基板内への構造の導入方法
本発明は、マイクロ構造を有する基板を製造する方法、並びに当該方法の自然科学及び科学技術−具体的には半導体デバイス、マイクロ流体デバイス、及び解析デバイス−への応用に関する。本発明は、制御された放電によって、構造−たとえば穴、空孔、チャネル、若しくはウエル又は凹部−又は構造変化を導入する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ構造を有する基板を製造する方法、並びに当該方法の自然科学及び科学技術−具体的には半導体デバイス、マイクロ流体デバイス、及び解析デバイス−への応用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのマイクロ技術の応用及びデバイスは、たとえば穴のような高アスペクト比の構造を必要とする。一の顕著な例は、シリコンチップ内及びシリコンチップ間のインターコネクトとして用いられる貫通シリコンビア(TSV)である。高アスペクト比の穴(harh)を作製することは多くの場合難しく、高価で、又は不可能ですらある。現在の穴を作製する技術−たとえばレーザーアブレーション又はエッチング−の制約は、最小の穴のサイズ、アスペクト比、及び、内側の穴の(内)壁の粗さである。これらの制約は現時点では、積層されたシリコンチップの大規模な用途に対して深刻な障害を与える。本明細書において記載されたデバイス及び方法は、これらの制約を取り除く単純で、安価で、かつ精密な方法を供する。
【0003】
現在のマイクロ加工技術の別な問題は、選択された材料の選択性である。たとえば、KOH溶液を用いたSiの異方性エッチングは、シリコン中に溝及び穴を形成する単純な方法だが、多くの別な材料又はアモルファス材料には機能しない。Siでさえ、特定の結晶格子配向にしか機能しない。従って本明細書に開示された発明の目的は、多くの異なる材料の加工を可能にする方法を供することである。前記多くの異なる材料とはたとえば、Si、Ge、GaAs、InP、サファイア、ガラス、ジルコニアであり、それらのほとんどは、現在のマイクロ技術に関連するものである。様々な材料又はさらには種類の材料を加工する方法の調節は、小さなものであり、容易に移植可能であると考えられる。
【0004】
開示された発明のさらなる目的は、穴のアレイの作製に本方法を適用することである。特許文献1及び特許文献2は、基板への電圧印加を用いることによって基板内に構造を生成する方法を開示している。印加電圧が高く、かつ既存の穴全体にわたって電圧フラッシュオーバーが生じるため、本明細書に開示された方法では、穴を近接させることは不可能である。従って、アレイの形成についてのこれらの有害な高価を防止する方法及びデバイスが必要である。
【0005】
また多くの小型化された流体解析デバイス及び化学/生物分析デバイスは、小さな貯蔵室及び接続チャネルを必要とする。これらのチャネルおよび容器の寸法は通常μm範囲である。主として平面構造用に開発された一般的なマイクロ加工技術は、チップ/基板へ深く入り込むウエルやチャネルを作製する上で十分とは言えない。つまり最大実現可能なアスペクト比−穴の長さと直径との比−は、典型的には1:10に制限される。このことは特に、ガラス及びたとえば溶融シリカのようなガラス様材料の加工について当てはまる。大規模用途の重大な障壁は、高製造コストにも原因がある。
【0006】
他方、非常に高いアスペクト比を有するチャネルは、これらのチャネルを流れる流体の効率的な電気浸透性ポンピングを可能にする。たとえば150μmの長さで、かつ2μmの直径のチャネルであれば、チャネル内部での流体速度を非常に大きくするのにわずかな小さい電圧しか必要とされない。アスペクト比が非常に大きくなることで、チップ全体にわたるチャネルによって、たとえば厚さ0.5mmの典型的なガラスチップの両面を接続することが可能となる。それにより、単純な3次元流体設計が可能となる。
【0007】
ピコリットル容量を備えるチャネルはまた、大容量では無関係だった流体輸送及び混合効果を利用する、ピコリットル流体のための原理を供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/097439号パンフレット
【特許文献2】PCT/EP2008/009419号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、高品質の穴の開いた基板の製造を可能にする方法を供することである。本発明の目的はまた、そのような高品質の膜の担体の製造方法を供することである。当該方法は実行が容易で、かつ再現可能である。さらに本発明の目的は、基板内に穴、空孔、又はチャネルを制御して製造することを可能にする方法を供することである。前記穴、空孔、及びチャネルの幾何学上の特徴は、容易に制御可能で、かつ影響を受けることができる。本発明の目的はまた、穴の開いた基板を大量製造することを可能にする方法を供することである。さらに本発明の目的は、たとえばガラス、サファイア、又は元素シリコンのような、従来は処理が難しかった基板への適用が可能な穴の作製方法を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、構造−たとえば穴、空孔、チャネル、ウエル、若しくは凹部−又は構造変化−たとえば結晶構造からアモルファス構造への遷移−を、基板又は該基板の領域に導入する方法によって解決される。当該方法は:
a) 室温にて絶縁性又は半導体性である基板を供する工程、及び、前記基板を、ユーザー制御される電源と接続する少なくとも2つの電極間に設ける工程;
b) 前記ユーザー制御される電源によって、前記基板の領域にわたってユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記電圧は、前記基板又は前記領域を流れる電流の増大を引き起こすのに十分であることで、前記基板に所定量の電気エネルギーを付与する工程;
c)任意で、前記基板又は前記領域へ、好適には熱である追加エネルギーを付与することで、前記工程b)において電流を流し始めるように、前記基板又は前記領域の温度及び伝導率を増大させる工程であって、前記好適には熱である追加エネルギーは、追加エネルギー源若しくは熱源、又は前記工程b)において印加された電圧の成分を起源とする、工程;
d) 前記基板内において前記工程b)で付与された電気エネルギーを消失させる工程;
を有する。
【0011】
前記工程d)は、(i)前記工程b)のユーザーが定めた印加電圧、(ii)前記工程b)のユーザーが定めた期間、(iii)前記電源のインピーダンス、又は、(i)-(iii)の任意の組み合わせによって専ら制御される。
【0012】
一の実施例では、前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることによって実現される。
【0013】
一の実施例では、前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることなく、専らユーザーが定めた(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)によって実現される。
【0014】
一の実施例では、前記ユーザーが定めた電圧の大きさは、10[V]〜106[V]の範囲で、好適には102[V]〜3×105[V]の範囲で、より好適には103[V]〜30×103[V]の範囲で、最も好適には2×103[V]〜15×103[V]の範囲である。
【0015】
一の実施例では、前記ユーザーが定めた期間は、1[ms]〜5000[ms]で、好適には10[ms]〜2000[ms]で、より好適には10[ms]〜1000[ms]で、かつさらにより好適には10[ms]〜500[ms]である。
【0016】
一の実施例では、前記電源のインピーダンスは、1Ωより大きく、好適には10kΩより大きく、より好適には100kΩより大きく、かつさらにより好適には1MΩより大きい。
【0017】
一の実施例では、前記インピーダンスは1Ω〜1GΩの範囲である。好適には、前記インピーダンスは、当該方法の実行中、前記範囲内で可変である。
【0018】
一の実施例では、前記絶縁性又は半導体性基板は、たとえばポリプロピレンのような炭素ベースのポリマー、たとえばテフロン(登録商標)のようなフルオロポリマー、シリコンベースの基板−たとえばガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物−、シルガードのようなシリコンベースのポリマー、半導体材料−たとえばドーピングされたものを含む元素シリコン、ゲルマニウム−、化合物半導体−たとえばガリウム砒素、インジウム燐−、アルミニウムベースの結晶性材料−たとえばアルミナ、スピネル、サファイア−、及び、たとえばジルコニアのようなセラミックスを有する群から選ばれる材料で作られる。
【0019】
一の実施例では、前記工程d)は、(i)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分である工程、(ii)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分ではなく、前記電極の各々と前記基板との間の距離を減少させ、かつ任意で前記基板と前記電極とを接触させる工程、(iii)前記工程c)を実行する工程、又は、(i)-(iii)を組み合わせた工程のいずれかによって開始される。
【0020】
一の実施例では、前記工程c)は省略される。好適には、前記基板は、室温で109[Ω・cm]以下の抵抗率を有する基板である。
【0021】
一の実施例では、前記基板は、室温では半導体で、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体−たとえばガリウム砒素やインジウム燐−から選ばれた半導体材料で作られる。
【0022】
一の実施例では、前記工程c)が実行される。好適には、前記工程c)は、加熱電極、加熱素子、レーザー、集束光源、UV光源、ガスフレーム、及び高周波電磁場デバイスから選ばれる追加エネルギー源を用いて実行される。そのような高周波電磁場デバイスとは、たとえばテスラ変成器である。
【0023】
一の実施例では、前記追加エネルギー源は、好適には前記基板によって少なくとも部分的に吸収される波長範囲内の波長を有するレーザーである。
【0024】
一の実施例では、前記工程c)における追加エネルギーの付与位置は、前記構造又は前記構造変化が導入される前記基板の領域を決定する。
【0025】
一の実施例では、結合した状態の少なくとも1層の絶縁層を有する室温で絶縁性又は半導体性である前記基板が、前記工程a)において供される。好適には、前記絶縁層は、室温で、固体、液体、又は気体である。
【0026】
係る絶縁層は、1μm〜1cmの範囲の厚さを有することが好ましく、10μm〜1mmの範囲の厚さを有することがより好ましい。
【0027】
一の実施例では、前記絶縁層は、室温で気体であるが、空気ではない。
【0028】
一の実施例では、前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有する。前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入される。前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させることが好ましい(遮蔽効果)。前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内では、該絶縁層の遮蔽効果を減少させるように前記絶縁領域内において電気伝導性が上昇して、前記基板領域内の基板にかかる電圧が最適化される。
【0029】
一の実施例では、前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有する。前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入される。前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させることが好ましい(遮蔽効果)。前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内は、前記工程a)において固体として供される場合には、前記絶縁領域において液化され、又は、前記工程a)において液体として供される場合には、前記絶縁領域において部分的に揮発する。前記工程d)の間、前記絶縁層は、前記電気エネルギーの消失によって前記絶縁領域内で部分的に変位する。前記工程d)の後、前記の気体、液体、又は部分的に揮発した絶縁層は、前記の生成された構造へ流れ込み、前記構造を閉じて、該構造を少なくとも部分的に充填する。
【0030】
一の実施例では、前記絶縁層が前記基板と結合することで、前記絶縁層は、前記工程a)において前記基板を覆うか、又は、前記工程a)において前記基板によって覆われ、かつ、前記基板領域は前記絶縁領域に対向するように位置する。
【0031】
一の実施例では、前記絶縁層は、該絶縁層材料の電気的分極に起因する内部の対抗電場の形成によって、前記基板にかかる電圧を減少させる。
【0032】
一の実施例では、前記絶縁層はまた、前記処理中に放出した材料を前記絶縁層に吸収させて、前記基板表面上での直接的な再堆積を回避することによって、導入された前記構造を取り囲む領域の平坦さ/表面の品質を改善するのにも用いられる。一の実施例では、前記の吸収された材料は、前記構造の導入後、前記絶縁層と共に除去される。
【0033】
一の実施例では、前記絶縁層は、前記構造が導入される(複数の)領域のみを曝露するマスクを前記基板上に形成するのに用いられる。それにより前記基板の他の領域は、意図しない電気エネルギーの消失から保護される。
【0034】
一の実施例では、前記工程c)は、たとえば前記絶縁層によって吸収される波長のレーザー放射線の吸収によって、前記絶縁層を直接的に加熱することによって実行される。
【0035】
一の実施例では、前記工程c)は、結合した基板を加熱して、前記の加熱された基板から前記の結合した絶縁層への熱輸送を利用することによって、前記絶縁層を間接的に加熱することによって実行される。
【0036】
一の実施例では、前記絶縁層は、室温にて固体かつ絶縁性である材料で作られる。好適には前記材料は、ワックス−具体的にはパラフィンワックス−、ゴム、ホットメルト接着剤、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、及びポリウレタンから選ばれる。
【0037】
一の実施例では、前記絶縁層は、室温にて液体であって、室温にて絶縁性及び/又は極性を有する材料で作られる。好適には前記材料は、ドデカン、パラフィン、水、又は高粘性水に基づく液体−たとえばフィスコール(Fiscoll)(商標)又は蜂蜜のような液体−から選ばれる。
【0038】
一の実施例では、前記絶縁材料は、室温にて気体の材料で作られる。好適には前記材料は、SF6、Ar、N2、CO2から選ばれる。
【0039】
一の実施例では、前記基板は、室温にて絶縁性で、かつ好適には、ガラス、石英、ダイアモンド、アルミナ、サファイア、アルミニウム窒化物、ジルコニア、スピネルから選ばれ、より好適には、石英及びガラスから選ばれる。好適には前記基板は、室温にて109Ωよりも大きな抵抗を有する。
【0040】
一の実施例では、前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の固体であって、好適には、パラフィンワックス、ゴム、及びホットメルト接着剤から選ばれる。
【0041】
一の実施例では、前記工程c)はレーザーを用いて実行される。前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい。
【0042】
一の実施例では、前記基板は、室温にて半導体性であり、好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、たとえばガリウム砒素やインジウム燐のような化合物半導体から選ばれる。
【0043】
好適には、前記基板は、室温にて109Ω以下の抵抗を有する。
【0044】
一の実施例では、前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の液体で、及び/若しくは極性を有する材料であって、好適には、ドデカン、パラフィン、水、蜂蜜から選ばれるもので作られ、又は、室温にて絶縁性の固体で、好適には、パラフィンワックスとホットメルト接着剤から選ばれる材料で作られる。
【0045】
一の実施例では、前記工程c)はレーザーを用いて実行される。前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい。
【0046】
一の実施例では、前記工程c)が実行されることで、前記工程b)及びd)を開始するのに必要とされる、前記絶縁層にわたる電場の減少に必要な前記絶縁層の加熱を行うことで、前記基板の温度が顕著に増大する。その結果、硬度や脆性といった前記絶縁層の温度に依存する機械的パラメータが顕著に変化する。
【0047】
一の実施例では、前記工程a)-d)が1番目に実行されることにより、前記第1基板領域内に第1構造が生成され、その後前記基板は所定距離を移動し、かつ、前記工程b)-d)が2番目に実行されることにより、第2基板領域内に第2構造が生成され、好適には前記工程b)-d)がn回(n>1)実行されることにより、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される。
【0048】
一の実施例では、前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分なものである。
【0049】
他の実施例では、前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分ではないが、前記基板領域内の構造を変化させるには十分である。好適には、前記工程d)は、前記基板領域内に存在する材料を加熱及び/又は融解することによって前記基板領域内の構造を変化させる。前記の構造の変化により、前記基板は、前記基板領域を含む基板がアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露されるアブレーション工程e)による処理を行いやすくなる。
【0050】
一の実施例では、前記電気エネルギーは、前記基板領域からの材料の放出を引き起こすのに十分ではない。
【0051】
一の実施例では、本発明による方法は、
e) 前記基板領域を含む基板をアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露する工程、
をさらに有する。
【0052】
前記工程d)が、前記基板領域内に存在する材料を加熱及び/又は融解することによって前記基板領域内の構造を変化させる実施例において、前記基板上に絶縁層が存在する場合、前記基板内の構造の変化後に前記絶縁層が除去されることが好ましい。
【0053】
一の実施例では、前記基板は、室温にて半導体性であって、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素やインジウム燐などの化合物半導体から選ばれた半導体材料から作られる。
【0054】
一の実施例では、前記アブレーション環境は、エッチング剤で、好適には、半導体材料に対して選択的なエッチング剤で、より好適には、KOH、SF6、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール(EDP)、ヒドラジン、及びHFから選ばれる。
【0055】
一の実施例では、前記アブレーション環境は反応性イオンエッチング処理によって生成される。
【0056】
一の実施例では、前記アブレーション環境は、エッチングに用いられるSF6である。
【0057】
一の実施例では、前記工程b)及びd)はn回(nは2以上の整数)実行されることで、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域に電気エネルギーが付与され、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域内の構造が変化する。
【0058】
一の実施例では、本発明による方法は、前記工程e)をさらに有する。前記工程b)及びd)はn回実行された後に前記工程e)が1回実行されることで、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される。
【0059】
一の実施例では、前記基板は元素シリコンで、かつ前記エッチング剤は、KOH、TMAH、SF6から選ばれる。
【0060】
一の実施例では、他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に平行なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板が選ばれる。
【0061】
一の実施例では、他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に垂直なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板−たとえばKOHにおける<111>シリコンウエハ−が選ばれる。
【0062】
一の実施例では、前記基板は保護層によってコーティングされる。前記保護層は、該基板自体よりもエッチング剤によってエッチングされず、かつ、前記工程a)-d)の実行中、前記工程d)が実行された(複数の)場所でのみエッチングを可能にするように、完全若しくは部分的に除去され、又は構造的に変化する。
【0063】
一の実施例では、本発明による方法は、上述した前記絶縁層を保護層として用いる。
【0064】
本発明の目的はまた、本発明の方法によって作製される、基板内の構造(のアレイ)−好適には穴、空孔、チャネル、ウエル、又は凹部−によっても解決される。
【0065】
第1態様では、本発明は、構造−好適には穴、空孔、チャネル、ウエル、若しくは凹部−又は、制御された電源と接続する(少なくとも)2つの電極間に設けられた基板内での、結晶状態からアモルファス状態への遷移のような構造変化を導入する方法に関する。前記基板内部で完全又は一部で局所的に消失した電源によって供されるエネルギーは、電圧の大きさ、及び/又は、電源のインピーダンス、及び前記電圧が印加された時間によって制御される。一般的には、前記電圧は印加時間の関数V(t)であって良い。V(t)の変化は、印加中での電気回路の変化、並びに/又は、前記基板電流及び/若しくは電圧を解析するプログラム回路及び/若しくはフィードバック回路の変化によって起こる。電圧印加中、前記基板内部でのエネルギー消失は、前記基板の物理化学特性の局所的変化を実現するように制御される。前記基板の物理化学特性の局所的変化とはたとえば、前記消失領域内の温度を、各対応する融解又は遷移温度にまで昇温することによって、結晶領域をアモルファス領域へ変換することである。前記処理は、たとえば穴の生成のような幾何学的な変化が起こる前に明示的に中止されて良い。最初に前記消失処理を開始するため、特許文献1及び2で開示されているように、修正領域の温度つまり熱伝導を局所的に増大させるように、前記修正領域へ補助的な熱を供給することが必要になると考えられる。しかし前記補助的な熱は、調節される領域の画定を可能にする。
【0066】
基板へ電圧を印加するため、一般的には、基板と構造の特性及び寸法知るため、特許文献1及び2を参照する。
【0067】
たとえば高伝導度を有する又は印加電圧を短絡させる穴を有する基板については、前記基板は1層以上の絶縁層と結合する(図1)。これらの層は、非常に高い抵抗を有することにより、又は、前記層内部での対抗電場を誘起させる(たとえば水のような極性物質を用いるときに当てはまる)ことにより、前記基板から印加電圧(図1の電極3と3’、電源4、レーザー5と5’)を実効的に遮蔽する。換言すると、電極を介して印加された電圧の一部又は場合によっては該電圧のほとんどは、前記絶縁層にわたって電場を生成することで、前記基板内部の電場を減少させる。この結果前記電極にわたる電圧が一定であれば、前記基板内部の電場が劇的に減少することで、前記基板内部の絶縁破壊を引き起こしてしまう電圧での放電が防止される。前記基板内部でのエネルギー消失を開始するため、前記絶縁層は、伝導度を上昇させるか、又は、前記の結合した基板が修正される位置で除去されなければならない。これは、たとえばレーザーを用いることにより、又は、前記基板内の消失を引き起こす高周波電磁場によって、この位置の照射又は加熱の際に行われて良い。たとえば特許文献1若しくは特許文献2に記載された穴の生成又は前述した物理化学的特性の局所変化(6)を含みうる、前記基板の修正後(図2を参照のこと)、一部(7)に穴が開いて、かつ融解及び/又は揮発する前記絶縁層は再度、前記基板内部の別な領域の修正を続けるように閉じられて良い(図2)。たとえば流体又はゲル状絶縁層−たとえば純水又は炭化水素(ワックス、ドデカン、パラフィン…)−を用いることで、前記絶縁層は、たとえば表面張力又は基板接合によって、閉じられて良い。固体層は、熱が誘起する逆流を用いて閉じられて良い。前記熱が誘起する逆流は、補助的な熱の付与、エネルギー消失処理自体、又は修正後に続いて行われる加熱工程によって開始されて良い。1μm〜1cm範囲で、好適には10μm〜1mm範囲の厚さを有する前記層は、前記構造を取り囲む表面全体にわたる、前記基板から取り出された材料の堆積を防止することで、放出された材料の吸収及び該材料の前記基板への結合が防止されて良い(図10を参照のこと)。上述の工程の結合及び反復により、互いに空間的に近接する多重の基板構造変化−たとえばアレイの形態で構成する−が可能となる。前記構造の空間変位の精度を増大させるため、前記絶縁層が、たとえば絶縁材料の一部の機械的アブレーション又はレーザー蒸発/分解によって、マスクを生成するのに用いられて良い。これは、前記構造が導入される前記基板の選ばれた領域のみを曝露することで、前記基板上の構造の位置を、より厳密に定めることができる(図11を参照のこと)。たとえば固体ワックス層を用いると、係るマスクは、たとえば針−電極それ自体であっても良い−によって、構造が導入される位置で前記層を貫通すなわち穴を開け、前記基板の直径10nm〜1mmでより好適には1μm〜100μm範囲の領域を曝露することによって生成されて良い。これらの地点では、前記ワックスは部分的又は全体的に除去されることで、前記工程d)の間での電気エネルギーの消失位置が定められる。
【0068】
本発明による他のデバイス及び方法では、前記基板をアブレーション環境−たとえばエッチング溶液又は反応性イオンプラズマ(RIE)−へ曝露することで、修正領域と非修正領域との間での材料のアブレーションに差異が生じるように、前記方法及びデバイスは、前記(複数の)消失位置での物理化学的特性を修正する、前記基板内部での構造変化を導入するのに用いられる。前記の修正された領域が侵襲される場合、より強力な穴及びウエル状の構造が生成され、反対に、修正された領域の列は前記のアブレーションされた基板から突き出る。ある材料についての加熱及び放出された材料が、たとえば再堆積された材料のアブレーション又は生成された穴の(直径の)増大を可能にする新たな物理化学的特性を有するので、前記エッチング工程はまた、特許文献1及び特許文献2に従って作製された構造を修正するように実行されて良い。例は、記載されたようなSiウエハ内に生成されて、続いて(たとえば80℃に)暖められた50%KOH溶液に曝露された穴である。「元素シリコン」又は「シリコン」という語は、シリコンウエハとして用いられるような結晶(単結晶又は多結晶)シリコンを含むことに留意して欲しい。その語はまたドーピングされたシリコンをも含む。
【0069】
前記エッチング工程中に前記の非修正基板を良好に保護することで、前記ウエハ全体又は前記ウエハの一面を前記エッチング剤に浸漬させることを可能にするため、前記基板は、保護層によって覆われて良い。この通常は薄い層(典型的には10μm未満)は前記(複数の)修正領域で除去又は変更されることで、前記エッチング剤は、前記の除去又は変更された(複数の)修正領域でしか前記基板に接触できない。例としては、Siウエハ上の典型的には厚さが1μm未満のSi3N4層である。続いてKOHに基づくエッチング媒質を用いても、前記Siウエハは、前記窒化物層の存在によりエッチングされない(ただしエネルギーが消失した場所は除く)。
【0070】
最適のエッチング結果−たとえば前記の形成された構造の軸に垂直なエッチング速度を減少させる、又は、前記基板表面に垂直なエッチング速度を増大/減少させる−を実現するため、(適用可能な場合には)最適となるように前記基板の結晶格子の配向が選ばれて良い。例としては、KOH溶液で処理された<111>Siウエハを用いて、前記ウエハ表面に垂直なエッチング速度を減少させることによって、修正領域と非修正領域とのエッチング速度の差をさらに増大させることである。
【0071】
穴の形成においてアブレーションとマイクロ構造の基板変化とを組み合わせることは、前記工程の内圧は、材料が前記の形成された構造から能動的に放出された工程での内圧よりも小さくなるため、デバイスの絶縁破壊や変形が起こりにくくなるという利点を有する。しかもこれまで必要とされてきた後続の研磨工程を回避することができる。なぜなら前記基板に適用される条件は一般的に十分穏やかであり、かつ前記基板上への基板材料の堆積は起こらないからである。
【0072】
本発明によると、本願発明者らは、電気エネルギーを基板に付与するデバイス及び方法を確立した。前記電気エネルギーは、前記基板内での貫通孔又は貫通チャネルの形成を引き起こすのに十分な大きさではないが、前記電気エネルギーが付与される領域の構造を、後続のエッチング工程に適合させる。本発明の実施例によると、前記基板を介した放電を引き起こすことのできる電源と接続する2つの電極間に前記基板は設けられる。前記放電は、(1)たとえば電圧の増大(典型的には1000-300000[V])による前記電極間での電場強度の増大、(2)前記電極間隔の接近、(3)前記基板の局所的加熱、又は(4)前記基板に結合する絶縁層の局所的加熱の際に起こる。前記放電、つまり前記電源は、期間Dtにわたって電力P(t)を供するように制御される。よって電力と時間との間の相互作用は、前記基板内部で生成される温度プロファイルを決定する。如何なる理論にも束縛されることを望んでいないが、本願発明者らは、この方法が、定められた基板領域内で前記基板を顕著に加熱する際に、前記領域の構造を変化させると信じている。繰り返しになるが、如何なる理論にも束縛されることを望んでいないが、本願発明者らは、秩序のない構造は、前記加熱処理によって生成されたと考えている。たとえばチップの製造に用いられるウエハのような結晶である物質では、当該方法は、温度を融点(付近)まで局所的に昇温する際に、アモルファス構造にしていると考えられる。従って前記電気エネルギーが付与された領域は、よりエッチングされやすくなるので、エッチング剤が付与されたときには選択的にエッチングされる。例としては、10Ω・cmよりも大きな伝導率で、厚さ0.25mmで、基板と電極との間の電極間隔が各0.5mmで、V=2000[V]で、C≒1[nF]で、Dt<100[msec]の条件において、80℃で50%KOHによるエッチングを行うことで、直径が略30-100μmの穴が形成される、<100>配向のシリコンに適用される処理である。 本発明によるこの態様の好適実施例では、電圧が基板の領域に印加されることで、電気エネルギーが局所的に消失する前記工程b)とd)がn回(nは2以上の整数)繰り返される。その後エッチング工程が実行されることで、前記基板内にn個の構造が生成される。本発明によるこの態様は、半導体性基板内での構造のアレイの形成及びTSV(貫通孔シリコンビア)の用途に特に適している。
【0073】
本発明の実施例では、本願発明者等はまた、電気エネルギーを用いて基板内に構造を生成する方法において絶縁層を導入した。その工程は、全基板内のアレイにとってのみならず、たとえば半導体のような伝導性基板材料にとっても重要である。第1の場合では、ウエハ全体が、第2の場合では既に存在する穴が、印加電圧から遮蔽されなければならず、そのため、この領域を放電位置と定められるように、修正される前記基板の一部だけが前記電場に曝露される(図3)。絶縁層は、気体材料−たとえばSF6−、液体材料−たとえばパラフィンや水−、及び、固体材料−たとえばワックス−で構成されて良い。前記層は、さらなる発明をすることなく放電を回避するように、前記の印加電圧から十分に遮蔽されなければならない。これは純粋に絶縁によって生じさせることができる。それは、前記絶縁層の高抵抗特性のみならず、前記印加電圧が全絶縁層内部で対抗電場を発生させる場所での遮蔽特性である。このことは通常は、たとえば水のような極性材料について当てはまる。実際の放電過程−前記基板内部でのエネルギー消失−は、たとえば前記基板領域に対向して隣接する、前記構造が生成される所定の領域を加熱することによって、前記絶縁層の伝導率の局所的上昇の際に始まる。前記絶縁層内のそのような所定の領域−ときに「絶縁領域」とも呼ばれる−は、抵抗の変化後又は誘電特性−たとえば誘電率−の変化後、電流が、前記所定の領域に流れ始め、続いて前記基板の隣接する領域に流れることで、エネルギーが消失する前記基板の領域を実効的に減少させることを可能にする。好適実施例では、前記基板へ電気エネルギーを付与し、その後消失するときに、前記誘電領域は、液体又は溶融物となり、かつその後全部又は一部が揮発する。しかし前記絶縁層が典型的には前記領域の周りでは依然として液体又は溶融物なので、前記絶縁層は、前記の生成された構造へ流れ込むことで、前記構造を閉じ及び/又は少なくとも部分的に充填する。一の実施例では、前記工程d)の実行後、前記絶縁層を再度溶融若しくは液化し、又は前記絶縁層を液体若しくは溶融物の状態に維持するように、追加のエネルギー−好適には熱−が前記絶縁領域に付与される。前記工程c)又はf)における追加のエネルギーを付与する好適手段は、加熱された電極、加熱素子、レーザー、集束光源、ガストーチ、又は高周波電磁場源から選ばれることで、前記材料中でのエネルギーが消失する。高周波電磁場源の例は、本発明によって利用可能なテスラ変成器である。好適実施例では、加熱手段はレーザーである。前記レーザーは、前記絶縁層を、直接的(ビームが直接吸収される)、若しくは間接的(前記ビームは基板によって吸収され、熱は熱伝導によって前記絶縁層へ伝えられる)、又は直接的かつ間接的(前記基板と絶縁層が前記ビームの一部を吸収する)に加熱して良い。具体的なレーザーの選択は、前記基板材料と絶縁材料に依存する。例は10.6μmの波長を有するCO2レーザーである。他の好適なレーザーは、800nm〜1300nmの範囲の波長を有するレーザーである。前記レーザー波長はまた、前記絶縁層によって吸収されて前記絶縁層を加熱する、かつ/あるいは、前記絶縁層を加熱する前記基板によって吸収されるように選ばれることに留意して欲しい。これにより前記絶縁層の加熱が可能となる。吸収は100%以下でよい。つまり入射放射線の実質的に全て又は一部が、前記基板及び/又は絶縁層によって吸収される。本明細書で用いられているように、「少なくとも一部が吸収される」という語は、前記基板及び/又は前記絶縁層が、前記入射放射線の0.1%〜100%を吸収するシナリオを意味する。本明細書で用いられているように、「絶縁層」という語は、前記基板と結合する−好適には直接結合する−ことで、前記絶縁層と前記基板が互いに隣接して対向するような層を指称する。この構成では、前記基板内に構造が生成される領域はまた「基板領域」とも呼ばれ、かつ前記基板領域に対向するように設けられる前記絶縁層内の対応する領域は「絶縁領域」と呼ばれる。実効的には、前記絶縁領域は、前記基板領域の上部又は下部に位置する。一の実施例では、前記絶縁領域と前記基板領域は同一サイズである。他の実施例では、前記絶縁領域は、前記基板領域の面積の5%以上−たとえば10%、15%、20%、25%、30%、…100%、200%、300%、400%、…1000%、2000%、3000%、…10000%以上である。
【0074】
構造の生成方法において前述した考えで絶縁層を使用することは複数の利点を有する。上記使用は、前記基板内に複数の構造が生成される場合に短絡が生じるのを回避する。なぜなら、一旦構造−たとえば穴−が形成されると、その構造はその後閉じられるので、後続の構造が形成されるときに、電気エネルギーが消失する間道として利用できないからである。しかも前記絶縁層はまた、前記基板への構造上の支持を供して、前記基板を安定化させる。一部の実施例では、2層以上の絶縁層−たとえば前記基板のいずれかの面上に一の絶縁層−が存在して良い。さらに絶縁層を使用することで、基板内で互いに隣接する複数の構造を作製して、基板内に構造のアレイを形成することが可能となる。従って本発明による方法は、大量生産しやすく、かつ互いに近接する構造の形成を可能にする。たとえば半導体材料−たとえば抵抗が100Ωよりも大きくて厚さが0.5mm未満のシリコンウエハ−で作られた基板では、本発明による、絶縁層を用いて形成されるたとえば30μmの構造は、互いに60μm程度に接近して良い。
【0075】
ある基板材料−具体的にはガラスのような低伝導性材料−については、前記絶縁材料及び基板は、エネルギー消失過程を開始するように加熱されなければならない。従って、マイクロ構造の変化について記載した本発明の方法/デバイスと、特許文献1及び特許文献2に開示された方法/デバイスとは、前記絶縁層を加熱するだけではなく、下地の基板領域の温度を実効的に上昇させることで前記エネルギー消失工程を開始するように組み合わせられて良い。このことが重要になるのは、前記絶縁層が既に存在する穴を遮蔽し、かつ、前記放電プロセスを開始するため、前記加熱が、前記絶縁層の伝導性をより高くするためだけではなく前記基板の伝導性をもより高くする必要がある場合に、絶縁材料中にアレイを形成するときである。しかし前記工程d)において行われる実際のエネルギー消失プロセスの前での前記基板の事前加熱は、硬度や脆性といった機械的な基板パラメータを変化させることで、前記基板内部でのクラックの生成を緩和又は回避するのに利用されて良い。この事前加熱のための最適状態を見いだすには、前記基板と前記絶縁層との熱吸収の比をある値にする必要がある。一般的には、この比は、前記工程d)での開始レーザーの波長及び熱が付与される前記基板面を選択することによって、制御され、かつ決定されて良い。
【0076】
本発明のエネルギー消失制御の態様によると、本願発明者等は驚くべきことに、基板に付与される電気エネルギーを用いることによって、前記基板内に構造−好適には穴、空孔、チャネル、又は凹部−を生成することが可能であることを発見した。前記エネルギーの量は専ら、前記電極にわたって印加される電圧及び該電圧が印加される時間によって定められる。制御のための他のパラメータ及び該他のパラメータを制御する部材はもはや必要ない。過去の特許出願では、前記基板に付与されるエネルギーの全体量は適切なキャパシタによって制限されてきたか、あるいは、前記基板全体にわたって蓄えられるエネルギーの消失率は、オーム性抵抗器によって制御されてきた。本発明の方法の本態様では、これらの部材はもはや必要なく、かつ、付与される電気エネルギーの量は、前記工程b)の所定の期間及び前記工程b)において印加される所定の電圧によってのみ定めることができる。これにより、処理は、非常に多目的となり、かつ実行容易となる。その処理は、標準的なシリコンウエハのような半導体基板に特に適している。好適電圧範囲は、100[V]〜105[V]で、より好適には1000[V]〜15000[V]で、かつ、前記工程b)の好適期間は、10[ms]〜2[s]で、好適には50[ms]〜500[ms]である。さらに半導体基板では、構造(図4)を生成するために、追加のエネルギー−たとえば付与される熱−を使用する必要はもはやない。本態様によると、本発明による方法は、たとえば熱のような追加エネルギーの発生源−たとえばレーザー−無しに実行されて良く、かつ、電気エネルギーの量は専ら、印加電圧と前記工程b)の期間によって決定される。前記印加電圧と前記工程b)の期間は、100[V]〜100000[V]の範囲で、好適には1000[V]〜15000[V]の範囲で、かつ、10[ms]〜2[s]の範囲で、好適には50[ms]〜500[ms]の範囲に属する。生成された構造のサイズは、これら2つのパラメータにしか依存しない。従って追加エネルギー源−たとえばこれらの実施例におけるレーザー−の使用はもはや必要ない。
【0077】
本発明のさらに他の態様では、本発明は、様々な態様による上記方法によって生成される基板内の個々の構造−たとえば基板内の穴、空孔、チャネル等−、及び、基板内での前記構造のアレイに関する。
【0078】
本発明による方法を用いることによって、μm範囲以下の寸法を有する構造及び構造のアレイを形成することが可能である。
【0079】
より具体的には、本発明による方法及びデバイスを用いることによって、アスペクト比が330以下である直径0.1〜10μmの穴であってアレイをなすように配列したものが、高速抵抗加熱によって、アモルファス誘電体−たとえばガラス及び溶融シリカ−によって実現された。前記誘電体内部での強く集中した超指数関数的温度上昇により、高速材料融解及び揮発が起こる。融解と揮発との間の時間間隔は〜10-11[s]と推定される。このとき出力密度は100W/μm3に到達する。穴のサイズは、基板の伝導率σ(T)及び印加電圧U(t)の関数であり、高い再現性を有することを特徴とする。大きなアスペクト比を有する電気浸透ポンプ及び低ノイズイオンチャネル測定の典型的な応用が示されている。
【0080】
以降では、実施例と図を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】絶縁層を用いて穴を形成する実施例を図示している。
【図2】修正を受けた基板1−絶縁層2の複合体を図示している。図2Aでは、修正前の複合体が図示されている。図2Bでは、エネルギーが消失して、実際の修正プロセスが止まった。基板領域は変化(6)し、かつ絶縁層は開口部(7)ができる。
【図3】単一の基板上に近接するように多数の構造を形成する様子を図示している。
【図4】レーザー誘起ではなく電圧誘起絶縁破壊を用いて構造変化を導入する実施例を図示している。
【図5】厚さ500μm未満のパラフィンワックスからなる絶縁層を用いた厚さ150μmのボロシリケートガラス基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【図6】貫通孔を生成することなく構造変化を導入した後に最終エッチング工程を利用する方法を用いてシリコン基板内に生成された貫通孔を図示している。
【図7】ホットメルト接合剤(パテックスPTK6)からなる厚さ1mm未満の絶縁層を用いてシリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【図8】抵抗300Ω・cmよりも大きく(Bがドーピングされたp型)、及び配向が<100>である厚さ254μmのシリコンウエハ内に生成された穴の拡大図を示している。
【図9a】開始用に、800ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、10Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmの単結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。
【図9b】開始用に、500ms間8kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、8Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ300μmの多結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。
【図9c】開始用に、2000ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、22Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmのサファイア基板内に生成された穴を図示している。
【図9d】パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.0016Ω・cmで配向が<100>である厚さ500μmのインジウム燐基板内に生成された穴を図示している。
【図9e】パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.158Ω・cmで配向が<111>である厚さ400μmのガリウム砒素基板内に生成された穴を図示している。
【図10】取り出された材料が基板上に堆積されるのを回避する絶縁/保護層として厚さ200μmの固体パラフィン層を用いて、200ms間3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン内に生成された穴を図示している。
【図11a】絶縁/保護層としてパラフィンを用いて、各穴について200ms間に3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【図11b】絶縁/保護層を用いることなく、図11aのアレイと同一のパラメータを用いて生成された穴のアレイを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1は、絶縁層を用いて穴を形成する実施例を図示している。絶縁層2は、基板1と結合して、ユーザー及び任意でプロセスにより制御される電源4と接続する2つの電極3,3’間に設けられる。基板1内部で絶縁破壊が生じるのに十分な電圧を電極3,3’間に印加すると、絶縁層2は、基板1全体にわたってかかる実際の電圧を、絶縁破壊の閾値未満にまで減少させる。電圧のさらなる増大又は任意のレーザー5,5’を用いた絶縁層の熱誘起の局所的絶縁破壊により、基板1内部でのエネルギー消失工程が引き起こされる。期間(及び電源特性)は、エネルギーが消失する領域の範囲、つまりはこの基板領域内部での温度プロファイルを決定する。
【0083】
図2は、修正を受けた基板1−絶縁層2の複合体を図示している。図2Aでは、修正前の複合体が図示されている。図2Bでは、エネルギーが消失して、実際の修正プロセスが止まった。基板領域は変化(6)し、かつ絶縁層は開口部(7)ができる。
【0084】
図2Cは、絶縁層2が再密封された後の複合体を図示している。この最後の工程は、(水若しくはドデカンのような液体の絶縁体により、又は、パラフィンワックスのような十分に加熱されることで逆流する固体絶縁体により)自発的に行われて良いし、又は基板1の局所的若しくは大域的再加熱後に行われても良い。後者のプロセスについては、プロセス開始のために用いられるレーザーが、修正された領域を取り囲む絶縁体を(電圧を用いずに)加熱するのに用いられて良い。
【0085】
図3は、単一の基板上に近接するように多数の構造を形成する様子を図示している。基板1内に穴6が形成され、かつ絶縁層2が再密封された後、可動支持体8に取り付けられた基板1が、電圧が電極3,3’へ印加された、集束レーザービーム5を用いて消失プロセスが再始動する。−穴の内径及び体積の大きさに依存して−既に存在する穴を閉じることは、たとえば空気のような気体が、実際の基板(たとえばガラス)よりもはるかに迅速に絶縁破壊を起こす既存の穴を貫通する事前放電を防止するのに必要である。
【0086】
図4は、レーザー誘起ではなく電圧誘起絶縁破壊を用いて構造変化を導入する実施例を図示している。そのため、電極3,3’が基板1に近接するように設けられることで、ウエハ上での絶縁破壊及びエネルギー解放位置が決定される。基板−電極間の距離が近接することで、特にこの設定が最も適している半導体において、比較的低エネルギーで消失プロセスを開始させることが可能となる。電源4は、開口の生成又はマイクロ構造変化−たとえば結晶領域からアモルファス領域への変換−のいずれかを起こすようにプログラムされる。電圧の大きさ及び印加時間は、基板1内部での変換の範囲と程度を決定する。短期間に高電圧を印加することで、直径の短い領域が供される。その一方で、長い印加時間で、かつ必要な場合には揮発を回避するように低電圧にすることで、直径の長井領域が供される。新たに形成された領域6は、未変換の基板よりも大きな電気抵抗を有するので、短絡及び絶縁層の使用を回避することができる。
【0087】
図5は、厚さ500μm未満のパラフィンワックスからなる絶縁層を用いた厚さ150μmのボロシリケートガラス基板内に生成された穴のアレイを図示している。印加されたDC電圧は、9kVで、かつ300μAの電流が基板に流れると、スイッチがオフになる。放電プロセスは、直径100μmの焦点スポットを用いた、波長10.6μm(CO2レーザー)、かつ20ms間5Wの出力でのレーザー放射線によって開始された。他の絶縁層(前述した)もまた可能である(結果は示していない)。
【0088】
図6は、既に概略したように、貫通孔を生成することなく構造変化を導入した後に最終エッチング工程を利用する方法を用いてシリコン基板内に生成された貫通孔を図示している。シリコンウエハは、100Ω・cmよりも大きな抵抗を有して厚さ254μmである(Bがドーピングされたp型である)。2kVのDC電圧が、絶縁層も追加の熱も用いることなく、20ms間印加された。電極と基板との間の間隔は各面上で約0.4mmである。KOH(50%、80℃)がエッチング剤として用いられた。穴が正方形状の外見となったのは、ウエハの<100>配向のためである。
【0089】
図7は、ホットメルト接合剤(パテックスPTK6)からなる厚さ1mm未満の絶縁層を用いたシリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。シリコンウエハは、275μmの厚さ、300Ω・cmよりも大きな抵抗(Bがドーピングされたp型)、及び<100>配向を有する。600ms間印加されたDC電圧は7kVだった。基板までの電極の距離は約0.4mmで、かつ絶縁層までの電極の距離は約1mmだった。放電プロセスは、直径100μmの焦点スポットを用いた、波長10.6μm(CO2レーザー)、かつ600ms間3.5Wの出力でのレーザー放射線によって開始された。他の絶縁層(前述した)もまた可能である(結果は示していない)。
【0090】
図8は、抵抗300Ω・cmよりも大きく(Bがドーピングされたp型)、及び配向が<100>である厚さ254μmのシリコンウエハ内に生成された穴の拡大図を示している。穴は、絶縁層と追加の熱を用いることなく、400ms間3kVのDC電圧を印加することによって生成された。電極と基板との間の距離は各面上で約0.5mmだった。基板は続いて研磨された。
【0091】
図9aは、開始用に、800ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、10Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmの単結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。
【0092】
図9bは、開始用に、500ms間8kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、8Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ300μmの多結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。穴形成後、表面は機械的に研磨された。
【0093】
図9cは、開始用に、2000ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、22Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmのサファイア基板内に生成された穴を図示している。
【0094】
図9dは、パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.0016Ω・cmで配向が<100>である厚さ500μmのインジウム燐基板内に生成された穴を図示している。印加電圧は200ms間で11kVだった。プロセスは、波長1064nm(ファイバレーザー)、出力20W、約20μmの焦点距離でのレーザー光の照射によって開始された。
【0095】
図9eは、パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.158Ω・cmで配向が<111>である厚さ400μmのガリウム砒素基板内に生成された穴を図示している。印加電圧は200ms間で10kVだった。プロセスは、波長1064nm(ファイバレーザー)、出力20W、約20μmの焦点距離でのレーザー光の照射によって開始された。
【0096】
図10は、厚さ200μmの固体パラフィン層を、基板上へ取り出された材料が堆積されるのを回避する絶縁/保護層として用いて、200ms間3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン内に生成された穴を図示している。
【0097】
図11aは、絶縁/保護層としてパラフィンを用いて、各穴について200ms間に3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【0098】
図11bは、絶縁/保護層を用いることなく、図11aのアレイと同一のパラメータを用いて生成された穴のアレイを図示している。ただし絶縁/保護層は用いられていない。それにより、各穴を取り囲む領域内に取り出された材料が残りうる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ構造を有する基板を製造する方法、並びに当該方法の自然科学及び科学技術−具体的には半導体デバイス、マイクロ流体デバイス、及び解析デバイス−への応用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのマイクロ技術の応用及びデバイスは、たとえば穴のような高アスペクト比の構造を必要とする。一の顕著な例は、シリコンチップ内及びシリコンチップ間のインターコネクトとして用いられる貫通シリコンビア(TSV)である。高アスペクト比の穴(harh)を作製することは多くの場合難しく、高価で、又は不可能ですらある。現在の穴を作製する技術−たとえばレーザーアブレーション又はエッチング−の制約は、最小の穴のサイズ、アスペクト比、及び、内側の穴の(内)壁の粗さである。これらの制約は現時点では、積層されたシリコンチップの大規模な用途に対して深刻な障害を与える。本明細書において記載されたデバイス及び方法は、これらの制約を取り除く単純で、安価で、かつ精密な方法を供する。
【0003】
現在のマイクロ加工技術の別な問題は、選択された材料の選択性である。たとえば、KOH溶液を用いたSiの異方性エッチングは、シリコン中に溝及び穴を形成する単純な方法だが、多くの別な材料又はアモルファス材料には機能しない。Siでさえ、特定の結晶格子配向にしか機能しない。従って本明細書に開示された発明の目的は、多くの異なる材料の加工を可能にする方法を供することである。前記多くの異なる材料とはたとえば、Si、Ge、GaAs、InP、サファイア、ガラス、ジルコニアであり、それらのほとんどは、現在のマイクロ技術に関連するものである。様々な材料又はさらには種類の材料を加工する方法の調節は、小さなものであり、容易に移植可能であると考えられる。
【0004】
開示された発明のさらなる目的は、穴のアレイの作製に本方法を適用することである。特許文献1及び特許文献2は、基板への電圧印加を用いることによって基板内に構造を生成する方法を開示している。印加電圧が高く、かつ既存の穴全体にわたって電圧フラッシュオーバーが生じるため、本明細書に開示された方法では、穴を近接させることは不可能である。従って、アレイの形成についてのこれらの有害な高価を防止する方法及びデバイスが必要である。
【0005】
また多くの小型化された流体解析デバイス及び化学/生物分析デバイスは、小さな貯蔵室及び接続チャネルを必要とする。これらのチャネルおよび容器の寸法は通常μm範囲である。主として平面構造用に開発された一般的なマイクロ加工技術は、チップ/基板へ深く入り込むウエルやチャネルを作製する上で十分とは言えない。つまり最大実現可能なアスペクト比−穴の長さと直径との比−は、典型的には1:10に制限される。このことは特に、ガラス及びたとえば溶融シリカのようなガラス様材料の加工について当てはまる。大規模用途の重大な障壁は、高製造コストにも原因がある。
【0006】
他方、非常に高いアスペクト比を有するチャネルは、これらのチャネルを流れる流体の効率的な電気浸透性ポンピングを可能にする。たとえば150μmの長さで、かつ2μmの直径のチャネルであれば、チャネル内部での流体速度を非常に大きくするのにわずかな小さい電圧しか必要とされない。アスペクト比が非常に大きくなることで、チップ全体にわたるチャネルによって、たとえば厚さ0.5mmの典型的なガラスチップの両面を接続することが可能となる。それにより、単純な3次元流体設計が可能となる。
【0007】
ピコリットル容量を備えるチャネルはまた、大容量では無関係だった流体輸送及び混合効果を利用する、ピコリットル流体のための原理を供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/097439号パンフレット
【特許文献2】PCT/EP2008/009419号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、高品質の穴の開いた基板の製造を可能にする方法を供することである。本発明の目的はまた、そのような高品質の膜の担体の製造方法を供することである。当該方法は実行が容易で、かつ再現可能である。さらに本発明の目的は、基板内に穴、空孔、又はチャネルを制御して製造することを可能にする方法を供することである。前記穴、空孔、及びチャネルの幾何学上の特徴は、容易に制御可能で、かつ影響を受けることができる。本発明の目的はまた、穴の開いた基板を大量製造することを可能にする方法を供することである。さらに本発明の目的は、たとえばガラス、サファイア、又は元素シリコンのような、従来は処理が難しかった基板への適用が可能な穴の作製方法を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、構造−たとえば穴、空孔、チャネル、ウエル、若しくは凹部−又は構造変化−たとえば結晶構造からアモルファス構造への遷移−を、基板又は該基板の領域に導入する方法によって解決される。当該方法は:
a) 室温にて絶縁性又は半導体性である基板を供する工程、及び、前記基板を、ユーザー制御される電源と接続する少なくとも2つの電極間に設ける工程;
b) 前記ユーザー制御される電源によって、前記基板の領域にわたってユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記電圧は、前記基板又は前記領域を流れる電流の増大を引き起こすのに十分であることで、前記基板に所定量の電気エネルギーを付与する工程;
c)任意で、前記基板又は前記領域へ、好適には熱である追加エネルギーを付与することで、前記工程b)において電流を流し始めるように、前記基板又は前記領域の温度及び伝導率を増大させる工程であって、前記好適には熱である追加エネルギーは、追加エネルギー源若しくは熱源、又は前記工程b)において印加された電圧の成分を起源とする、工程;
d) 前記基板内において前記工程b)で付与された電気エネルギーを消失させる工程;
を有する。
【0011】
前記工程d)は、(i)前記工程b)のユーザーが定めた印加電圧、(ii)前記工程b)のユーザーが定めた期間、(iii)前記電源のインピーダンス、又は、(i)-(iii)の任意の組み合わせによって専ら制御される。
【0012】
一の実施例では、前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることによって実現される。
【0013】
一の実施例では、前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることなく、専らユーザーが定めた(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)によって実現される。
【0014】
一の実施例では、前記ユーザーが定めた電圧の大きさは、10[V]〜106[V]の範囲で、好適には102[V]〜3×105[V]の範囲で、より好適には103[V]〜30×103[V]の範囲で、最も好適には2×103[V]〜15×103[V]の範囲である。
【0015】
一の実施例では、前記ユーザーが定めた期間は、1[ms]〜5000[ms]で、好適には10[ms]〜2000[ms]で、より好適には10[ms]〜1000[ms]で、かつさらにより好適には10[ms]〜500[ms]である。
【0016】
一の実施例では、前記電源のインピーダンスは、1Ωより大きく、好適には10kΩより大きく、より好適には100kΩより大きく、かつさらにより好適には1MΩより大きい。
【0017】
一の実施例では、前記インピーダンスは1Ω〜1GΩの範囲である。好適には、前記インピーダンスは、当該方法の実行中、前記範囲内で可変である。
【0018】
一の実施例では、前記絶縁性又は半導体性基板は、たとえばポリプロピレンのような炭素ベースのポリマー、たとえばテフロン(登録商標)のようなフルオロポリマー、シリコンベースの基板−たとえばガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物−、シルガードのようなシリコンベースのポリマー、半導体材料−たとえばドーピングされたものを含む元素シリコン、ゲルマニウム−、化合物半導体−たとえばガリウム砒素、インジウム燐−、アルミニウムベースの結晶性材料−たとえばアルミナ、スピネル、サファイア−、及び、たとえばジルコニアのようなセラミックスを有する群から選ばれる材料で作られる。
【0019】
一の実施例では、前記工程d)は、(i)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分である工程、(ii)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分ではなく、前記電極の各々と前記基板との間の距離を減少させ、かつ任意で前記基板と前記電極とを接触させる工程、(iii)前記工程c)を実行する工程、又は、(i)-(iii)を組み合わせた工程のいずれかによって開始される。
【0020】
一の実施例では、前記工程c)は省略される。好適には、前記基板は、室温で109[Ω・cm]以下の抵抗率を有する基板である。
【0021】
一の実施例では、前記基板は、室温では半導体で、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体−たとえばガリウム砒素やインジウム燐−から選ばれた半導体材料で作られる。
【0022】
一の実施例では、前記工程c)が実行される。好適には、前記工程c)は、加熱電極、加熱素子、レーザー、集束光源、UV光源、ガスフレーム、及び高周波電磁場デバイスから選ばれる追加エネルギー源を用いて実行される。そのような高周波電磁場デバイスとは、たとえばテスラ変成器である。
【0023】
一の実施例では、前記追加エネルギー源は、好適には前記基板によって少なくとも部分的に吸収される波長範囲内の波長を有するレーザーである。
【0024】
一の実施例では、前記工程c)における追加エネルギーの付与位置は、前記構造又は前記構造変化が導入される前記基板の領域を決定する。
【0025】
一の実施例では、結合した状態の少なくとも1層の絶縁層を有する室温で絶縁性又は半導体性である前記基板が、前記工程a)において供される。好適には、前記絶縁層は、室温で、固体、液体、又は気体である。
【0026】
係る絶縁層は、1μm〜1cmの範囲の厚さを有することが好ましく、10μm〜1mmの範囲の厚さを有することがより好ましい。
【0027】
一の実施例では、前記絶縁層は、室温で気体であるが、空気ではない。
【0028】
一の実施例では、前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有する。前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入される。前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させることが好ましい(遮蔽効果)。前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内では、該絶縁層の遮蔽効果を減少させるように前記絶縁領域内において電気伝導性が上昇して、前記基板領域内の基板にかかる電圧が最適化される。
【0029】
一の実施例では、前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有する。前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入される。前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させることが好ましい(遮蔽効果)。前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内は、前記工程a)において固体として供される場合には、前記絶縁領域において液化され、又は、前記工程a)において液体として供される場合には、前記絶縁領域において部分的に揮発する。前記工程d)の間、前記絶縁層は、前記電気エネルギーの消失によって前記絶縁領域内で部分的に変位する。前記工程d)の後、前記の気体、液体、又は部分的に揮発した絶縁層は、前記の生成された構造へ流れ込み、前記構造を閉じて、該構造を少なくとも部分的に充填する。
【0030】
一の実施例では、前記絶縁層が前記基板と結合することで、前記絶縁層は、前記工程a)において前記基板を覆うか、又は、前記工程a)において前記基板によって覆われ、かつ、前記基板領域は前記絶縁領域に対向するように位置する。
【0031】
一の実施例では、前記絶縁層は、該絶縁層材料の電気的分極に起因する内部の対抗電場の形成によって、前記基板にかかる電圧を減少させる。
【0032】
一の実施例では、前記絶縁層はまた、前記処理中に放出した材料を前記絶縁層に吸収させて、前記基板表面上での直接的な再堆積を回避することによって、導入された前記構造を取り囲む領域の平坦さ/表面の品質を改善するのにも用いられる。一の実施例では、前記の吸収された材料は、前記構造の導入後、前記絶縁層と共に除去される。
【0033】
一の実施例では、前記絶縁層は、前記構造が導入される(複数の)領域のみを曝露するマスクを前記基板上に形成するのに用いられる。それにより前記基板の他の領域は、意図しない電気エネルギーの消失から保護される。
【0034】
一の実施例では、前記工程c)は、たとえば前記絶縁層によって吸収される波長のレーザー放射線の吸収によって、前記絶縁層を直接的に加熱することによって実行される。
【0035】
一の実施例では、前記工程c)は、結合した基板を加熱して、前記の加熱された基板から前記の結合した絶縁層への熱輸送を利用することによって、前記絶縁層を間接的に加熱することによって実行される。
【0036】
一の実施例では、前記絶縁層は、室温にて固体かつ絶縁性である材料で作られる。好適には前記材料は、ワックス−具体的にはパラフィンワックス−、ゴム、ホットメルト接着剤、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、及びポリウレタンから選ばれる。
【0037】
一の実施例では、前記絶縁層は、室温にて液体であって、室温にて絶縁性及び/又は極性を有する材料で作られる。好適には前記材料は、ドデカン、パラフィン、水、又は高粘性水に基づく液体−たとえばフィスコール(Fiscoll)(商標)又は蜂蜜のような液体−から選ばれる。
【0038】
一の実施例では、前記絶縁材料は、室温にて気体の材料で作られる。好適には前記材料は、SF6、Ar、N2、CO2から選ばれる。
【0039】
一の実施例では、前記基板は、室温にて絶縁性で、かつ好適には、ガラス、石英、ダイアモンド、アルミナ、サファイア、アルミニウム窒化物、ジルコニア、スピネルから選ばれ、より好適には、石英及びガラスから選ばれる。好適には前記基板は、室温にて109Ωよりも大きな抵抗を有する。
【0040】
一の実施例では、前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の固体であって、好適には、パラフィンワックス、ゴム、及びホットメルト接着剤から選ばれる。
【0041】
一の実施例では、前記工程c)はレーザーを用いて実行される。前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい。
【0042】
一の実施例では、前記基板は、室温にて半導体性であり、好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、たとえばガリウム砒素やインジウム燐のような化合物半導体から選ばれる。
【0043】
好適には、前記基板は、室温にて109Ω以下の抵抗を有する。
【0044】
一の実施例では、前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の液体で、及び/若しくは極性を有する材料であって、好適には、ドデカン、パラフィン、水、蜂蜜から選ばれるもので作られ、又は、室温にて絶縁性の固体で、好適には、パラフィンワックスとホットメルト接着剤から選ばれる材料で作られる。
【0045】
一の実施例では、前記工程c)はレーザーを用いて実行される。前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい。
【0046】
一の実施例では、前記工程c)が実行されることで、前記工程b)及びd)を開始するのに必要とされる、前記絶縁層にわたる電場の減少に必要な前記絶縁層の加熱を行うことで、前記基板の温度が顕著に増大する。その結果、硬度や脆性といった前記絶縁層の温度に依存する機械的パラメータが顕著に変化する。
【0047】
一の実施例では、前記工程a)-d)が1番目に実行されることにより、前記第1基板領域内に第1構造が生成され、その後前記基板は所定距離を移動し、かつ、前記工程b)-d)が2番目に実行されることにより、第2基板領域内に第2構造が生成され、好適には前記工程b)-d)がn回(n>1)実行されることにより、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される。
【0048】
一の実施例では、前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分なものである。
【0049】
他の実施例では、前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分ではないが、前記基板領域内の構造を変化させるには十分である。好適には、前記工程d)は、前記基板領域内に存在する材料を加熱及び/又は融解することによって前記基板領域内の構造を変化させる。前記の構造の変化により、前記基板は、前記基板領域を含む基板がアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露されるアブレーション工程e)による処理を行いやすくなる。
【0050】
一の実施例では、前記電気エネルギーは、前記基板領域からの材料の放出を引き起こすのに十分ではない。
【0051】
一の実施例では、本発明による方法は、
e) 前記基板領域を含む基板をアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露する工程、
をさらに有する。
【0052】
前記工程d)が、前記基板領域内に存在する材料を加熱及び/又は融解することによって前記基板領域内の構造を変化させる実施例において、前記基板上に絶縁層が存在する場合、前記基板内の構造の変化後に前記絶縁層が除去されることが好ましい。
【0053】
一の実施例では、前記基板は、室温にて半導体性であって、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素やインジウム燐などの化合物半導体から選ばれた半導体材料から作られる。
【0054】
一の実施例では、前記アブレーション環境は、エッチング剤で、好適には、半導体材料に対して選択的なエッチング剤で、より好適には、KOH、SF6、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール(EDP)、ヒドラジン、及びHFから選ばれる。
【0055】
一の実施例では、前記アブレーション環境は反応性イオンエッチング処理によって生成される。
【0056】
一の実施例では、前記アブレーション環境は、エッチングに用いられるSF6である。
【0057】
一の実施例では、前記工程b)及びd)はn回(nは2以上の整数)実行されることで、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域に電気エネルギーが付与され、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域内の構造が変化する。
【0058】
一の実施例では、本発明による方法は、前記工程e)をさらに有する。前記工程b)及びd)はn回実行された後に前記工程e)が1回実行されることで、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される。
【0059】
一の実施例では、前記基板は元素シリコンで、かつ前記エッチング剤は、KOH、TMAH、SF6から選ばれる。
【0060】
一の実施例では、他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に平行なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板が選ばれる。
【0061】
一の実施例では、他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に垂直なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板−たとえばKOHにおける<111>シリコンウエハ−が選ばれる。
【0062】
一の実施例では、前記基板は保護層によってコーティングされる。前記保護層は、該基板自体よりもエッチング剤によってエッチングされず、かつ、前記工程a)-d)の実行中、前記工程d)が実行された(複数の)場所でのみエッチングを可能にするように、完全若しくは部分的に除去され、又は構造的に変化する。
【0063】
一の実施例では、本発明による方法は、上述した前記絶縁層を保護層として用いる。
【0064】
本発明の目的はまた、本発明の方法によって作製される、基板内の構造(のアレイ)−好適には穴、空孔、チャネル、ウエル、又は凹部−によっても解決される。
【0065】
第1態様では、本発明は、構造−好適には穴、空孔、チャネル、ウエル、若しくは凹部−又は、制御された電源と接続する(少なくとも)2つの電極間に設けられた基板内での、結晶状態からアモルファス状態への遷移のような構造変化を導入する方法に関する。前記基板内部で完全又は一部で局所的に消失した電源によって供されるエネルギーは、電圧の大きさ、及び/又は、電源のインピーダンス、及び前記電圧が印加された時間によって制御される。一般的には、前記電圧は印加時間の関数V(t)であって良い。V(t)の変化は、印加中での電気回路の変化、並びに/又は、前記基板電流及び/若しくは電圧を解析するプログラム回路及び/若しくはフィードバック回路の変化によって起こる。電圧印加中、前記基板内部でのエネルギー消失は、前記基板の物理化学特性の局所的変化を実現するように制御される。前記基板の物理化学特性の局所的変化とはたとえば、前記消失領域内の温度を、各対応する融解又は遷移温度にまで昇温することによって、結晶領域をアモルファス領域へ変換することである。前記処理は、たとえば穴の生成のような幾何学的な変化が起こる前に明示的に中止されて良い。最初に前記消失処理を開始するため、特許文献1及び2で開示されているように、修正領域の温度つまり熱伝導を局所的に増大させるように、前記修正領域へ補助的な熱を供給することが必要になると考えられる。しかし前記補助的な熱は、調節される領域の画定を可能にする。
【0066】
基板へ電圧を印加するため、一般的には、基板と構造の特性及び寸法知るため、特許文献1及び2を参照する。
【0067】
たとえば高伝導度を有する又は印加電圧を短絡させる穴を有する基板については、前記基板は1層以上の絶縁層と結合する(図1)。これらの層は、非常に高い抵抗を有することにより、又は、前記層内部での対抗電場を誘起させる(たとえば水のような極性物質を用いるときに当てはまる)ことにより、前記基板から印加電圧(図1の電極3と3’、電源4、レーザー5と5’)を実効的に遮蔽する。換言すると、電極を介して印加された電圧の一部又は場合によっては該電圧のほとんどは、前記絶縁層にわたって電場を生成することで、前記基板内部の電場を減少させる。この結果前記電極にわたる電圧が一定であれば、前記基板内部の電場が劇的に減少することで、前記基板内部の絶縁破壊を引き起こしてしまう電圧での放電が防止される。前記基板内部でのエネルギー消失を開始するため、前記絶縁層は、伝導度を上昇させるか、又は、前記の結合した基板が修正される位置で除去されなければならない。これは、たとえばレーザーを用いることにより、又は、前記基板内の消失を引き起こす高周波電磁場によって、この位置の照射又は加熱の際に行われて良い。たとえば特許文献1若しくは特許文献2に記載された穴の生成又は前述した物理化学的特性の局所変化(6)を含みうる、前記基板の修正後(図2を参照のこと)、一部(7)に穴が開いて、かつ融解及び/又は揮発する前記絶縁層は再度、前記基板内部の別な領域の修正を続けるように閉じられて良い(図2)。たとえば流体又はゲル状絶縁層−たとえば純水又は炭化水素(ワックス、ドデカン、パラフィン…)−を用いることで、前記絶縁層は、たとえば表面張力又は基板接合によって、閉じられて良い。固体層は、熱が誘起する逆流を用いて閉じられて良い。前記熱が誘起する逆流は、補助的な熱の付与、エネルギー消失処理自体、又は修正後に続いて行われる加熱工程によって開始されて良い。1μm〜1cm範囲で、好適には10μm〜1mm範囲の厚さを有する前記層は、前記構造を取り囲む表面全体にわたる、前記基板から取り出された材料の堆積を防止することで、放出された材料の吸収及び該材料の前記基板への結合が防止されて良い(図10を参照のこと)。上述の工程の結合及び反復により、互いに空間的に近接する多重の基板構造変化−たとえばアレイの形態で構成する−が可能となる。前記構造の空間変位の精度を増大させるため、前記絶縁層が、たとえば絶縁材料の一部の機械的アブレーション又はレーザー蒸発/分解によって、マスクを生成するのに用いられて良い。これは、前記構造が導入される前記基板の選ばれた領域のみを曝露することで、前記基板上の構造の位置を、より厳密に定めることができる(図11を参照のこと)。たとえば固体ワックス層を用いると、係るマスクは、たとえば針−電極それ自体であっても良い−によって、構造が導入される位置で前記層を貫通すなわち穴を開け、前記基板の直径10nm〜1mmでより好適には1μm〜100μm範囲の領域を曝露することによって生成されて良い。これらの地点では、前記ワックスは部分的又は全体的に除去されることで、前記工程d)の間での電気エネルギーの消失位置が定められる。
【0068】
本発明による他のデバイス及び方法では、前記基板をアブレーション環境−たとえばエッチング溶液又は反応性イオンプラズマ(RIE)−へ曝露することで、修正領域と非修正領域との間での材料のアブレーションに差異が生じるように、前記方法及びデバイスは、前記(複数の)消失位置での物理化学的特性を修正する、前記基板内部での構造変化を導入するのに用いられる。前記の修正された領域が侵襲される場合、より強力な穴及びウエル状の構造が生成され、反対に、修正された領域の列は前記のアブレーションされた基板から突き出る。ある材料についての加熱及び放出された材料が、たとえば再堆積された材料のアブレーション又は生成された穴の(直径の)増大を可能にする新たな物理化学的特性を有するので、前記エッチング工程はまた、特許文献1及び特許文献2に従って作製された構造を修正するように実行されて良い。例は、記載されたようなSiウエハ内に生成されて、続いて(たとえば80℃に)暖められた50%KOH溶液に曝露された穴である。「元素シリコン」又は「シリコン」という語は、シリコンウエハとして用いられるような結晶(単結晶又は多結晶)シリコンを含むことに留意して欲しい。その語はまたドーピングされたシリコンをも含む。
【0069】
前記エッチング工程中に前記の非修正基板を良好に保護することで、前記ウエハ全体又は前記ウエハの一面を前記エッチング剤に浸漬させることを可能にするため、前記基板は、保護層によって覆われて良い。この通常は薄い層(典型的には10μm未満)は前記(複数の)修正領域で除去又は変更されることで、前記エッチング剤は、前記の除去又は変更された(複数の)修正領域でしか前記基板に接触できない。例としては、Siウエハ上の典型的には厚さが1μm未満のSi3N4層である。続いてKOHに基づくエッチング媒質を用いても、前記Siウエハは、前記窒化物層の存在によりエッチングされない(ただしエネルギーが消失した場所は除く)。
【0070】
最適のエッチング結果−たとえば前記の形成された構造の軸に垂直なエッチング速度を減少させる、又は、前記基板表面に垂直なエッチング速度を増大/減少させる−を実現するため、(適用可能な場合には)最適となるように前記基板の結晶格子の配向が選ばれて良い。例としては、KOH溶液で処理された<111>Siウエハを用いて、前記ウエハ表面に垂直なエッチング速度を減少させることによって、修正領域と非修正領域とのエッチング速度の差をさらに増大させることである。
【0071】
穴の形成においてアブレーションとマイクロ構造の基板変化とを組み合わせることは、前記工程の内圧は、材料が前記の形成された構造から能動的に放出された工程での内圧よりも小さくなるため、デバイスの絶縁破壊や変形が起こりにくくなるという利点を有する。しかもこれまで必要とされてきた後続の研磨工程を回避することができる。なぜなら前記基板に適用される条件は一般的に十分穏やかであり、かつ前記基板上への基板材料の堆積は起こらないからである。
【0072】
本発明によると、本願発明者らは、電気エネルギーを基板に付与するデバイス及び方法を確立した。前記電気エネルギーは、前記基板内での貫通孔又は貫通チャネルの形成を引き起こすのに十分な大きさではないが、前記電気エネルギーが付与される領域の構造を、後続のエッチング工程に適合させる。本発明の実施例によると、前記基板を介した放電を引き起こすことのできる電源と接続する2つの電極間に前記基板は設けられる。前記放電は、(1)たとえば電圧の増大(典型的には1000-300000[V])による前記電極間での電場強度の増大、(2)前記電極間隔の接近、(3)前記基板の局所的加熱、又は(4)前記基板に結合する絶縁層の局所的加熱の際に起こる。前記放電、つまり前記電源は、期間Dtにわたって電力P(t)を供するように制御される。よって電力と時間との間の相互作用は、前記基板内部で生成される温度プロファイルを決定する。如何なる理論にも束縛されることを望んでいないが、本願発明者らは、この方法が、定められた基板領域内で前記基板を顕著に加熱する際に、前記領域の構造を変化させると信じている。繰り返しになるが、如何なる理論にも束縛されることを望んでいないが、本願発明者らは、秩序のない構造は、前記加熱処理によって生成されたと考えている。たとえばチップの製造に用いられるウエハのような結晶である物質では、当該方法は、温度を融点(付近)まで局所的に昇温する際に、アモルファス構造にしていると考えられる。従って前記電気エネルギーが付与された領域は、よりエッチングされやすくなるので、エッチング剤が付与されたときには選択的にエッチングされる。例としては、10Ω・cmよりも大きな伝導率で、厚さ0.25mmで、基板と電極との間の電極間隔が各0.5mmで、V=2000[V]で、C≒1[nF]で、Dt<100[msec]の条件において、80℃で50%KOHによるエッチングを行うことで、直径が略30-100μmの穴が形成される、<100>配向のシリコンに適用される処理である。 本発明によるこの態様の好適実施例では、電圧が基板の領域に印加されることで、電気エネルギーが局所的に消失する前記工程b)とd)がn回(nは2以上の整数)繰り返される。その後エッチング工程が実行されることで、前記基板内にn個の構造が生成される。本発明によるこの態様は、半導体性基板内での構造のアレイの形成及びTSV(貫通孔シリコンビア)の用途に特に適している。
【0073】
本発明の実施例では、本願発明者等はまた、電気エネルギーを用いて基板内に構造を生成する方法において絶縁層を導入した。その工程は、全基板内のアレイにとってのみならず、たとえば半導体のような伝導性基板材料にとっても重要である。第1の場合では、ウエハ全体が、第2の場合では既に存在する穴が、印加電圧から遮蔽されなければならず、そのため、この領域を放電位置と定められるように、修正される前記基板の一部だけが前記電場に曝露される(図3)。絶縁層は、気体材料−たとえばSF6−、液体材料−たとえばパラフィンや水−、及び、固体材料−たとえばワックス−で構成されて良い。前記層は、さらなる発明をすることなく放電を回避するように、前記の印加電圧から十分に遮蔽されなければならない。これは純粋に絶縁によって生じさせることができる。それは、前記絶縁層の高抵抗特性のみならず、前記印加電圧が全絶縁層内部で対抗電場を発生させる場所での遮蔽特性である。このことは通常は、たとえば水のような極性材料について当てはまる。実際の放電過程−前記基板内部でのエネルギー消失−は、たとえば前記基板領域に対向して隣接する、前記構造が生成される所定の領域を加熱することによって、前記絶縁層の伝導率の局所的上昇の際に始まる。前記絶縁層内のそのような所定の領域−ときに「絶縁領域」とも呼ばれる−は、抵抗の変化後又は誘電特性−たとえば誘電率−の変化後、電流が、前記所定の領域に流れ始め、続いて前記基板の隣接する領域に流れることで、エネルギーが消失する前記基板の領域を実効的に減少させることを可能にする。好適実施例では、前記基板へ電気エネルギーを付与し、その後消失するときに、前記誘電領域は、液体又は溶融物となり、かつその後全部又は一部が揮発する。しかし前記絶縁層が典型的には前記領域の周りでは依然として液体又は溶融物なので、前記絶縁層は、前記の生成された構造へ流れ込むことで、前記構造を閉じ及び/又は少なくとも部分的に充填する。一の実施例では、前記工程d)の実行後、前記絶縁層を再度溶融若しくは液化し、又は前記絶縁層を液体若しくは溶融物の状態に維持するように、追加のエネルギー−好適には熱−が前記絶縁領域に付与される。前記工程c)又はf)における追加のエネルギーを付与する好適手段は、加熱された電極、加熱素子、レーザー、集束光源、ガストーチ、又は高周波電磁場源から選ばれることで、前記材料中でのエネルギーが消失する。高周波電磁場源の例は、本発明によって利用可能なテスラ変成器である。好適実施例では、加熱手段はレーザーである。前記レーザーは、前記絶縁層を、直接的(ビームが直接吸収される)、若しくは間接的(前記ビームは基板によって吸収され、熱は熱伝導によって前記絶縁層へ伝えられる)、又は直接的かつ間接的(前記基板と絶縁層が前記ビームの一部を吸収する)に加熱して良い。具体的なレーザーの選択は、前記基板材料と絶縁材料に依存する。例は10.6μmの波長を有するCO2レーザーである。他の好適なレーザーは、800nm〜1300nmの範囲の波長を有するレーザーである。前記レーザー波長はまた、前記絶縁層によって吸収されて前記絶縁層を加熱する、かつ/あるいは、前記絶縁層を加熱する前記基板によって吸収されるように選ばれることに留意して欲しい。これにより前記絶縁層の加熱が可能となる。吸収は100%以下でよい。つまり入射放射線の実質的に全て又は一部が、前記基板及び/又は絶縁層によって吸収される。本明細書で用いられているように、「少なくとも一部が吸収される」という語は、前記基板及び/又は前記絶縁層が、前記入射放射線の0.1%〜100%を吸収するシナリオを意味する。本明細書で用いられているように、「絶縁層」という語は、前記基板と結合する−好適には直接結合する−ことで、前記絶縁層と前記基板が互いに隣接して対向するような層を指称する。この構成では、前記基板内に構造が生成される領域はまた「基板領域」とも呼ばれ、かつ前記基板領域に対向するように設けられる前記絶縁層内の対応する領域は「絶縁領域」と呼ばれる。実効的には、前記絶縁領域は、前記基板領域の上部又は下部に位置する。一の実施例では、前記絶縁領域と前記基板領域は同一サイズである。他の実施例では、前記絶縁領域は、前記基板領域の面積の5%以上−たとえば10%、15%、20%、25%、30%、…100%、200%、300%、400%、…1000%、2000%、3000%、…10000%以上である。
【0074】
構造の生成方法において前述した考えで絶縁層を使用することは複数の利点を有する。上記使用は、前記基板内に複数の構造が生成される場合に短絡が生じるのを回避する。なぜなら、一旦構造−たとえば穴−が形成されると、その構造はその後閉じられるので、後続の構造が形成されるときに、電気エネルギーが消失する間道として利用できないからである。しかも前記絶縁層はまた、前記基板への構造上の支持を供して、前記基板を安定化させる。一部の実施例では、2層以上の絶縁層−たとえば前記基板のいずれかの面上に一の絶縁層−が存在して良い。さらに絶縁層を使用することで、基板内で互いに隣接する複数の構造を作製して、基板内に構造のアレイを形成することが可能となる。従って本発明による方法は、大量生産しやすく、かつ互いに近接する構造の形成を可能にする。たとえば半導体材料−たとえば抵抗が100Ωよりも大きくて厚さが0.5mm未満のシリコンウエハ−で作られた基板では、本発明による、絶縁層を用いて形成されるたとえば30μmの構造は、互いに60μm程度に接近して良い。
【0075】
ある基板材料−具体的にはガラスのような低伝導性材料−については、前記絶縁材料及び基板は、エネルギー消失過程を開始するように加熱されなければならない。従って、マイクロ構造の変化について記載した本発明の方法/デバイスと、特許文献1及び特許文献2に開示された方法/デバイスとは、前記絶縁層を加熱するだけではなく、下地の基板領域の温度を実効的に上昇させることで前記エネルギー消失工程を開始するように組み合わせられて良い。このことが重要になるのは、前記絶縁層が既に存在する穴を遮蔽し、かつ、前記放電プロセスを開始するため、前記加熱が、前記絶縁層の伝導性をより高くするためだけではなく前記基板の伝導性をもより高くする必要がある場合に、絶縁材料中にアレイを形成するときである。しかし前記工程d)において行われる実際のエネルギー消失プロセスの前での前記基板の事前加熱は、硬度や脆性といった機械的な基板パラメータを変化させることで、前記基板内部でのクラックの生成を緩和又は回避するのに利用されて良い。この事前加熱のための最適状態を見いだすには、前記基板と前記絶縁層との熱吸収の比をある値にする必要がある。一般的には、この比は、前記工程d)での開始レーザーの波長及び熱が付与される前記基板面を選択することによって、制御され、かつ決定されて良い。
【0076】
本発明のエネルギー消失制御の態様によると、本願発明者等は驚くべきことに、基板に付与される電気エネルギーを用いることによって、前記基板内に構造−好適には穴、空孔、チャネル、又は凹部−を生成することが可能であることを発見した。前記エネルギーの量は専ら、前記電極にわたって印加される電圧及び該電圧が印加される時間によって定められる。制御のための他のパラメータ及び該他のパラメータを制御する部材はもはや必要ない。過去の特許出願では、前記基板に付与されるエネルギーの全体量は適切なキャパシタによって制限されてきたか、あるいは、前記基板全体にわたって蓄えられるエネルギーの消失率は、オーム性抵抗器によって制御されてきた。本発明の方法の本態様では、これらの部材はもはや必要なく、かつ、付与される電気エネルギーの量は、前記工程b)の所定の期間及び前記工程b)において印加される所定の電圧によってのみ定めることができる。これにより、処理は、非常に多目的となり、かつ実行容易となる。その処理は、標準的なシリコンウエハのような半導体基板に特に適している。好適電圧範囲は、100[V]〜105[V]で、より好適には1000[V]〜15000[V]で、かつ、前記工程b)の好適期間は、10[ms]〜2[s]で、好適には50[ms]〜500[ms]である。さらに半導体基板では、構造(図4)を生成するために、追加のエネルギー−たとえば付与される熱−を使用する必要はもはやない。本態様によると、本発明による方法は、たとえば熱のような追加エネルギーの発生源−たとえばレーザー−無しに実行されて良く、かつ、電気エネルギーの量は専ら、印加電圧と前記工程b)の期間によって決定される。前記印加電圧と前記工程b)の期間は、100[V]〜100000[V]の範囲で、好適には1000[V]〜15000[V]の範囲で、かつ、10[ms]〜2[s]の範囲で、好適には50[ms]〜500[ms]の範囲に属する。生成された構造のサイズは、これら2つのパラメータにしか依存しない。従って追加エネルギー源−たとえばこれらの実施例におけるレーザー−の使用はもはや必要ない。
【0077】
本発明のさらに他の態様では、本発明は、様々な態様による上記方法によって生成される基板内の個々の構造−たとえば基板内の穴、空孔、チャネル等−、及び、基板内での前記構造のアレイに関する。
【0078】
本発明による方法を用いることによって、μm範囲以下の寸法を有する構造及び構造のアレイを形成することが可能である。
【0079】
より具体的には、本発明による方法及びデバイスを用いることによって、アスペクト比が330以下である直径0.1〜10μmの穴であってアレイをなすように配列したものが、高速抵抗加熱によって、アモルファス誘電体−たとえばガラス及び溶融シリカ−によって実現された。前記誘電体内部での強く集中した超指数関数的温度上昇により、高速材料融解及び揮発が起こる。融解と揮発との間の時間間隔は〜10-11[s]と推定される。このとき出力密度は100W/μm3に到達する。穴のサイズは、基板の伝導率σ(T)及び印加電圧U(t)の関数であり、高い再現性を有することを特徴とする。大きなアスペクト比を有する電気浸透ポンプ及び低ノイズイオンチャネル測定の典型的な応用が示されている。
【0080】
以降では、実施例と図を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】絶縁層を用いて穴を形成する実施例を図示している。
【図2】修正を受けた基板1−絶縁層2の複合体を図示している。図2Aでは、修正前の複合体が図示されている。図2Bでは、エネルギーが消失して、実際の修正プロセスが止まった。基板領域は変化(6)し、かつ絶縁層は開口部(7)ができる。
【図3】単一の基板上に近接するように多数の構造を形成する様子を図示している。
【図4】レーザー誘起ではなく電圧誘起絶縁破壊を用いて構造変化を導入する実施例を図示している。
【図5】厚さ500μm未満のパラフィンワックスからなる絶縁層を用いた厚さ150μmのボロシリケートガラス基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【図6】貫通孔を生成することなく構造変化を導入した後に最終エッチング工程を利用する方法を用いてシリコン基板内に生成された貫通孔を図示している。
【図7】ホットメルト接合剤(パテックスPTK6)からなる厚さ1mm未満の絶縁層を用いてシリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【図8】抵抗300Ω・cmよりも大きく(Bがドーピングされたp型)、及び配向が<100>である厚さ254μmのシリコンウエハ内に生成された穴の拡大図を示している。
【図9a】開始用に、800ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、10Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmの単結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。
【図9b】開始用に、500ms間8kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、8Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ300μmの多結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。
【図9c】開始用に、2000ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、22Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmのサファイア基板内に生成された穴を図示している。
【図9d】パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.0016Ω・cmで配向が<100>である厚さ500μmのインジウム燐基板内に生成された穴を図示している。
【図9e】パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.158Ω・cmで配向が<111>である厚さ400μmのガリウム砒素基板内に生成された穴を図示している。
【図10】取り出された材料が基板上に堆積されるのを回避する絶縁/保護層として厚さ200μmの固体パラフィン層を用いて、200ms間3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン内に生成された穴を図示している。
【図11a】絶縁/保護層としてパラフィンを用いて、各穴について200ms間に3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【図11b】絶縁/保護層を用いることなく、図11aのアレイと同一のパラメータを用いて生成された穴のアレイを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1は、絶縁層を用いて穴を形成する実施例を図示している。絶縁層2は、基板1と結合して、ユーザー及び任意でプロセスにより制御される電源4と接続する2つの電極3,3’間に設けられる。基板1内部で絶縁破壊が生じるのに十分な電圧を電極3,3’間に印加すると、絶縁層2は、基板1全体にわたってかかる実際の電圧を、絶縁破壊の閾値未満にまで減少させる。電圧のさらなる増大又は任意のレーザー5,5’を用いた絶縁層の熱誘起の局所的絶縁破壊により、基板1内部でのエネルギー消失工程が引き起こされる。期間(及び電源特性)は、エネルギーが消失する領域の範囲、つまりはこの基板領域内部での温度プロファイルを決定する。
【0083】
図2は、修正を受けた基板1−絶縁層2の複合体を図示している。図2Aでは、修正前の複合体が図示されている。図2Bでは、エネルギーが消失して、実際の修正プロセスが止まった。基板領域は変化(6)し、かつ絶縁層は開口部(7)ができる。
【0084】
図2Cは、絶縁層2が再密封された後の複合体を図示している。この最後の工程は、(水若しくはドデカンのような液体の絶縁体により、又は、パラフィンワックスのような十分に加熱されることで逆流する固体絶縁体により)自発的に行われて良いし、又は基板1の局所的若しくは大域的再加熱後に行われても良い。後者のプロセスについては、プロセス開始のために用いられるレーザーが、修正された領域を取り囲む絶縁体を(電圧を用いずに)加熱するのに用いられて良い。
【0085】
図3は、単一の基板上に近接するように多数の構造を形成する様子を図示している。基板1内に穴6が形成され、かつ絶縁層2が再密封された後、可動支持体8に取り付けられた基板1が、電圧が電極3,3’へ印加された、集束レーザービーム5を用いて消失プロセスが再始動する。−穴の内径及び体積の大きさに依存して−既に存在する穴を閉じることは、たとえば空気のような気体が、実際の基板(たとえばガラス)よりもはるかに迅速に絶縁破壊を起こす既存の穴を貫通する事前放電を防止するのに必要である。
【0086】
図4は、レーザー誘起ではなく電圧誘起絶縁破壊を用いて構造変化を導入する実施例を図示している。そのため、電極3,3’が基板1に近接するように設けられることで、ウエハ上での絶縁破壊及びエネルギー解放位置が決定される。基板−電極間の距離が近接することで、特にこの設定が最も適している半導体において、比較的低エネルギーで消失プロセスを開始させることが可能となる。電源4は、開口の生成又はマイクロ構造変化−たとえば結晶領域からアモルファス領域への変換−のいずれかを起こすようにプログラムされる。電圧の大きさ及び印加時間は、基板1内部での変換の範囲と程度を決定する。短期間に高電圧を印加することで、直径の短い領域が供される。その一方で、長い印加時間で、かつ必要な場合には揮発を回避するように低電圧にすることで、直径の長井領域が供される。新たに形成された領域6は、未変換の基板よりも大きな電気抵抗を有するので、短絡及び絶縁層の使用を回避することができる。
【0087】
図5は、厚さ500μm未満のパラフィンワックスからなる絶縁層を用いた厚さ150μmのボロシリケートガラス基板内に生成された穴のアレイを図示している。印加されたDC電圧は、9kVで、かつ300μAの電流が基板に流れると、スイッチがオフになる。放電プロセスは、直径100μmの焦点スポットを用いた、波長10.6μm(CO2レーザー)、かつ20ms間5Wの出力でのレーザー放射線によって開始された。他の絶縁層(前述した)もまた可能である(結果は示していない)。
【0088】
図6は、既に概略したように、貫通孔を生成することなく構造変化を導入した後に最終エッチング工程を利用する方法を用いてシリコン基板内に生成された貫通孔を図示している。シリコンウエハは、100Ω・cmよりも大きな抵抗を有して厚さ254μmである(Bがドーピングされたp型である)。2kVのDC電圧が、絶縁層も追加の熱も用いることなく、20ms間印加された。電極と基板との間の間隔は各面上で約0.4mmである。KOH(50%、80℃)がエッチング剤として用いられた。穴が正方形状の外見となったのは、ウエハの<100>配向のためである。
【0089】
図7は、ホットメルト接合剤(パテックスPTK6)からなる厚さ1mm未満の絶縁層を用いたシリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。シリコンウエハは、275μmの厚さ、300Ω・cmよりも大きな抵抗(Bがドーピングされたp型)、及び<100>配向を有する。600ms間印加されたDC電圧は7kVだった。基板までの電極の距離は約0.4mmで、かつ絶縁層までの電極の距離は約1mmだった。放電プロセスは、直径100μmの焦点スポットを用いた、波長10.6μm(CO2レーザー)、かつ600ms間3.5Wの出力でのレーザー放射線によって開始された。他の絶縁層(前述した)もまた可能である(結果は示していない)。
【0090】
図8は、抵抗300Ω・cmよりも大きく(Bがドーピングされたp型)、及び配向が<100>である厚さ254μmのシリコンウエハ内に生成された穴の拡大図を示している。穴は、絶縁層と追加の熱を用いることなく、400ms間3kVのDC電圧を印加することによって生成された。電極と基板との間の距離は各面上で約0.5mmだった。基板は続いて研磨された。
【0091】
図9aは、開始用に、800ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、10Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmの単結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。
【0092】
図9bは、開始用に、500ms間8kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、8Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ300μmの多結晶ジルコニア(ZrO2)基板内に生成された穴を図示している。穴形成後、表面は機械的に研磨された。
【0093】
図9cは、開始用に、2000ms間10kVの電圧、及び、10.6μmの波長(CO2レーザー)、22Wの出力、100μmの焦点直径でのレーザー光の照射を利用して厚さ400μmのサファイア基板内に生成された穴を図示している。
【0094】
図9dは、パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.0016Ω・cmで配向が<100>である厚さ500μmのインジウム燐基板内に生成された穴を図示している。印加電圧は200ms間で11kVだった。プロセスは、波長1064nm(ファイバレーザー)、出力20W、約20μmの焦点距離でのレーザー光の照射によって開始された。
【0095】
図9eは、パラフィルムMの絶縁層を用いた、抵抗が0.158Ω・cmで配向が<111>である厚さ400μmのガリウム砒素基板内に生成された穴を図示している。印加電圧は200ms間で10kVだった。プロセスは、波長1064nm(ファイバレーザー)、出力20W、約20μmの焦点距離でのレーザー光の照射によって開始された。
【0096】
図10は、厚さ200μmの固体パラフィン層を、基板上へ取り出された材料が堆積されるのを回避する絶縁/保護層として用いて、200ms間3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン内に生成された穴を図示している。
【0097】
図11aは、絶縁/保護層としてパラフィンを用いて、各穴について200ms間に3kVの電圧を用いることによって厚さ250μmの単結晶シリコン基板内に生成された穴のアレイを図示している。
【0098】
図11bは、絶縁/保護層を用いることなく、図11aのアレイと同一のパラメータを用いて生成された穴のアレイを図示している。ただし絶縁/保護層は用いられていない。それにより、各穴を取り囲む領域内に取り出された材料が残りうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造−たとえば穴、空孔、チャネル、ウエル、若しくは凹部−又は構造変化−たとえば結晶構造からアモルファス構造への遷移−を、基板又は該基板の領域に導入する方法であって、
当該方法は:
a) 室温にて絶縁性又は半導体性である基板を供する工程、及び、前記基板を、ユーザー制御される電源と接続する少なくとも2つの電極間に設ける工程;
b) 前記ユーザー制御される電源によって、前記基板の領域にわたってユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記電圧は、前記基板又は前記領域を流れる電流の増大を引き起こすのに十分であることで、前記基板に所定量の電気エネルギーを付与する工程;
c)任意で、前記基板又は前記領域へ、好適には熱である追加エネルギーを付与することで、前記工程b)において電流を流し始めるように、前記基板又は前記領域の温度及び伝導率を増大させる工程であって、前記好適には熱である追加エネルギーは、追加エネルギー源若しくは熱源、又は前記工程b)において印加された電圧の成分を起源とする、工程;
d) 前記基板内において前記工程b)で付与された電気エネルギーを消失させる工程;
を有し、
前記工程d)は、(i)前記工程b)のユーザーが定めた印加電圧、(ii)前記工程b)のユーザーが定めた期間、(iii)前記電源のインピーダンス、又は、(i)-(iii)の任意の組み合わせによって専ら制御される、方法。
【請求項2】
前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることによって実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることなく、専らユーザーが定めた(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)によって実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザーが定めた電圧の大きさは、10[V]〜106[V]の範囲で、好適には102[V]〜3×105[V]の範囲で、より好適には103[V]〜30×103[V]の範囲で、最も好適には2×103[V]〜15×103[V]の範囲である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザーが定めた期間は、1[ms]〜5000[ms]で、好適には10[ms]〜2000[ms]で、より好適には10[ms]〜1000[ms]で、かつさらにより好適には10[ms]〜500[ms]である、請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記電源のインピーダンスは、1Ωより大きく、好適には10kΩより大きく、より好適には100kΩより大きく、かつさらにより好適には1MΩより大きい、請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記インピーダンスは1Ω〜1GΩの範囲である。好適には、前記インピーダンスは、当該方法の実行中、前記範囲内で可変である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記絶縁性又は半導体性基板は、たとえばポリプロピレンのような炭素ベースのポリマー、たとえばテフロン(登録商標)のようなフルオロポリマー、シリコンベースの基板−たとえばガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物−、シルガードのようなシリコンベースのポリマー、半導体材料−たとえばドーピングされたものを含む元素シリコン、ゲルマニウム−、化合物半導体−たとえばガリウム砒素、インジウム燐−、アルミニウムベースの結晶性材料−たとえばアルミナ、スピネル、サファイア−、及び、たとえばジルコニアのようなセラミックスを有する群から選ばれる材料で作られる、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記工程d)は、(i)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分である工程、(ii)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分ではなく、前記電極の各々と前記基板との間の距離を減少させ、かつ任意で前記基板と前記電極とを接触させる工程、(iii)前記工程c)を実行する工程、又は、(i)-(iii)を組み合わせた工程のいずれかによって開始される、請求項1乃至8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)は省略される、請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記基板は、室温で109[Ω・cm]以下の抵抗率を有する基板である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板は、室温では半導体で、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体−たとえばガリウム砒素やインジウム燐−から選ばれた半導体材料で作られる、
請求項10又は11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程c)が実行される、請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記工程c)は、加熱電極、加熱素子、レーザー、集束光源、UV光源、ガスフレーム、及び高周波電磁場デバイスから選ばれる追加エネルギー源を用いて実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記追加エネルギー源は、好適には前記基板によって少なくとも部分的に吸収される波長範囲内の波長を有するレーザーである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程c)における追加エネルギーの付与位置は、前記構造又は前記構造変化が導入される前記基板の領域を決定する、請求項13乃至15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
結合した状態の少なくとも1層の絶縁層を有する室温で絶縁性又は半導体性である前記基板が、前記工程a)において供される、請求項1乃至16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記絶縁層は、室温で、固体、液体、又は気体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁層は、室温で気体であるが、空気ではない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有し、
前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入され、
前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させ(遮蔽効果)、
前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内では、該絶縁層の遮蔽効果を減少させるように前記絶縁領域内において電気伝導性が上昇して、前記基板領域内の基板にかかる電圧が最適化される、
請求項17乃至19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有し、
前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入され、
前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させ(遮蔽効果)、
前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内は、前記工程a)において固体として供される場合には、前記絶縁領域において液化され、又は、前記工程a)において液体として供される場合には、前記絶縁領域において部分的に揮発し、
前記工程d)の間、前記絶縁層は、前記電気エネルギーの消失によって前記絶縁領域内で部分的に変位し、
前記工程d)の後、前記の気体、液体、又は部分的に揮発した絶縁層は、前記の生成された構造へ流れ込み、前記構造を閉じて、該構造を少なくとも部分的に充填する、
請求項17乃至20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記絶縁層が前記基板と結合することで、前記絶縁層は、前記工程a)において前記基板を覆うか、又は、前記工程a)において前記基板によって覆われ、かつ、前記基板領域は前記絶縁領域に対向するように位置する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記絶縁層は、該絶縁層材料の電気的分極に起因する内部の対抗電場の形成によって、前記基板にかかる電圧を減少させる、請求項17乃至22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記絶縁層は、前記(複数の)構造又は構造変化が導入される(複数の)領域のみを曝露するマスクを前記基板上に形成するのに用いられる、請求項17乃至23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記絶縁層はまた、前記処理中に放出した材料を前記絶縁層に吸収させて、前記基板表面上での直接的な再堆積を回避することによって、導入された前記構造を取り囲む領域の平坦さ/表面の品質を改善するのにも用いられ、
前記の吸収された材料は、前記(複数の)構造/構造変化の導入後、前記絶縁層と共に除去される、
請求項17乃至24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記工程c)は、たとえば前記絶縁層によって吸収される波長のレーザー放射線の吸収によって、前記絶縁層を直接的に加熱することによって実行される、請求項17乃至25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記工程c)は、前記の結合した基板を加熱して、前記の加熱された基板から前記の結合した絶縁層への熱輸送を利用することによって、前記絶縁層を間接的に加熱することによって実行される、請求項17乃至25のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁層は、室温にて固体かつ絶縁性である材料で作られ、
好適には前記材料は、ワックス−具体的にはパラフィンワックス−、ゴム、ホットメルト接着剤、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、及びポリウレタンから選ばれる、
請求項17乃至27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記絶縁層は、室温にて液体であって、室温にて絶縁性及び/又は極性を有する材料で作られ、
好適には前記材料は、ドデカン、パラフィン、水、又は高粘性水に基づく液体−たとえばフィスコール(Fiscoll)(商標)又は蜂蜜のような液体−から選ばれる、
請求項17乃至28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記絶縁材料は、室温にて気体の材料で作られ、
好適には前記材料は、SF6、Ar、N2、CO2から選ばれる、
請求項17乃至28のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記基板は、室温にて絶縁性で、かつ好適には、ガラス、石英、ダイアモンド、アルミナ、サファイア、アルミニウム窒化物、ジルコニア、スピネルから選ばれ、より好適には、石英及びガラスから選ばれる、請求項1乃至30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記基板は、室温にて109Ωよりも大きな抵抗を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の固体であって、好適には、パラフィンワックス、ゴム、及びホットメルト接着剤から選ばれる、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記工程c)はレーザーを用いて実行され、
前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい、
請求項31乃至33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記基板は、室温にて半導体性であり、好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、たとえばガリウム砒素やインジウム燐のような化合物半導体から選ばれる、請求項1乃至30のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記基板は、室温にて109Ω以下の抵抗を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の液体で、及び/若しくは極性を有する材料であって、好適には、ドデカン、パラフィン、水、蜂蜜から選ばれるもので作られ、又は、室温にて絶縁性の固体で、好適には、パラフィンワックスとホットメルト接着剤から選ばれる材料で作られる、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記工程c)はレーザーを用いて実行され、
前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい、
請求項35乃至37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記工程c)が実行されることで、前記工程b)及びd)を開始するのに必要とされる、前記絶縁層にわたる電場の減少に必要な前記絶縁層の加熱を行うことで、前記基板の温度が顕著に増大し、硬度や脆性といった前記絶縁層の温度に依存する機械的パラメータが顕著に変化する、請求項17乃至38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記工程a)-d)が1番目に実行されることにより、前記第1基板領域内に第1構造が生成され、その後前記基板は所定距離を移動し、かつ、
前記工程b)-d)が2番目に実行されることにより、第2基板領域内に第2構造が生成される、
請求項1乃至39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記工程b)-d)がn回(n>1)実行されることにより、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分なものである、請求項1乃至41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分ではないが、前記基板領域内の構造を変化させるには十分である、請求項1乃至41のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記工程d)は、前記基板領域内に存在する材料を加熱及び/又は融解することによって前記基板領域内の構造を変化させ、
前記の構造の変化により、前記基板は、前記基板領域を含む基板がアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露されるアブレーション工程e)による処理を行いやすくなる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記電気エネルギーは、前記基板領域からの材料の放出を引き起こすのに十分ではない、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
e) 前記基板領域を含む基板をアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露する工程、をさらに有する、請求項43乃至45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記基板は、室温にて半導体性であって、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素やインジウム燐などの化合物半導体から選ばれた半導体材料から作られる、請求項43乃至46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記アブレーション環境は、エッチング剤で、好適には、半導体材料に対して選択的なエッチング剤で、より好適には、KOH、SF6、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール(EDP)、ヒドラジン、及びHFから選ばれる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アブレーション環境は反応性イオンエッチング処理によって生成される、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記アブレーション環境は、エッチングに用いられるSF6である、請求項47乃至49のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
前記工程b)及びd)はn回(nは2以上の整数)実行されることで、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域に電気エネルギーが付与され、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域内の構造が変化する、請求項43乃至50のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
前記工程e)をさらに有する方法であって、前記工程b)及びd)はn回実行された後に前記工程e)が1回実行されることで、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される、請求項46乃至50のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記基板は元素シリコンで、かつ前記エッチング剤は、KOH、TMAH、SF6から選ばれる、請求項44乃至52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に平行なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板が選ばれる、請求項46乃至53のいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に垂直なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板−たとえばKOHにおける<111>シリコンウエハ−が選ばれる、請求項46乃至53のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
前記基板は保護層によってコーティングされ、
前記保護層は、該基板自体よりもエッチング剤によってエッチングされず、かつ、前記工程a)-d)の実行中、前記工程d)が実行された(複数の)場所でのみエッチングを可能にするように、完全若しくは部分的に除去され、又は構造的に変化する、
請求項46乃至55のいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
前記絶縁層を保護層として用いる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項1乃至57のいずれか1項記載の方法によって作製される、基板内の構造(のアレイ)であって、好適には穴、空孔、チャネル、ウエル、又は凹部。
【請求項1】
構造−たとえば穴、空孔、チャネル、ウエル、若しくは凹部−又は構造変化−たとえば結晶構造からアモルファス構造への遷移−を、基板又は該基板の領域に導入する方法であって、
当該方法は:
a) 室温にて絶縁性又は半導体性である基板を供する工程、及び、前記基板を、ユーザー制御される電源と接続する少なくとも2つの電極間に設ける工程;
b) 前記ユーザー制御される電源によって、前記基板の領域にわたってユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記電圧は、前記基板又は前記領域を流れる電流の増大を引き起こすのに十分であることで、前記基板に所定量の電気エネルギーを付与する工程;
c)任意で、前記基板又は前記領域へ、好適には熱である追加エネルギーを付与することで、前記工程b)において電流を流し始めるように、前記基板又は前記領域の温度及び伝導率を増大させる工程であって、前記好適には熱である追加エネルギーは、追加エネルギー源若しくは熱源、又は前記工程b)において印加された電圧の成分を起源とする、工程;
d) 前記基板内において前記工程b)で付与された電気エネルギーを消失させる工程;
を有し、
前記工程d)は、(i)前記工程b)のユーザーが定めた印加電圧、(ii)前記工程b)のユーザーが定めた期間、(iii)前記電源のインピーダンス、又は、(i)-(iii)の任意の組み合わせによって専ら制御される、方法。
【請求項2】
前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることによって実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程d)の(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)を制御することによる制御は、長時間にわたって基板を流れる電流若しくは該基板に印加される電圧を解析するプログラム回路又はフィードバック回路を用いることなく、専らユーザーが定めた(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)によって実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザーが定めた電圧の大きさは、10[V]〜106[V]の範囲で、好適には102[V]〜3×105[V]の範囲で、より好適には103[V]〜30×103[V]の範囲で、最も好適には2×103[V]〜15×103[V]の範囲である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザーが定めた期間は、1[ms]〜5000[ms]で、好適には10[ms]〜2000[ms]で、より好適には10[ms]〜1000[ms]で、かつさらにより好適には10[ms]〜500[ms]である、請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記電源のインピーダンスは、1Ωより大きく、好適には10kΩより大きく、より好適には100kΩより大きく、かつさらにより好適には1MΩより大きい、請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記インピーダンスは1Ω〜1GΩの範囲である。好適には、前記インピーダンスは、当該方法の実行中、前記範囲内で可変である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記絶縁性又は半導体性基板は、たとえばポリプロピレンのような炭素ベースのポリマー、たとえばテフロン(登録商標)のようなフルオロポリマー、シリコンベースの基板−たとえばガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物−、シルガードのようなシリコンベースのポリマー、半導体材料−たとえばドーピングされたものを含む元素シリコン、ゲルマニウム−、化合物半導体−たとえばガリウム砒素、インジウム燐−、アルミニウムベースの結晶性材料−たとえばアルミナ、スピネル、サファイア−、及び、たとえばジルコニアのようなセラミックスを有する群から選ばれる材料で作られる、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記工程d)は、(i)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分である工程、(ii)前記工程b)における前記基板領域にわたるユーザーが定めた大きさの電圧を印加する工程であって、前記ユーザーが定めた大きさの電圧は、前記基板若しくは前記領域を流れる電流の増大、及び、続く前記基板における電気エネルギーの消失を引き起こすのに十分ではなく、前記電極の各々と前記基板との間の距離を減少させ、かつ任意で前記基板と前記電極とを接触させる工程、(iii)前記工程c)を実行する工程、又は、(i)-(iii)を組み合わせた工程のいずれかによって開始される、請求項1乃至8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)は省略される、請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記基板は、室温で109[Ω・cm]以下の抵抗率を有する基板である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板は、室温では半導体で、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体−たとえばガリウム砒素やインジウム燐−から選ばれた半導体材料で作られる、
請求項10又は11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程c)が実行される、請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記工程c)は、加熱電極、加熱素子、レーザー、集束光源、UV光源、ガスフレーム、及び高周波電磁場デバイスから選ばれる追加エネルギー源を用いて実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記追加エネルギー源は、好適には前記基板によって少なくとも部分的に吸収される波長範囲内の波長を有するレーザーである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程c)における追加エネルギーの付与位置は、前記構造又は前記構造変化が導入される前記基板の領域を決定する、請求項13乃至15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
結合した状態の少なくとも1層の絶縁層を有する室温で絶縁性又は半導体性である前記基板が、前記工程a)において供される、請求項1乃至16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記絶縁層は、室温で、固体、液体、又は気体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁層は、室温で気体であるが、空気ではない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有し、
前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入され、
前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させ(遮蔽効果)、
前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内では、該絶縁層の遮蔽効果を減少させるように前記絶縁領域内において電気伝導性が上昇して、前記基板領域内の基板にかかる電圧が最適化される、
請求項17乃至19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記絶縁層は、前記基板領域に隣接してかつ接している絶縁領域を有し、
前記基板領域内では、構造又は構造変化が導入され、
前記絶縁層は、前記電極間の電圧を下げることなく前記基板にわたって印加された電圧を実効的に減少させ(遮蔽効果)、
前記工程c)が実行されることで、前記絶縁層内は、前記工程a)において固体として供される場合には、前記絶縁領域において液化され、又は、前記工程a)において液体として供される場合には、前記絶縁領域において部分的に揮発し、
前記工程d)の間、前記絶縁層は、前記電気エネルギーの消失によって前記絶縁領域内で部分的に変位し、
前記工程d)の後、前記の気体、液体、又は部分的に揮発した絶縁層は、前記の生成された構造へ流れ込み、前記構造を閉じて、該構造を少なくとも部分的に充填する、
請求項17乃至20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記絶縁層が前記基板と結合することで、前記絶縁層は、前記工程a)において前記基板を覆うか、又は、前記工程a)において前記基板によって覆われ、かつ、前記基板領域は前記絶縁領域に対向するように位置する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記絶縁層は、該絶縁層材料の電気的分極に起因する内部の対抗電場の形成によって、前記基板にかかる電圧を減少させる、請求項17乃至22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記絶縁層は、前記(複数の)構造又は構造変化が導入される(複数の)領域のみを曝露するマスクを前記基板上に形成するのに用いられる、請求項17乃至23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記絶縁層はまた、前記処理中に放出した材料を前記絶縁層に吸収させて、前記基板表面上での直接的な再堆積を回避することによって、導入された前記構造を取り囲む領域の平坦さ/表面の品質を改善するのにも用いられ、
前記の吸収された材料は、前記(複数の)構造/構造変化の導入後、前記絶縁層と共に除去される、
請求項17乃至24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記工程c)は、たとえば前記絶縁層によって吸収される波長のレーザー放射線の吸収によって、前記絶縁層を直接的に加熱することによって実行される、請求項17乃至25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記工程c)は、前記の結合した基板を加熱して、前記の加熱された基板から前記の結合した絶縁層への熱輸送を利用することによって、前記絶縁層を間接的に加熱することによって実行される、請求項17乃至25のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁層は、室温にて固体かつ絶縁性である材料で作られ、
好適には前記材料は、ワックス−具体的にはパラフィンワックス−、ゴム、ホットメルト接着剤、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、及びポリウレタンから選ばれる、
請求項17乃至27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記絶縁層は、室温にて液体であって、室温にて絶縁性及び/又は極性を有する材料で作られ、
好適には前記材料は、ドデカン、パラフィン、水、又は高粘性水に基づく液体−たとえばフィスコール(Fiscoll)(商標)又は蜂蜜のような液体−から選ばれる、
請求項17乃至28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記絶縁材料は、室温にて気体の材料で作られ、
好適には前記材料は、SF6、Ar、N2、CO2から選ばれる、
請求項17乃至28のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記基板は、室温にて絶縁性で、かつ好適には、ガラス、石英、ダイアモンド、アルミナ、サファイア、アルミニウム窒化物、ジルコニア、スピネルから選ばれ、より好適には、石英及びガラスから選ばれる、請求項1乃至30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記基板は、室温にて109Ωよりも大きな抵抗を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の固体であって、好適には、パラフィンワックス、ゴム、及びホットメルト接着剤から選ばれる、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記工程c)はレーザーを用いて実行され、
前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい、
請求項31乃至33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記基板は、室温にて半導体性であり、好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、たとえばガリウム砒素やインジウム燐のような化合物半導体から選ばれる、請求項1乃至30のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記基板は、室温にて109Ω以下の抵抗を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記絶縁層は、存在する場合には、室温にて絶縁性の液体で、及び/若しくは極性を有する材料であって、好適には、ドデカン、パラフィン、水、蜂蜜から選ばれるもので作られ、又は、室温にて絶縁性の固体で、好適には、パラフィンワックスとホットメルト接着剤から選ばれる材料で作られる、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記工程c)はレーザーを用いて実行され、
前記レーザーは、少なくとも部分的には前記基板材料及び/又は(存在する場合には)前記絶縁材料によって吸収される波長範囲の波長を有することが好ましい、
請求項35乃至37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記工程c)が実行されることで、前記工程b)及びd)を開始するのに必要とされる、前記絶縁層にわたる電場の減少に必要な前記絶縁層の加熱を行うことで、前記基板の温度が顕著に増大し、硬度や脆性といった前記絶縁層の温度に依存する機械的パラメータが顕著に変化する、請求項17乃至38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記工程a)-d)が1番目に実行されることにより、前記第1基板領域内に第1構造が生成され、その後前記基板は所定距離を移動し、かつ、
前記工程b)-d)が2番目に実行されることにより、第2基板領域内に第2構造が生成される、
請求項1乃至39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記工程b)-d)がn回(n>1)実行されることにより、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分なものである、請求項1乃至41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記工程b)において付与される前記電気エネルギーは、前記工程d)を実行する際に、前記基板内に貫通孔又はチャネルを生成するのに十分ではないが、前記基板領域内の構造を変化させるには十分である、請求項1乃至41のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記工程d)は、前記基板領域内に存在する材料を加熱及び/又は融解することによって前記基板領域内の構造を変化させ、
前記の構造の変化により、前記基板は、前記基板領域を含む基板がアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露されるアブレーション工程e)による処理を行いやすくなる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記電気エネルギーは、前記基板領域からの材料の放出を引き起こすのに十分ではない、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
e) 前記基板領域を含む基板をアブレーション環境−たとえばエッチング剤−に曝露する工程、をさらに有する、請求項43乃至45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記基板は、室温にて半導体性であって、かつ好適には、ドーピングされたシリコンと結晶シリコンを含む元素シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素やインジウム燐などの化合物半導体から選ばれた半導体材料から作られる、請求項43乃至46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記アブレーション環境は、エッチング剤で、好適には、半導体材料に対して選択的なエッチング剤で、より好適には、KOH、SF6、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール(EDP)、ヒドラジン、及びHFから選ばれる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アブレーション環境は反応性イオンエッチング処理によって生成される、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記アブレーション環境は、エッチングに用いられるSF6である、請求項47乃至49のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
前記工程b)及びd)はn回(nは2以上の整数)実行されることで、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域に電気エネルギーが付与され、前記基板の第1、第2、第3、…第n領域内の構造が変化する、請求項43乃至50のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
前記工程e)をさらに有する方法であって、前記工程b)及びd)はn回実行された後に前記工程e)が1回実行されることで、前記基板内にn個の構造からなるアレイが生成される、請求項46乃至50のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記基板は元素シリコンで、かつ前記エッチング剤は、KOH、TMAH、SF6から選ばれる、請求項44乃至52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に平行なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板が選ばれる、請求項46乃至53のいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
他の異なる配向の基板と比較して、前記基板表面に垂直なエッチング速度を減少させる結晶配向を有する結晶基板−たとえばKOHにおける<111>シリコンウエハ−が選ばれる、請求項46乃至53のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
前記基板は保護層によってコーティングされ、
前記保護層は、該基板自体よりもエッチング剤によってエッチングされず、かつ、前記工程a)-d)の実行中、前記工程d)が実行された(複数の)場所でのみエッチングを可能にするように、完全若しくは部分的に除去され、又は構造的に変化する、
請求項46乃至55のいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
前記絶縁層を保護層として用いる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項1乃至57のいずれか1項記載の方法によって作製される、基板内の構造(のアレイ)であって、好適には穴、空孔、チャネル、ウエル、又は凹部。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図9e)】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図9e)】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【公表番号】特表2012−510721(P2012−510721A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538893(P2011−538893)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008598
【国際公開番号】WO2010/063462
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510033723)
【氏名又は名称原語表記】picoDrill SA
【住所又は居所原語表記】Avenue des Boveresses 46B 1010 Lausanne SWITZERLAND
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008598
【国際公開番号】WO2010/063462
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510033723)
【氏名又は名称原語表記】picoDrill SA
【住所又は居所原語表記】Avenue des Boveresses 46B 1010 Lausanne SWITZERLAND
【Fターム(参考)】
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