説明

基板の遮へい構造及び電子機器

【課題】基板上の複数の遮へい対象領域を遮へいしつつ、外力が加わった際の基板及び基板に実装される集積回路及び電気部品を保護する。
【解決手段】基板の遮へい構造7は、一方の表面上に複数の遮へい対象領域R1〜R6が互いに離間して位置する基板1と、基板1の一方の表面4上に設けられ、各々が対応する遮へい対象領域R1〜R6を覆う複数の遮へい体S1〜S6と、を有している。複数の遮へい体S1〜S6は、複数の遮へい体S1〜S6の間を延びる溝部D,Eが基板1を直線状に横断することのないように位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の遮へい構造及び電子機器に関し、特に基板に設ける遮へい体の構成及び配置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末等の電子機器は、その電子機器内の他の部品への電磁波の輻射を防止する目的で、あるいは他の部品からの電磁波の影響を防止する目的で、電磁シールドが設けられることが多い。
【0003】
特許文献1には、基板をいくつかの遮へい対象領域に分け、遮へい対象領域ごとに専用の遮へい体で覆う技術が開示されている。具体的には、基板上に複数の金属枠が、互いに離して設置され、その上から共通のカバー(天板)が取り付けられ、遮へい対象領域ごとに遮へいされる。
【0004】
このような遮へい体は基板の強度を高め、基板の変形を防止する効果も有している。すなわち、携帯端末に代表される最近の電子機器は様々な機能が付加され、集積回路、及び抵抗、コンデンサなどの電気部品が増加する傾向にある。表示画面及び電池パックの大型化に伴い、電子機器全体の総重量も増加する傾向にある。しかしながら、電子機器は多くのエンドユーザーの要望に応えるために、薄型化が指向されている。液晶パネルなどの表示部は強化ガラスなどで強化することができるが、集積回路及び電気部品が実装される基板は、薄型化に伴い、落下等による衝撃力を受けやすくなる。このような衝撃力を受けた場合、集積回路及び電気部品が基板から剥離することがある。また剥離まで至らなくとも、集積回路及び電気部品自体にクラックが発生し、あるいは集積回路及び電気部品を基板上に実装するためのハンダにクラックが発生することがある。最悪の場合は基板自体がクラックによって破損することも起こり得る。基板上に設けられた金属シールドなどの遮へい体は、基板の強度を高め変形を防止するため、このような不具合を防止するのに有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−160698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、直方体形状の遮へい体が規則的に配置されている。そのため、隣接する遮へい体の間に、基板を横断する直線状の溝部が形成される。溝部は遮へい体で補強されていないため、基板の遮へい体で補強されている部分と比べ、相対的に強度が弱く変形しやすい。すなわち、基板の遮へい体で補強されている部分は外力を受けても大きな応力や変形が生じないが、溝部には大きな力が集中し、基板全体としての強度が低下し、大きな変形が生じる。基板の変形に伴い、基板に実装される集積回路及び電気部品もダメージを受けやすい。
【0007】
本発明は、基板上の複数の遮へい対象領域を遮へいしつつ、外力が加わった際の基板並びに基板に実装される集積回路及び電気部品の保護が容易な、基板の遮へい構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板の遮へい構造は、一方の表面上に複数の遮へい対象領域が互いに離間して位置する基板と、基板の一方の表面上に設けられ、各々が対応する遮へい対象領域を覆う複数の遮へい体と、を有している。複数の遮へい体は、複数の遮へい体の間を延びる溝部が基板を直線状に横断することのないように位置している。
【0009】
本発明によれば、遮へい体の間を延びる溝部は基板を直線状に横断することがない。このため、外力が加わった時に、基板の特定の部位に応力が集中しにくくなる。基板全体の強度が向上し、かつ変形も抑制されるため、基板の保護が容易となり、基板に実装される集積回路及び電気部品の保護も容易である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上の複数の遮へい対象領域を遮へいしつつ、外力が加わった際の基板並びに基板に実装される集積回路及び電気部品の保護が容易な、基板の遮へい構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電子機器に用いられる基板の部分斜視図である。
【図2】図1に示す基板の平面図である。
【図3】従来技術の基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の基板の遮へい構造7は、携帯電話装置、スマートフォンなどの携帯端末、タブレット型のパーソナルコンピュータ、ゲーム機器など任意の電子機器に適用することができ、特に、落下、衝突等による衝撃荷重を受ける可能性の高い携帯型の電子機器に好適に適用することができる。
【0013】
図1は、電子機器に用いられる基板の部分斜視図を、図2は、基板の平面図を示している。図1は図2の一部だけを取り出して示している。図示されている基板1は、携帯端末に組み込まれるプリント配線基板である。本実施形態の基板1は矩形であるが(図2参照)、その形状は特に限定されず、三角形、矩形以外の四角形、五角形以上の多角形(矩形をいくつか組み合わせてできる多角形を含む)を含み、後述するように一部に切欠があってもよく、一部が曲線状であってもよい。
【0014】
図1に示すように、基板1上には多数の集積回路2と、これらの集積回路2に接続された抵抗、コンデンサ等の電気部品3と、が実装されている。集積回路2及び電気部品3はハンダ(図示せず)によって基板1の表(おもて)面4上に実装されており、実装されている集積回路2及び電気部品3は、基板1の表面4または内部にプリントされた銅配線(図示せず)によって電気的に接続されている。
【0015】
図2に示すように、基板1上に実装された集積回路2及び電気部品3は、遮へい対象ごとにいくつかのグループ(遮へい対象領域R1〜R6)に分割されている。各グループは、通常は、集積回路2と、集積回路2の周囲に配置された複数の電気部品3と、を含むが、これに限定されず、集積回路2だけで1つのグループを形成することもでき、電気部品3だけで1つのグループを形成することもできる。1つのグループが2以上の集積回路2を含んでいてもよい。この結果、基板1の表面4上には、図2に破線で示す複数の遮へい対象領域R1〜R6が、互いに離間して位置している。
【0016】
基板1上には複数の遮へい体S1〜S6が設けられている。各遮へい体S1〜S6は対応する遮へい対象領域R1〜R6を覆っており、集積回路2及び電気部品3を取り囲むため、基板1の表面4との間に内部空間5を形成している。遮へい体S1〜S6は遮へい性能を確保するため金属で形成されているが、電磁波を適切に遮へいできる限り、樹脂の芯材の表面に金属膜が形成されたものなど、任意の材料を用いることができる。基板1と遮へい体S1〜S6は基板の遮へい構造7を構成する。
【0017】
遮へい体S1〜S6はそれぞれ天板6と側壁8とを有し、全体として、一方の面が開放された箱状の形状を有している。このような遮へい体S1〜S6は、金属板を箱型に折り曲げることによって形成することができる。他の実施形態では、遮へい体S1〜S6は曲面状の天板を有し、椀状の全体形状を有している。
【0018】
遮へい体S1〜S6は、側壁8の、天板6と反対側の端部9が基板1に当接するように基板1に固定される。遮へい体S1〜S6の形状は、遮へい対象領域R1〜R6の形状及びサイズ、すなわち遮へい対象領域R1〜R6に含まれる集積回路2及び電気部品3の個数や配置に応じて異なっている。本実施形態では、遮へい体S1〜S6の基板1との接触部10は、矩形以外の、多角形形状の閉じた線として形成されている。他の実施形態では、一部の遮へい体の基板1との接触部は、矩形以外の、多角形形状の閉じた線として、他の遮へい体の基板1との接触部は、矩形の閉じた線として形成されている。さらに他の実施形態では、一部または全ての遮へい体の基板1との接触部は、任意の曲線形状、または曲線と直線の組み合わせからなる閉じた線として形成されている。このような閉じた線の例として、正方形、長方形、台形、菱型、その他の四角形、矩形の角部を斜めにカットして得られる五角形形状、矩形の2つの角部を斜めにカットして得られる六角形形状、円形、半円形、扇形が挙げられる。遮へい体S1〜S6の基板1との接触部10は、本実施形態では天板6の外縁の形状と一致するが、異なっていてもよい。
【0019】
図2を参照すると、本実施形態では、6つの遮へい体S1〜S6が基板1に設けられている。これらの遮へい体S1〜S6は互いに異なる形状を有している。図1を参照すると、基板1の裏面11には第7の遮へい体S7が設けられている。第7の遮へい体S7は金属製のシールド部材であり、図2では太い破線で示している。
【0020】
基板1の対向する2辺には、基板1を筺体(図示せず)にねじ止めするための半円形の切欠12a,12bが形成されている。切欠の形状は及び個数は限定されず、例えば3つ以上の切欠が基板1の縁部に設けられていてもよい。
【0021】
各遮へい対象領域R1〜R6に含まれる集積回路2及び電気部品3を対応する遮へい体S1〜S6で覆うことにより、各遮へい対象領域R1〜R6が他の遮へい対象領域R1〜R6に対して遮へいされる。すなわち、遮へい対象領域R1〜R6からその周囲に不要な電磁波が放出されることが防止され、遮へい対象領域R1〜R6がその周囲から不要な電磁波の輻射を受けることが防止される。
【0022】
遮へい体S1〜S6は、基板1の強度を増加し、基板1の変形を防止する機能も有している。これによって、集積回路2及び電気部品3が基板1から剥離しにくくなり、かつ基板1の強度自体も高められる。
【0023】
本実施形態を従来技術と対比してさらに説明する。
【0024】
図3は、従来技術に係る基板1の遮へい構造の一例を示す、図2と同様の平面図である。遮へい対象領域R1〜R6は図2と同一である。基板1上には本実施形態と同様、6つの遮へい体S1’〜S6’が設けられているが、これらの遮へい体S1’〜S6’は全て直方体形状である。基板1の裏面11には遮へい体は設けられていない。第1の遮へい体S1’と第2の遮へい体S2’は同じ形状及び大きさであり、互いに対向して位置している。第3〜第6の遮へい体S3’〜S6’は形状及び大きさが互いに異なっている。第1及び第2の遮へい体S1’,S2’と、第3〜第5の遮へい体S3’〜S5’との間には、基板1上に基板1を左右に横断する溝部Aが存在している。溝部Aは遮へい体S1’〜S6’によって補強されていないため、引張り応力、曲げ応力などを受けやすい。例えば、落下などの衝撃によって基板1に衝撃力が掛った場合、溝部Aに沿って、折れ曲りあるいは引き裂きなどの損傷を受ける可能性が高い。基板1の裏面11の溝部Aを跨ぐ位置に集積回路2及び電気部品3が実装されている場合、これらの集積回路2及び電気部品3にクラックが発生し、あるいはそれらを固定するハンダにクラックが発生し、最終的に基板1から集積回路2及び電気部品3が剥離または脱落するおそれが高い。基板1が大きな変形を受けた場合、基板1上または基板1内を延びるプリント配線の断線、損傷などが生じる可能性もある。
【0025】
同様に、基板1上には溝部Bが存在している。溝部Bは溝部Aと異なり、基板1を横断していないが、基板1の縦寸法のほぼ4分の3の長さに渡って基板1上を延びている。従って、溝部Bに沿っても、大きな引張り応力、曲げ応力などが生じ易くなる。溝部Cは基板1の横寸法のほぼ4分の3の長さに渡って基板1上を延びており、しかも溝部Cの延長線は2つの切欠12a,12bを通っている。切欠12a,12bを通る線は元々曲げ応力などが集中しやすいため、溝部Cは特にダメージを受けやすい。
【0026】
これに対し、図2に示す実施形態では、遮へい体S1〜S6は、これらの遮へい体S1〜S6の間を延びる溝部(代表として溝部D,Eを図示している)が基板1を直線状に横断することのないように位置している。溝部は遮へい体の間の隙間(谷間)として形成される空間を意味しており、両側に遮へい体がない空間は溝部ではない。従って、基板1の周縁部に沿った、遮へい体S1〜S6の未設置領域は溝部に該当しない。また、「横断」とは、溝部またはその延長線が、多角形の基板の互いに異なる2辺と交差するように延びることを意味し、典型的には、矩形の基板の対向する2辺と交差するように延びることを意味する。
【0027】
図2の例では、溝部Aに相当する溝が存在していない。従って、応力や変形が分散され、基板1へのダメージが生じにくくなる。さらに、どの溝部(例えば溝部D)の長さも、当該溝部の中心線を通る直線(例えば線L)と基板1の縁部との2つの交点(例えば点13a,13b)の間の距離の半分以下である。特に、2つの切欠12a,12bを通る直線上には溝部は存在していない。仮に2つの切欠12a,12bを通る直線上に溝部が存在する場合も、その溝部の長さは、当該溝部の中心線を通る直線と基板1の縁部(この場合、基板1の縁部は切欠の縁部とする)との2つの交点の間の距離の半分以下であることが望ましい。
【0028】
このように、本実施形態では基板1を直線状に横断する溝部が存在しておらず、存在している溝部の長さも、その溝部が基板1を横断したと仮定したときの長さの半分以下である。このような溝部の配置は、基板1との接触部10が矩形である遮へい体S1〜S6を組み合わせても実現することができるが、遮へい体S1〜S6の基板1との接触部10の形状を矩形以外とすることで、一層容易に実現することができる。すなわち、遮へい対象領域R1〜R6は集積回路等のレイアウトに依存するため、全ての遮へい体S1〜S6の基板1との接触部10の形状が矩形である場合には、遮へい体S1〜S6の配置の自由度が制約され、直線状の長い溝部が生じ易くなる。これに対し、遮へい体S1〜S6の基板1との接触部10が矩形以外の様々な形状である場合は、集積回路等のレイアウトの影響を受けにくく、個々の溝部の長さを容易に調整できる。
【0029】
さらに基板1の裏面11には、金属シールドからなる大型の遮へい体S7が配置されている。この遮へい体S7は基板1の裏面11の広い領域を覆い、基板1全体の剛性を高める。遮へい体S7は概ね直方体形状であり、基板1との接触部10は矩形であるが、接触部10は多角形などの任意の形状をとることができる。遮へい体S7の設置は任意であり、例えば、基板1の搭載される携帯端末の重量が極めて軽く、落下時の衝撃が少ない場合には、応力も小さいため、基板1の裏面11の遮へい体S7を省略することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態においては、電子機器が落下、衝突などの衝撃力を受けた際に、基板に加えられる力が基板全体に分散し、応力の集中と過大な変形を抑えることができる。基板に応力の集中と過大な変形が生じないため、基板自体の破損並びに集積回路及び電気部品の損傷、剥離、脱落を防止することができる。さらに、プリントされた配線の断線も防止できる。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 集積回路
3 電気部品
7 基板の遮へい構造
10 接触部
A〜E 溝部
R1〜R6 遮へい対象領域
S1〜S7 遮へい体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面上に複数の遮へい対象領域が互いに離間して位置する基板と、
前記基板の前記一方の表面上に設けられ、各々が対応する前記遮へい対象領域を覆う複数の遮へい体と、
を有し、
前記複数の遮へい体は、該複数の遮へい体の間を延びる溝部が前記基板を直線状に横断することのないように位置している、基板の遮へい構造。
【請求項2】
前記溝部は、前記溝部の中心線を通る直線と前記基板の縁部との2つの交点の間の距離の半分以下の長さで、前記基板上を直線状に延びている、請求項1に記載の基板の遮へい構造。
【請求項3】
前記基板は、外周部の互いに異なる位置に2以上の切欠を有し、
前記溝部は、いずれか2つの前記切欠を通る直線上を延びている、請求項2に記載の基板の遮へい構造。
【請求項4】
少なくとも一部の前記遮へい体の前記基板との接触部は、矩形以外の、多角形形状の閉じた線として形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の基板の遮へい構造。
【請求項5】
前記基板の他方の表面上に他の遮へい体を有している、請求項1から4のいずれか1項に記載の基板の遮へい構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板の遮へい構造を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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