説明

基板冷却システム、GPS受信機、およびナビゲーション装置

【課題】素子が配置された基板を冷却する基板冷却システムにおいて、素子全体の温度がなるべく一定になるようにすることにより、素子が安定して作動できるようにする。
【解決手段】ナビゲーション装置を構成するGPS受信機は、基準周波信号を生成する基準周波発振器30と、基準周波発振器30により生成された基準周波信号に基づいて、複数のGPS衛星から発信される電波の周波数をサーチしながら受信する信号処理部と、少なくとも基準周波発振器30が配置された基板41を冷却する冷却ファンと、冷却ファンによって発生する風が基準周波発振器30に直接当たらないようにするカバー部材50とを備えている。そして、カバー部材50は、基準周波発振器30における基板41とは反対側の面のみの全面を覆うように構成されている。従って、冷却ファンによって基準周波発振器30が局所的に放熱してしまうことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子が配置された基板を冷却する基板冷却システム、このシステムを有するGPS受信機、およびナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を冷却する放熱用ファン(冷却ファン)を有する基板冷却システムをGPS受信機に採用したものが知られている。この基板冷却システムにおいては、ヒータや冷却ファンを駆動制御することにより、温度によって特性が変化するTCXO素子の温度を一定になるよう制御することによって、TCXO素子の特性が変化しないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−214245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記基板冷却システムでは、ヒータや冷却ファンを駆動することによって、TCXO素子が局所的に熱せられたり冷却されたりするため、ヒータや冷却ファンを駆動すると、例えばTCXO素子のある部位と他の部位と(例えば素子の上部と下部と)で温度差が発生し、TCXO素子の特性が安定しなくなる虞があった。
【0004】
なお、このような問題点は、TCXO素子のみならず、ある部位の温度が他の部位の温度と異なる温度になると特性が変化する素子であれば同様に起こり得る問題である。
そこで、このような問題点を鑑み、素子が配置された基板を冷却する基板冷却システムにおいて、素子全体の温度がなるべく一定になるようにすることにより、素子が安定して作動できるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の基板冷却システムにおいては、局所的な温度差が発生すると機能に支障をきたす保護対象素子を有する基板を冷却する冷却ファンによって発生する風が保護対象素子に直接当たらないようにする阻害手段を備えている。
【0006】
このような基板冷却システムによれば、冷却ファンによる風によって保護対象素子が局所的に冷却されてしまうことを防止することができる。よって、保護対象素子を安定して作動させることができる。
【0007】
ところで、請求項1に記載の基板冷却システムにおいて、阻害手段は、請求項2に記載のように、保護対象素子の少なくとも一部を覆うカバー部材として構成されていてもよい。
【0008】
このような基板冷却システムによれば、カバー部材を設けることにより保護対象素子からの放熱を抑制することができるので、冷却ファンによる風によって保護対象素子が局所的に冷却されてしまうことを防止することができる。
【0009】
さらに、請求項2に記載の基板冷却システムにおいて、カバー部材は、請求項3に記載のように、保護対象素子における基板とは反対側の面の全面を覆うようにしてもよい。
このとき、カバー部材が基板とは反対側の面のみを覆うようにすれば、カバー部材を配置するための基板上のスペースを不要とすることができる。
【0010】
また、請求項2または請求項3に記載の基板冷却システムにおいて、カバー部材は、請求項4に記載のように、保護対象素子に接触することなく保護対象素子の全面を覆うようにしてもよい。
【0011】
このような基板冷却システムによれば、保護対象素子にカバー部材が接触することによる圧力を加えることなく保護対象素子に当たる風を遮断することができる。よって、保護対象素子に圧力が加えられることによって保護対象素子の特性が変化してしまうことを防止することができる。
【0012】
ここで、請求項2または請求項3に記載の基板冷却システムにおいて、カバー部材と保護対象素子とを接着剤等で接着する場合には、カバー部材と保護対象素子とが密着するように、保護対象素子にある程度の押圧力を加える必要がある。ところが、この際に押圧力を加えすぎると、保護対象素子が破損する虞がある。そこで、請求項5に記載のように、基板に対して固定される支持部材に取り付けられていてもよい。
【0013】
この基板冷却システムにおいては、支持部材を基板に対して固定すると、カバー部材が保護対象素子を覆うようになる。よって、このような基板冷却システムによれば、カバー部材と保護対象素子とを接着する必要がないので、保護対象素子に過度な押圧力が加えられることを防止することができる。
【0014】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の基板冷却システムにおいて、保護対象素子は、請求項6に記載のように、予め設定された周波数のクロック信号を出力するクロック回路素子として構成されていてもよい。
【0015】
クロック回路素子は、一般的に温度差の影響でクロック周波数が変化しやすいので、本発明の基板冷却システムのように、このような素子に対して請求項1〜請求項5の何れかに記載の構成を適用すれば、保護対象素子を安定して作動させるという効果を顕著に享受することができる。
【0016】
次に、請求項7に記載のGPS受信機においては、受信手段が基準周波発振手段により生成された基準周波信号に基づいて、複数のGPS衛星から発信される電波の周波数をサーチしながら受信し、冷却手段が少なくとも基準周波発振手段を配置した基板を冷却するよう設定され、冷却手段は、請求項1〜請求項6の何れかに記載の基板冷却システムとして構成されている。
【0017】
このようなGPS受信機によれば、冷却手段が請求項1〜請求項6の何れかに記載の基板冷却システムとして構成されているので、基準周波発振手段の作動を安定させることができる。よって、GPS受信機における位置検出精度を向上させることができる。
【0018】
さらに、請求項8に記載のナビゲーション装置においては、現在地検出手段として、請求項7に記載のGPS受信機を備えている。
従って、このようなナビゲーション装置によれば、請求項7に記載のGPS受信機を備えたことによって現在地検出精度が向上されているので、使用者を目的地に案内する際の精度も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明が適用されたナビゲーション装置1の概略構成を示す説明図である。
【0020】
ナビゲーション装置1は、例えば乗用車等の車両に搭載され、図1(a)に示すように、ナビECU(電子制御装置)10と、入力部11と、地図情報DB12(本発明でいう地図情報記憶手段)と、表示部13と、インタフェース(I/F)14と、冷却ファン15(本発明でいう冷却手段)と、GPS受信機20(本発明でいう現在地検出手段)とを備えている。
【0021】
入力部11は、ナビゲーション装置1の使用者が当該装置に対して指令を入力するためのインタフェースであって、例えば操作ボタンやタッチパネル、或いは音声分析装置等として構成されている。
【0022】
地図情報DB12には、予め緯度・経度の情報が対応付けられた地図情報が記録されている。地図情報としては、道路形状の情報や、施設の情報等が含まれる。
表示部13は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)として構成されており、ナビECU10からの表示指令に基づく画像を表示する。
【0023】
インタフェース14は、例えば、図示しない車内LAN等を介して他の装置とデータのやりとりを実施するために使用される。また、ナビECU10は、このインタフェース14を介して車速情報や角速度情報等を取得する。
【0024】
GPS受信機20は、ナビゲーション装置1の現在地を検出する。なお、GPS受信機20の詳細については後に詳述する。
ナビECU10は、GPS受信機20から受信した現在地の情報や入力部11を介して入力された指令に基づいて、現在地から目的地までの経路を地図情報に基づいて案内する処理(本発明でいう案内手段)や、施設情報を表示させる処理等を実施する。また、ナビECU10は、後述する基板41(図2参照)の温度を図示しない温度センサを用いて検出し、基板41の温度が予め設定された閾値以上の温度になったときに、冷却ファン15を駆動する制御を行う。
【0025】
次に、GPS受信機20についてより詳細に図1(b)を用いて説明する。図1(b)は、GPS受信機20の概略構成を示すブロック図である。
GPS受信機20は、アンテナ21と、増幅部22と、周波数逓倍回路24と、周波数変換部25と、信号処理部26(本発明でいう受信手段)と、基準周波発振器30(本発明でいう保護対象素子、および基準周波数発振手段)とを備えている。
【0026】
このGPS受信機20において、アンテナ21はGPS衛星からの衛星電波を捉え、電気信号に変換する。
増幅部22は、アンテナ21で捉えた電気信号を増幅する。周波数変換部25は、基準周波発振器30の出力を周波数逓倍回路24にて逓倍した局部発周波数と増幅部22で増幅された受信信号とを合成し、周波数変換を行う。
【0027】
信号処理部26では、周波数変換された受信信号に対して、基準周波発振器30の信号を用いてキャリア成分の復調、および疑似雑音符号の復調を行う(サーチ)。
なお、本実施形態におけるGPS受信機20における基本的な作動については、例えば、特開2006−234847号公報(段落[0002]〜[0025])等に開示されているように、周知のGPS受信機となんら変わらないので、詳細な説明については省略する。
【0028】
次に、基準周波発振器30について図2(a)を用いて説明する。図2(a)は基準周波発振器30を概念的に示す模式断面図である。
基準周波発振器30は、例えばTCXO(温度補償型水晶発振器)として構成されており、積層構造にされたパッケージ31によってその外形が形成されている。パッケージ31は、上下に積層された2つの空間を備えており、このパッケージ31の上側の空間に水晶振動子32が収納され、下側の空間に温度補償IC33が収納されている。
【0029】
なお、温度補償IC33には、温度センサが備えられており、温度補償IC33は、この温度センサによる検出結果に基づいて、水晶振動子32における振動周波数(クロック周波数)の温度補償を実施する。
【0030】
ここで、基準周波発振器30と冷却ファン15との位置関係について図2(b)を用いて説明する。基準周波発振器30は、図2(b)に示すように、基板41に取り付けられた状態で筐体40の内部に配置される。この際、基準周波発振器30は、図2(a)における下面を基板41に接触させるようにして取り付けられる。
【0031】
また、基板41には、基準周波発振器30の他に、例えば、ナビECU10やGPS受信機20を構成する各種素子が配置されている。また、筐体40には、冷却ファン15が取り付けられており、冷却ファン15が作動すると、基板41近傍に空気の流れが発生し、筐体40内の空気が外部に排出されるように設定されている。
【0032】
このため、例えばナビECU10を構成する素子(特に画像を生成するドライバ回路素子等)が発熱したとしても、この熱を筐体40の外部に排出できるようにしている。なお、冷却ファン15は、例えば、ナビゲーション装置1の電源が投入された際に駆動が開始される。
【0033】
ここで、本実施形態の基準周波発振器30においては、上述したように上下2層に分かれた構成を有しており、水晶振動子32(クロック発生部)と水晶振動子32による出力を補償するために温度を検出する温度センサとが別の空間に配置されている。
【0034】
このように、水晶振動子32と温度センサとが別の空間に配置されていると(水晶振動子32と温度センサとが同じ空間に配置されていたとしても、温度が異なる程度にこれらの距離が離れている場合も同様)、基準周波発振器30からの放熱によって、水晶振動子32の温度と温度センサが検出する温度とが一致しなくなるため、適切に温度補償が実施できなくなる虞がある。
【0035】
従って、基準周波発振器30からの出力特性(クロック周波数)が不安定になり、GPS受信機20による現在地検出精度が悪化してしまう。
そこで、このような問題点を解決するために、本実施形態においては、基準周波発振器30の上面(基準周波発振器30における基板41とは反対側の面)にカバー部材50(本発明でいう阻害手段)を接着することによって、基準周波発振器30からの放熱を抑制するようにしている。このカバー部材50の詳細について図3を用いて説明する。
【0036】
カバー部材50は、例えば、ウレタンフォームや不織布、セロハンテープ等の絶縁性材料によって構成されており、図3(a),図3(b)に示すように、基準周波発振器30の上面よりもやや大きく(基準周波発振器30の各辺の長さに対してカバー部材50の各辺の長さが10%程度はみ出す大きさに)カットされている。そして、カバー部材50は、基準周波発振器30の上面の全面を覆うように、基準周波発振器30の上面に接着されている。
【0037】
このカバー部材50が、冷却ファン15によって発生する風のうち、基準周波発振器30に当たる風の少なくとも一部分を阻害し、基準周波発振器30が局所的に冷却されることを防止している。
【0038】
[第1実施形態における効果]
以上のように詳述したナビゲーション装置1においては、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在地を検出するGPS受信機20と、予め緯度経度の情報が対応付けられた地図情報が記録された地図情報DB12と、を備えている。なお、ナビECU10は、GPS受信機20により検出された現在地から使用者により設定された目的地までの経路を地図情報DB12に記録された地図情報に基づいて案内する機能を備えている。
【0039】
GPS受信機20は、基準周波信号を生成する基準周波発振器30と、基準周波発振器30により生成された基準周波信号に基づいて、複数のGPS衛星から発信される電波の周波数をサーチしながら受信する信号処理部26と、少なくとも基準周波発振器30が配置された基板41を冷却する冷却ファン15を備えている。
【0040】
また、ナビゲーション装置1(GPS受信機20)は、冷却ファン15によって発生する風が基準周波発振器30に直接当たらないようにするカバー部材50を備えている。そして、カバー部材50は、基準周波発振器30における基板41とは反対側の面のみの全面を覆うように構成されている。
【0041】
従って、このようなナビゲーション装置1によれば、カバー部材50が備えられていることによって、冷却ファン15による風によって基準周波発振器30が局所的に放熱し、冷却されてしまうことを防止することができる。よって、基準周波発振器30のように温度差の影響でクロック周波数が変化しやすい素子を安定して作動させることができる。
【0042】
また、カバー部材50が基板41とは反対側の面のみを覆っているので、カバー部材50を配置するための基板41上のスペースを不要とすることができる。
さらに、上記構成により、GPS受信機20による現在地検出精度も向上させることができる。よって、ナビゲーション装置1が使用者を目的地に案内する際の精度も向上させることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、別形態のナビゲーション装置2について説明する。本実施形態(第2実施形態)では、第1実施形態のナビゲーション装置2と異なる箇所のみを詳述する。
【0044】
本実施形態のナビゲーション装置2においては、基準周波発振器30の周辺部分の構成のみが異なる。
この構成について図4(図4(a),図4(b))を用いて説明する。図4は第2実施形態におけるカバー部材52の構成を示す説明図であって、図4(a)は斜視図、図4(b)は基準周波発振器30が装着された部分における部分断面図である。
【0045】
図4に示すように、ナビゲーション装置2においては、基板41を覆う金属製の基板保護部材42(本発明でいう支持部材)を備えている。この基板保護部材42は、基板41に対して取付可能に構成されており、基板保護部材42が基板41に取り付けられると、この基板保護部材42が少なくとも基準周波発振器30の一部分を覆うようにその取付位置が設定されている。
【0046】
ここで、カバー部材52は、第1実施形態におけるカバー部材50と同様の素材で構成されている。ただし、このカバー部材52は、基準周波発振器30と直接接着されるわけではなく、基板保護部材42と接着されている。
【0047】
つまり、予め基板保護部材42における所定の位置にカバー部材52を取り付けておき(図4(b)に示す状態)、この状態で基板保護部材42を基板41に取り付けることにより、カバー部材52が基準周波発振器30の上面の全面を覆う状態になる。
【0048】
本実施形態において、このような構成にしたのは、基準周波発振器30に押圧力を加えすぎると、基準周波発振器30が破損する虞があるからである。即ち、カバー部材52と基準周波発振器30とを接着剤等で接着する場合には、カバー部材52と基準周波発振器30とが密着するように、基準周波発振器30にある程度の押圧力を加える必要があるため、本実施形態では、カバー部材52と基準周波発振器30とを接着剤等で接着しなくてもよいようにしている。
【0049】
[第2実施形態における効果]
上記のような第2実施形態のナビゲーション装置2によれば、カバー部材52が取り付けられた基板保護部材42を基板41に取り付けることにより、カバー部材52と基準周波発振器30とを密着するようにしているので、カバー部材52と基準周波発振器30とを接着剤等で接着するときに発生するような過度な押圧力が基準周波発振器30に加えられることを防止することができる。
【0050】
[実験例]
ここで、発明者らは、上記発明の効果を立証するために実験を実施した。この実験では、カバー部材やカバー部材の保持方法を順次変更し、基準周波発振器30からの出力を得ることにより、この出力のばらつき具合を検出した。
【0051】
具体的には、室温において冷却ファン15を駆動し、概ね30分間をめどとして1秒ごとに出力周波数のサンプリングを実施し、この周波数のばらつき具合を定量的にプロットすることとした。
【0052】
この実験結果を、図5および図6に示す。なお、図5(a)は、上記第1実施形態のようにカバー部材50を基準周波発振器30に接着したときにおける出力結果を示す。ただし、カバー部材50としては、絶縁性テープ(カプトンテープ(厚み0.12mm):住友3M製)を採用した。
【0053】
また、図5(b)および図6(a)は、上記第2実施形態のように基板保護部材42にカバー部材52を取り付けてからこの基板保護部材42を基板41に取り付けたときにおける出力結果を示す。ただし、図5(b)に示す実験結果においては、カバー部材52として、ウレタンフォーム(ポロン(厚み1.0mm):ロジャースイノアック製)を採用している。また、図6(a)に示す実験結果においては、カバー部材52として、不織布(一般的な不織布)を採用している。
【0054】
さらに、図6(b)は、カバー部材を備えていない従来構成における出力結果を示す。
なお、各実験結果においては、横軸に時間(s)、縦軸に出力周波数のばらつき具合を示している。ここで、これらの実験結果においては、プロットされている各要素が、「0」付近に集中しているほど基準周波発振器30からの出力が安定していることを示し、プロットされている各要素が「0」から離れているほど基準周波発振器30からの出力が不安定であることを示している。
【0055】
また、出力周波数のばらつき具合には、目標値を設定しており、少なくとも目標値±Bの範囲内に全ての実験結果のプロット(各要素)が収まるようにすることを最低限の目標とし、目標値±Bの半分の絶対値に設定された目標値±Aの範囲内に全ての要素が収まるようにすることを上位の目標とする。
【0056】
まず、図6(b)に示す従来構成の出力結果においては、各要素のばらつきが非常に大きく、目標値±Bの範囲外の要素が多く見られることが分かる。
次に、図5(a)に示す絶縁性テープを基準周波発振器30に接着した構成の出力結果においては、目標値±Bの範囲内に全ての要素が収まっているので、最低限の目標は達成している。また、目標値±Aの範囲外の要素においても数えるほどしか検出されていないので、従来構成の出力結果よりも大幅に出力特性が改善されていることが解る。
【0057】
また、図5(b)に示す基板保護部材42に取り付けたウレタンフォームを基準周波発振器30に当接させた構成の出力結果においては、絶対値が目標値±Aの範囲外の要素は皆無となり、全体的に各要素が「0」付近に集中していることが解る。つまり、図5(a)の実験結果よりもさらに出力特性が改善されており、上位の目標も達成できている。
【0058】
さらに、図6(a)に示す基板保護部材42に取り付けた不織布を基準周波発振器30に当接させた構成の出力結果においては、図5(b)に示す実験結果と同様に、絶対値が目標値±Aの範囲外の要素は皆無となり、全体的に各要素が「0」付近に集中している。
【0059】
以上のような実験結果から、上記実施形態のように基準周波発振器30を覆うカバー部材を設ければ、「第1実施形態における効果」および「第2実施形態における効果」にて述べたような効果が得られることを立証することができた。
【0060】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0061】
例えば、上記実施形態において、カバー部材50,52は、基準周波発振器30と直接接することによって基準周波発振器30の少なくとも一部分を(局所的に)覆うようにしたが、例えば、図7(a)に示すように、ウレタンフォーム62をロの字型に刳り抜き、帯電防止シート等のPET61で蓋をしたドーム形状のカバー部材54で、基準周波発振器30の全面を覆うようにしてもよい(図7(b))。
【0062】
ここで、ウレタンフォーム62の厚みは、基準周波発振器30の厚みよりも大きく設定されているとともに、ロの字型に刳り抜いたウレタンフォーム62における刳り抜き部分は基準周波発振器30が収まる程度の大きさに設定されている。そして、このウレタンフォーム61にPET62を接着することにより構成されたカバー部材54を基板41に装着すると、基準周波発振器30はカバー部材54とは非接触の状態でカバー部材54に覆われることになる。
【0063】
このようにすれば、基準周波発振器30にカバー部材54が接触することがないので、基準周波発振器30に圧力を加えることなく、基準周波発振器30に当たる風を遮断することができる。よって、圧力に対して特性が変化しやすい基準周波発振器30を使用する場合であっても、このような構成を採用すれば、基準周波発振器30の特性が変化してしまうことを防止することができる。なお、基準周波発振器30は、発熱量が僅かであるため、その全体をカバー部材54で覆ったとしても基準周波発振器30の作動特性に悪影響を与えることはない。
【0064】
また、図8(a)に示すように、板状の部材を基板41および風の流れ方向に対して垂直に配置した衝立部材56を設けるようにしてもよい。この衝立部材56を設けることにより、基準周波発振器30付近の風の流れを阻害することができる。
【0065】
さらに、図8(b)に示すように、金属製のカバー部材58によって、基準周波発振器30の全面を基準周波発振器30に接触しないように(非接触状態)で覆うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ナビゲーション装置の概略構成を示す説明図(a)、およびGPS受信機の概略構成を示すブロック図(b)である。
【図2】基準周波発振器を概念的に示す模式断面図(a)、および基準周波発振器と冷却ファンとの位置関係を示す説明図(b)である。
【図3】第1実施形態のカバー部材の構成を示す説明図である。
【図4】第2実施形態のカバー部材の構成を示す説明図である。
【図5】基準周波発振器における特性(第1実施形態および第2実施形態)を計測した実験結果である。
【図6】基準周波発振器における特性(第2実施形態および従来構成)を計測した実験結果である。
【図7】変形例のカバー部材(衝立部材)の構成を示す説明図である。
【図8】変形例のカバー部材の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1,2…ナビゲーション装置、10…ナビECU、11…入力部、12…地図情報DB、13…表示部、14…インタフェース、15…冷却ファン、20…GPS受信機、21…アンテナ、22…増幅部、24…周波数逓倍回路、25…周波数変換部、26…信号処理部、30…基準周波発振器、31…パッケージ、32…水晶振動子、33…温度補償IC、40…筐体、41…基板、42…基板保護部材、50,52,54,58…カバー部材、56…衝立部材、61…PET、62…ウレタンフォーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所的な温度差が発生すると機能に支障をきたす保護対象素子を含む複数の素子が表面に配置された基板上を通風させることにより前記基板を冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンによって発生する風が前記保護対象素子に直接当たらないようにする阻害手段と、
を備えたことを特徴とする基板冷却システム。
【請求項2】
前記阻害手段は、前記保護対象素子の少なくとも一部を覆うカバー部材として構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の基板冷却システム。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記保護対象素子における前記基板とは反対側の面の全面を覆うこと
を特徴とする請求項2に記載の基板冷却システム。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記保護対象素子に接触することなく前記保護対象素子の全面を覆うこと
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の基板冷却システム。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記基板に対して固定される支持部材に取り付けられていること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の基板冷却システム。
【請求項6】
前記保護対象素子は、予め設定された周波数のクロック信号を出力するクロック回路素子として構成されていること
を特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の基板冷却システム。
【請求項7】
基準周波信号を生成する基準周波数発振手段と、
前記基準周波発振手段により生成された基準周波信号に基づいて、複数のGPS衛星から発信される電波の周波数をサーチしながら受信する受信手段と、
少なくとも前記基準周波発振手段が配置された基板を冷却する冷却手段と、
を備え、
前記冷却手段は、請求項1〜請求項6の何れかに記載の基板冷却システムとして構成されたこと
を特徴とするGPS受信機。
【請求項8】
自己の現在地を検出する現在地検出手段と、
予め緯度経度の情報が対応付けられた地図情報が記録された地図情報記憶手段と、
前記現在地検出手段により検出された現在地から使用者により設定された目的地までの経路を前記地図情報記憶手段に記録された地図情報に基づいて案内する案内手段と、
を備え、
前記現在地検出手段として、請求項7に記載のGPS受信機を備えたこと
を特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−103616(P2008−103616A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286331(P2006−286331)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】