説明

基板の製造方法

【課題】III族窒化物半導体の結晶層の結晶性を向上できる基板の製造方法を提供する。
【解決手段】上面が(0001)面のサファイア単結晶を下地基板とし、下地基板上面にクロム層を成膜した後、クロム層が形成された下地基板をGaNの結晶を成長させるための装置への移送し、窒素を含有した還元性ガス雰囲気で1000℃以上の温度で加熱窒化処理を行うことにより、クロム窒化物(CrN)膜を形成するが、このとき、窒化アルミニウムを含む中間層が、下地基板とクロム窒化物膜との間に形成される。次に、GaNバッファ層を成膜した後、基板温度を1040℃まで昇温し、GaNの結晶層を成長させることにより、上面のピット密度が、105/cm2以下であるGaN単結晶基板が得られる。必要により、クロム窒化物膜の選択的エッチングし、GaNの基板を下地基板から分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非特許文献1に示されるように、MBE法により、クロム層を形成し、そのクロム層をNプラズマ源で窒化する技術がある。非特許文献1の技術では、クロム層を低温で窒化することによりクロム窒化物膜を形成している。そして、クロム窒化物膜の上に窒化ガリウムをエピタキシャル成長させることにより、窒化ガリウムの結晶層を得ている。
【非特許文献1】李旭鉉、外7名、「MBE法による低温CrxNバッファ層を用いたGaNの成長」、応用物理学会予稿集、364ペ−ジ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
LED(Light Emitting Diode)などの電子素子は、窒化ガリウムの結晶層を含む半導体基板の上に形成されることがある。ここで、電子素子の特性を向上するためには、窒化ガリウムの結晶層の結晶性を向上することが必要である。窒化ガリウムの結晶層の結晶性を向上するためには、窒化ガリウムの結晶層を下地基板の上に直接形成せずに、下地基板の上に低温バッファ層を形成した後に、その低温バッファ層の上に窒化ガリウムの結晶層を形成することが一般的である。低温バッファ層は、窒化ガリウムの結晶層を形成するための温度よりも低い温度で、窒化ガリウムを成長させて得られる層である。
【0004】
一般的に、下地基板は、サファイアの結晶を含む。この場合、下地基板(サファイア)と低温バッファ層(窒化ガリウム)との間で、格子不整合が大きく、熱膨張係数の差が大きい。これにより、下地基板の上に成長させた低温バッファ層に転位や内部応力が発生するので、その上に成長させた窒化ガリウムの結晶層の結晶性が向上しない可能性がある。下地基板(サファイア)と低温バッファ層(窒化ガリウム)との間の格子不整合や熱膨張係数の差を緩和する技術が望まれる。
【0005】
それに対して、下地基板の上にクロム層を形成して、そのクロム層を窒化してクロム窒化物膜とする技術が本発明者によって提案された。クロム窒化物膜の格子間隔は、下地基板(サファイア)の格子間隔と低温バッファ層(窒化ガリウム)の格子間隔との間の値を有する。クロム窒化物膜の熱膨張係数は、下地基板(サファイア)の熱膨張係数と低温バッファ層(窒化ガリウム)の熱膨張係数との間の値を有する。
【0006】
ここで、クロム窒化物膜の結晶性が良ければ、その上に低温バッファ層(窒化ガリウム)を形成することにより、下地基板(サファイア)と低温バッファ層(窒化ガリウム)との間の格子不整合や熱膨張係数の差を緩和できる。しかし、このクロム窒化物膜の結晶性が良くないと、その上に成長させる低温バッファ層(窒化ガリウム)の結晶性が低下し、さらに低温バッファ層の上に成長させる窒化ガリウムの結晶層の結晶性も低下する可能性がある。
【0007】
非特許文献1には単にクロム層を低温で窒化することが開示されているのみであり、どのような温度でクロム層を窒化すればクロム窒化物膜の結晶性を向上できるのかについての開示がない。クロム窒化物膜の結晶性を向上するための方法が望まれる。
【0008】
本発明の目的は、クロム窒化物膜の結晶性を向上できる基板の製造方法を提供することにある。
【0009】
なお、III族窒化物半導体としては、Ga、In系のものが挙げられる。III族窒化物半導体は、例えば、GaN系,AlGaN系,AlInGaN系等であるが、これらに限らない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面に係る基板の製造方法は、下地基板の上にクロム層を成膜するクロム層成膜工程と、前記クロム層を1000℃以上の温度で窒化してクロム窒化物膜にする窒化工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2側面に係る基板の製造方法は、本発明の第1側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体の結晶層を成長させる結晶層成長工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3側面に係る基板の製造方法は、本発明の第1側面又は第2側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記下地基板の上面は、六方晶系及び擬似六方晶系のいずれかの(0001)面、又は立方晶系の(111)面であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4側面に係る基板の製造方法は、本発明の第1側面から第3側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒化工程では、窒素を含む還元ガス雰囲気中で前記クロム層を窒化することを特徴とする。
【0014】
本発明の第5側面に係る基板の製造方法は、本発明の第4側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒素を含む還元ガスは、アンモニア及びヒドラジンの少なくとも一方を含んでいることを特長とする。
【0015】
本発明の第6側面に係る基板の製造方法は、本発明の第1側面から第5側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒化工程では、前記クロム窒化物膜の表面に三角錐形状の複数の微結晶部が形成されることを特徴とする。
【0016】
本発明の第7側面に係る基板の製造方法は、本発明の第6側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒化工程では、前記下地基板と前記クロム窒化物膜との間に中間層が形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8側面に係る基板の製造方法は、本発明の第6側面又は第7側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、底面の各辺が前記下地基板の(0001)面上で、〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9側面に係る基板の製造方法は、本発明の第7側面又は第8側面に係る基板の製造方法であって、前記下地基板は、サファイアを含み、前記中間層は、窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の第10側面に係る基板の製造方法は、本発明の第6側面から第9側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の三角錐形状の微結晶部は、1辺の長さが10nm以上300nm以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第11側面に係る基板の製造方法は、本発明の第2側面から第10側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜をエッチングして前記III族窒化物半導体の結晶を前記下地基板から分離する分離工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の第12側面に係る基板の製造方法は、本発明の第1側面から第11側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記III族窒化物半導体の結晶層の上面のピット密度は、10/cm以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明の第13側面に係る基板の製造方法は、下地基板の上にクロム層を成膜するクロム層成膜工程と、前記クロム層を窒化してクロム窒化物膜にする窒化工程とを備え、前記窒化工程では、前記下地基板と前記クロム窒化物膜との間に中間層が形成されることを特徴とする。
【0023】
本発明の第14側面に係る基板の製造方法は、本発明の第13側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体の結晶層を成長させる結晶層成長工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明の第15側面に係る基板の製造方法は、本発明の第13側面又は第14側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記下地基板の上面は、六方晶系及び擬似六方晶系のいずれかの(0001)面、又は立方晶系の(111)面であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第16側面に係る基板の製造方法は、本発明の第13側面から第15側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒化工程では、窒素を含む還元ガス雰囲気中で前記クロム層を窒化することを特徴とする。
【0026】
本発明の第17側面に係る基板の製造方法は、本発明の第16側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒素を含む還元ガスは、アンモニア及びヒドラジンの少なくとも一方を含んでいることを特長とする。
【0027】
本発明の第18側面に係る基板の製造方法は、本発明の第13側面から第17側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記窒化工程では、前記クロム窒化物膜の表面に三角錐形状の複数の微結晶部が形成されることを特徴とする
本発明の第19側面に係る基板の製造方法は、本発明の第18側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、底面の各辺が前記下地基板の(0001)面上で、〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びることを特徴とする。
【0028】
本発明の第20側面に係る基板の製造方法は、本発明の第19側面に係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記下地基板は、サファイアを含み、前記中間層は、窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の第21側面に係る基板の製造方法は、本発明の第18側面から第20側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜の三角錐形状の微結晶部は、1辺の長さが10nm以上300nm以下であることを特徴とする。
【0030】
本発明の第22側面に係る基板の製造方法は、本発明の第14側面から第21側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記クロム窒化物膜をエッチングして前記III族窒化物半導体の結晶を前記下地基板から分離する分離工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明の第23側面に係る基板の製造方法は、本発明の第13側面から第22側面のいずれかに係る基板の製造方法の特徴に加えて、前記III族窒化物半導体の結晶層の上面のピット密度は、10/cm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、クロム窒化物膜の結晶性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本明細書において、「膜」は、例えば、平坦な表面を有しても良いし、凹凸を含む表面を有しても良い。凹凸を含む表面を有する膜は、例えば、三角錐形状の微結晶が少なくとも一点で接するように横方向に並んだものであっても良い。
【0034】
本発明の実施形態に係る基板の製造方法を、図1〜図10を用いて説明する。以下では、結晶層としてIII族窒化物半導体のGaNを例として説明するが、他のIII族窒化物半導体に関しても同様である。なお、後述のように結晶層を自立基板として用いてダイオード等に応用することを考えると、結晶層の材質となるIII族窒化物半導体は、GaNであることが好ましい。
【0035】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る基板の製造方法を示す工程断面図である。図3及び図4は、XRD(X−Ray Diffraction)チャ−トである。図6は、試料表面を撮影したSEM写真である。図10は、試料表面を撮影した顕微鏡写真である。図8は、クロム窒化物膜の表面モフォロジ−の模式図である。図9は、クロム窒化物膜の微結晶部の結晶方位を示す図である。
【0036】
図1(a)に示す工程では、下地基板10を準備する。下地基板10は、サファイアの単結晶で形成されている。下地基板10の上面10aは、サファイアの単結晶の(0001)面になっている。サファイアの単結晶は、擬似六方晶系の結晶構造を有する。
【0037】
なお、下地基板は、六方晶系、擬似六方晶系及び立方晶系のいずれかの結晶構造を有する材料であれば、サファイア以外の材料で形成されていてもよい。なお、下地基板が立方晶系の場合には、以下の記載において上面として(111)面を用いる。
【0038】
図1(b)に示す工程では、下地基板10の上面10aに、クロム層20を成膜する。すなわち、サファイアの結晶の(0001)面の上にクロム層20を成膜する。具体的には、まず、下地基板10は、通常の半導体基板の洗浄方法(有機洗浄による脱脂、酸・アルカリ・純水洗浄による、汚染物・パ−ティクル除去)で洗浄し表面10aの清浄度を確保する。次に、清浄度が確保された表面10aの上に、不活性ガス雰囲気中、たとえばArガス雰囲気中でスパッタリング法により金属Cr膜を成膜してクロム層20を形成する。
【0039】
ここで、クロム層20の平均膜厚は、7nm以上45nm以下の範囲内の値であることが好ましく、10nm以上40nm以下の値であることがさらに好ましい。Cr層の平均層厚を7nm以上45nm未満とすることで、良好な結晶性の結晶層を成長させることが可能となり、さらに10nm以上40nm以下とすることで、結晶層のピット密度も低減させることが可能となる。
【0040】
なお、クロム層20は、金属を含むアルキル化合物や塩化物を用いて化学気相法(CVD)により成膜してもよいし、有機金属気相法(MOCVD)により成膜してもよいし、真空(熱)蒸着法により成膜してもよい。
【0041】
この工程で得られた試料のXRD解析を行うと、例えば、図3に示す結果が得られる。図3では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。これにより、下地基板10(サファイア)の(0001)面とクロム層20の(110)面とが平行になるように配向していることが分かる。クロム層20は、体心立方構造の金属である。
【0042】
図1(c)に示す工程では、クロム層20が形成された下地基板10を、GaNの結晶を成長させるための装置への移送する。そして、クロム層20が形成された下地基板10を、窒素を含有した還元性ガス雰囲気で加熱窒化処理を行う。この窒素を含有した還元性ガスは、好ましくはアンモニア及びヒドラジンの少なくとも一方を含んでいる。その際、加熱温度は、1000℃以上(1273K以上)1300℃以下であることが好ましく、1040℃以上1300℃以下であることがさらに好ましく、1060℃以上1300℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度1000℃以上1300℃以下で窒化することにより、クロム層20がほぼ全部窒化してクロム窒化物膜30になるとともに、中間層60(図7参照)を、下地基板10とクロム窒化物膜30との間に形成する。
【0043】
例えば、下地基板10がサファイアを含む場合、加熱温度1000℃以上1300℃以下で窒化することにより、下地基板10からAl原子が拡散し、クロム窒化物膜30からN原子が拡散する。これにより、窒化アルミニウムを含む中間層60が下地基板10とクロム窒化物膜30との間に形成される。この中間層60は、後述するように、下地基板10に対してクロム窒化物膜30の結晶格子が特定の方向に揃った状態で再配列することを支援すると考えられる。
【0044】
この結果、クロム窒化物膜30は、三角錐形状の複数の微結晶部31を表面に有するようになる。
【0045】
ここで、クロム窒化物膜30の組成は、CrNであることが好ましい。中間層60の厚さは、下地基板10に対してクロム窒化物膜30の結晶格子が特定の方向に揃った状態で再配列することを支援するのに十分な厚さであり、例えば、2.5nmである。なお、中間層60の厚さは、加熱窒化処理を行う際の加熱温度や加熱窒化処理を行う時間を変えることにより制御することができる。
【0046】
また、三角錐形状の微結晶部31の1辺の長さは、窒化処理前のCr膜の層厚や加熱温度条件により変化するが、10nmから300nmの範囲である。加熱温度1040℃で窒化することにより、その上に成長させる後述のGaNの結晶層50の表面50aのピット密度が10〜10/cmレベルまで低減する。加熱温度1060℃で窒化することにより、後述のGaNの結晶層50の表面50aのピット密度が数/cmレベルまで低減する。加熱温度が高いほど、三角錐形状の不定形性が解消されるためと考えられる。
【0047】
だだし、過度に高温とするのは、熱負荷増大による装置の部材劣化の問題が生じるので、加熱温度は1300℃以下が好ましい。
【0048】
ここで、クロム窒化物膜30の平均膜厚は、22.5nm以上75nm以下の範囲内の値であることが好ましく、29nm以上31nm以下の値であることがさらに好ましい。
【0049】
この工程で得られた試料のXRD解析を行うと、例えば、図4に示す結果が得られる。図4は、図1(c)に示す試料についてのXRDチャ−トである。図4では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。図4のXRDチャ−トでは、サファイアのピ−ク及びCrNのピ−クが観察されるが、Crのピ−クは観察されない。これにより、クロム層20がほぼ全て窒化してクロム窒化物膜30が形成されたことが分かる。
【0050】
また、CrNに関して、(111)面及び(222)面のピ−クのみが観察され、その半値幅が狭くなっている。これにより、クロム窒化物膜30は、サファイア基板の(0001)面に平行に、(111)面の方位が揃った状態となっていることが分かる。
【0051】
この工程で得られた試料の表面をSEM観察すると、例えば、図6に示す結果が得られる。図6は、試料表面のSEM写真である。
【0052】
図6のSEM写真によれば、クロム窒化物膜30が、三角錐形状の複数の微結晶部31を表面に有していることが分かる。また、クロム窒化物膜30の各微結晶部31は、ほぼ一様な大きさを有しており、概略一様な間隔で分布していることが分かる。このようなクロム窒化物膜30の各微結晶部31は、下地基板10の表面10aの略全面に分布している。
【0053】
ここで、下地基板10とクロム窒化物膜30との間に中間層60が形成されていることを確認するために、図1(c)に示す工程により得られた試料の断面をTEM観察した。その結果、図7に示すように、試料の断面TEM像においてコントラストの異なる各層の電子線回折解析などを行うことにより、下地基板10(サファイア)とクロム窒化物膜30(CrN)との間に中間層60(AlN)が形成されていることが確認された。この中間層60の厚さは、約2.5nmであった。
【0054】
また、その後、化学溶液を用いてクロム窒化物膜30を選択的にエッチングして中間層60を露出させた。これにより得られた試料のGIXRD(Glancing Incident X−ray Diffraction)解析を行うと、例えば、図5に示す結果が得られる。図5は、下地基板10とクロム窒化物膜30との間に中間層60を形成させた後に中間層60を露出させた試料についてのGIXRDチャ−トである。図5では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。ここで、測定に用いた装置はスプリング8である。測定時のX線の波長は、0.09987nmである。試料表面に対するX線の入射角は0.5°である。X線の強度は8GeVである。図5のGIXRDチャ−トでは、サファイアのピ−クだけでなくAlNのピ−クが観察される。これにより、下地基板10とクロム窒化物膜30との間に中間層60が形成されたことが確認された。 さらに、図5のXRDチャ−トには、サファイアの(11−20)面のピークと、窒化アルミニウムのm面(結晶格子面に垂直な面)としての(10−10)面のピークとが観察されている。これにより、窒化アルミニウムの(0001)面は、サファイアの(0001)面に対して30°面内回転していることが確認された。すなわち、中間層60である窒化アルミニウムの(0001)面は、サファイアの(0001)面に対してクロム窒化物の(111)面が30°回転した方向にクロム窒化物の結晶格子が安定して再配列するように支援していると考えられる。
【0055】
なお、上述の化学溶液(エッチャント)は、例えば、過塩素酸(HClO)と硝酸2セリウムアンモニウム(Ce(NH(NO)との混合水溶液が好適であるが、これに限定されない。

クロム窒化物膜30の各微結晶部31は、図8に示すように、底辺の各辺が、下地基板10の〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びている。
【0056】
また、図1(c)に示す工程で得られた試料の断面をTEM観察した。その結果、各微結晶部31の3つの側面(底面以外のファセット面)は、{100}面群で形成されていることが分かった。
【0057】
このように、クロム窒化物膜30の各微結晶部31は、個々には単結晶、二つの結晶方位を有する微結晶(マルチツイン)集合体である。図6及び図8に示すように、三角錐の底辺の向きが180°面内回転した二種類の結晶方位(マルチツイン)を有する状態であるが、この上に成長する六方晶系の結晶対称性から、成長したIII族窒化物半導体結晶は単結晶となるので、何ら支障はない。すなわち、図9に示すように、クロム窒化物膜30の各微結晶部31の格子間隔(図9に示す正三角形部の黒丸の間隔)は、下地基板10(サファイア)の格子間隔(図9に示す白丸の間隔)と異なる。これにより、各微結晶部31を構成する原子(図9に示す黒丸)がサファイアの格子(図9に示す白丸)の間の位置で安定的に存在する。これにより、各微結晶部31は、黒丸で示す結晶格子のパタ−ンが繰り返し配列された微結晶(マルチツイン)となり、三角錐形状の複数の微結晶部を表面に有するようになる。そして、各微結晶部31は、底辺が〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延び、側面が{100}面群になる。これにより、微結晶どうしの面内回転による結晶方位ズレは極めて少ない状態となる。また、各微結晶部31の底面の重心から上端へ向かう方向は、下地基板の(0001)面に対して垂直、すなわちサファイアの結晶のC軸と平行な方位となっている。
【0058】
ここで、クロム窒化物膜30の平均膜厚は、10nm以上68nm以下の範囲内の値であることが好ましく、15nm以上60nm以下の値であることがさらに好ましい。ここで、CrN膜の平均膜厚は、断面TEMで凹凸を測定して求めることができ、窒化を行う以前のCr層の平均層厚の1.5倍に相当することが確認された。
【0059】
クロム窒化物膜30の平均膜厚が10nm未満の場合、すなわちクロム層厚を7nm未満の場合、下地基板10の表面10aが部分的に露出することがあるため、後述の図2(a)の工程で下地基板10とクロム窒化物膜30との両者からGaNのバッファ層が成長し始めることになる。これにより、下地基板10から成長したGaNのバッファ層とクロム窒化物膜30から成長したGaNのバッファ層とで結晶方位が異なるので、後述の図2(b)の工程で結晶品質の向上が期待できないおそれがあり、又は、後述の図2(b)の工程で結晶成長後のGaNの表面においてピットが多くなるおそれがある。また、クロム窒化物膜30の平均膜厚が68nmを越えた場合、上述の加熱窒化処理において、下地基板10上にクロム窒化物膜30の固相エピタキシャル成長が均一に進行せずにクロム窒化物膜30が多結晶となる傾向にある。これにより、後述の図2(a)の工程でクロム窒化物膜30の上に成長するGaNがモザイク状乃至多結晶になり、後述の図2(b)の工程で結晶品質の向上が期待できないおそれがある。
【0060】
なお、図1(b)に示す工程と図1(c)に示す工程とは、同一装置で行っても別の装置で行っても良い。図1(b)に示す工程と図2(a)に示す工程との間では、大気開放しないで行うことが好ましい。
【0061】
次に、図2(a)に示す工程では、下地基板温度を900℃まで下げ、HVPE法でIII族窒化物(例えば、GaN)のバッファ層40を成膜する。バッファ層40の膜厚は、例えば、約10μmとする。
【0062】
ここで、バッファ層40は、三角錐形状のクロム窒化物膜30の三角錐形状の微結晶(微結晶部31)を成長核に(核生成サイトとして)、{100}ファセット面群のそれぞれから横方向成長する。これにより、クロム窒化物膜30とバッファ層40との界面(成長界面)で発生する転位(貫通転位)が上方向に伝播することを抑制できる。三角錘形状は、鋭角を有するものや、一辺が直線であるようなもののみに限定するものではなく、概ね三角錐形状のことを称している。形状を擬似的に加工し、または、成長過程で多面体にする物も含む。
【0063】
また、クロム窒化物膜30の微結晶(微結晶部31)の結晶方位が揃っているので、III族窒化物の横方向成長において異なる方向から成長した結晶どうしが合体する際に、面内回転による方位ズレや成長厚み方向の結晶軸ズレ(C軸のズレ)を小さくできる。これにより、結晶方位が揃った状態で合体させることができるので、異なる方向から成長した結晶どうしが合体する部分において、III族窒化物の転位の発生を抑制することができる。
【0064】
さらに、核生成サイトとなる微結晶部31が、下地基板10の上において、ほぼ一様な大きさを有しており、一様な間隔で分布している。これにより、クロム窒化物膜30の上においてバッファ層40が一様な方向に成長するので、この点からも転位の発生を抑制することができる。
【0065】
図2(b)に示す工程では、下地基板温度を1040℃まで昇温し、GaNの結晶層50を成長する。成長時の結晶層50の膜厚は、例えば、約10μmとする。これにより、下地基板10、クロム窒化物膜30、バッファ層40及び結晶層50を備えた構造体1が形成される。
【0066】
上述のように転位が低減したバッファ層40の上に結晶層50を成長するので、結晶層50の転位密度は10〜10/cmにまで低減する。すなわち、いわゆる低温バッファ層技術よりも1〜2桁の転位密度が低減する。
【0067】
この工程で得られた試料の表面を顕微鏡で観察すると、例えば、図10に示す結果が得られる。図10は、試料表面の顕微鏡写真である。
【0068】
図10の顕微鏡写真によれば、結晶層50の表面50aには、ほとんどピットがないことが分かる。すなわち、表面ピット密度は、0〜10/cmレベルまで低減する。すなわち、金属バッファ層を用いる方法(例えば、特開2002−284600に示されるAl,Au,Ag,Ni,Ti,Cuを用いた方法を用いた場合、表面ピット密度は10〜10/cm)に比べ、エピシャル成長膜の表面ピット密度を3〜4桁以上低減することができる。これにより、ピットに起因した歩留まりの低下が生じない。また、結晶層50における転位密度を低減できていることが推定される。
【0069】
図2(c)に示す工程では、化学溶液を用いてクロム窒化物膜30を選択的にエッチングする。GaNの基板SBを下地基板10から分離できる。すなわち、GaNの基板SBを自立基板として得ることができる。ここで、基板SBは、バッファ層40と結晶層50とを含んでいる。
【0070】
副次的な効果として、バッファ層40の裏面には、クロム窒化物膜30の微結晶部31に対応した凹部41が形成されている。この凹部41は、数十nmから数百オ−ダ−の逆三角錐形状であるため、デバイスに用いた際に発光ダイオ−ドの光取り出し効率を向上できる。また、結晶欠陥密度の低減により、発光ダイオードの内部量子効率も向上するので、発光ダイオードの全体発光効率も大幅に改善される効果が得られる。
【0071】
なお、上記バッファ層40の上にさらにIII族系窒化物の半導体層を積層し、素子構造とすれば、優れた半導体素子が得られる。
【比較例】
【0072】
次に、比較例に係る基板の製造方法を、図11〜図14を用いて説明する。以下では、本発明の実施形態に係る基板の製造方法と異なる部分を中心に説明し、同様の部分については、説明を省略する。
【0073】
図11(a)に示す工程では、クロム層20が形成された下地基板10を、GaNの結晶を成長させるための装置への移送する。そして、クロム層20が形成された下地基板10を、窒素を含有した還元性ガス雰囲気で加熱窒化処理を行う。この窒素を含有した還元性ガスは、アンモニア及びヒドラジンの少なくとも一方を含んでいる。その際、加熱温度は900℃とする。これにより、クロム層20の表面近傍が窒化して、概略平坦な表面130aに有するクロム窒化物膜130が形成される。
【0074】
この工程で得られた試料のXRD解析を行うと、例えば、図12に示す結果が得られる。図12は、図11(a)に示す試料についてのXRDチャ−トである。図12では、縦軸がピ−ク強度(任意単位)を示し、横軸が回折角2θを示す。図12のXRDチャ−トでは、サファイアのピ−ク及びCrNのピ−クが観察されるだけでなく、Crのピ−クも観察される。これにより、クロム層20が一部窒化してクロム窒化物膜130が形成されたことが分かる。
【0075】
また、CrNに関して、(111)面及び(222)面のピ−クのみが観察され、その半値幅が広くなっている。これにより、クロム窒化物膜130は、サファイア基板の(0001)面に対して、(111)面の方位がばらついた状態となっていることが分かる。
【0076】
ここで、クロム窒化物膜130の平均膜厚は、例えば、5nmである。また、加熱窒化処理を行う温度が低いため、下地基板10とクロム窒化物膜130との間に中間層60(図7参照)は形成されない。例えば、下地基板10がサファイアを含む場合、加熱温度900℃で窒化しているので、下地基板10からAl原子が拡散せず、クロム窒化物膜130からN原子が拡散しない。これにより、窒化アルミニウムを含む中間層60が下地基板10とクロム窒化物膜130との間に形成されない。下地基板10とクロム窒化物膜130との間に中間層60が形成されないので、下地基板10に対してクロム窒化物膜30の結晶格子が特定の方向に揃った状態で再配列しにくいと考えられる。このため、クロム窒化物膜130は、サファイア基板の(0001)面に対して、(111)面の方位がばらついた状態となる。
【0077】
この工程で得られた試料の表面をSEM観察すると、例えば、図13に示す結果が得られる。図13は、試料表面のSEM写真である。
【0078】
図13のSEM写真によれば、クロム窒化物膜130が、平坦な表面130aに有していることが分かる。すなわち、クロム窒化物膜130の表面130aには、三角錐形状の微結晶(微結晶部)は形成されない。
【0079】
次に、図11(b)に示す工程では、基板温度を900℃にしたまま、HVPE法でGaNのバッファ層140を成膜する。バッファ層140の膜厚は、例えば、約10μmとする。
【0080】
ここで、バッファ層140は、クロム窒化物膜130の平坦な表面130aの上に成長する。これにより、クロム窒化物膜130とバッファ層140との界面(成長界面)で発生する転位が上方向に伝播しやすい。
【0081】
また、クロム窒化物膜130の結晶方位がばらついているので、その上に成長したバッファ層140の結晶どうしが合体する際に、面内回転による方位ズレや成長厚み方向の結晶軸ズレ(C軸のズレ)が発生しやすい。これにより、結晶方位がばらついた状態で合体することがあるので、異なる方向から成長した結晶どうしが合体する部分において、転位が発生しやすい。
【0082】
仮に、クロム窒化物膜130の表面130aに対して原子レベルの平坦性を確保したとしても、GaNとCrNとの格子不整があるため、成長界面で高密度の転位が発生する傾向にある。また、成長が横方向成長を伴わないため、転位密度を低減できないおそれがある。
【0083】
図11(c)に示す工程では、基板温度を1040℃まで昇温し、GaNの結晶層150を成長する。成長時の結晶層150の膜厚は、例えば、約10μmとする。
【0084】
上述のように転位が発生しやすいバッファ層140の上に結晶層150を成長するので、結晶層150の転位密度は高くなる傾向にある。
【0085】
この工程で得られた試料の表面を顕微鏡で観察すると、例えば、図14に示す結果が得られる。図14は、試料表面の顕微鏡写真である。
【0086】
図14の顕微鏡写真によれば、結晶層150の表面150aには、多くのピットが発生していることが分かる。これにより、ピットに起因した歩留まりの低下が生じることがある。また、結晶層150における転位密度が高くなっていることが推定される。
【0087】
以上のように、クロム層20を窒化する際の温度(窒化温度)により、得られるクロム窒化物膜の形状が変化する。それにより、その上に成長させるバッファ層及び結晶層の結晶性が変化する。そこで、上述の図1〜図2と同様の工程により試料を作成した。ここで、窒化温度(図1(c)に示す工程における加熱温度)を変えた場合において、結晶層のXRD解析結果からGaNのピ−ク半値幅を評価し、結晶層表面のSEM写真又は顕微鏡写真から結晶層の表面のピット密度を評価した。その結果を図15に示す。図15では、白丸のプロットがピ−ク半値幅の変化を表し、黒四角のプロットが表面ピット密度を表す。ピ−ク半値幅は、小さいほど結晶性が良好であることを示す。
【0088】
図15に示す結果より、窒素を含有した還元性ガス雰囲気での加熱処理において、加熱温度は、1000℃以上であることが好ましく、1040℃以上であることがさらに好ましく、1060℃以上であることがさらに好ましいことを示している。
【0089】
すなわち、加熱温度1000℃以上で窒化することにより、クロム層20がほぼ全部窒化して、クロム窒化物膜の表面に三角錐形状の微結晶(微結晶部)が形成されて、結晶層の結晶性が向上するとともに、加熱温度900℃の場合に比べて結晶層の表面のピット密度が1桁近く減少することが分かる。
【0090】
例えば、加熱温度1040℃で窒化することにより、結晶層50の表面50aのピット密度が10〜10/cmレベルまで低減する。これにより、加熱温度1000℃で窒化する場合よりも結晶層の表面のピット密度が低減していることが分かる。
【0091】
例えば、加熱温度1060℃で窒化することにより、結晶層50の表面50aのピット密度が数/cmレベルまで低減する。これにより、加熱温度1040℃で窒化する場合よりも結晶層の表面のピット密度が低減していることが分かる。
【0092】
以上のように、加熱温度が高いほど、三角錐形状の不定形性が解消されるため、結晶層の表面のピット密度が低減すると考えられる。だだし、過度に高温とするのは、熱負荷増大による装置の部材劣化の問題が生じるので、加熱温度は1300℃以下が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態に係る基板の製造方法を示す工程断面図。
【図2】本発明の実施形態に係る基板の製造方法を示す工程断面図。
【図3】試料のXRDチャ−ト。
【図4】試料のXRDチャ−ト。
【図5】試料のGIXRDチャ−ト。
【図6】試料表面を撮影したSEM写真。
【図7】試料の断面TEM像を示す写真。
【図8】表面モフォロジ−の模式図。
【図9】クロム窒化物膜の微結晶部の結晶方位を示す図。
【図10】試料表面を撮影した顕微鏡写真。
【図11】本発明の比較例に係る基板の製造方法を示す工程断面図。
【図12】試料のXRDチャ−ト。
【図13】試料表面を撮影したSEM写真。
【図14】試料表面を撮影した顕微鏡写真。
【図15】窒化温度と結晶性との関係を示す図。
【符号の説明】
【0094】
10 下地基板
20 クロム層
30,130 クロム窒化物膜
40,140 バッファ層
50,150 結晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板の上にクロム層を成膜するクロム層成膜工程と、
前記クロム層を1000℃以上の温度で窒化してクロム窒化物膜にする窒化工程と、
を備えたことを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体の結晶層を成長させる結晶層成長工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記下地基板の上面は、六方晶系及び擬似六方晶系のいずれかの(0001)面、又は立方晶系の(111)面である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記窒化工程では、窒素を含む還元ガス雰囲気中で前記クロム層を窒化する
ことを特徴とする請求項1から3項のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記窒素を含む還元ガスは、アンモニア及びヒドラジンの少なくとも一方を含んでいる
ことを特徴とする請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記窒化工程では、前記クロム窒化物膜の表面に三角錐形状の複数の微結晶部が形成される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記窒化工程では、前記下地基板と前記クロム窒化物膜との間に中間層が形成される
ことを特徴とする請求項6に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、底面の各辺が前記下地基板の(0001)面上で、〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びる
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記下地基板は、サファイアを含み、
前記中間層は、窒化アルミニウムを含む
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の基板の製造方法。
【請求項10】
前記クロム窒化物膜の三角錐形状の微結晶部は、1辺の長さが10nm以上300nm以下である
ことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項11】
前記クロム窒化物膜をエッチングして前記III族窒化物半導体の結晶を前記下地基板から分離する分離工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項2から10のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項12】
前記III族窒化物半導体の結晶層の上面のピット密度は、10/cm以下である
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項13】
下地基板の上にクロム層を成膜するクロム層成膜工程と、
前記クロム層を窒化してクロム窒化物膜にする窒化工程と、
を備え、
前記窒化工程では、前記下地基板と前記クロム窒化物膜との間に中間層が形成される
ことを特徴とする基板の製造方法。
【請求項14】
前記クロム窒化物膜の上にIII族窒化物半導体の結晶層を成長させる結晶層成長工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項13に記載の基板の製造方法。
【請求項15】
前記下地基板の上面は、六方晶系及び擬似六方晶系のいずれかの(0001)面、又は立方晶系の(111)面である
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の基板の製造方法。
【請求項16】
前記窒化工程では、窒素を含む還元ガス雰囲気中で前記クロム層を窒化する
ことを特徴とする請求項13から15項のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項17】
前記窒素を含む還元ガスは、アンモニア及びヒドラジンの少なくとも一方を含んでいる
ことを特長とする請求項16に記載の基板の製造方法。
【請求項18】
前記窒化工程では、前記クロム窒化物膜の表面に三角錐形状の複数の微結晶部が形成される
ことを特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項19】
前記クロム窒化物膜の各前記微結晶部は、底面の各辺が前記下地基板の(0001)面上で、〔10−10〕方向、〔01−10〕方向及び〔−1100〕方向のいずれかに沿って延びる
ことを特徴とする請求項18に記載の基板の製造方法。
【請求項20】
前記下地基板は、サファイアを含み、
前記中間層は、窒化アルミニウムを含む
ことを特徴とする請求項19に記載の基板の製造方法。
【請求項21】
前記クロム窒化物膜の三角錐形状の微結晶部は、1辺の長さが10nm以上300nm以下である
ことを特徴とする請求項18から20のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項22】
前記クロム窒化物膜をエッチングして前記III族窒化物半導体の結晶を前記下地基板から分離する分離工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項14から21のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項23】
前記III族窒化物半導体の結晶層の上面のピット密度は、10/cm以下である
ことを特徴とする請求項13から22のいずれか1項に記載の基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−110912(P2008−110912A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252327(P2007−252327)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(899000035)株式会社 東北テクノアーチ (68)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(506334160)エピバレー株式会社 (8)
【氏名又は名称原語表記】Epivalley Company Limited
【住所又は居所原語表記】51−2 Neungyeong−Ri Opo−Eup, Kwangju City, Gyunggi−Do, KOREA 464−892
【Fターム(参考)】