説明

基板保持装置

【課題】膜はがれの原因になる膜を付着しにくくすることができる基板保持装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の基板保持装置は、スパッタ膜を生成する際に基板の裏面が載置される基板載置部と、前記基板載置部の底面よりも大きな上面を有するとともに、前記上面で前記基板載置部を前記基板載置部の底面側から支える支持部と、前記基板載置部の側面部と、前記支持部の上面のうち前記基板載置部の底面を支持していない外周部と、を覆うように前記支持部の上面に載置される環状のカバー部と、を備えている。そして、前記基板載置部の側面部は、前記基板載置部の上面側から所定の深さ方向に向かって外径寸法が小さくなる逆テーパ状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造に用いられる半導体製造装置として、例えばスパッタ装置がある。このスパッタ装置は、ウェハ保持装置(ウェハステージ)が真空チャンバ内でウェハを保持し、これにより、真空チャンバ内でウェハとスパッタリングターゲットとを対向させる。この状態で電圧をかけることにより、アルゴン等のアシストガスがプラズマ化され、その際に生成したイオンが電界で加速されてターゲットに衝突する。その結果、ターゲットからターゲット成分が飛び出して、ウェハ表面に付着する。
【0003】
しかしながら、ターゲット成分は、ウェハ表面とともに、ウェハ保持装置の側面に付着する。この付着した膜は、ウェハをウェハ保持装置上で上下に搬送する際に、膜はがれとなる場合がある。そして、膜はがれによって生じた物質が、ウェハ上に降りかかることにより、ウェハが不良品となる。このため、膜はがれの原因になる膜がウェハ保持装置の側面に付着することを防止することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−239020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、膜はがれの原因になる膜が付着しにくい基板保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、基板保持装置が提供される。基板保持装置では、スパッタ膜を生成する際に基板の裏面が載置される基板載置部と、前記基板載置部の底面よりも大きな上面を有するとともに、前記上面で前記基板載置部を前記基板載置部の底面側から支える支持部と、前記基板載置部の側面部と、前記支持部の上面のうち前記基板載置部の底面を支持していない外周部と、を覆うように前記支持部の上面に載置される環状のカバー部と、を備えている。そして、前記基板載置部の側面部は、前記基板載置部の上面側から所定の深さ方向に向かって外径寸法が小さくなる逆テーパ状に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係るウェハ保持装置を備えたスパッタ装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、ウェハ保持装置の断面構成例を示す図である。
【図3】図3は、ウェハ保持装置の寸法の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、側面部の他の形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係るウェハ保持装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るウェハ保持装置を備えたスパッタ装置の構成を示す図である。図1では、スパッタ装置1のチャンバ内の断面構成を示している。スパッタ装置1は、ターゲット保持部10、イオンリフレクタ12、上部防着リング13,14、下部防着リング15、ウェハ保持装置(ウェハ保持機構)20、プラテンリング30を備えて構成されている。このうち、イオンリフレクタ12、上部防着リング13,14、下部防着リング15によって真空チャンバの側壁部が構成されている。
【0010】
ターゲット保持部10は、概略円板状をなしており、スパッタ用のターゲット(スパッタリングターゲット)11を保持する。ウェハ保持装置20は、ウェハ(半導体基板)Wを静電チャックなどによって保持する装置である。スパッタ装置1では、ウェハWの表面と、ターゲット11の表面とが、対向するよう、ウェハ保持装置20がウェハWを保持するとともにターゲット保持部10がターゲット11を保持する。
【0011】
イオンリフレクタ12、上部防着リング13,14、下部防着リング15は、それぞれ概略円筒状をなしている。真空チャンバ内の側壁部としては、最上部にイオンリフレクタ12が配置され、イオンリフレクタ12の下部に上部防着リング13,14が配置されている。さらに、上部防着リング13,14の下部に下部防着リング15が配置されている。
【0012】
プラテンリング30は、概略円環状の板状部材である。プラテンリング30の内径は、ウェハWの主面よりも僅かだけ大きく形成されている。この構成により、ウェハ保持装置20の中央部にウェハWが載置され、ウェハ保持装置20の外周部にプラテンリング30が載置される。これにより、プラテンリング30は、ターゲット11から叩き出されたターゲット粒子がウェハ保持装置20の下側(側面など)へ進入することを防止する。
【0013】
ウェハ保持装置20の下部側からは、アシストガスとしてアルゴン(Ar)16などが真空チャンバ内に導入される。このアルゴン16は、ウェハ保持装置20の熱(例えば300℃以上)を、ウェハWの全体に均一に伝えることをアシストするためのガスである。アルゴン16の導入により、ウェハ保持装置20の熱がウェハWの裏面に均一に伝わる。
【0014】
また、チャンバ内には、スパッタリング用のガスとして例えばアルゴン(Ar)と窒素(N2)が導入される。スパッタ装置1では、ターゲット11とウェハ保持装置20との間に電圧を印加することにより、スパッタリング用のガスがプラズマ化され、その際に生成したイオンが電界で加速されてターゲット11に衝突する。これにより、ターゲット11からターゲット粒子が飛び出して、ウェハWの表面に付着する。本実施形態では、例えば窒素を導入する反応性スパッタリグを用いることにより、ウェハWの表面に高応力膜(例えばTiN)が生成される。なお、スパッタリング用のガスとして例えばアルゴンのみを用いてもよい。この場合、ウェハWの表面に低応力膜(例えばTi)が生成される。
【0015】
ウェハWにスパッタを行う際には、イオンリフレクタ12がプラスに帯電させられるともに、ターゲット11がマイナスに帯電させられる。これにより、ターゲット11から叩き出されたターゲット粒子(イオン)がイオンリフレクタ12で反射されてウェハWの方向に飛散し、その結果、ウェハW上に均一なスパッタ膜を形成することが可能となる。
【0016】
つぎに、ウェハ保持装置20の詳細な構成について説明する。図2は、ウェハ保持装置の断面構成例を示す図である。ウェハ保持装置20は、ウェハWを保持するとともにプラテンリング30が外周部に配置される載置部21Aと、プラテンリング30を載置するともにウェハWを加熱するヒータ格納部21Bと、を有している。載置部21Aは、例えば概略円柱状であり、ヒータ格納部21Bは、載置部21Aの底面よりも大きな上面を有した概略円柱状である。
【0017】
載置部21Aは、その上面側に凹凸部が形成されており、この凹凸部上にウェハWが配置される。スパッタ粒子が載置部21Aに付着しにくくするため、載置部21Aの上面は、ウェハWの主面よりも小さく構成されている。ヒータ格納部21Bは、上面側の中央部で載置部21Aを支持し、外周部側にプラテンリング30が載置される。ウェハWを載置部21Aに載置した際に、ウェハWの底面がプラテンリング30と接触しないよう、プラテンリング30は、載置部21Aの高さよりも低く構成されている。
【0018】
プラテンリング30は、載置部21Aの側面部と、ヒータ格納部21Bの上面のうち載置部21Aの底面を支持していない外周部と、を覆うようにヒータ格納部21Bの上面に載置される。
【0019】
ヒータ格納部21Bの上面うちプラテンリング30を載置する外周部は、凹凸部25が設けられている。これにより、ヒータ格納部21Bの上面うちプラテンリング30を載置する外周部では、スパッタ粒子による付着膜40の付着を防止している。凹凸部25のRa(粗さ)は、凹凸部25の凹凸具合によって決定される。このため、所望の付着防止効果に応じた凹凸が凹凸部25に形成される。凹凸部25は、例えば、Ra10以上で形成される。
【0020】
ヒータ格納部21Bの内部には、電極部22,23、ウェハWを加熱するヒータ24が配置されている。電極部22,23は、ウェハ保持装置20とウェハWとの間の静電吸着力を発生させるための電極(P,N)である。
【0021】
本実施形態のウェハ保持装置20は、載置部21Aの側面部(プラテンリング30の側面によって囲まれる箇所)2Xが逆テーパ状に形成されている。換言すると、載置部21Aの外周部の外側面は下方(所定の深さ方向)に向かって外径寸法が小さくなるよう形成されている。図2では、側面部2Xのうち上段側が逆テーパ状に形成され、下段側がテーパ状に形成されている場合を示している。なお、側面部2Xの下段側は、テーパ状に形成することなく、逆テーパ状または鉛直方向に延びる側面(テーパ無し)としてもよい。
【0022】
この構成により、側面部2Xの側面のうち上段側の側面が逆テーパ分だけ下方を向くこととなるので、真空チャンバの上部側から飛散してくるスパッタ粒子が側面部2Xに付着しにくくなる。このように、ウェハ保持装置20は、側面部2Xが逆テーパ状に構成されているので、載置部21Aに付着膜40が着きにくくなり、この結果、付着膜40の堆積を抑制することが可能となる。
【0023】
ここで、ウェハ保持装置20の寸法の一例について説明する。図3は、ウェハ保持装置の寸法の一例を説明するための図である。図3では、ウェハW、載置部21A、プラテンリング30の断面図を示している。
【0024】
ウェハWの直径は、例えばa=300mmである。載置部21Aの上面は、その半径がウェハWの半径(150mm)よりも、例えばc=3mm程度小さく構成されている。また、ウェハWの底面と載置部21Aの上面(突起部29)との間は、例えばb=0.5mm程度隙間があけられてウェハWが載置部21Aで保持される。
【0025】
また、側面部2Xのうち上段側の側面と載置部21Aの上面との成す角度は、例えばe=9.0°〜10.5°である。また、側面部2Xのうち上段側の側面と鉛直方向との成す角度は、例えばd=79.5°〜81.0°である。これにより、高応力膜である付着膜40の膜厚が100nm以上となった場合や、ウェハ保持装置20がウェハWを上下に搬送する場合であっても膜はがれを防止できる。また、低応力膜の膜厚が厚くなった場合であっても膜はがれを防止できる。
【0026】
スパッタ装置1では、ウェハWが順番にスパッタ処理される。例えば、1枚目のウェハWの処理が完了した後、載置部21Aから1枚目のウェハWを上側に移動させ、その後、真空チャンバ外に1枚目のウェハWが搬出される。そして、2枚目のウェハWが真空チャンバ内に搬入され、載置部21A上でウェハWを下側に移動させることにより、載置部21A上に2枚目のウェハWが載置される。
【0027】
スパッタ装置1では、上述したウェハWの上下搬送が繰り返される。そして、ウェハWがウェハ保持装置20に載置される際には、ウェハWがウェハ保持装置20と衝突することとなる。この場合であっても、側面部2Xに付着膜40を付きにくくしてあるので、ウェハWと付着膜40が衝突しにくくなる。したがって、ウェハ保持装置20に付着した付着膜40の膜はがれを防止できる。
【0028】
半導体装置(半導体集積回路)を製造する際には、種々の半導体製造装置でウェハ処理が行われる。具体的には、成膜装置(スパッタ装置1など)によってウェハW上に膜が成膜され、レジスト塗布装置によってウェハWにレジストを塗布する。そして、露光装置がマスクを用いてウェハWに露光を行なう。その後、現像装置がウェハWを現像してウェハW上にレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとしてエッチング装置がウェハWの下層側をエッチングする。これにより、レジストパターンに対応する実パターンがウェハW上に形成される。半導体装置を製造する際には、成膜処理、レジスト塗布処理、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0029】
なお、側面部2Xの形状は、図3に示した形状に限らない。図4は、側面部の他の形状例を示す図である。例えば、図4の(a)に示すように、側面部2Aの形状を、側面部2Xのうち最上部から最下部に渡って逆テーパ状に形成してもよい。
【0030】
また、図4の(b)、図4の(c)に示すように、側面部2Bの側面形状を湾曲させてもよい。この場合、例えば、側面部2Aをウェハ保持装置20の中心部に向かって彫ることにより、側面部2B,2Cが形成される。
【0031】
なお、プラテンリング30は、円環状に限らず、他の環状形状であってもよい。例えば、矩形の板状部材から内側を円形状にくり抜いた形状であってもよい。
【0032】
このように実施形態によれば、ウェハ保持装置20の側面部2X,2A〜2Cが逆テーパ状に構成されているので、載置部21Aに付着膜40が着きにくくなる。したがって、ウェハ保持装置20からの膜はがれを防止することが可能となる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…スパッタ装置、2X,2A〜2C…側面部、20…ウェハ保持装置、21A…載置部、21B…ヒータ格納部、25…凹凸部、30…プラテンリング、W…ウェハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタ膜を生成する際に基板の裏面が載置される基板載置部と、
前記基板載置部の底面よりも大きな上面を有するとともに、前記上面で前記基板載置部を前記基板載置部の底面側から支える支持部と、
前記基板載置部の側面部と、前記支持部の上面のうち前記基板載置部の底面を支持していない外周部と、を覆うように前記支持部の上面に載置される環状のカバー部と、
を備え、
前記基板載置部の側面部は、前記基板載置部の上面側から所定の深さ方向に向かって外径寸法が小さくなる逆テーパ状に形成されていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記基板載置部の上面は、前記基板の主面よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記基板載置部の側面部と、前記基板載置部の上面部と、がなす角度は、9.0°〜10.5°であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記支持部の前記外周部には、その上面部に凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記凹凸の粗さは、Ra10以上であることを特徴とする請求項4に記載の基板保持装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243909(P2012−243909A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111626(P2011−111626)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】