説明

基板リフト装置

【課題】大径薄肉の被処理基板であっても搬送ロボットと基板ステージとの間で被処理基板を確実に受け渡すことができるようにした基板リフト装置を提供する。
【解決手段】被処理基板Sの下面外周部を支持する支持部材7が基板ステージ1に対し昇降自在に設けられる。支持部材7の上昇端位置では、支持部材7の下に搬送ロボット4のフィンガー部6が通過可能な空間が確保されるようにする。また、フィンガー部6が基板ステージ1の直上位置に存する状態でロボットアーム5に合致する支持部材7の周方向部分に切欠き7bが形成される。この切欠き7bに合致する被処理基板Sの部分を支持するサブ支持部材10が支持部材7から分離独立して昇降するように設けられる。また、基板ステージ1に、被処理基板Sの外周部以外の部分を支持する昇降自在な複数のリフトピン13が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハ等の被処理基板を支持するフィンガー部を先端に取付けたアームを備える搬送ロボットと基板ステージとの間で被処理基板を受け渡すために設けられる基板リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板リフト装置として、基板ステージに被処理基板を支持する昇降自在な複数のリフトピンを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、被処理基板を搬送ロボットから基板ステージに受け渡す際、被処理基板を搬送ロボットのフィンガー部に支持させた状態で基板ステージの直上位置に搬送した後、リフトピンを上昇させて、被処理基板をリフトピンによりフィンガー部から押し上げて支持する。そして、フィンガー部を基板ステージの側方に退去させた後、リフトピンを下降させて、被処理基板を基板ステージの上面に載置する。また、処理済みの被処理基板を基板ステージから搬送ロボットに受け渡す際には、リフトピンを上昇させて、被処理基板をリフトピンにより基板ステージから押し上げて支持し、この状態で被処理基板の下に側方から搬送ロボットのフィンガー部を進入させる。次いで、リフトピンを下降させて、被処理基板をフィンガー部に受け取らせる。
【0003】
ところで、最近では生産性の向上のため、被処理基板を大径の薄肉のものにする傾向がある。このような大径薄肉の被処理基板を上記従来例のリフトピンで基板ステージから押し上げたのでは、被処理基板の外周部が垂れ下がってしまう。そして、被処理基板の下にフィンガー部を進入させる際に、フィンガー部が被処理基板の垂れ下がった外周部に干渉して、搬送ロボットに被処理基板をうまく受け渡せなくなることがある。
【0004】
また、基板ステージに、被処理基板を吸着保持する静電チャックを設けている場合、静電チャックへの電圧印加を停止しても、静電チャックや被処理基板に生じた電荷は消滅しずらいため、リフトピンによる押し上げ時に残留電荷による吸着力で被処理基板に無理な応力が作用して、被処理基板が割れることもある。
【特許文献1】特開平11−221721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、大径薄肉の被処理基板であっても搬送ロボットと基板ステージとの間で被処理基板を確実に受け渡すことができるようにした基板リフト装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、被処理基板を支持するフィンガー部を先端に取付けたアームを備える搬送ロボットと基板ステージとの間で被処理基板を受け渡すために設けられる基板リフト装置であって、被処理基板の下面外周部を支持する支持部材が前記基板ステージに対し昇降自在に設けられ、前記支持部材の下降端位置では当該支持部材に支持される被処理基板が前記基板ステージの上面に載置され、前記支持部材の上昇端位置では、当該支持部材の下に前記フィンガー部が通過可能な空間が確保され、且つ、前記フィンガー部が前記基板ステージの直上位置に存する状態で前記ロボットアームに合致する前記支持部材の周方向部分に切欠きが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の基板リフト装置で搬送ロボットから基板ステージに被処理基板を受け渡す際は、被処理基板を搬送ロボットのフィンガー部に支持させた状態で基板ステージの直上位置に搬送した後、支持部材を上昇端位置に上昇させて、被処理基板を支持部材によりフィンガー部から押し上げて支持する。尚、支持部材の上昇時に搬送ロボットのロボットアームに支持部材が干渉することは、支持部材に形成した切欠きにより防止される。そして、上昇端位置に存する支持部材の下に確保される空間を通してフィンガー部を基板ステージの側方に退去させた後、支持部材を下降端位置に下降させて、被処理基板を基板ステージの上面に載置する。
【0008】
また、処理済みの被処理基板を基板ステージから搬送ロボットに受け渡す際は、支持部材を上昇端位置に上昇させて被処理基板を基板ステージから押し上げた後、支持部材の下に確保される空間を通して搬送ロボットのフィンガー部を基板ステージの直上位置に進入させる。そして、フィンガー部を上昇させ、或いは、支持部材を下降させて、支持部材に支持されていた被処理基板をフィンガー部に受け取らせる。
【0009】
ここで、支持部材は被処理基板の下面外周部を支持するため、被処理基板が大径薄肉であっても、被処理基板はその外周部の垂れ下がりを生ずることなく水平に支持される。従って、フィンガー部を基板ステージの直上位置に進入させる際に、フィンガー部が被処理基板に干渉することはない。また、フィンガー部の上昇や支持部材の下降に際して、ロボットアームと支持部材とが干渉することも支持部材に形成した切欠きにより防止される。このように本発明によれば、被処理基板が大径薄肉であっても搬送ロボットと基板ステージとの間で被処理基板を確実に受け渡すことができる。
【0010】
ところで、基板ステージが静電チャックを有するものである場合、支持部材の上昇による支持部材の押上げ時に、支持部材の切欠きに合致する被処理基板の部分に残留電荷による吸着力で無理な応力が作用する可能性がある。そのため、本発明においては、前記支持部材は、前記切欠きの一端から他端に亘り周方向に連続する平面視C字状に形成され、被処理基板の下面外周部を前記切欠きに合致する部分で支持するサブ支持部材が前記支持部材から分離独立して昇降するように設けられ、前記基板ステージから前記搬送ロボットに被処理基板を受け渡す際に、前記サブ支持部材が一旦前記支持部材と同期して上昇し、その後前記サブ支持部材のみが下降し、前記サブ支持部材の下降後に、前記フィンガー部を前記空間を通して前記基板ステージの直上位置に進入させることが望ましい。
【0011】
これにより、被処理基板の下面外周部を支持部材とサブ支持部材とで全周に亘り支持した状態で基板ステージから被処理基板が押し上げられることになり、支持部材の切欠きに合致する被処理基板の部分に残留応力による吸着力で無理な応力が作用することを防止できる。
【0012】
尚、フィンガー部を基板ステージの直上位置に侵入させる前にサブ支持部材を下降させるため、その後のフィンガー部の上昇や支持部材の下降で被処理基板をフィンガー部に受け取らせる際に、サブ支持部材がロボットアームに干渉することはない。
【0013】
また、本発明においては、基板ステージに、被処理基板の外周部以外の部分を支持する昇降自在な複数のリフトピンが設けられていることが望ましい。これにより、基板ステージからの被処理基板の押し上げ時に、被処理基板の外周部以外の部分もリフトピンで押し上げることができる。このため、被処理基板の外周部以外の部分に残留電荷による吸着力で無理な応力が作用することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2を参照して説明すれば、1は、シリコンウエハたる被処理基板Sにドライエッチング等の所定の処理を施す処理室内に設けられる基板ステージである。基板ステージ1は、基台2と基台2上面中央部に設けられた静電チャック3とを具備する。静電チャック3は、シリコンゴム等の絶縁物内に所定のパターンで電極を配置して構成され、静電チャック3の電極への電圧印加で被処理基板Sが基板ステージ1に吸着保持される。
【0015】
基板ステージ1に対する被処理基板Sの搬入、搬出は搬送ロボット4により自動的に行われる。搬送ロボット4は、水平方向及び上下方向に可動なロボットアーム5を有し、ロボットアーム5の先端に取付けたフィンガー部6で被処理基板Sを支持するようになっている。
【0016】
また、搬送ロボット4と基板ステージ1との間で被処理基板Sを受け渡す基板リフト装置が設けられている。基板リフト装置は、被処理基板Sの下面外周部を支持する支持部材7を備えている。支持部材7には、被処理基板Sの外周縁に合致する部分から立ち上がるテーパー状のガイド部7aが設けられており、被処理基板Sはガイド部7aにより芯決めされた状態で支持部材7に支持される。
【0017】
支持部材7は、搬送ロボット4のフィンガー部が6が基板ステージ1の直上位置に存する状態でロボットアーム5に合致する周方向部分に切欠き7bを有し、この切欠き7bの一端から他端に亘り周方向に連続する平面視C字状に形成されている。また、支持部材7の下面には、周方向に離隔させて複数本(例えば、3本)の支持棒8が垂設されており、これら支持棒8を基板ステージ1に貫通させてエアーシリンダ等の昇降用の駆動手段9に連結している。これにより、駆動手段9の作動により支持部材7が基板ステージ1に対し昇降する。
【0018】
また、基板リフト装置は、被処理基板Sの下面外周部を支持部材7の切欠き7bに合致する部分で支持するサブ支持部材10を備えている。サブ支持部材10には、支持部材7と同様に、被処理基板Sの外周縁に合致する部分から立ち上がるテーパー状のガイド部10aが設けられている。また、サブ支持部材10の下面には支持棒11が垂設されており、この支持棒11は、基板ステージ1に貫通させて上記駆動手段9とは別の昇降用の駆動手段12に連結されている。これにより、サブ支持部材10は駆動手段12の作動により支持部材7から分離独立して昇降する。支持部材7とサブ支持部材10の昇降ストロークは同一に設定されている。
【0019】
そして、支持部材7とサブ支持部材10の下降端位置では、これらに支持される被処理基板Sが基板ステージ1(静電チャック3)の上面に載置される。また、支持部材7が上昇端位置に存しサブ支持部材10が下降端位置に存する状態では、支持部材7の下面とサブ支持部材10の上面との間に搬送ロボット4のフィンガー部6が水平方向に通過可能な空間が確保されるようにしている。
【0020】
基板リフト装置は、更に、基板ステージ1に設けた複数本(例えば、3本)のリフトピン13を備え、各リフトピンにより被処理基板Sの外周部以外の部分を支持するようになっている。各リフトピン13は基板ステージ1を貫通し、その下端部において支持部材7用のエアーシリンダ等の駆動手段9に連結され、リフトピン13は若干の時間差でもって支持部材7と連動して昇降する。尚、搬送ロボット4のフィンガー部6には、リフトピン13に対する干渉を回避するための逃げ溝6aが形成されている。
【0021】
次に、本実施の形態の基板リフト装置の作動について説明する。搬送ロボット4から基板ステージ1に被処理基板Sを受け渡す際は、図1に示すように、被処理基板Sを搬送ロボット4のフィンガー部6に支持させた状態で基板ステージ1の直上位置に搬送する。
【0022】
次いで、図3(a)に示すように、支持部材7及びリフトピン13を上昇端位置まで上昇させ、被処理基板Sを支持部材7及びリフトピン13によりフィンガー部6から押し上げて支持する。この場合、支持部材7の上昇時にロボットアーム5に支持部材7が干渉することは、支持部材7に形成した切欠き7bにより防止される。
【0023】
次いで、図3(b)に示すように、フィンガー部6を支持部材7の下に確保される空間(支持部材7の下面とサブ支持部材10の上面との間の上下方向空間)を通して基板ステージ1の側方に退去させる。その後、支持部材7及びリフトピン13を、図3(c)に示すように、下降端位置まで下降させ、被処理基板Sを基板ステージ1の上面に載置する。そして、静電チャック3に電圧を印加して、被処理基板Sを基板ステージ1に吸着保持させ、この状態で被処理基板Sに所定の処理を施す。
【0024】
処理後、基板ステージ1から搬送ロボット4に被処理基板Sを受け渡す際は、静電チャック3への電圧印加を停止した状態で、図3(d)に示すように、支持部材7及びサブ支持部材10を上昇端位置まで上昇させると共にこの上昇に対して若干の時間差でもってリフトピン13も上昇端位置まで上昇させ、被処理基板Sを基板ステージ1から押し上げる。これにより、被処理基板Sの押し上げ時に、被処理基板Sの外周部以外の部分や支持部材7の切欠き7bに合致する外周部の部分に残留電荷による吸着力で無理な応力が作用することを防止できる。そのため、被処理基板Sが大径薄肉であっても、被処理基板Sをその割れを生ずることなく基板ステージ1から押し上げることができる。
【0025】
次いで、サブ支持部材10を下降させ、その後、図3(e)に示すように、フィンガー部6を支持部材7の下に確保される空間を通して基板ステージ1の直上位置に進入させる。ここで、被処理基板Sはその下面外周部が支持部材7で支持されるため、大径薄肉の被処理基板Sであっても、その外周部の垂れ下がりを生ずることなく水平に支持される。その結果、フィンガー部6を基板ステージ1の直上位置に進入させる際に、フィンガー部6が被処理基板Sに干渉することはない。
【0026】
ここで、被処理基板Sの外周部以外の部分をリフトピン13で支持しない場合、被処理基板Sの中央部が若干下方に撓むが、この撓み量は僅かであり、フィンガー部6が被処理基板Sに干渉することはない。その結果、リフトピン13をサブ支持部材10用の駆動手段12に連結して、サブ支持部材10と共にリフトピン13を下降させた後に、フィンガー部6を基板ステージ1の直上位置に進入させることも可能である。
【0027】
次に、図3(f)に示すように、フィンガー部6を支持部材7及びリフトピン13で支持される被処理基板Sの下面に当接する位置まで上昇させる。その後、図3(g)に示すように、支持部材7及びリフトピン13を下降端位置まで下降させて、被処理基板Sをフィンガー部6に受け取らせる。そして、搬送ロボット4により被処理基板Sを処理室から搬出する。この場合、支持部材7の下降時にロボットアーム5に支持部材7が干渉することは、支持部材7に形成した切欠き7bにより防止される。
【0028】
尚、本発明の実施形態では、支持部材7に加えてサブ支持部材10とリフトピン13とを設けたものについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、基板ステージ1に所謂メカチャックを設けている場合には、静電チャック3で問題になる残留電荷による吸着力が発生しないため、サブ支持部材10及びリフトピン13を省略することも可能である。
【0029】
また、本実施の形態では、支持部材7のロボットアーム5に合致する周方向部分のみに切欠き7bを形成しているが、ロボットアーム5に合致する周方向部分だけでなく周方向複数箇所に切欠きを形成してもよい。即ち、支持部材7を周方向に分断された複数の部材で構成してもよい。この場合、被処理基板Sの外周部の垂れ下がりを防止する上で、支持部材により支持される被処理基板Sの下面外周部の合計長さが被処理基板Sの周長の30%以上になるようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の基板リフト装置を示す切断側面図。
【図2】図1の上方から見た平面図。
【図3】本実施の形態における基板リフト装置の作動を示す説明図
【符号の説明】
【0031】
1 基板ステージ
4 搬送ロボット
5 ロボットアーム
6 フィンガー部
7 支持部材
7b 切欠き
10 サブ支持部材
13 リフトピン。
S 被処理基板、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を支持するフィンガー部を先端に取付けたロボットアームを備える搬送ロボットと基板ステージとの間で被処理基板を受け渡すために設けられる基板リフト装置であって、
被処理基板の下面外周部を支持する支持部材が前記基板ステージに対し昇降自在に設けられ、前記支持部材の下降端位置では当該支持部材に支持される被処理基板が前記基板ステージの上面に載置され、前記支持部材の上昇端位置では、当該支持部材の下に前記フィンガー部が通過可能な空間が確保され、且つ、前記フィンガー部が前記基板ステージの直上位置に存する状態で前記ロボットアームに合致する前記支持部材の周方向部分に切欠きが設けられていることを特徴とする基板リフト装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記切欠きの一端から他端に亘り周方向に連続する平面視C字状に形成され、被処理基板の下面外周部を前記切欠きに合致する部分で支持するサブ支持部材が前記支持部材から分離独立して昇降するように設けられ、前記基板ステージから前記搬送ロボットに被処理基板を受け渡す際に、前記サブ支持部材が一旦前記支持部材と同期して上昇し、その後前記サブ支持部材のみが下降し、前記サブ支持部材の下降後に、前記フィンガー部を前記空間を通して前記基板ステージの直上位置に進入させることを特徴とする請求項1記載の基板リフト装置。
【請求項3】
前記基板ステージに、被処理基板の外周部以外の部分を支持する昇降自在な複数のリフトピンが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の基板リフト装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−59864(P2009−59864A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225478(P2007−225478)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】