説明

基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体、および基板処理装置

【課題】基板の表面にパーティクルが発生することを抑制することができる基板処理方法を提供する。
【解決手段】本発明による基板処理方法においては、まず、基板Wが薬液処理される。次に、基板Wにリンス液が供給されてリンス処理工程が行われる。その後、基板Wを回転させながら、基板Wを乾燥する乾燥処理工程が行われる。乾燥処理工程は、基板Wを第1回転数で回転させながら基板Wへ乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数へ減速させる第2乾燥処理工程とを有する。第2乾燥処理工程において、基板W上のリンス液および乾燥液に対してブレーキをかけた状態とし、リンス液と乾燥液を撹拌して置換させる。第2乾燥処理工程の後、第3乾燥工程において基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げ、その後第4乾燥工程において基板を回転させて、基板上の乾燥液を振り切る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいては、ウエハ(基板)をスピンチャックによって保持し、ウエハを回転させながら、ウエハに薬液を供給してウエハを洗浄する基板処理装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような基板処理装置を用いてウエハを洗浄処理する場合、まず、スピンチャックに保持されたウエハを回転させながら、ウエハに、希フッ酸(DHF液)が吐出されてDHF液による薬液洗浄が行われ、このウエハに、純水(リンス液)が吐出されてリンス処理が行われる。その後、ウエハにイソプロピルアルコール(IPA)が供給されてウエハが乾燥処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−59895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウエハの乾燥処理時には、ウエハ表面上の純水がIPA液に置換された後ウエハが乾燥されるが、ウエハ表面上の純水をIPA液と十分に置換することができない場合、乾燥処理工程中に純水がウエハ表面上に残り、このウエハ表面上に残る純水によりパーティクルが形成される場合があった。また十分に純水とIPA液とを置換するためにはIPA液の消費量が多くなったり、あるいはIPA液による処理時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、基板の表面上のリンス液を乾燥液と十分に置換することを抑制することができる基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体、および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に、薬液を供給する薬液処理工程と、薬液処理工程の後、基板にリンス液を供給するリンス処理工程と、リンス処理工程の後、基板を乾燥させる乾燥処理工程とを備え、乾燥処理工程は、基板を第1回転数で回転させながら基板に乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数へ減速させる第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げていく第3乾燥処理工程と、を有することを特徴とする基板処理方法である。
【0008】
本発明は、基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、基板処理方法は、基板に、薬液を供給する薬液処理工程と、薬液処理工程の後、基板にリンス液を供給するリンス処理工程と、リンス処理工程の後、基板を乾燥させる乾燥処理工程とを備え、乾燥処理工程は、基板を第1回転数で回転させながら基板に乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数へ減速させる第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げていく第3乾燥処理工程と、を有することを特徴とする記録媒体である。
【0009】
本発明は、基板を保持する回転自在な基板保持部と、基板保持部を回転駆動する回転駆動部と、基板保持部に保持された基板に薬液を供給する薬液供給機構と、基板保持部に保持された基板にリンス液を供給するリンス液供給機構と、基板保持部に保持された基板に乾燥液を供給する乾燥液供給機構と、回転駆動部、薬液供給機構、リンス液供給機構および乾燥液供給機構を制御する制御部とを備え、制御部は回転駆動部、薬液供給機構、リンス液供給機構および乾燥液供給機構を制御して、基板に、薬液を供給する薬液処理工程と、薬液処理工程の後、基板にリンス液を供給するリンス処理工程と、リンス処理工程の後、基板を乾燥させる乾燥処理工程とを備え、乾燥処理工程は、基板を第1回転数で回転させながら基板に乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数へ減速させる第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げていく第3乾燥処理工程と、を有する基板処理方法を実行することを特徴とする基板処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の表面にパーティクルが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における基板処理装置の断面構成の一例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における基板処理装置の断面構成の一例を示す平面断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における基板処理方法のフローチャートを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態における基板処理方法において、乾燥処理工程中の基板の回転数とIPA液の供給量の推移を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における基板処理方法において、乾燥処理工程中の純水とIPA液の挙動を示す図である。
【図6】図6(a)(b)(c)(d)は、本発明の変形例による乾燥液ノズルとガスノズルの動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の実施の形態における基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体、および基板処理装置について説明する。
【0013】
まず、図1および図2により、基板処理装置1の全体構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、基板処理装置1は、処理容器10と、この処理容器10内に設けられ、洗浄処理を行う基板(例えば、半導体ウエハ、以下単にウエハWと記す)を保持する回転自在なスピンチャック(基板保持部)20と、このスピンチャック20を回転駆動する回転駆動部(モータ)25と備えている。
【0015】
このうち、処理容器10には、図2に示すように、ウエハWの搬入出口11が設けられている。この搬入出口11には、開閉自在なシャッタ12が設けられており、ウエハWの搬入出時に開くようになっている。なお、シャッタ12には、後述する制御部80が接続されており、シャッタ12は、制御部80からの制御信号に基づいて、開閉するようになっている。
【0016】
またスピンチャック20および回転駆動部25は、処理容器10内に設けられた液受けカップ10Aにより囲まれている。
【0017】
図1に示すように、スピンチャック20は、回転プレート21と、この回転プレート21の周縁部に設けられ、ウエハWを保持する保持部材22とを有している。このうち、保持部材22は、回転プレート21の周縁部において、略等問隔に配置され、ウエハWを略水平に保持するようになっている。
【0018】
回転駆動部25は、スピンチャック20の回転プレート21に、回転駆動軸26を介して連結されている。この回転駆動部25には、制御部80が接続されており、制御部80からの制御信号に基づいて回転駆動部25が駆動されることにより、回転プレート21を回転させ、保持部材22に保持されたウエハWが、その中心を回転中心として、略水平面内で回転するようになっている。
【0019】
スピンチャック20に保持されたウエハWの上方に、ウエハWに薬液または純水を供給する洗浄液ノズル30と、ウエハWに乾燥液を供給する乾燥液ノズル31と、ウエハWに不活性ガスを供給するガスノズル32とが設けられている。これら洗浄液ノズル30、乾燥液ノズル31、およびガスノズル32は、ノズルアーム33の先端部に後述する連結部材36を介して取付けられ、ノズルアーム33はノズル駆動部35によりガイドレール34に沿って移動する。すなわちガイドレール34は、処理容器10内に略水平に配置されており、ノズルアーム33の基端部は、このガイドレール34に沿って略水平に移動自在となるように、ガイドレール34に取り付けられている。このようにして、ノズル駆動部35を駆動することにより、各ノズル30、31、32は、ウエハWの上方において、ウエハWの中心部に対応する位置(ウエハWの中心部の上方位置)と、ウエハWの周縁部に対応する位置(ウエハWの周縁部の上方位置)との間で、略水平方向に、一体に移動するようになっている。さらには、各ノズル30、31、32は、ウエハWの周縁部に対応する位置から、ウエハWの周縁外方の上方位置(退避位置)との間においても、一体に移動するようになっている。なお、ノズル駆動部35には、制御部80が接続されており、制御部80からの制御信号に基づいてノズル駆動部35が駆動されるようになっている。
【0020】
洗浄液ノズル30、乾燥液ノズル31、およびガスノズル32は、連結部材36に、互いに近接して、整列して取り付けられている。この連結部材36とノズルアーム33の先端部との間に、各ノズル30、31、32を一体に昇降させる昇降駆動部37が介在されている。また、連結部材36と昇降駆動部37との間に、昇降軸38が連結されている。
【0021】
なお、昇降駆動部37には、制御部80が接続されており、制御部80からの制御信号に基づいて昇降駆動部37が駆動され、各ノズル30、31、32が昇降するようになっている。このようにして、ウエハWに対する各ノズル30、31、32の高さを調節可能に構成されている。
【0022】
また、洗浄液ノズル30、乾燥液ノズル31、およびガスノズル32は、スピンチャック20に保持されたウエハWの半径方向に直線状に配置されており、各ノズル30、31、32が、ウエハWの中心部の上方に移動可能となるように、ノズルアーム33に一体に取り付けられている。
【0023】
洗浄液ノズル30に、薬液供給機構40が連結されており、スピンチャック20に保持されたウエハWに、洗浄液ノズル30を介して薬液が吐出(供給)されるようになっている。本実施の形態における薬液供給機構40は、洗浄液ノズル30にDHF供給ライン43を介して連結され、ウエハWに希フッ酸(DHF液)を供給するDHF供給源44を有している。またDHF供給ライン43にDHF開閉弁46が設けられている。また、DHF開閉弁46には、制御部80が接続されており、DHF開閉弁46は、制御部80からの制御信号に基づいて、開閉するようになっている。
【0024】
また、洗浄液ノズル30に、リンス液供給機構50が連結されており、スピンチャック20に保持されたウエハWに、洗浄液ノズル30を介して純水(リンス液)が吐出(供給)されるようになっている。リンス液供給機構50は、洗浄液ノズル30に、リンス液供給ライン51を介して連結され、ウエハWに純水を供給するリンス液供給源52と、リンス液供給ライン51に設けられたリンス液開閉弁53とを有している。なお、リンス液開閉弁53には、制御部80が接続されており、リンス液開閉弁53は、制御部80からの制御信号に基づいて、開閉するようになっている。
【0025】
なお、DHF供給ライン43、リンス液供給ライン51は、各開閉弁46、53と洗浄液ノズル30との間で合流するようになっている。
【0026】
また乾燥液ノズル31に、乾燥液供給機構60が連結されており、スピンチャック20に保持されたウエハWに、乾燥液ノズル31を介して乾燥液が吐出(供給)されるようになっている。乾燥液供給機構60は、乾燥液ノズル31に乾燥液供給ライン61を介して連結され、ウエハWに、純水よりも揮発性の高いイソプロピルアルコール(IPA)からなる乾燥液を供給する乾燥液供給源62と、乾燥液供給ライン61に設けられた乾燥液開閉弁63とを有している。なお、乾燥液開閉弁63には、制御部80が接続されており、乾燥液開閉弁63は、制御部80からの制御信号に基づいて、開閉するようになっている。
【0027】
さらにガスノズル32に、不活性ガス供給機構70が連結されており、スピンチャック20に保持されたウエハWに、ガスノズル32を介して不活性ガスが吐出(供給)されるようになっている。不活性ガス供給機構70は、ガスノズル32にガス供給ライン71を介して連結され、ウエハWに、不活性ガスとして窒素ガス(N2ガス)を供給するガス供給源72と、ガス供給ライン71に設けられたガス開閉弁73とを有している。なお、ガス開閉弁73には、制御部80が接続されており、ガス開閉弁73は、制御部80からの制御信号に基づいて、開閉するようになっている。
【0028】
上述したように、回転駆動部25、ノズル駆動部35、薬液供給機構40のDHF開閉弁46、リンス液供給機構50のリンス液開閉弁53、乾燥液供給機構60の乾燥液開閉弁63、並びに不活性ガス供給機構70のガス開閉弁73に、これらを制御する制御部80が接続されている。
【0029】
ところで、図1に示すように、制御部80には、工程管理者等が基板処理装置1を管理するために、コマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置1の稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等からなる入出力装置81が接続されている。また、制御部80は、基板処理装置1で実行される処理を実現するためのプログラム等が記録された記録媒体82にアクセス可能となっている。記録媒体82は、ROMおよびRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、およびフレキシブルディスク等のディスク状記録媒体等、既知の記録媒体から構成され得る。このようにして、制御部80が、記録媒体82に予め記録されたプログラム等を実行することによって、基板処理装置1においてウエハWの処理が行われるようになっている。
【0030】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち、本実施の形態による基板処理方法について説明する。なお、以下に説明する基板処理方法を実行するための各構成要素の動作は、予め記録媒体82に記録されたプログラムに基づいた制御部80からの制御信号によって制御される。
【0031】
まず、図3に示すように、スピンチャック20に、パターンPが形成されたウエハWが保持される(ステップS1)。この場合、まず、シャッタ12が開けられて、図示しない搬送アームに保持されたウエハWが、搬入出口11を通って処理容器10内に搬入される。次に、ウエハWが、搬送アームから受け渡され、スピンチャック20の保持部材22に保持される。
【0032】
続いて、回転駆動部25により、ウエハWを保持したスピンチャック20が回転駆動される(ステップS2)。
【0033】
その後、ノズル駆動部35が駆動され、退避位置に位置していた洗浄液ノズル30がスピンチャック20に保持されたウエハWの中心部に対応する位置に移動する(ステップS3)。
【0034】
次に、ウエハWを回転させながら、ウエハWが薬液処理される。
【0035】
この場合、まず、ウエハWの表面にDHF液が供給されて、ウエハWの表面がDHF液により薬液処理され、洗浄される(ステップS4)。すなわち、DHF開閉弁46が開き、DHF供給源44から、DHF供給ライン43および洗浄液ノズル30を介して、DHF液がウエハWの表面の中心部に吐出される。このことにより、吐出されたDHF液は、遠心力によりウエハWの表面全体に拡散され、ウエハWの表面はDHF液により処理される。この際、ウエハWの回転数は、例えば、10〜500rpm程度とすることが好ましい。DHF液の液膜が形成された後、DHF開閉弁46を閉じてDHF液の供給を停止する。
【0036】
薬液処理が終了した後、図4に示すように、ウエハWを回転させながら、ウエハWがリンス処理される(リンス処理工程、ステップS5)。すなわち、リンス液開閉弁53が開き、リンス液供給源52から、リンス液供給ライン51および洗浄液ノズル30を介して、純水がウエハWの表面の中心部に吐出される。このことにより、吐出された純水は、遠心力によりウエハWの表面全体に拡散されて、ウエハWの表面に残存している薬液が押し流され、ウエハWの表面に純水の液膜が形成される。この際、ウエハWの回転数は、例えば、500〜1500rpm程度とすることが好ましい。このことにより、ウエハWの表面から薬液を迅速に押し流して純水の液膜を形成することができる。薬液を十分押し流した後、リンス液開閉弁53を閉じてリンス液の供給を停止する。
【0037】
リンス処理工程の後、図4に示すように、ウエハWを回転させながら、リンス液の供給を停止してウエハWが乾燥処理される(乾燥処理工程、ステップS6)。
【0038】
乾燥処理工程は以下のように行なわれる。まず純水の液膜がウエハWの表面上に形成された状態で、ウエハを回転させながら乾燥液開閉弁63が開き、乾燥液供給源62から乾燥液供給ライン61および乾燥液ノズル31を介してIPA液がウエハWの中心部に供給される(125ml/min)。この場合、乾燥液ノズル31はウエハWの中心部上方に止まっている。またウエハWは、リンス処理工程の回転数(例えば1000rpm)と同一の回転数(1000rpm)で回転するが、リンス処理工程の回転数より高い第1回転数(例えば1500rpm)で回転させてもよい(第1乾燥処理工程)(表面置換)。
【0039】
この第1乾燥処理工程において、IPA液はウエハWの中心部から周縁部へ遠心力により拡散される。この際ウエハWをリンス処理工程中の回転数より高い回転数で回転させることにより、ウエハW上に純水を残した状態でウエハW上にIPA液を中心部から周縁部まで迅速に行き渡らすことができる。
【0040】
第1乾燥処理工程中の純水およびIPA液の挙動を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、第1乾燥処理工程において、純水の表面にIPA液が行き渡り、ウエハWのパターンPを露出させることなく、純水の表面部分がIPA液と置換する。なお、純水の一部はウエハWのパターンP内に残る。
【0041】
次にウエハWの中心部へIPA液を供給しながら(125ml/min)、ウエハWの回転数を例えば1500rpm(第1回転数)から300rpm(第2回転数)まで急速に落とす(第2乾燥処理工程)(撹拌)。この第2乾燥処理工程中の純水およびIPA液の挙動を図5(b)に示す。図5(b)に示すように、第2乾燥処理工程において、純水およびIPA液に加わっていた遠心力を急速に低下させ、さらに、ウエハWの中心部から周縁部に拡散する純水およびIPA液に慣性力を働かせ、純水およびIPA液に対して一種の急ブレーキをかけた状態となるようにウエハWの回転数を落とす。
【0042】
このことによりウエハWのパターンP内に残存する純水も、パターンP内からパターンP外方へ撹拌された状態となり、その回転数で所定時間回転することで、純水がIPA液中に均一に分散して、純水がIPA液と十分かつ均一に置換される。
【0043】
その後ウエハWの中心部へIPA液を供給しながら(125ml/min)、ウエハWの回転数を徐々に上げて、回転数を例えば1000rpm(第3回転数)までもっていく(第3乾燥処理工程)(全置換)。
【0044】
この第3乾燥処理工程中の純水およびIPA液の挙動を図5(c)に示す。図5(c)に示すように、ウエハWの回転数を徐々に上げていくことにより、純水をIPA液で十分に置換した後、IPA液およびIPA液中に均一に分散した純水をウエハWの中心部から周縁部へ迅速に押し流し、IPA液中の純水の量を徐々に低下させることができる。
【0045】
その後、乾燥液開閉弁63が閉じられてウエハWに対するIPA液の供給が停止するが、ウエハWは第3回転数で回転し続ける(第4乾燥処理工程)(IPAの振り切り)。
【0046】
この第4乾燥処理工程により、IPA液を振り切り乾燥することができる。
【0047】
なおこの第4乾燥処理工程中にウエハWに対して窒素ガス(Nガス)を供給し、ウエハW上のIPA液の振り切り乾燥を促進することができる。
【0048】
ウエハWに対する窒素ガス(Nガス)の供給は以下のようにして行なわれる。
【0049】
まずガスノズル32から窒素ガスがウエハWの表面に吐出されると共に、ガスノズル32が、ウエハWの中心部に対応する位置から周縁部に対応する位置に向けて移動(スキャン)する。
【0050】
このようにしてウエハW表面上のIPA液を窒素ガスにより押し出すことができ、IPA液をウエハW表面上から迅速に除去し、ウエハWを乾燥させることができる。
【0051】
ガスノズル32がウエハWの周縁部に対応する位置に達した後、ガス開閉弁73が閉じられて、ウエハWに対する窒素ガスの供給を停止し、ウエハWの回転数を下げ、ウエハWの乾燥処理工程が終了する。
【0052】
その後、ウエハWの回転を停止させ、ウエハWを搬入する際の手順とは逆の手順で、図示しない搬送アームをウエハWの下方に挿入して、ウエハWを搬送アームに受け渡し、ウエハWが搬出される。
【0053】
このように本実施の形態によれば、第1乾燥処理工程において、ウエハWを第1回転数で回転させながらウエハWの中心部にIPA液を供給し、その後第2乾燥処理工程において、ウエハWにIPA液を供給し続けながらウエハWの回転数を第2回転数まで落とす。このことによりウエハW上の純水およびIPA液に加わっていた遠心力を低下させ、中心部から周縁部に拡散する純水およびIPA液がもつ貫性力を落とすことにより純水およびIPA液に対してブレーキをかけた状態とすることができる。このことによりウエハW上において純水およびIPA液を適度に撹拌してウエハW上において純水とIPA液とを十分かつ均一に置換することができる。その後第3乾燥処理工程において、ウエハWの回転数を第2回転数から第3回転数まで徐々に上げていくことにより、純水およびIPA液をウエハWの中心部から周縁部へ迅速に押し流しながらIPA液中の純水の量を低下させることができる。
【0054】
その後第4乾燥処理工程において、純水を含むIPA液を振り切り乾燥させる。このことによりウエハWの表面に、ウォーターマークなどのパーティクルが発生することを抑制することができる。
【0055】
以上、本発明による実施の形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形も可能である。以下、代表的な変形例について説明する。
【0056】
本実施の形態においては、DHF液により、ウエハWが薬液洗浄される例について説明したが、薬液洗浄に使用される薬液は、このことに限られることはなく、任意の薬液を使用することができる。
【0057】
また、本実施の形態においては、リンス液として純水を用いる例について説明したが、使用するリンス液としては、純水に限られることはない。
【0058】
また、本実施の形態においては、乾燥液としてIPA液を用いる例について説明したが、使用する乾燥液としては、IPAに限られることはない。乾燥液として、例えば揮発性の高い有機溶剤を用いてもよい。さらには、ウエハWに、加熱されたIPA液を供給するようにしても良い。この場合、IPA液の蒸発を促進させることができる。
【0059】
なお、以上の説明においては、本発明による基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体、および基板処理装置を、半導体ウエハWの洗浄処理に適用した例を示している。しかしながらこのことに限られることはなく、LCD基板またはCD基板等、種々の基板等の洗浄に本発明を適用することも可能である。
【0060】
また薬液処理工程およびリンス処理工程において、ウエハWを回転させて例を示したが、これに限らず薬液処理工程およびリンス処理工程において、ウエハW上が液で覆われていれば、必ずしもウエハWを回転させる必要はない。
【0061】
次に本発明の変形例について、図6(a)(b)(c)(d)により説明する。図6(a)(b)(c)(d)に示す変形例は乾燥処理工程のうち、第4乾燥処理工程の構成が異なるのみであり、他の構成は図1乃至図5に示す実施の形態と略同一である。
【0062】
図6(a)(b)(c)(d)に示す本発明の変形例において、図1乃至図5に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
上述した実施の形態において、第4乾燥処理工程の開始時にウエハWに対するIPA液の供給を停止した例を示したが、本変形例においては、乾燥液開閉弁63は開のままの状態となっており、第4乾燥処理工程中ウエハWに対してIPA液を供給し続ける(図6(a)−(b))。そして第4乾燥処理工程の途中からウエハWに対して不活性ガス、例えば窒素ガス(Nガス)を供給する。
【0064】
すなわち第3乾燥処理工程が終了しても、ウエハWは第4乾燥処理工程中第3回転数で回転を続ける。そして第4乾燥処理工程の開始時に乾燥液ノズル31およびガスノズル32はウエハWの中心部にあり、乾燥液ノズル31からウエハWの中心部にIPA液が供給される。この時ガスノズル32からの窒素ガスの供給は停止している(図6(a))。
【0065】
次にウエハを第3回転数で回転させながら、乾燥液ノズル31およびガスノズル32をウエハWの中心部から周縁部に向けて比較的遅い第1速度(1.2mm/s)で移動させる(図6(b))。
【0066】
この場合、乾燥液ノズル31からウエハWに対してIPA液を供給するが、ガスノズル32からの窒素ガスの供給は停止している。また乾燥液ノズル31はガスノズル32より移動方向前方に位置している。そして乾燥液ノズル31はウエハWの中心部から15mm離れた位置まで達する。ウエハWが回転してもウエハWの中心部近傍においては遠心力は小さいためIPA液を振り切る力はあまり大きくなく、ウエハW上にIPA液が残ることも考えられる。
【0067】
この段階で、乾燥液ノズル31およびガスノズル32を第1速度で移動させることにより、乾燥液ノズル31からの供給されるIPA液によってウエハW上のIPA液を徐々に周縁部に向って押し出すことができる。
【0068】
他方、この段階でガスノズル32から窒素ガスをウエハWに供給した場合、ウエハW上に残るIPA液上に窒素ガスが吹付けることになり、ウエハW上のIPA液は不均一な膜厚をもつことになり、適切な乾燥処理を行なうことができない。
【0069】
これに対して本発明によれば、この段階ではガスノズル32から窒素ガスが供給されていないので、IPA液が不均一な膜厚をもつことはない。
【0070】
この状態でガスノズル32がウエハWの中心部から15mm離れた位置まで遠くする(図6(c))。
【0071】
さらに乾燥液ノズル31およびガスノズル32がウエハWの周縁部側へ移動し、ガスノズル32がウエハWの中心部から15mmを越えた位置に達した時点で、すなわちガスノズル32がウエハWの中心部と周縁部との間に達した時点で、始めてガスノズル32から窒素ガスからウエハWに対して供給される(図6(d))。
【0072】
このとき、乾燥液ノズル31はウエハWの中心部から30mmを越えた位置にある。その後、乾燥液ノズル31とガスノズル32は、第1速度(1.2mm/s)より大きな第2速度(8mm/s)でウエハWの周縁部に向って移動する。
【0073】
ウエハWの中心部からある程度離れると、回転するウエハWに対してある大きさの遠心力が働くことになる。このためウエハW上に残るIPA液をウエハWの回転に伴う遠心力と、ガスノズル32から供給される窒素ガスによって周縁部に向ってより確実に押出すことができる。
【0074】
また図6(d)に示すように、ウエハWの中心部からある程度離れた位置では、上述のようにウエハWに対して回転に伴って大きな遠心力が働くので、ウエハW上に残るIPA液の残量を少なくすることができ、ウエハWに対してガスノズル32から窒素ガスを吹付けてもウエハW上のIPA液が不均一な膜厚をもつことはない。
【0075】
なお、上述のように第4乾燥処理工程中、乾燥液ノズル31およびガスノズル32をウエハWの中心部から周縁部に向って移動させながら、乾燥液ノズル31からIPA液をウエハW上に連続的に供給するとともに、乾燥液ノズル31およびガスノズル32の移動の途中でガスノズル32から窒素ガスをウエハW上に供給している。
【0076】
このためウエハW上にIPA液が残らないので、IPA液起因によるパーティクルの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 基板処理装置
10 処理容器
11 搬入出ロ
12 シャッタ
20 スピンチャック
21 回転プレート
22 保持部材
25 回転駆動部
26 回転駆動軸
30 洗浄液ノズル
31 乾燥液ノズル
32 ガスノズル
33 ノズルアーム
34 ガイドレール
35 ノズル駆動部
36 連結部材
37 昇降駆動部
38 昇降軸
40 薬液供給機構
43 DHF供給ライン
44 DHF供給源
46 DHF開閉弁
50 リンス液供給機構
51 リンス液供給ライン
52 リンス液供給源
53 リンス液開閉弁
60 乾燥液供給機構
61 乾燥液供給ライン
62 乾燥液供給源
63 乾燥液開閉弁
70 不活性ガス供給機構
71 ガス供給ライン
72 ガス供給源
73 ガス開閉弁
80 制御部
81 入出力装置
82 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に、薬液を供給する薬液処理工程と、
薬液処理工程の後、基板にリンス液を供給するリンス処理工程と、
リンス処理工程の後、基板を乾燥させる乾燥処理工程とを備え、
乾燥処理工程は、基板を第1回転数で回転させながら基板に乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数へ減速させる第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げていく第3乾燥処理工程と、を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
乾燥処理工程は、第3乾燥処理工程の後、基板を回転させて基板上の乾燥液を振り切る第4乾燥処理工程を更に有し、
第4乾燥工程の開始時に乾燥液の供給を停止することを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
乾燥処理工程は、第3乾燥処理工程の後、基板を回転させて基板上の乾燥液を振り切る第4乾燥処理工程を更に有し、
第4乾燥工程において、基板に対して乾燥液を供給し続けるとともに、基板に対して不活性ガスを供給し、
基板に対する乾燥液の供給位置を、基板の中心部から周縁部に向けて移動させ、不活性ガスの供給位置を基板の中心部と周縁部との間から周縁部に向けて移動させることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
乾燥液の供給位置は、不活性ガスの供給位置に対して移動方向前方に位置することを特徴とする請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
第4乾燥工程において、乾燥液のみを基板に供給する間、乾燥液の供給位置は第1速度で移動し、乾燥液と不活性ガスを基板に供給する間、乾燥液および不活性ガスの供給位置を第1速度より大きな第2速度で移動させることを特徴とする請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
リンス処理工程において、回転する基板に対してリンス液が供給され、
乾燥処理工程の第1乾燥処理工程における基板の第1回転数は、リンス処理工程中の基板の回転数より大きいことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項7】
基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、
基板処理方法は、
基板に、薬液を供給する薬液処理工程と、
薬液処理工程の後、基板にリンス液を供給するリンス処理工程と、
リンス処理工程の後、基板を乾燥させる乾燥処理工程とを備え、
乾燥処理工程は、基板を第1回転数で回転させながら基板に乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数へ減速させる第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げていく第3乾燥処理工程と、を有することを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
基板を保持する回転自在な基板保持部と、
基板保持部を回転駆動する回転駆動部と、
基板保持部に保持された基板に薬液を供給する薬液供給機構と、
基板保持部に保持された基板にリンス液を供給するリンス液供給機構と、
基板保持部に保持された基板に乾燥液を供給する乾燥液供給機構と、
回転駆動部、薬液供給機構、リンス液供給機構および乾燥液供給機構を制御する制御部とを備え、
制御部は回転駆動部、薬液供給機構、リンス液供給機構および乾燥液供給機構を制御して、
基板に、薬液を供給する薬液処理工程と、
薬液処理工程の後、基板にリンス液を供給するリンス処理工程と、
リンス処理工程の後、基板を乾燥させる乾燥処理工程とを備え、
乾燥処理工程は、基板を第1回転数で回転させながら基板に乾燥液を供給する第1乾燥処理工程と、第1乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板を第1回転数より低い第2回転数で回転させる第2乾燥処理工程と、第2乾燥処理工程の後、基板に乾燥液を供給しながら基板の回転数を第2回転数から第3回転数まで上げていく第3乾燥処理工程と、を有する基板処理方法を実行することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
乾燥処理工程は、第3乾燥処理工程の後、基板を回転させて基板上の乾燥液を振り切る第4乾燥処理工程を更に有し、
第4乾燥工程の開始時に乾燥液の供給を停止することを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
第4乾燥工程において、基板に対して乾燥液を供給し続けるとともに、不活性ガスを供給し、
基板に対する乾燥液の供給位置を、基板の中心部から周縁部に向けて移動させ、不活性ガスの供給位置を基板の中心部と周縁部との間から周縁部に向けて移動させることを特徴とする請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
乾燥液の供給位置は、不活性ガスの供給位置に対して移動方向前方に位置することを特徴とする請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
第4乾燥工程において、乾燥液のみを基板に供給する間、乾燥液の供給位置は第1速度で移動し、乾燥液と不活性ガスを基板に供給する間、乾燥液および不活性ガスの供給位置を第1速度より大きな第2速度で移動させることを特徴とする請求項11記載の基板処理装置。
【請求項13】
リンス処理工程において、回転する基板に対してリンス液が供給され、
乾燥処理工程の第1乾燥処理工程における基板の第1回転数は、リンス処理工程中の基板の回転数より大きいことを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115370(P2013−115370A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262678(P2011−262678)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】