正温度Tpより大きい場合には、実施例1の図4に示したステップS8と同様に、ロボットハンド31b上にトレイ22を乗せた状態で、トレイ22を冷却し、適正温度Tp以下にすればよい。
【0057】
ステップS16で必要な加熱時間を求めた後、ドア弁d3を開け、成膜室50の支持台51上へトレイ22を搬入する(ステップS17)。その後、ドア弁d3を閉め、求めた加熱時間を用い、トレイ22を加熱時間の間、例えば、Arプラズマなどにより加熱する(ステップS18)。
【0058】
その後、成膜室50で所望の成膜処理が実施される(ステップS19)。この成膜処理の際には、成膜室50へトレイ22を搬入後、適正温度Tpまで加熱している。その結果、成膜時における基板温度が一定となり、適正な基板温度で成膜が行われるので、成膜される膜の膜質(エッチングレート、透過率など)が安定し、デバイスの歩留まりが向上することになる。
【0059】
このようなステップS11〜S19の手順が、各トレイ22に対して実施され、全てのトレイ22及び全ての基板Wに対して、適正な基板温度での成膜が実施されることになる。
【0060】
(実施例3)
本実施例は、実施例1で示した成膜処理装置において、基板の温度計測装置に相違がある。従って、ここでは、重複する構成には同じ符号を付し、重複する記載の説明は省略し、図7を参照して説明を行う。なお、図7は、本実施例の基板の温度計測装置を示す断面図である。
【0061】
本実施例では、計測用窓33と当該計測用窓33の下方に設けた温度計測装置34との間に、つまり、赤外線IRの計測経路となる部分に遮光カバー35を設けた構成である。放射温度計により基板Wの温度を計測する場合、周囲からの光により、温度計測に誤差が生じる場合がある。そこで、この誤差を極力少なくするために、温度計測装置34の計測経路を囲むように遮光カバー35を設けた。遮光カバー35を設けることにより、その周囲からの外乱光の影響を防止して、温度計測の誤差を小さくすることが可能となる。
【0062】
(実施例4)
本実施例も、実施例1で示した成膜処理装置において、基板の温度計測装置に相違がある。図8を参照して、本実施例の基板の温度計測装置の説明を行う。なお、図8は、本実施例の基板の温度計測装置を示す断面図である。
【0063】
基板Wの温度計測の手段として、放射温度計に代えて、薄膜型熱電対36を用いてもよい。この場合、成膜室50のドア弁d3の入口前方に、複数の基板支持台37及びトレイ支持台38を設けている。つまり、本実施例においても、上述した温度計測装置34(放射温度計)の場合と同様の温度計測位置に、薄膜型熱電対36、基板支持台37及びトレイ支持台38を設置している。そして、1つの基板支持台36上に薄膜型熱電対37を設置し、基板Wの自重により+極と−極が接触するように、+極と−極の間隔を調整して配置する。
【0064】
従って、搬送ロボット31によりトレイ22が搬送されて、トレイ支持台38上にトレイ22が載置されると、基板Wは基板支持台37上に載置され、基板Wの自重により、薄膜型熱電対37の+極と−極が接触して、基板Wの温度を計測することになる。本実施例の場合、放射温度計を利用できない場合でも、薄膜型熱電対36などの熱電対を用いることにより、安価かつ容易に基板Wの温度を計測することができる。なお、薄膜熱電対に代えて、他の温度計測装置、例えば、抵抗温度計などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、サファイアなどの透明基板の温度計測及び温度調整に好適である。
【符号の説明】
【0066】
10 成膜処理装置
20 ロードポート
22 トレイ
30 搬送室
34 温度計測装置(放射温度計)
35 遮光カバー
36 薄膜型熱電対
40 加熱室
50 成膜室
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する基板の温度計測装置であって、
前記搬送ロボットで搬送された前記基板が停止する前記処理室の入口の手前の位置であり、当該位置の前記基板の裏面側に前記温度計測装置を設けたことを特徴とする基板の温度計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板の温度計測装置において、
前記温度計測装置を放射温度計としたことを特徴とする基板の温度計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板の温度計測装置において、
前記放射温度計の計測経路に遮光カバーを設けたことを特徴とする基板の温度計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板の温度計測装置において、
前記温度計測装置を熱電対又は抵抗温度計としたことを特徴とする基板の温度計測装置。
【請求項5】
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する基板の温度計測方法であって、
前記加熱室で加熱した前記基板を前記搬送ロボットで前記処理室の入口の手前の位置まで搬送し、
当該位置の前記基板の裏面側に設けた放射温度計を用いて、加熱した前記基板の裏面の温度を計測することを特徴とする基板の温度計測方法。
【請求項6】
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する基板の温度計測方法であって、
前記加熱室で加熱した前記基板を前記搬送ロボットで前記処理室の入口の手前の位置まで搬送し、
当該位置の前記基板の裏面側に設けた基板支持台に前記基板を載置し、
前記基板支持台上に設けた熱電対又は抵抗温度計を用いて、加熱した前記基板の裏面の温度を計測することを特徴とする基板の温度計測方法。
【請求項7】
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の温度を調整する基板の温度調整装置であって、
前記搬送ロボットで搬送された前記基板が停止する前記処理室の入口の手前の位置であり、当該位置の前記基板の裏面側に、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する温度計測装置を設け、
当該温度調整装置は、
前記温度計測装置により、加熱した前記基板の裏面の温度を計測し、
計測した前記基板の裏面の温度が所定の温度範囲内にない場合、前記所定の温度範囲より大きい場合には、前記搬送ロボットで保持した状態で前記基板を冷却し、前記所定の温度範囲より小さい場合には、前記搬送ロボットで再び前記加熱室へ搬送し、前記加熱室で加熱することを特徴とする基板の温度調整装置。
【請求項8】
基板を加熱する加熱室と、加熱された前記基板にプラズマ処理を行う処理室と、前記加熱室から前記処理室へ前記基板を搬送する搬送ロボットを有する搬送室とを備えたプラズマ処理装置において、加熱した前記基板の温度を調整する基板の温度調整方法であって、
前記搬送ロボットで搬送された前記基板が停止する前記処理室の入口の手前の位置であり、当該位置の前記基板の裏面側に、加熱した前記基板の裏面の温度を計測する温度計測装置を有し、
前記温度計測装置により、加熱した前記基板の裏面の温度を計測し、
計測した前記基板の裏面の温度が所定の温度範囲内にない場合、前記所定の温度範囲より大きい場合には、前記搬送ロボットで保持した状態で前記基板を冷却し、前記所定の温度範囲より小さい場合には、前記搬送ロボットで再び前記加熱室へ搬送し、前記加熱室で加熱することを特徴とする基板の温度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−115403(P2013−115403A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263314(P2011−263314)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】