説明

基板上に導電体を形成するためのシステムおよび方法

【課題】従来の導電体パターン形成方法は、エッチング工程を含み複雑であった。さらに、基板上に導電体を直接印刷する方法が開発されてきたが制約が多かった。
【解決手段】基板の表面領域の一部分を露出する第2のパターンを形成するために、非導電性材料を用いて基板上に導電体パターンの反転画像を印刷する。その後、導電性材料を用いて基板の全表面領域を覆う。反転画像の非導電性材料は、反転画像を覆う導電性材料を、第2のパターンを覆う導電性材料から電気的に絶縁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、基板上に導電体を形成するための方法に関し、さらに詳細には、基板上に導電性配線を形成するためのプロセスにおいてプリンタを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグおよび他の電子装置用の電気配線を製造するためのプロセスが知られている。典型的なプロセスでは、薄い金属層で基板を完全に覆う。次に、金属層の選択された部分にレジスト材料層を塗布する。基板上に形成する予定の望ましい電気配線と同じパターンで、例えば、アンテナの形状などで、レジスト材料を塗布する。レジスト材料を塗布した後に、酸を通常含むエッチングプロセスが、レジスト材料で覆われていない任意の金属を溶かす。基板を選択する際には基板が酸により溶けないことを確保するように注意しなければならない。さらに、基板は実質的に非多孔質であり、酸が基板の中を通って拡散して、レジスト層の下に形成された金属を溶かさないようになっている必要がある。エッチングプロセスが完了すると、レジスト材料の一部またはすべてをはぎ取って、電気配線が、基板上に設置されるさまざまな電気部品に接続できるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
異なる基板上に導電体と電気配線とを形成するための既存技術は、電気配線を形成するためのプロセスの複雑さに起因する欠点を有している。例えば、既存技術は、パターンを形成するのにエッチングプロセスを必要とする。さらに、既存プロセスに必要な材料が、各装置に対する生産費を増加させたり、または環境に有害な廃棄物を生成したりする可能性がある。したがって、さまざまな基板上に導電体を生成するための改良されたシステムおよびプロセスが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、基板上に導電体を形成する方法を開発している。方法は、非導電性材料を実質的に含まない基板上に第2のパターンを形成するために非導電性材料を用いて基板上に第1のパターンを印刷することを含み、基板は第1のパターンと第2のパターンとを本質的に含む表面領域を有し、第2のパターンを覆う導電性材料が、第1のパターン内に塗布された非導電性材料を覆う導電性材料から電気的に絶縁された導電体として機能できるようにするために、第1のパターンの非導電性材料と、非導電性材料を本質的に含まない基板と、を覆うように基板の表面領域に導電性材料を塗布することを含んでいる。
【0005】
他の実施形態では、基板上に形成された電気回路を開発している。電気回路は、基板上の第1のパターン内に形成された非導電性材料を含み、第1のパターンは、基板の表面領域の第2の部分を露出する第2のパターンを形成するために基板の表面領域の第1の部分だけを覆っており、第1のパターン内に形成された非導電性材料と、基板の表面領域の露出した第2の部分と、を覆う導電性材料を含み、第2のパターンにより露出された基板の表面領域の第2の部分を覆う導電性材料は基板上の第1のパターン内に形成された非導電性材料を覆う導電性材料から電気的に絶縁されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、基板上に導電体を形成するプロセスのブロック図である。
【図2A】図2Aは、導電体用の基板として使用する普通紙などの材料の平面図である。
【図2B】図2Bは、線218に沿った図2Aの部分断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Aの基板の平面図であり、基板上に非導電性材料パターンを印刷した状態を示している。
【図2D】図2Dは、線218に沿った図2Cの部分断面図である。
【図2E】図2Eは、図2Cの基板と、非導電性材料と、の平面図であり、基板と非導電性材料とを覆って導電性材料層を形成した状態を示している。
【図2F】図2Fは、線218に沿った図2Eの部分断面図である。
【図2G】図2Gは、非導電性材料上に形成された非導電性材料と導電性材料とを溶剤の任意の塗布により除去した後の図2Eの基板の平面図である。
【図2H】図2Hは、線218に沿った図2Gの部分断面図である。
【図3】図3は、図2C〜図2Eに示す非導電性パターンを印刷するように構成された静電印刷システムの模式図である。
【図4】図4は、図2C〜図2Eに示す非導電性パターンを印刷するように構成された相転移インクジェット印刷システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に開示するシステムおよび方法に対する環境の一般的理解、ならびにシステムおよび方法の詳細の一般的理解のために、図面を参照する。図面では、類似の参照番号は、全体を通じて類似の要素を示すために使用されている。本明細書で使用する場合、用語「導電体」は、電流が電気回路などの実際的応用のために材料の中を通って流れることができるようにしたり、または電流が無線アンテナとして機能できるようにしたりする材料の任意の配置を示している。導電体の一般的な実施例は、ワイヤまたは平面状電気配線内などの連続経路内に形成された銅またはアルミニウムなどの金属を含んでいる。平面状電気配線は、プリント基板上に形成された電気配線のような、基板上の連続経路に沿って形成された導電体の薄層を示している。本明細書で使用する場合、用語「電気絶縁体」または「非導電性材料」は、実際的応用に対して電流に抵抗したり、または電流を阻止したりする任意の材料を示している。詳細に後述するように、導体材料が電流の流れを可能にする連続経路を形成しない場合には、銅などの一般的に導電性である材料を電気絶縁体として構成できる。
【0008】
詳細に後述するように、プリンタが、基板上にさまざまな電気回路の形をした導電体を形成するプロセスの一部として基板上に「陰画」を印刷するように構成されている。本明細書で使用する場合、用語「陰画」および「反転画像」は取り換えても同じように使用でき、電気回路の目的とする位置に対応しない基板上の位置だけに対応するパターン内にトナーまたはインクなどの非導電性材料を印刷する印字図形を示している。陰画内の非導電性トナーまたはインクは、基板の一部分を被覆する非導電性材料から形成される。何も塗布されていないむき出しの基板上に形成される第2のパターンが、陰画の印字図形の外側の基板のむき出しの部分上に形成される電気回路の形状および配置に対応している。
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「表面粗さ」は、材料の表面の高さの測定された変動を示している。紙などの基板の粗さと、基板上に形成されるマーキング剤パターンの粗さと、を記述するための技術では、さまざまな粗さ測定基準を使用する。1つの一般的に使用される粗さ測定基準はRパラメータとして知られている。本明細書で使用する場合、Rパラメータは、表面の領域全体に対して測定した高さの変動の絶対値の算術平均を示している。例えば、紙などのさまざまな基板のRが約50nmから1.2μmまで変化し、印刷で使用する紙のいくつかの等級が約100nmから1.0μmまでのRを有している。多層構造では、基板層の表面粗さが、基板層上に形成される1つ以上の材料層の分布に影響を与える。
【0010】
図1は、紙などの基板上に1つ以上の導電体を形成するプロセス100を示している。説明のために図2A〜図2Hの例示的実施形態と関連してプロセス100を説明する。プロセス100は、プリンタに基板を提供することから開始する(ブロック104)。カットシートプリンタの実施形態では、基板はプリンタの中の媒体トレイ内に入れられた媒体シートのスタックを通常含んでいる。連続供給プリンタでは、連続供給プリンタ内の印刷ゾーンの中を縫うようにして通り抜ける媒体ロールとして印刷媒体を提供する。静電プリンタおよびインクジェットプリンタが、基板上に画像を印刷するプリンタの2つの実施例である。さまざまなプリンタ構成が、基板の連続ロールまたは個々のカットシートの片面または両面上に画像を印刷する。
【0011】
図2Aおよび図2Bは、静電プリンタまたはインクジェットプリンタにより印刷するのに適した例示的な紙の基板204を示している。図2Aは紙の基板204の平面図であり、図2Bは線218に沿った基板204の部分断面図である。ワックスコーティングまたはプラスチックコーティングなどのコーティングのない普通紙を含むさまざまな種類の紙が、基板として使用するのに適している。図2A〜図2Bの構成では、基板204は、基板204上に形成された1つ以上の導電体が基板204を通って大量の電流を漏出させることなく作動できるようにするために非導電性である。基板204は、1つ以上の導電体を支持するのに使用できる表面領域を含んでいる。
【0012】
基板が供給されると、プリンタは基板上に非導電性画像を印刷して、基板の選択された部分上に非導電性パターンを形成する(ブロック108)。図2Cおよび図2Dが、印刷されたパターン208として示された印刷された陰画を示している。画像は、基板204の一部分を被覆する非導電性材料から形成される。図2Dは、非導電性材料の表面212を含む線218に沿った基板204と印刷されたパターン208との断面図を示している。図2Cおよび図2Dに示すように、印刷された陰画パターン208は基板204の選択された部分を非導電性材料で被覆する。
【0013】
非導電性材料の2つの実施例が、乳化凝集トナーおよび相転移インクである。さまざまな実施形態では、静電印刷システムは乳化凝集トナーを用いてパターン208を印刷し、相転移インクジェット印刷システムは相転移インクを用いてパターン208を印刷する。プリンタは、1つ以上の印刷されていない領域210を取り囲む陰画として、基板204上に非導電性パターン208を印刷する。印刷されていない領域210は、基板204上に導電体を形成する前に、1つ以上の導電体の形状に対応するパターンを形成する。パターン208内に形成されたパターンは、基板上に導電体の形状に対応する第2のパターンを形成するためにマーキング剤を実質的に含まない印刷されていない領域210などの露出部分を残した状態で、基板204の表面領域の一部分を覆う。
【0014】
図2C〜図2Dの実施形態では、非導電性層の厚さが約8μmである。他の実施形態では、非導電性材料の厚さが約1.0μmから50μmの間である。印字図形を形成するのに使用するマーキング剤の密度とマーキング剤の種類とが、非導電性パターン208の厚さに影響を与える。いくつかのプリンタ構成がマルチパス構成において基板上に画像の複製を印刷して、非導電性材料のより厚い層を形成する。
【0015】
基板上に非導電性画像を印刷した時点で、基板204と、非導電性パターン208の表面212と、に対して導電性材料層を塗布する(ブロック112)。一実施形態では、液状媒体内に分散している粒子状態の銀、銅、銅銀合金、またはアルミニウムなどの溶解性金属を含む溶液を基板204に塗布する。溶液内の溶剤が蒸発して、基板204の露出部分と、印字図形212の表面との両方を覆って形成された金属層から出て行く。図2A〜図2Gの一実施形態では、厚さ約220nmの層内に銅を蒸着している。
【0016】
他の実施形態では、銅またはアルミニウムなどの金属の真空蒸着またはスパッタリングを用いて導電性材料を塗布する。一実施形態では、基板が室温(約25℃)である。他の実施形態では、基板を事前印刷された非導電性材料と一緒に、高められた基板温度まで加熱し、いくつかの実施形態では基板を約40℃〜120℃の範囲に加熱する。第1のパターンを形成するトナーまたは相転移インクマーキング剤の軟化点温度よりも高い温度まで基板204と、パターン208内の非導電性材料とを加熱する。この高められた温度では、マーキング剤が軟化して、導電性材料の一部分がパターン208内の非導電性マーキング剤の中に吸収できるようになる。また、この高められた温度は、導電性材料の塗布時にパターン208内の非導電性材料内のマーキング剤が流れたりせず、または他の方法で印字図形の形状を変形させたりしないほど十分低い温度である。
【0017】
さまざまな実施形態では、導電性層216の厚さが約50nmと10μmの間であり、いくつかの実施形態では約100nm〜5μmの厚さの導電層を形成する。いくつかの実施形態では、非導電性画像の厚さと、導電性層の厚さの差が少なくとも500nmあり、他方、他の実施形態では厚さの最小差が2.0μmよりも大きい。基板の表面上に導電性材料の初期層を形成した後に、電気めっきまたは化学めっきを用いる任意の金属めっきプロセスにより導電体の厚さを増すことができる。
【0018】
図2Eは、導電体216と、非導電性パターン208を覆って形成された導電性材料220と、の平面図を示している。図2Fは、非導電性パターン208の表面212上に形成された導電性材料220の図を含む、線218に沿った図2Eの部分断面図を示している。図2Eおよび図2Fの構成では、基板204の表面上の印刷されていないパターン210内に導電体216を形成している。導電体216内に蒸着された金属が連続導電体を形成できるほど、基板204が十分滑らかな表面を有するように基板204を選択する。市販のコーティングしていない紙のさまざまな在庫が、導電体216の形成に好適な基板を提供する。
【0019】
導電体216は、基板204上に取り付けられた高周波識別装置(RFID)(図示せず)に電気的に接続される電気接点222および224を有するRFID用のアンテナとして構成されている。他の構成では、印刷されたパターン208、印刷されていないパターン210、および導電体216が、さまざまな種類の電気回路用の導電体を提供するさまざまなパターンで形成される。
【0020】
導電性材料は、導電体216を形成するための印刷されていないパターン210と、実質的に非導電性であるか、または導電体216ほど導電性がない層220を形成するための非導電性パターン208と、の両方全体を覆って形成される。非導電性パターン208は少なくとも2つの方法で導体216を電気的に絶縁する。第1に、パターン208内の非導電性材料の厚さが、非導電性パターン208の表面上に形成された導電性材料220から、導電体216を分離する。図2Eおよび図2Fの実施例では、非導電性パターン208は厚さ約8μmであり、他方、導電体216は厚さ約220nmであり、非導電性パターン208の表面212より低い所に位置している。
【0021】
また、非導電性パターン208は、下にある基板204よりも大きな表面粗さを提供する表面212を含んでいる。非導電性パターン208の表面粗さは、導電性材料220が、電流の流れを可能にする材料の連続層を形成するのを妨げる。実施形態例では、非導電性パターン208の表面212が、導電性層220の厚さ約220nmよりも大きい約1.5μmのRを有している。
【0022】
他の実施形態では、印字図形内の非導電性材料のRが約100nmと10μmの間であり、いくつかの実施形態では500nmと5μmの間の粗さを有している。いくつかの実施形態では、非導電性材料の表面粗さRパラメータが、少なくとも100nm〜500nmほど基板のRパラメータを超えている。他の実施形態では、非導電性材料の表面粗さが基板と実質的に一致している。後述するように、非導電性材料の表面粗さが基板の表面粗さと同様である実施形態では、導電性材料の少なくとも一部分が非導電性材料の中に浸透する。
【0023】
いくつかの実施形態では、導電性材料220が非導電性パターン208上に導電性層を形成するのを防止するために、非導電性パターン208が導電性材料220の一部分を吸収する。上述のように、マーキング剤を加熱して軟化させる真空蒸着プロセスは塗布プロセスの実施例であり、この塗布プロセスでは、導電性材料220の一部分がパターン208の非導電性材料の中に吸収される。導電体が非導電性パターン208に浸透するとき導電体220内の金属原子が拡散して、非導電性材料と吸収された導体材料との結果として得られる組み合わせは高い電気抵抗を有している。
【0024】
印刷されたパターン208内の非導電性材料の構成が、導電体216から導電性材料220を分離して、導電性材料220が分かれた個別の導電体を形成するのを防止する。図2Eおよび図2Fの例示的構成では、導電体216は約55Ωの電気抵抗を有し、他方、印刷されたパターン208上の層220に対する電気抵抗は10Ωよりも大きい抵抗を有している。他のさまざまな構成では、導電体216などの、基板上に直接に形成された導電性材料が、1,000S/cm〜10,000S/cmを超える電気伝導度を有している。非導電性パターン208全体を覆って形成される導電性材料は、通常10−5S/cm〜10−10S/cmよりも小さい範囲の低い電気伝導度を有しており、さまざまな電気回路用の効果的な電気絶縁体を形成する。
【0025】
いくつかの実施形態では、基板204上と、パターン208内の非導電性材料上とに導電性材料を蒸着した後にプロセス100が終了する。図2Eおよび図2Fは、基板204上にアンテナとして形成された機能的な導電体216を示しており、例示的実施形態ではRFIDをアンテナ接点222および224に電気的に接続する。先行技術構成とは異なり、アンテナ導体216の表面がレジスト材料を含んでおらず、RFIDに電気的に接続するためのアンテナ接点222および224を作るのに追加プロセスを必要としない。また、導体材料がRFIDアンテナまたは他の電気回路の形で既に形成されているため、導体材料をエッチングするための追加プロセスを必要としない。上述のように、非導電性パターン208と導電性材料220の層とは、導電体216から電気的に絶縁されており、基板204上に取り付けられたRFIDは導電体216から形成されたアンテナとともに作動する。
【0026】
プロセス100のいくつかの実施形態が、基板204からパターン208内の非導電性材料を除去するための溶剤の任意の塗布を含んでいる(ブロック116)。図2Gおよび図2Hは、溶剤が基板204から、パターン208内の非導電性材料と、導電性材料220と、を除去する任意の構成を示している。図2Gは、非導電性パターン208と、導電性材料220とを含まない、基板204と導電体216との平面図を示している。図2Hは、線218に沿った図2Gの部分断面図を示している。
【0027】
また、図2Hは基板204に浸透する溶剤228を示している。溶剤228は非導電性パターン208を溶かすが、基板204と導電体216とを実質的に無傷のまま保つ。基板から金属を除去するのに使用する溶剤とは異なり、溶剤228は金属導電体216を溶かさず、導電体216を保護するためのレジスト材料を必要としない。非導電性パターン208上に形成された導電性層220は、非導電性パターン208が溶けるときに溶剤の中に分解し、導電体216が基板204上にある状態のままで電気回路を残す。
【0028】
一実施形態では、溶剤228としてトルエンを使用して、乳化凝集トナーと相転移インクの両方を溶かす一方で、紙と、銅またはアルミニウムの金属層とを無傷のまま保つ。基板204をトルエン溶剤228内に約30秒間浸漬して、非導電性パターン208と導電性材料220とを除去する。多孔性の基板204は、溶剤228が基板204の画像化されていない面を通って浸透して、パターン208内の非導電性材料に到達できるようにする。プロセス100のいくつかの実施形態が、追加の電気回路を形成するのに用いる溶剤228の塗布後に、導電性材料220を再利用することを含んでいる。
【0029】
トルエンは溶剤の一実施例であるが、他のさまざまな溶剤が非導電性パターン208を溶かすのに適している。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンなどの脂肪族炭化水素を含む炭化水素溶剤、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、およびエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル、THFなどのエーテル、アセトン、MIBKなどのケトン、NMPおよびDMFなどのアミドなどがすべて、基板204と導電体216とに損傷を与えることなく非導電性材料を溶かすのに好適である。処理時間が1秒間〜30分間続き、典型的な処理時間は5秒間〜1分間である。一実施形態では、30秒未満の処理時間が、媒体ウェブ上に複数の導体を形成した後に、ピックアップロールに媒体ウェブを巻き取る前に連続媒体ウェブに溶剤を塗布することを可能にする。
【0030】
プロセス100は、紙などの安価な基板上にさまざまな導電体および電気回路を生成するのに使用できる。他の構成では、導電体が、プロセッサ、メモリ、センサデバイス、視覚的表示装置、無線送受信機、および電池を含む2つ以上の表面実装電気部品の間の電気的接続を確立するのに使用される。プロセスのいくつかの実施形態では、電気回路内の導電体から電気部品を形成する。例えば、導電体の長さと幅の変化が抵抗器を形成し、同心の渦巻き形状にパターン形成された電気配線が誘導子を形成する。
【0031】
図2A〜図2Hは基板の片面上に形成した導電体を示しているが、プロセス100は基板の両面上にもまた同様に導電体を形成できる。1つの構成では、両面印刷プロセスが基板204の両面上に非導電性画像を形成する。プロセス100のその実施形態では、ブロック112で上述したように基板の両面上に単一プロセスで導電性材料を蒸着する。両面導体は、より複雑な配置の電気回路の形成、または基板上のより小さい面積サイズを有する電気回路の形成を可能にする。さらに、基板204の両面上に形成された対応する導電体は、コンデンサ用の誘電体として機能する基板204と一体になってコンデンサを形成できる。
【0032】
図3は、非導電性乳化凝集トナーを用いて基板上に上述の陰画を印刷するように構成された静電プリンタ300を示している。プリンタ300は、供給ユニット314と、印刷ユニット318と、出力ユニット320と、を含んでいる。供給ユニット314は、供給ユニットから印刷ユニット318を通って送り出される紙などの印刷媒体の基板の連続ロール316を内蔵している。印刷ユニット318は基板上に非導電性パターン208の画像を印刷して、画像を基板に定着させる。その後、印刷媒体は出力ユニット320に移動して、この出力ユニット320では印刷媒体がピックアップロール322上に巻きつく。ピックアップロール322内の画像化済みの基板は、1つ以上の電気回路構成に対応する多数の印刷された陰画を通常含んでいる。プロセス100を実行するシステムでは、ピックアップロール322をプリンタ300から取り外して、ピックアップロール322上に形成された画像上に他のシステムを用いて導電性層を塗布する。
【0033】
印刷ユニット318はオペレータ操作卓324を含み、このオペレータ操作卓324では、機械300が実行する印刷ジョブに対する作業票を再検討してもよく、および/または変更してもよい。印刷ジョブの間に印刷される予定のページは、プリンタ300により走査してもよく、または電気通信リンクを介して受信してもよい。プロセス100の構成では、プリンタ300は、基板上に形成される予定の1つ以上の導電体の構成に対応するラスタデータを受信する。いくつかの印刷ジョブが導電体の「陽」画を指定し、この導電体の「陽」画ではラスタ画像データが基板上に形成される導電体に対応している。プリンタ300は陽画のラスタ画像を陰画のラスタ画像に反転させるように構成可能であり、プリンタ300は導電体に対応する領域を基板上で空白のままに残しておく。プリンタ300のいくつかの構成が、ガーバー形式のデータなどの非ラスタデータ形式を、基板上に印刷するための対応するラスタ画像データに変換する。
【0034】
印刷ユニット318はラスタ画像データに準拠してビットデータを生成し、ビットデータをラスタ出力スキャナ(ROS)330に提供して感光体328上に潜像を形成する。一実施形態では、ROS330が、陰画データに対応する位置の感光体328上にレーザ光線を選択的に当てるレーザである。プリンタ300の構成では、感光体328は図面に示す巡回経路を、矢印で示す方向に連続的に移動するベルトである。他の静電プリンタが感光体として回転ドラムを使用する。
【0035】
現像サブシステム334が感光体328上のトナーを現像する。プリンタ300では、トナーは乳化凝集トナーである。一実施形態では、乳化凝集トナーが光学的に透明であるが、さまざまな色のトナーもまた同様に使用できる。基板にトナーを塗布することにより、基板上の印字図形の表面粗さを制御する。画像の表面粗さは、例えば、異なる定着圧力を使用することにより、異なる定着温度を使用することにより、または異なる定着材料を使用することなどにより、制御できる。定着プロセスにおいて高圧を加えると表面粗さが小さくなり、他方、低圧を加えると表面粗さが大きくなる。一般に、高い定着温度は小さい表面粗さをもたらし、他方、低い定着温度は大きい表面粗さをもたらす。プリンタで使用するトナー材料もまた同様に画像表面粗さに影響を与える。ゲル成分を含むトナーが、プロセス100とともに使用すると大きい表面粗さの印字図形をもたらすトナーの実施例である。
【0036】
転写ステーション338が、潜像に合致するトナーを、感光体328から基板に転写する電場を生成する。トナー像を保持する基板が、熱と圧力とを加えて画像を基板に定着させる定着ステーション344に移動する。その後、基板は出力ユニット320に移動して、ピックアップロール322上に巻きつく。
【0037】
プリンタ300は、プロセス100で説明したように、紙の上に非導電性画像を生成するように構成された静電プリンタの一実施形態の実施例である。また、カットシートプリンタを含む他の静電プリンタ実施形態も、プロセス100を実現するのに適している。
【0038】
図4は、非導電性インクを用いて基板上に上述の陰画パターンを印刷するように構成された相転移インクジェットプリンタ400を示している。プリンタ400は、コントローラ450と、インクジェット印刷ユニット421と、媒体ウェブ414として示す基板を供給ロール408からピックアップロール432まで誘導するように構成された媒体経路Pと、を含んでいる。動作について見ると、インクジェット印刷ユニット421は、媒体ウェブ414上に相転移インクの液滴を射出して、媒体ウェブ414上に非導電性インクのパターンを形成する。
【0039】
相転移インクは、室温では実質的に固体であり、媒体ウェブ414上に噴射するために相転移インクの融点まで加熱したときには実質的に液体である。一実施形態では、相転移インクの融点が約70℃〜140℃である。他の実施形態では、プリンタに利用するインクがUV硬化性ゲルインクを含んでいてもよい。また、ゲルインクはプリントヘッドのインクジェットエジェクタにより射出する前に加熱してもよい。本明細書で使用する場合、液体インクは、溶けた固体インク、加熱したゲルインク、または水性インク、インクエマルジョン、インクサスペンション、もしくはインク溶液などの他の既知の形態のインクを示している。相転移インクは媒体ウェブ414に吸収されるのではなく、媒体ウェブ414全体を覆って層を形成するため、媒体ウェブ414上に陰画を印刷する際に利点をもたらす。したがって、相転移インクは、図2Fに上述したように、基板上に形成された導電体よりも厚い非導電性材料層を形成するのに適している。
【0040】
コントローラ450は画像データを処理して、インクジェット印刷ユニット421内のインクジェットエジェクタに対する電気制御信号を生成して、媒体ウェブ414上へのインク滴の射出を制御する。コントローラ450は電気制御信号を生成して、インクジェット印刷ユニット421を作動させて、媒体ウェブ414上に形成された導電体の陰画に対応して媒体ウェブ414上に画像を形成する。コントローラ450は導電体の陽画データを陰画に変換できる。いくつかの実施形態では、コントローラ450はラスタ画像に対応するビットマップ画像データを受信し、他の実施形態では、コントローラ450はガーバーデータなどの非ラスタデータ形式からビットマップ画像を生成するように構成されている。
【0041】
印刷ユニット421は1つ以上のプリントヘッドを含み、これらのプリントヘッドのそれぞれは複数のインクエジェクタを含んでいる。非導電性パターンを形成するためにインクエジェクタが媒体ウェブ414をインク滴で覆うことができるようにするために、プリントヘッドを媒体ウェブ414の幅を横切って配置している。図4はただ1つのインクステーション421を示しているが、プリンタ400の他の実施形態が媒体ウェブ414上にさまざまな色を有するインク滴を射出する複数のインクステーションを含んでいる。いくつかの実施形態では、1つの印刷ステーションが非導電性パターンを形成するためにインクを射出し、第2の印刷ステーションが基板上に画像または文字列などの情報を印刷するために他の種類のインクを射出する。
【0042】
動作中、媒体ウェブ414は、ソースロール410から送り出されて、図示されていないさまざまなモータにより駆動され、これらのモータは媒体経路Pに沿って設置された1つ以上のローラを回転させる。媒体調節装置が、ローラ412と、予熱器418と、を含んでいる。ローラ412は、媒体搬送が媒体経路Pに沿って媒体ウェブを動かすときに、送り出される媒体ウェブ414の張力を制御する。他の実施形態では、媒体基板がカットシート形態で媒体経路Pの中を移動するが、その場合には、媒体供給取扱システムが、プリンタの中を通って望ましい経路に沿ってカット媒体シートの搬送を可能にする任意の好適な装置または構造を含んでいてもよい。予熱器418は、現在印刷している媒体の種類と、現在使用しているインクの種類、色、および個数と、に対応する望ましい画像特性のために選択された最初の所定温度までウェブを昇温する。予熱器418の実施形態は、実用的な一実施形態では約30℃〜約70℃の範囲の目標予熱温度まで媒体を昇温するために、接触熱、放射熱、伝導熱、または対流熱を使用する。
【0043】
印刷ユニット421を含む印刷ゾーン420を通って媒体基板を搬送する。コントローラ450は、印刷ユニット421内のプリントヘッドに向かい合った媒体支持器424の最も近くに取り付けたエンコーダから速度データを受信して、ウェブがプリントヘッドを通過するときのウェブの線速度と位置とを計算する。コントローラ450は、これらのデータを使用してプリントヘッド内のインクエジェクタを作動させるタイミング信号を生成して、プリントヘッドが媒体ウェブ414上の陰画回路画像の見当合わせに対して適切なタイミングおよび精度でインクを射出できるようにする。コントローラ450は、コントローラ450で処理した画像データを基準にしてインクエジェクタのそれぞれを作動させるための電気的な発射信号を生成する。
【0044】
印刷ゾーン420の後には媒体経路に沿って1つ以上の「中間ヒータ」430がある。中間ヒータ430の実施形態は、媒体の温度を制御するために、接触熱、放射熱、伝導熱、および/または対流熱を使用する。中間ヒータ430は、スプレッダ(展着装置)440の中を通って媒体上のインクを送るときに望ましい特性に適した温度まで媒体上に載っているインクを昇温する。一実施形態では、中間ヒータの目標温度に対する有効範囲が約35℃〜約80℃である。中間ヒータ430は、インク温度と基板温度とを互いの約15℃以内まで均一にする効果がある。低いインク温度では線の広がりが少なく、他方、高いインク温度では透き通し(印刷物の反対側から画像が透けて見えること)を引き起こす。中間ヒータ430は、スプレッダの温度よりも高い0℃〜20℃になるように基板温度とインク温度とを調節する。
【0045】
中間ヒータ430の直後には、媒体に画像を定着させるために定着アセンブリ440が媒体に熱および/または圧力を加えるように構成されている。定着アセンブリは、加熱した、または加熱していない圧力ローラ、放射ヒータ、加熱ランプ、およびその種の他のものを含む、媒体に画像を定着させるのに適した任意の装置または器具を含んでいてもよい。図4の実施形態では、定着アセンブリは、媒体に所定の圧力を加える「スプレッダ」440を含み、いくつかの実施態様では、媒体に所定の熱を加える「スプレッダ」440を含んでいる。スプレッダ440は、媒体に熱および圧力を加えるための画像側ローラ442および圧力ローラ444などのローラを含んでいる。どちらのローラも、媒体ウェブ414を約35℃〜約80℃の範囲の温度にするために発熱体446などの加熱要素を含むことができる。他の実施形態では、定着アセンブリが印刷ゾーン420の後に媒体の非接触加熱(圧力のない)を用いてインクを薄く塗る。このような非接触定着アセンブリは、放射ヒータ、UV加熱ランプなどの、望ましい温度まで媒体を加熱するのに適した任意の種類のヒータを使用してもよい。
【0046】
スプレッダ440は圧力および熱を加えて、媒体ウェブ414上に位置する個々のインク液滴を組み合わせて、より大きなインク画像に一体化する。上述のように、印字図形内の非導電性パターン208は、導電性材料220が導電体を形成するのを妨げる粗さを備えた表面212を有している。中間ヒータ430が加える熱の総量と、スプレッダ440が加える圧力の総量とが、インク内のインクの一貫した画線比率を提供するとともに、また、プロセス100に対して適正水準の表面粗さを有する表面の感触を提供する。
【0047】
スプレッダ440を通過した後に、媒体ウェブ414をピックアップロール432上に巻き取る。他の構成では、媒体ウェブ414が両面印刷される。1つの構成では、両面印刷のための2度目には、媒体ウェブが媒体ウェブ反転装置と、プリンタ400と同じ構成を有する第2のプリンタと、の中を縫うようにして通り抜ける。他の構成では、媒体ウェブ414が、媒体ウェブ414の第1の面に続いて、媒体ウェブをひっくり返して、媒体経路Pを通って媒体ウェブ414を供給するウェブ反転装置を通る。印刷システム300を直接インクジェットプリンタとして示しているが、他のインクジェットプリンタが、画像ドラムまたは画像ベルト上にインク潜像を形成して、そのインク潜像を印刷媒体にトランスフィックスする間接プリンタを含んでいる。
【0048】
プリンタ300および400の両方は、非導電性マーキング剤を用いて画像を印刷するように構成されており、この非導電性マーキング剤は非導電性マーキング剤全体を覆って形成された導電性材料が導電体を形成するのを防止するのに十分な表面粗さを有している。プリンタ300および400では、印字図形の表面粗さに影響を与える1つの印刷ジョブパラメータが、印字図形の「光沢度」である。本明細書で使用する場合、用語「光沢度」は、基板上に形成された画像の鏡面反射の度合いを示しており、高光沢画像は鏡面反射の度合いがより高く、低光沢画像は鏡面反射の度合いがより低い。印字図形の表面粗さは印字図形の光沢度に影響を与え、低光沢度画像は印字図形からの光の鏡面反射を低減する大きな表面粗さを有している。いくつかのプリンタ実施形態が、印刷ジョブの一部分として光沢度パラメータを含んでいる。プリンタが低光沢印刷モードまたは「つや消し」印刷モードで画像を印刷するとき、プリンタはプロセス100とともに使用するのに適した表面粗さの印字図形を実現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料を実質的に含まない基板上に第2のパターンを形成するために前記非導電性材料を用いて前記基板上に第1のパターンを印刷することであって、前記基板が、前記第1のパターンと前記第2のパターンとを本質的に含む表面領域を有する、印刷することと、
前記第2のパターンを覆う前記導電性材料が、前記第1のパターン内に塗布された前記非導電性材料を覆う前記導電性材料から電気的に絶縁された導電体として機能できるようにするために、前記第1のパターンの前記非導電性材料と、前記非導電性材料を本質的に含まない前記基板と、を覆うように前記基板の前記表面領域に導電性材料を塗布することと、を含む、
基板上に導電体を形成する方法。
【請求項2】
前記基板の前記表面領域の粗さが、前記非導電性材料で形成された前記第1のパターンの表面の粗さよりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板と、
前記基板上の第1のパターン内に形成された非導電性材料であって、前記第1のパターンは、前記基板の表面領域の第2の部分を露出する第2のパターンを形成するために前記基板の前記表面領域の第1の部分だけを覆う、非導電性材料と、
前記第1のパターン内に形成された前記非導電性材料と、前記基板の前記表面領域の前記露出した第2の部分と、を覆う導電性材料であって、前記第2のパターンにより露出された前記基板の前記表面領域の前記第2の部分を覆う前記導電性材料は前記基板上の前記第1のパターン内に形成された前記非導電性材料を覆う前記導電性材料から電気的に絶縁されている、導電性材料と、を含む、
電気回路。
【請求項4】
前記基板の前記表面領域上の前記第1のパターンが、前記導電性材料と、前記非導電性材料とで覆われており、前記導電性材料だけで覆われた前記第2のパターンの電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有する、請求項3に記載の電気回路。
【請求項5】
前記第1のパターンが、前記非導電性材料で覆われており、前記第2のパターンにより露出された前記基板の表面粗さよりも大きい表面粗さを有する請求項4に記載の電気回路。
【請求項6】
前記非導電性材料が、前記非導電性材料の前記表面上に形成された前記導電性材料を、前記第2のパターンにより露出された前記基板の前記表面領域上に形成された前記導電性材料から電気的に絶縁するように構成されている、請求項3に記載の電気回路。
【請求項7】
前記基板が多孔質材料を本質的に含む、請求項3に記載の電気回路。
【請求項8】
前記多孔質材料が紙を本質的に含む、請求項7に記載の電気回路。
【請求項9】
前記非導電性材料が乳化凝集トナーまたは相転移インクを本質的に含む、請求項3に記載の電気回路。
【請求項10】
前記第2のパターンが、電磁信号の送信および受信のうちの少なくとも一方を可能にするアンテナとして構成されている、請求項3に記載の電気回路。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65838(P2013−65838A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187559(P2012−187559)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】