基板保持用枠体及びそれを用いた基板搬送方法
【課題】 基板1枚を載置する基板保持用枠体であって、その基板載置済みの基板保持用枠体を複数積み重ねた状態で、搬送時の衝撃や振動に対する割れや傷や汚れの発生を低減する基板保持用枠体及びそれを用いた基板搬送方法を提供する。
【解決手段】 枠部2の内周側に基板保持部材4を設け、その上面には基板端部制動領域5を有し、その下面には基板端部制動領域5の対応部分の形状を、その下の基板保持用枠体に載置された基板10の上面との間に隙間tを有するようなものとし、同じ下面には凸部6を有し、枠部の直線状の対向する二辺に設けられた二つの基板保持部材の凸部の間の長さxが基板の辺の長さcに揺動範囲の長さaを加えたものとする基板保持用枠体であり、その基板載置済みの基板保持用枠体を複数パレット上に積み重ねて一体として保管、搬送することに特徴がある。
【解決手段】 枠部2の内周側に基板保持部材4を設け、その上面には基板端部制動領域5を有し、その下面には基板端部制動領域5の対応部分の形状を、その下の基板保持用枠体に載置された基板10の上面との間に隙間tを有するようなものとし、同じ下面には凸部6を有し、枠部の直線状の対向する二辺に設けられた二つの基板保持部材の凸部の間の長さxが基板の辺の長さcに揺動範囲の長さaを加えたものとする基板保持用枠体であり、その基板載置済みの基板保持用枠体を複数パレット上に積み重ねて一体として保管、搬送することに特徴がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体と、この基板保持用枠体を複数積み重ねた状態で搬送または保管する基板搬送方法に関し、特に、ガラスやプラスチックなどの板状物や、平面ディスプレイパネル用各種部材や中間製品などの搬送、保管に適した基板保持用枠体及びそれを用いた基板搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイなどに用いられる薄型のガラス基板は、ディスプレイの大型化や多面付けの製造方法による量産化のために大サイズ化が進められてきた。一方、液晶ディスプレイパネルの製造工程は、最終製品に至るまで複数の工程に分けられている場合が多い。そのため、工程中の複数の基板(ガラス基板およびその中間加工品を含む)を一旦保管し次の工程に搬送する必要があり、その際に基板に割れや傷、汚染の発生がなくコンパクトに収納して搬送できる基板保持用枠体と基板搬送方法が求められている。
従来、このような場合には、通常、複数の基板を一つの箱に収納する方法がとられていたが(例えば、特許文献1)、大きな面積で薄い基板は撓みやすいので箱の中の隣接する基板同士が接触して破損する恐れがあった。また、上記の方法では、箱から基板を取り出すには治具などを挿入するための間隔をあける必要があるため、基板収納の密度が小さくなる問題があった。
このような問題を解決するために、一枚の基板を撓ませた状態でトレイまたは枠体に収納して、このトレイまたは枠体を複数積み重ねる方法が提供されている。このものは、ガラス基板の周縁下面を支持する支持枠が設けられ、該支持枠の下面に設けられた当接材が、前記ガラス基板の周端縁上面に当接保持する方法がとられている(特許文献2)が、基板に当接材が直接接触するため、振動により当接する部分に歪が生じて、基板に汚れや傷や割れが生じやすい問題があると考えられる。
また、特許文献3では、四角形状で剛性のある板状物を水平方向として、該板状物を、その上側に載せて保持するトレイで、且つ、該板状物を載せた状態で複数重ねて搬送あるいは保管に用いられる搬送用あるいは保管用のトレイが提供されている。このものは、枠部の内側領域において、板状物保持部の裏に備えられた板状物端部移動制限部材が板状物端部の上側に当接して該端部の上側への移動を制限する方法がとられているが、搬送時の振動による基板の面方向の揺動に対してはなんら制限がないため、基板が跳ねて板状物端部移動制限部材から外れ、傷や割れが生じる問題があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−295150号公報
【特許文献2】特開2006−168749号公報
【特許文献3】特開2008−155995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基板に直接押え板などを接触させて押さえるような方法を用いないで、搬送時の基板の面方向の揺動に対しても基板が跳ねることや割れや傷や汚れが発生することを低減する基板保持用枠体及びそれを用いた基板搬送方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の基板保持用枠体は、剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体であって、且つ、前記基板を載置した状態で複数積み重ねた状態で搬送または保管に用いられるものであって、枠部と、該枠部の内側周囲に突出する基板支持部と、該基板支持部に取り付けられた基板保持部材とからなり、前記枠部は、一対の対向する直線状の2辺と、中央部が鉛直方向下方側に湾曲した他の2辺とからなり、平面視上矩形状であり、前記枠部の辺に直交する方向の断面が矩形状であり鉛直方向に厚みを有するものであり、基板保持用枠体を複数重ねる際に鉛直方向上下の枠部の上面と下面が互いに面接触するように形成されている。
また、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面は、前記基板を載置する際に前記基板の最端部を位置合わせする領域であって、前記基板を搬送する際の前記基板の面方向の前記基板最端部の揺動範囲を含む領域である基板端部制動領域を有し、且つ、基板保持部材は、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記枠部の厚みより小さい厚みを有し、前記基板保持部材の鉛直方向下側の面は、前記枠部に近い最端部に、前記枠部の辺に沿って配設された凸部を有し、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないで隙間を有して前記基板を保持するような形状である。
また、前記基板保持部材は、前記基板保持用枠体に基板が載置される場合に、前記基板の湾曲している辺の長さをc、前記基板の湾曲している辺に沿った方向に前記基板が揺動したときの前記基板最端部の揺動範囲の長さをa、とすると、前記枠部の直線状の一辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記直線状の辺と対向する辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さxが、x=c+aであり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する前記基板保持部材の鉛直方向下側の面にある領域の前記凸部端面からの長さyが、少なくとも揺動範囲aを超えるように形成されてなるものである、以上の特徴を有するものである。
すなわち、本発明は、基板を直接押え板などにより接触させて押さえないで、基板の上面と接触しないで隙間を有するような形状とした基板保持部材により保持する基板保持用枠体であって、基板を載置する領域、すなわち枠部の直線状の対向する二辺に設けられた二つの基板保持部材の下面の凸部から凸部までの間の長さxを基板のサイズと同じサイズにするのではなく、基板最端部の揺動範囲の分だけ基板のサイズより大きめにすること、且つ、基板保持部材下面と基板の上面との隙間を有する領域の範囲を、基板の最端部の揺動範囲を超えるものとすることによって、搬送時の振動に対して基板最端部に歪が生ずることや基板保持部材から離脱して跳ねることなどを防ぎ、基板に割れや傷を低減する基板保持用枠体としたことに特徴があるものである。また、本発明において基板の最端部の揺動範囲は、基材を基板保持用枠体に載置して、その基板載置済みの基板保持用枠体をパレット上に積み重ねた状態で、実際の搬送状態又は振動試験機によって振動を加えた状態で測定された基板最端部の面方向の変位から求められるものであることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明においては、上記基板保持用枠体を用いる基板搬送方法であって、前記基板保持用枠体の前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に、前記基板の辺の長さがcの辺を前記基板保持用枠体の前記枠部の湾曲している辺に合うように、且つ、前記基板の最端部を前記基板端部制動領域に含まれるように位置合わせした後に、前記基板の周縁部を接触させて、前記基板を前記基板保持用枠体に載置し基板載置済み基板保持用枠体とすること、前記基板載置済み基板保持用枠体を、パレットの上に積み重ねし、パレット上に積み重ねられた前記基板載置済み基板保持用枠体の上に、同様にして得られた別の基板載置済み基板保持用枠体を、上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面が互いに面接触して重なるように、且つ、枠部の辺に直交する方向の断面において、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう隙間を有するように積み重ねること、この前記基板保持用枠体積み重ね工程を繰り返すことにより複数の基板載置済みの基板保持用枠体を積み重ねた基板保持用枠体集積体とした後、前記基板保持用枠体集積体を一体として移動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基板保持用枠体によれば、枠部と、該枠部の内側周囲に突出する基板支持部と、該基板支持部に取り付けられた基板保持部材とからなり、前記枠部は、一対の対向する直線状の2辺と、中央部が鉛直方向下方側に湾曲した他の2辺とからなり、平面視上矩形状であり、前記枠部は、前記枠部の辺に直交する方向の断面が矩形状であり鉛直方向に厚みを有するものであり、基板保持用枠体を複数重ねる際に鉛直方向上下の枠部の上面と下面が互いに面接触するように形成されており、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面は、前記基板を載置する際に前記基板の最端部を位置合わせする領域であって、前記基板を搬送する際の前記基板の面方向の前記基板最端部の揺動範囲を含む領域である基板端部制動領域を有し、且つ、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記枠部の厚みより小さい厚みを有し、前記基板保持部材の鉛直方向下側の面は、前記枠部に近い最端部に、前記枠部の辺に沿って配設された凸部を有し、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないで隙間を有して前記基板を保持するような形状であることによって、積み重ねられた基板保持用枠体に載置された基板への鉛直方向上下の振動や、基板が撓むことにより基板保持部材の上面で基板の面方向に移動が繰り返されて生ずる基板最端部の揺動に対して、基板端部制動領域上の隙間において振動及び揺動が制動され収束し、基板の跳ねや基板保持用部材からの離脱を低減し、割れ傷や汚れを生じることを防止する効果がある。
また、前記基板保持用枠体において、前記基板保持用枠体に載置される前記基板の一辺の長さをc、該辺と同一方向に前記基板が揺動した場合の前記基板端部の揺動範囲の長さをa、とするときに、前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記辺と対向する前記枠部の辺の基板保持部材に鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さxが、x=c+aであり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する前記基板保持部材の鉛直方向下側の面にある領域の前記凸部端面からの長さyが、少なくとも揺動範囲aを超えるように形成されてなることにより、前記基板最端部は、前記基板端部制動領域に対応する部分における所定の隙間の上下の面に接するばかりでなく、前記凸部端面にも接しながら揺動が制動されて、基板の割れや傷や汚れを防止する効果がある。
【0008】
また、本発明によれば、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であることにより、前記基板保持部材の鉛直方向上側の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の下面との間で基板端部制動領域に対応する領域において、前記基板保持部材の前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な間隙又は漸次大きくなる間隙を形成し、基板への鉛直方向上下の振動ばかりでなく前記基板への面方向の揺動が収束して制動され、前記基板保持用部材から基材の離脱を低減し、割れや傷や汚れを生じることを防止する効果がある。
【0009】
また、本発明によれば、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する領域を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで厚みが漸次薄くなる形状であることにより、前記基板保持部材の鉛直方向上側の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の下面との間で基板端部制動領域に対応する領域において、前記基板保持部材の前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な間隙又は漸次大きくなる間隙を形成し、更に前記基板端部制動領域に対応する領域を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで漸次大きくなる間隔形成し、基板への鉛直方向上下の振動ばかりでなく前記基板への面方向の揺動が収束して制動され、前記基板保持用部材から離脱するなどなく、割れや傷や汚れを生じることを防止する効果があり、更に前記基板端部制動領域に対応する部分を超えて領域においては、変形した基板が基板保持部材の先端に接触することによって生じる割れや傷や汚れを防止する効果がある。
【0010】
また、本発明によれば、前記枠部の直線状の2辺から突出する基板支持部と基板保持部材が、前記枠部の湾曲する辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜していることにより、基板保持用枠体を積み重ねた際に、基板の形状は、上下の基板保持部材の間隙に保持された基板周縁部から基板中央部にかけて、湾曲形状に沿った円滑な形状となり、基板保持部材の先端部近辺での屈曲などによる歪を低減することができる。
【0011】
また、本発明によれば、前記基板保持用枠体が前記基板支持部に複数の基板保持部材を取り付けてなるものであることにより、基板保持部材の加工を、枠部や基板支持部の加工とは別に行うことができるので、基板保持部材の厚みの精度や表面の平坦性を容易に実現することが可能となる。また、損傷したものを交換することが可能となる効果もある。また、基板保持部材の鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部からの位置を変えた基板保持部材と入れ替えることによって、凸部の前記枠部内側方向の端面から、対向する枠部の辺の基板保持部材の凸部の枠部内側方向の端面までの基板に沿った長さを変えることができるので、サイズや揺動範囲が多少異なる基板にも、枠部自体のサイズを変えることなく適応できる効果がある。
【0012】
また、本発明によれば、前記基板保持用枠体が前記枠部と前記基板支持部の間に前記枠部から内側周囲の鉛直方向下方に傾斜して突出した嵌合部を有することにより、基板保持用枠体を複数積み重ねる際に多少位置ずれが生じても傾斜に倣って嵌合し位置調整される効果がある。
【0013】
また、本発明によれば、前記枠部のうち少なくとも一対の対向する2辺に手掛部を有することにより、手掛部に掛ける爪部を有するロボットアームなどにより円滑に掬い上げることを可能とし振動を抑えて基板保持枠体を移動することが可能となる効果がある。
【0014】
そして、本発明の基板搬送方法によれば、上記の基板保持用枠体を用いて、基板最端部を基板保持部材の基板端部制動領域に位置合わせして載置し、その基板載置済み基板保持用枠体をパレットの上に積み重ねし、更に、前記基板保持部材の上面上に載置された基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう隙間を有するように、複数積み重ねて基板保持用枠体集積体を形成して、これを一体として移動することにより、基板に直接押え板などを接触させて押さえるような方法を用いないで、基板の面方向の揺動に対しても基板が跳ねることや割れや傷や汚れが発生することを低減して基板の搬送、保管を行うことが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板保持用枠体を示す平面図、正面図及び側面図である。
【図2】図1の基板保持用枠体の部分の一例を示す断面図である。
【図3】基板保持用枠体における基板端部制動領域と関連部分の位置関係を示す断面図である。
【図4】図1の基板保持用枠体の部分の一例を示す断面図である。
【図5】図1の基板保持用枠体の部分の他の例を示す断面図である。
【図6】図1の基板保持用枠体の部分の他の例を示す断面図である。
【図7】図1の基板保持用枠体の部分の他の例を示す断面図である。
【図8】複数の基板保持部材を有する基板保持用枠体を示す説明図である。
【図9】嵌合部を設けた基板保持用枠体の一例を示す断面図である。
【図10】手掛部を設けた基板保持用枠体の一例を示す断面図である。
【図11】基板搬送方法の工程の流れの一部を示す斜視図である。
【図12】基板搬送方法の工程における基板保持用枠体集積体を示す斜視図である。
【図13】基板搬送方法の工程における基板保持用枠体の部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、まず、基板保持用枠体について、次にその基板保持用枠体を用いた基板搬送方法について図面に基づいて説明する。基板保持用枠体の実施形態については、種種の態様(1〜8)があるため、以下順次説明する。
【0017】
A.基板保持用枠体
基板保持用枠体の実施形態について、図1〜図10に基づいて説明する。
【0018】
(態様1)
図1は、基板保持用枠体1を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
基板保持用枠体1は、図1(a)の平面図のように、外形は矩形状である枠体である。
また、図1(b)、図1(c)のように、枠部2は、一対の対向する直線状の2辺と、所定の形状で中央部が鉛直方向下側に湾曲した他の2辺からなる。ここでは枠部2から内周側の領域Kは、開口とされて何もない空間域である。この中央の領Kは、開口とされていても、枠部の対向する2辺に跨る帯状の補助支持部材などを有していてもよい。
図1(a)のように、基板保持用枠体1は、枠部2から内周側に突出する基板支持部3(図1(a)の枠部2の内周側の実線と隣接する二点鎖線で囲まれた部分)と、さらに基板支持部3の内周側に取り付けられた基板保持部材4からなるものである。
また、図1(a)の基板保持部材4の枠部2の内周域に、基板端部制動領域5(図1(a)の二点鎖線で示された大きい方の四角形より小さい側であって小さい方の四角形より大きい側の間の部分)を有する。
図2は、図1(a)のA−A、及びB−B線における断面図である。この図では、枠部2と、枠部2から突出する基板支持部3と、基板支持部3の先に取り付けられた基板保持部材4が示されている。ここで、基板支持部3と基板保持部材4との位置関係は、基板支持部3と基板保持部材4に取り付ける方法によっては、基板保持部材4の中心部を枠部2に近い側から遠い側に向かって基板支持部3が貫通(点線で挟まれた部分)するように構成される場合をも示すものである。
また、図2に示すように、基板保持部材4の鉛直方向下方の面は、枠部2に近い側から遠い側に均一な厚みを有する断面をもつ形状にされている。また、基板保持部材4は、枠部2に近い部分に鉛直方向下側に突出する凸部6を有する。この凸部6は、基板保持用枠体を積み重ねた際に載置された基板最端部の揺動防止用ストッパーとして機能する。
ここで、鉛直方向上側、鉛直方向下側とは、本明細書では、基板保持用枠体の枠部の対向する直線状の2辺を含む平面を水平にして、その水平面に対する鉛直方向の上側、下側を云うものとする。
【0019】
また、図3は、基板保持用枠体(基板10を載置済み)を2段積み重ねた状態の、図1(a)C−C線における断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。なお、枠体の中央域を省略し、左右を接近させて図示している。
態様1では、図3のように、基板保持部材4(図における左上側のもの)の凸部6の枠部2の内側方向の端面から、対向する辺(図における右側のもの)の基板保持部材4の凸部6の内側方向の端面までの基板に沿った長さxは、基板10の湾曲した辺の長さをc、所定の試験法により求めた基板最端部の揺動範囲の長さをaとすれば、x=c+aの関係式となっている。
また、図3のように下方の基板保持部材4の上面に載置された基板10の上面と、その上方に積み重ねられた基板保持部材4の下面との間に隙間tを有している。
なお、図3では基板が載置されたある時点の状態が示されているが、基板搬送時には、基板は、基板最端部が凸部6端面から揺動範囲aの長さまで基板の面方向に揺動し、その領域において隙間tを有していることになる。
この隙間tの間隙幅は、0を超え、基材の厚みの4倍以下であり、好ましくは、基板の厚みと同等以上、3倍以下とすることにより、基板の鉛直方向上下やの面方向に衝撃や振動が加わった場合に、上下の基板保持部材の面に接触してその振動や揺動を制動し収束することにより、基板保持用部材から基板周縁部が離脱することを低減し、基板に割れや傷や汚れを生じることを防止する効果を有するものである。
また、基板保持部材4の下面の凸部6から基板保持部材4の先端側に向かって、隙間tが均一となる領域に対応して基板保持部材4の枠部2の辺に直交する方向の断面において均一な厚みを有している領域の長さをyとすると、yは少なくとも揺動範囲aを超えるものとなっている。
そして、基板端部制動領域5は、図3に示す2段の基板保持用枠体のうち下段の基板保持部材4の上面に有し、上段の基板保持部材4の下面の領域yに対応した領域であり、したがって、揺動範囲aを超えるものである。
また、上段の基板保持部材4の上面における基板端部制動領域5は、さらに上に積み重ねる基板保持部材4が、必然的に同様に積み重ねるように基板保持用枠体が設計されており、下段と相似の位置に有している。
【0020】
(態様2)
次に、本発明の態様2について、図4に基づいて説明する。図4は、図1(a)のA−A、及びB−B線における断面図である。
態様2では、基板保持部材4の形状が、図4の部分断面図に示すように、態様1の図2の基板保持部材の断面形状とは異なり、枠部2に近い側から遠い側に向かって厚みが徐々に薄くされている。このように、この点を除けば全て態様1と同様の基板保持用枠体である。
【0021】
(態様3)
次に、本発明の態様3について、図5に基づいて説明する。図5は、図1(a)のA−A線およびB−B線における部分の断面図である。
態様3では、基板保持部材4の形状が、図5の部分断面図に示すように、態様1の図2の基板保持部材4の断面形状とは異なり、枠部2に近い側から遠い側に向かって基板端部制動領域5において厚みは均一であり、更に基板端部制動領域に対応する領域を超えて枠部2から遠い側に向かって基板保持部材4の末端まで、厚みが漸次薄く変化させたものとなっている。この点を除けば全て態様1と同様の基板保持用枠体である。
【0022】
(態様4)
次に、本発明の態様4について、図6に基づいて説明する。図6は、図1(a)のA−A線およびB−B線における部分の断面図である。
態様4では、基板保持部材4の形状が、図6の部分断面図に示すように、態様1の図2の基板保持部材4の断面形状とは異なり、基板端部制動領域5において枠部2に近い側から遠い側に向かって厚みが徐々に薄くなっており、更に基板端部制動領域に対応する領域を超えて枠部2から遠い側に向かって基板保持部材4の末端まで、厚みが漸次薄く変化させたものとなっている。
この点を除けば全て態様1と同様の基板保持用枠体である。
【0023】
(態様5)
次に、本発明の態様5について、図7に基づいて説明する。図7は、図1(a)のA−A線における部分の断面図である。
態様5では、図1(a)のA−A線における基板保持部材の形状が、図7の部分断面図に示すように、態様4の図6の基板保持部材4の断面形状と同じであるが、基板支持部3が枠部2からその内側であって枠部2の湾曲した辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜して突出し、その延長上に基板保持部材4が取り付けられている点で異なるものとなっている。
この点を除けば全て態様4と同様の基板保持用枠体である。
このように基板保持部材を傾斜させることにより、基板保持用枠体1を積み重ねた際に、基板の周縁部は、上下の基板保持部材4の間隙にその形状に沿って保持されており、一方、基板の中央部は湾曲形状に沿った形状となっており、基板の湾曲率によっては基板周縁部と中央部の間に急激な屈曲が生じることがあり、このような歪を低減することができる。
【0024】
(態様6)
次に、本発明の態様6について、図8に基づいて説明する。
態様6は、複数の基板保持部材4を分散して基板支持部3に取り付けた基板保持用枠体であり、この点を除けば全て態様1〜5と同様の基板保持用枠体である。
図8(a)は、基板支持部3に複数の基板保持部材4を取り付けた基板保持用枠体1を示す平面図であり、基板保持部材4の間には部分的に基板支持部3が露出している。
図8(b)は、基板保持部材4が、枠部2から突出する基板支持部3に取り付けられている基板保持用枠体1の部分を示す拡大斜視図である。図8(b)のように、基板保持部材4はその断面がコの字型に現れるように加工されており、基板支持部3に嵌め込みされた構造となっている。基板保持部材4の上面と基板保持部材4の下面は平滑な面を有する形状にされている。
【0025】
(態様7)
次に、本発明の態様7について、図9(a)および(b)に基づいて説明する。
態様7は、嵌合部7を有する基板保持用枠体1であり、この点を除けば全て態様1〜6と同様の基板保持用枠体である。
図9(a)は、嵌合部7を有する基板保持用枠体の部分とその嵌合の状態を示す断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図9(a)に示すように、3段の基板保持用枠体(図の下方の2段の基板保持用枠体は積み重ねられている)の各々の嵌合部7は、枠部2と基板支持部3との間に、枠部2から枠部2に囲まれた内側の鉛直方向下方に傾斜して突出して形成され、嵌合部7の鉛直方向上側の面と鉛直方向下側の面が相似の面形状をしている。そして、図9(a)の下方に示すように、積み重ねられた2段の基板保持用枠体は、上下の基板保持用枠体1の当該面の嵌合部7において嵌め合わせられている。
また、図9(b)は、図9(a)とは異なる形状の嵌合部7を有する基板保持用枠体1とその嵌合の状態を示す断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図9(b)に示すように、嵌合部7は、枠部2から鉛直方向の上下に2つに分かれて突出しており、上部の嵌合部7は、枠部2から鉛直方向下方に傾斜して突出して形成され、その延長上に基板支持部3を有するものであり、下部の嵌合部7は枠部2の鉛直方向下側から突出し、上部の嵌合部7と嵌合できる形状をしている。
なお、図示はしていないが、図9(b)では、鉛直方向下側から突き出した下部の嵌合部7がその延長上に基板支持部3を有し、上部の嵌合部7が枠部2の鉛直方向上側から突出し、下部の嵌合部7と嵌合できる形状をしたものとすることも可能である。
このように嵌合部7は、枠部2から内周側に突き出して形成されているので、基板保持用枠体1および基板10の荷重を直接受けないので荷重による変形を生ずることが少なく、また、嵌合部7は鉛直方向下方に傾斜して突出して形成されているので基板保持用枠体1を積み重ねる際に多少位置ずれが生じても傾斜に倣って嵌合し位置調整される機能を有する。
【0026】
(態様8)
次に、本発明の態様8について、図10に基づいて説明する。図9は、本発明に用いられる手掛部8を有する基板保持用枠体の部分を示す断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
態様8は、手掛部8を有する基板保持用枠体1であり、この点を除けば全て態様1〜7と同様の基板保持用枠体である。
手掛部8は、少なくとも対向する直線状の2辺の枠部2の外側周囲に突出して形成されており、辺全長に沿って形成されても、または要所に分離して形成されてもよい。
【0027】
B.基板搬送方法
次に、上記の基板保持用枠体を用いた基板搬送方法の実施形態について、図11〜図13に基づいて説明する。
【0028】
まず、図11(a)に示すように、基板保持用枠体1の鉛直方向上方において、基板10の長さがcの辺を前記基板保持用枠体の前記枠部2の湾曲している辺に合うように、且つ、基板10の最端部が基板保持用部材4の上面に有する基板端部制動領域5に含まれるように位置合わせする。ここで、基板が基板保持用枠体に載置された後に安定した状態に速やかに移行するように、基板保持部材の上面の基板端部制動領域であって、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部端面に対応した位置から揺動範囲の長さまでの範囲のどこかに基板最端部を位置合わせすることが好ましい。また、その揺動範囲の揺動の中心に基板最端部を位置合わせすることは、さらに基板が基板保持用枠体に載置された後に安定した状態に速やかに移行するために好ましい。
そして、基板10と基板保持用枠体1とを少なくとも一方を鉛直方向に移動させて双方が近づけられる。図11(a)では、基板10が基板保持用枠体1に向かって近づけられるように矢印が記載されているが、逆に、基板保持用枠体1が基板10に向かって近づけられてもよい。
ここで、基板端部制動領域5については、図11(a)では一本の二点鎖線で示されている。実際には、幅を有するものであって、図1により説明すると、 図1(a)の基板保持用枠体1の正面図における二点鎖線で示された大きい方の四角形より小さい側であって小さい方の四角形より大きい側の間の部分に相当するものである。
そして、基板10の周縁部を基板保持用部材4の上面に接触させて、前記基板10を前記基板保持用枠体1に載置される。
次に、図11(b)に示すように、上記の工程で得られた基板10が載置された基板保持用枠体1がパレット20の上に積み重ねられる。
次に、図11(c)に示すように、パレット20の上に積み重ねられた基板10の載置済み基板保持用枠体1の上に、同様にして得られた別の基板10の載置済み基板保持用枠体1を、上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面を互いに重なるように面接触させる。この時、前記枠部2の辺に直交する方向の断面において、前記基板保持部材4の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板10の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体1の基板保持部材4の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域5に対応する部分において接触しないで隙間を有するように基板保持用枠体1は積み重ねられる。
上記のように、基板載置済みの基板保持用枠体1を、パレット20又は基板載置済みの基板保持用枠体1の上に積み重ねる工程には、基板10載置済みの基板保持用枠体1を、ロボットアームにより把持して移動させ、パレット20又は基板載置済みの基板保持用枠体1の直上において位置合わせし、下方に移動させて積み重ねる手段を用いることができる。
次に、図12に示すように、基板10の載置済みの基板保持用枠体1を積み重ねられる工程が複数回繰り返されることにより、基板保持用枠体集積体100が形成されている。
次に、この基板保持用枠体集積体100は、一体として次の工程に移動される。目的によっては、が基板保持用枠体集積体100は、梱包されて保管、搬送される。
さらに、上記で説明した工程について、図13に基づいて説明する。
図13(a)は、枠部2の辺に直交する方向の断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図13(a)に示すように、枠部2から突出した基板支持部3とその延長上に基板保持部材4が構成されており、基板保持部材4の上側には基板端部制動領域5を有している。その基板保持部材4の上方に、基板10がその最端部eが、基板保持部材4の基板端部制動領域5に含まれるように位置合わせされている。
上記のように、基板10を基板保持用枠体1に載置する工程には、基板10をコンベアにより水平移動して基板保持用枠体1に受け渡しする地点において停止して位置合わせし、コンベアの間隙から鉛直方向に突き出す複数のピンにより、各ピンが基板保持用枠体の湾曲状態に対応した高さに制御して基板10を保持し、基板受け渡し地点の直下に待機させた基板保持用枠体1をロボットアームにより把持して、鉛直方向上方に移動して基板10を掬いあげる手段を用いることができる。
図13(b)は、基板載置済みの基板保持用枠体1が2段積み重ねられた上に、更に、基板載置済みの基板保持用枠体1を積み重ねるために位置合わせされている状態を示す、枠部2の辺に直交する方向の断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図13(b)に示すように、基板10の載置済みの基板保持用枠体1は、その組合せたものをX−1、X−2、X−3として、既にX−1の上にX−2が積み重ねられており、X−2の上方にX−3が位置合わせされている状況である。この際に、X−2の上にX−3を積み重ねる方法は、X−2の基板保持部材4の上面に載置された基板10と、X−2の基板保持部材4の下面との間に一定の隙間を、所定の基板端部制動領域5に対応する領域において有し、基板が基板保持部材4の裏面に接触しないように、基板周縁部を保持して積み重ねられる。なお、予定された基板の厚みにおいて、隙間が必然的に生じるように設計されているので、枠体1の重ね合わせ位置がずれなければ、隙間の形成に格別な注意を必要とはしない。
【0029】
以下、さらに、本発明の基板保持用枠体の各部の材料や製法などについて説明する。
【0030】
1.基板保持用枠体
(a)枠部
本発明に用いられる基板保持用枠体の枠部は、基板保持用枠体の骨格構造をなすものであり、また、枠部は、枠部の辺に直交する方向の断面形状は矩形状であり、基板保持用枠体を複数積み重ねる際に、重なり部分となるものであり、その鉛直方向上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面が互いに面接触して積み重ねられるように形成されているものである。したがって、枠部は、基板保持用枠体自体に強度と精度を持たせる機能を有するものである。
また、枠部はその内側周囲に突出する基板支持部その先に延長する基板保持部材や嵌合部を備え、外側に突出する手掛部を備えることができるものである。
枠部から内周側に設けられた基板保持部材で囲まれた中央の領域は、開口とされて何もない空間域であっても、枠部の対向する2辺に跨り、基板を補助的に支持するための帯状などの補助支持部材を有していてもよい。
ここで、上記の枠部の内側の中央の領域に前記補助支持部材を有する場合には、基板が載置されて外部から衝撃や振動を受けた場合に、その補助支持部材により衝撃や振動を吸収して、基板の跳ねや揺動を低減することができる。一方、基板の中央部はその上面に直接、補助支持部材が接触するため、衝撃や振動によって割れや傷や汚れが発生し易くなる。
また、枠部の内側の中央の領域が空間域とされ何もない場合には、基板の中央部分は基板上面に直接接触するものが存在しないため、衝撃や振動が加わった場合に割れや傷や汚れの発生を抑えることができる。また、枠部の構造が単純であるので製造し易い利点がある。一方、基板のサイズが、衝撃や振動が加わった場合に撓みによる振動や揺動が制御できないほど大きくなった場合には、割れや傷や汚れが発生し易くなる。
また、枠部の形状は、一対の対向する2辺が直線状であり、残りの2辺が湾曲したものである。湾曲した枠部材の形状は、円弧状、放物線状、又は所定の湾曲率のものを採用することができる。
また、枠部を作成する方法としては、四辺の各辺に上記の材料を用いて成型法などにより枠部材を作製し、枠部材を四隅で連結して四角形状の枠部を形成する方法を用いることができる。この場合、四隅の連結は、枠部材の端部を樹脂などの連結部材に二方向から嵌め込んで間接的に連結する方法や、枠部材同士を四隅で、溶接などで直接的に接合する方法によって行える。
また、このような枠部は構造強度を有する材料により形成される必要があり、強度が大きく、軽量な金属やプラスチック等の材料が用いられ、好ましくは、例えば、アルミニウム、ジュラルミン、強化プラスチック等が挙げられる。さらに、枠部は軽量化のために構造は中空であることが好ましい。
【0031】
(b)基板支持部
本発明に用いられる基板保持用枠体における基板支持部は、枠部の内側周囲に突出しており、基板保持部材を介して基板周縁部を載置し支持するものである。
基板支持部の材料としては、枠部と同じ材料であるアルミニウム、ジュラルミン等の金属や強化プラスチックなどが用いられる。
基板支持部の作成方法としては成型法などが使えるが、好ましくは、枠部を中空形状とし同時に押し出し成型することが好ましい。
【0032】
(c)基板保持部材
本発明に用いられる基板保持部材は、基板支持部に取り付けられて、直接、基板周縁部を載置し、同様にして得られた基板保持用枠体を積み重ねる場合に、上方の基板保持用枠体の鉛直方向下側の面(下面と云う)は、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向上側の面(上面と云う)とで挟まれた間隙を形成するものである。
また、基板保持部材の形状は、枠部の辺に直交する厚み方向の断面において、枠部に近い側から内側に向かって所定の領域が一定の厚みを有するものや、枠部に近い側から遠い側に向かって所定の領域が一定の厚みを有し、さらに中心側に向かい厚みが薄くなっているものが、基板に接触しないで保持するものとして適する。
また、基板支持部への基板保持部材の取り付けは、着脱可能とされてもよく、複数の基板保持部材に分散して基板支持部に取り付けられていてもよい。基板保持用枠体の大きさにもよるが、サイズが枠部に直交する方向の幅5〜10cm、枠部に沿う方向の長さ10〜25cmの基板保持部材を、枠部一辺に5〜20個程度、取り付けることができる。
また、基板支持部へ基板保持部材の取り付け方法については、各種の方法を用いることができる。例えば、基板保持部材の断面形状をコの字型に加工しておき、基板支持部を嵌め込む方法や、基板保持部材の上面部と同下面部を2つに分けておき、基板支持部に設けた貫通口に基板支持部上側から基板保持部材の上面部を、基板支持部下側から基板保持部材の下面部を合わせて嵌め込み固定する方法を取ることができる。
そして、このように基板支持部への基板保持部材の取り付けを可能とすることによって、
基板保持部材の加工を、枠部や基板支持部の加工とは別に行うことができるので、基板保持部材の厚みの精度や表面の平坦性を容易に実現することが可能となる。また、損傷したものを交換することもできる。そして、また、基板保持部材の鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部からの位置をかえることによって、前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記辺と対向する前記枠部の辺の基板保持部材に鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さを変えることができるので、枠部構造のサイズを変えることなく、サイズや揺動範囲の異なる基板にも適応できる。
また、基板保持部材の材料としては、枠部と同じ材料であるアルミニウムや、ジュラルミンとすることや、振動抑制の面から基板支持部表面にクッション材を設けておく形態や、基板支持部を樹脂特に熱可塑性樹脂からなるものとすることが好ましい。さらに熱可塑性樹脂の中でも、特に塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトンが望ましい。尚、同様の機能を有すれば、基板保持部材の材料はこれらに限定されない。
【0033】
1)基板保持部材の上面
本発明に用いられる基板保持部材の上面とは、枠部の対向する直線状の2辺を含む平面を水平にした基板保持用枠体に基板を載置して、該基板保持用枠体を複数積み重ねる基板保持用枠体の搬送方法において、基板保持部材の鉛直方向上側の面に位置するものである。
そして、基板保持部材の上面は、その表面に基板の周縁部分を接触させて基板を載置するものである。また基板保持部材の上面には、基板を載置するために、枠部から内側方向に所定の範囲を基板端部制動領域として規定した領域を有する。
また、基板保持部材の上面は、平坦部を有し、その表面は鏡面仕上げが好ましい。基板保持部材の表面が粗面であると、基板の周縁部が基板保持部材の表面に載置されて、搬送、保管される場合に加えられた振動により基板端部が上下に跳ねたり揺動することによって、基板保持部材の材料が転写されて基板表面が汚染される原因となる。また、基板保持部材の表面の凹凸により基板に割れや傷が生じる原因ともなる。
【0034】
2)基板保持部材の下面
本発明における基板保持部材の下面は、基板を基板保持用枠体に水平方向に載置して収納し該基板保持用枠体を複数枚積み重ねる基板保用枠体の搬送方法において、基板保持部材の鉛直方向下側の面に位置するものである。
基板保持部材の下面は、同じ型の基板保持用枠体に基板を載置した状態で積み重ねる場合に、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の上面とで挟まれた間隙を形成するものであり、したがって、基板保持部材は、枠部の辺に直交する厚み方向の断面において、枠部に近い側から遠い側に向かって所定の均一な厚み、又は所定の範囲で漸次薄くなる厚みを有す場合には、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の上面とで挟まれた間隙は、枠部に近い側から遠い側に向かって所定の均一な間隙、又は所定の範囲で漸次大きくなる間隙を形成するものである。
また、基板保持部材上面に載置された基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面とが、基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう所定の隙間を有して、接触しないで基板の周縁部分を保持するものである。
ここで、上下の基板保持部材間の間隙は、基板保持用枠体を積み重ねる場合に、上方の基板保持用枠体の下面と、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の上面とで挟まれた基板端部制動領域に対応する領域の間隙は、載置される基材の厚みを超え、基材の厚みの5倍以下であれば、基板に上方の基板保持用枠体の裏面が接触せずに、また、振動により基材の跳ねや離脱を低減して保持することができる。さらに好ましくは基材の厚みの2〜3倍とすることがよい。即ち、基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置された基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面との隙間は、0を超え、基材の厚みの4倍以下であり、好ましくは、基板の厚みと同等以上、3倍以下とすることがよい。
また、基板保持部材の下面は、その枠部に近い最端部に凸部を有する。凸部は枠部の辺に平行に配設されており、連続していても、不連続であってもよい。
凸部は、基板搬送時の振動により基板端部が最大に移動した場合に、基板端面が凸部に突き当たり制止するストッパーとして機能し、基板保持用枠体が積み重ねられて際に、上下の基板保持部材の間にあって凸部の枠部内側方向の端面によって囲まれた範囲は、基板の大きさより大きく、基板端部が振動に移動した時に最大に移動できる範囲となる。
したがって、凸部の枠部からの位置を変更することによって、基板保持部材の下面の凸部端面から、対向する枠部側の凸部端面との間の長さを変更して、基板のサイズや基板の揺動範囲の変化に対応することができるものである。
【0035】
3)基板端部制動領域
本発明における基板端部制動領域は、基板保持部材の上面にあり、基板の周縁部を載置するものであり、その上に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面と基板上面との間に隙間を有し、基板の振動及び揺動が制動される領域である。
具体的には、基板の大きさ、基板保持用枠体および基板保持部材の形状、基板の揺動範囲が決まれば、以下のように求められるものである。
基板と基板保持用枠体及び基板保持部材の関係については、枠部の直線状の1辺に設けられた基板保持部材下面の凸部の枠部内側方向の端面から、対向する辺に設けられた基板保持部材下面の凸部端面までの基板に沿った長さxは、上記の対向する凸部端面から凸部端面への方向に沿った基板の湾曲している辺の長さをc、基板最端部の揺動範囲をa、とすると以下の関係式となる。
x=c+a
また、基板保持部材上面に載置された基板の上面と、その上に積み重ねられた基板保持部材の下面との間に隙間を有し、また、基板保持部材の下面の凸部から基板保持部材の先端側に向かって、隙間を有する領域に対応して基板保持部材の枠部の辺に直交する方向の断面において均一な厚みまたは漸次薄くなる厚みを有する領域の長さをyとすると、yは少なくとも揺動範囲aを超えるものとなっている。
以上の条件から、基板端部制動領域は、基板保持部材の上面に有し、上に積み重ねる基板保持部材の下面の領域yに対応する領域である。
したがって、基盤端部制動領域の枠部に近い最端は、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部の枠部内側方向の端に対応し、その位置から長さが揺動範囲aを超えるものとなるものである。
なお、基板端部制動領域の枠部側の最端の位置は、基板保持部材が枠部から鉛直方向下方に傾斜している場合には、その傾斜の角度により異なるものとなるものである。
また、基板保持部材の上面における基板端部制動領域は、さらに上に積み重ねる基板保持部材が、必然的に同様に積み重ねるように基板保持用枠体が設計されているので相似の位置に有しており、基板を載置する位置合わせを可能とするものである。
ここで、基板最端部の揺動範囲は、基板、基板保持用枠体、基板搬送条件によって異なるものである。まず、基板のサイズに対応して、基板保持用枠体の形状、基板保持部材の形状を仮決めしたものを準備し、次に、基材を基板保持用枠体に湾曲させて載置して、基板保持用枠体(基板含む)を実用上の段数(例えば100段)をパレット(振動防止パレットを含む)上に積み重ねて基板保持用枠体集積体を形成する。この状態で、実際の搬送状態に応じた振動テスト(トラック等による搬送テスト)や、振動試験機の加振台上で適正な加振条件(例えば、ASTMトラックレベル3)により、基板保持用枠体集積体に振動を加えた状態で、基板の面方向の変位を測定して、基板保持部材の上面の基板最端部の揺動範囲を求めるものである。変位は、特別大きな変位を除いてその最大幅を揺動範囲とする。また、変位は実際の搬送条件に近い複数の条件により測定して、揺動範囲を決定することが好ましく、搬送時の基板の面方向の揺動に対しても基板が跳ねることや割れや傷や汚れが発生することをより安定して低減することができる。
【0036】
(d)嵌合部
本発明に用いられる基板保持用枠体の嵌合部は、枠部自体、枠部の外側、または枠部の内側に設けることができる。
このうち枠部の枠部に囲まれた内側に突出して設ける場合には、嵌合部は、枠部から内側に突き出して形成されているので、基板保持用枠体および基板の荷重を直接受けないので荷重による変形を生ずることがなく、また、嵌合部は鉛直方向下方に傾斜して突出して形成されているので基板保持用枠体を積み重ねる際に多少位置ずれが生じても傾斜に倣って嵌合し位置調整される機能を有する。さらに、基板保持用枠体を積み重ねた状態で枠部に囲まれた内部の略密封性が保たれて塵埃などが溜まることを低減する利点を有する。
また嵌合部は、枠部の鉛直方向上側の面に沿って一定の厚みで内側に突出して鉛直方向下方に屈曲し延長された形状の面、および枠部の鉛直方向下側の面に沿って一定の厚みで内側に突出して鉛直方向下方に屈曲し延長された形状の面とが嵌め合わせ可能なように形成することにより、上下の基板保持用枠体を積み重ねる際に勘合することができる。
ここで、枠部の鉛直方向上側の面に沿って一定の厚みで内側に突出した勘合部(その延長上に基板支持部を有するもの)と、枠部の鉛直方向下側の面に沿って一定の厚みで内側に突出した上部の勘合部と勘合する形状の勘合部と、2つの勘合部を有するように設けることができる。この場合に、枠部の鉛直方向上側の面に沿って一定の厚みで内側に突出して鉛直方向下方に屈曲し延長された構造を基板支持部の一部とするものとした場合には、勘合部が基板支持部に覆われているので、屈曲した部分に塵埃などが溜まることを低減するなどの利点を有する。
なお、鉛直方向下側から突き出した嵌合部がその延長上に基板支持部を有し、下部の嵌合部が枠部の鉛直方向上側から突出し、上部の嵌合部と嵌合できる形状としたものとすることも可能である。
【0037】
(e)手掛部
本発明に用いられる基板保持用枠体の手掛部は、枠部の外側、または枠部自体に設けることができる。 枠部の外側の場合には、枠部の少なくとも対向する2辺の外側に一定の厚みで延びて形成される。手掛部はロボットアームなどで把持する部分であり、辺の全長に沿って設ける必要はなく把持部分に応じた長さのものであってもよい。
また、手掛部の鉛直方向上側の面が、枠部内側に突出する基板支持部の表面と同一平面にあることが好ましく、凹凸部がないことにより塵埃などが溜まることを低減する利点を有する。
【0038】
(実施例)
以下のガラス基板を使用した。
・基板のサイズ:1500mm×1800mm
・基板の厚み :0.7mm
次に、以下のような基板保持用枠体を準備した。
・基板保持用枠体の形状:
枠部の短辺が中央部に最下点がある円弧状に湾曲(湾曲部の鉛直方向の最下点までの長さ100 mm)とした形状とし、長辺が直線状とした。平面視上は四角形であり、枠部から内周側に設けら れた基板保持部材で囲まれた中央の領域は、開口とし何もないものとした。
・基板保持用枠体には、嵌合部(態様7、図9(b)参照)、手掛部を設けた(態様8、図10参照 )。
・揺動範囲の測定:
上記の基板と基板保持用枠体を用いて、実際の搬送状態に応じた振動テスト(トラック等による搬 送テスト)により測定された基板最端部の面方向の変位から揺動範囲を求めた。基板最端部の揺動 範囲:aは、a=10mm(揺動中心から±5mm)
ここで、基板保持部材の形状は、基板保持部材下面の凸部端面から枠部から遠い側に30mmま で、均一な厚みであり、更に枠部から遠い側に向かって基板保持部材の端部(凸部端面から50m m)まで厚みが漸次薄くなる形状。枠部の直線状の2辺に設けた基板保持部材については、枠部2 の湾曲する辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜させた(態様6、図6、図7参照)ものを使用し た。
・基板保持部材の形状:
基板保持部材下面の凸部端面から枠部から遠い側に11mmまで、均一な厚みであり、更に枠部 から遠い側に向かって基板保持部材の端部(凸部端面から50mm)まで厚みが漸次薄くなる形状 。枠部の直線状の2辺に設けた基板保持部材については、枠部2の湾曲する辺の形状に沿って鉛直 方向下方に水平面から15度の角度で傾斜させた。(態様6、図6、図7参照)
以上の項目から、以下の関係となるように基板保持用枠体を形成した。
・基板保持用枠体と基板との関係(図3参照):
枠部の一辺にある基板保持部材下面の凸部の枠部内側方向の端面から、対向する辺の基板保持部材 下面の凸部の枠部内側方向の端面までの長さxを、x=c+a=1500+10=1510mmと した。
・二つの基板保持部材の上下に挟まれる間隙は、基板端部制動領域に対応する部分を前記枠部に近い 側から遠い側に11mmまでは均一な間隙1.4mmであり、更に前記基板端部制動領域に対応す る部分を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで間隙が大きくなるもの とした。
・基板端部制動領域は、基板保持部材の上面において、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部端 面に対応した位置(この基板保持部材において枠部側から1mmの位置)からの長さを11mmと し、基板最端部の揺動範囲10mmを含む、すなわち揺動範囲10mmを超えるものとした。
そして、次に上記の基板保持用枠体を用いて、以下のように工程により基板搬送方法を実行した( 図11 、図12参照)。
まず、基板保持部材の上面の基板端部制動領域であって、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸 部端面に対応した位置(この基板保持部材において枠部側から1mmの位置)から揺動範囲の長さ の範囲に収まるように、基板の短辺の最端部を位置合わせし、基板周縁部を基板保持部材に載置し た。ここでは、基板保持部材の上面において、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部端面に対 応した位置(この基板保持部材において枠部側から1mmの位置)から長さ5mmの位置に、基板 最端部を位置合わせして、基板周縁部を基板保持部材に載置した。
次に、上記で得た基板保持用枠体を、パレット上に積み重ね、さらにこの上に同様にして得た基 板載置済みの基板保持用枠体を積み重ねて、100段の基板保持用枠体集積体を得た。
この基板保持用枠体集積体に対して、実際の基板搬送の条件を再現した振動試験機により振動を 加えて基板の保持状態を観察した結果、基板が跳ねや振動により基板保持部から離脱することなど なく、基板に割れや傷が生じていなかった。
【0039】
(比較例)
上記の実施例において、揺動範囲が20mm(揺動中心から±10mm)である以外は、全て上記の条件と同じである。
その結果は、基板端部制動領域は揺動範囲を含むものでないために、基板端部を基板端部制動領域に位置合わせして基板を基板保持部材上面に載置しても、振動テストにより基板が跳ねや振動によって基板保持部材間に囲まれた間隙幅:1.4mmの領域から離脱して、基板に割れや傷が生じることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体と、該基板保持用枠体を複数積み重ねた状態で搬送または保管する基板搬送方法に関し、特に、ガラスやプラスチックなどの板状物や、平面ディスプレイパネル用部材や中間製品などの搬送、保管に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 基板保持用枠体
2 枠部
3 基板支持部
4 基板保持部材
5 基板端部制動領域
6 凸部
7 嵌合部
8 手掛部
10 基板
20 パレット
100 基板保持用枠体集積体
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体と、この基板保持用枠体を複数積み重ねた状態で搬送または保管する基板搬送方法に関し、特に、ガラスやプラスチックなどの板状物や、平面ディスプレイパネル用各種部材や中間製品などの搬送、保管に適した基板保持用枠体及びそれを用いた基板搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイなどに用いられる薄型のガラス基板は、ディスプレイの大型化や多面付けの製造方法による量産化のために大サイズ化が進められてきた。一方、液晶ディスプレイパネルの製造工程は、最終製品に至るまで複数の工程に分けられている場合が多い。そのため、工程中の複数の基板(ガラス基板およびその中間加工品を含む)を一旦保管し次の工程に搬送する必要があり、その際に基板に割れや傷、汚染の発生がなくコンパクトに収納して搬送できる基板保持用枠体と基板搬送方法が求められている。
従来、このような場合には、通常、複数の基板を一つの箱に収納する方法がとられていたが(例えば、特許文献1)、大きな面積で薄い基板は撓みやすいので箱の中の隣接する基板同士が接触して破損する恐れがあった。また、上記の方法では、箱から基板を取り出すには治具などを挿入するための間隔をあける必要があるため、基板収納の密度が小さくなる問題があった。
このような問題を解決するために、一枚の基板を撓ませた状態でトレイまたは枠体に収納して、このトレイまたは枠体を複数積み重ねる方法が提供されている。このものは、ガラス基板の周縁下面を支持する支持枠が設けられ、該支持枠の下面に設けられた当接材が、前記ガラス基板の周端縁上面に当接保持する方法がとられている(特許文献2)が、基板に当接材が直接接触するため、振動により当接する部分に歪が生じて、基板に汚れや傷や割れが生じやすい問題があると考えられる。
また、特許文献3では、四角形状で剛性のある板状物を水平方向として、該板状物を、その上側に載せて保持するトレイで、且つ、該板状物を載せた状態で複数重ねて搬送あるいは保管に用いられる搬送用あるいは保管用のトレイが提供されている。このものは、枠部の内側領域において、板状物保持部の裏に備えられた板状物端部移動制限部材が板状物端部の上側に当接して該端部の上側への移動を制限する方法がとられているが、搬送時の振動による基板の面方向の揺動に対してはなんら制限がないため、基板が跳ねて板状物端部移動制限部材から外れ、傷や割れが生じる問題があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−295150号公報
【特許文献2】特開2006−168749号公報
【特許文献3】特開2008−155995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基板に直接押え板などを接触させて押さえるような方法を用いないで、搬送時の基板の面方向の揺動に対しても基板が跳ねることや割れや傷や汚れが発生することを低減する基板保持用枠体及びそれを用いた基板搬送方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の基板保持用枠体は、剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体であって、且つ、前記基板を載置した状態で複数積み重ねた状態で搬送または保管に用いられるものであって、枠部と、該枠部の内側周囲に突出する基板支持部と、該基板支持部に取り付けられた基板保持部材とからなり、前記枠部は、一対の対向する直線状の2辺と、中央部が鉛直方向下方側に湾曲した他の2辺とからなり、平面視上矩形状であり、前記枠部の辺に直交する方向の断面が矩形状であり鉛直方向に厚みを有するものであり、基板保持用枠体を複数重ねる際に鉛直方向上下の枠部の上面と下面が互いに面接触するように形成されている。
また、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面は、前記基板を載置する際に前記基板の最端部を位置合わせする領域であって、前記基板を搬送する際の前記基板の面方向の前記基板最端部の揺動範囲を含む領域である基板端部制動領域を有し、且つ、基板保持部材は、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記枠部の厚みより小さい厚みを有し、前記基板保持部材の鉛直方向下側の面は、前記枠部に近い最端部に、前記枠部の辺に沿って配設された凸部を有し、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないで隙間を有して前記基板を保持するような形状である。
また、前記基板保持部材は、前記基板保持用枠体に基板が載置される場合に、前記基板の湾曲している辺の長さをc、前記基板の湾曲している辺に沿った方向に前記基板が揺動したときの前記基板最端部の揺動範囲の長さをa、とすると、前記枠部の直線状の一辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記直線状の辺と対向する辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さxが、x=c+aであり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する前記基板保持部材の鉛直方向下側の面にある領域の前記凸部端面からの長さyが、少なくとも揺動範囲aを超えるように形成されてなるものである、以上の特徴を有するものである。
すなわち、本発明は、基板を直接押え板などにより接触させて押さえないで、基板の上面と接触しないで隙間を有するような形状とした基板保持部材により保持する基板保持用枠体であって、基板を載置する領域、すなわち枠部の直線状の対向する二辺に設けられた二つの基板保持部材の下面の凸部から凸部までの間の長さxを基板のサイズと同じサイズにするのではなく、基板最端部の揺動範囲の分だけ基板のサイズより大きめにすること、且つ、基板保持部材下面と基板の上面との隙間を有する領域の範囲を、基板の最端部の揺動範囲を超えるものとすることによって、搬送時の振動に対して基板最端部に歪が生ずることや基板保持部材から離脱して跳ねることなどを防ぎ、基板に割れや傷を低減する基板保持用枠体としたことに特徴があるものである。また、本発明において基板の最端部の揺動範囲は、基材を基板保持用枠体に載置して、その基板載置済みの基板保持用枠体をパレット上に積み重ねた状態で、実際の搬送状態又は振動試験機によって振動を加えた状態で測定された基板最端部の面方向の変位から求められるものであることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明においては、上記基板保持用枠体を用いる基板搬送方法であって、前記基板保持用枠体の前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に、前記基板の辺の長さがcの辺を前記基板保持用枠体の前記枠部の湾曲している辺に合うように、且つ、前記基板の最端部を前記基板端部制動領域に含まれるように位置合わせした後に、前記基板の周縁部を接触させて、前記基板を前記基板保持用枠体に載置し基板載置済み基板保持用枠体とすること、前記基板載置済み基板保持用枠体を、パレットの上に積み重ねし、パレット上に積み重ねられた前記基板載置済み基板保持用枠体の上に、同様にして得られた別の基板載置済み基板保持用枠体を、上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面が互いに面接触して重なるように、且つ、枠部の辺に直交する方向の断面において、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう隙間を有するように積み重ねること、この前記基板保持用枠体積み重ね工程を繰り返すことにより複数の基板載置済みの基板保持用枠体を積み重ねた基板保持用枠体集積体とした後、前記基板保持用枠体集積体を一体として移動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基板保持用枠体によれば、枠部と、該枠部の内側周囲に突出する基板支持部と、該基板支持部に取り付けられた基板保持部材とからなり、前記枠部は、一対の対向する直線状の2辺と、中央部が鉛直方向下方側に湾曲した他の2辺とからなり、平面視上矩形状であり、前記枠部は、前記枠部の辺に直交する方向の断面が矩形状であり鉛直方向に厚みを有するものであり、基板保持用枠体を複数重ねる際に鉛直方向上下の枠部の上面と下面が互いに面接触するように形成されており、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面は、前記基板を載置する際に前記基板の最端部を位置合わせする領域であって、前記基板を搬送する際の前記基板の面方向の前記基板最端部の揺動範囲を含む領域である基板端部制動領域を有し、且つ、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記枠部の厚みより小さい厚みを有し、前記基板保持部材の鉛直方向下側の面は、前記枠部に近い最端部に、前記枠部の辺に沿って配設された凸部を有し、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないで隙間を有して前記基板を保持するような形状であることによって、積み重ねられた基板保持用枠体に載置された基板への鉛直方向上下の振動や、基板が撓むことにより基板保持部材の上面で基板の面方向に移動が繰り返されて生ずる基板最端部の揺動に対して、基板端部制動領域上の隙間において振動及び揺動が制動され収束し、基板の跳ねや基板保持用部材からの離脱を低減し、割れ傷や汚れを生じることを防止する効果がある。
また、前記基板保持用枠体において、前記基板保持用枠体に載置される前記基板の一辺の長さをc、該辺と同一方向に前記基板が揺動した場合の前記基板端部の揺動範囲の長さをa、とするときに、前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記辺と対向する前記枠部の辺の基板保持部材に鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さxが、x=c+aであり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する前記基板保持部材の鉛直方向下側の面にある領域の前記凸部端面からの長さyが、少なくとも揺動範囲aを超えるように形成されてなることにより、前記基板最端部は、前記基板端部制動領域に対応する部分における所定の隙間の上下の面に接するばかりでなく、前記凸部端面にも接しながら揺動が制動されて、基板の割れや傷や汚れを防止する効果がある。
【0008】
また、本発明によれば、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であることにより、前記基板保持部材の鉛直方向上側の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の下面との間で基板端部制動領域に対応する領域において、前記基板保持部材の前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な間隙又は漸次大きくなる間隙を形成し、基板への鉛直方向上下の振動ばかりでなく前記基板への面方向の揺動が収束して制動され、前記基板保持用部材から基材の離脱を低減し、割れや傷や汚れを生じることを防止する効果がある。
【0009】
また、本発明によれば、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する領域を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで厚みが漸次薄くなる形状であることにより、前記基板保持部材の鉛直方向上側の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の下面との間で基板端部制動領域に対応する領域において、前記基板保持部材の前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な間隙又は漸次大きくなる間隙を形成し、更に前記基板端部制動領域に対応する領域を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで漸次大きくなる間隔形成し、基板への鉛直方向上下の振動ばかりでなく前記基板への面方向の揺動が収束して制動され、前記基板保持用部材から離脱するなどなく、割れや傷や汚れを生じることを防止する効果があり、更に前記基板端部制動領域に対応する部分を超えて領域においては、変形した基板が基板保持部材の先端に接触することによって生じる割れや傷や汚れを防止する効果がある。
【0010】
また、本発明によれば、前記枠部の直線状の2辺から突出する基板支持部と基板保持部材が、前記枠部の湾曲する辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜していることにより、基板保持用枠体を積み重ねた際に、基板の形状は、上下の基板保持部材の間隙に保持された基板周縁部から基板中央部にかけて、湾曲形状に沿った円滑な形状となり、基板保持部材の先端部近辺での屈曲などによる歪を低減することができる。
【0011】
また、本発明によれば、前記基板保持用枠体が前記基板支持部に複数の基板保持部材を取り付けてなるものであることにより、基板保持部材の加工を、枠部や基板支持部の加工とは別に行うことができるので、基板保持部材の厚みの精度や表面の平坦性を容易に実現することが可能となる。また、損傷したものを交換することが可能となる効果もある。また、基板保持部材の鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部からの位置を変えた基板保持部材と入れ替えることによって、凸部の前記枠部内側方向の端面から、対向する枠部の辺の基板保持部材の凸部の枠部内側方向の端面までの基板に沿った長さを変えることができるので、サイズや揺動範囲が多少異なる基板にも、枠部自体のサイズを変えることなく適応できる効果がある。
【0012】
また、本発明によれば、前記基板保持用枠体が前記枠部と前記基板支持部の間に前記枠部から内側周囲の鉛直方向下方に傾斜して突出した嵌合部を有することにより、基板保持用枠体を複数積み重ねる際に多少位置ずれが生じても傾斜に倣って嵌合し位置調整される効果がある。
【0013】
また、本発明によれば、前記枠部のうち少なくとも一対の対向する2辺に手掛部を有することにより、手掛部に掛ける爪部を有するロボットアームなどにより円滑に掬い上げることを可能とし振動を抑えて基板保持枠体を移動することが可能となる効果がある。
【0014】
そして、本発明の基板搬送方法によれば、上記の基板保持用枠体を用いて、基板最端部を基板保持部材の基板端部制動領域に位置合わせして載置し、その基板載置済み基板保持用枠体をパレットの上に積み重ねし、更に、前記基板保持部材の上面上に載置された基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう隙間を有するように、複数積み重ねて基板保持用枠体集積体を形成して、これを一体として移動することにより、基板に直接押え板などを接触させて押さえるような方法を用いないで、基板の面方向の揺動に対しても基板が跳ねることや割れや傷や汚れが発生することを低減して基板の搬送、保管を行うことが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板保持用枠体を示す平面図、正面図及び側面図である。
【図2】図1の基板保持用枠体の部分の一例を示す断面図である。
【図3】基板保持用枠体における基板端部制動領域と関連部分の位置関係を示す断面図である。
【図4】図1の基板保持用枠体の部分の一例を示す断面図である。
【図5】図1の基板保持用枠体の部分の他の例を示す断面図である。
【図6】図1の基板保持用枠体の部分の他の例を示す断面図である。
【図7】図1の基板保持用枠体の部分の他の例を示す断面図である。
【図8】複数の基板保持部材を有する基板保持用枠体を示す説明図である。
【図9】嵌合部を設けた基板保持用枠体の一例を示す断面図である。
【図10】手掛部を設けた基板保持用枠体の一例を示す断面図である。
【図11】基板搬送方法の工程の流れの一部を示す斜視図である。
【図12】基板搬送方法の工程における基板保持用枠体集積体を示す斜視図である。
【図13】基板搬送方法の工程における基板保持用枠体の部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、まず、基板保持用枠体について、次にその基板保持用枠体を用いた基板搬送方法について図面に基づいて説明する。基板保持用枠体の実施形態については、種種の態様(1〜8)があるため、以下順次説明する。
【0017】
A.基板保持用枠体
基板保持用枠体の実施形態について、図1〜図10に基づいて説明する。
【0018】
(態様1)
図1は、基板保持用枠体1を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
基板保持用枠体1は、図1(a)の平面図のように、外形は矩形状である枠体である。
また、図1(b)、図1(c)のように、枠部2は、一対の対向する直線状の2辺と、所定の形状で中央部が鉛直方向下側に湾曲した他の2辺からなる。ここでは枠部2から内周側の領域Kは、開口とされて何もない空間域である。この中央の領Kは、開口とされていても、枠部の対向する2辺に跨る帯状の補助支持部材などを有していてもよい。
図1(a)のように、基板保持用枠体1は、枠部2から内周側に突出する基板支持部3(図1(a)の枠部2の内周側の実線と隣接する二点鎖線で囲まれた部分)と、さらに基板支持部3の内周側に取り付けられた基板保持部材4からなるものである。
また、図1(a)の基板保持部材4の枠部2の内周域に、基板端部制動領域5(図1(a)の二点鎖線で示された大きい方の四角形より小さい側であって小さい方の四角形より大きい側の間の部分)を有する。
図2は、図1(a)のA−A、及びB−B線における断面図である。この図では、枠部2と、枠部2から突出する基板支持部3と、基板支持部3の先に取り付けられた基板保持部材4が示されている。ここで、基板支持部3と基板保持部材4との位置関係は、基板支持部3と基板保持部材4に取り付ける方法によっては、基板保持部材4の中心部を枠部2に近い側から遠い側に向かって基板支持部3が貫通(点線で挟まれた部分)するように構成される場合をも示すものである。
また、図2に示すように、基板保持部材4の鉛直方向下方の面は、枠部2に近い側から遠い側に均一な厚みを有する断面をもつ形状にされている。また、基板保持部材4は、枠部2に近い部分に鉛直方向下側に突出する凸部6を有する。この凸部6は、基板保持用枠体を積み重ねた際に載置された基板最端部の揺動防止用ストッパーとして機能する。
ここで、鉛直方向上側、鉛直方向下側とは、本明細書では、基板保持用枠体の枠部の対向する直線状の2辺を含む平面を水平にして、その水平面に対する鉛直方向の上側、下側を云うものとする。
【0019】
また、図3は、基板保持用枠体(基板10を載置済み)を2段積み重ねた状態の、図1(a)C−C線における断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。なお、枠体の中央域を省略し、左右を接近させて図示している。
態様1では、図3のように、基板保持部材4(図における左上側のもの)の凸部6の枠部2の内側方向の端面から、対向する辺(図における右側のもの)の基板保持部材4の凸部6の内側方向の端面までの基板に沿った長さxは、基板10の湾曲した辺の長さをc、所定の試験法により求めた基板最端部の揺動範囲の長さをaとすれば、x=c+aの関係式となっている。
また、図3のように下方の基板保持部材4の上面に載置された基板10の上面と、その上方に積み重ねられた基板保持部材4の下面との間に隙間tを有している。
なお、図3では基板が載置されたある時点の状態が示されているが、基板搬送時には、基板は、基板最端部が凸部6端面から揺動範囲aの長さまで基板の面方向に揺動し、その領域において隙間tを有していることになる。
この隙間tの間隙幅は、0を超え、基材の厚みの4倍以下であり、好ましくは、基板の厚みと同等以上、3倍以下とすることにより、基板の鉛直方向上下やの面方向に衝撃や振動が加わった場合に、上下の基板保持部材の面に接触してその振動や揺動を制動し収束することにより、基板保持用部材から基板周縁部が離脱することを低減し、基板に割れや傷や汚れを生じることを防止する効果を有するものである。
また、基板保持部材4の下面の凸部6から基板保持部材4の先端側に向かって、隙間tが均一となる領域に対応して基板保持部材4の枠部2の辺に直交する方向の断面において均一な厚みを有している領域の長さをyとすると、yは少なくとも揺動範囲aを超えるものとなっている。
そして、基板端部制動領域5は、図3に示す2段の基板保持用枠体のうち下段の基板保持部材4の上面に有し、上段の基板保持部材4の下面の領域yに対応した領域であり、したがって、揺動範囲aを超えるものである。
また、上段の基板保持部材4の上面における基板端部制動領域5は、さらに上に積み重ねる基板保持部材4が、必然的に同様に積み重ねるように基板保持用枠体が設計されており、下段と相似の位置に有している。
【0020】
(態様2)
次に、本発明の態様2について、図4に基づいて説明する。図4は、図1(a)のA−A、及びB−B線における断面図である。
態様2では、基板保持部材4の形状が、図4の部分断面図に示すように、態様1の図2の基板保持部材の断面形状とは異なり、枠部2に近い側から遠い側に向かって厚みが徐々に薄くされている。このように、この点を除けば全て態様1と同様の基板保持用枠体である。
【0021】
(態様3)
次に、本発明の態様3について、図5に基づいて説明する。図5は、図1(a)のA−A線およびB−B線における部分の断面図である。
態様3では、基板保持部材4の形状が、図5の部分断面図に示すように、態様1の図2の基板保持部材4の断面形状とは異なり、枠部2に近い側から遠い側に向かって基板端部制動領域5において厚みは均一であり、更に基板端部制動領域に対応する領域を超えて枠部2から遠い側に向かって基板保持部材4の末端まで、厚みが漸次薄く変化させたものとなっている。この点を除けば全て態様1と同様の基板保持用枠体である。
【0022】
(態様4)
次に、本発明の態様4について、図6に基づいて説明する。図6は、図1(a)のA−A線およびB−B線における部分の断面図である。
態様4では、基板保持部材4の形状が、図6の部分断面図に示すように、態様1の図2の基板保持部材4の断面形状とは異なり、基板端部制動領域5において枠部2に近い側から遠い側に向かって厚みが徐々に薄くなっており、更に基板端部制動領域に対応する領域を超えて枠部2から遠い側に向かって基板保持部材4の末端まで、厚みが漸次薄く変化させたものとなっている。
この点を除けば全て態様1と同様の基板保持用枠体である。
【0023】
(態様5)
次に、本発明の態様5について、図7に基づいて説明する。図7は、図1(a)のA−A線における部分の断面図である。
態様5では、図1(a)のA−A線における基板保持部材の形状が、図7の部分断面図に示すように、態様4の図6の基板保持部材4の断面形状と同じであるが、基板支持部3が枠部2からその内側であって枠部2の湾曲した辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜して突出し、その延長上に基板保持部材4が取り付けられている点で異なるものとなっている。
この点を除けば全て態様4と同様の基板保持用枠体である。
このように基板保持部材を傾斜させることにより、基板保持用枠体1を積み重ねた際に、基板の周縁部は、上下の基板保持部材4の間隙にその形状に沿って保持されており、一方、基板の中央部は湾曲形状に沿った形状となっており、基板の湾曲率によっては基板周縁部と中央部の間に急激な屈曲が生じることがあり、このような歪を低減することができる。
【0024】
(態様6)
次に、本発明の態様6について、図8に基づいて説明する。
態様6は、複数の基板保持部材4を分散して基板支持部3に取り付けた基板保持用枠体であり、この点を除けば全て態様1〜5と同様の基板保持用枠体である。
図8(a)は、基板支持部3に複数の基板保持部材4を取り付けた基板保持用枠体1を示す平面図であり、基板保持部材4の間には部分的に基板支持部3が露出している。
図8(b)は、基板保持部材4が、枠部2から突出する基板支持部3に取り付けられている基板保持用枠体1の部分を示す拡大斜視図である。図8(b)のように、基板保持部材4はその断面がコの字型に現れるように加工されており、基板支持部3に嵌め込みされた構造となっている。基板保持部材4の上面と基板保持部材4の下面は平滑な面を有する形状にされている。
【0025】
(態様7)
次に、本発明の態様7について、図9(a)および(b)に基づいて説明する。
態様7は、嵌合部7を有する基板保持用枠体1であり、この点を除けば全て態様1〜6と同様の基板保持用枠体である。
図9(a)は、嵌合部7を有する基板保持用枠体の部分とその嵌合の状態を示す断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図9(a)に示すように、3段の基板保持用枠体(図の下方の2段の基板保持用枠体は積み重ねられている)の各々の嵌合部7は、枠部2と基板支持部3との間に、枠部2から枠部2に囲まれた内側の鉛直方向下方に傾斜して突出して形成され、嵌合部7の鉛直方向上側の面と鉛直方向下側の面が相似の面形状をしている。そして、図9(a)の下方に示すように、積み重ねられた2段の基板保持用枠体は、上下の基板保持用枠体1の当該面の嵌合部7において嵌め合わせられている。
また、図9(b)は、図9(a)とは異なる形状の嵌合部7を有する基板保持用枠体1とその嵌合の状態を示す断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図9(b)に示すように、嵌合部7は、枠部2から鉛直方向の上下に2つに分かれて突出しており、上部の嵌合部7は、枠部2から鉛直方向下方に傾斜して突出して形成され、その延長上に基板支持部3を有するものであり、下部の嵌合部7は枠部2の鉛直方向下側から突出し、上部の嵌合部7と嵌合できる形状をしている。
なお、図示はしていないが、図9(b)では、鉛直方向下側から突き出した下部の嵌合部7がその延長上に基板支持部3を有し、上部の嵌合部7が枠部2の鉛直方向上側から突出し、下部の嵌合部7と嵌合できる形状をしたものとすることも可能である。
このように嵌合部7は、枠部2から内周側に突き出して形成されているので、基板保持用枠体1および基板10の荷重を直接受けないので荷重による変形を生ずることが少なく、また、嵌合部7は鉛直方向下方に傾斜して突出して形成されているので基板保持用枠体1を積み重ねる際に多少位置ずれが生じても傾斜に倣って嵌合し位置調整される機能を有する。
【0026】
(態様8)
次に、本発明の態様8について、図10に基づいて説明する。図9は、本発明に用いられる手掛部8を有する基板保持用枠体の部分を示す断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
態様8は、手掛部8を有する基板保持用枠体1であり、この点を除けば全て態様1〜7と同様の基板保持用枠体である。
手掛部8は、少なくとも対向する直線状の2辺の枠部2の外側周囲に突出して形成されており、辺全長に沿って形成されても、または要所に分離して形成されてもよい。
【0027】
B.基板搬送方法
次に、上記の基板保持用枠体を用いた基板搬送方法の実施形態について、図11〜図13に基づいて説明する。
【0028】
まず、図11(a)に示すように、基板保持用枠体1の鉛直方向上方において、基板10の長さがcの辺を前記基板保持用枠体の前記枠部2の湾曲している辺に合うように、且つ、基板10の最端部が基板保持用部材4の上面に有する基板端部制動領域5に含まれるように位置合わせする。ここで、基板が基板保持用枠体に載置された後に安定した状態に速やかに移行するように、基板保持部材の上面の基板端部制動領域であって、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部端面に対応した位置から揺動範囲の長さまでの範囲のどこかに基板最端部を位置合わせすることが好ましい。また、その揺動範囲の揺動の中心に基板最端部を位置合わせすることは、さらに基板が基板保持用枠体に載置された後に安定した状態に速やかに移行するために好ましい。
そして、基板10と基板保持用枠体1とを少なくとも一方を鉛直方向に移動させて双方が近づけられる。図11(a)では、基板10が基板保持用枠体1に向かって近づけられるように矢印が記載されているが、逆に、基板保持用枠体1が基板10に向かって近づけられてもよい。
ここで、基板端部制動領域5については、図11(a)では一本の二点鎖線で示されている。実際には、幅を有するものであって、図1により説明すると、 図1(a)の基板保持用枠体1の正面図における二点鎖線で示された大きい方の四角形より小さい側であって小さい方の四角形より大きい側の間の部分に相当するものである。
そして、基板10の周縁部を基板保持用部材4の上面に接触させて、前記基板10を前記基板保持用枠体1に載置される。
次に、図11(b)に示すように、上記の工程で得られた基板10が載置された基板保持用枠体1がパレット20の上に積み重ねられる。
次に、図11(c)に示すように、パレット20の上に積み重ねられた基板10の載置済み基板保持用枠体1の上に、同様にして得られた別の基板10の載置済み基板保持用枠体1を、上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面を互いに重なるように面接触させる。この時、前記枠部2の辺に直交する方向の断面において、前記基板保持部材4の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板10の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体1の基板保持部材4の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域5に対応する部分において接触しないで隙間を有するように基板保持用枠体1は積み重ねられる。
上記のように、基板載置済みの基板保持用枠体1を、パレット20又は基板載置済みの基板保持用枠体1の上に積み重ねる工程には、基板10載置済みの基板保持用枠体1を、ロボットアームにより把持して移動させ、パレット20又は基板載置済みの基板保持用枠体1の直上において位置合わせし、下方に移動させて積み重ねる手段を用いることができる。
次に、図12に示すように、基板10の載置済みの基板保持用枠体1を積み重ねられる工程が複数回繰り返されることにより、基板保持用枠体集積体100が形成されている。
次に、この基板保持用枠体集積体100は、一体として次の工程に移動される。目的によっては、が基板保持用枠体集積体100は、梱包されて保管、搬送される。
さらに、上記で説明した工程について、図13に基づいて説明する。
図13(a)は、枠部2の辺に直交する方向の断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図13(a)に示すように、枠部2から突出した基板支持部3とその延長上に基板保持部材4が構成されており、基板保持部材4の上側には基板端部制動領域5を有している。その基板保持部材4の上方に、基板10がその最端部eが、基板保持部材4の基板端部制動領域5に含まれるように位置合わせされている。
上記のように、基板10を基板保持用枠体1に載置する工程には、基板10をコンベアにより水平移動して基板保持用枠体1に受け渡しする地点において停止して位置合わせし、コンベアの間隙から鉛直方向に突き出す複数のピンにより、各ピンが基板保持用枠体の湾曲状態に対応した高さに制御して基板10を保持し、基板受け渡し地点の直下に待機させた基板保持用枠体1をロボットアームにより把持して、鉛直方向上方に移動して基板10を掬いあげる手段を用いることができる。
図13(b)は、基板載置済みの基板保持用枠体1が2段積み重ねられた上に、更に、基板載置済みの基板保持用枠体1を積み重ねるために位置合わせされている状態を示す、枠部2の辺に直交する方向の断面図である。その基板保持部材4は図7に示す形状のものを一例としている。
図13(b)に示すように、基板10の載置済みの基板保持用枠体1は、その組合せたものをX−1、X−2、X−3として、既にX−1の上にX−2が積み重ねられており、X−2の上方にX−3が位置合わせされている状況である。この際に、X−2の上にX−3を積み重ねる方法は、X−2の基板保持部材4の上面に載置された基板10と、X−2の基板保持部材4の下面との間に一定の隙間を、所定の基板端部制動領域5に対応する領域において有し、基板が基板保持部材4の裏面に接触しないように、基板周縁部を保持して積み重ねられる。なお、予定された基板の厚みにおいて、隙間が必然的に生じるように設計されているので、枠体1の重ね合わせ位置がずれなければ、隙間の形成に格別な注意を必要とはしない。
【0029】
以下、さらに、本発明の基板保持用枠体の各部の材料や製法などについて説明する。
【0030】
1.基板保持用枠体
(a)枠部
本発明に用いられる基板保持用枠体の枠部は、基板保持用枠体の骨格構造をなすものであり、また、枠部は、枠部の辺に直交する方向の断面形状は矩形状であり、基板保持用枠体を複数積み重ねる際に、重なり部分となるものであり、その鉛直方向上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面が互いに面接触して積み重ねられるように形成されているものである。したがって、枠部は、基板保持用枠体自体に強度と精度を持たせる機能を有するものである。
また、枠部はその内側周囲に突出する基板支持部その先に延長する基板保持部材や嵌合部を備え、外側に突出する手掛部を備えることができるものである。
枠部から内周側に設けられた基板保持部材で囲まれた中央の領域は、開口とされて何もない空間域であっても、枠部の対向する2辺に跨り、基板を補助的に支持するための帯状などの補助支持部材を有していてもよい。
ここで、上記の枠部の内側の中央の領域に前記補助支持部材を有する場合には、基板が載置されて外部から衝撃や振動を受けた場合に、その補助支持部材により衝撃や振動を吸収して、基板の跳ねや揺動を低減することができる。一方、基板の中央部はその上面に直接、補助支持部材が接触するため、衝撃や振動によって割れや傷や汚れが発生し易くなる。
また、枠部の内側の中央の領域が空間域とされ何もない場合には、基板の中央部分は基板上面に直接接触するものが存在しないため、衝撃や振動が加わった場合に割れや傷や汚れの発生を抑えることができる。また、枠部の構造が単純であるので製造し易い利点がある。一方、基板のサイズが、衝撃や振動が加わった場合に撓みによる振動や揺動が制御できないほど大きくなった場合には、割れや傷や汚れが発生し易くなる。
また、枠部の形状は、一対の対向する2辺が直線状であり、残りの2辺が湾曲したものである。湾曲した枠部材の形状は、円弧状、放物線状、又は所定の湾曲率のものを採用することができる。
また、枠部を作成する方法としては、四辺の各辺に上記の材料を用いて成型法などにより枠部材を作製し、枠部材を四隅で連結して四角形状の枠部を形成する方法を用いることができる。この場合、四隅の連結は、枠部材の端部を樹脂などの連結部材に二方向から嵌め込んで間接的に連結する方法や、枠部材同士を四隅で、溶接などで直接的に接合する方法によって行える。
また、このような枠部は構造強度を有する材料により形成される必要があり、強度が大きく、軽量な金属やプラスチック等の材料が用いられ、好ましくは、例えば、アルミニウム、ジュラルミン、強化プラスチック等が挙げられる。さらに、枠部は軽量化のために構造は中空であることが好ましい。
【0031】
(b)基板支持部
本発明に用いられる基板保持用枠体における基板支持部は、枠部の内側周囲に突出しており、基板保持部材を介して基板周縁部を載置し支持するものである。
基板支持部の材料としては、枠部と同じ材料であるアルミニウム、ジュラルミン等の金属や強化プラスチックなどが用いられる。
基板支持部の作成方法としては成型法などが使えるが、好ましくは、枠部を中空形状とし同時に押し出し成型することが好ましい。
【0032】
(c)基板保持部材
本発明に用いられる基板保持部材は、基板支持部に取り付けられて、直接、基板周縁部を載置し、同様にして得られた基板保持用枠体を積み重ねる場合に、上方の基板保持用枠体の鉛直方向下側の面(下面と云う)は、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向上側の面(上面と云う)とで挟まれた間隙を形成するものである。
また、基板保持部材の形状は、枠部の辺に直交する厚み方向の断面において、枠部に近い側から内側に向かって所定の領域が一定の厚みを有するものや、枠部に近い側から遠い側に向かって所定の領域が一定の厚みを有し、さらに中心側に向かい厚みが薄くなっているものが、基板に接触しないで保持するものとして適する。
また、基板支持部への基板保持部材の取り付けは、着脱可能とされてもよく、複数の基板保持部材に分散して基板支持部に取り付けられていてもよい。基板保持用枠体の大きさにもよるが、サイズが枠部に直交する方向の幅5〜10cm、枠部に沿う方向の長さ10〜25cmの基板保持部材を、枠部一辺に5〜20個程度、取り付けることができる。
また、基板支持部へ基板保持部材の取り付け方法については、各種の方法を用いることができる。例えば、基板保持部材の断面形状をコの字型に加工しておき、基板支持部を嵌め込む方法や、基板保持部材の上面部と同下面部を2つに分けておき、基板支持部に設けた貫通口に基板支持部上側から基板保持部材の上面部を、基板支持部下側から基板保持部材の下面部を合わせて嵌め込み固定する方法を取ることができる。
そして、このように基板支持部への基板保持部材の取り付けを可能とすることによって、
基板保持部材の加工を、枠部や基板支持部の加工とは別に行うことができるので、基板保持部材の厚みの精度や表面の平坦性を容易に実現することが可能となる。また、損傷したものを交換することもできる。そして、また、基板保持部材の鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部からの位置をかえることによって、前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記辺と対向する前記枠部の辺の基板保持部材に鉛直方向下側の面に配設する凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さを変えることができるので、枠部構造のサイズを変えることなく、サイズや揺動範囲の異なる基板にも適応できる。
また、基板保持部材の材料としては、枠部と同じ材料であるアルミニウムや、ジュラルミンとすることや、振動抑制の面から基板支持部表面にクッション材を設けておく形態や、基板支持部を樹脂特に熱可塑性樹脂からなるものとすることが好ましい。さらに熱可塑性樹脂の中でも、特に塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトンが望ましい。尚、同様の機能を有すれば、基板保持部材の材料はこれらに限定されない。
【0033】
1)基板保持部材の上面
本発明に用いられる基板保持部材の上面とは、枠部の対向する直線状の2辺を含む平面を水平にした基板保持用枠体に基板を載置して、該基板保持用枠体を複数積み重ねる基板保持用枠体の搬送方法において、基板保持部材の鉛直方向上側の面に位置するものである。
そして、基板保持部材の上面は、その表面に基板の周縁部分を接触させて基板を載置するものである。また基板保持部材の上面には、基板を載置するために、枠部から内側方向に所定の範囲を基板端部制動領域として規定した領域を有する。
また、基板保持部材の上面は、平坦部を有し、その表面は鏡面仕上げが好ましい。基板保持部材の表面が粗面であると、基板の周縁部が基板保持部材の表面に載置されて、搬送、保管される場合に加えられた振動により基板端部が上下に跳ねたり揺動することによって、基板保持部材の材料が転写されて基板表面が汚染される原因となる。また、基板保持部材の表面の凹凸により基板に割れや傷が生じる原因ともなる。
【0034】
2)基板保持部材の下面
本発明における基板保持部材の下面は、基板を基板保持用枠体に水平方向に載置して収納し該基板保持用枠体を複数枚積み重ねる基板保用枠体の搬送方法において、基板保持部材の鉛直方向下側の面に位置するものである。
基板保持部材の下面は、同じ型の基板保持用枠体に基板を載置した状態で積み重ねる場合に、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の上面とで挟まれた間隙を形成するものであり、したがって、基板保持部材は、枠部の辺に直交する厚み方向の断面において、枠部に近い側から遠い側に向かって所定の均一な厚み、又は所定の範囲で漸次薄くなる厚みを有す場合には、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の上面とで挟まれた間隙は、枠部に近い側から遠い側に向かって所定の均一な間隙、又は所定の範囲で漸次大きくなる間隙を形成するものである。
また、基板保持部材上面に載置された基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面とが、基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう所定の隙間を有して、接触しないで基板の周縁部分を保持するものである。
ここで、上下の基板保持部材間の間隙は、基板保持用枠体を積み重ねる場合に、上方の基板保持用枠体の下面と、下方の基板保持用枠体の基板保持部材の上面とで挟まれた基板端部制動領域に対応する領域の間隙は、載置される基材の厚みを超え、基材の厚みの5倍以下であれば、基板に上方の基板保持用枠体の裏面が接触せずに、また、振動により基材の跳ねや離脱を低減して保持することができる。さらに好ましくは基材の厚みの2〜3倍とすることがよい。即ち、基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置された基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面との隙間は、0を超え、基材の厚みの4倍以下であり、好ましくは、基板の厚みと同等以上、3倍以下とすることがよい。
また、基板保持部材の下面は、その枠部に近い最端部に凸部を有する。凸部は枠部の辺に平行に配設されており、連続していても、不連続であってもよい。
凸部は、基板搬送時の振動により基板端部が最大に移動した場合に、基板端面が凸部に突き当たり制止するストッパーとして機能し、基板保持用枠体が積み重ねられて際に、上下の基板保持部材の間にあって凸部の枠部内側方向の端面によって囲まれた範囲は、基板の大きさより大きく、基板端部が振動に移動した時に最大に移動できる範囲となる。
したがって、凸部の枠部からの位置を変更することによって、基板保持部材の下面の凸部端面から、対向する枠部側の凸部端面との間の長さを変更して、基板のサイズや基板の揺動範囲の変化に対応することができるものである。
【0035】
3)基板端部制動領域
本発明における基板端部制動領域は、基板保持部材の上面にあり、基板の周縁部を載置するものであり、その上に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の下面と基板上面との間に隙間を有し、基板の振動及び揺動が制動される領域である。
具体的には、基板の大きさ、基板保持用枠体および基板保持部材の形状、基板の揺動範囲が決まれば、以下のように求められるものである。
基板と基板保持用枠体及び基板保持部材の関係については、枠部の直線状の1辺に設けられた基板保持部材下面の凸部の枠部内側方向の端面から、対向する辺に設けられた基板保持部材下面の凸部端面までの基板に沿った長さxは、上記の対向する凸部端面から凸部端面への方向に沿った基板の湾曲している辺の長さをc、基板最端部の揺動範囲をa、とすると以下の関係式となる。
x=c+a
また、基板保持部材上面に載置された基板の上面と、その上に積み重ねられた基板保持部材の下面との間に隙間を有し、また、基板保持部材の下面の凸部から基板保持部材の先端側に向かって、隙間を有する領域に対応して基板保持部材の枠部の辺に直交する方向の断面において均一な厚みまたは漸次薄くなる厚みを有する領域の長さをyとすると、yは少なくとも揺動範囲aを超えるものとなっている。
以上の条件から、基板端部制動領域は、基板保持部材の上面に有し、上に積み重ねる基板保持部材の下面の領域yに対応する領域である。
したがって、基盤端部制動領域の枠部に近い最端は、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部の枠部内側方向の端に対応し、その位置から長さが揺動範囲aを超えるものとなるものである。
なお、基板端部制動領域の枠部側の最端の位置は、基板保持部材が枠部から鉛直方向下方に傾斜している場合には、その傾斜の角度により異なるものとなるものである。
また、基板保持部材の上面における基板端部制動領域は、さらに上に積み重ねる基板保持部材が、必然的に同様に積み重ねるように基板保持用枠体が設計されているので相似の位置に有しており、基板を載置する位置合わせを可能とするものである。
ここで、基板最端部の揺動範囲は、基板、基板保持用枠体、基板搬送条件によって異なるものである。まず、基板のサイズに対応して、基板保持用枠体の形状、基板保持部材の形状を仮決めしたものを準備し、次に、基材を基板保持用枠体に湾曲させて載置して、基板保持用枠体(基板含む)を実用上の段数(例えば100段)をパレット(振動防止パレットを含む)上に積み重ねて基板保持用枠体集積体を形成する。この状態で、実際の搬送状態に応じた振動テスト(トラック等による搬送テスト)や、振動試験機の加振台上で適正な加振条件(例えば、ASTMトラックレベル3)により、基板保持用枠体集積体に振動を加えた状態で、基板の面方向の変位を測定して、基板保持部材の上面の基板最端部の揺動範囲を求めるものである。変位は、特別大きな変位を除いてその最大幅を揺動範囲とする。また、変位は実際の搬送条件に近い複数の条件により測定して、揺動範囲を決定することが好ましく、搬送時の基板の面方向の揺動に対しても基板が跳ねることや割れや傷や汚れが発生することをより安定して低減することができる。
【0036】
(d)嵌合部
本発明に用いられる基板保持用枠体の嵌合部は、枠部自体、枠部の外側、または枠部の内側に設けることができる。
このうち枠部の枠部に囲まれた内側に突出して設ける場合には、嵌合部は、枠部から内側に突き出して形成されているので、基板保持用枠体および基板の荷重を直接受けないので荷重による変形を生ずることがなく、また、嵌合部は鉛直方向下方に傾斜して突出して形成されているので基板保持用枠体を積み重ねる際に多少位置ずれが生じても傾斜に倣って嵌合し位置調整される機能を有する。さらに、基板保持用枠体を積み重ねた状態で枠部に囲まれた内部の略密封性が保たれて塵埃などが溜まることを低減する利点を有する。
また嵌合部は、枠部の鉛直方向上側の面に沿って一定の厚みで内側に突出して鉛直方向下方に屈曲し延長された形状の面、および枠部の鉛直方向下側の面に沿って一定の厚みで内側に突出して鉛直方向下方に屈曲し延長された形状の面とが嵌め合わせ可能なように形成することにより、上下の基板保持用枠体を積み重ねる際に勘合することができる。
ここで、枠部の鉛直方向上側の面に沿って一定の厚みで内側に突出した勘合部(その延長上に基板支持部を有するもの)と、枠部の鉛直方向下側の面に沿って一定の厚みで内側に突出した上部の勘合部と勘合する形状の勘合部と、2つの勘合部を有するように設けることができる。この場合に、枠部の鉛直方向上側の面に沿って一定の厚みで内側に突出して鉛直方向下方に屈曲し延長された構造を基板支持部の一部とするものとした場合には、勘合部が基板支持部に覆われているので、屈曲した部分に塵埃などが溜まることを低減するなどの利点を有する。
なお、鉛直方向下側から突き出した嵌合部がその延長上に基板支持部を有し、下部の嵌合部が枠部の鉛直方向上側から突出し、上部の嵌合部と嵌合できる形状としたものとすることも可能である。
【0037】
(e)手掛部
本発明に用いられる基板保持用枠体の手掛部は、枠部の外側、または枠部自体に設けることができる。 枠部の外側の場合には、枠部の少なくとも対向する2辺の外側に一定の厚みで延びて形成される。手掛部はロボットアームなどで把持する部分であり、辺の全長に沿って設ける必要はなく把持部分に応じた長さのものであってもよい。
また、手掛部の鉛直方向上側の面が、枠部内側に突出する基板支持部の表面と同一平面にあることが好ましく、凹凸部がないことにより塵埃などが溜まることを低減する利点を有する。
【0038】
(実施例)
以下のガラス基板を使用した。
・基板のサイズ:1500mm×1800mm
・基板の厚み :0.7mm
次に、以下のような基板保持用枠体を準備した。
・基板保持用枠体の形状:
枠部の短辺が中央部に最下点がある円弧状に湾曲(湾曲部の鉛直方向の最下点までの長さ100 mm)とした形状とし、長辺が直線状とした。平面視上は四角形であり、枠部から内周側に設けら れた基板保持部材で囲まれた中央の領域は、開口とし何もないものとした。
・基板保持用枠体には、嵌合部(態様7、図9(b)参照)、手掛部を設けた(態様8、図10参照 )。
・揺動範囲の測定:
上記の基板と基板保持用枠体を用いて、実際の搬送状態に応じた振動テスト(トラック等による搬 送テスト)により測定された基板最端部の面方向の変位から揺動範囲を求めた。基板最端部の揺動 範囲:aは、a=10mm(揺動中心から±5mm)
ここで、基板保持部材の形状は、基板保持部材下面の凸部端面から枠部から遠い側に30mmま で、均一な厚みであり、更に枠部から遠い側に向かって基板保持部材の端部(凸部端面から50m m)まで厚みが漸次薄くなる形状。枠部の直線状の2辺に設けた基板保持部材については、枠部2 の湾曲する辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜させた(態様6、図6、図7参照)ものを使用し た。
・基板保持部材の形状:
基板保持部材下面の凸部端面から枠部から遠い側に11mmまで、均一な厚みであり、更に枠部 から遠い側に向かって基板保持部材の端部(凸部端面から50mm)まで厚みが漸次薄くなる形状 。枠部の直線状の2辺に設けた基板保持部材については、枠部2の湾曲する辺の形状に沿って鉛直 方向下方に水平面から15度の角度で傾斜させた。(態様6、図6、図7参照)
以上の項目から、以下の関係となるように基板保持用枠体を形成した。
・基板保持用枠体と基板との関係(図3参照):
枠部の一辺にある基板保持部材下面の凸部の枠部内側方向の端面から、対向する辺の基板保持部材 下面の凸部の枠部内側方向の端面までの長さxを、x=c+a=1500+10=1510mmと した。
・二つの基板保持部材の上下に挟まれる間隙は、基板端部制動領域に対応する部分を前記枠部に近い 側から遠い側に11mmまでは均一な間隙1.4mmであり、更に前記基板端部制動領域に対応す る部分を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで間隙が大きくなるもの とした。
・基板端部制動領域は、基板保持部材の上面において、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部端 面に対応した位置(この基板保持部材において枠部側から1mmの位置)からの長さを11mmと し、基板最端部の揺動範囲10mmを含む、すなわち揺動範囲10mmを超えるものとした。
そして、次に上記の基板保持用枠体を用いて、以下のように工程により基板搬送方法を実行した( 図11 、図12参照)。
まず、基板保持部材の上面の基板端部制動領域であって、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸 部端面に対応した位置(この基板保持部材において枠部側から1mmの位置)から揺動範囲の長さ の範囲に収まるように、基板の短辺の最端部を位置合わせし、基板周縁部を基板保持部材に載置し た。ここでは、基板保持部材の上面において、上に積み重ねる基板保持部材の下面の凸部端面に対 応した位置(この基板保持部材において枠部側から1mmの位置)から長さ5mmの位置に、基板 最端部を位置合わせして、基板周縁部を基板保持部材に載置した。
次に、上記で得た基板保持用枠体を、パレット上に積み重ね、さらにこの上に同様にして得た基 板載置済みの基板保持用枠体を積み重ねて、100段の基板保持用枠体集積体を得た。
この基板保持用枠体集積体に対して、実際の基板搬送の条件を再現した振動試験機により振動を 加えて基板の保持状態を観察した結果、基板が跳ねや振動により基板保持部から離脱することなど なく、基板に割れや傷が生じていなかった。
【0039】
(比較例)
上記の実施例において、揺動範囲が20mm(揺動中心から±10mm)である以外は、全て上記の条件と同じである。
その結果は、基板端部制動領域は揺動範囲を含むものでないために、基板端部を基板端部制動領域に位置合わせして基板を基板保持部材上面に載置しても、振動テストにより基板が跳ねや振動によって基板保持部材間に囲まれた間隙幅:1.4mmの領域から離脱して、基板に割れや傷が生じることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体と、該基板保持用枠体を複数積み重ねた状態で搬送または保管する基板搬送方法に関し、特に、ガラスやプラスチックなどの板状物や、平面ディスプレイパネル用部材や中間製品などの搬送、保管に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 基板保持用枠体
2 枠部
3 基板支持部
4 基板保持部材
5 基板端部制動領域
6 凸部
7 嵌合部
8 手掛部
10 基板
20 パレット
100 基板保持用枠体集積体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体であって、且つ、前記基板を載置した状態で複数積み重ねた状態で搬送または保管に用いられる基板保持用枠体であって、
枠部と、該枠部の内側周囲に突出する基板支持部と、該基板支持部に取り付けられた基板保持部材とからなり、
前記枠部は、一対の対向する直線状の2辺と、中央部が鉛直方向下方側に湾曲した他の2辺とからなり、平面視上矩形状であり、
前記枠部は、前記枠部の辺に直交する方向の断面が矩形状であり鉛直方向に厚みを有するものであり、基板保持用枠体を複数重ねる際に鉛直方向上下の枠部の上面と下面が互いに面接触するように形成されており、
前記基板保持部材の鉛直方向上側の面は、前記基板を載置する際に前記基板の最端部を位置合わせする領域であって、前記基板を搬送する際の前記基板の面方向の前記基板最端部の揺動範囲を含む領域である基板端部制動領域を有し、且つ、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記枠部の厚みより小さい厚みを有し、
前記基板保持部材の鉛直方向下側の面は、前記枠部に近い最端部に、前記枠部の辺に沿って配設された凸部を有し、
前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないで隙間を有して前記基板を保持するような形状であり、
前記基板保持用枠体に基板が載置される場合に、前記基板の湾曲している辺の長さをc、前記基板の湾曲した辺に沿った方向に前記基板が揺動したときの前記基板最端部の揺動範囲の長さをa、とすると、
前記枠部の直線状の一辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記直線状の辺と対向する辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さxが、x=c+aであり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する前記基板保持部材の鉛直方向下側の面にある領域の前記凸部端面からの長さyが、少なくとも揺動範囲を超えるように形成されてなることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項2】
請求項1に記載の基板保持用枠体において、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項3】
請求項1に記載の基板保持用枠体において、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する領域を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで厚みが漸次薄くなる形状であることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記枠部の直線状の2辺から突出する基板支持部と基板保持部材が、前記枠部の湾曲する辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜していることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記基板支持部に複数の基板保持部材を取り付けてなるものであることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記枠部と前記基板支持部の間に前記枠部から内側周囲の鉛直方向下方に傾斜して突出した嵌合部を有することを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記枠部の少なくとも一対の対向する2辺に手掛部を有するものであることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体を用いた基板搬送方法であって、
前記基板保持用枠体の前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に、前記基板の辺の長さがcの辺を前記基板保持用枠体の前記枠部の湾曲した辺に合うように、且つ、前記基板の最端部を前記基板端部制動領域に含まれるように位置合わせした後に、
前記基板の周縁部を接触させて、前記基板を前記基板保持用枠体に載置し基板載置済み基板保持用枠体とすること、
前記基板載置済み基板保持用枠体を、パレットの上に積み重ねし、
パレット上に積み重ねられた前記基板載置済み基板保持用枠体の上に、同様にして得られた別の基板載置済み基板保持用枠体を、上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面が互いに面接触して重なるように、且つ、枠部の辺に直交する方向の断面において、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう隙間を有するように積み重ねること、
この前記基板保持用枠体積み重ね工程を繰り返すことにより複数の基板載置済みの基板保持用枠体を積み重ねた基板保持用枠体集積体とした後、
前記基板保持用枠体集積体を一体として移動することを特徴とする
基板搬送方法。
【請求項1】
剛性のある矩形状の基板の1枚を載置する基板保持用枠体であって、且つ、前記基板を載置した状態で複数積み重ねた状態で搬送または保管に用いられる基板保持用枠体であって、
枠部と、該枠部の内側周囲に突出する基板支持部と、該基板支持部に取り付けられた基板保持部材とからなり、
前記枠部は、一対の対向する直線状の2辺と、中央部が鉛直方向下方側に湾曲した他の2辺とからなり、平面視上矩形状であり、
前記枠部は、前記枠部の辺に直交する方向の断面が矩形状であり鉛直方向に厚みを有するものであり、基板保持用枠体を複数重ねる際に鉛直方向上下の枠部の上面と下面が互いに面接触するように形成されており、
前記基板保持部材の鉛直方向上側の面は、前記基板を載置する際に前記基板の最端部を位置合わせする領域であって、前記基板を搬送する際の前記基板の面方向の前記基板最端部の揺動範囲を含む領域である基板端部制動領域を有し、且つ、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記枠部の厚みより小さい厚みを有し、
前記基板保持部材の鉛直方向下側の面は、前記枠部に近い最端部に、前記枠部の辺に沿って配設された凸部を有し、
前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないで隙間を有して前記基板を保持するような形状であり、
前記基板保持用枠体に基板が載置される場合に、前記基板の湾曲している辺の長さをc、前記基板の湾曲した辺に沿った方向に前記基板が揺動したときの前記基板最端部の揺動範囲の長さをa、とすると、
前記枠部の直線状の一辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の前記枠部内側方向の端面から、前記直線状の辺と対向する辺側に設けられた基板保持部材の下面に配設された前記凸部の枠部内側方向の端面までの前記基板に沿った長さxが、x=c+aであり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する前記基板保持部材の鉛直方向下側の面にある領域の前記凸部端面からの長さyが、少なくとも揺動範囲を超えるように形成されてなることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項2】
請求項1に記載の基板保持用枠体において、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項3】
請求項1に記載の基板保持用枠体において、前記基板保持部材が、前記枠部の辺に直交する方向の断面において前記基板端部制動領域に対応する部分が、前記枠部に近い側から遠い側に向かって均一な厚みを有するか又は漸次薄くなる厚みを有する形状であり、且つ、前記基板端部制動領域に対応する領域を超えて前記枠部から遠い側に向かって前記基板保持部材の端部まで厚みが漸次薄くなる形状であることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記枠部の直線状の2辺から突出する基板支持部と基板保持部材が、前記枠部の湾曲する辺の形状に沿って鉛直方向下方に傾斜していることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記基板支持部に複数の基板保持部材を取り付けてなるものであることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記枠部と前記基板支持部の間に前記枠部から内側周囲の鉛直方向下方に傾斜して突出した嵌合部を有することを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体であって、前記枠部の少なくとも一対の対向する2辺に手掛部を有するものであることを特徴とする基板保持用枠体。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1の請求項に記載の基板保持用枠体を用いた基板搬送方法であって、
前記基板保持用枠体の前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に、前記基板の辺の長さがcの辺を前記基板保持用枠体の前記枠部の湾曲した辺に合うように、且つ、前記基板の最端部を前記基板端部制動領域に含まれるように位置合わせした後に、
前記基板の周縁部を接触させて、前記基板を前記基板保持用枠体に載置し基板載置済み基板保持用枠体とすること、
前記基板載置済み基板保持用枠体を、パレットの上に積み重ねし、
パレット上に積み重ねられた前記基板載置済み基板保持用枠体の上に、同様にして得られた別の基板載置済み基板保持用枠体を、上下の基板保持用枠体の枠部の上面と下面が互いに面接触して重なるように、且つ、枠部の辺に直交する方向の断面において、前記基板保持部材の鉛直方向上側の面上に載置する前記基板の上面と、上方に積み重ねる基板保持用枠体の基板保持部材の鉛直方向下側の面とが、前記基板端部制動領域に対応する部分において接触しないよう隙間を有するように積み重ねること、
この前記基板保持用枠体積み重ね工程を繰り返すことにより複数の基板載置済みの基板保持用枠体を積み重ねた基板保持用枠体集積体とした後、
前記基板保持用枠体集積体を一体として移動することを特徴とする
基板搬送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−14368(P2013−14368A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148999(P2011−148999)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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