基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置および方法
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置は、サンプルおよび基板から受ける個々の第1および第2光信号成分から導出される第1および第2電気信号を生成するための第1プロセッサを備える。該装置は、第1および第2電気信号の位相間に位相差が存在するように第1および第2電気信号を生成する。該装置は、第2電気信号を減衰させるための減衰信号を生成するための制御回路を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
米国仮(provisional)特許出願番号第60/899,657号(2007年2月6日付出願、発明の名称「干渉打ち消し技術を用いたバックグラウンド蛍光の除去」)を参照する。この内容は、参照により全体がここで開示されたものとしてここに組み込まれ、この優先権が主張される。
【0002】
本発明は、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療診断ツールは、典型的には、大型で高価な設備、例えば、分光光度計、ガスクロマトグラフィ(GC)、質量分析計(MS)、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、ペーパーおよび薄層クロマトグラフィ(PC,TLC)、蛍光検出技術と組み合わせた電気泳動技術などを必要とする古典的な生化学的な技術を使用している。これらの標準的な分析ツールは、有効かつ効率的に作動する。
【0004】
しかしながら、該ツールは、高価であり、消耗品、サンプル処理能力、熟練したオペレータを高コストで必要とする。これらの不具合は、迅速で安価なその場(in-situ)医療診断の妨げになる。こうした方法は、退屈で根気のいる処理をしばしば必要とする。従って、これらのツールの多くは、何らかの検査技術によって初期選別された推定陽性サンプルのための確認ツールとして使用される。
【0005】
定量免疫測定技術は、同様な問題をもたらす。定量免疫測定分析の性能は、長い検査時間、比較的複雑で大型で高価な設備、熟練オペレータの必要性のため、集中した研究所に大きく制限される。こうして分析は、サンプル測定される患者から遠く離れたところで実施される。広範囲の免疫測定がより簡潔な方法で行えるのであれば、より安価で、看護の場所でまたは在宅看護で、数多くの患者の健康を毎年改善できるであろう。
【0006】
光学バイオセンサは、改善された感度、簡潔性、電磁波干渉耐性などの利点により、免疫測定応用に活用されている主要タイプのバイオセンサである。光学技術の多くのタイプは、バイオセンシング応用として広く用いられる。蛍光ベースのセンサは、おそらく高感度、汎用性、精度、かなり良好な選択性により、最も高度に開発されたものである。
【0007】
蛍光測定法はまた、小型化に極めて適している。この分野での現在の焦点は、励起光源をマイクロチャネル内のサンプルに集光して、複雑なレンズ、ミラー、光学フィルタのセットを用いてサンプルの蛍光放射を集光することによって、マイクロ流体チャネルの内側にある蛍光ラベル付き検体(analyte)を測定/検出することである。その結果、マイクロ流体基板からの蛍光信号が検出システムに入射して、強く不要な蛍光ノイズを生じさせることがある。測定対象の検体からの蛍光応答は、低い検体濃度に起因してしばしばかなり弱い。その結果、基板の蛍光に起因した蛍光ノイズが、測定対象の検体からの必要な蛍光信号を抑圧することがある。病気の早期検出では、バイオマーカー濃度は病気の早期段階では常に低い。現在のポイントオブケア(point-of-care)システムは、病気の早期検出にとって典型的な低検体濃度を検出するのに限界がある。
【0008】
2つの手法が、この影響を緩和するために広く用いられる。
【0009】
1)サンプルが存在する薄層から以外の信号を阻止できる共焦点蛍光顕微鏡の組み込み。この技術は、かなり良好に機能するが、大型で高価で複雑な光学系を必要とする。
【0010】
2)無蛍光特性又は低い蛍光特性の材料を基板材料として選択する。この目的で光学等級のガラスやシリカが広く用いられている。これらの材料は、可視波長の光で励起された場合に低い自己蛍光を有するためである。しかしながら、これらの材料は、比較的高価であり、これらの材料を用いたマイクロ流体チャネルの製造は、時間を要するフォトマスク生成、フォトリソグラフ、エッチングのプロセスを必要とする。その結果、光学等級のガラスやシリカで製作したマイクロ流体チップは、比較的高価になる。
【0011】
基板材料としての使用に適したと考えられる候補の安価な材料は、ポリマーベースの材料、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、マイラー(Mylar)などである。さらに、ポリマー材料を用いたマイクロ流体チャネルは、モールディング、エンボス加工、キャスティング、アブレーションのプロセスによって容易に製造できる。ポリカーシートにおける複雑なモデルのマイクロチャネルは、直接書込みレーザシステムを用いて1時間未満で製造されている。
【0012】
しかしながら、これらの材料は、比較的高い自己蛍光信号を示すため、低検体濃度検出でのこれらの使用を妨げる。ポリマー基板からの蛍光バックグラウンド信号の強度は、マイクロ流体チャネル内のサンプルの蛍光信号よりも2桁大きいことがある。従って、マイクロ流体チップの利用は、ポリマー材料の自己蛍光バックグラウンドノイズを解消し排除できる技術を必要とする。
【0013】
この技術の背景的議論は、蛍光材料が励起光源からの短いパルスによって励起された場合、材料は、強度が時間とともに指数関数的に減衰するように蛍光を発することを明らかにする。材料の蛍光強度がt=0の初期強度の1/eに減衰する時間は、材料の蛍光寿命(lifetime)と称する。一般に、材料の化学組成に起因して、異なる材料は異なる寿命で蛍光を発するようになる。周波数領域では、材料が正弦波で変調された光源によって励起された場合、励起光源の周波数と同一の周波数で正弦波の蛍光信号が発生することになるが、その位相は励起光に対してシフトしている。よって、2つの蛍光材料が正弦波の光源によって励起された場合、2つの信号が検出され、その位相はこれらの個々の蛍光寿命に依存して変化するようになる。
【0014】
周波数fmodに変調された光が、ポリマーからなるマイクロ流体チャネル内の蛍光ラベル付きサンプルの表面に入射した場合、励起信号が既にフィルタ除去されていると仮定すると、2セットの信号または信号成分が生成される。これらの信号/成分は、(1)測定対象のラベル付き検体が放射する蛍光信号成分と、(2)基板が放射する蛍光バックグラウンドノイズ信号/成分である。これらの2セットの信号は、入射光源と同じ変調周波数を有するが、入射する発振光源に対して異なる位相および振幅である。
【0015】
これは、2つの信号の電圧−時間特性100を示す図1に示しており、2つのポリマーの異なる蛍光寿命の差に起因する。マイクロ流体チャネル内に固定化された測定対象の検体は濃度が極めて低いため、2つの信号のうち弱い方を形成するようになる。この弱い信号102は、ω=2πfmodとして、ys(t)=Assin(ωt+φs)と表される。強い信号104は不要な信号であり、蛍光バックグラウンドノイズを表す。これは、yn(t)=Ansin(ωt+φn)と表される。
【0016】
一般に、測定対象の検体および基板から蛍光信号は異なる蛍光寿命を有するため、ysとynの間で位相差が存在する。入射信号に対する2つの信号の位相差は、それぞれφsおよびφnで表される。測定対象の弱い蛍光信号ys(t)の検出を考えると、明らかに問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
一緒に譲渡された国際特許公開第WO2007/040459号は、この分野において幾つかのテクニックを開示している。これらのテクニックの少なくとも1つでは、必要なサンプル蛍光信号を示すシステムからの出力信号は、As/2×sin(Δφ)で表される。ここで、Asは、信号の振幅であり、Δφは、必要なサンプル蛍光信号の位相と不要なサンプル蛍光信号の位相との間の位相差である。このテクニックの一例は、添付した図2の回路20に示している。回路20の動作の詳細な説明は、WO2007/040459に記載されている。
【0018】
図2のフォトデテクタIIIによって検出される信号は、ytotal=Assin(ωt+φs)+Ansin(ωt+φn)で与えられる。
【0019】
ノイズ信号を除去するには、位相遅延回路を用いて、ノイズ信号成分Anと直交する他の信号q(t)=Axcos(ωt+φn)を生成する。
【0020】
これらの2つの信号を乗算すると、下記のようになる。
【0021】
【数1】
【0022】
AsAx/2×sin(2ωt+φs+φn)と、AnAx/2×sin(2ωt+2φn)は、ローパスフィルタによって除去されて、AsAx/2×sin(φs−φn)が残る。これは、位相差φs−φnに依存したDC信号である。AsAx/2×sin(φs−φn)は、φs−φnが90°のとき最大になる。
【0023】
位相差は、信号AsとノイズAnの間の蛍光寿命および、励起光源Iの変調周波数に依存する。一例として、フルオレセインとマイラーの場合、蛍光寿命の差は1nsであり、90°位相差を生成するには、光源Iに必要な変調周波数は250MHzである。こうした高い周波数は、LEDではなく、レーザダイオードを用いて達成できる。
【0024】
変調周波数への位相差の依存性は正比例ではない。一般に、90°位相シフトを得ることは可能でない。サンプルに応じて、位相差が最大になる一定の周波数が存在する。それは、そのシステムにとって最適な動作周波数になる。寿命の差が短いほど、この周波数は高くなる。
【0025】
回路20で得られるDC出力は、AsAx/2である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、独立請求項に定義される。本発明の幾つかの任意の特徴は、従属請求項に定義される。
【0027】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置に、ノイズ信号成分を減衰させる減衰信号を生成する制御回路を設けることによって、幾つかの利点が得られる。
【0028】
第1(必要)信号と第2(ノイズ)信号との間の位相差が、かなり90°未満であっても、Asで与えられるDC出力が得られる。こうして蛍光サンプル分析装置は、サンプル信号とバックグラウンド信号との間の位相差が90°でなくても、信号の全振幅Asを復元することが可能である。このことは、光源を、現在必要とされる極めて高い周波数で変調する必要がないことを意味する。今のところLEDについての最大変調周波数は、約10MHzである。この周波数を用いて、一例として蛍光寿命の差を1nsとすると、2つの蛍光信号の差は、Δφ=3.6°と計算される。
【0029】
WO2007/040459において、回路からの出力信号は、sin(3.6°)/2=0.0314で定義され、30dB減衰と等価である(例えば、250mVと比べて7.9mV出力)。
【0030】
さらに、必要信号と不要信号との間の90°位相差は、こうした位相差を必要としない請求項1に係る装置によって与えられる出力信号の半分であるWO2007/040459からの出力信号を最大化するのに必要である。1nsの寿命の差を用いると、WO2007/040459の光源は250MHzで変調する必要があり、変調周波数はレーザダイオードを用いて達成できるのだけである。
【0031】
それは実行可能なテクニックではあるが、全体の実施コストは、位相差がかなり90°未満であっても測定対象の信号を復元でき、高価でないLEDの使用が可能である本テクニックよりも高くなる。
【0032】
このように位相差1°または2°を提供する周波数で動作するために、最適な動作周波数を設定する必要がない。従って、極めて高い変調周波数を有する必要がない。
【0033】
本発明について下記図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】典型的な必要信号成分および不要信号成分の電圧−時間カーブを示すグラフである。
【図2】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための知られた回路アーキテクチャを示すブロック図である。
【図3】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置の幾何構成の概略図である。
【図4】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置のアーキテクチャを示すブロック図である。
【図5】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための第2の装置の回路アーキテクチャを示すブロック図である。
【図6】図5の回路についての必要信号成分および不要信号成分の電圧−時間カーブを示すグラフである。
【図7】図5の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図8】図7の較正回路の信号について電圧−時間カーブを示すグラフである。
【図9】追加の位相ロックループおよび直交(quadrature)位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムについてのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図10】図9の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図11】追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムのためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図12】図11の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図13】蛍光サンプルを分析するためのさらに代替の回路である。
【図14】図13の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図15】追加の2つの位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムのレイアウトを示すブロック図である。
【図16】追加の位相ロックループを備えた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムの較正回路のレイアウトを示すブロック図である。
【図17】追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを提供する他の代替回路1700を示す。
【図18】追加の代替の位相ロックループを用いた、他の較正回路1800のレイアウトを示す。
【図19】直交位相シフタを用いたノイズキャンセルシステムのための他の回路を示す。
【図20】変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する較正回路2000を示す。
【図21】他の変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する代替回路2100を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3を参照して、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置の幾何構成を示している。装置300は、マイクロ流体カード302を備え、蛍光サンプル304がマイクロ流体カード基板302上にあるマイクロ流体チャネル内に置かれている。読み取りノイズ除去ユニット306が配置され、蛍光サンプル304を励起する光源システム308によって光を供給する。
【0036】
検出システム301は、蛍光サンプル304からの光およびマイクロ流体カード基板302からの反射/ノイズを受光し、読み取りノイズ除去ユニット306に伝送されて処理される。ポリカーボネート材料、例えば、PMMA、マイラー(Mylar)などをベースとしたマイクロ流体チャネルは、比較的安価で、容易に製造できるため、ポリカーボネート材料はマイクロ流体応用にとって重要な材料になり、これはしばしば消耗品として考えられる。
【0037】
しかしながら、ポリカーボネート材料の蛍光バックグラウンドは、特にマイクロ流体チャネル内に固定された測定対象の検体の蛍光強度と比べると、かなり高い。図3のコンパクトで簡単な蛍光検出システム300は、測定対象の検体304の蛍光放射だけでなく、マイクロ流体基板302からの蛍光など、照射スポットで発生する他の光放射も拾い上げてしまう。
【0038】
異なるタイプの光源が、励起光源308として使用できる。各種例として、レーザダイオード、LED、広帯域光源など、適切な波長のレーザがある。光源308の波長は、検体に付着した蛍光ラベルを励起できるものである必要がある。例えば、蛍光ラベルがフルオレセインである場合、450nm〜500nmの波長を持つ光源が必要である。光源308の波長は、単一波長、即ち、レーザまたはレーザダイオードによって放射される光を有するだけでもよい。しかしながら、レーザ光源は、通常は比較的大きく高価である。さらに、レーザおよびレーザダイオードは、一定の波長で利用可能なだけであり、これは広範囲の異なるタイプの蛍光物質に適していないかもしれない。
【0039】
使用する光源308が、励起波長領域だけでなく蛍光波長領域を網羅するLEDである場合、適切なローパス光学フィルタまたはバンドパス光学フィルタ(不図示)がLED308とマイクロ流体カード302との間に設置できる。光ビーム、特にLED308からの光ビームは発散して、集光レンズ系がマイクロチャネル内のサンプル304に光を集光するように設けられる。
【0040】
ラベル付き検体302および基板304からの蛍光放射強度は、励起光源308からの光強度に比例する。しかしながら、光源308の強度が高すぎる場合、蛍光物質の急速な光破壊または光退色を引き起こすことがある。発明者は、3460mcdを持つ470nmの青色LEDがフルオレセインを励起するのに適した光源であることを見出した。
【0041】
光源308は、測定対象の蛍光信号と不要なノイズ信号との間の位相差が存在するような周波数で変調される。この条件を達成する変調周波数は、蛍光ラベル付き検体304の蛍光寿命とマイクロ流体基板302の蛍光寿命との間の差に依存する。変調周波数は、式(1)を用いて下記のように計算できる。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、Δtは、ラベル付き検体304と基板302との間の蛍光寿命の差である。
【0044】
例えば、Δt=1nsであれば、fmod=250MHzである。一般に、LEDが10MHzまでしか変調できないことが判っている。従って、高周波の変調が必要である場合、レーザ光源またはレーザダイオードを使用する必要があろう。
【0045】
上述のように、光源308は、必要信号と不要信号との間の位相差が存在するのを確保するように変調された励起周波数を有してもよい。代替として、位相差は、読み取りノイズ除去ユニット306において、受光検出システム310またはユニット306中の処理電子回路のいずれかで発生できる。ここで開示したテクニックの重要な態様は、サンプルおよび基板からの個々の光信号を表す電気信号または信号成分は、両者間で位相差を有することである。
【0046】
光検出器310の動作領域は、測定対象の検体304の蛍光波長をカバーする必要がある。例えば、使用する蛍光物質が500nm〜600nmの蛍光波長範囲を有するフルオレセインである場合、光検出器310はこの波長範囲に感度を有する必要がある。測定対象の範囲外にある波長を持つ信号フィルタ除去するために、光学フィルタ310、ロングパスフィルタまたはバンドパスフィルタを受光器/検出器310の前方に設置する必要があるであろう。システム300での光源308は、一定の変調周波数で変調しており、受光器310は、その周波数での変調信号に応答できる必要がある。
【0047】
この方法に適した多くのタイプの受光器/検出器が存在しており、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管などである。光電子増倍管は、極めて高感度の光検出器であるが、サイズが比較的大きく、高いバイアス電圧(1000V)を必要とする。一方、フォトダイオードは安価、コンパクト、簡素であるが、その感度は光電子増倍管ほど良好ではなく、極めて弱い蛍光信号に適していないかもしれない。妥協として、アバランシェフォトダイオードは、比較的安価でコンパクトであり、良好な感度を有する。マルチチャネル検出システムでは、アレイCCD検出器が良好な選択を提供する。
【0048】
図4を参照して、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための第2の装置を説明する。装置400は、基板402上に置かれたサンプル404を分析するように配置される。光405が検体404および基板402から放射され、装置400によって処理される。
【0049】
装置400は、第1プロセッサ406を備える。第1プロセッサ406は、光信号を受光する光学読み取り器(不図示)からの電気信号を受けるように構成してもよく、あるいは、光学読み取り器は第1プロセッサ406と一体化してもよい。
【0050】
第1プロセッサ406は、サンプル404からの第1光信号成分および基板402からの第2光信号成分の両方を含む光信号406を受ける。基板402およびサンプル404から伝送される光は、励起された蛍光サンプル404から放射された蛍光、及び/又はサンプルおよび基板を励起する光源(不図示)から直接に反射した光を含んでもよい。
【0051】
第1プロセッサ406は、サンプル404からの第1光信号成分から由来する第1電気信号408および、基板402からの第2光信号成分から由来する第2電気信号410を生成する。第1信号408および第2信号410は、第2電気信号410を減衰させるための減衰信号を生成する制御回路412に供給される。制御回路412の出力信号414。制御回路412は、第2電気信号410を充分または完全に減衰させた場合、出力信号412は、事実上、第1電気信号408を含む。こうして制御回路412は、基板402からのバックグラウンド光ノイズを表す第2電気信号410を打ち消し、あるいは少なくとも実質的に打ち消す。
【0052】
図5に移って、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための他の装置500について説明する。回路500は、本例では受光器1である第1プロセッサ502を備える。上述のように、受光器は、実際上、サンプル509およびマイクロ流体カード510からの光信号を処理するための処理電子回路とは分離し、または一体化して設けてもよい。図5の例では、第1プロセッサ502は、一体化した受光器および信号処理ユニットであって、光信号を受光し処理して、サンプル509からの第1光信号成分から由来する第1電気信号528および、マイクロ流体カード基板510からの第2光信号成分から由来する第2電気信号530を生成する。
【0053】
さらに、装置は、第2電気信号530を減衰させるための減衰信号532を生成するための制御回路504を備える。
【0054】
回路アーキテクチャ500および動作について説明する。上述のように、第1プロセッサ502(受光器1)は、サンプル509およびマイクロ流体カード510からの光信号を受ける。第1プロセッサ502で導出された信号528,530は、加算モジュール515に供給される。光源506は、正弦波発生器508によって起動される。続いて、正弦波発生器508は、第1位相発生器512(位相遅延1)も起動して、その出力は可変利得モジュール514に供給される。可変利得モジュール514の出力は、減衰信号を含む信号532である。正弦波発生器508は、第2位相発生器518(位相遅延2)も起動して、その出力は第1混合器520に接続される。加算モジュール515の出力534は、第1混合器520にも供給される。混合器520の出力は、回路522への入力として供給される。回路522は、フィルタ524(LPF3)と、可変利得モジュール514を制御するための制御回路526とを備える。
【0055】
以下、回路500の動作の詳細な数学的解析について説明する。その前に、動作について次のように要約する。第1位相発生器512は、減衰信号532の位相を設定するように配置され、可変利得モジュール514は、減衰信号532の振幅を設定するように配置される。制御回路504は、減衰信号が第2電気信号成分530を打ち消し、あるいは少なくとも実質的に打ち消すために配置される。こうして第1位相発生器512は、第2電気信号530の位相と等しいか、実質的に等しくなるように減衰信号の位相を設定する。これは、図5に示しており、第1位相発生器512の出力は、sin(ωt+φn)の形式である。
【0056】
減衰信号532の振幅を設定(調整)するには、可変利得モジュール514は、振幅を第2電気信号530と等しいか、実質的に等しくなるように設定する。
【0057】
第2電気信号530の減衰は、第1プロセッサ502の出力528,530を加算モジュール515に供給することによって行われ、減衰信号532は出力528,530から引き算される。減衰信号532が不要信号530と同じか、実質的に同じである場合、不要信号530は、加算モジュール515の出力からキャンセルされる。
【0058】
制御回路504は、可変利得モジュール514の制御のために、加算モジュール515の出力534を混合器520にフィートバックする。第2位相発生器518(位相遅延2)の出力も混合器520にフィートバックされる。混合器520の出力は、可変利得モジュール514を制御する第1混合信号である。これは、フィルタ524および制御回路526に供給される。
【0059】
第2位相発生器518は、第1電気信号528の位相と等しいか、実質的に等しい位相を持つように、その出力信号538を設定する。即ち、位相は、サンプル509から第1プロセッサ502で受けた必要信号の位相に対して実質的に設定される。
【0060】
代替として、説明したコンポーネントの全ては、蛍光サンプル509を励起するための波長可変(tuneable)変調光源506と、蛍光サンプル509および基板510からの光信号成分を受光するための受光器502と、第1位相遅延発生器512と、可変利得モジュール514と、第2位相遅延発生器518と、可変利得モジュール514のための制御回路522とを備えた単一の装置500に設けてもよい。
【0061】
回路500の動作の数学的解析を説明する。最初に、光源506起動508の周波数ωtは、サンプル509によって発生する測定対象の信号528ysとマイクロ流体カード510によって発生する不要信号ynとの間の位相差が存在するように調整される。
【0062】
加算器515の後の信号534ysumは、下記のように、サンプル509によって発生する信号528ys、マイクロ流体システム510によって発生する不要信号yn、および生成された減衰信号532−Avsin(ωt+φn)で構成される。
【0063】
【数3】
【0064】
第2位相発生器518の出力q2(t)538は次のようになる。
【0065】
【数4】
【0066】
第1混合器520において、式(2)で定義される信号534と式(3)で定義される信号538とを混合すると、下記の式で定義される第1混合信号540が得られる。
【0067】
【数5】
【0068】
こうして第1混合信号540は、式(4)においてDC成分とAC成分を含むことが判る。AC成分がローパスフィルタ524(LPF3)を用いてフィルタ除去されると仮定すると、下記のように誤差信号VeであるDC成分だけが残る。
【0069】
【数6】
【0070】
誤差信号Veは、制御回路526に供給されて、利得モジュール514の利得Avを調整し、生成された信号512の振幅を制御し、不要な基板蛍光信号530ynを打ち消す。制御回路526は、誤差信号を可変利得増幅器514に割り当てる標準の制御回路である。これは、下記の場合に達成される。
【0071】
【数7】
【0072】
式(2)を用いて、加算モジュール515の出力534ysum=ysとなる。
【0073】
必要なサンプル蛍光信号528の振幅536Asは、振幅検出器536による出力である。
【0074】
このテクニックは、不要な基板蛍光信号530ynから第1プロセッサ502(受光器1)の出力が下記で与えられる場合にも適用可能である。
【0075】
【数8】
【0076】
信号530ynの係数αkおよび位相φk(k=2...∞)は、未知とすることができる。それは、式(6)での信号530ynの成分との混合(3)が、下記のようになるからである。
【0077】
【数9】
【0078】
式(7)で得られた信号およびA0cos(ωt+φs)は、同じローパスフィルタ524(LPF3)を用いてフィルタ除去できる。従って、制御回路536への誤差信号は、式(5)のVeで与えられるものと同じである。よって、加算器515の出力は、バンドパスフィルタがDC成分A0およびVe=0の高次の高調波(k≧2)を除去した後、必要なサンプル蛍光信号528ysになる。必要なサンプル蛍光信号528ysの振幅Asは、バンドパスフィルタ(図5では不図示)の後、振幅検出器516を用いて測定できる。
【0079】
回路500の性能評価は、実施した干渉打ち消しテクニックは、変調周波数3MHzに対応した位相差1.08度について、必要なサンプル蛍光信号を復元できることを示す。こうしてLEDを用いた低コストの実用化が可能になる。これは、約10MHzの最大変調周波数を有する変調範囲内にある所望の変調周波数であるからである。
【0080】
変調周波数を3MHzに設定すると、これは位相差1.08度を与える。必要なサンプル蛍光信号528の振幅は、As=0.4Vであり、不要な基板蛍光信号530は、An=0.8Vである。図6は、必要なサンプル蛍光信号528が、全体として損失なしで復元できることを示しており、これにより知られたテクニックより著しい改善を提供している。
【0081】
こうしてこのテクニックの重要な利点は、マイクロ流体チップ内にある測定対象の検体からの極めて弱い蛍光信号を、マイクロ流体基板の蛍光バックグラウンドに起因した、かなり大きな不要な蛍光信号と区別できる点である。これは、基板信号と検体信号との間の位相差が90°よりかなり小さい低い変調周波数であっても達成可能である。従って、このテクニックにより、高い蛍光特性を持つ材料からなるマイクロ流体チップ内での極めて低い検体濃度の検出が可能になる。
【0082】
このこのテクニックにより、マイクロ流体基板の蛍光バックグラウンドに起因したノイズ信号の除去が可能であるため、高いバックグラウンド蛍光のポリマー材料がマイクロ流体基板として使用できる。ポリマーシートをマイクロ流体材料として利用することは、低コスト、製造の容易さ、堅牢性など多くの利益を提供する。ポリマーシートは、マイクロ流体基板として広く用いられているような光学等級ガラスやシリカウエハより安価になる傾向がある。従って、マイクロ流体チップのコストは著しく低減できるため、ポイントオブケア(point-of-care)免疫測定システムにおいて消費可能かつ廃棄可能なカートリッジとして取り扱うことが可能になる。ポリマーマイクロ流体チップは頑丈であるため、未熟な研究所アシスタントにも適している。
【0083】
使用の前に、図5の回路は最初に較正してもよい。図7を参照して、較正テクニックを回路700を参照して説明する。
【0084】
回路700は、第1位相発生器512を較正するための第1較正回路702と、第2位相発生器518を較正するための第2較正回路704とを備える。第1較正回路702は、基板510からの第2光信号成分から由来する第3電気信号724を生成するための第2プロセッサ706(受光器2)を備える。装置700は、第1光信号成分から由来する成分を含む第3電気信号なしで第3電気信号724を生成するように配置される。後述するように、これは、マイクロ流体カードからサンプルを除去し、マイクロ流体カードを光源506からの光に曝すことによって行われる。
【0085】
第1較正回路702は、第1位相発生器512からの出力信号726の位相をシフトさせる直交(quadrature)位相シフタ708をさらに備える。直交位相シフタ708の出力は、第3電気信号724と混合して、第2混合信号730を生成するための第2混合器710に供給されるシフトした信号728である。
【0086】
第2混合信号730は、第1較正フィルタ712(LPF4)への入力として供給される。この動作の数学的解析は後述する。第1較正フィルタ712の出力信号732は、第1較正回路の制御入力を提供する制御モジュール714に制御入力としてフィードバックされる。
【0087】
装置700の第2較正回路704は、第2位相発生器518を較正するためのものである。第2較正回路704は、基板510からの第1光信号成分から由来する第4電気信号734を生成する第3プロセッサ716(受光器3)を備える。第1プロセッサ716は、第2光信号成分から由来する成分を含む第4電気信号734なしで第4電気信号を生成する。これは、基板510からのバックグラウンド/ノイズ光の無い、サンプル509からの光を第3プロセッサ716で受けることによって行われる。
【0088】
第4電気信号734は、第2位相遅延発生器518の出力736と混合するための第3混合器718に供給される。第3混合器718の出力738は、第2較正フィルタ720(LPF5)に供給される第3混合信号であり、その出力740は、第2較正回路704の制御入力として、ステージ722にフィードバックされる。この数学的解析は後述する。
【0089】
主回路500は、較正ステージが位相発生器512,518を調整するために、全体システムから最初は分離している。これは、第1位相発生器512をφnに調整することを要し、ここで、φnは不要な基板蛍光信号530の位相であり、サンプル509無しのマイクロ流体カード510が較正システム700に挿入され、第1位相発生器512をφnに調整する。
【0090】
同時に、第2位相発生器518は、必要な零化群(annihilator)信号cos(ωt+φs)538を発生するように調整される。ここで、φsは、必要なサンプル蛍光信号528であり、マイクロ流体カード510無しのサンプルが較正システム700に挿入され、第2位相発生器518を調整して、cos(ωt+φs)を発生する。
【0091】
不要な第2信号530の位相と等しい(またはほぼ等しい)減衰信号の位相を設定する第1位相発生器512の調整について説明する。
第2プロセッサ706(受光器2)後の信号724ync(t)は次のようになる。
【0092】
【数10】
【0093】
第1位相発生器512の発生信号726y1g(t)は次のようになる。
【0094】
【数11】
【0095】
直交位相シフタ708後のシフトした信号q1c(t)は、下記の式(10)で与えられることになる。
【0096】
【数12】
【0097】
第2混合器710での信号724(式(8))と信号728(式(10))の混合は、下記の式(11)で与えられる第2混合信号730をもたらす。
【0098】
【数13】
【0099】
式(11)においてDC成分およびAC成分が存在することが判る。AC成分が第1較正フィルタ712(例えば、ローパスフィルタLPF4)を用いてフィルタ除去されるとすると、誤差信号VenであるDC成分だけが残り、信号732が下記の式(12)で与えられる。
【0100】
【数14】
【0101】
誤差信号732Venは、制御回路714に供給されて、Ven=0かつ第1位相発生器512がφnに調整されるまで、第1位相発生器512を調整する。ここで、φnは不要な基板蛍光信号530の位相である。
【0102】
必要なサンプル蛍光信号528の位相と等しい(またはほぼ等しい)ように設定するための第2位相発生器518の調整について説明する。
【0103】
第3プロセッサ716(受光器3)後の信号734ysc(t)は次のようになる。
【0104】
【数15】
【0105】
第2位相発生器518の発生信号736y2g(t)は次のようになる。
【0106】
【数16】
【0107】
第3混合器718での信号734(式(13))と信号736(式(14))の混合は、下記の式(11)で与えられる第3混合信号738をもたらす。
【0108】
【数17】
【0109】
式(15)においてDC成分およびAC成分が存在することが判る。AC成分が第2較正フィルタ720(例えば、ローパスフィルタLPF5)を用いてフィルタ除去されるとすると、誤差信号VesであるDC成分だけが残り、信号740が下記の式(16)で与えられる。
【0110】
【数18】
【0111】
誤差信号Vesは、制御回路722に供給されて、Ves=0かつ第2位相発生器522が必要な零化群(annihilator)信号538cos(ωt+φs)538を発生するように調整されるまで、第2位相発生器522を調整する。ここで、φsは必要なサンプル蛍光信号528の位相である。
【0112】
このテクニックは、第1位相発生器512を基本位相φnに調整するためにも使用できる。ただし、第2プロセッサ706(受光器2)の出力724ygn(t)は、下記の式(17)で与えられる。
【0113】
【数19】
【0114】
信号724ygn(t)の係数αkおよび位相φk(k=2,…,∞)は、未知にできる。その理由は、式(17)のygn(t)成分との混合によって下記の式(18)となるからである。
【0115】
【数20】
【0116】
式(18)で得られた信号およびA0cos(ωt+φn−Δφn)は、同じ較正フィルタ712(LPF4)を用いてフィルタ除去できる。従って、第1位相発生器512は、回路714を用いて信号ygn(t)の基本位相φnに調整できる。
【0117】
同様に、第3プロセッサ716(受光器3)の出力734 ygs(t)は、下記の式(19)で与えられる。
【0118】
【数21】
【0119】
信号734ygs(t)の係数αkおよび位相φk(k=2,…,∞)は、未知にできる。第2位相発生器522が必要な零化群(annihilator)信号736 cos(ωt+φs)を発生するように調整できることになる。ここで、φsは、制御回路722を用いた信号ygs(t)の基本位相である。
【0120】
Anc=0.8VおよびAsc=0.4Vの場合、図8は電気信号724,726,734,736について電圧−時間特性を示し、較正回路が第1位相発生器512をφnに調整でき、第2位相発生器522が必要な零化群(annihilator)信号538 cos(ωt+φs)を発生するように調整できることを示す。両方の較正ループについて安定な状態での誤差信号はゼロだからである。
【0121】
前述の例についての網羅的でない幾つかの変形について説明する。
【0122】
図9は、追加の2つの位相ロックループおよび直交(quadrature)位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムのアーキテクチャを示す。このシステムアーキテクチャ900は、次のような10個の主要なブロックを備える。波長可変(tuneable)変調光源システム[I]、位相遅延発生器1[II]、位相ロックループ回路1[III]、可変利得Av[IV]、サンプル(検体およびマイクロ流体カード)[V]、受光器1[VI]、制御回路[VII]、位相遅延発生器2[VIII]、位相ロックループ回路2[IX]、および直交位相シフタ[X]。
【0123】
図9の回路の較正は、図10のアーキテクチャ1000を参照して説明する。位相遅延発生器の較正は、追加の7個のブロック、即ち、マイクロ流体カード[XI]、受光器2[XII]、直交位相シフタ[XIII]、較正回路1[XIV]、サンプル[XV]、受光器3[XVI]、および較正回路2[XVII]を必要とする。
【0124】
図11は、追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムのための他の代替アーキテクチャを示す。これは、アーキテクチャ1100として示している。図11の回路1100は、図12の較正回路1200に従って較正される。
【0125】
蛍光サンプルを分析するためのさらに代替の回路1300を図13に示す。回路1300は、追加の直交位相シフタを使用する。図14は、図13の回路1300を較正するための回路アーキテクチャ1400を示す。
【0126】
追加の2つの位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムのレイアウトを図15に示す。この図と次の図において、誤差変数は、図5と図7で与えられた制御回路および較正回路2の誤差信号の合計である。誤差変数は、制御回路および較正回路2に供給される。較正回路2および制御回路は、制御ループと較正ループとの間の相互作用に起因して、設計がより難しくなるであろう。
【0127】
代替の較正回路1600を図16に示す。回路は、追加の位相ロックループを備えた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムである。
【0128】
図17は、追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを提供する他の代替回路1700を示す。
【0129】
図18は、追加の代替の位相ロックループを用いた、他の較正回路1800のレイアウトを示す。
【0130】
図19は、直交位相シフタを用いたノイズキャンセルシステムのための他の回路1900を示す。
【0131】
図20は、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する較正回路2000を示す。図21は、他の変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する代替回路2100を示す。
【0132】
本発明を例を用いて説明したが、添付の請求項の精神および範囲から逸脱することなく、実施例の詳細について種々の変更が可能であることは理解されよう。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
米国仮(provisional)特許出願番号第60/899,657号(2007年2月6日付出願、発明の名称「干渉打ち消し技術を用いたバックグラウンド蛍光の除去」)を参照する。この内容は、参照により全体がここで開示されたものとしてここに組み込まれ、この優先権が主張される。
【0002】
本発明は、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医療診断ツールは、典型的には、大型で高価な設備、例えば、分光光度計、ガスクロマトグラフィ(GC)、質量分析計(MS)、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、ペーパーおよび薄層クロマトグラフィ(PC,TLC)、蛍光検出技術と組み合わせた電気泳動技術などを必要とする古典的な生化学的な技術を使用している。これらの標準的な分析ツールは、有効かつ効率的に作動する。
【0004】
しかしながら、該ツールは、高価であり、消耗品、サンプル処理能力、熟練したオペレータを高コストで必要とする。これらの不具合は、迅速で安価なその場(in-situ)医療診断の妨げになる。こうした方法は、退屈で根気のいる処理をしばしば必要とする。従って、これらのツールの多くは、何らかの検査技術によって初期選別された推定陽性サンプルのための確認ツールとして使用される。
【0005】
定量免疫測定技術は、同様な問題をもたらす。定量免疫測定分析の性能は、長い検査時間、比較的複雑で大型で高価な設備、熟練オペレータの必要性のため、集中した研究所に大きく制限される。こうして分析は、サンプル測定される患者から遠く離れたところで実施される。広範囲の免疫測定がより簡潔な方法で行えるのであれば、より安価で、看護の場所でまたは在宅看護で、数多くの患者の健康を毎年改善できるであろう。
【0006】
光学バイオセンサは、改善された感度、簡潔性、電磁波干渉耐性などの利点により、免疫測定応用に活用されている主要タイプのバイオセンサである。光学技術の多くのタイプは、バイオセンシング応用として広く用いられる。蛍光ベースのセンサは、おそらく高感度、汎用性、精度、かなり良好な選択性により、最も高度に開発されたものである。
【0007】
蛍光測定法はまた、小型化に極めて適している。この分野での現在の焦点は、励起光源をマイクロチャネル内のサンプルに集光して、複雑なレンズ、ミラー、光学フィルタのセットを用いてサンプルの蛍光放射を集光することによって、マイクロ流体チャネルの内側にある蛍光ラベル付き検体(analyte)を測定/検出することである。その結果、マイクロ流体基板からの蛍光信号が検出システムに入射して、強く不要な蛍光ノイズを生じさせることがある。測定対象の検体からの蛍光応答は、低い検体濃度に起因してしばしばかなり弱い。その結果、基板の蛍光に起因した蛍光ノイズが、測定対象の検体からの必要な蛍光信号を抑圧することがある。病気の早期検出では、バイオマーカー濃度は病気の早期段階では常に低い。現在のポイントオブケア(point-of-care)システムは、病気の早期検出にとって典型的な低検体濃度を検出するのに限界がある。
【0008】
2つの手法が、この影響を緩和するために広く用いられる。
【0009】
1)サンプルが存在する薄層から以外の信号を阻止できる共焦点蛍光顕微鏡の組み込み。この技術は、かなり良好に機能するが、大型で高価で複雑な光学系を必要とする。
【0010】
2)無蛍光特性又は低い蛍光特性の材料を基板材料として選択する。この目的で光学等級のガラスやシリカが広く用いられている。これらの材料は、可視波長の光で励起された場合に低い自己蛍光を有するためである。しかしながら、これらの材料は、比較的高価であり、これらの材料を用いたマイクロ流体チャネルの製造は、時間を要するフォトマスク生成、フォトリソグラフ、エッチングのプロセスを必要とする。その結果、光学等級のガラスやシリカで製作したマイクロ流体チップは、比較的高価になる。
【0011】
基板材料としての使用に適したと考えられる候補の安価な材料は、ポリマーベースの材料、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、マイラー(Mylar)などである。さらに、ポリマー材料を用いたマイクロ流体チャネルは、モールディング、エンボス加工、キャスティング、アブレーションのプロセスによって容易に製造できる。ポリカーシートにおける複雑なモデルのマイクロチャネルは、直接書込みレーザシステムを用いて1時間未満で製造されている。
【0012】
しかしながら、これらの材料は、比較的高い自己蛍光信号を示すため、低検体濃度検出でのこれらの使用を妨げる。ポリマー基板からの蛍光バックグラウンド信号の強度は、マイクロ流体チャネル内のサンプルの蛍光信号よりも2桁大きいことがある。従って、マイクロ流体チップの利用は、ポリマー材料の自己蛍光バックグラウンドノイズを解消し排除できる技術を必要とする。
【0013】
この技術の背景的議論は、蛍光材料が励起光源からの短いパルスによって励起された場合、材料は、強度が時間とともに指数関数的に減衰するように蛍光を発することを明らかにする。材料の蛍光強度がt=0の初期強度の1/eに減衰する時間は、材料の蛍光寿命(lifetime)と称する。一般に、材料の化学組成に起因して、異なる材料は異なる寿命で蛍光を発するようになる。周波数領域では、材料が正弦波で変調された光源によって励起された場合、励起光源の周波数と同一の周波数で正弦波の蛍光信号が発生することになるが、その位相は励起光に対してシフトしている。よって、2つの蛍光材料が正弦波の光源によって励起された場合、2つの信号が検出され、その位相はこれらの個々の蛍光寿命に依存して変化するようになる。
【0014】
周波数fmodに変調された光が、ポリマーからなるマイクロ流体チャネル内の蛍光ラベル付きサンプルの表面に入射した場合、励起信号が既にフィルタ除去されていると仮定すると、2セットの信号または信号成分が生成される。これらの信号/成分は、(1)測定対象のラベル付き検体が放射する蛍光信号成分と、(2)基板が放射する蛍光バックグラウンドノイズ信号/成分である。これらの2セットの信号は、入射光源と同じ変調周波数を有するが、入射する発振光源に対して異なる位相および振幅である。
【0015】
これは、2つの信号の電圧−時間特性100を示す図1に示しており、2つのポリマーの異なる蛍光寿命の差に起因する。マイクロ流体チャネル内に固定化された測定対象の検体は濃度が極めて低いため、2つの信号のうち弱い方を形成するようになる。この弱い信号102は、ω=2πfmodとして、ys(t)=Assin(ωt+φs)と表される。強い信号104は不要な信号であり、蛍光バックグラウンドノイズを表す。これは、yn(t)=Ansin(ωt+φn)と表される。
【0016】
一般に、測定対象の検体および基板から蛍光信号は異なる蛍光寿命を有するため、ysとynの間で位相差が存在する。入射信号に対する2つの信号の位相差は、それぞれφsおよびφnで表される。測定対象の弱い蛍光信号ys(t)の検出を考えると、明らかに問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
一緒に譲渡された国際特許公開第WO2007/040459号は、この分野において幾つかのテクニックを開示している。これらのテクニックの少なくとも1つでは、必要なサンプル蛍光信号を示すシステムからの出力信号は、As/2×sin(Δφ)で表される。ここで、Asは、信号の振幅であり、Δφは、必要なサンプル蛍光信号の位相と不要なサンプル蛍光信号の位相との間の位相差である。このテクニックの一例は、添付した図2の回路20に示している。回路20の動作の詳細な説明は、WO2007/040459に記載されている。
【0018】
図2のフォトデテクタIIIによって検出される信号は、ytotal=Assin(ωt+φs)+Ansin(ωt+φn)で与えられる。
【0019】
ノイズ信号を除去するには、位相遅延回路を用いて、ノイズ信号成分Anと直交する他の信号q(t)=Axcos(ωt+φn)を生成する。
【0020】
これらの2つの信号を乗算すると、下記のようになる。
【0021】
【数1】
【0022】
AsAx/2×sin(2ωt+φs+φn)と、AnAx/2×sin(2ωt+2φn)は、ローパスフィルタによって除去されて、AsAx/2×sin(φs−φn)が残る。これは、位相差φs−φnに依存したDC信号である。AsAx/2×sin(φs−φn)は、φs−φnが90°のとき最大になる。
【0023】
位相差は、信号AsとノイズAnの間の蛍光寿命および、励起光源Iの変調周波数に依存する。一例として、フルオレセインとマイラーの場合、蛍光寿命の差は1nsであり、90°位相差を生成するには、光源Iに必要な変調周波数は250MHzである。こうした高い周波数は、LEDではなく、レーザダイオードを用いて達成できる。
【0024】
変調周波数への位相差の依存性は正比例ではない。一般に、90°位相シフトを得ることは可能でない。サンプルに応じて、位相差が最大になる一定の周波数が存在する。それは、そのシステムにとって最適な動作周波数になる。寿命の差が短いほど、この周波数は高くなる。
【0025】
回路20で得られるDC出力は、AsAx/2である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、独立請求項に定義される。本発明の幾つかの任意の特徴は、従属請求項に定義される。
【0027】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置に、ノイズ信号成分を減衰させる減衰信号を生成する制御回路を設けることによって、幾つかの利点が得られる。
【0028】
第1(必要)信号と第2(ノイズ)信号との間の位相差が、かなり90°未満であっても、Asで与えられるDC出力が得られる。こうして蛍光サンプル分析装置は、サンプル信号とバックグラウンド信号との間の位相差が90°でなくても、信号の全振幅Asを復元することが可能である。このことは、光源を、現在必要とされる極めて高い周波数で変調する必要がないことを意味する。今のところLEDについての最大変調周波数は、約10MHzである。この周波数を用いて、一例として蛍光寿命の差を1nsとすると、2つの蛍光信号の差は、Δφ=3.6°と計算される。
【0029】
WO2007/040459において、回路からの出力信号は、sin(3.6°)/2=0.0314で定義され、30dB減衰と等価である(例えば、250mVと比べて7.9mV出力)。
【0030】
さらに、必要信号と不要信号との間の90°位相差は、こうした位相差を必要としない請求項1に係る装置によって与えられる出力信号の半分であるWO2007/040459からの出力信号を最大化するのに必要である。1nsの寿命の差を用いると、WO2007/040459の光源は250MHzで変調する必要があり、変調周波数はレーザダイオードを用いて達成できるのだけである。
【0031】
それは実行可能なテクニックではあるが、全体の実施コストは、位相差がかなり90°未満であっても測定対象の信号を復元でき、高価でないLEDの使用が可能である本テクニックよりも高くなる。
【0032】
このように位相差1°または2°を提供する周波数で動作するために、最適な動作周波数を設定する必要がない。従って、極めて高い変調周波数を有する必要がない。
【0033】
本発明について下記図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】典型的な必要信号成分および不要信号成分の電圧−時間カーブを示すグラフである。
【図2】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための知られた回路アーキテクチャを示すブロック図である。
【図3】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置の幾何構成の概略図である。
【図4】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置のアーキテクチャを示すブロック図である。
【図5】基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための第2の装置の回路アーキテクチャを示すブロック図である。
【図6】図5の回路についての必要信号成分および不要信号成分の電圧−時間カーブを示すグラフである。
【図7】図5の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図8】図7の較正回路の信号について電圧−時間カーブを示すグラフである。
【図9】追加の位相ロックループおよび直交(quadrature)位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムについてのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図10】図9の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図11】追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムのためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図12】図11の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図13】蛍光サンプルを分析するためのさらに代替の回路である。
【図14】図13の回路での較正回路のためのアーキテクチャを示すブロック図である。
【図15】追加の2つの位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムのレイアウトを示すブロック図である。
【図16】追加の位相ロックループを備えた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムの較正回路のレイアウトを示すブロック図である。
【図17】追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを提供する他の代替回路1700を示す。
【図18】追加の代替の位相ロックループを用いた、他の較正回路1800のレイアウトを示す。
【図19】直交位相シフタを用いたノイズキャンセルシステムのための他の回路を示す。
【図20】変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する較正回路2000を示す。
【図21】他の変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する代替回路2100を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3を参照して、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置の幾何構成を示している。装置300は、マイクロ流体カード302を備え、蛍光サンプル304がマイクロ流体カード基板302上にあるマイクロ流体チャネル内に置かれている。読み取りノイズ除去ユニット306が配置され、蛍光サンプル304を励起する光源システム308によって光を供給する。
【0036】
検出システム301は、蛍光サンプル304からの光およびマイクロ流体カード基板302からの反射/ノイズを受光し、読み取りノイズ除去ユニット306に伝送されて処理される。ポリカーボネート材料、例えば、PMMA、マイラー(Mylar)などをベースとしたマイクロ流体チャネルは、比較的安価で、容易に製造できるため、ポリカーボネート材料はマイクロ流体応用にとって重要な材料になり、これはしばしば消耗品として考えられる。
【0037】
しかしながら、ポリカーボネート材料の蛍光バックグラウンドは、特にマイクロ流体チャネル内に固定された測定対象の検体の蛍光強度と比べると、かなり高い。図3のコンパクトで簡単な蛍光検出システム300は、測定対象の検体304の蛍光放射だけでなく、マイクロ流体基板302からの蛍光など、照射スポットで発生する他の光放射も拾い上げてしまう。
【0038】
異なるタイプの光源が、励起光源308として使用できる。各種例として、レーザダイオード、LED、広帯域光源など、適切な波長のレーザがある。光源308の波長は、検体に付着した蛍光ラベルを励起できるものである必要がある。例えば、蛍光ラベルがフルオレセインである場合、450nm〜500nmの波長を持つ光源が必要である。光源308の波長は、単一波長、即ち、レーザまたはレーザダイオードによって放射される光を有するだけでもよい。しかしながら、レーザ光源は、通常は比較的大きく高価である。さらに、レーザおよびレーザダイオードは、一定の波長で利用可能なだけであり、これは広範囲の異なるタイプの蛍光物質に適していないかもしれない。
【0039】
使用する光源308が、励起波長領域だけでなく蛍光波長領域を網羅するLEDである場合、適切なローパス光学フィルタまたはバンドパス光学フィルタ(不図示)がLED308とマイクロ流体カード302との間に設置できる。光ビーム、特にLED308からの光ビームは発散して、集光レンズ系がマイクロチャネル内のサンプル304に光を集光するように設けられる。
【0040】
ラベル付き検体302および基板304からの蛍光放射強度は、励起光源308からの光強度に比例する。しかしながら、光源308の強度が高すぎる場合、蛍光物質の急速な光破壊または光退色を引き起こすことがある。発明者は、3460mcdを持つ470nmの青色LEDがフルオレセインを励起するのに適した光源であることを見出した。
【0041】
光源308は、測定対象の蛍光信号と不要なノイズ信号との間の位相差が存在するような周波数で変調される。この条件を達成する変調周波数は、蛍光ラベル付き検体304の蛍光寿命とマイクロ流体基板302の蛍光寿命との間の差に依存する。変調周波数は、式(1)を用いて下記のように計算できる。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、Δtは、ラベル付き検体304と基板302との間の蛍光寿命の差である。
【0044】
例えば、Δt=1nsであれば、fmod=250MHzである。一般に、LEDが10MHzまでしか変調できないことが判っている。従って、高周波の変調が必要である場合、レーザ光源またはレーザダイオードを使用する必要があろう。
【0045】
上述のように、光源308は、必要信号と不要信号との間の位相差が存在するのを確保するように変調された励起周波数を有してもよい。代替として、位相差は、読み取りノイズ除去ユニット306において、受光検出システム310またはユニット306中の処理電子回路のいずれかで発生できる。ここで開示したテクニックの重要な態様は、サンプルおよび基板からの個々の光信号を表す電気信号または信号成分は、両者間で位相差を有することである。
【0046】
光検出器310の動作領域は、測定対象の検体304の蛍光波長をカバーする必要がある。例えば、使用する蛍光物質が500nm〜600nmの蛍光波長範囲を有するフルオレセインである場合、光検出器310はこの波長範囲に感度を有する必要がある。測定対象の範囲外にある波長を持つ信号フィルタ除去するために、光学フィルタ310、ロングパスフィルタまたはバンドパスフィルタを受光器/検出器310の前方に設置する必要があるであろう。システム300での光源308は、一定の変調周波数で変調しており、受光器310は、その周波数での変調信号に応答できる必要がある。
【0047】
この方法に適した多くのタイプの受光器/検出器が存在しており、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管などである。光電子増倍管は、極めて高感度の光検出器であるが、サイズが比較的大きく、高いバイアス電圧(1000V)を必要とする。一方、フォトダイオードは安価、コンパクト、簡素であるが、その感度は光電子増倍管ほど良好ではなく、極めて弱い蛍光信号に適していないかもしれない。妥協として、アバランシェフォトダイオードは、比較的安価でコンパクトであり、良好な感度を有する。マルチチャネル検出システムでは、アレイCCD検出器が良好な選択を提供する。
【0048】
図4を参照して、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための第2の装置を説明する。装置400は、基板402上に置かれたサンプル404を分析するように配置される。光405が検体404および基板402から放射され、装置400によって処理される。
【0049】
装置400は、第1プロセッサ406を備える。第1プロセッサ406は、光信号を受光する光学読み取り器(不図示)からの電気信号を受けるように構成してもよく、あるいは、光学読み取り器は第1プロセッサ406と一体化してもよい。
【0050】
第1プロセッサ406は、サンプル404からの第1光信号成分および基板402からの第2光信号成分の両方を含む光信号406を受ける。基板402およびサンプル404から伝送される光は、励起された蛍光サンプル404から放射された蛍光、及び/又はサンプルおよび基板を励起する光源(不図示)から直接に反射した光を含んでもよい。
【0051】
第1プロセッサ406は、サンプル404からの第1光信号成分から由来する第1電気信号408および、基板402からの第2光信号成分から由来する第2電気信号410を生成する。第1信号408および第2信号410は、第2電気信号410を減衰させるための減衰信号を生成する制御回路412に供給される。制御回路412の出力信号414。制御回路412は、第2電気信号410を充分または完全に減衰させた場合、出力信号412は、事実上、第1電気信号408を含む。こうして制御回路412は、基板402からのバックグラウンド光ノイズを表す第2電気信号410を打ち消し、あるいは少なくとも実質的に打ち消す。
【0052】
図5に移って、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための他の装置500について説明する。回路500は、本例では受光器1である第1プロセッサ502を備える。上述のように、受光器は、実際上、サンプル509およびマイクロ流体カード510からの光信号を処理するための処理電子回路とは分離し、または一体化して設けてもよい。図5の例では、第1プロセッサ502は、一体化した受光器および信号処理ユニットであって、光信号を受光し処理して、サンプル509からの第1光信号成分から由来する第1電気信号528および、マイクロ流体カード基板510からの第2光信号成分から由来する第2電気信号530を生成する。
【0053】
さらに、装置は、第2電気信号530を減衰させるための減衰信号532を生成するための制御回路504を備える。
【0054】
回路アーキテクチャ500および動作について説明する。上述のように、第1プロセッサ502(受光器1)は、サンプル509およびマイクロ流体カード510からの光信号を受ける。第1プロセッサ502で導出された信号528,530は、加算モジュール515に供給される。光源506は、正弦波発生器508によって起動される。続いて、正弦波発生器508は、第1位相発生器512(位相遅延1)も起動して、その出力は可変利得モジュール514に供給される。可変利得モジュール514の出力は、減衰信号を含む信号532である。正弦波発生器508は、第2位相発生器518(位相遅延2)も起動して、その出力は第1混合器520に接続される。加算モジュール515の出力534は、第1混合器520にも供給される。混合器520の出力は、回路522への入力として供給される。回路522は、フィルタ524(LPF3)と、可変利得モジュール514を制御するための制御回路526とを備える。
【0055】
以下、回路500の動作の詳細な数学的解析について説明する。その前に、動作について次のように要約する。第1位相発生器512は、減衰信号532の位相を設定するように配置され、可変利得モジュール514は、減衰信号532の振幅を設定するように配置される。制御回路504は、減衰信号が第2電気信号成分530を打ち消し、あるいは少なくとも実質的に打ち消すために配置される。こうして第1位相発生器512は、第2電気信号530の位相と等しいか、実質的に等しくなるように減衰信号の位相を設定する。これは、図5に示しており、第1位相発生器512の出力は、sin(ωt+φn)の形式である。
【0056】
減衰信号532の振幅を設定(調整)するには、可変利得モジュール514は、振幅を第2電気信号530と等しいか、実質的に等しくなるように設定する。
【0057】
第2電気信号530の減衰は、第1プロセッサ502の出力528,530を加算モジュール515に供給することによって行われ、減衰信号532は出力528,530から引き算される。減衰信号532が不要信号530と同じか、実質的に同じである場合、不要信号530は、加算モジュール515の出力からキャンセルされる。
【0058】
制御回路504は、可変利得モジュール514の制御のために、加算モジュール515の出力534を混合器520にフィートバックする。第2位相発生器518(位相遅延2)の出力も混合器520にフィートバックされる。混合器520の出力は、可変利得モジュール514を制御する第1混合信号である。これは、フィルタ524および制御回路526に供給される。
【0059】
第2位相発生器518は、第1電気信号528の位相と等しいか、実質的に等しい位相を持つように、その出力信号538を設定する。即ち、位相は、サンプル509から第1プロセッサ502で受けた必要信号の位相に対して実質的に設定される。
【0060】
代替として、説明したコンポーネントの全ては、蛍光サンプル509を励起するための波長可変(tuneable)変調光源506と、蛍光サンプル509および基板510からの光信号成分を受光するための受光器502と、第1位相遅延発生器512と、可変利得モジュール514と、第2位相遅延発生器518と、可変利得モジュール514のための制御回路522とを備えた単一の装置500に設けてもよい。
【0061】
回路500の動作の数学的解析を説明する。最初に、光源506起動508の周波数ωtは、サンプル509によって発生する測定対象の信号528ysとマイクロ流体カード510によって発生する不要信号ynとの間の位相差が存在するように調整される。
【0062】
加算器515の後の信号534ysumは、下記のように、サンプル509によって発生する信号528ys、マイクロ流体システム510によって発生する不要信号yn、および生成された減衰信号532−Avsin(ωt+φn)で構成される。
【0063】
【数3】
【0064】
第2位相発生器518の出力q2(t)538は次のようになる。
【0065】
【数4】
【0066】
第1混合器520において、式(2)で定義される信号534と式(3)で定義される信号538とを混合すると、下記の式で定義される第1混合信号540が得られる。
【0067】
【数5】
【0068】
こうして第1混合信号540は、式(4)においてDC成分とAC成分を含むことが判る。AC成分がローパスフィルタ524(LPF3)を用いてフィルタ除去されると仮定すると、下記のように誤差信号VeであるDC成分だけが残る。
【0069】
【数6】
【0070】
誤差信号Veは、制御回路526に供給されて、利得モジュール514の利得Avを調整し、生成された信号512の振幅を制御し、不要な基板蛍光信号530ynを打ち消す。制御回路526は、誤差信号を可変利得増幅器514に割り当てる標準の制御回路である。これは、下記の場合に達成される。
【0071】
【数7】
【0072】
式(2)を用いて、加算モジュール515の出力534ysum=ysとなる。
【0073】
必要なサンプル蛍光信号528の振幅536Asは、振幅検出器536による出力である。
【0074】
このテクニックは、不要な基板蛍光信号530ynから第1プロセッサ502(受光器1)の出力が下記で与えられる場合にも適用可能である。
【0075】
【数8】
【0076】
信号530ynの係数αkおよび位相φk(k=2...∞)は、未知とすることができる。それは、式(6)での信号530ynの成分との混合(3)が、下記のようになるからである。
【0077】
【数9】
【0078】
式(7)で得られた信号およびA0cos(ωt+φs)は、同じローパスフィルタ524(LPF3)を用いてフィルタ除去できる。従って、制御回路536への誤差信号は、式(5)のVeで与えられるものと同じである。よって、加算器515の出力は、バンドパスフィルタがDC成分A0およびVe=0の高次の高調波(k≧2)を除去した後、必要なサンプル蛍光信号528ysになる。必要なサンプル蛍光信号528ysの振幅Asは、バンドパスフィルタ(図5では不図示)の後、振幅検出器516を用いて測定できる。
【0079】
回路500の性能評価は、実施した干渉打ち消しテクニックは、変調周波数3MHzに対応した位相差1.08度について、必要なサンプル蛍光信号を復元できることを示す。こうしてLEDを用いた低コストの実用化が可能になる。これは、約10MHzの最大変調周波数を有する変調範囲内にある所望の変調周波数であるからである。
【0080】
変調周波数を3MHzに設定すると、これは位相差1.08度を与える。必要なサンプル蛍光信号528の振幅は、As=0.4Vであり、不要な基板蛍光信号530は、An=0.8Vである。図6は、必要なサンプル蛍光信号528が、全体として損失なしで復元できることを示しており、これにより知られたテクニックより著しい改善を提供している。
【0081】
こうしてこのテクニックの重要な利点は、マイクロ流体チップ内にある測定対象の検体からの極めて弱い蛍光信号を、マイクロ流体基板の蛍光バックグラウンドに起因した、かなり大きな不要な蛍光信号と区別できる点である。これは、基板信号と検体信号との間の位相差が90°よりかなり小さい低い変調周波数であっても達成可能である。従って、このテクニックにより、高い蛍光特性を持つ材料からなるマイクロ流体チップ内での極めて低い検体濃度の検出が可能になる。
【0082】
このこのテクニックにより、マイクロ流体基板の蛍光バックグラウンドに起因したノイズ信号の除去が可能であるため、高いバックグラウンド蛍光のポリマー材料がマイクロ流体基板として使用できる。ポリマーシートをマイクロ流体材料として利用することは、低コスト、製造の容易さ、堅牢性など多くの利益を提供する。ポリマーシートは、マイクロ流体基板として広く用いられているような光学等級ガラスやシリカウエハより安価になる傾向がある。従って、マイクロ流体チップのコストは著しく低減できるため、ポイントオブケア(point-of-care)免疫測定システムにおいて消費可能かつ廃棄可能なカートリッジとして取り扱うことが可能になる。ポリマーマイクロ流体チップは頑丈であるため、未熟な研究所アシスタントにも適している。
【0083】
使用の前に、図5の回路は最初に較正してもよい。図7を参照して、較正テクニックを回路700を参照して説明する。
【0084】
回路700は、第1位相発生器512を較正するための第1較正回路702と、第2位相発生器518を較正するための第2較正回路704とを備える。第1較正回路702は、基板510からの第2光信号成分から由来する第3電気信号724を生成するための第2プロセッサ706(受光器2)を備える。装置700は、第1光信号成分から由来する成分を含む第3電気信号なしで第3電気信号724を生成するように配置される。後述するように、これは、マイクロ流体カードからサンプルを除去し、マイクロ流体カードを光源506からの光に曝すことによって行われる。
【0085】
第1較正回路702は、第1位相発生器512からの出力信号726の位相をシフトさせる直交(quadrature)位相シフタ708をさらに備える。直交位相シフタ708の出力は、第3電気信号724と混合して、第2混合信号730を生成するための第2混合器710に供給されるシフトした信号728である。
【0086】
第2混合信号730は、第1較正フィルタ712(LPF4)への入力として供給される。この動作の数学的解析は後述する。第1較正フィルタ712の出力信号732は、第1較正回路の制御入力を提供する制御モジュール714に制御入力としてフィードバックされる。
【0087】
装置700の第2較正回路704は、第2位相発生器518を較正するためのものである。第2較正回路704は、基板510からの第1光信号成分から由来する第4電気信号734を生成する第3プロセッサ716(受光器3)を備える。第1プロセッサ716は、第2光信号成分から由来する成分を含む第4電気信号734なしで第4電気信号を生成する。これは、基板510からのバックグラウンド/ノイズ光の無い、サンプル509からの光を第3プロセッサ716で受けることによって行われる。
【0088】
第4電気信号734は、第2位相遅延発生器518の出力736と混合するための第3混合器718に供給される。第3混合器718の出力738は、第2較正フィルタ720(LPF5)に供給される第3混合信号であり、その出力740は、第2較正回路704の制御入力として、ステージ722にフィードバックされる。この数学的解析は後述する。
【0089】
主回路500は、較正ステージが位相発生器512,518を調整するために、全体システムから最初は分離している。これは、第1位相発生器512をφnに調整することを要し、ここで、φnは不要な基板蛍光信号530の位相であり、サンプル509無しのマイクロ流体カード510が較正システム700に挿入され、第1位相発生器512をφnに調整する。
【0090】
同時に、第2位相発生器518は、必要な零化群(annihilator)信号cos(ωt+φs)538を発生するように調整される。ここで、φsは、必要なサンプル蛍光信号528であり、マイクロ流体カード510無しのサンプルが較正システム700に挿入され、第2位相発生器518を調整して、cos(ωt+φs)を発生する。
【0091】
不要な第2信号530の位相と等しい(またはほぼ等しい)減衰信号の位相を設定する第1位相発生器512の調整について説明する。
第2プロセッサ706(受光器2)後の信号724ync(t)は次のようになる。
【0092】
【数10】
【0093】
第1位相発生器512の発生信号726y1g(t)は次のようになる。
【0094】
【数11】
【0095】
直交位相シフタ708後のシフトした信号q1c(t)は、下記の式(10)で与えられることになる。
【0096】
【数12】
【0097】
第2混合器710での信号724(式(8))と信号728(式(10))の混合は、下記の式(11)で与えられる第2混合信号730をもたらす。
【0098】
【数13】
【0099】
式(11)においてDC成分およびAC成分が存在することが判る。AC成分が第1較正フィルタ712(例えば、ローパスフィルタLPF4)を用いてフィルタ除去されるとすると、誤差信号VenであるDC成分だけが残り、信号732が下記の式(12)で与えられる。
【0100】
【数14】
【0101】
誤差信号732Venは、制御回路714に供給されて、Ven=0かつ第1位相発生器512がφnに調整されるまで、第1位相発生器512を調整する。ここで、φnは不要な基板蛍光信号530の位相である。
【0102】
必要なサンプル蛍光信号528の位相と等しい(またはほぼ等しい)ように設定するための第2位相発生器518の調整について説明する。
【0103】
第3プロセッサ716(受光器3)後の信号734ysc(t)は次のようになる。
【0104】
【数15】
【0105】
第2位相発生器518の発生信号736y2g(t)は次のようになる。
【0106】
【数16】
【0107】
第3混合器718での信号734(式(13))と信号736(式(14))の混合は、下記の式(11)で与えられる第3混合信号738をもたらす。
【0108】
【数17】
【0109】
式(15)においてDC成分およびAC成分が存在することが判る。AC成分が第2較正フィルタ720(例えば、ローパスフィルタLPF5)を用いてフィルタ除去されるとすると、誤差信号VesであるDC成分だけが残り、信号740が下記の式(16)で与えられる。
【0110】
【数18】
【0111】
誤差信号Vesは、制御回路722に供給されて、Ves=0かつ第2位相発生器522が必要な零化群(annihilator)信号538cos(ωt+φs)538を発生するように調整されるまで、第2位相発生器522を調整する。ここで、φsは必要なサンプル蛍光信号528の位相である。
【0112】
このテクニックは、第1位相発生器512を基本位相φnに調整するためにも使用できる。ただし、第2プロセッサ706(受光器2)の出力724ygn(t)は、下記の式(17)で与えられる。
【0113】
【数19】
【0114】
信号724ygn(t)の係数αkおよび位相φk(k=2,…,∞)は、未知にできる。その理由は、式(17)のygn(t)成分との混合によって下記の式(18)となるからである。
【0115】
【数20】
【0116】
式(18)で得られた信号およびA0cos(ωt+φn−Δφn)は、同じ較正フィルタ712(LPF4)を用いてフィルタ除去できる。従って、第1位相発生器512は、回路714を用いて信号ygn(t)の基本位相φnに調整できる。
【0117】
同様に、第3プロセッサ716(受光器3)の出力734 ygs(t)は、下記の式(19)で与えられる。
【0118】
【数21】
【0119】
信号734ygs(t)の係数αkおよび位相φk(k=2,…,∞)は、未知にできる。第2位相発生器522が必要な零化群(annihilator)信号736 cos(ωt+φs)を発生するように調整できることになる。ここで、φsは、制御回路722を用いた信号ygs(t)の基本位相である。
【0120】
Anc=0.8VおよびAsc=0.4Vの場合、図8は電気信号724,726,734,736について電圧−時間特性を示し、較正回路が第1位相発生器512をφnに調整でき、第2位相発生器522が必要な零化群(annihilator)信号538 cos(ωt+φs)を発生するように調整できることを示す。両方の較正ループについて安定な状態での誤差信号はゼロだからである。
【0121】
前述の例についての網羅的でない幾つかの変形について説明する。
【0122】
図9は、追加の2つの位相ロックループおよび直交(quadrature)位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムのアーキテクチャを示す。このシステムアーキテクチャ900は、次のような10個の主要なブロックを備える。波長可変(tuneable)変調光源システム[I]、位相遅延発生器1[II]、位相ロックループ回路1[III]、可変利得Av[IV]、サンプル(検体およびマイクロ流体カード)[V]、受光器1[VI]、制御回路[VII]、位相遅延発生器2[VIII]、位相ロックループ回路2[IX]、および直交位相シフタ[X]。
【0123】
図9の回路の較正は、図10のアーキテクチャ1000を参照して説明する。位相遅延発生器の較正は、追加の7個のブロック、即ち、マイクロ流体カード[XI]、受光器2[XII]、直交位相シフタ[XIII]、較正回路1[XIV]、サンプル[XV]、受光器3[XVI]、および較正回路2[XVII]を必要とする。
【0124】
図11は、追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、蛍光ノイズキャンセルシステムのための他の代替アーキテクチャを示す。これは、アーキテクチャ1100として示している。図11の回路1100は、図12の較正回路1200に従って較正される。
【0125】
蛍光サンプルを分析するためのさらに代替の回路1300を図13に示す。回路1300は、追加の直交位相シフタを使用する。図14は、図13の回路1300を較正するための回路アーキテクチャ1400を示す。
【0126】
追加の2つの位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムのレイアウトを図15に示す。この図と次の図において、誤差変数は、図5と図7で与えられた制御回路および較正回路2の誤差信号の合計である。誤差変数は、制御回路および較正回路2に供給される。較正回路2および制御回路は、制御ループと較正ループとの間の相互作用に起因して、設計がより難しくなるであろう。
【0127】
代替の較正回路1600を図16に示す。回路は、追加の位相ロックループを備えた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムである。
【0128】
図17は、追加の2つの代替の位相ロックループおよび直交位相シフタを用いた、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを提供する他の代替回路1700を示す。
【0129】
図18は、追加の代替の位相ロックループを用いた、他の較正回路1800のレイアウトを示す。
【0130】
図19は、直交位相シフタを用いたノイズキャンセルシステムのための他の回路1900を示す。
【0131】
図20は、変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する較正回路2000を示す。図21は、他の変更した蛍光ノイズキャンセルシステムを規定する代替回路2100を示す。
【0132】
本発明を例を用いて説明したが、添付の請求項の精神および範囲から逸脱することなく、実施例の詳細について種々の変更が可能であることは理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置であって、
サンプルからの第1光信号成分から由来する第1電気信号および、基板からの第2光信号成分から由来する第2電気信号を生成する第1プロセッサを備え、該装置は、第1および第2電気信号の位相間に位相差が存在するように第1および第2電気信号を生成するものであり、
第2電気信号を減衰させるための減衰信号を生成する制御回路を備える装置。
【請求項2】
制御回路は、第1位相発生器および可変利得モジュールを備え、
第1位相発生器は、減衰信号の位相を設定するように配置され、
可変利得モジュールは、減衰信号の振幅を設定するように配置され、
制御回路は、減衰信号が第2電気信号を打ち消し、あるいは実質的に打ち消すために配置される請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1位相発生器は、第2電気信号の位相と等しいか、実質的に等しくなるように減衰信号の位相を設定するように配置される請求項2記載の装置。
【請求項4】
可変利得モジュールは、第2電気信号の振幅と等しいか、実質的に等しくなるように減衰信号の振幅を設定するように配置される請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
制御回路は、加算モジュールを備え、加算モジュールは、第2電気信号から減衰信号を引き算することによって、第2電気信号を減衰させるように配置される請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
制御回路は、可変利得モジュールの制御のために、加算モジュールの出力をフィートバックするように配置される、請求項2〜4のいずれかに従属した場合の請求項5記載の装置。
【請求項7】
制御回路は、第2位相発生器を備え、第2位相発生器は、第1混合器によって加算モジュールの出力と混合され、可変利得モジュールの制御のための第1混合信号を生成するようにした出力信号を供給するように配置される請求項6記載の装置。
【請求項8】
第2位相発生器は、第1電気信号の位相と等しいか、実質的に等しい位相を持つように、その出力信号を設定するように配置される請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
装置は、第1位相発生器を較正するための第1較正回路を備え、
第1較正回路は、基板からの第2光信号成分から由来する第3電気信号を生成するための第2プロセッサを備え、
装置は、第1光信号成分から由来する成分を含む第3電気信号なしで第3電気信号を生成するように配置される請求項2〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
第1較正回路は、第1位相発生器の出力信号の位相をシフトさせてシフト信号を生成し、シフト信号は、第2混合器によって第3電気信号と混合されて第2混合信号を生成するようにした直交位相シフタと、
第2混合信号のフィルタを行う第1較正フィルタとを備え、
第1較正フィルタの出力は、第1較正回路の制御入力としてフィードバックされるようにした請求項9記載の装置。
【請求項11】
装置は、第2位相発生器を較正するための第2較正回路を備え、
第2較正回路は、基板からの第1光信号成分から由来する第4電気信号を生成する第3プロセッサを備え、
装置は、第3プロセッサが第2光信号成分から由来する成分を含む第4電気信号なしで第4電気信号を生成するように配置される請求項7〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
第2較正回路は、第4電気信号と第2位相発生器の出力を混合して、第3混合信号を生成するための第3混合器と、
第3混合信号のフィルタを行って、第2較正回路の制御入力としてフィードバックするようにした第2較正フィルタとを備える請求項11記載の装置。
【請求項13】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置であって、
蛍光サンプルを励起するための波長可変変調光源と、
蛍光サンプルおよび基板からの光信号成分を受けるための受光器と、
第1位相遅延発生器と、
可変利得モジュールと、
第2位相遅延発生器と、
可変利得モジュールのための制御回路とを備える装置。
【請求項14】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための方法であって、
サンプルからの第1光信号成分から由来する第1電気信号および、基板からの第2光信号成分から由来する第2電気信号を生成することと、
第1および第2電気信号の位相間に位相差が存在するように第1および第2電気信号を生成することと、
第2電気信号を減衰させるための減衰信号を生成することとを含む方法。
【請求項15】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための方法であって、
波長可変変調光源を調整して、蛍光サンプルを励起することと、
蛍光サンプルおよび基板からの光信号成分を受けて、個々の第1および第2電気信号を生成することと、
第1位相遅延発生器、可変利得モジュールおよび第2位相遅延発生器を制御して、第2電気信号を減衰させる減衰回路を生成することとを含む方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の装置を用いて、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析する方法。
【請求項1】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置であって、
サンプルからの第1光信号成分から由来する第1電気信号および、基板からの第2光信号成分から由来する第2電気信号を生成する第1プロセッサを備え、該装置は、第1および第2電気信号の位相間に位相差が存在するように第1および第2電気信号を生成するものであり、
第2電気信号を減衰させるための減衰信号を生成する制御回路を備える装置。
【請求項2】
制御回路は、第1位相発生器および可変利得モジュールを備え、
第1位相発生器は、減衰信号の位相を設定するように配置され、
可変利得モジュールは、減衰信号の振幅を設定するように配置され、
制御回路は、減衰信号が第2電気信号を打ち消し、あるいは実質的に打ち消すために配置される請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1位相発生器は、第2電気信号の位相と等しいか、実質的に等しくなるように減衰信号の位相を設定するように配置される請求項2記載の装置。
【請求項4】
可変利得モジュールは、第2電気信号の振幅と等しいか、実質的に等しくなるように減衰信号の振幅を設定するように配置される請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
制御回路は、加算モジュールを備え、加算モジュールは、第2電気信号から減衰信号を引き算することによって、第2電気信号を減衰させるように配置される請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
制御回路は、可変利得モジュールの制御のために、加算モジュールの出力をフィートバックするように配置される、請求項2〜4のいずれかに従属した場合の請求項5記載の装置。
【請求項7】
制御回路は、第2位相発生器を備え、第2位相発生器は、第1混合器によって加算モジュールの出力と混合され、可変利得モジュールの制御のための第1混合信号を生成するようにした出力信号を供給するように配置される請求項6記載の装置。
【請求項8】
第2位相発生器は、第1電気信号の位相と等しいか、実質的に等しい位相を持つように、その出力信号を設定するように配置される請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
装置は、第1位相発生器を較正するための第1較正回路を備え、
第1較正回路は、基板からの第2光信号成分から由来する第3電気信号を生成するための第2プロセッサを備え、
装置は、第1光信号成分から由来する成分を含む第3電気信号なしで第3電気信号を生成するように配置される請求項2〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
第1較正回路は、第1位相発生器の出力信号の位相をシフトさせてシフト信号を生成し、シフト信号は、第2混合器によって第3電気信号と混合されて第2混合信号を生成するようにした直交位相シフタと、
第2混合信号のフィルタを行う第1較正フィルタとを備え、
第1較正フィルタの出力は、第1較正回路の制御入力としてフィードバックされるようにした請求項9記載の装置。
【請求項11】
装置は、第2位相発生器を較正するための第2較正回路を備え、
第2較正回路は、基板からの第1光信号成分から由来する第4電気信号を生成する第3プロセッサを備え、
装置は、第3プロセッサが第2光信号成分から由来する成分を含む第4電気信号なしで第4電気信号を生成するように配置される請求項7〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
第2較正回路は、第4電気信号と第2位相発生器の出力を混合して、第3混合信号を生成するための第3混合器と、
第3混合信号のフィルタを行って、第2較正回路の制御入力としてフィードバックするようにした第2較正フィルタとを備える請求項11記載の装置。
【請求項13】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための装置であって、
蛍光サンプルを励起するための波長可変変調光源と、
蛍光サンプルおよび基板からの光信号成分を受けるための受光器と、
第1位相遅延発生器と、
可変利得モジュールと、
第2位相遅延発生器と、
可変利得モジュールのための制御回路とを備える装置。
【請求項14】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための方法であって、
サンプルからの第1光信号成分から由来する第1電気信号および、基板からの第2光信号成分から由来する第2電気信号を生成することと、
第1および第2電気信号の位相間に位相差が存在するように第1および第2電気信号を生成することと、
第2電気信号を減衰させるための減衰信号を生成することとを含む方法。
【請求項15】
基板上に置かれた蛍光サンプルを分析するための方法であって、
波長可変変調光源を調整して、蛍光サンプルを励起することと、
蛍光サンプルおよび基板からの光信号成分を受けて、個々の第1および第2電気信号を生成することと、
第1位相遅延発生器、可変利得モジュールおよび第2位相遅延発生器を制御して、第2電気信号を減衰させる減衰回路を生成することとを含む方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の装置を用いて、基板上に置かれた蛍光サンプルを分析する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−518394(P2010−518394A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549049(P2009−549049)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000042
【国際公開番号】WO2008/097199
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(504161939)ナンヤン・テクノロジカル・ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000042
【国際公開番号】WO2008/097199
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(504161939)ナンヤン・テクノロジカル・ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】
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