説明

基板を被覆する方法

保護金属被覆材料を溶融し、金属基板の表面のみを高周波誘導加熱器によって保護金属被覆材料の溶融温度またはそれ以上まで加熱し、金属基板の中に熱が浸透してしまう前に、本質的に瞬間的に溶融した金属被覆材料を加熱された金属基板に付ける、金属基板を保護金属被膜で被覆する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属基板を基板の溶融温度よりも本質的に低い溶融温度を有する保護金属被膜で被覆する方法に関する。例としてのみ挙げると、基板は鉄鋼または鉄を含む金属の筒、管、固体材料例えばあらゆる幅または長さを有する棒、ビーム、チャンネル、板または板片、そして保護金属被膜としては亜鉛、アルミニウム、または亜鉛とアルミニウムの様々な合金、または誘導基板材料に接着するその他の保護被覆材料、例えば錫、銀または銅がある。この発明の方法は連続的なイン−ライン工程であるか、または基板は個々に回分(バッチ)工程で被覆される。
【背景技術】
【0002】
板片、棒及び筒については、イン−ライン被覆システムは、材料速度毎分1000フィートを達成している。実速度で、材料は1秒当たりほぼ17フィートを移動することになる。筒被覆の場合、時間の長さは、鉄鋼基板が材料最大加熱後に亜鉛と接触するのが約0.1秒、そして水冷中に2秒未満漬けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この発明の被覆の方法は、基板の加熱に電気誘導法を用いるが、工業においては3000ヘルツまたはそれ未満を用いる方がよいのが常識であるが、この発明の方法は高い振動数の誘導ヒータ、例えば50,000ヘルツまたはそれ以上(または基板の表面のみが誘導加熱されるように、好ましいときはそれ以下)を用いる。最終的な目的は鉄鋼のような金属基板のみを「表面加熱」することであり、融解した被覆金属中で表面加熱を用いることが許され、そして残った基板の伝熱性によって、基板の表面上の溶融被覆から熱が浸透して放散することが許される。基板の表面の熱浸透とともに、保護金属被覆は、従来の被覆方法で現在得られるよりも厚い被覆の可能性が認められるように、素速く冷却される。
【0004】
要求される「表面加熱」温度は、用いられる溶融被覆材料に依存する相対値である。例えば、亜鉛の溶融温度は787°Fであり、通常は850°Fが用いられるが、この発明の方法においては、表面温度は保護金属被覆の溶融温度と同じくらい低い必要があり、または1000°Fまでまたはそれ以上高い必要がある。アルミニウムが保護金属被覆の場合、溶融温度は1220°Fであり、通常は1350°Fが用いられるが、この発明の方法においては、アルミニウム被覆はより高い温度−1500°Fまでを用いることが必要となる。被覆材料のタイプは、錫のように449°Fまで低い、または銅のように1983°Fまで高い溶融温度を持ち得る。複合金属の合金系は、同じくらい様々な溶融温度を持つ。要するに、必要な表面温度は用いられる溶融保護金属被覆材料の溶融温度の300°Fの範囲内で低下するものと信じられている。当業者に知られているように、被覆材料の多くの合金、例えば亜鉛とアルミニウムの合金は、金属のそれぞれ単独のいずれよりも低い溶融温度を有する。例えば、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムのある合金は、640°Fまたはそれ以下の溶融温度を有する。
【0005】
誘導加熱工程において、誘導の振動数は誘導電流が基板を通す「浸透の深さ」を決定する。より低い振動数は、より深い誘導加熱浸透を、より十分な基板の加熱をもたらす。振動数が増加すると、浸透の加熱深さは減少する。例えば、軟鋼中の3000ヘルツの振動数は、大体0.042インチの浸透深さを有する。同じ鋼の50,000ヘルツの振動数は、大体0.007インチの浸透深さをもたらす。より高い振動数、例えば200,000ヘルツは、0.005インチの浸透深さを有する。この発明の金属基板の被覆方法は、様々な基板の被覆に用いられるが、この応用の最も一般的な基板は鉄を含む金属基板であり、特に鉄鋼であり、そしてこの発明の方法はそれゆえ鉄鋼基板を被覆する方法として述べられるが、この発明の方法は鉄鋼基板の被覆に限られるものではない。
【0006】
もし、従来型の誘導加熱の目的が、現状の被覆方法におけるように、鉄鋼基板を所定の温度まで完全に加熱することであるならば、ほとんどの場合、より低い周波数がより効率的に基板の加熱を行うであろう。鉄鋼基板の厚さが増加するとともに、より低い周波数が、より十分な加熱をもたらす。それでも、伝導熱による鉄鋼を浸透する加熱のための時間の許容が要求される。価格的な立場からは、低い(3000ヘルツ以下の)周波数での鉄鋼基板の十分な加熱が推奨される。
【0007】
この発明の目的の第2の部分は二重であり、最初は、保護金属被膜の可能な厚さを、基板の対向する側(例えば筒の内側と外側)をそれぞれ加熱し冷却することによって増加させることであり、したがって保護金属被覆をより速く凍らせることによって、より厚い被膜が得られる。2番目の目的は、保護金属合金が急速に凍結されたところには幾つかの合金が存在し、優れた特性を有するキューテクティック(cutectic)なバージョンの合金を生み出すことである。
【0008】
この発明の方法においては、より高い誘導周波数によって起こる浸透の最小限の深さを利用することによって、鉄鋼基板表面が、例えば加熱されることを許し、そして実質的に瞬間的に(好ましくは約0.1または0.2秒以内に)、鉄鋼基板は溶融した保護金属被覆の中に浸されるか、あるいは別な方法で保護金属被覆を供給される(スプレー、「ローラ塗布」、等)。時間の断片的な瞬間に移動した距離は回転速度に依存するものであり、そのため距離と時間の枠組みとは相関する。鉄鋼が溶融被覆金属を離れるや否や、被覆厚さはもし必要なら幾つかの利用できる手段の1つ、例えば、これらに限定されるものではないが、「ガスナイフ」または電気的制御によって調節される。
【0009】
材料が溶融金属を離れるや否や、基板の「加熱されていない」内側部分が加熱された表面からの残余熱と同期して加熱され始め、鉄鋼基板が全体的に「等温」になるまで被覆された表面領域における比較的速い加熱損失がもたらされる。工程のこの点において、水、蒸気、空気、あらゆる不活性のまたは酸素を除いた気体、または時間(放冷)のような冷却の基本的な手段が用いられることができ、被覆された基板の温度を許容される温度まで下げる。
【0010】
「適切な周波数」の点から見ると、値は被覆される材料の壁厚さと材料が被覆される速度に依存して変化すると思われる。例えば、壁厚さ0.060インチの製品「A」が毎分300フィートで移動するには、50,000ヘルツ以上の周波数が推奨される。壁厚さ0.250インチの製品「B」が毎分150フィートで移動するには、3000ヘルツの周波数が要求される。厚さ0.030インチの製品「C」が毎分800フィート移動するには、200,000ヘルツの周波数が必要となる。1つの好適な実施形態においては、金属基板は10,000ヘルツまたはそれ以上の周波数において、誘導加熱器で加熱される。
【0011】
この発明の概念に包含されるのは、鉄鋼基板が液体に接触する直前の液体被覆材料温度を制御できる可能性である。いかなるメッキ工程または被覆工程においても、被覆される表面を完全に清浄にし、酸化物、屑または汚れ及び水を除去することは重要である。この発明の方法においては、被覆される表面は、酸化物を除去するための酸浴または車輪摩擦によって清浄化され、その後アルカリで洗われそして乾燥され、あるいは他の従来型の清浄化工程に曝される。
【0012】
この発明の方法の第1の有利点は以下のようである。
−鉄鋼基板の表面を加熱するためのエネルギー必要量は、基板の壁厚さに関わらず比較的一定である。壁厚さが増加しても、加熱コストは増加しない。現存の全体加熱工程については、加熱速度が一定であると仮定すれば、加熱コストは壁厚さが増加するにしたがって直線的に増加する。このように、この発明の方法はより厚い壁の管及び板について、特に有利である。この点については、以下でさらに論議される。
−溶融した金属浴から離れた後の基板の速い冷却は、新たに被覆する合金の付加的な合金の必要性を無くし、冷却に必要な時間が−すなわち現存の被覆方法を許諾し操作を速度向上させる−生産性を増加させ、塔の高さを減少させ、または新たな設備をより小さい冷却塔を有するものとする。
−表面のみが加熱されるという事実からもたらされる被覆部分の速い冷却は、材料を冷却するのに要するエネルギーが低減されることから、操作コストをも減少させる。
−被覆の迅速な凍結によって、改良された表面厚さの変化が達成される。
−一般的なガス炎型の加熱方式に対して、基板及び被覆金属浴の双方のより良い総合的な熱制御が達成され得る。
−周波数が高くなるほど、誘導ユニットが静かになる。例えば50,000ヘルツでは殆ど聞こえない。
−一般的な被覆方式において壁厚さは通常は被覆工程に影響する重大な変化を有する。壁厚さの変化は我々の方式には影響を与えない。
−この発明の方法は、片側の被覆、両側の被覆、または対向する側の異なった被覆を含む被覆工程の変化をもたらすことができる。
−管状の被覆方法については、鉄鋼基板の上昇した温度は、極端な温度を操ることができる特殊な塗装を要求する。この発明の方法については、ID温度は二者択一−より良くよりコストが掛からない塗装−のための好機の開始によって低減される。
−雰囲気中における過剰な被覆の除去は、くず及び酸化物の大幅な減少をもたらす。
【0013】
工程例:連続電気メッキライン(「クレンゲル・フロコート」ライン)を走る鉄鋼管についての理論的計算がなされた。実時間誘導加熱ソフトウェアを用いて、鉄鋼基板がいかに速く加熱されるか、そして加熱工程が開始された後内在的に「加熱同期」または「浸透」がいかに速く開始されるかが決定された。
【0014】
この発明の方法はまたエネルギーコストを大幅に低減する。基板の表面のみを加熱するために要するエネルギーが低減されるからばかりでなく、この発明の方法についての溶融した保護金属被覆が被覆の凍結温度の近傍で供給されるからである。
【0015】
3つの試験製品を用いて、そしてパワー要求量と温度変化を測定するために壁厚さのみを変化させて、以下の決定がされた。
【0016】
3.00インチ直径の管を毎分300フィートで走らせて、1秒当たりの移動量は60インチである。1秒の1/10はしたがって6インチとなる。
【0017】
0.063インチの壁厚さについて、351°FのID温度で0.1秒未満の間に表面は850°Fまで加熱される。0.1秒後、表面温度は約50°F低下する。次の0.1秒間で、温度はさらに250°F低下する。(注意:このコンピュータ・モデルは全体の加熱(または冷却)プロセスに加わる溶融金属の副次的影響を計算に入れていない。これは実証試験を通して決定される。)加熱プロセスの開始から大体0.25秒で、鉄鋼基板は大体530°Fで「同期」する。この温度は従来型の冷却方法を使用する必要がある。50,000ヘルツにおいては、パワー要求量は650Kwである。一般的な3000ヘルツの誘導加熱を使用すると、パワー要求量は1000Kwである。経済的には、電気的使用要求量は低周波数に対して高周波数は65%である。
【0018】
0.100インチの壁厚さについて、142°FのID温度で0.1秒未満の間に表面は再び850°Fまで加熱される。0.1秒後、表面温度はまだ約50°Fだけ低下する。次の0.1秒間で、温度はさらに380°F低下する。(注意:このコンピュータ・モデルは全体の加熱または冷却工程に加わる溶融金属の副次的影響を計算に入れていない。これは実証試験を通して決定される。)加熱工程の開始から大体0.3秒で、鉄鋼基板は大体370°Fで「同期」する。この温度は従来型の冷却方法を使用する必要がある。50,000ヘルツにおいては、パワー要求量は714Kwである。標準的な3000ヘルツの誘導加熱を使用すると、パワー要求量は1824Kwである。経済的には、電気的使用要求量は低周波数に対して高周波数はたったの39%である。
【0019】
0.120インチの壁厚さについて、50,000ヘルツを使用すると、パワーは6Kwだけ高い720Kwに増加する、一方、一般的な3000ヘルツの工程は、2244Kwを必要とする。経済的には、電気的使用要求量は低周波数に対して高周波数は32%である。
【0020】
要するに、この発明の方法は、保護金属被膜を溶融することと、保護金属被膜の溶融温度と等しいか、好ましくはそれより高い温度へ高周波誘導加熱器により基板の表面のみを加熱することを包含する。そこで、この方法は、実質的に瞬間的な基板を通しての熱の浸透より前の溶融保護金属被膜の基板の加熱された表面への塗布と、それから基板上での保護金属被膜の凍結とを包含する。この発明の方法は、例えば、金属板の両側の被覆に用いることができ、板の両側の表面を同時に加熱することと、板を通しての熱の浸透より前に溶融保護金属被膜の両側へ塗布することとによって、例えば、板を溶融保護金属被膜に浸すことによって、実施できる。1つの好ましい実施形態においては、溶融保護金属被膜が加熱後0.3秒以内に塗布され、または上述した要因に依存して0.1秒以内に塗布される。
【0021】
開示される実施形態においては、金属基板の表面は10,000ヘルツまたはそれ以上の周波数において誘導加熱器によって加熱される。保護金属被膜は、金属基板の加熱された表面に、基板を通しての50パーセントの熱の浸透より前に、または30パーセントの浸透より前に、塗布される。上述したように、金属基板は鋼鉄のような鉄系の金属基板で、保護金属被膜は亜鉛、アルミニウムまたはそれらの合金を包含する。当業者に理解されるように、以下の開示されるこの発明の実施形態に対しては、付加された請求項の範囲内において、様々な変形を行うことが可能である。一例としてのみ、この発明の方法は固体の棒及びシート状の金属の被覆に等しい応用である。
【0022】
図面及び好ましい実施形態の以下の叙述は、この発明の方法による管、筒または板片の被覆、すなわち水平な管、針金、細長い板片、または類似の製品についての適用を説明している。最終製品は、連続ラインの中を通ることができるものであれば、どのような大きさまたは形状でもよい。この考え方は垂直な、またはいかなる角度の状況についても丁度よく当てはまるであろう、そして事実、幅の広い鉄鋼の板片のような製品に適している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の方法によって被覆される筒または管の部分的断面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、この発明の方法の「筒または管」バージョンを表示しているが、開示された方法は、針金、棒、細い板片、またはその他の材料またはラインまたはバッチで被覆される基板21等の、ここに材料または基板として参照されるものに適用することができる。説明された方法は、この工程で実行され得る多数の潜在的な方法のうちの1つに過ぎない。繰り返すが、被覆される基板は、垂直でも、水平でも、あるいはその他のいかなる角度でもよい。この発明の方法の開示される実施形態においては、基板としての基板21は移動する。被覆される材料または基板21は、図1において左から右へ移動する。塗布される保護金属被膜材料、例えば被覆塗布において用いられる亜鉛、アルミニウム、それらの合金、さらに上述したその他の金属を包含する材料は、「保護被覆材料」25として表示されている。
【0025】
例えば、3.00インチの直径の管×0.0625インチの壁厚さの場合は、300フィート/分である。温度及び時間の値は、コンピュータで生成された評価である。この評価は、被覆材料25が基板21と接触するときに表面において発生するいかなる追加の熱をも考慮していない。
【0026】
洗浄され、準備された被覆される基板材料21は、覆い室27の中へと移動する。基板材料21は、直ちに被覆室24の中へと入る。この工程においては、被覆室24を溶融した保護金属被覆材料25で完全に満たすこと、そして被覆室24が溶融した金属被覆材料25で完全に満たされた状態を維持することも、また重要である。覆い室27の目的は、加熱及び被覆の間の酸化を防止するために基板材料21を覆うことである。覆い室27は、好ましくは、窒素や還元剤、例えば水素、のような非酸化性雰囲気を有している。しかしながら、非酸化性雰囲気は全ての応用について要求されるものではないと信じられている。被覆室の入口と出口のカラー23においては、覆い室27の中で非酸化性ガスを封じ込めることが要求される。
【0027】
被覆室24は、被覆材料25と問題なく接触することができる非電気的な/高温材料によって製造される。用いられることができる耐火性には、多くの方式がある。開示される実施形態においては、高周波(HF)用コイル22が、基板材料21を要求される必要な合金温度まで加熱するために、被覆室24を入口端において取り囲んでいる。当業者に理解されるであろうように、この発明の方法が板または板片の表面加熱に用いられるところでは、誘導コイルは板または板片を取り囲むことはできない。その代わりに、板の片側のみを加熱するコイルが用いられる。例えば、板の片側に近接した一般的な正弦波形状のHFコイルが用いられる。誘導コイルに向かい合ったローラも、誘導加熱器の流動の力に対抗するために有用である。被膜を実質的に瞬間的に凍結させるために、板の反対側を冷却することも可能である。必要な合金温度は、金属から金属合金まで大きく変化させることが可能である。より高いまたはより低い基板表面温度も同様に変化する。この開示の目的について、必要な合金温度または要求される温度という用語は、ここで開示したように、保護金属被膜の溶融温度またはそれ以上まで基板の表面を加熱するのに要求される温度を意味する。カップリング間隔はHF誘導電力の効率のために重要であり、そのため管21とコイル22との覆い室27の領域は、比較的近接している。被覆室24と一体のHF用コイル22は全ての応用について要求され、または、特に覆い室27が非酸化性雰囲気で満たされている場合には、要求されない。さらに、もし非酸化性ガスが入口カラー23の中に圧送されているならば、覆い室27は必要とされない。HF用コイル22の材料21へのカップリングを一定に維持することを確保するための、基板材料21安定化ロールまたは定着器は、あってもよいし、なくてもよい。
【0028】
基板材料21が高周波(HF)用コイル22の領域を離れると、被覆室24は被覆される基板材料21を溶融被覆金属25の自由な流れが取り囲むのを許容する大きさを有している。HF用コイル22を離れるときの材料21の表面温度は、被覆材料25と合金化するのを許容するのに十分な温度であるが、表面温度は極度に速く低下するため、HFコイル22から被覆材料25までの距離は重要である。被覆室24の長さは合金化が起こるのに必要な長さであればよいが、より長い長さは工程に害を与えない。被覆材料25の付着は上記に示された方式に限定されるものではない。この発明の被覆方法については、溶融した保護金属被覆材料25の温度を制御することも重要である。開示された装置は、溶融した保護金属被覆材料25の温度を好ましくはプラス又はマイナス1パーセント以内に維持する温度制御を含むべきである。保護金属被膜はまた、様々な方法の1つとして、吹き付けられ、巻かれ、または塗布されることができる。
【0029】
この発明の方法についての1つの重要な要素は時間と温度の問題であり、基板材料21を「高く十分な」周波数で必要な表面温度にして、表面の熱が基板材料21の本体の中への熱伝導を通して失われる前に、できる限り素速く基板材料21を溶融した被覆材料25との接触に至らせることである。
【0030】
今や被覆された基板材料は被覆室24を離れ、空気環、磁気的流動線、またはいかなるその他の形式のシステム26のような過剰被覆「拭き取りシステム」が、基板材料21上の制御された被覆厚さから離れることによって、過剰な被覆材料25を除去する。どのような拭き取りシステムが用いられるにしても、制御された雰囲気中で行われることが好ましい。しかし、一度被覆材料25が鉄鋼基板と合金化すれば、制御された雰囲気に対する要求は失われることから、その必要性はない。とは言うものの、拭き取りシステム26が制御された雰囲気中にある限り、発生する金属酸化物の量は最小化される。
【0031】
上述したように、この発明の方法の1つの利点は、誘導加熱された表面と反対側の基板の表面は、水性塗料、テフロン(登録商標)またはそのような塗料で塗られることであり、これらの塗料は表面が従来型の低周波誘導加熱器で加熱される従来型の誘導加熱工程においては、燃えるか炭化してしまう。例としてのみ挙げれば、最初に鉄鋼管の内面が比較的低い炭化温度を有するテフロン被膜で被覆されるか塗布され、それから管の外面が高周波誘導加熱器で加熱され、そして上述したように、管の内面のテフロン被膜に悪影響を与えることなく、溶融した亜鉛、アルミニウムまたはそれらの合金で被覆される。従来型の低周波誘導加熱工程においては、低周波誘導加熱が管を通して浸透し、管の内面のテフロン被膜を破壊してしまう。
【0032】
この発明の概念に含まれるのは、鉄鋼基板が液体−被覆室24の中に圧送される−に接触する直前の液体被覆材料25の温度を制御することができることである。
【0033】
この発明の接着性保護金属被膜による金属基板の被覆方法についての以上の説明から理解されるように、工程の重要な要素は時間及び温度の問題である。金属基板の表面を必要な表面温度まで高周波誘導加熱器で加熱すること、及び本質的に瞬間的に溶融保護金属を熱が基板を通して「浸透する」より前に付着させることは、この発明の利益を達成するために非常に重要である。加熱された基板に被膜を付着させる直前の溶融保護被膜材料の温度を制御することも、また重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板の溶融温度よりも本質的に低い溶融温度を有する接着性の保護金属被膜材料で金属基板を被覆する方法であって、
前記保護金属被覆材料を溶融することと、
高周波誘導加熱器で前記金属基板の表面のみを前記保護金属被覆材料の溶融温度以上の温度まで加熱することと、
熱が前記金属基板の中に浸透するより前に、本質的に瞬間的に前記溶融した保護金属被覆材料を前記金属基板の前記加熱された表面に付けることと、
を備える金属基板の被覆方法。
【請求項2】
前記金属基板の前記表面が10,000ヘルツ以上の周波数において高周波誘導加熱器で加熱される請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項3】
前記方法が50パーセントの熱が前記金属基板の中に浸透するより前に前記溶融した保護金属被覆材料を前記金属基板に付けることを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項4】
前記方法が30パーセントの熱が前記金属基板の中に浸透するより前に前記溶融した保護金属被覆材料を前記金属基板に付けることを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項5】
前記方法が鉄系金属基板の前記表面のみを加熱することを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項6】
前記方法が亜鉛を含む保護金属被覆材料を溶融することを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項7】
前記方法が、金属基板の加熱後0.2秒以内に溶融した保護金属被覆材料を前記金属基板の前記加熱された表面に付けることを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項8】
前記方法が、金属基板の加熱後0.1秒以内に溶融した保護金属被覆材料を前記金属基板の前記加熱された表面に付けることを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項9】
前記方法が、高周波誘導加熱器で前記金属基板の向かい合った表面を本質的に同時に加熱し、本質的に瞬間的に前記溶融した保護金属被覆材料を両方の加熱された表面に付けることを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項10】
前記誘導加熱される表面と反対側の前記金属基板の表面が最初に塗料で被覆される請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項11】
前記溶融した保護金属被覆材料の温度がプラス又はマイナス1パーセント以内に制御される請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項12】
前記方法が覆われた領域で前記金属基板を誘導加熱し覆われた領域に非酸化性ガスの流れが供給されることを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項13】
前記方法が前記金属基板の一方の表面を誘導加熱しつつ他方の表面を冷却することを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項14】
前記方法が前記金属基板の一方の表面を誘導加熱及び被覆し、そして他方の表面を誘導加熱及び被覆することを含む請求項1に記載の金属基板の被覆方法。
【請求項15】
金属基板の一方の面に低い燃焼温度を有する塗料を塗布することと、
前記金属基板の他方の面を高周波誘導加熱器で保護金属被覆材料の溶融温度以上の温度まで加熱することと、
本質的に瞬間的に熱が塗料が塗布された前記金属基板の表面まで浸透する前に前記誘導加熱された表面に保護金属被膜を付けることと、
を備える金属基板の被覆方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−524168(P2012−524168A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506118(P2012−506118)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030839
【国際公開番号】WO2010/120738
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511249187)ホット ディップ ソリューションズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】