基板中間体、基板及び貫通ビア電極形成方法
【課題】貫通ビア電極を形成する際に処理温度が高くなく且つ低コストで、バリア層を均一に、且つ高い密着強度で製造する。
【解決手段】シリコン基板10の厚さ方向に形成された高アスペクト比の、貫通ビア電極形成用の孔12の内周面に、自己組織化単分子膜24を形成し、これに、金属ナノ粒子14を、高密度で吸着させて、この金属ナノ粒子14を触媒として、バリア層を無電解めっきにより形成し、バリア層の上にシード層を無電解めっきにより形成し、次に、貫通ビア電極材を電解めっきにより堆積して、孔12を埋めて、貫通ビア電極を形成する。
【解決手段】シリコン基板10の厚さ方向に形成された高アスペクト比の、貫通ビア電極形成用の孔12の内周面に、自己組織化単分子膜24を形成し、これに、金属ナノ粒子14を、高密度で吸着させて、この金属ナノ粒子14を触媒として、バリア層を無電解めっきにより形成し、バリア層の上にシード層を無電解めっきにより形成し、次に、貫通ビア電極材を電解めっきにより堆積して、孔12を埋めて、貫通ビア電極を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LSI多層基板の相互接続などに用いられる貫通ビア電極の形成方法及びこの形成方法によって形成された貫通ビア電極を有する基板、該基板完成前の中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI多層基板や3D−ICに使用される貫通ビア電極(TSV)が必要とされている。
【0003】
このようなTSVについて、基板に、その厚さ方向に形成された孔を、例えば抵抗率の低いCuからなるTSV−充填材により充填をすることが提案されている。
【0004】
このTSV−充填材による充填の前に、通常、充填材の基板側への拡散を防止するためのバリア層を孔の内周面に形成し、更に、このバリア層の上にTSV−充填材の充填を容易とするためのシード層を形成している。
【0005】
従来の、バリア層及びシード層を形成する方法としては、化学気相反応法(CVD)、物理的気相成長法(PVD)等があるが、スパッタリングを除いて、これらは高温且つ高コストプロセスである。
【0006】
一方、スパッタリングは、低コストでこれらの層を形成できる手段であるが、このスパッタリングが可能なのは、アスペクト比が3よりも小さい孔の場合であり、3よりも大きい孔では、シャドーイング効果によって充填することができないという問題点がある。
【0007】
また、近年、低温処理であること、均一めっき特性であること等により、拡散バリア形成の手段として無電解めっきが提案されていて、その金属種として例えばNi合金、またはCo合金がCuに対するバリア層の材料として提案されている。
【0008】
例えば特許文献1には、配線基板の孔部の内周面にイオンクラスタビームでPdナノ粒子を堆積して、これを無電解Cuめっきの触媒にする多層配線構造の製造方法が開示されているが、PVD法なので、Pdナノ粒子の堆積形状において、孔の側壁が薄く、基板の表面と底部分が厚くなって均一、且つ、高密度のナノ粒子を分布できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3819381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、アスペクト比が3〜15の孔内に均一に無電解バリア層を形成することができる貫通ビア電極形成方法、このような貫通ビア電極を備えた基板及びその形成過程における基板中間体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の結果、基板に形成された貫通ビア電極用の孔の内周面に無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を高密度で分布させ、この金属ナノ粒子を触媒として、金属膜を無電解めっきにより孔の内周面に堆積させることによって、孔の内周面に高い密着強度でバリア層を形成できることを見出した。
【0012】
即ち以下の本発明の実施例によって上記課題を解決するものである。
【0013】
(1)基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成され、貫通ビア電極となる貫通ビア電極材が充填される孔を有する基板中間体であって、前記孔の内周面に形成された自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜に吸着された、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子と、を有してなる基板中間体。
【0014】
(2)前記自己組織化単分子膜は、シランカップリング剤により形成されていることを特徴とする(1)に記載の基板中間体。
【0015】
(3)前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜が形成されていて、前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt及びAu粒子のうち1種類以上からなることを特徴とする(2)に記載の基板中間体。
【0016】
(4)前記金属ナノ粒子は、ポリビニルピロドリン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウム、クエン酸から選択された保護剤によりコーティングされていることを特徴とする(1)に記載の基板中間体。
【0017】
(5)前記金属ナノ粒子の、前記自己組織化単分子膜への付着数は、1000〜12000個/μm2、であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の基板中間体。
【0018】
(6)前記金属ナノ粒子の直径は1nm以上、40nm未満であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の基板中間体。
【0019】
(7)基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成された孔を充填している貫通ビア電極を有する基板であって、前記貫通ビア電極は、前記孔の内周面に吸着されたPd、Pt及びAuのうち1種類以上からなる金属ナノ粒子と、前記金属ナノ粒子を触媒として、無電解めっき処理により、前記孔の内周面に形成されたバリア層と、前記バリア層上に無触媒置換めっきにより堆積されたコンフォーマル金属シード層と、前記コンフォーマル金属シード層上に、前記孔を埋めるようにして堆積された貫通ビア電極材とを有してなり、前記バリア層は、前記孔の内周面への密着強度が、スタッドプルテストで14MPa以上であることを特徴とする基板。
【0020】
(8)前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のPd粒子からなることを特徴とする(7)に記載の基板。
【0021】
(9)前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のAu粒子からなることを特徴とする(7)に記載の基板。
【0022】
(10)前記バリア層の膜厚は、10nm以上、100nm未満であることを特徴とする(7)乃至(9)のいずれかに記載の基板。
【0023】
(11)前記バリア層は、Co−B、Ni−B、Co−W−B、Ni−W−B、Co−P、Ni−P、Co−W−P、Ni−W−P、その他の高融点材料、その合金のいずれかからなることを特徴とする(10)に記載の基板。
【0024】
(12)基板に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成されている孔の内周面にバリア層を形成し、このバリア層上にシード層を積層し、更に、このシード層上に、貫通ビア電極材を堆積して、前記孔を埋め込んで、貫通ビア電極を形成する貫通ビア電極形成方法であって、前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記自己組織化単分子膜上に、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を1000〜12000個/μm2の密度で吸着させる工程と、前記金属ナノ粒子を触媒として、前記孔の内周面に、無電解めっき処理により、前記バリア層となる金属膜を形成する工程と、このバリア層の金属膜上に、前記シード層となる金属を、無電解めっき処理により積層する工程と、前記貫通ビア電極材を、前記シード層上に、電解めっきにより、前記孔が充填されるまで堆積させる工程と、を有してなる貫通ビア電極形成方法。
【0025】
(13)前記孔の内周面に金属ナノ粒子を吸着させる工程は、前記自己組織化単分子膜を、前記触媒となる金属ナノ粒子コロイド溶液中に浸漬させることを特徴とする(12)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0026】
(14)前記自己組織化単分子膜を、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基またはクロロ基を末端に持つシランカップリング剤による、シランカップリング処理により形成することを特徴とする(13)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0027】
(15)前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜を形成することを特徴とする(14)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0028】
(16)前記バリア層の形成後にアニーリングをして、前記バリア層の前記基板への密着強度を強化する工程を有することを特徴とする(12)乃至(14)のいずれかに記載の貫通ビア電極形成方法。
【0029】
(17)前記アニーリングの温度は150℃以上300℃未満であることを特徴とする(16)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0030】
(18)前記シード層の無電解めっき処理に際して、抑制剤を加えることを特徴とする(12)乃至(17)のいずれかに記載の貫通ビア電極形成方法。
【0031】
(19)前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt、Auのうち1種類以上からなり、前記バリア層を形成する工程は、無電解Ni−Bめっき、無電解Co−Bめっき、無電解Co−W−Bめっき、無電解Ni−W−Bめっき、無電解Co−Pめっき、無電解Ni−Pめっき、無電解Co−W−Pめっき、無電解Ni−W−Pめっきのいずれかであり、還元剤としてジメチルアミノボランを用いていることを特徴とする(12)乃至(18)のいずれかに記載の貫通ビア電極形成方法。
【発明の効果】
【0032】
この発明では、バリア層の無電解めっきの際に触媒となる金属ナノ粒子が孔の内周面に均一、且つ、高密度で分布しているので、無電解めっきによって密着強度の高いバリア層を形成することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る貫通ビア電極形成方法より貫通ビア電極を形成する過程での、金属ナノ粒子の吸着状態を模式的に拡大して示す断面図
【図2】同形成過程におけるバリア層形成状態を模式的に拡大して示す断面図
【図3】同形成過程におけるシード層形成状態を模式的に拡大して示す断面図
【図4】同形成過程によって完成した貫通ビア電極の断面を模式的に拡大して示す断面図
【図5】貫通ビア電極用の孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成する過程におけるシランカップリング処理開始時の状態を模式的に拡大して示す断面図
【図6】自己組織化単分子膜を孔の内周面に形成した状態を模式的に拡大して示す断面図
【図7】自己組織化単分子膜に金属ナノ粒子を吸着した状態を模式的に拡大して示す断面図
【図8a】自己組織化単分子膜なしでSnPdナノ溶液中にシリコン基板を浸漬した後の、孔の表面に吸着されたSnPdナノ粒子の分布を示す走査電子顕微鏡像
【図8b】自己組織化単分子膜を用いてAuナノ粒子を吸着した状態を示す走査電子顕微鏡像
【図9a】無電解Co−Bめっきにより形成されたバリア層の断面における走査電子顕微鏡像
【図9b】同バリア層の孔上部の断面における走査電子顕微鏡像
【図9c】同孔の中間部の断面における走査電子顕微鏡像
【図9d】同バリア層の孔底面近傍の断面における走査電子顕微鏡像
【図10a】孔の内周に形成された無電解Cuめっきによるバリア層及びこの上に形成された無電解Co−Bシード層の断面の走査イオン顕微鏡像
【図10b】同断面の上部の拡大走査イオン顕微鏡像
【図11】完成した貫通ビア電極の断面における走査顕微鏡像
【図12】4種類のバリア層上のシード層の電気抵抗値とアニーリング温度の関係を示す線図
【図13】Co−W−Bバリア層の厚さとバリア層の密着強度との関係を示す線図
【図14】金属ナノ粒子の吸着密度と、バリア層の密着強度との関係を示す線図
【図15】自己組織化単分子膜の、濃度0.1WT%の金属ナノコロイド溶液への浸漬時間を3時間とした場合の金属ナノ粒子の吸着状態を示す走査顕微鏡像
【図16】Co−Bバリア層及びCo−W−Bバリア層の熱処理前後における密着強度を比較して示す線図
【図17】バリア層のアニーリング温度と密着強度との関係を示す線図
【図18】Co−W−Bバリア層の密着強度と、同バリア層のための金属触媒としての金属ナノ粒子の吸着密度との関係を示す線図
【発明を実施するための形態】
【0034】
貫通ビア電極形成方法に関する発明の実施形態は、図1に示されるように、シリコン基板10の厚さ方向に、アスペクト比3〜15の範囲で形成された貫通ビア電極形成用の孔12の内周面13(底面13A及び開口周囲部13Bを含む)に、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子14を高密度で吸着させて、図2に示されるように、貫通ビア電極材料のシリコン基板10への拡散を防止するためのバリア層16を金属ナノ粒子14を触媒として無電解めっきにより形成し、更に、図3に示されるように、バリア層16上にCuを無電解めっきにより堆積させてシード層(コンフォーマル金属シード層)18を形成し、そのシード層18上に、図4に示されるように、貫通ビア電極材20としての金属、例えばCuを電解めっきによって、孔12を充填するとともに、孔12の開口周囲まで連続した貫通ビア電極22を形成するものである。
【0035】
この発明においてシリコン基板10に、自己組織化単分子膜を形成した状態、及び、これに金属ナノ粒子を吸着した状態を基板中間体とする。
【0036】
上記金属ナノ粒子14の、孔12の内周面13に対する吸着は、図5、図6に示されるように、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)からなる、シランカップリング剤を用いて、シランカップリング処理を行なって、自己組織化単分子膜(SAM)24を形成し、図7に示されるように、自己組織化単分子膜24のアミノ基に、例えばPdナノ粒子からなる金属ナノ粒子14を吸着させるものである。
【0037】
図6に示される先端にアミノ基(NH2)が位置する孔内周面13に形成されたSAM24は、上記APTESに限定されるものではなく、アミノ基のほかに、メルカプト基、スルフィド基またはクロロ基を末端に持つシランカップリング剤により形成されるものであればよい。
【0038】
また、金属ナノ粒子14としては、バリア層16を無電解めっきによって形成する場合の触媒となれるものであればどのような金属でもよいが、特に、Au、PdあるいはPtの場合は、保護剤を選択することにより、高密度で吸着させることができた。
【0039】
また、金属ナノ粒子14は、例えばコロイド状として、この金属ナノコロイドに、SAM24が形成されたシリコン基板10の孔12を、浸漬することによって金属ナノ粒子14をSAM24に吸着させることができる。
【0040】
なお、基板はシリコン基板の他に、ガラス基板であってもよい。
【0041】
金属ナノ粒子14として、Pd、Pt、Auナノ粒子を用いる場合は、ポリビニルピロドリン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、テトラメチルアンモニウム(TMA)、クエン酸から選択された保護剤によりコーティングされたPt、Pd、Au粒子、あるいはPt、Pd、Auの合金ナノ粒子であってもよい。また、保護剤としてのPVP、PAA、PEI、TMA、クエン酸を含むPt、Pd、Auコロイド溶液、あるいはPt、Pd、Auの合金コロイド溶液であってもよい。保護剤として、PVP及びPEIを用いた場合、TMAよりも高密度で吸着させることができた。
【0042】
図8(a)にSAMなしでSnPd溶液中にシリコン基板10を浸漬した場合の孔12の表面における吸着されたSnPdナノ粒子の分布を示す走査電子顕微鏡(FE−SEM)像を示す。また図8(b)に、SAMを有するシリコン基板10をAuナノコロイド溶液中に浸漬した場合の、孔表面での吸着されたAuナノ粒子の分布を示す走査電子顕微鏡像を示す。
【0043】
これらから、SAMにより金属ナノ粒子を高密度で、且つ、均一に吸着できることが分かる。
【0044】
金属ナノ粒子14の、SAM24への付着数は、条件によって異なるが、1000〜12000個/μm2とすることができる。
【0045】
また、金属ナノ粒子の直径は1nm以上40nm未満とする。1nm未満の場合は、触媒作用が起こらず、めっき膜を形成しない。40nm以上とした場合は、触媒機能が大幅に低下してしまい、また、直径がバリア層16の膜厚よりも大きくなり、バリア層16を連続膜とすることができない。
【0046】
前記バリア層を構成する金属は、Co−B、Ni−B、Co−W−B、Ni−W−B、Co−P、Ni−P、Co−W−P、Ni−W−P、その他の高融点材料、その合金のいずれかから構成されていて、膜厚は10nm以上、100nm未満である。
【0047】
従って、バリア層を形成する無電解めっき工程は、無電解Co−Bめっき、無電解Ni−Bめっき、無電解Co−W−Bめっき、無電解Ni−W−Bめっき、無電解Co−Pめっき、無電解Ni−Pめっき、無電解Co−W−Pめっき、無電解Ni−W−Pめっき、他の高融点材料の金属の無電解めっきである。
【0048】
また、バリア層16の膜厚は10nm未満の場合は、バリア層16が堆積されていない箇所があり、また、膜厚が100nm以上の場合は、膜応力によりはがれやすくなるので、膜厚は10nm以上、100nm未満とする。なお、この範囲では、膜厚は薄いほど接着力が強かった。
【0049】
図9(a)〜図9(d)に、無電解Co−Bめっきにより形成されたバリア層の断面における走査電子顕微鏡像を示す。図9(a)は孔全体、図9(b)は孔上部、図9(c)は孔中間部、図9(d)は孔の底面近傍におけるそれぞれの断面を示す。
【0050】
図9(a)〜図9(d)からは、バリア層が孔全体に均一に、且つ、高度な厚みで形成されていることが分かる。
【0051】
シード層18は、Cuあるいは導電性の高い金属材料が用いられ、無電解めっきにより、置換めっきと同様の機構でバリア層16上に堆積される。
【0052】
無電解Cuめっきの場合、Ni合金あるいはCo合金膜上に、Cuを直接堆積させることができる。また、無電解Cuめっきの場合、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)及び塩素イオンを抑制剤として用いると、その抑制作用によって、高アスペクト比の貫通ビア電極22における無電解Cuコンフォーマル均一めっきを達成することができた。
【0053】
図10(a)及び図10(b)に、直径4μmの孔の内周に形成された無電解Cuめっきされたバリア層及びこのバリア層上に形成された無電解Co−Bシード層の断面の収束イオンビーム加工(FIB)像の走査イオン顕微鏡(SIM)像を示す。
【0054】
図10(a)は全体像、図10(b)は上部断面の拡大像をそれぞれ示す。これらの像からは無電解Cuコンフォーマル均一めっきが達成されたことが分かる。
【0055】
貫通ビア電極材20の電解めっきの場合は、電気めっき浴に、例えばSDDACC(スルホン化ジアリルジメチルアンモニウムクロリドコポリマー)及びSPSを抑制剤として添加するとよい。これは、孔12の開口部におけるピンチオフを防止するので、開口部よりも内側の部分にも均一な電解めっきをすることができる。
【0056】
図11に、オールウェットプロセスで完成したCu貫通ビア電極の断面におけるFIB−SIM像を示す。これから、孔12内部までボイドが発生することなく貫通ビア電極材24が充填されていることが分かる。
【実施例】
【0057】
実施例では、RIE(反応性イオンエッチング)のBosch法を用い、厚さ100μmのSi(シリコン)基板上に、深さ30μm、直径4μm、アスペクト比が7.5の孔を調整した。
【0058】
RIEの後、少なくとも、孔の内周面及びその周辺に熱酸化により酸化シリコン層(厚さ200nm)を形成した。
【0059】
次に、試料を60℃で硫酸過水(SPM)により洗浄した。これは、ピラニア洗浄であり、1時間行う。ピラニア溶液は、濃硫酸と過酸化水素水を4:1の割合で混合したものであり、混合によって反応熱が発生するが、更にヒータを用いて60℃に加熱して行う。主に有機物、金属の汚れの除去を目的としている。
【0060】
1時間浸漬(洗浄)した後、基板に付着したピラニア溶液を除去するために脱イオン水(純水)中で2段階洗浄を行う。
【0061】
次にアセトン超音波洗浄を10分間行って、基板上の有機系付着物を除去する。更に、エタノール超音波洗浄を5分間行って、基板上に残ったアセトンを除去する。
【0062】
次に、トルエンを溶媒としたAPTES溶液にサンプルを浸漬して、SAMを、孔の内周面に形成するが、このシランカップリング処理は60℃で1時間行う。シランカップリング溶液の成分は、APTESが0.4mlに対してトルエンを39.6mlとした。即ち、シランカップリング溶液におけるAPTESの比率は1%とした。
【0063】
1時間のシランカップリング処理後に、表面上に余分についたSAMを除去するために、エタノール超音波洗浄を10分間行った。
【0064】
次いで、110℃で1時間焼成(乾燥処理)した。これにより、サンプルは、Auナノ粒子、Pdナノ粒子、Ptナノ粒子の吸着ために活性化できた。
【0065】
この実施例では、平均金属粒子径4nmのPdPVPまたは5〜20nmのPdPVPナノ粒子が含まれるPdナノコロイド溶液中にサンプルを浸漬して、Pdナノ粒子をSAMのアミノ基に吸着させた。このPdナノコロイド溶液には、保護剤としてのPVPが含まれている。また、平均金属粒子径2nmのPtPVP、PtTMAおよび平均金属粒子径10nm、20nm、40nmのAuクエン酸、5〜10nmのAuPVP、5〜20nmのAuPEIも同様にSAMのアミノ基に吸着を確認した。更にPt/Pd=1/1で平均金属粒子径が2nmのPtPd合金PVPナノ粒子もSAMのアミノ基に吸着された。
【0066】
次に、4nmPdPVPを触媒として、無電解バリア層を形成した。
【0067】
用いた無電解Ni−BまたはCo−Bめっき浴には、0.17mol/Lの硫酸ニッケルまたは硫酸コバルトと、0.049mol/Lのジメチルアミノボラン(DMAB)と、0.63mol/Lのクエン酸を還元剤及び錯化剤として含ませた。
【0068】
また、無電解Co−W−Bまたは無電解Ni−W−Bめっき浴を用いた場合、タングステン(W)は、タングステン酸ナトリウムとして溶液に加えた。上記無電解めっき浴の温度は70℃であり、pHは9.5に調整した。
【0069】
無電解Co−W−Bめっき浴の条件は、次の表1のようにした。
【0070】
【表1】
【0071】
pH値を9.5にするために、更に純水及びPMAHを用いた。
【0072】
次に、バリア層上に無電解Cuを直接置換めっきにより堆積させて、シード層を形成した。詳細には、無電解Cuめっきは70℃、グリオキシル酸浴で行った。更に、抑制剤として、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)及び塩素イオンを加えた。
【0073】
最後に、Cu硫酸塩及び硫酸浴により、電解Cuめっきにより、貫通ビア電極材としてのCuで充填して貫通ビア電極を完成させた。上記電解Cuめっきの添加剤として、Cl−、ポリオキシエチレングリコール、スルホン化ジアリルジメチルアンモニウムクロリドコポリマー(SDDACC)及びSPSを加えた。この電解Cuめっきの詳細な条件については周知であるので説明は省略する。
【0074】
孔内周面における金属ナノ粒子の吸着状態は、図8(b)と同様であり、またバリア層の断面における走査電子顕微鏡像は、図9(a)〜(d)と同様であり、更に、バリア層と無電解Co−Bシード層の断面の走査イオン顕微鏡像は、図10(a)、(b)と同様であった。
【0075】
図9(a)〜(d)に示される無電解Co−Bバリア層の場合、これと対比して、次亜リン酸還元剤を用いた無電解Niめっきを検討したところ、次亜リン酸浴により堆積されたCo膜には、かなりの量のリンが含まれていた。リン原子はCu及びSi中に拡散することがあるのに対して、この実施例のように、還元剤としてDMABを用いたNi及びCo膜には、ホウ素がわずかに含まれているのみであり、また、Co−Bバリア層の厚みは、孔全体にわたってほぼ80nmであった。
【0076】
上記無電解バリア層の特性は、図12に示されるように、200〜400℃のアニール温度の関数としてNi−W−Bバリア層、Ni−Bバリア層、Co−Bバリア層及びCo−W−Bバリア層におけるCu膜抵抗率を測定することで評価できる。
【0077】
Ni−B及びNi−W−Bバリア層におけるCu膜の場合、その抵抗率は300℃超で増加し、この温度でのCu及びNi間の相互拡散が起きていることがわかる。
【0078】
一方、400℃まではCo−B及びCo−W−Bにおける抵抗率はほぼ一定に保たれた。Cuとバリア金属との間の相互拡散特性は、二元系状態図にて評価することができる(図示省略)。一般的に、この二元系状態図によれば、Cu−Niは合金を優位に形成するが、Cu−Coの場合、Cu−Co合金は形成が困難である。
【0079】
SiO2上の、無電解Ni−Bバリア層、無電解Co−Bバリア層、無電解Co−W−Bバリア層についての、密着強度をスタッドプルテストにより測定したところ、表2のようになった。
【0080】
【表2】
【0081】
表2においては、Si基板上の無電解バリア層サンプルをスタッドピンに150℃1時間で接着した。また、ここでは、300℃アニール有り無しの平均データが要約されている。
【0082】
スタッドプルテストによれば、全ての場合において、バリア層はSiO2とバリア層との界面において剥離し、剥離後のSiO2表面には、金属ナノ粒子は存在しなかった。
【0083】
また、Ni−B膜及びCo−B膜の密着強度は堆積時で20MPa程度であった。
【0084】
Co−W−B膜は、他の膜と比較してやや弱い強度を示したが、アニール後の各バリア層の密着強度は、表2に示されるように、アニール前の約2倍程度に上昇した。
【0085】
この密着強度の上昇は、アニールによる内部ストレスの緩和と、SAMと無電解バリア層の間の濡れ性の向上によるものと推定できる。
【0086】
また、バリア層の密着強度と、バリア層の厚さとの関係は、Co−W−Bバリア層の場合で、且つPdナノ粒子を自己組織化単分子膜に、平均粒子吸着密度が4400個/μm2で吸着させた場合、図13に示されるようになった。
【0087】
図13からは、バリア層の膜厚が薄いほど密着強度が大きいことが分かるが、膜厚が20nm未満では、貫通ビア電極材の拡散の抑制効果が少なくなっていき、また80nmを超えた場合は、剥がれやすくなっていくので、膜厚は10nm以上、100nm未満、好ましくは20nm以上、80nm以下とするとよい。
【0088】
次に、金属ナノ粒子の吸着密度(触媒密度)と、バリア層の密着強度との関係を測定したところ、図14に示されるようになった。
【0089】
ここで、金属ナノ粒子は4nmPdPVPとし、これに、テストピースを浸漬時間を15秒、1時間及び3時間とした場合のそれぞれについて密着強度を測定した。図14に示される結果から、浸漬時間が15秒以上であれば、浸漬時間と密着強度は比例関係にあることが分かる。
【0090】
図15に、Pdナノコロイド溶液の濃度及び浸漬時間を変えた場合の、吸着されたPdナノ粒子の平均粒子密度を示す。これによれば、Pdナノ粒子の濃度を高くして、且つ浸漬時間を多くすれば、均一に、且つ高密度で、金属ナノ粒子を吸着できることが分かる。
【0091】
図16に、無電解Co−Bめっき及び無電解Co−W−Bめっきによりそれぞれ形成されたバリア層の熱処理(アニーリング)の有り無しと、バリア層の密着強度との関係を比較して示す。いずれの場合でも、アニーリング処理がなされた後には、密着強度が2倍程度大きくなっていることがわかる。
【0092】
図17に、Co−W−Bバリア層の、アニーリング温度と密着強度との関係を示す。ここで、バリア層の膜厚は80nmである。図17からは、アニーリング温度200℃の場合に、密着強度が最大となることが分かる。なお、300℃以上で密着強度が落ちているが、これは結晶化によるものと推測される。
【0093】
図18に、厚さ60nmのCo−W−Bバリア層の場合の、金属ナノ粒子の吸着密度と、バリア層の密着強度との関係を示す。これによれば、4nmPdPVPナノ粒子の場合、吸着密度が大きければ、密着強度が大きくなることが分かる。また、10nmAuナノ粒子の場合、14.1MPaの点が、Pdナノ粒子の24.9MPaと40.1MPaの点を通る直線よりも下側にあるので、Pdナノ粒子と比較して、触媒密度が小さくても、ある程度の密着強度を確保できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、三次元LSI等に用いられる基板及び貫通電極ビアの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10…シリコン基板
12…孔
13…内周面
14…金属ナノ粒子
16…バリア層
18…シード層
20…貫通ビア電極材
22…貫通ビア電極
24…自己組織化単分子膜
【技術分野】
【0001】
この発明は、LSI多層基板の相互接続などに用いられる貫通ビア電極の形成方法及びこの形成方法によって形成された貫通ビア電極を有する基板、該基板完成前の中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI多層基板や3D−ICに使用される貫通ビア電極(TSV)が必要とされている。
【0003】
このようなTSVについて、基板に、その厚さ方向に形成された孔を、例えば抵抗率の低いCuからなるTSV−充填材により充填をすることが提案されている。
【0004】
このTSV−充填材による充填の前に、通常、充填材の基板側への拡散を防止するためのバリア層を孔の内周面に形成し、更に、このバリア層の上にTSV−充填材の充填を容易とするためのシード層を形成している。
【0005】
従来の、バリア層及びシード層を形成する方法としては、化学気相反応法(CVD)、物理的気相成長法(PVD)等があるが、スパッタリングを除いて、これらは高温且つ高コストプロセスである。
【0006】
一方、スパッタリングは、低コストでこれらの層を形成できる手段であるが、このスパッタリングが可能なのは、アスペクト比が3よりも小さい孔の場合であり、3よりも大きい孔では、シャドーイング効果によって充填することができないという問題点がある。
【0007】
また、近年、低温処理であること、均一めっき特性であること等により、拡散バリア形成の手段として無電解めっきが提案されていて、その金属種として例えばNi合金、またはCo合金がCuに対するバリア層の材料として提案されている。
【0008】
例えば特許文献1には、配線基板の孔部の内周面にイオンクラスタビームでPdナノ粒子を堆積して、これを無電解Cuめっきの触媒にする多層配線構造の製造方法が開示されているが、PVD法なので、Pdナノ粒子の堆積形状において、孔の側壁が薄く、基板の表面と底部分が厚くなって均一、且つ、高密度のナノ粒子を分布できないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3819381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、アスペクト比が3〜15の孔内に均一に無電解バリア層を形成することができる貫通ビア電極形成方法、このような貫通ビア電極を備えた基板及びその形成過程における基板中間体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の結果、基板に形成された貫通ビア電極用の孔の内周面に無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を高密度で分布させ、この金属ナノ粒子を触媒として、金属膜を無電解めっきにより孔の内周面に堆積させることによって、孔の内周面に高い密着強度でバリア層を形成できることを見出した。
【0012】
即ち以下の本発明の実施例によって上記課題を解決するものである。
【0013】
(1)基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成され、貫通ビア電極となる貫通ビア電極材が充填される孔を有する基板中間体であって、前記孔の内周面に形成された自己組織化単分子膜と、この自己組織化単分子膜に吸着された、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子と、を有してなる基板中間体。
【0014】
(2)前記自己組織化単分子膜は、シランカップリング剤により形成されていることを特徴とする(1)に記載の基板中間体。
【0015】
(3)前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜が形成されていて、前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt及びAu粒子のうち1種類以上からなることを特徴とする(2)に記載の基板中間体。
【0016】
(4)前記金属ナノ粒子は、ポリビニルピロドリン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウム、クエン酸から選択された保護剤によりコーティングされていることを特徴とする(1)に記載の基板中間体。
【0017】
(5)前記金属ナノ粒子の、前記自己組織化単分子膜への付着数は、1000〜12000個/μm2、であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の基板中間体。
【0018】
(6)前記金属ナノ粒子の直径は1nm以上、40nm未満であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の基板中間体。
【0019】
(7)基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成された孔を充填している貫通ビア電極を有する基板であって、前記貫通ビア電極は、前記孔の内周面に吸着されたPd、Pt及びAuのうち1種類以上からなる金属ナノ粒子と、前記金属ナノ粒子を触媒として、無電解めっき処理により、前記孔の内周面に形成されたバリア層と、前記バリア層上に無触媒置換めっきにより堆積されたコンフォーマル金属シード層と、前記コンフォーマル金属シード層上に、前記孔を埋めるようにして堆積された貫通ビア電極材とを有してなり、前記バリア層は、前記孔の内周面への密着強度が、スタッドプルテストで14MPa以上であることを特徴とする基板。
【0020】
(8)前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のPd粒子からなることを特徴とする(7)に記載の基板。
【0021】
(9)前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のAu粒子からなることを特徴とする(7)に記載の基板。
【0022】
(10)前記バリア層の膜厚は、10nm以上、100nm未満であることを特徴とする(7)乃至(9)のいずれかに記載の基板。
【0023】
(11)前記バリア層は、Co−B、Ni−B、Co−W−B、Ni−W−B、Co−P、Ni−P、Co−W−P、Ni−W−P、その他の高融点材料、その合金のいずれかからなることを特徴とする(10)に記載の基板。
【0024】
(12)基板に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成されている孔の内周面にバリア層を形成し、このバリア層上にシード層を積層し、更に、このシード層上に、貫通ビア電極材を堆積して、前記孔を埋め込んで、貫通ビア電極を形成する貫通ビア電極形成方法であって、前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記自己組織化単分子膜上に、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を1000〜12000個/μm2の密度で吸着させる工程と、前記金属ナノ粒子を触媒として、前記孔の内周面に、無電解めっき処理により、前記バリア層となる金属膜を形成する工程と、このバリア層の金属膜上に、前記シード層となる金属を、無電解めっき処理により積層する工程と、前記貫通ビア電極材を、前記シード層上に、電解めっきにより、前記孔が充填されるまで堆積させる工程と、を有してなる貫通ビア電極形成方法。
【0025】
(13)前記孔の内周面に金属ナノ粒子を吸着させる工程は、前記自己組織化単分子膜を、前記触媒となる金属ナノ粒子コロイド溶液中に浸漬させることを特徴とする(12)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0026】
(14)前記自己組織化単分子膜を、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基またはクロロ基を末端に持つシランカップリング剤による、シランカップリング処理により形成することを特徴とする(13)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0027】
(15)前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜を形成することを特徴とする(14)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0028】
(16)前記バリア層の形成後にアニーリングをして、前記バリア層の前記基板への密着強度を強化する工程を有することを特徴とする(12)乃至(14)のいずれかに記載の貫通ビア電極形成方法。
【0029】
(17)前記アニーリングの温度は150℃以上300℃未満であることを特徴とする(16)に記載の貫通ビア電極形成方法。
【0030】
(18)前記シード層の無電解めっき処理に際して、抑制剤を加えることを特徴とする(12)乃至(17)のいずれかに記載の貫通ビア電極形成方法。
【0031】
(19)前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt、Auのうち1種類以上からなり、前記バリア層を形成する工程は、無電解Ni−Bめっき、無電解Co−Bめっき、無電解Co−W−Bめっき、無電解Ni−W−Bめっき、無電解Co−Pめっき、無電解Ni−Pめっき、無電解Co−W−Pめっき、無電解Ni−W−Pめっきのいずれかであり、還元剤としてジメチルアミノボランを用いていることを特徴とする(12)乃至(18)のいずれかに記載の貫通ビア電極形成方法。
【発明の効果】
【0032】
この発明では、バリア層の無電解めっきの際に触媒となる金属ナノ粒子が孔の内周面に均一、且つ、高密度で分布しているので、無電解めっきによって密着強度の高いバリア層を形成することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る貫通ビア電極形成方法より貫通ビア電極を形成する過程での、金属ナノ粒子の吸着状態を模式的に拡大して示す断面図
【図2】同形成過程におけるバリア層形成状態を模式的に拡大して示す断面図
【図3】同形成過程におけるシード層形成状態を模式的に拡大して示す断面図
【図4】同形成過程によって完成した貫通ビア電極の断面を模式的に拡大して示す断面図
【図5】貫通ビア電極用の孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成する過程におけるシランカップリング処理開始時の状態を模式的に拡大して示す断面図
【図6】自己組織化単分子膜を孔の内周面に形成した状態を模式的に拡大して示す断面図
【図7】自己組織化単分子膜に金属ナノ粒子を吸着した状態を模式的に拡大して示す断面図
【図8a】自己組織化単分子膜なしでSnPdナノ溶液中にシリコン基板を浸漬した後の、孔の表面に吸着されたSnPdナノ粒子の分布を示す走査電子顕微鏡像
【図8b】自己組織化単分子膜を用いてAuナノ粒子を吸着した状態を示す走査電子顕微鏡像
【図9a】無電解Co−Bめっきにより形成されたバリア層の断面における走査電子顕微鏡像
【図9b】同バリア層の孔上部の断面における走査電子顕微鏡像
【図9c】同孔の中間部の断面における走査電子顕微鏡像
【図9d】同バリア層の孔底面近傍の断面における走査電子顕微鏡像
【図10a】孔の内周に形成された無電解Cuめっきによるバリア層及びこの上に形成された無電解Co−Bシード層の断面の走査イオン顕微鏡像
【図10b】同断面の上部の拡大走査イオン顕微鏡像
【図11】完成した貫通ビア電極の断面における走査顕微鏡像
【図12】4種類のバリア層上のシード層の電気抵抗値とアニーリング温度の関係を示す線図
【図13】Co−W−Bバリア層の厚さとバリア層の密着強度との関係を示す線図
【図14】金属ナノ粒子の吸着密度と、バリア層の密着強度との関係を示す線図
【図15】自己組織化単分子膜の、濃度0.1WT%の金属ナノコロイド溶液への浸漬時間を3時間とした場合の金属ナノ粒子の吸着状態を示す走査顕微鏡像
【図16】Co−Bバリア層及びCo−W−Bバリア層の熱処理前後における密着強度を比較して示す線図
【図17】バリア層のアニーリング温度と密着強度との関係を示す線図
【図18】Co−W−Bバリア層の密着強度と、同バリア層のための金属触媒としての金属ナノ粒子の吸着密度との関係を示す線図
【発明を実施するための形態】
【0034】
貫通ビア電極形成方法に関する発明の実施形態は、図1に示されるように、シリコン基板10の厚さ方向に、アスペクト比3〜15の範囲で形成された貫通ビア電極形成用の孔12の内周面13(底面13A及び開口周囲部13Bを含む)に、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子14を高密度で吸着させて、図2に示されるように、貫通ビア電極材料のシリコン基板10への拡散を防止するためのバリア層16を金属ナノ粒子14を触媒として無電解めっきにより形成し、更に、図3に示されるように、バリア層16上にCuを無電解めっきにより堆積させてシード層(コンフォーマル金属シード層)18を形成し、そのシード層18上に、図4に示されるように、貫通ビア電極材20としての金属、例えばCuを電解めっきによって、孔12を充填するとともに、孔12の開口周囲まで連続した貫通ビア電極22を形成するものである。
【0035】
この発明においてシリコン基板10に、自己組織化単分子膜を形成した状態、及び、これに金属ナノ粒子を吸着した状態を基板中間体とする。
【0036】
上記金属ナノ粒子14の、孔12の内周面13に対する吸着は、図5、図6に示されるように、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)からなる、シランカップリング剤を用いて、シランカップリング処理を行なって、自己組織化単分子膜(SAM)24を形成し、図7に示されるように、自己組織化単分子膜24のアミノ基に、例えばPdナノ粒子からなる金属ナノ粒子14を吸着させるものである。
【0037】
図6に示される先端にアミノ基(NH2)が位置する孔内周面13に形成されたSAM24は、上記APTESに限定されるものではなく、アミノ基のほかに、メルカプト基、スルフィド基またはクロロ基を末端に持つシランカップリング剤により形成されるものであればよい。
【0038】
また、金属ナノ粒子14としては、バリア層16を無電解めっきによって形成する場合の触媒となれるものであればどのような金属でもよいが、特に、Au、PdあるいはPtの場合は、保護剤を選択することにより、高密度で吸着させることができた。
【0039】
また、金属ナノ粒子14は、例えばコロイド状として、この金属ナノコロイドに、SAM24が形成されたシリコン基板10の孔12を、浸漬することによって金属ナノ粒子14をSAM24に吸着させることができる。
【0040】
なお、基板はシリコン基板の他に、ガラス基板であってもよい。
【0041】
金属ナノ粒子14として、Pd、Pt、Auナノ粒子を用いる場合は、ポリビニルピロドリン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、テトラメチルアンモニウム(TMA)、クエン酸から選択された保護剤によりコーティングされたPt、Pd、Au粒子、あるいはPt、Pd、Auの合金ナノ粒子であってもよい。また、保護剤としてのPVP、PAA、PEI、TMA、クエン酸を含むPt、Pd、Auコロイド溶液、あるいはPt、Pd、Auの合金コロイド溶液であってもよい。保護剤として、PVP及びPEIを用いた場合、TMAよりも高密度で吸着させることができた。
【0042】
図8(a)にSAMなしでSnPd溶液中にシリコン基板10を浸漬した場合の孔12の表面における吸着されたSnPdナノ粒子の分布を示す走査電子顕微鏡(FE−SEM)像を示す。また図8(b)に、SAMを有するシリコン基板10をAuナノコロイド溶液中に浸漬した場合の、孔表面での吸着されたAuナノ粒子の分布を示す走査電子顕微鏡像を示す。
【0043】
これらから、SAMにより金属ナノ粒子を高密度で、且つ、均一に吸着できることが分かる。
【0044】
金属ナノ粒子14の、SAM24への付着数は、条件によって異なるが、1000〜12000個/μm2とすることができる。
【0045】
また、金属ナノ粒子の直径は1nm以上40nm未満とする。1nm未満の場合は、触媒作用が起こらず、めっき膜を形成しない。40nm以上とした場合は、触媒機能が大幅に低下してしまい、また、直径がバリア層16の膜厚よりも大きくなり、バリア層16を連続膜とすることができない。
【0046】
前記バリア層を構成する金属は、Co−B、Ni−B、Co−W−B、Ni−W−B、Co−P、Ni−P、Co−W−P、Ni−W−P、その他の高融点材料、その合金のいずれかから構成されていて、膜厚は10nm以上、100nm未満である。
【0047】
従って、バリア層を形成する無電解めっき工程は、無電解Co−Bめっき、無電解Ni−Bめっき、無電解Co−W−Bめっき、無電解Ni−W−Bめっき、無電解Co−Pめっき、無電解Ni−Pめっき、無電解Co−W−Pめっき、無電解Ni−W−Pめっき、他の高融点材料の金属の無電解めっきである。
【0048】
また、バリア層16の膜厚は10nm未満の場合は、バリア層16が堆積されていない箇所があり、また、膜厚が100nm以上の場合は、膜応力によりはがれやすくなるので、膜厚は10nm以上、100nm未満とする。なお、この範囲では、膜厚は薄いほど接着力が強かった。
【0049】
図9(a)〜図9(d)に、無電解Co−Bめっきにより形成されたバリア層の断面における走査電子顕微鏡像を示す。図9(a)は孔全体、図9(b)は孔上部、図9(c)は孔中間部、図9(d)は孔の底面近傍におけるそれぞれの断面を示す。
【0050】
図9(a)〜図9(d)からは、バリア層が孔全体に均一に、且つ、高度な厚みで形成されていることが分かる。
【0051】
シード層18は、Cuあるいは導電性の高い金属材料が用いられ、無電解めっきにより、置換めっきと同様の機構でバリア層16上に堆積される。
【0052】
無電解Cuめっきの場合、Ni合金あるいはCo合金膜上に、Cuを直接堆積させることができる。また、無電解Cuめっきの場合、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)及び塩素イオンを抑制剤として用いると、その抑制作用によって、高アスペクト比の貫通ビア電極22における無電解Cuコンフォーマル均一めっきを達成することができた。
【0053】
図10(a)及び図10(b)に、直径4μmの孔の内周に形成された無電解Cuめっきされたバリア層及びこのバリア層上に形成された無電解Co−Bシード層の断面の収束イオンビーム加工(FIB)像の走査イオン顕微鏡(SIM)像を示す。
【0054】
図10(a)は全体像、図10(b)は上部断面の拡大像をそれぞれ示す。これらの像からは無電解Cuコンフォーマル均一めっきが達成されたことが分かる。
【0055】
貫通ビア電極材20の電解めっきの場合は、電気めっき浴に、例えばSDDACC(スルホン化ジアリルジメチルアンモニウムクロリドコポリマー)及びSPSを抑制剤として添加するとよい。これは、孔12の開口部におけるピンチオフを防止するので、開口部よりも内側の部分にも均一な電解めっきをすることができる。
【0056】
図11に、オールウェットプロセスで完成したCu貫通ビア電極の断面におけるFIB−SIM像を示す。これから、孔12内部までボイドが発生することなく貫通ビア電極材24が充填されていることが分かる。
【実施例】
【0057】
実施例では、RIE(反応性イオンエッチング)のBosch法を用い、厚さ100μmのSi(シリコン)基板上に、深さ30μm、直径4μm、アスペクト比が7.5の孔を調整した。
【0058】
RIEの後、少なくとも、孔の内周面及びその周辺に熱酸化により酸化シリコン層(厚さ200nm)を形成した。
【0059】
次に、試料を60℃で硫酸過水(SPM)により洗浄した。これは、ピラニア洗浄であり、1時間行う。ピラニア溶液は、濃硫酸と過酸化水素水を4:1の割合で混合したものであり、混合によって反応熱が発生するが、更にヒータを用いて60℃に加熱して行う。主に有機物、金属の汚れの除去を目的としている。
【0060】
1時間浸漬(洗浄)した後、基板に付着したピラニア溶液を除去するために脱イオン水(純水)中で2段階洗浄を行う。
【0061】
次にアセトン超音波洗浄を10分間行って、基板上の有機系付着物を除去する。更に、エタノール超音波洗浄を5分間行って、基板上に残ったアセトンを除去する。
【0062】
次に、トルエンを溶媒としたAPTES溶液にサンプルを浸漬して、SAMを、孔の内周面に形成するが、このシランカップリング処理は60℃で1時間行う。シランカップリング溶液の成分は、APTESが0.4mlに対してトルエンを39.6mlとした。即ち、シランカップリング溶液におけるAPTESの比率は1%とした。
【0063】
1時間のシランカップリング処理後に、表面上に余分についたSAMを除去するために、エタノール超音波洗浄を10分間行った。
【0064】
次いで、110℃で1時間焼成(乾燥処理)した。これにより、サンプルは、Auナノ粒子、Pdナノ粒子、Ptナノ粒子の吸着ために活性化できた。
【0065】
この実施例では、平均金属粒子径4nmのPdPVPまたは5〜20nmのPdPVPナノ粒子が含まれるPdナノコロイド溶液中にサンプルを浸漬して、Pdナノ粒子をSAMのアミノ基に吸着させた。このPdナノコロイド溶液には、保護剤としてのPVPが含まれている。また、平均金属粒子径2nmのPtPVP、PtTMAおよび平均金属粒子径10nm、20nm、40nmのAuクエン酸、5〜10nmのAuPVP、5〜20nmのAuPEIも同様にSAMのアミノ基に吸着を確認した。更にPt/Pd=1/1で平均金属粒子径が2nmのPtPd合金PVPナノ粒子もSAMのアミノ基に吸着された。
【0066】
次に、4nmPdPVPを触媒として、無電解バリア層を形成した。
【0067】
用いた無電解Ni−BまたはCo−Bめっき浴には、0.17mol/Lの硫酸ニッケルまたは硫酸コバルトと、0.049mol/Lのジメチルアミノボラン(DMAB)と、0.63mol/Lのクエン酸を還元剤及び錯化剤として含ませた。
【0068】
また、無電解Co−W−Bまたは無電解Ni−W−Bめっき浴を用いた場合、タングステン(W)は、タングステン酸ナトリウムとして溶液に加えた。上記無電解めっき浴の温度は70℃であり、pHは9.5に調整した。
【0069】
無電解Co−W−Bめっき浴の条件は、次の表1のようにした。
【0070】
【表1】
【0071】
pH値を9.5にするために、更に純水及びPMAHを用いた。
【0072】
次に、バリア層上に無電解Cuを直接置換めっきにより堆積させて、シード層を形成した。詳細には、無電解Cuめっきは70℃、グリオキシル酸浴で行った。更に、抑制剤として、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)及び塩素イオンを加えた。
【0073】
最後に、Cu硫酸塩及び硫酸浴により、電解Cuめっきにより、貫通ビア電極材としてのCuで充填して貫通ビア電極を完成させた。上記電解Cuめっきの添加剤として、Cl−、ポリオキシエチレングリコール、スルホン化ジアリルジメチルアンモニウムクロリドコポリマー(SDDACC)及びSPSを加えた。この電解Cuめっきの詳細な条件については周知であるので説明は省略する。
【0074】
孔内周面における金属ナノ粒子の吸着状態は、図8(b)と同様であり、またバリア層の断面における走査電子顕微鏡像は、図9(a)〜(d)と同様であり、更に、バリア層と無電解Co−Bシード層の断面の走査イオン顕微鏡像は、図10(a)、(b)と同様であった。
【0075】
図9(a)〜(d)に示される無電解Co−Bバリア層の場合、これと対比して、次亜リン酸還元剤を用いた無電解Niめっきを検討したところ、次亜リン酸浴により堆積されたCo膜には、かなりの量のリンが含まれていた。リン原子はCu及びSi中に拡散することがあるのに対して、この実施例のように、還元剤としてDMABを用いたNi及びCo膜には、ホウ素がわずかに含まれているのみであり、また、Co−Bバリア層の厚みは、孔全体にわたってほぼ80nmであった。
【0076】
上記無電解バリア層の特性は、図12に示されるように、200〜400℃のアニール温度の関数としてNi−W−Bバリア層、Ni−Bバリア層、Co−Bバリア層及びCo−W−Bバリア層におけるCu膜抵抗率を測定することで評価できる。
【0077】
Ni−B及びNi−W−Bバリア層におけるCu膜の場合、その抵抗率は300℃超で増加し、この温度でのCu及びNi間の相互拡散が起きていることがわかる。
【0078】
一方、400℃まではCo−B及びCo−W−Bにおける抵抗率はほぼ一定に保たれた。Cuとバリア金属との間の相互拡散特性は、二元系状態図にて評価することができる(図示省略)。一般的に、この二元系状態図によれば、Cu−Niは合金を優位に形成するが、Cu−Coの場合、Cu−Co合金は形成が困難である。
【0079】
SiO2上の、無電解Ni−Bバリア層、無電解Co−Bバリア層、無電解Co−W−Bバリア層についての、密着強度をスタッドプルテストにより測定したところ、表2のようになった。
【0080】
【表2】
【0081】
表2においては、Si基板上の無電解バリア層サンプルをスタッドピンに150℃1時間で接着した。また、ここでは、300℃アニール有り無しの平均データが要約されている。
【0082】
スタッドプルテストによれば、全ての場合において、バリア層はSiO2とバリア層との界面において剥離し、剥離後のSiO2表面には、金属ナノ粒子は存在しなかった。
【0083】
また、Ni−B膜及びCo−B膜の密着強度は堆積時で20MPa程度であった。
【0084】
Co−W−B膜は、他の膜と比較してやや弱い強度を示したが、アニール後の各バリア層の密着強度は、表2に示されるように、アニール前の約2倍程度に上昇した。
【0085】
この密着強度の上昇は、アニールによる内部ストレスの緩和と、SAMと無電解バリア層の間の濡れ性の向上によるものと推定できる。
【0086】
また、バリア層の密着強度と、バリア層の厚さとの関係は、Co−W−Bバリア層の場合で、且つPdナノ粒子を自己組織化単分子膜に、平均粒子吸着密度が4400個/μm2で吸着させた場合、図13に示されるようになった。
【0087】
図13からは、バリア層の膜厚が薄いほど密着強度が大きいことが分かるが、膜厚が20nm未満では、貫通ビア電極材の拡散の抑制効果が少なくなっていき、また80nmを超えた場合は、剥がれやすくなっていくので、膜厚は10nm以上、100nm未満、好ましくは20nm以上、80nm以下とするとよい。
【0088】
次に、金属ナノ粒子の吸着密度(触媒密度)と、バリア層の密着強度との関係を測定したところ、図14に示されるようになった。
【0089】
ここで、金属ナノ粒子は4nmPdPVPとし、これに、テストピースを浸漬時間を15秒、1時間及び3時間とした場合のそれぞれについて密着強度を測定した。図14に示される結果から、浸漬時間が15秒以上であれば、浸漬時間と密着強度は比例関係にあることが分かる。
【0090】
図15に、Pdナノコロイド溶液の濃度及び浸漬時間を変えた場合の、吸着されたPdナノ粒子の平均粒子密度を示す。これによれば、Pdナノ粒子の濃度を高くして、且つ浸漬時間を多くすれば、均一に、且つ高密度で、金属ナノ粒子を吸着できることが分かる。
【0091】
図16に、無電解Co−Bめっき及び無電解Co−W−Bめっきによりそれぞれ形成されたバリア層の熱処理(アニーリング)の有り無しと、バリア層の密着強度との関係を比較して示す。いずれの場合でも、アニーリング処理がなされた後には、密着強度が2倍程度大きくなっていることがわかる。
【0092】
図17に、Co−W−Bバリア層の、アニーリング温度と密着強度との関係を示す。ここで、バリア層の膜厚は80nmである。図17からは、アニーリング温度200℃の場合に、密着強度が最大となることが分かる。なお、300℃以上で密着強度が落ちているが、これは結晶化によるものと推測される。
【0093】
図18に、厚さ60nmのCo−W−Bバリア層の場合の、金属ナノ粒子の吸着密度と、バリア層の密着強度との関係を示す。これによれば、4nmPdPVPナノ粒子の場合、吸着密度が大きければ、密着強度が大きくなることが分かる。また、10nmAuナノ粒子の場合、14.1MPaの点が、Pdナノ粒子の24.9MPaと40.1MPaの点を通る直線よりも下側にあるので、Pdナノ粒子と比較して、触媒密度が小さくても、ある程度の密着強度を確保できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、三次元LSI等に用いられる基板及び貫通電極ビアの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10…シリコン基板
12…孔
13…内周面
14…金属ナノ粒子
16…バリア層
18…シード層
20…貫通ビア電極材
22…貫通ビア電極
24…自己組織化単分子膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成され、貫通ビア電極となる貫通ビア電極材が充填される孔を有する基板中間体であって、
前記孔の内周面に形成された自己組織化単分子膜と、
この自己組織化単分子膜に吸着された、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子と、
を有してなる基板中間体。
【請求項2】
請求項1において、
前記自己組織化単分子膜は、シランカップリング剤により形成されていることを特徴とする基板中間体。
【請求項3】
請求項2において、
前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜が形成されていて、前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt及びAu粒子のうち1種類以上からなることを特徴とする基板中間体。
【請求項4】
請求項1において、
前記金属ナノ粒子は、ポリビニルピロドリン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウム、クエン酸から選択された保護剤によりコーティングされていることを特徴とする基板中間体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子の、前記自己組織化単分子膜への付着数は、1000〜12000個/μm2であることを特徴とする基板中間体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子の直径は1nm以上、40nm未満であることを特徴とする基板中間体。
【請求項7】
基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成された孔を充填している貫通ビア電極を有する基板であって、
前記貫通ビア電極は、
前記孔の内周面に吸着されたPd、Pt及びAuのうち1種類以上からなる金属ナノ粒子と、
前記金属ナノ粒子を触媒として、無電解めっき処理により、前記孔の内周面に形成されたバリア層と、
前記バリア層上に無触媒置換めっきにより堆積されたコンフォーマル金属シード層と、
前記コンフォーマル金属シード層上に、前記孔を埋めるようにして堆積された貫通ビア電極材とを有してなり、
前記バリア層は、前記孔の内周面への密着強度が、スタッドプルテストで14MPa以上であることを特徴とする基板。
【請求項8】
請求項7において、
前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のPd粒子からなることを特徴とする基板。
【請求項9】
請求項7において、
前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のAu粒子からなることを特徴とする基板。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかにおいて、
前記バリア層の膜厚は、10nm以上、100nm未満であることを特徴とする基板。
【請求項11】
請求項10において、
前記バリア層は、Co−B、Ni−B、Co−W−B、Ni−W−B、Co-P、Ni-P、Co-W-P、Ni-W-P、その他の高融点材料、その合金のいずれかからなることを特徴とする基板。
【請求項12】
基板に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成されている孔の内周面にバリア層を形成し、このバリア層上にシード層を積層し、更に、このシード層上に、貫通ビア電極材を堆積して、前記孔を埋め込んで、貫通ビア電極を形成する貫通ビア電極形成方法であって、
前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成する工程と、
前記自己組織化単分子膜上に、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を1000〜12000個/μm2の密度で吸着させる工程と、
前記金属ナノ粒子を触媒として、前記孔の内周面に、無電解めっき処理により、前記バリア層となる金属膜を形成する工程と、
このバリア層の金属膜上に、前記シード層となる金属を、無電解めっき処理により積層する工程と、
前記貫通ビア電極材を、前記シード層上に、電解めっきにより、前記孔が充填されるまで堆積させる工程と、
を有してなる貫通ビア電極形成方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記孔の内周面に金属ナノ粒子を吸着させる工程は、前記自己組織化単分子膜を、前記触媒となる金属ナノ粒子コロイド溶液中に浸漬させることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記自己組織化単分子膜を、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基またはクロロ基を末端に持つシランカップリング剤による、シランカップリング処理により形成することを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜を形成することを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項16】
請求項12乃至14のいずれかにおいて、
前記バリア層の形成後にアニーリングをして、前記バリア層の前記基板への密着強度を強化する工程を有することを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記アニーリングの温度は150℃以上300℃未満であることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれかにおいて、
前記シード層の無電解めっき処理に際して、抑制剤を加えることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項19】
請求項12乃至18のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt、Auのうち1種類以上からなり、
前記バリア層を形成する工程は、無電解Ni−Bめっき、無電解Co−Bめっき、無電解Co−W−Bめっき、無電解Ni−W−Bめっき、無電解Co−Pめっき、無電解Ni−Pめっき、無電解Co−W−Pめっき、無電解Ni−W−Pめっきのいずれかであり、還元剤としてジメチルアミノボランを用いていることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項1】
基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成され、貫通ビア電極となる貫通ビア電極材が充填される孔を有する基板中間体であって、
前記孔の内周面に形成された自己組織化単分子膜と、
この自己組織化単分子膜に吸着された、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子と、
を有してなる基板中間体。
【請求項2】
請求項1において、
前記自己組織化単分子膜は、シランカップリング剤により形成されていることを特徴とする基板中間体。
【請求項3】
請求項2において、
前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜が形成されていて、前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt及びAu粒子のうち1種類以上からなることを特徴とする基板中間体。
【請求項4】
請求項1において、
前記金属ナノ粒子は、ポリビニルピロドリン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウム、クエン酸から選択された保護剤によりコーティングされていることを特徴とする基板中間体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子の、前記自己組織化単分子膜への付着数は、1000〜12000個/μm2であることを特徴とする基板中間体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子の直径は1nm以上、40nm未満であることを特徴とする基板中間体。
【請求項7】
基板厚さ方向に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成された孔を充填している貫通ビア電極を有する基板であって、
前記貫通ビア電極は、
前記孔の内周面に吸着されたPd、Pt及びAuのうち1種類以上からなる金属ナノ粒子と、
前記金属ナノ粒子を触媒として、無電解めっき処理により、前記孔の内周面に形成されたバリア層と、
前記バリア層上に無触媒置換めっきにより堆積されたコンフォーマル金属シード層と、
前記コンフォーマル金属シード層上に、前記孔を埋めるようにして堆積された貫通ビア電極材とを有してなり、
前記バリア層は、前記孔の内周面への密着強度が、スタッドプルテストで14MPa以上であることを特徴とする基板。
【請求項8】
請求項7において、
前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のPd粒子からなることを特徴とする基板。
【請求項9】
請求項7において、
前記金属ナノ粒子は、直径が1nm以上、40nm未満のAu粒子からなることを特徴とする基板。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかにおいて、
前記バリア層の膜厚は、10nm以上、100nm未満であることを特徴とする基板。
【請求項11】
請求項10において、
前記バリア層は、Co−B、Ni−B、Co−W−B、Ni−W−B、Co-P、Ni-P、Co-W-P、Ni-W-P、その他の高融点材料、その合金のいずれかからなることを特徴とする基板。
【請求項12】
基板に、アスペクト比が3乃至15の範囲で形成されている孔の内周面にバリア層を形成し、このバリア層上にシード層を積層し、更に、このシード層上に、貫通ビア電極材を堆積して、前記孔を埋め込んで、貫通ビア電極を形成する貫通ビア電極形成方法であって、
前記孔の内周面に自己組織化単分子膜を形成する工程と、
前記自己組織化単分子膜上に、無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を1000〜12000個/μm2の密度で吸着させる工程と、
前記金属ナノ粒子を触媒として、前記孔の内周面に、無電解めっき処理により、前記バリア層となる金属膜を形成する工程と、
このバリア層の金属膜上に、前記シード層となる金属を、無電解めっき処理により積層する工程と、
前記貫通ビア電極材を、前記シード層上に、電解めっきにより、前記孔が充填されるまで堆積させる工程と、
を有してなる貫通ビア電極形成方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記孔の内周面に金属ナノ粒子を吸着させる工程は、前記自己組織化単分子膜を、前記触媒となる金属ナノ粒子コロイド溶液中に浸漬させることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記自己組織化単分子膜を、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基またはクロロ基を末端に持つシランカップリング剤による、シランカップリング処理により形成することを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、前記自己組織化単分子膜を形成することを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項16】
請求項12乃至14のいずれかにおいて、
前記バリア層の形成後にアニーリングをして、前記バリア層の前記基板への密着強度を強化する工程を有することを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記アニーリングの温度は150℃以上300℃未満であることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれかにおいて、
前記シード層の無電解めっき処理に際して、抑制剤を加えることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【請求項19】
請求項12乃至18のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子は、Pd、Pt、Auのうち1種類以上からなり、
前記バリア層を形成する工程は、無電解Ni−Bめっき、無電解Co−Bめっき、無電解Co−W−Bめっき、無電解Ni−W−Bめっき、無電解Co−Pめっき、無電解Ni−Pめっき、無電解Co−W−Pめっき、無電解Ni−W−Pめっきのいずれかであり、還元剤としてジメチルアミノボランを用いていることを特徴とする貫通ビア電極形成方法。
【図5】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図15】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図15】
【公開番号】特開2012−216722(P2012−216722A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82084(P2011−82084)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔刊行物等1〕研究集会名:米国電気電子学会 3Dシステム構築会議 主催者名 :米国電気電子学会 共催者名 :国立大学法人東北大学 開催日:平成22年11月16日 〔刊行物等2〕 発行者名 :社団法人応用物理学会 刊行物名 :2011年春季 第58回応用物理学関係連合講演会「講演予稿集」 発行年月日:平成23年3月9日
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔刊行物等1〕研究集会名:米国電気電子学会 3Dシステム構築会議 主催者名 :米国電気電子学会 共催者名 :国立大学法人東北大学 開催日:平成22年11月16日 〔刊行物等2〕 発行者名 :社団法人応用物理学会 刊行物名 :2011年春季 第58回応用物理学関係連合講演会「講演予稿集」 発行年月日:平成23年3月9日
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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