説明

基板処理方法、基板処理装置およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】ArFレジスト膜等の難剥離性膜を容易に除去することができる基板処理方法を提供すること。
【解決手段】ArFレジスト膜を伴ったウエハからこのArFレジスト膜を除去する処理方法である。ArFレジスト膜に紫外線照射処理を施し、次にArFレジスト膜にオゾンガスと水蒸気を供給して処理することにより、このArFレジスト膜を水溶性に変性させる。その後、水溶性に変性したArFレジスト膜に純水を供給することにより、ArFレジスト膜を基板から剥離する。チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、チャンバ内に収容されたウエハに結露が生じないように、チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に設けられたArFレジストや反射防止膜、高ドーズイオン注入膜等の難剥離性膜を基板から剥離するための基板処理方法、その基板処理方法を実行するための基板処理装置およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、半導体装置の高集積化を目的として、フォトリソグラフィー工程で用いられる光の短波長化が進行しており、近時、ArFエキシマレーザを光源とする技術が実用化目前となっている。このArFエキシマレーザを用いたフォトリソグラフィー工程は、従来のg線やi線等を用いたフォトリソグラフィー工程と同様に、ArFエキシマレーザの光に選択的に感光するレジスト膜(以下「ArFレジスト膜」という)を形成し、このArFレジスト膜を所定の回路パターンが形成されたレチクルを用いて露光し、その後に現像することにより、行われる。
【0003】
このようにしてパターニングされたArFレジスト膜をマスクとして用いて、エッチング処理やCVD法による金属材料の埋込処理、イオン注入処理等の種々溝配線要素の形成処理が行われる。そして、このような処理が行われた後には、不要となったArFレジスト膜を除去しなければならない。従来、不要となったレジスト膜の除去方法としては、例えば、特許文献1には、水蒸気とオゾンガスの雰囲気でレジスト膜を水溶性に変性させ、この水溶性に変化したレジスト膜を水洗処理によって除去する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、ArFレジスト膜のオゾンと水蒸気を用いた処理による剥離レートは極めて小さい。そのため、ArFレジスト膜を用いた生産プロセスにこの方法を採用することは困難である。また、一般的に、ArFレジスト膜の下地にはArFエキシマレーザの反射を防止するための反射防止膜(BARC)が形成されるが、この反射防止膜もまたオゾンと水蒸気を用いた処理による除去は困難である。さらに、ArFレジスト膜に限らず、高ドーズ量でイオン注入処理されたレジスト膜は注入イオンによって硬化するため、やはりオゾンと水蒸気を用いた処理のみによる除去が困難である。
【特許文献1】特開2002−184741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、フォトリソグラフィー工程で形成され、エッチング処理やイオン注入処理、導体膜形成処理等の後に不要となった難剥離性のレジスト膜や反射防止膜等の除去を容易に行うことができる基板処理方法を提供することを目的とする。また、このような基板処理方法を実行するための基板処理装置、その基板処理装置の制御に用いられるコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点によれば、ArFレジスト膜を伴った基板から前記ArFレジスト膜を除去するための基板処理方法であって、
前記ArFレジスト膜に所定波長の紫外線を照射する工程と、
前記基板をチャンバに収容し、前記チャンバにオゾンガスと水蒸気を供給して、紫外線が照射されたArFレジスト膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる工程と、
変性したArFレジスト膜に前記所定の処理液を供給して、前記ArFレジスト膜を基板から剥離する工程と、
を有し、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に収容された基板に結露が生じないように、前記チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、前記水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、反射防止膜を伴った基板から前記反射防止膜を除去するための基板処理方法であって、
前記反射防止膜に所定波長の紫外線を照射する工程と、
前記基板をチャンバに収容し、前記チャンバにオゾンガスと水蒸気を供給して、紫外線が照射された反射防止膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる工程と、
変性した反射防止膜に前記所定の処理液を供給して、前記反射防止膜を基板から剥離する工程と、
を有し、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に収容された基板に結露が生じないように、前記チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、前記水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の観点によれば、高ドーズでイオン注入処理されたレジスト膜を伴った基板から前記レジスト膜を除去するための基板処理方法であって、
前記レジスト膜に所定波長の紫外線を照射する工程と、
前記基板をチャンバに収容し、前記チャンバにオゾンガスと水蒸気を供給して、紫外線が照射されたレジスト膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる工程と、
変性したレジスト膜に前記所定の処理液を供給して、前記レジスト膜を基板から剥離する工程と、
を有し、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に収容された基板に結露が生じないように、前記チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、前記水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0009】
上記第1から第3の観点において、チャンバへのオゾンの供給を周期的に停止することができる。また、チャンバ内での結露を防止するために、チャンバを所定の温度に保持してチャンバに供給する水蒸気量を一定としたときに、チャンバ内で結露が生ずる圧力を予め求めておいて、実際の基板の処理では、チャンバ内の圧力を測定しながら、その測定圧力が先に求められた結露の生ずる圧力を超えないように、オゾンの供給量を制御するようにすることができる。前記所定の処理液としては純水または所定の薬液を用いることができる。
【0010】
本発明の第4の観点によれば、ArFレジスト膜、反射防止膜、高ドーズイオン注入レジスト膜のいずれかの膜を備えた基板に紫外線を照射する紫外線照射部と、
紫外線が照射された基板を収容する、加熱機構を備えたチャンバと、
前記チャンバに水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記チャンバにオゾンを供給するオゾン供給部と、
前記基板が収容されたチャンバの内部が所定の温度に保持され、前記チャンバ内に所定流量で水蒸気とオゾンが供給されるように、前記チャンバと前記水蒸気供給部と前記オゾン供給部とを制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に水蒸気を一定流量で供給しながら、前記基板に結露が生じないように前記チャンバ内へのオゾン供給量を減少させることを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0011】
上記第4の観点の装置において、前記制御部は、前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバへのオゾンの供給を周期的に停止させるようにすることができる。また、前記チャンバの内圧を測定する圧力センサをさらに具備し、前記制御部は、前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記圧力センサによる測定値が、前記チャンバ内を所定の温度に保持して前記チャンバに供給する水蒸気量を一定としたときに前記チャンバ内で結露が生ずる際の事前測定された圧力を超えないように、オゾンの供給量を調整するようにすることができる。
【0012】
本発明の第5の観点によれば、加熱機構を備えたチャンバ内に収容された基板を、水蒸気とオゾンで処理する基板処理装置を制御するコンピュータに、(a)紫外線照射処理が施されたArFレジスト膜、反射防止膜、高ドーズイオン注入レジスト膜のいずれかの膜を備えた基板を前記チャンバに収容し、(b)前記チャンバの内部を所定の温度に保持し、(c)前記チャンバ内に水蒸気を一定流量で供給しながら、前記基板に結露が生じないように前記チャンバ内へのオゾン供給量を減少させて、前記膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる、処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ArFレジスト膜や反射防止膜、高ドーズ量のイオン注入処理がされたレジスト膜等の難剥離性膜を、剥離対象物以外の部分にダメージを与えることなく、剥離することができる。また、基板を水蒸気とオゾンで処理する際に、水蒸気に対するオゾン量を減少させてチャンバ内に水蒸気が多い状態を作り出すことにより、難剥離成膜の剥離レートを向上させることができる。さらに、基板を水蒸気とオゾンで処理した後の液処理においてアルカリ性薬液を用いることにより、難剥離成膜をより容易に剥離することができるようになり、さらに装置のスループットを短縮することができる。さらにまた、基板に結露が生じないようにチャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることにより、ArFレジスト膜等の膜の変性を促進することができ、純水や薬液による剥離が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について具体的に説明する。図1は、半導体装置の製造工程で不用となったArFレジスト膜やArF線対応の反射防止膜(BARC)、高ドーズ量でイオン注入されたレジスト膜(以下「ArFレジスト膜等」という)等を除去するための膜除去システム100の概略構造を示す平面図である。
【0015】
この膜除去システム100は、ウエハWが収容されたキャリアCが他の処理システム等から搬入され、逆に膜除去システム100での処理が終了したウエハWが収容されたキャリアCを次の処理を行う処理システム等へ搬出するためのキャリアステーション4と、ウエハWに設けられたArFレジスト膜等の変性処理およびその後の除去処理等を行うための複数の処理ユニットを有する処理ステーション2と、処理ステーション2とキャリアステーション4との間でウエハWの搬送を行う搬送ステーション3と、処理ステーション2で使用する薬液や純水、ガス等の製造、調製、貯留を行うケミカルステーション5と、を具備している。
【0016】
キャリアステーション4は、図中Y方向に沿って3箇所にキャリアCを載置できる載置台6を有している。キャリアCの内部において、ウエハWは略水平姿勢で鉛直方向(Z方向)に一定の間隔で収容されている。この載置台6の下側のスペースに、膜除去システム100におけるウエハWの処理を制御するための制御部(コンピュータ)が組み込まれている。搬送ステーション3には、キャリアステーション4の載置台6に載置されたキャリアCと処理ステーション2に設けられた後述するウエハ載置ユニット(TRS)18a・18bとの間でウエハWを搬送するウエハ搬送装置7が配置されている。
【0017】
処理ステーション2の搬送ステーション3側には、上下2段に積層されたウエハ載置ユニット(TRS)18a・18b(18bは18aの下側に配置)が配置されている。また、処理ステーション2の略中央部には、処理ステーション2内においてウエハWを搬送する主ウエハ搬送装置14が設けられている。処理ステーション2のケミカルステーション5側には、ウエハWの表面に形成されたArFレジスト膜等に紫外線照射処理を施す紫外線照射ユニット(UV)19が配置されている。
【0018】
図2に、紫外線照射ユニット(UV)19の概略構造を示す垂直断面図を示す。この紫外線照射ユニット(UV)19は、一側面が開口された箱体21の内部に、ウエハWを載置するステージ22と、このステージ22を加熱するヒータ23と、ステージ22に載置されたウエハWの表面に紫外線を照射する紫外線光源25と、を備えている。
【0019】
紫外線光源25としては、発光波長は172nm〜193nmの紫外線ランプまたはエキシマレーザを用いることが好ましく、ArFエキシマレーザを用いることがより好ましい。これは紫外線光源25の発光波長が露光波長に近く、または同じために、ArFレジスト膜等の分子構造を変化させやすいからである。ヒータ23を加熱し、ステージ22を介してウエハWを加熱することにより、ウエハWの温度を面内で均一とし、紫外線照射によるArFレジスト膜等の分子構造変化を均一に生じさせることができる。
【0020】
ステージ22は左右に水平にスライド自在であり、また、紫外線光源25からは紙面に垂直な方向を長手方向として線状または帯状に紫外線がステージ22側に照射されるようになっており、紫外線光源25からステージ22に向けて紫外線を照射しながら、ステージ22を左右にスライドさせることによって、ステージ22に載置されたウエハWの表面に紫外線を照射することができる。なお、箱体21の内部の酸素濃度を低下させることができように、箱体21内には窒素ガス(Nガス)を供給することができるようになっている。
【0021】
処理ステーション2の背面側には、紫外線照射処理が終了したウエハWに、オゾンガス(Oガス)と水蒸気による処理を行う8台の膜変性ユニット(VOS)15a〜15hが2列4段で配置されている(15b〜15dは15aの下に積み重ねられ、15f〜15hは15eの下に積み重ねられて、配置されている)。
【0022】
図3に膜変性ユニット(VOS)15aの概略構造を示す垂直断面図を示す。膜変性ユニット(VOS)15aは、ウエハWを収容するチャンバ30を有しており、チャンバ30は固定された下部容器41aと、下部容器41aの上面を覆う蓋体41bから構成され、蓋体41bは膜変性ユニット(VOS)15aのフレーム42に固定されたシリンダ43によって昇降自在である。
【0023】
下部容器41a周縁の立起部の上面にはOリング51が配置されている。シリンダ43を駆動して蓋体41bを降下させると、蓋体41bの裏面周縁が下部容器41a周縁の立起部の上面に当接し、Oリング51が圧縮されてチャンバ30内に密閉された処理空間が形成される。
【0024】
下部容器41aにはウエハWを載置するステージ33が設けられており、このステージ33の表面には、ウエハWを支持するプロキシミティピン44が複数箇所に設けられている。また、ステージ33の内部にはヒータ45aが埋設され、蓋体41bにはヒータ45bが埋設されており、ステージ33と蓋体41bをそれぞれ所定温度で保持することができる。こうしてチャンバ30内を所定温度に保持し、ウエハWの温度を一定に保持することができる。
【0025】
蓋体41bの裏面には、ウエハWを保持する爪部材46が、例えば3箇所(図3では2箇所のみ図示)に設けられている。主ウエハ搬送装置14はこの爪部材46に対してウエハWの受け渡しを行う。爪部材46がウエハWを保持した状態で蓋体41bを降下させると、その降下途中でウエハWは、ステージ33に設けられたプロキシミティピン44に受け渡しされる。
【0026】
チャンバ30の内部においてOガスと水蒸気が略水平方向に流れるように、Oガスと水蒸気を内部に導入するガス導入口34aとOガスと水蒸気を外部へ排気するガス排出口34bは、下部容器41aに設けられている。なお、図3では、ガス導入口34aおよびガス排出口34bの高さ位置がプロキシミティピン44に載置されたウエハWの高さよりも下側で示されているが、ガス導入口34aおよびガス排出口34bはこれよりも高い位置に設けてもよい。
【0027】
チャンバ30のガス導入口34aに接続され、Oガスと水蒸気をチャンバ30に供給する処理ガス供給装置16は、酸素ガス(Oガス)をオゾン化して生成させたOガスをチャンバ30へ送るOガス供給部27と、純水を気化させて水蒸気を発生させ、チャンバ30へ送る水蒸気供給部28と、を有している。例えば、Oガス供給部27からチャンバ30へのOガス供給は、供給ラインに設けられた開閉バルブ27aの開閉を操作することによって行われる。同様に、水蒸気供給部28からチャンバ30へ水蒸気供給は供給ラインに設けられた開閉バルブ28aの開閉を操作することによって行われる。よって、開閉バルブ28aを開いて、開閉バルブ27aを閉じれば、水蒸気のみが膜変性ユニット(VOS)15a〜15hに設けられたチャンバ30へ供給される。
【0028】
チャンバ30内を排気するためにガス排出口34bに接続された排気装置32は、真空ポンプまたはアスピレータ等の強制排気を行うための装置と、チャンバ30から排気されるガス流量を調整するための可変バルブを備えている。チャンバ30内に連続してガスが供給されている状態で、チャンバ30内の陽圧に保持する場合には、真空ポンプ等を駆動することなく、可変バルブの調整のみ行えばよい。
【0029】
チャンバ30に設けられたガス排出口34bには、排気圧(チャンバ30内の圧力に同じ)を測定するための圧力センサ48が取り付けられている。圧力センサ48の取り付け位置はこれに限定されるものではなく、チャンバ30の内圧を測定することができる場所であればよい。
【0030】
後述するように、ウエハWの処理ガスによる処理は、チャンバ30の内部を一定の陽圧に保持して行うことが好ましい。このため、チャンバ30の内部から下部容器41aと蓋体41bとの間を通って外部に処理ガスが流出しないように、下部容器41aと蓋体41bとの密閉を、シリンダ43による押圧力に依存するだけでなく、下部容器41aと蓋体41bの端面に設けられた突起部47a・47bどうしをロック機構35によって締め付けることによって行う。
【0031】
1組の突起部47a・47bは鉛直方向で重なっており、例えば4組の突起部47a・47bがチャンバ30の外周に等間隔に設けられており、各組の間には間隙部49(図3の右側部分参照)が形成されている。ロック機構35はローラ59a・59bで突起部47a・47bを挟み込むことによって下部容器41aと蓋体41bとを密着させるが、間隙部49の位置にローラ59a・59bが移動している状態では蓋体41bの昇降を自由に行うことができる。
【0032】
処理ステーション2の正面側には、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hにおける処理の終了したウエハWを液処理する液処理ユニット(LCU)12a〜12dが2列2段で配置されている(12bは12aの下に配置され、12dは12cの下に配置されている)。これら液処理ユニット(LCU)12a〜12dの詳細な構造は図示しないが、ウエハWを保持する回転自在なスピンチャックと、スピンチャックを囲繞するカップと、スピンチャックに保持されたウエハWの表面にアルカリ性薬液を供給する薬液ノズルと、純水を供給する純水ノズルと、純水によるリンス処理の後のスピン乾燥時にウエハWに乾燥ガスを噴射するガス噴射ノズルと、を有している。
【0033】
ケミカルステーション5には、先に説明した処理ガス供給装置16と、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hに設けられたチャンバ30内をパージするためのNガスや、液処理ユニット(LCU)12a〜12dに設けられたガス噴射ノズルに供給するためのNガスを、各ユニットに供給するためのNガス供給装置29と、液処理ユニット(LCU)12a〜12dへ純水やアルカリ性薬液を供給する処理液供給装置17が設けられている。なお、処理ガス供給装置16からOガスと水蒸気をチャンバ30に供給する際には、Oガスと水蒸気によるArFレジスト膜等の変性に悪影響がない範囲で、Nガス供給装置29から所定量のNガスを同時にチャンバ30に供給してもよい。
【0034】
図4に膜除去システム100の概略の制御システムの構成を示す。膜除去システム100によるウエハWの処理を制御するための制御部(つまり、コンピュータ)110は、プロセスコントローラ(CPU)111と、工程管理者がウエハWの処理条件等を決定するためのコマンド入力操作等を行うキーボードやプロセスコントローラ(CPU)111による演算結果、洗浄処理の進行状態等を可視化して表示するディスプレイ等を有するデータ入出力部112と、膜除去システム100を制御するためのプログラムやレシピ、実行された処理に関係するデータ等が記録された記録部113と、を有している。
【0035】
記録部113には、具体的には、後に詳細に説明する、ウエハWに対して紫外線照射処理、Oガスと水蒸気による膜変性処理、純水またはアルカリ性薬液による膜剥離のための液処理に至る一連の処理を施すために、膜除去システム100におけるウエハWの搬送、各処理ユニットを構成する各種の電装品や機械駆動のための機構、Oガスと水蒸気や純水等の供給と停止等の制御をプロセスコントローラ(CPU)111に実行させるための処理プログラム115や、ウエハWの一連の処理における時間配分、搬送ルート、純水やアルカリ性薬液の選択と供給流量および時間、Nガスの供給量等が記録されたレシピ116が記録されている。これらの処理プログラム115やレシピ116は、例えば、ハードディスク(HD)、メモリー(RAM等)の固定記憶媒体や、CD−ROM(またはCD−R等)、DVD−ROM(またはDVD−R等)、MOディスク等の可搬性のある各種記録媒体に記録されており、プロセスコントローラ(CPU)111によって読み取り可能に記録されている。
【0036】
また、記録部113には、膜除去システム100で実行された処理に関するデータ、例えば、ウエハWのロット番号、用いられた処理レシピ、処理日時、処理中の各種駆動機構の動作不良の有無等の実行データ117を記録することができるようになっている。このような実行データ117は、CD−RやMOディスク等の可搬性のある各種記録媒体にコピーや移し替えできるようになっている。
【0037】
プロセスコントローラ(CPU)111は、処理プログラム115とレシピ116を読み取って、例えば、ウエハWの搬送のための制御信号をウエハ搬送装置7や主ウエハ搬送装置14へ、紫外線光源25の点灯/消灯のための制御信号を紫外線照射ユニット(UV)19へ、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hに設けられたチャンバ30の開閉のための制御信号をシリンダ43へ、チャンバ30へのOガスと水蒸気の供給と停止のための制御信号をOガス供給部27と水蒸気供給部28へ、液処理ユニット(LCU)12a〜12dにおけるウエハWへの純水や薬液の供給流量を調整するための制御信号を処理液供給装置17へ、送信する。
【0038】
なお、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hでの処理においては、プロセスコントローラ(CPU)111は、圧力センサ48の測定値に基づいて、処理を監視し、異常が生じた場合に警報を発令する構成とすることが好ましい。また、膜除去システム100を構成する各種機構等からその動作の実行を示すデータがプロセスコントローラ(CPU)111にフィードバックされる双方向通信が行われる構成も好ましい。なお、図3には、プロセスコントローラ(CPU)111によって制御される主な機構等のみを示しており、全てを示してはいない。
【0039】
次に、上述した膜除去システム100を用いてウエハWに形成されたArFレジスト膜等を除去する方法について、第1〜第5の方法を例示して説明する。まず、第1の方法では、エッチング対象層の表面に形成された所定の回路パターンを有するArFレジスト膜および反射防止膜を別々に除去する。図5に、第1の方法の概略のフローチャートを示す。また、図6A〜図6EはArFレジスト膜66の除去過程を模式的に示す断面図である。
【0040】
図6Aには、バリアメタル層61を介して下部配線(例えば、銅配線)62が形成されている絶縁膜60と、ストッパー膜(例えば、SiN膜、SiC膜)63と、絶縁膜(例えば、SiO膜)64と、ArF対応の反射防止膜65と、ArFレジスト膜66と、有するウエハ(ウエハ自体は図示しない)が示されている。ここで絶縁膜64には、例えばドライエッチング処理により、ArFレジスト膜66と同様の回路パターンが形成されている。
【0041】
このウエハを収容したキャリアCが、オペレータまたは自動搬送装置によって膜除去システム100のキャリアステーション2に設けられた載置台6に載置される(ステップ1)。主ウエハ搬送装置14によってキャリアCから所定のウエハが取り出されてウエハ載置ユニット(TRS)18bへ搬送され、そこから主ウエハ搬送装置14によって紫外線照射ユニット(UV)19に搬送され、ステージ22上に載置される(ステップ2)。
【0042】
紫外線照射ユニット(UV)19では、Nガスを箱体21内に供給して箱体21の内部の酸素濃度を所定値以下に低減した状態において、紫外線光源25からステージ22側に紫外線を照射し、このときにステージ22を所定の速度で水平方向にスキャンさせることにより、ステージ22に載置されたウエハの表面全体に均一に紫外線を照射する(ステップ3)。
【0043】
この紫外線照射処理によって、ウエハに形成されているArFレジスト膜は、後に行われるOガスと水蒸気との反応によって水溶性へと変化しやすい性質に変化する。図6Bはステップ3の処理後の状態を模式的に示している。なお、ウエハへの紫外線照射量を多くしたい場合には、紫外線光源25から照射される紫外線強度を高め、またはステージ22のスキャン速度を遅くし、或いはウエハのスキャン回数を増やせばよい。
【0044】
紫外線照射処理が終了したウエハは、主ウエハ搬送装置14によって、紫外線照射ユニット(UV)19から膜変性ユニット(VOS)15a(または15b〜15hのいずれか)に搬送される(ステップ4)。膜変性ユニット(VOS)15aでは、チャンバ30に設けられたヒータ45a・45bを常時発熱させており、チャンバ30に収容されたウエハWの温度分布が一定となった後に、最初にOガス供給部27からOガスのみをチャンバ30内に供給してチャンバ30の内部をパージし、チャンバ30の内圧を所定の陽圧(つまり、チャンバ30の外圧(通常、大気圧)より高い状態)とする。
【0045】
なお、蓋体41bの温度をステージ33の温度よりも所定温度高く設定すると、後にチャンバ30内に水蒸気を供給した際に、チャンバ30内における水蒸気の密度が蓋体41b側よりもステージ33側で高くなり、水蒸気を効率的にウエハWにあてることができる。
【0046】
その後、Oガスの供給を継続したまま、水蒸気供給部28から水蒸気をチャンバ30に供給する(ステップ5)。この間、チャンバ30へのOガスと水蒸気の供給量とチャンバ30からの排気量は、チャンバ30内で結露が生じないように、かつ、チャンバ30内が所定の陽圧となるように、調整される。このOガスと水蒸気によってウエハに形成されているArFレジスト膜66とウエハに付着しているポリマー残渣(例えば、エッチング処理後に生ずるポリマー残渣)を水溶性へと変性させることができる。ウエハWの表面で結露が生じてしまうと、その液滴発生部分に水によるレジストの溶解が始まってしまうために変性状態が不均一となり、レジスト残渣が生ずるからである。
【0047】
図6Cは、ステップ5の処理が終了して、ArFレジスト膜が変性した状態を模式的に示している。なお、「ArFレジスト膜が水溶性へ変性する」とは、ArFレジスト膜がウエハ上に残った状態で純水に溶解し易い性質に変化することを意味する。また、このOガスと水蒸気は、ArFレジスト膜66とポリマー残渣を変性させるが、絶縁膜64にダメージを与えることはない。
【0048】
ウエハWのOガスと水蒸気による処理が終了したら、チャンバ30へのOガスと水蒸気の供給を停止して、Nガス供給装置29からチャンバ30内にNガスを供給し、チャンバ30内をパージする。このとき、大量のNガスを急にチャンバ30内に供給すると、チャンバ30内での急激な圧力変化によってウエハWに結露が生じるおそれがあるので、最初は窒素ガスの供給流量を比較的小さく設定し、チャンバ30内に一定量のNガスが供給された後に、Nガス供給流量を増大させるとともに、排気流量を多くすることが好ましい。これによりNガスによるパージ時間を短縮することもできる。なお、このNガスパージでは、後にチャンバ30を開いたときに排気装置32からOガスが逆流してOガスがチャンバ30から排出されないように、排気装置32内からもOガスを完全に排出する。
【0049】
チャンバ30のNガスパージが終了したら、チャンバ30の内圧が外気圧と同じであることを確認してチャンバ30を開く。ステップ5の処理後には、ArFレジスト膜は水溶性に変性しているが、ウエハWから剥離はしていない。そのため、変性したArFレジスト膜を水洗してウエハWから剥離(除去)するために、ウエハWを主ウエハ搬送装置14によって膜変性ユニット(VOS)15aから搬出し、液処理ユニット(LCU)12a(または12b〜12dのいずれか)へ搬入する(ステップ6)。
【0050】
液処理ユニット(LCU)12aでは、例えば、略水平姿勢に保持されたウエハの表面に一定量の純水を供給しながらウエハを回転させることにより、ウエハからArFレジスト膜66を除去する(ステップ7)。図6Dは、ステップ7の処理後の状態を模式的に示している。ステップ7の処理においては、ポリマー残渣もウエハから除去される。ステップ7の水洗処理が終了したら、ウエハWを高速回転させて、ウエハWをスピン乾燥させる(ステップ8)。このステップ8の処理は、ウエハWの表面にNガスを吹き付けながら行うことも好ましい。
【0051】
このステップ8の処理が終了した時点で、絶縁膜64上には反射防止膜65が残っている。そこで、この反射防止膜65を除去するために、先にArFレジスト膜に対して行ったプロセスを繰り返す。すなわち、ステップ8の処理が終了したウエハWを、紫外線照射ユニット(UV)19へ搬送し(ステップ9)、そこで反射防止膜65に紫外線を照射し(ステップ10)、次いでウエハWを紫外線照射ユニット(UV)19から膜変性ユニット(VOS)15aへ搬送し(ステップ11)、そこでOガスと水蒸気によって反射防止膜65を水溶性に変性させ(ステップ12)、続いてウエハWを膜変性ユニット(VOS)15aから液処理ユニット(LCU)12aへ搬送し(ステップ13)、そこでウエハWを水洗処理して変性した反射防止膜65を除去し(ステップ14)、ウエハWをスピン乾燥させる(ステップ15)。こうして、反射防止膜65を絶縁膜64上から除去することができる。図6Eは、ステップ15の処理後の状態を模式的に示している。
【0052】
このようにしてArFレジスト膜66と反射防止膜65が除去されたウエハWは、主ウエハ搬送装置14によって液処理ユニット(LCU)12aから搬出されて、ウエハ載置ユニット(TRS)18aに搬送され、そこからウエハ搬送装置7によってキャリアCに戻される(ステップ16)。キャリアCから搬出され、膜除去システム100での処理が終了したウエハWが全てキャリアCに戻されたら、キャリアCはウエハWに対して次の処理を行う装置等へ搬送される(ステップ17)。
【0053】
この第1の方法は、ウエハWの表面に反射防止膜が露出している場合には、その反射防止膜のみを除去するために用いることができることは、明らかである。その場合に、反射防止膜はArF対応の反射防止膜に限定されるものではなく、KrF線やg線に対応したものであってもよい。このようなKrF線やg線対応の反射防止膜は、従来、CMP法やドライアッシング処理によって除去されていたが、上述した第1の方法によれば、短時間で反射防止膜を除去することができる。また、ウエハWをCMP処理やドライアッシング処理を行う装置に搬送する必要がないために、トータルで処理時間や処理コスト、装置コストを低減することができる。
【0054】
次に、この第1の方法による実施例と比較例について説明する。ArFレジスト膜が形成されたウエハを複数準備した。実施例では、これらのウエハに、紫外線照射ユニット(UV)19における紫外線照射処理と、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hにおけるOガスと水蒸気による処理と、液処理ユニット(LCU)12a〜12dにおける水洗処理とスピン乾燥処理を行い、レジスト膜等の剥離レートを調べた。
【0055】
ここで、紫外線照射ユニット(UV)19における処理条件は、紫外線光源25として発光波長172nmのエキシマレーザを用い、この放電周波数を2000kHzまたは150kHzとし、ウエハの温度を室温(25℃)または100℃とし、ウエハをスキャンして行った。また、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hにおける処理条件は、オゾン濃度:200g/Nm、Oガス流量:4L/min、チャンバ温度:115℃、チャンバ圧力:75kPa、水蒸気流量:8mL/min、水蒸気温度:120℃、水蒸気圧力:95kPa、Oガスと水蒸気の供給時間:60秒、とした。また、チャンバ30には、Oガスの供給と同時にNガスを4mL/minで供給した。
【0056】
比較例として、ArFレジスト膜が形成されたウエハを、紫外線照射処理を行うことなく、膜変性ユニット(VOS)15a〜15hにおいて実施例と同条件で処理し、さらに液処理ユニット(LCU)12a〜12dにおいて水洗処理とスピン乾燥処理を行い、レジスト膜等の剥離レートを調べた。
【0057】
図7に実施例と比較例の剥離レートを比較したグラフを示す。剥離レートの測定は、実施例および比較例ともに2回ずつ行っている。図7から明らかなように、紫外線照射処理を行っていない比較例では剥離レートが極めて小さいために、事実上、比較例の処理方法は、半導体装置の製造プロセスには採用できない。これに対して、実施例では、ウエハの温度は剥離レートに殆ど影響を及ぼしていないが、放電周波数が高い場合に剥離レートが向上する傾向が現れており、比較例の約35倍〜50倍の剥離レートが得られている。このことから、紫外線照射処理によってArFレジスト膜がOガスと水蒸気による処理によって水溶性に変性しやすい性質に変化したものと考えられる。しかしながら、紫外線照射処理によるArFレジスト膜の変性の原理は明らかではない。このような実施例の処理方法は、十分に半導体装置製造プロセスに用いることができる。
【0058】
上記第1の方法では、反射防止膜65とArFレジスト膜66とを別々に除去したが、第2の方法では、反射防止膜65とArFレジスト膜66とを同時に剥離させる。この第2の方法では、先に図5に示したステップ1〜8,16,17の順に処理を行い、そのときのステップ3の処理において、紫外線照射処理における紫外線照射量(強度)を増やすことによって、実行される。この第2の方法は、反射防止膜65とArFレジスト膜66以外の部分で、紫外線照射によるダメージがない場合に用いることができる。
【0059】
次に第3の方法について説明する。図8に、第3の方法のArFレジスト膜と反射防止膜の概略の除去プロセスのフローチャートを示す。この第3の方法では、第1の方法と同様に、エッチング対象層の表面に形成された所定の回路パターンを有するArFレジスト膜および反射防止膜を別々に除去するが、膜変性ユニット(VOS)15aにおけるウエハWのOガスと水蒸気による処理方法に相違があるので、その点について詳しく説明する。
【0060】
先に図5に示したステップ1〜4と同じ処理のステップ21〜24にしたがって、ArFレジスト膜への紫外線照射処理が終了したウエハWを膜変性ユニット(VOS)15aに搬入する。次に、チャンバ30に収容されたウエハWの温度分布がほぼ一定となったら、チャンバ30内へOガスを一定流量で供給し、チャンバ30内を加圧する(ステップ25)。次いで、Oガスを一定流量で供給しながら、水蒸気をチャンバ30内へ一定流量で供給する(ステップ26)。
【0061】
ステップ26では、チャンバ30内で結露が生じないように、チャンバ30からの排気量を調整し、チャンバ30内を一定の圧力に保持する。これは、ウエハWの表面で結露が生じてしまうと、水滴が発生した部分でのレジスト溶解が始まってしまうために変性状態が不均一となり、レジスト残渣が生ずるからである。
【0062】
この結露防止は、より具体的には、次のようにして行われる。すなわち、予めチャンバ30内を所定温度に保持してチャンバ30に供給する水蒸気量を一定としたときにチャンバ30内で結露が生ずる圧力を求めておいて、この圧力値よりも小さい値に処理圧力値を設定し、これらをレシピ116の情報に加えておく。そして、プロセスコントローラ(CPU)111が、圧力センサ48の測定値を参照しながら、チャンバ30内の圧力が結露の生ずる圧力を超えず、設定された圧力値で維持されるように、チャンバ30からの排気流量を制御する。
【0063】
次に、チャンバ30内への水蒸気の供給を継続しながら、Oガスの供給を周期的に停止することによって、チャンバ30内に水分子の多い状態を周期的に作り出す(ステップ27)。例えば、水蒸気の供給を開始してから15秒が経過したときにOガスの供給を停止して5秒間保持し、続いてオゾンの供給を再開して15秒間保持した後、再びオゾンの供給を停止して5秒間保持する、という処理を、複数回繰り返す。このステップ27では、周期的にチャンバ30へ供給されるガスの総量が変化するが、上述したように、圧力センサ48の測定値を参照しながら、チャンバ30からの排気流量を制御することにより、チャンバ30内は一定の圧力に保持される。
【0064】
このステップ26,27の処理において、Oガスと水の分子は、ArFレジスト膜を構成する炭素原子(レジスト材料の炭素原子)を攻撃して、ArFレジスト膜を水溶性へと変化させる。
【0065】
ステップ27の処理は、チャンバ30内の水蒸気量が少ない状態で終了することが、結露の発生を防止する観点から好ましい。したがって、チャンバ30内にOガスと水蒸気が供給されている状態でOガスと水蒸気の双方のチャンバ30内への供給を停止するとともに、チャンバ30内にNガスを導入し、チャンバ30内をNガスでパージする(ステップ28)。ステップ28の処理終了後は、ウエハWから水溶性に変性したArFレジスト膜を除去する水洗処理を行うために、ウエハWを膜変性ユニット(VOS)15aから洗浄ユニット(CLN)12a(または12b〜12dのいずれか)に搬送する(ステップ29)。
【0066】
その後は、先に説明した第1の方法におけるステップ7,8と同じ処理であるステップ30の水洗処理、ステップ31の乾燥処理を行う。次に、反射防止膜についてステップ22〜31と同じ処理を繰り返し(ステップ32)、こうして反射防止膜も剥離処理されたウエハWは、キャリアCに戻され(ステップ33)、さらにキャリアCはウエハWに対して次の処理を行う装置等へ搬送される(ステップ34)。
【0067】
同じレジスト材料を用いて2枚のウエハWにそれぞれレジスト膜を形成し、一方を第1の方法で処理し、他方を第3の方法で処理した場合に、水洗処理によって完全にレジスト膜を除去することができるオゾンと水蒸気による処理時間を調べた結果、第3の方法では第1の方法に比べて80%以下の処理時間で足りることがわかった。これは、水分子が多い雰囲気を作り出すことによって、レジスト膜に変性しやすい部分が多く作り出されるためと推測される。常にチャンバ30内を水蒸気の多い状態に維持すると結露が生じやすくなるが、Oガスの供給を周期的に停止する方法では、結露の発生が抑制され、また、変性に必要なOガスは不足しないようにチャンバ30に供給されるので、Oガスは無駄に消費されず、しかもレジスト膜を変性させる効率が高められる。
【0068】
この第3の方法のステップ27においては、上述のようにOガスの供給を周期的に完全に停止するのではなく、Oガスの流量を周期的に低減する方法を採ってもよい。また、Oガスの供給を停止または流量低減する場合の周期は、一定である必要はなく、例えば、最初の供給停止時間とその次の供給停止時間とが異なっていてもよい。
【0069】
第4の方法は、先に説明した第1の方法をArFレジスト膜と反射防止膜を同時に剥離させる第2の方法に変更したのと同様にして、上述した第3の方法における紫外線照射処理において、紫外線照射量(強度)を増すことにより、ArFレジスト膜と反射防止膜を同時に剥離させる方法である。
【0070】
上述した第1〜第4の方法は、紫外線照射処理とその後のOガスと水蒸気による処理によって、剥離対象である膜が水溶性に変化する場合に用いられるものであるが、ArFレジスト膜や反射防止膜の中には、これらの方法では、ウエハWから容易に剥離できないか、または剥離できるとしても長い処理時間を必要として実用的でないものがある。そこで、第5の方法では、そのような膜を容易にウエハWから剥離させる。
【0071】
この第5の方法は、上述した第1〜第4のそれぞれの方法において行われる水洗処理を、アルカリ性薬液を用いた処理に変更した処理方法であり、それ以外の処理は変更しないものである。この第5の方法では、液処理ユニット(LCU)12aにおいて、ウエハWにアルカリ性薬液を供給して剥離対象のレジスト膜や反射防止膜を剥離し、次いで純水でアルカリ性薬液を洗い出すリンス処理を行い、その後にウエハWをスピン乾燥させる。
【0072】
この第5の方法において用いられるアルカリ性薬液としては、APM溶液(アンモニア−過酸化水素水溶液)、水酸化アンモニウム水溶液(アンモニア水)、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液が好適に用いられる。これらアルカリ性水溶液に含まれ、純水には実質的に含まれていないアルカリ性基(NH、K等)が、オゾンと水蒸気によって変性したレジスト膜の分子と容易に結合し、溶解させるものと推測される。アルカリ性薬液は水溶液に限られるものではなく、有機系のものでもよい。
【0073】
この第5の方法を用いる場合において、処理面にタングステン等の金属が露出している場合には、金属がダメージを受けないアルカリ性水溶液を選択することが必要である。このような水溶液としては、水酸化アンモニウム水溶液とTMAH液が好適である。なぜなら、APM水溶液は過酸化水素を含んでいるために、これによって金属がダメージを受けるからである。
【0074】
この第5の方法でも、Oガスと水蒸気による処理においては、ウエハWに結露を生じさせないように、水蒸気供給量等の条件を調整する。これは、この第5の方法では、剥離対象である膜は、Oガスと水蒸気による処理において結露が発生すると、その水滴の直下の部分を変性させることができなくなり、後のアルカリ性水溶液による処理後にレジスト残渣が生ずるからである。
【0075】
以上、ArFレジスト膜と反射防止膜をウエハWから剥離する方法について説明したが、上記第1〜第5の方法によれば、イオン注入処理によって硬化したレジスト膜、特にイオンドーズ量が1015/cm以上となるようにイオン注入処理されたレジスト膜を、高い剥離レートで除去することができる。この場合、レジスト膜はArFレジスト膜に限られず、g線対応やKrF線対応のレジスト膜であっても構わない。高ドーズ量のイオン注入処理が行われたレジスト膜は、従来はドライアッシング処理によって除去しなければならず、このときに回路パターンがダメージを受ける場合があった。しかし、第1〜第5の方法によれば、回路パターンへのダメージを抑制して、高ドーズ量でイオン注入されたレジスト膜を除去することができる。Oガスと水蒸気による処理の後に、純水を用いるか、アルカリ性薬液を用いるかは、イオンドーズ量やレジスト膜の各液体への溶解性に応じて、選択すればよい。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、膜除去システム100として、その処理ステーション2に、ウエハWを1枚ずつ処理するユニット(所謂、枚葉式ユニット)を配置した構成を示したが、例えば、Oガスと水蒸気による処理や水洗処理は、一度に複数(例えば、25枚)のウエハWを処理するユニット(所謂、バッチ式ユニット)を配置してもよい。また、上記説明においては、基板として半導体ウエハを例示したが、基板はこれに限定されず、フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板であってもよい。なお、Oガスと水蒸気には、それ以外の別の成分、例えば、過酸化水素等を含有させてもよい。
【0077】
以上説明した実施の形態は、あくまでも本発明の技術的内容を明らかにすることを意図するものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるものではなく、本発明の精神とクレームに述べる範囲で、種々に変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、半導体装置やフラットパネルディスプレイの製造プロセス、およびそのための装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】膜除去システムの概略平面図。
【図2】紫外線照射ユニット(UV)の概略断面図。
【図3】膜変性ユニット(VOS)の概略断面図。
【図4】膜除去システムにおける制御システムの概略構成を示す図。
【図5】ArFレジスト膜と反射防止膜の除去方法を示すフローチャート。
【図6A】ArFレジスト膜の除去プロセスを模式的に示す断面図。
【図6B】ArFレジスト膜の除去プロセスを模式的に示す断面図。
【図6C】ArFレジスト膜の除去プロセスを模式的に示す断面図。
【図6D】ArFレジスト膜の除去プロセスを模式的に示す断面図。
【図6E】ArFレジスト膜の除去プロセスを模式的に示す断面図。
【図7】実施例と比較例の剥離レートを比較して示すグラフ。
【図8】ArFレジスト膜と反射防止膜の別の除去方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0080】
2;処理ステーション
3;搬送ステーション
4;キャリアステーション
12a〜12d;水洗処理ユニット(LCU)
15a〜15h;膜変質処理ユニット(VOS)
19;紫外線照射ユニット(UV)
22;ステージ
23;ヒータ
25;紫外線光源
64;絶縁膜
65;反射防止膜
66;ArFレジスト膜
100;膜除去システム
W;ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ArFレジスト膜を伴った基板から前記ArFレジスト膜を除去するための基板処理方法であって、
前記ArFレジスト膜に所定波長の紫外線を照射する工程と、
前記基板をチャンバに収容し、前記チャンバにオゾンガスと水蒸気を供給して、紫外線が照射されたArFレジスト膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる工程と、
変性したArFレジスト膜に前記所定の処理液を供給して、前記ArFレジスト膜を基板から剥離する工程と、
を有し、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に収容された基板に結露が生じないように、前記チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、前記水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
反射防止膜を伴った基板から前記反射防止膜を除去するための基板処理方法であって、
前記反射防止膜に所定波長の紫外線を照射する工程と、
前記基板をチャンバに収容し、前記チャンバにオゾンガスと水蒸気を供給して、紫外線が照射された反射防止膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる工程と、
変性した反射防止膜に前記所定の処理液を供給して、前記反射防止膜を基板から剥離する工程と、
を有し、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に収容された基板に結露が生じないように、前記チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、前記水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
高ドーズでイオン注入処理されたレジスト膜を伴った基板から前記レジスト膜を除去するための基板処理方法であって、
前記レジスト膜に所定波長の紫外線を照射する工程と、
前記基板をチャンバに収容し、前記チャンバにオゾンガスと水蒸気を供給して、紫外線が照射されたレジスト膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる工程と、
変性したレジスト膜に前記所定の処理液を供給して、前記レジスト膜を基板から剥離する工程と、
を有し、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に収容された基板に結露が生じないように、前記チャンバへ水蒸気を一定流量で供給しながら、前記水蒸気に対するオゾンの供給量を減少させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
前記チャンバへのオゾンの供給を周期的に停止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記チャンバ内を所定の温度に保持して前記チャンバに供給する水蒸気量を一定としたときに前記チャンバ内で結露が生ずる圧力を予め求め、
前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内の圧力を測定しながら、その測定圧力が前記結露の生ずる圧力を超えないように、前記オゾンの供給量を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記所定の処理液は、純水または所定の薬液であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
ArFレジスト膜、反射防止膜、高ドーズイオン注入レジスト膜のいずれかの膜を備えた基板に紫外線を照射する紫外線照射部と、
紫外線が照射された基板を収容する、加熱機構を備えたチャンバと、
前記チャンバに水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記チャンバにオゾンを供給するオゾン供給部と、
前記基板が収容されたチャンバの内部が所定の温度に保持され、前記チャンバ内に所定流量で水蒸気とオゾンが供給されるように、前記チャンバと前記水蒸気供給部と前記オゾン供給部とを制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバ内に水蒸気を一定流量で供給しながら、前記基板に結露が生じないように前記チャンバ内へのオゾン供給量を減少させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記チャンバへのオゾンの供給を周期的に停止させることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記チャンバの内圧を測定する圧力センサをさらに具備し、
前記制御部は、前記チャンバに水蒸気とオゾンを供給する際には、前記圧力センサによる測定値が、前記チャンバ内を所定の温度に保持して前記チャンバに供給する水蒸気量を一定としたときに前記チャンバ内で結露が生ずる際の事前測定された圧力を超えないように、オゾンの供給量を調整することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
加熱機構を備えたチャンバ内に収容された基板を、水蒸気とオゾンで処理する基板処理装置を制御するコンピュータに、(a)紫外線照射処理が施されたArFレジスト膜、反射防止膜、高ドーズイオン注入レジスト膜のいずれかの膜を備えた基板を前記チャンバに収容し、(b)前記チャンバの内部を所定の温度に保持し、(c)前記チャンバ内に水蒸気を一定流量で供給しながら、前記基板に結露が生じないように前記チャンバ内へのオゾン供給量を減少させて、前記膜を所定の処理液に可溶となるように変性させる処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
前記プログラムは前記コンピュータに、前記チャンバへのオゾンの供給を周期的に停止するように、前記基板処理装置を制御させることを特徴とする請求項10に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−294453(P2008−294453A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155288(P2008−155288)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【分割の表示】特願2005−516291(P2005−516291)の分割
【原出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】