説明

基板上に堆積された窒化ガリウムフィルムにおける応力の制御方法

【課題】シリコンおよび炭化ケイ素基板上に堆積されたGaNフィルムにおける応力の制御方法、およびこれによって生成されたGaNフィルムを提供する。
【解決手段】典型的な方法は、基板を供給すること、および供給の中断をまったく伴なわず、成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給によって形成された、当初組成物から最終組成物までの実質的に連続したグレードの様々な組成物を有する基板上にグレーデッド窒化ガリウム層を堆積させることを含む。典型的な半導体フィルムは、基板と、供給の中断をまったく伴なわず、成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給によって形成された、当初組成物から最終組成物までの実質的に連続したグレードの様々な組成物を有する基板上に堆積されたグレーデッド窒化ガリウム層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づいて、2000年8月4日にHugues MarchandおよびBrendan J.Moranによって出願され、発明の名称が「シリコンおよび炭化ケイ素基板上に堆積されたGaNフィルムにおける応力の制御方法(METHOD OF CONTROLLING STRESS IN GAN FILMS DEPOSITED ON SILICON AND SILICON CARBIDE SUBSTRATES)」という、米国仮特許出願番号第60/222,837号への優先権を主張する。本出願は、参照して本明細書に組込まれる。
【0002】
(連邦政府により援助を受けた研究または開発に関する記述)
本発明は、海軍調査局(Office of Naval Research)によって授与された助成金番号第N00014−98−1−0401号として政府の補助を受けて実施された。政府は、本発明にあるいくつかの権利を有する。
【背景技術】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、窒化物フィルムに関する。詳しくは半導体デバイス用の窒化ガリウムフィルムにおける亀裂形成の減少方法に関する。
【0004】
2.関連技術の説明
(註:本出願は、カッコ内に入れられた参照番号、例えば[x]によって、本明細書全体に示されているいくつかの様々な出版物を参照する。これらの参照番号に従って並べられたこれらの様々な出版物のリストは、下記において好ましい実施形態の詳細な説明の末尾に見ることができる。これらの出版物の各々は、参照して本明細書に組込まれる。)
シリコン基板上へのGaNフィルムの堆積は、これら2つの材料間の大きい熱膨張率の不整合のために困難である。大部分の堆積技術は、基板およびGaNとは異なる組成物を有する緩衝層または応力緩和層の堆積を含む。すなわち、緩衝層とGaN層との間に急激な組成物の変化がある。これらの技術は、結果として、室温において引張り応力下にあるGaNフィルムを生じさせることとなる。引張り応力は、GaNにおける肉眼で見える亀裂の形成を促進する。これらの亀裂は、その上に製造されたデバイスにとって有害である。
【0005】
GaN、およびそのInNおよびAlNとの合金は、可視光またはUV光発光デバイス(例えば青レーザーダイオード)、ならびに高出力、高周波電子デバイス(例えば電界効果トランジスタ)において用いられる。GaN基板の不足という理由から、このようなデバイスは一般的に、サファイア(Al)または炭化ケイ素(SiC)のような基板上に堆積されたGaNの薄層から製造されている。どちらの基板も単結晶形態で入手可能であるが、これらの格子定数は、GaNの格子定数とは異なる。前記格子不整合は、広範囲の欠陥、例えば基板とGaN層との間の界面において、ならびにGaN層それ自体の中に発生することになる転位および積層欠陥を引き起こす。緩衝層、例えばAlNまたは低温GaNの使用および堆積条件の最適化は一般的に、1平方センチメートルあたり約10の貫通(threading)転位を有するフィルムを生じる。さらに新規な技術、例えば側方エピタキシャル成長(LEO)、「ペンデオエピタキシ」、およびマスクレスLEOは、より低い転位密度(10cm−2もの低さ)を結果として生じる。
【0006】
GaNベースのデバイスは現在、サファイと炭化ケイ素基板との両方の基板を用いて大量生産されているが、シリコン基板の使用は、さらなるコスト削減、ならびにこれらのデバイスの能力の改良をもたらすと期待される。例えばシリコンは、単純な薬品を用いてエッチングすることができるため、GaNベースフィルムまたはデバイスについて、単純な基板除去技術を利用することができるようになる。シリコンはまた、これに基づいて電子デバイスの大部分(例えばマイクロプロセッサ)が開発された材料でもある。GaNベースデバイスをシリコンベースの電子機能と統合すれば、新しい種類のシステムが創造されるであろう。シリコンは、低コストで優れた結晶品質を有する大きいウエハーサイズが容易に利用可能である。したがってシリコン上に成長されたデバイスは、サファイアまたは炭化ケイ素上に成長された同等のデバイスよりも安価であろう。最後にシリコンは、サファイよりも良好な熱伝導体である。
【0007】
シリコン基板上のGaNの成長は、サファイおよび炭化ケイ素上の場合と同様な問題を有する。GaNの(001)面とシリコンの(111)面との間の格子不整合は、サファイの場合の16%、炭化ケイ素の場合の3.5%と比べて17.6%である。薄いAlN緩衝の使用により、1平方センチメートルあたり3×10もの低さの貫通転位を有するSi(111)上のGaNフィルムを生じた。しかしながらGaNとシリコンとの熱膨張の不整合は、サファイの場合の−26%、炭化ケイ素の場合の+17%と比べて+31%である。(プラス記号は、基板についてよりもGaNについての熱膨張率が大きいことを示している。)実証のために、GaNフィルムは成長温度(一般的には1000℃)において応力がないと仮定すれば、プラスの熱膨張不整合の結果として、室温までの冷却後、引張り応力下のGaNフィルムを生じるであろう。GaNフィルムは、引張り応力が約400MPaを超える時に亀裂を示す。亀裂は一般に、電気短絡または開回路によって、デバイスを動作不能にする。一般に、成長の間に発生することがあるあらゆる緩和作用を含む格子不整合に伴なう応力は、「grown−in(成長時導入)応力」と呼ばれる。フィルムが成長温度から室温まで冷却される時の熱膨張不整合から生じる応力は、「熱応力」と呼ばれる。grown−in応力と熱応力との合計が、前記フィルムにおける正味の応力である。
【0008】
シリコン基板上へのGaNフィルムのいくつかの形成方法が提案されている。Takeuchiら[1]は、少なくともアルミニウムと窒素とから成る緩衝層、次いで(GaAl1−x1−yInN層を提案している。同じグループによって公開された技術論文(例えば[2]、[3])に基づいた場合、光ルミネセンス分光測定によって評価することができるように、これらの結果として生じたフィルムは引張り応力下にある。これらのフィルムは亀裂を示す。カリフォルニア大学、サンタバーバラ校(UCSB)における大規模な研究の結果、この方法を用いて、結晶品質における意義深い改善がもたらされた。しかしながらこれらのGaNフィルムは常に、引張り応力(200〜1000MPa)下にあることが発見された。これは通常、亀裂を生じた。Takeuchiら[4]はまた、緩衝層として3C−SiCを提案している。その結果生じたGaNフィルムもまた亀裂を示す。これは、これらが引張り応力下にあるという強力な証拠である。Yuriら[5]は、この方法の拡張を提案している。この方法では、シリコン基板が、SiC緩衝層上へのGaNの薄層の堆積後に化学的にエッチングされ、したがってシリコン基板の存在に伴う引張り応力の問題なしにGaNのその後の堆積が可能となる。Marxら[6]は、中間層としてのGaAsの使用を提案している。Shakuda[7]は、その上に窒化ケイ素(Si)層が堆積されているシリコンウエハー上へのGaNベース発光デバイスの形成方法を提案している。
【0009】
前記技術のすべてにおいて、前記基板と緩衝層との間、ならびに緩衝層とGaN層との間に有限組成物工程がある。組成における差は、格子定数における差を伴ない、このことは一般に、ある量の弾性エネルギーがこれらの層中に存在することを意味する。前記弾性エネルギーは、最上層の(歪を受けていない)格子定数が底部層のものよりも大きいならば、圧縮歪の形態で保存される。前記弾性エネルギーは、最上層が底部層上で擬似格子整合的に(Pseudomorphically)成長するならば、すなわち最上層が底部層の面内格子定数を取るならば最大限にされる。考察中のケースでは、弾性エネルギーの量は、例えば島(islands)または転位などの欠陥を形成するのに必要とされるエネルギーを超えることがあり、これは歪を受けた層のエネルギーを減少させる。このことは、この成長が中断されるならば特にそうである。その理由は、一般に成長の中断によって、整合的に歪を受けた層が、島へと変化させられるからである。この場合、最上層に保存された弾性エネルギーは、擬似格子整合のケースと比較して減少されている。
【0010】
半導体デバイス用の窒化ガリウムフィルム中の亀裂の形成の減少方法についてのニーズがある。したがってこれらのフィルム中に、引張り応力ではなく圧縮応力を生成するような方法についてのニーズも存在する。さらに、例えばシリコンなどの普通の基板上にこのようなフィルムを生成する方法についてのニーズも存在する。本発明はこれらのニーズに合致する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の概要)
シリコンおよび炭化ケイ素基板上に堆積されたGaNフィルムにおける応力の制御方法、およびこれによって生成されたフィルムが開示されている。典型的な方法は、基板を供給すること、および供給の中断をまったく伴なわず、成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給によって形成された、当初組成物から最終組成物までの実質的に連続したグレードの様々な組成物を有する基板上にグレーデッド窒化ガリウム層を堆積させることを含む。典型的な半導体フィルムは、基板と、供給の中断をまったく伴なわず、成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給によって形成された、当初組成物から最終組成物までの実質的に連続したグレードの様々な組成物を有する基板上に堆積されたグレーデッド窒化ガリウム層とを含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いた、シリコン基板上への亀裂を含まないデバイス品質のGaN層の形成を結果として生じる堆積シーケンス(sequence)を含む。本発明の方法を用いて成長されたGaNフィルムは、圧縮応力下にあり、このことはGaNが亀裂する傾向を除去する。この堆積シーケンスは、成長されつつあるフィルムの全体の厚さの有意部分(例えば20〜100%)を構成する厚さにわたって、高アルミニウム組成物(例えばAlN、Al0.5Ga0.5N)を有する材料Aから、低アルミニウム組成物(例えばGaN、Al0.2Ga0.8N)を有する材料Bまでの連続グレードから成っている。このグレードは、多様な方法によって達成することができる。例えば(i)成長チャンバにおいて先駆物質の蒸気圧を変えること;(ii)成長チャンバのその他のパラメータ、例えば基板温度を変えること;または(iii)成長チャンバの形状寸法を変えることである。その他の元素(例えばSi、In、As)も、組成物の変動が急激でないかぎり、AlGaN以外の中間材料が堆積されるように、成長チャンバに導入することができる。当分野における通常の実施方法に従って、電子デバイス(例えば電界効果トランジスタ)および光電子デバイス(例えば発光ダイオード)が形成されるように、他の層をこのグレーデッド層上に堆積させることができる。あるいはまた、5ミクロンを超える厚さを有するGaNまたはAlGaInN合金の追加層も、独立したGaN基板を形成する手段として、このグレーデッド層上に堆積させることができる。この方法はまた、炭化ケイ素(SiC)基板上に成長されたGaNフィルムにおける応力を制御するためにも用いることができる。
【0013】
ここで図面を参照するが、図面における同様な参照番号は、図面全体を通じて対応部分を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
図1は、本発明の一般的原理に従って製造された層の構造を示す概略断面図として、本発明の半導体フィルム100を表している。フィルム100の典型的生成方法は、緩衝層とGaN層とを単一堆積工程中に組み合わせ、基板104上に単一グレーデッド窒化ガリウム層102を生成することを含む。この堆積の間、成長チャンバ112への先駆物質110の供給はまったく中断することなく、この組成物は当初組成物106と最終組成物108との間で連続的に変えられる。当初組成物106は、基板を湿潤する緩衝層に適した材料Aの組成物、例えば中〜高アルミニウム部分(例えば20%またはそれ以上)を有するAlNまたはAlGaN化合物である。最終組成物108は、材料Bの組成物、例えば低アルミニウム部分(例えば20%未満)を有するGaNまたはAlGaNである。この組成物グレード114が生じる厚さ116は、堆積される総厚さ118の有意部分、例えば1マイクロメートルの厚さのフィルムの20〜80%である。
【0015】
本発明の主要な特徴は、先駆物質110の供給がまったく中断されることなく、この組成物が当初組成物106と最終組成物108との間で連続的に変えられるということである。進行中の材料研究から、成長プロセスに中断がないことによって、低アルミニウム含量のこれらの層が材料Aおよび材料B間の格子不整合に伴なう弾性エネルギーを分散することが、防がれるように思われる。したがってその他の方法を用いた場合に見られる量よりも大きい量の圧縮歪が、この層構造に存在する。多くの場合、この圧縮応力は、冷却手順によって誘発された引張り応力を平衡させるのに十分なほど大きく、したがってエピタキシャル層の正味の応力は圧縮性である。圧縮歪を受けたフィルムは亀裂せず、したがってその後に堆積され、加工されるあらゆるデバイスの特性を保持する。
【0016】
グレード114は、当業者に知られた多様な方法によって達成することができる。例えば(i)成長チャンバ112において、Ga、Al、およびNのうちの少なくとも1つの先駆物質110の蒸気圧120を変えること;(ii)成長チャンバのその他のパラメータ122、例えば全圧、基板温度、総流量、基板の回転速度、反応器壁の温度を変えること;(iii)成長チャンバ112の形状寸法を変えること、例えばインジェクタに対して基板を動かすこと等;または(iv)組成物の変動が急激でないかぎり、AlGaN以外の中間材料が堆積されるように、その他の元素、例えばSi、In、またはAsを成長チャンバ112に導入することである。電子デバイス(例えば電界効果トランジスタ)および光電子デバイス(例えば発光ダイオード)が形成されるように、その他の層をGaN層の後に堆積させることができる。
【0017】
成長しつつあるフィルムの組成物を厚さまたは時間に関連づける数学的関数を、適切なプロセス制御器の使用によりあらゆる適切な関数形態を取るようにさせることができる。最も単純なケースは、組成物が時間の関数として直線的に変わるケースである。もしも堆積速度が時間と共に一定なままになるように流量が調節されるならば、この方法は、分離作用が発生しない場合、厚さと共に直線的に変わる組成物を生じるであろう。他のケースでは、grown−in応力をさらに調整するために、組成物の変更速度をグレードの最初と最後により小さく(またはより大きく)することもできるであろう。
【0018】
グレーディングプロセスの典型的な実施形態は、当初組成物106としてAlNを、最終組成物108としてGaNを用いる。この組成物は、ガリウム、アルミニウム、および窒素先駆物質(それぞれトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、およびアンモニア)の分圧を変えることによって制御することができる。1つの実施形態において、基板104は、Si(111)であり、堆積層102の総厚み118は、ほぼ1マイクロメートルである。成長温度は1050℃であった。
【0019】
図2は、本発明のGaNフィルムの一例を示している。1つの実施例における正味の応力は、レーザーデフレクション測定を用いて、270MPa(圧縮)であると測定された。光学測定(光ルミネセンス、ラマン)も実施され、この値が確認された。図2に示されているように、GaNフィルム102には亀裂がなかった。このフィルムのミクロ構造は、単結晶型であった。
【0020】
図3は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)に基づく断面図であり、本発明に従ってSi(111)基板上に堆積されたグレーデッド層(AlN〜GaN)のミクロ構造を表している。転位密度は、成長の開始の時、最新式フィルムよりも高かった(>1011cm−2)が、転位消滅反応のために、このフィルムの表面において、デバイス実例による証明を可能にするのに十分なほど低かった(10〜1010cm−2)。これは下記で明らかになるであろう。
【0021】
図4は、原子間力顕微鏡(AFM)走査に基づく上面図顕微鏡写真であり、本発明に従ってSi(111)基板上に堆積されたグレーデッド層(AlN〜GaN)の表面形態を表している。この表面形態は、この原子間力顕微鏡画像によって示されているように、サファイアまたは炭化ケイ素基板上に成長された最新式GaNフィルムのものと類似であった。より薄いフィルム(約0.55μm)についてのプロセスを繰返した時、圧縮応力は400MPaであると測定された。本発明を用いて、このグレーディング方法のいくつかの実施形態が利用可能である。
【0022】
図5は、簡略プロセスフロー図500であり、本発明の1つの実施形態に従って先駆物質110化学物質が成長チャンバ112に導入されるシーケンスを表している。本実施例において、このグレーディングプロセスは、適切なシリコン先駆物質、例えばSiグレードライン502によって示されているジシラン(Si)の使用による加熱シリコンウエハー表面上へのシリコンの堆積から始まる。Alグレードライン504によって示されているように、アルミニウム含有合金へのグレードは、制御された量の適切なアルミニウム先駆物質、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)を導入し、このようにしてケイ化アルミニウムを形成することによって実施される。次いでこのシリコン先駆物質110が、このチャンバから徐々に除去され、このようにしてアルミニウムの薄膜が形成される。窒素先駆物質、例えばアンモニア(NH)が、窒化アルミニウムへの転移を完成するように徐々に添加され(NHグレードライン506によって示されている)、その後このシーケンスは、Gaグレードライン508によって示されているガリウム先駆物質(例えばトリメチルガリウム、TMGa)の導入によって続けられる。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態において、当初組成物106の材料は、シリコン(前記のように基板104上に堆積されている)から成っており、最終組成物108の材料は、GaNから成っているが、シリコン、ガリウム、および窒素先駆物質110のみが用いられ、したがってAlN中間層の形成が避けられる。Chuら[8]によって報告されているように、Si基板104上にGaNを直接堆積させることは、通常、島の形成および高欠陥GaNフィルムを生じさせる。しかしながら本発明において、島の形成は、この堆積が中断されないので妨げられる。GaNとSi(111)との間の格子不整合は、AlNとSi(111)との間のものよりもわずかに大きいだけなので、この特別な堆積シーケンスにより、Si(111)上に圧縮応力を受けたGaNが形成される。
【0024】
図6は、本発明の1つの実施例に従って電界効果トランジスタ(FET)デバイス600を製造するために用いられる層を表している概略断面図である。特別なデバイスを製造する目的で、基板104上へのグレーデッド層102の形成後に、追加層602が堆積される実施形態が本発明においていくつか存在する。本実施例の製造プロセスは、GaNの組成物で終了しているグレーデッド層102の上面に堆積された薄い(約0.2<x<約0.5)AlGa1−xNまたはInGaAlN層602から成っている。通常のプロセス工程、例えば電極形成に続いて、他の基板を用いて製造された最新式デバイスに匹敵しうる特徴を有するFETが、本発明を用いて生成される。
【0025】
図7は、本発明の1つの実施例に従って製造された電界効果トランジスタ(FET)デバイスの性能を表す一組の特性曲線である。これらの曲線は、コモン・ソース設定におけるゲートバイアスを増加するために、ソース−ドレイン電圧の関数としてのソース−ドレイン電流を表す。ゲート幅1単位あたりの飽和電流は、525mA/mmであり、ゲート幅1単位あたりの相互コンダクタンスは100mS/mmである。
【0026】
本発明の別の実施態様において、5マイクロメートルを超える厚さを有するGaNまたはAlGaInN合金の追加層602が、独立したGaN基板の製造手段としてグレーデッド層102上に堆積されうる。シリコン基板104は、化学エッチングによって、または機械的研磨によって、あるいは一般に当分野で使用されるその他の手段によって除去することができる。
【0027】
この方法はまた、炭化ケイ素基板104上の成長に使用することができる。薄いAlN緩衝を用いて炭化ケイ素上で成長されたGaNフィルムにおける応力は、約0.7μmよりも薄いフィルムについては圧縮性であるかもしれないが、一方、約0.7μmよりも厚いフィルムは一般に、引張り応力下にあることが、他のグループによって実証されている[9]。1つのグループは、0.3μm厚のAl0.3Ga0.7N緩衝層を用いて成長されたフィルムが、小さい圧縮応力(約250MPa)下にあったことを報告している[10]。前記Si(111)上の実例による説明におけるものと同じパラメータを用いた場合、本発明の方法により4H−SiC半絶縁基板上に成長された時、0.65μm厚のGaNフィルムが950MPaの圧縮応力下に生成された。6H−SiC基板上における1.9μm厚のフィルムの成長について同じプロセスを適用したところ、815MPaの圧縮応力を生じた。
【0028】
図8および図9は、本発明の結果と通常の方法の結果とを比較する光学顕微鏡写真である。図8は、本発明に従って6H−SiC基板上に堆積されたグレーデッド層102(AlN〜GaN)の表面形態を示している。図8のグレーデッド層102GaNフィルムは、亀裂を含まず、滑らかな形態を示した。図9は、厚いグレーデッド層の代わりに薄いAlN緩衝が用いられている場合の比較例に従って6H−SiC基板上に堆積されたGaN層の表面形態を示す光学顕微鏡写真である。薄いAlN緩衝または薄いグレードを用いて成長されたこのようなフィルムについて測定された応力は、一般的に引張り応力であり、500MPaのオーダーである。示されているように、このようなフィルムには亀裂が存在する。
【0029】
(結論)
これで、本発明の好ましい実施形態を含む説明を終わる。本発明の好ましい実施形態の前記説明は、例証および説明を目的として提示された。これは網羅的なものではなく、開示されたとおりの形態に本発明を限定しようとするものでもない。前記教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。
【0030】
本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、添付クレームによって限定されるものとする。前記明細書、実施例、およびデータは、本発明の使用の完全な説明を提供する。本発明の多くの実施形態が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされうるため、本発明は添付クレームに属する。
【0031】
(参考文献)
下記の参考文献は、すべて参照して本明細書に組込まれる。
【0032】
1.T.Takeuchi、H.Amano、I.Akasaki、A.Watanabe、K.Manabe、米国特許第5,389,571号:「アルミニウムおよび窒素含有中間層を有する、窒化ガリウムベースの半導体デバイスの製造方法(Method of fabricating a gallium nitride based semiconductor device with an aluminum and nitrogen containing intermediate layer)」。
【0033】
2.A.Watanabe、T.Takeuchi、K.Hirosawa、H.Amano、K.Hiramatsu、およびI.Akasaki、J.Cryst.Growth 128、391−396(1993);「中間層としてAlNを用いた、Si基板上の単結晶GaNの成長(The growth of single crystalline GaN on a Si substrate using AlN as an intermediate layer)」。
【0034】
3.S.Chichibu、T.Azuhata、T.Sota、H.Amano、およびI.Akasaki、Appl.Phys.Left.70(16)、2085−2087(1997):「引張り歪を受けたウルツ鉱GaNエピタキシャル層の光学特性(Optical properties of tensile−strained wurtzite GaN epitaxial layers)」。
【0035】
4.Takeuchi,T.ら、J.Cryst.Growth,December 1991、vol.115、(No.1−4):634−8.
5.M.Yuri、T.Ueda、T.Baba、米国特許第5,928,421号:「窒化ガリウム結晶の形成方法(Method of forming gallium nitride crystal)」。
【0036】
6.D.Marx、Z.Kawazu、N.Hayafuji、米国特許第5,760,426号:「シリコン基板、GaAs層、およびGaN層#13を含むヘテロエピタキシャル半導体デバイス(Heteroepitaxial semiconductor device including silicon substrate,GaAs layer and GaN layer #13)」。
【0037】
7.Y.Shakuda、米国特許第5,838,029号:「シリコン基板上に形成されたGaN型発光デバイス(GaN−type light emitting device formed on a silicon substrate)」。
【0038】
8.T.L.Chu、J.Electrochem.Soc.118、1200(1971):「窒化ガリウムフィルム(Gallium nitride films)」。
【0039】
9.N.V.Edwards、M.D.Bremser、R.F.Davis、A.D.Batchelor、S.D.Yoo、C.F.Karan、およびD.E.Aspnes、Appl.Phys.Lett.73、2808(1998):「GaN/AlN/6H−SiCヘテロ構造についての残留応力における傾向(Trends in residual stress for GaN/AlN/6H−SiC heterostructures)」。
【0040】
10.I.P.Nikitina、M.P.Sheglov、Yu.V.Melnik、K.G.Irvine、およびV.A.Dimitriev、Diamond and related materials 6、1524(1997):「6H−SiC上に成長されたGaNにおける残留歪(Residual strains in GaN grown on 6H−SiC)」。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の一般的原理に従って製造された層の構造を表す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明に従ってSi(111)基板上に堆積されたグレーデッド層(AlN〜GaN)の表面形態を示す光学顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明に従ってSi(111)基板上に堆積されたグレーデッド層(AlN〜GaN)のミクロ構造を表す透過型電子顕微鏡写真(TEM)に基づいた断面図である。
【図4】図4は、本発明に従ってSi(111)基板上に堆積されたグレーデッド層(AlN〜GaN)の表面形態を表す原子間力光学顕微鏡検査(AFM)走査に基づく上面図顕微鏡写真である。
【図5】図5は、本発明の1つの実施例に従って先駆化学物質が成長チャンバに導入されるシーケンスを表す簡略プロセスのフロー図である。
【図6】図6は、本発明の1つの実施例に従って電界効果トランジスタ(FET)デバイスを製造するために用いられる層を表す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の1つの実施例に従って製造された電界効果トランジスタ(FET)の性能を表す一組の特性曲線である。
【図8】図8は、本発明に従って6H−SiC基板上に堆積されたグレーデッド層(AlN〜GaN)の表面形態を示す光学顕微鏡写真である。
【図9】図9は、薄いAlN緩衝が厚いグレーデッド層の代わりに用いられている場合における、比較例に従って6H−SiC基板上に堆積されたGaN層の表面形態を示す光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
供給の中断をまったく伴なわず、成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給によって形成された、当初組成物から最終組成物までの実質的に連続したグレードの様々な組成物を有する前記基板上に堆積されたグレーデッド窒化ガリウム層と、
を含む半導体フィルム。
【請求項2】
前記グレーデッド窒化ガリウム層が、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて堆積される、請求項1の半導体フィルム。
【請求項3】
前記グレーデッド窒化ガリウム層が、正味の(net)圧縮応力を有する、請求項1の半導体フィルム。
【請求項4】
前記グレーデッド窒化ガリウム層が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給の蒸気圧を変えることによって堆積される、請求項1の半導体フィルム。
【請求項5】
前記先駆物質がガリウム、アルミニウム、または窒素である、請求項1の半導体フィルム。
【請求項6】
前記グレーデッド窒化ガリウム層が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバのパラメータを変えることによって堆積される、請求項1の半導体フィルム。
【請求項7】
前記成長チャンバのパラメータが、全圧、基板の温度、総流量、基板の回転速度、または反応器壁の温度である、請求項6の半導体フィルム。
【請求項8】
前記グレーデッド窒化ガリウム層が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバの形状寸法(geometry)の変更によって堆積される、請求項1の半導体フィルム。
【請求項9】
成長チャンバの形状寸法の変更は、前記基板を前記成長チャンバのインジェクタに対して動かすことを含む、請求項8の半導体フィルム。
【請求項10】
前記基板が、シリコンまたは炭化ケイ素である、請求項1の半導体フィルム。
【請求項11】
前記当初組成物が高アルミニウム組成物である、請求項1の半導体フィルム。
【請求項12】
前記当初組成物が、窒化アルミニウムまたは高アルミニウム含量アルミニウム窒化ガリウムである、請求項1の半導体フィルム。
【請求項13】
前記最終組成物が、低アルミニウム組成物である、請求項1の半導体フィルム。
【請求項14】
前記最終組成物が、窒化ガリウムまたは低アルミニウム含量アルミニウム窒化ガリウムである、請求項1の半導体フィルム。
【請求項15】
さらに、前記グレーデッド窒化ガリウム層上に堆積された少なくとも1つの追加層を含む、請求項1の半導体フィルム。
【請求項16】
少なくとも1つの別の元素が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバに導入されるが、前記グレーデッド窒化ガリウム層の様々な組成物中に急激な変動を引き起こさない、請求項1の半導体フィルム。
【請求項17】
前記別の元素が、シリコン、インジウム、またはヒ素である、請求項16の半導体フィルム。
【請求項18】
基板を供給すること;および
供給の中断をまったく伴なわず、成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給によって形成された、当初組成物から最終組成物までの実質的に連続したグレードの様々な組成物を有する前記基板上にグレーデッド窒化ガリウム層を堆積させること、
を含む半導体フィルムの生成方法。
【請求項19】
前記グレーデッド窒化ガリウム層の堆積工程が、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いることを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記グレーデッド窒化ガリウム層の堆積工程が、正味の圧縮応力を有するグレーデッド窒化ガリウム層を生成する、請求項18の方法。
【請求項21】
前記グレーデッド窒化ガリウム層の堆積工程が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバへの少なくとも1つの先駆物質の供給の蒸気圧を変えることを含む、請求項18の方法。
【請求項22】
前記先駆物質が、ガリウム、アルミニウム、または窒素である、請求項18の方法。
【請求項23】
前記グレーデッド窒化ガリウム層の堆積工程が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバのパラメータを変えることを含む、請求項18の方法。
【請求項24】
前記成長チャンバのパラメータが、全圧、基板の温度、総流量、基板の回転速度、または反応器壁の温度である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記グレーデッド窒化ガリウム層の堆積工程が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバの形状寸法の変更を含む、請求項18の方法。
【請求項26】
前記成長チャンバの形状寸法の変更が、前記基板を前記成長チャンバのインジェクタに対して動かすことを含む、請求項25の方法。
【請求項27】
前記基板がシリコンまたは炭化ケイ素である、請求項18の方法。
【請求項28】
前記当初組成物が、高アルミニウム組成物である、請求項18の方法。
【請求項29】
前記当初組成物が、窒化アルミニウムまたは高アルミニウム含量アルミニウム窒化ガリウムである、請求項18の方法。
【請求項30】
前記最終組成物が、低アルミニウム組成物である、請求項18の方法。
【請求項31】
前記最終組成物が、窒化ガリウムまたは低アルミニウム含量アルミニウム窒化ガリウムである、請求項18の方法。
【請求項32】
さらに、前記グレーデッド窒化ガリウム層上に少なくとも1つの追加層を堆積させることを含む、請求項18の方法。
【請求項33】
前記グレーデッド窒化ガリウム層の形成工程が、前記グレーデッド窒化ガリウム層のための成長チャンバに少なくとも1つの別の元素を導入することを含むが、前記グレーデッド窒化ガリウム層の様々な組成物中に急激な変動を引き起こさない、請求項18の方法。
【請求項34】
前記別の元素が、シリコン、インジウム、またはヒ素である、請求項33の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−109583(P2012−109583A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278534(P2011−278534)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2002−518510(P2002−518510)の分割
【原出願日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】