説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板上の液膜を短時間で凍結させることができる基板処理方法および装置を提供する。
【解決手段】基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜11f、11bを形成するために基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給するDIWを熱交換器623Aにより常温より低い温度に冷却しているため、凍結膜13f、13bを生成するのに要する時間を短縮することができる。また、液膜形成前において、スローリーク処理を実行することで液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で冷却DIWを配管621Aから流出させて配管621A内に冷却DIWを流通させる。このため、配管621A内の冷却DIWの温度上昇が防止され、液膜形成のためにノズル27、97からDIWの吐出を開始すると、短時間で冷却DIWの液膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板(以下、単に「基板」という)の表面に液膜を形成した後に当該液膜を凍結させる基板処理方法および基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に対する処理のひとつとして基板表面に液膜を付着させた状態で基板を冷却することにより液膜を凍結させる技術が用いられている。特に、このような凍結技術は基板に対する洗浄処理のひとつとして用いられている。すなわち、半導体装置に代表されるデバイスの微細化、高機能化、高精度化に伴って基板表面に形成されたパターンを倒壊させずに基板表面に付着しているパーティクル等の微小な汚染物質を除去することが益々困難になっている。そこで、上記した凍結技術を用いて基板表面に付着しているパーティクルを除去する凍結洗浄発明が提案されている。
【0003】
この凍結洗浄では、基板表面に液体を供給して基板表面に液膜を形成する。続いて、基板を冷却することにより液膜を凍結させる。これにより、パーティクルが付着している基板表面に凍結膜が生成される。そして、最後に基板表面から凍結膜を除去することにより基板表面からパーティクルを凍結膜とともに除去している。例えば特許文献1に記載の装置では、純水を基板表面に供給して液膜を形成し、その液膜を凍結するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−31673号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の装置では、液膜を凍結させるまでに比較的長時間を要していた。そのため、単位時間当たりに処理可能な基板の枚数が減少してしまい、スループットが低下するという問題が生じていた。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板上の液膜を短時間で凍結させることができる基板処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、冷却された液体を配管を介してノズルに供給することによってノズルから基板に所定の流量で冷却液体を吐出して基板上に液膜を形成する液膜形成工程と、基板上の液膜を凍結させる凍結工程とを備え、液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で冷却液体を配管から流出させる、スローリーク処理を液膜形成工程前に行うことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、基板に向けて液体を吐出可能なノズルと、配管を介して冷却された液体をノズルに供給することによってノズルから所定の流量で冷却液体を吐出させて基板上に液膜を形成する液膜形成手段と、基板上の液膜を凍結させる凍結手段とを備え、液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で冷却液体を配管から流出させる、スローリーク処理を液膜形成手段は液膜形成前に実行することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(基板処理方法および基板処理装置)によれば、冷却された液体(冷却液体)が基板に供給されて該基板上に液膜が形成され、その基板上の液膜が凍結される。ところで、発明者らが種々の実験を行ったところ、液膜の凍結に要する時間の大部分は、液膜を構成する液体の温度を凝固点付近まで低下させるのに費やされていることが明らかとなった。そこで、この発明は、液膜形成時には基板に対して冷却液体を供給することで液膜の温度を凝固点付近まで低下させるのに要する時間を短縮している。したがって、液膜の凍結に要する時間を短縮することができ、基板処理のスループットを向上することができる。
【0010】
また、このように液膜の凍結に要する時間を短縮する上で液膜形成時の冷却液体の温度が重要であるが、当該温度を十分に低下させておくためには液膜形成前における冷却液体の取扱いが重要である。なんとなれば、冷却液体を流通させる配管は室温環境に配設されているため、液膜形成前に配管内に冷却液体を滞留させると、配管周囲の室温雰囲気によって冷却液体が暖められて温度上昇を招いてしまうからである。その結果、液膜形成を開始したとしても、液膜形成前に室温雰囲気によって暖められた配管内の液体がノズルから吐出し終わった段階で初めて冷却液体がノズルから吐出されることとなり、冷却液体の使用によるスループットの向上を効果的に図ることが困難となってしまう。また、冷却液体がノズルから吐出されるまでに比較的多量の液体をノズルから吐出させることとなり、液体使用量が増大してしまい、ランニングコスト増大の要因のひとつとなっている。そこで、この発明では、液膜形成前にスローリーク処理が実行される。このスローリーク処理とは、液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で冷却液体を配管から流出させる処理であり、スローリーク処理によって配管内に冷却液体が流通して冷却液体の温度上昇が防止される。そして、液膜形成を行う際には、十分な冷却状態に保たれた冷却液体がノズルから吐出されて基板処理のスループットを確実に向上させることができる。また、スローリーク処理により配管内の冷却液体の温度上昇を防止しているため、液膜形成時に使用される冷却液体の量を抑制することができる。
【0011】
ここで、液膜形成工程の開始時にスローリーク処理を停止する一方、液膜形成工程の完了後にスローリーク処理を再開すると、無駄な冷却液体の使用を抑制してランニングコストの低減を図ることができる。また、配管内の冷却液体の温度上昇をより効果的に抑制するためには、液膜形成工程以外のときに、スローリーク処理を継続的に実行するようにすればよい。
【0012】
また、液膜を形成するための液膜形成手段が、配管を介して液体供給源から供給される液体と熱交換することによって当該液体を冷却して冷却液体を生成する熱交換器と、熱交換器とノズルとの間で配管に接続されて配管内の冷却液体を微小流量で排出してスローリーク処理を実行可能なスローリーク部とを有するように構成してもよい。この装置では、スローリーク部が液膜形成前にスローリーク処理を実行することで上記作用効果が得られる。また、配管のうち熱交換器による熱交換が実行される配管部位は耐薬品性を有する材料、例えばパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体製のチューブで構成してもよく、これによって液膜を構成する液体として純水やDIW(deionized water:脱イオン水)のみならず基板洗浄で用いられる薬液、例えばSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液を用いることが可能となり、優れた汎用性が得られる。また、配管のうち熱交換器による熱交換が実行される配管部位はステンレス鋼(SUS)製のチューブで構成してもよい。こうすることで、液膜を構成する液体として純水やDIWの時は熱交換率を上げることが出来る。
【0013】
また、液膜に冷却ガスを供給して凍結させてもよく、冷却ガスを液膜に向けて吐出するガス吐出手段を液膜に沿って基板に対して相対移動させて液膜を凍結させるようにしてもよい。この場合、相対移動に伴って基板上に形成された液膜のうち該液膜が凍結した領域が広がって、基板の全面に凍結膜が生成されることとなる。このように、冷却ガスの供給部位が基板の表面の一部領域に限定されているため、例えば基板を保持するための部材など、基板の周辺に設けられている部材の温度低下を必要最小限に止めることができる。したがって、それらの部材が劣化するのを抑制することができる。
【0014】
さらに、凍結された液膜を基板から除去すると、例えば基板上にパーティクルが付着している場合であっても、該パーティクルを基板から効果的に除去することができる。すなわち、基板上に形成された液膜を凍結させることで液膜が体積膨張し、その体積膨張によって生じる圧力がパーティクルに作用して、パーティクルと基板との間の付着力が弱められ、あるいはパーティクルが基板から脱離する。そのため、凍結した液膜を基板から除去することで、基板上からパーティクルを容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、液膜形成前にスローリーク処理を行うことで配管内の冷却液体の温度上昇を抑制しつつ液膜形成時には当該冷却液体を基板に供給し該基板上に液膜を形成することができる。また、冷却液体により形成された液膜を凍結しているため、液膜を構成する液体の温度を凝固点付近まで低下させるのに要する時間を短縮することができる。したがって、液膜の凍結に要する時間を短縮することができ、基板処理のスループットを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図であり、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、この基板処理装置は、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜を形成し、各液膜を凍結させて凍結膜を生成し、それらの凍結膜を基板Wの表面Wfおよび裏面Wbから除去することにより、基板Wに対して洗浄処理を施す装置である。
【0017】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1と、装置全体を制御する制御ユニット4とを備えている。この処理チャンバー1内には、スピンチャック2と冷却ガス吐出ノズル3と遮断部材9とが設けられている。スピンチャック2は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるものである。冷却ガス吐出ノズル3は、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出するものである。遮断部材9は、スピンチャック2の上方に、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向して配置されている。
【0018】
上記スピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0019】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0020】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。なお、この実施形態では、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0021】
上記遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94とが接続されている。
【0022】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材回転機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。
【0023】
遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材昇降機構94の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には、遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0024】
支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の開口に延設されるガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は乾燥ガス供給部65に接続されている。この乾燥ガス供給部65は、窒素ガスを供給するもので、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から窒素ガスを供給する。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給部65から乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを供給するようにしてもよい。
【0025】
ガス供給管95の内部には、液体供給管96が挿通されている。この液体供給管96の下方端部は遮断部材9の開口に延設されるとともに、その先端に液体吐出ノズル97が設けられている。一方、液体供給管96の上方端部は液体供給ユニット62に接続されている。この液体供給ユニット62は、次に説明するように、液膜を構成する液体およびリンス液を供給するものであり、本実施形態では液膜を構成する液体とリンス液としてDIWを用いている。
【0026】
図3は液体供給ユニットの構成を示す模式図である。この液体供給ユニット62は、液膜形成のために常温よりも低い温度に冷却したDIWをノズル97および後で説明するノズル27に供給する冷却DIW供給系62Aと、凍結膜を除去するために常温のDIWをリンス液としてノズル27、97供給する常温DIW供給系62Bとを有している。なお、ここでは常温のDIWと冷却されたDIWとを特に区別して説明する際には、前者を「常温DIW」と称する一方、後者を「冷却DIW」と称する。
【0027】
液体供給ユニット62の冷却DIW供給系62Aは、工場内に既設のDIW供給源(図示省略)から供給される常温のDIWを冷却するとともに当該DIWをノズル27、97に供給することによってノズル27、97から基板Wに所定の流量で冷却されたDIWを吐出するものであり、次のように構成されている。この冷却DIW供給系62Aでは、配管621Aの一方端がDIW供給源と接続されるとともに、他方端が分岐してノズル27、97に接続されている。また、配管621Aの中間部位はPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂:polymer of tetrafluoroethylene and perfluoroalkylvinylether)製のチューブ622Aで構成されている。このPFAチューブ622Aは螺旋形状を有しており、熱交換器623A内に配置されている。このため、常温DIWがPFAチューブ622A内を流通している間にチューブ(配管)622Aを介して熱交換が行われてDIWの冷却が実行されて冷却DIWが得られる。なお、この実施形態では、後述するように10゜Cよりも低くなるように冷却するが、冷却DIWの温度は好ましくは5゜C以下、さらに好ましくは2゜C以下である。この点についても後で詳述する。
【0028】
また、配管621Aのうち熱交換器623AのDIW供給源側(図3の左手側)では、ニードルバルブN1Aおよび流量計F1Aが配管621Aに介挿されている。このニードルバルブN1Aは常温DIWの流量を調整可能となっており、流量計F1Aで確認しながら当該ニードルバルブN1Aによる流量調整しながら常温DIWを流量計F1Aを介して熱交換器623Aに供給可能となっている。また、ニードルバルブN1Aによる流量調整によりノズル27、97から吐出されるDIWの流量が制御される。
【0029】
一方、配管621Aのうち熱交換器623Aのノズル側(図3の右手側)では、エアバルブV1Aが配管621Aに介挿されており、熱交換器623Aによって冷却された冷却DIWのノズル27、97への供給を制御可能となっている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じてエアバルブV1Aが開くと、ニードルバルブN1Aにより流量調整された状態で冷却DIWが所定流量でノズル27、97に供給され、各ノズル27、97から基板Wに向けて吐出される。これによって基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜が形成される。
【0030】
また、冷却DIW供給系62Aには、このエアバルブV1Aと熱交換器623Aの間で配管621Aからスローリーク用の配管624Aが分岐してスローリーク部625Aが形成されている。このスローリーク部625Aでは、分岐配管624Aに対して分岐位置626Aから順にエアバルブV2A、ニードルバルブN2Aおよび流量計F2Aが取り付けられている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じてエアバルブV2Aが開くと、配管621Aから分岐配管624AにDIWが流れ込み、そのDIWの流量をニードルバルブN2Aで調整可能となっている。この実施形態では、ニードルバルブN2Aによってスローリーク処理時のスローリーク流量を液膜形成時の流量(つまりニードルバルブN1Aにより調整された流量)よりも小さな微小流量、例えば100(ml/min)に設定する。こうして配管621Aからスローリークされた冷却DIW(スローリークDIW)は流量計F2Aを通過した後でスローリーク部625Aから排出される。もちろん、スローリーク部625Aから排出されたスローリークDIWをニードルバルブN1Aのインレット側(図3の左手側)に戻してスローリークDIWを再利用してもよいことが言うまでもなく、このようにスローリークDIWの再利用によってライニングコストを抑制することができる。エアバルブV2Aは常時開に設定されておりスローリークを行なわない時に閉じられるように制御ユニット4から動作指令される。また、ニードルバルブN2Aは流量計F2Aの計測値を確認しながらスローリーク流量を設定する。ここで、流量計F1AとF2Aの上流側直近の配管にフィルタを介在するようにしても良い。
【0031】
一方、液体供給ユニット62の常温DIW供給系62Bは、DIW供給源から供給される常温のDIWをそのまま配管621Bを介してノズル27、97に供給可能となっている。つまり、配管621Bの一方端がDIW供給源と接続されるとともに、他方端が分岐してノズル27、97に接続されている。また、配管621Bには、ニードルバルブN1B、流量計F1BおよびエアバルブV1BがDIW供給源側からこの順序で介挿されている。このニードルバルブN1Bは常温DIWの流量を調整可能となっており、流量計F1Bで確認しながら当該ニードルバルブN1Bによる流量調整を行うとともに常温DIWを流量計F1BおよびエアバルブV1Bを介してノズル27、97に供給可能となっている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じてエアバルブV1Bが開くと、ニードルバルブN1Bにより流量調整された状態で常温DIWが所定流量でノズル27、97に供給され、各ノズル27、97から基板Wに向けてリンス液として吐出される。これによって後述するようにして基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに形成された凍結膜が除去される。なお、流量計F1Bの上流側直近の配管にフィルタを配置しても良い。
【0032】
図1に戻って、説明を続ける。スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに液体を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の中央部に向けて液体を吐出する液吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記したように液体供給ユニット62に接続されており、冷却DIW供給系62Aからの冷却DIWの供給によって裏面Wbに液膜11b(図5)が形成される。また、常温DIW供給系62Bからの常温DIWの供給によって基板Wの裏面Wbに形成された凍結膜が除去される(図6)。このように、この実施形態では、液体供給ユニット62、液体供給管96、液体吐出ノズル97、液供給管25および液吐出ノズル27が、本発明の「液膜形成手段」に相当する。
【0033】
中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は上記乾燥ガス供給部65に接続されており、乾燥ガス供給部65からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガスが供給される。
【0034】
スピンチャック2の周方向外側には、回転モータ31が設けられている。この回転モータ31には回転軸33が接続され、この回転軸33にはアーム35が水平方向に延びるように接続されており、このアーム35の先端に上記冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転モータ31が駆動されると、アーム35が回転軸33回りに揺動することとなる。
【0035】
図4は冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図で、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。制御ユニット4からの動作指令に基づき回転モータ31が駆動されてアーム35が揺動すると、冷却ガス吐出ノズル3は、基板Wの表面Wfに対向した状態で、図4(b)に示すように、移動軌跡Tに沿って移動する。この移動軌跡Tは、回転中心位置Pcから端縁位置Peに向かう軌跡である。ここで、回転中心位置Pcは基板Wの上方で、かつ基板Wの回転中心A0の上に位置し、端縁位置Peは基板Wの外周端の上方に位置する。すなわち、回転モータ31は、冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。また、冷却ガス吐出ノズル3は、移動軌跡Tの延長線上であって基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Psに移動可能となっている。
【0036】
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部64に接続されている。この冷却ガス供給部64は、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3に供給するものである。冷却ガス吐出ノズル3が基板Wの表面Wfの対向位置に配置され、冷却ガス供給部64から冷却ガスが冷却ガス吐出ノズル3に供給されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出している状態で、スピンチャック2が基板Wを回転させながら、回転モータ31が冷却ガス吐出ノズル3を移動軌跡Tに沿って移動させると、冷却ガスが基板Wの表面Wfの全体にわたって供給されることとなる。
【0037】
したがって、液体吐出ノズル97からのDIW吐出により基板Wの表面Wfに形成されている液膜11fの全体が凍結し、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fが生成される。このとき、基板Wの表面Wf側に供給された冷却ガスが有する冷熱が基板Wを介して裏面Wbの液膜11bに伝導する。特に基板Wがシリコンで形成されている場合には、比較的熱伝導率が大きいため、基板Wを介して冷熱が裏面Wbの液膜11bに効率良く伝導する。これにより、基板Wの裏面Wbのうち液膜11bが凍結した領域が、基板Wの表面Wfの凍結領域と同時に広げられることとなる。
【0038】
基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さは、冷却ガスの供給量によっても異なるが、例えば50mm以下、好ましくは数mm程度に設定される。このような基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さおよび冷却ガスの供給量は、(1)冷却ガスが有する冷熱を液膜11fに効率的に付与する観点、(2)冷却ガスにより液膜11fの液面が乱れることがないように液膜11fを安定して凍結する観点などから実験的に定められる。
【0039】
冷却ガスは、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを構成する液体の凝固点、すなわちこの実施形態ではDIWの凝固点より低い温度を有する。この冷却ガスは、例えば、タンクに貯留されている液体窒素内を通るパイプに窒素ガスを流すことにより生成され、この実施形態では例えば−100゜Cに冷却されている。なお、窒素ガスに代えて、酸素ガスや清浄なエア等を用いてもよい。このように冷却ガスを用いているため、基板Wの表面Wfへのガス供給前にフィルタ等を通すことによって、冷却ガスに含まれる汚染物質を容易に除去することができ、液膜11fを凍結させる際に基板Wの表面Wfが汚染されるのを防止できる。このように、この実施形態では、冷却ガス吐出ノズル3が本発明の「冷却ガス吐出手段」に相当し、回転モータ31が本発明の「相対移動機構」に相当する。
【0040】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図5および図6を参照しつつ説明する。図5および図6は基板の表面および裏面に対する処理を示す図であり、図5(a)は未処理基板の搬入処理を示し、図5(b)は液膜形成処理を示し、図6(a)は液膜凍結処理を示し、図6(b)は凍結膜除去(リンス)処理を示している。この装置では、5図(a)に示すように、基板搬入時には、遮断部材9はスピンチャック2の上方の離間位置に退避して基板Wとの干渉を防止しており、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。また、この実施形態では、基板搬入時、つまり次に説明する液膜形成前において、制御ユニット4はエアバルブV1Aを閉じる一方、エアバルブV2Aを開いて熱交換器623Aによって冷却された冷却DIWをスローリークしている(スローリーク処理)。このスローリーク処理によって配管621内に冷却DIWが流通して配管621内の冷却DIWの温度上昇が防止される。また、制御ユニット4はエアバルブV1Bを閉じてノズル27、97への常温DIWの供給を停止している。
【0041】
基板搬入が完了すると、遮断部材9が対向位置まで下降し、基板Wの表面Wfに近接した位置に位置決めされる。これにより、基板Wの表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4は、チャック回転機構22を作動してスピンチャック2を回転させる。また、制御ユニット4はエアバルブV2Aを閉じてスローリーク処理を停止するとともに、エアバルブV1Aを開いて熱交換器623Aによって冷却された冷却DIWをノズル97、27に送り込んで各ノズル97、27から冷却DIWをそれぞれ吐出させて基板Wの表面Wfおよび裏面Wbにそれぞれ供給する。こうして供給された冷却DIWは基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの径方向外向きに均一に広げられる。これによって、図5(b)に示すように、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全面にわたって液膜の厚みがそれぞれ均一にされ、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全体に、それぞれ所定の厚みを有する液膜11f、11bが形成される。ここで、制御ユニット4は、スピンチャック2の回転数を調整することにより、所望の厚さの液膜11f、11bを形成することができる。
【0042】
液膜形成処理が終了すると、制御ユニット4はエアバルブV1Aを閉じてノズル97,27への冷却DIWの供給を停止する一方、エアバルブV2Aを開いてスローリーク処理を再開する。また、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置するとともに、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら、冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。これによって、図6(a)に示すように、基板Wの表面Wfのうち液膜11fが凍結した領域が基板Wの表面Wfの中央部から周縁部へと広げられるとともに、裏面Wbのうち液膜11bが凍結した領域が基板Wの裏面Wbの中央部から周縁部へと広げられ、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全体に凍結膜13f、13bが生成される。ここで、液膜11b,11fを構成するDIWが、熱交換器623Aによって常温より低い温度に冷却されているため、凍結膜13f、13bを短時間で生成することができる。
【0043】
なお、冷却ガス吐出ノズル3を移動させながら基板Wを回転させることによって、液膜の厚み分布に偏りが生じるのを抑制しつつ、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全面に凍結膜13f、13bを生成させることができる。しかし、基板Wをあまりに高速で回転させると、基板Wの回転によって生じる気流により、冷却ガス吐出ノズル3から吐出される冷却ガスが拡散し、液膜の凍結の効率が低下する可能性がある。このため、液膜凍結処理を実行するときの基板Wの回転速度は、この実施形態では例えば1〜300rpmに設定されている。さらに、冷却ガス吐出ノズル3の移動速度、吐出ガスの温度および流量、液膜の厚みも考慮して、基板Wの回転速度を設定するようにすると、より好ましい。
【0044】
このようにして液膜凍結処理を実行すると、基板Wの表面Wfとパーティクルの間に入り込んだ液体の凝固により体積膨張が生じる。例えば、0゜Cの純水が0゜Cの氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する。そして、この体積増加によって生じる圧力がパーティクルに作用し、パーティクルが微小距離だけ基板Wの表面Wfから離れる。その結果、基板Wの表面Wfとパーティクルとの間の付着力が低減し、さらにはパーティクルが基板Wの表面Wfから脱離することとなる。このとき、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しいため、互いに相殺されることになる。その結果、パターンが剥離したり倒壊するなどのダメージを基板Wに与えることなく、パーティクルを好適に基板Wの表面Wfから除去することができる。
【0045】
また、この実施形態では、基板Wの裏面Wbにも液膜11bを形成し、その液膜11bを凍結して凍結膜13bを生成しているため、基板Wの裏面Wbについても、基板Wの表面Wfと同様に、基板Wとパーティクルとの間の付着力を弱めることができ、パーティクルを好適に基板Wの裏面Wbから除去することができる。
【0046】
液膜の凍結が完了すると、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psに移動させるとともに遮断部材9を対向位置に配置させる。そして、凍結膜13f,13bが融解しないうちに、制御ユニット4はエアバルブV1Bを開いて常温DIW供給系62Bから常温DIWを液体吐出ノズル97および液吐出ノズル27に供給し、各ノズル97、27から常温DIWを基板Wの表面Wfおよび裏面Wbにそれぞれ供給する(図6(b)参照)。これにより基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの凍結膜がそれぞれ融解する。また、凍結膜13f,13bと、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給されたDIWとに、基板Wの回転による遠心力が作用する。その結果、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからパーティクルを含む凍結膜13f,13bが除去され、基板外に排出される。なお、この凍結膜除去処理では、基板Wの回転とともに遮断部材9を回転させるのが好ましい。これにより、遮断部材9に付着する液体成分が振り切られるとともに、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に基板周辺からミスト状の液体が侵入するのを防止することができる。
【0047】
こうして、凍結膜除去処理が終了すると、制御ユニット4は、エアバルブV1Bを閉じて常温DIWの供給を停止した後、チャック回転機構22および遮断部材回転機構93のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させて、基板Wの乾燥処理を実行する。さらに、この乾燥処理においては、乾燥ガス供給部65からガス供給管95,29を介して窒素ガスが供給されて、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に挟まれた空間およびスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に挟まれた空間が窒素ガス雰囲気とされる。これによって、基板Wの乾燥が促進され、乾燥時間を短縮することができる。乾燥処理後は基板Wの回転が停止され、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される。
【0048】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに液膜11f、11bを形成するために基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給するDIWを熱交換器623Aにより常温より低い温度に冷却しているため、凍結膜13f、13bを生成するのに要する時間を短縮することができる。すなわち、液膜の凍結に要する時間の大部分は、液膜を構成する液体(本実施形態ではDIW)の温度を凝固点付近まで低下させるのに費やされている。そこで、この実施形態では、基板Wに供給されるDIWを予め冷却している。したがって、液膜11f、11bの温度を凝固点付近まで低下させるのに要する時間が短縮されるため、液膜の凍結に要する時間を短縮することができる。その結果、洗浄処理に要する時間を短縮でき、基板処理のスループットを向上することができる。なお、この作用効果を得るためには、冷却DIWの温度を10゜Cよりも低く、好ましくは5゜C以下、さらに好ましくは2゜Cに設定するのが好適である。その理由について、図7および図8を参照しつつ以下に説明する。
【0049】
図7はDIWの温度を低下させることの効果を示すグラフである。このグラフは、液膜形成に用いるDIWの温度を相違させながら各DIW温度での凍結処理時間と除去率との関係をプロットしたものである。つまり、同図は、上記基板処理を行う諸条件のうちDIW温度および凍結処理時間のみを相違させ、各条件で上記基板処理を実行することで得られるパーティクル除去率(洗浄効果)を測定した結果を示している。同図からわかるように、常温(24゜C)のDIWで基板処理を行う場合、パーティクル除去率を最大化するためには凍結処理時間を80秒に設定する必要がある。また、パーティクル除去率が最大となる凍結処理時間、つまり基板処理に最適な処理時間(以下「最適凍結処理時間」という)は、同図からあきらかなように、DIWの温度が低くなるにしたがって短くなっている。そこで、DIWの温度と最適凍結処理時間の関係をまとめると、図8に示すグラフが得られる。
【0050】
図8はDIWの温度と最適凍結処理時間の関係を示すグラフであり、各DIW温度で基板処理を行った際の最適凍結処理時間をプロットしたものである。同図から明らかなように、DIWの温度が10゜Cを下回ると最適凍結処理時間は短くなり、さらに冷却DIWの温度が5゜C以下で大幅に短縮される。なお、最適凍結処理時間を短くするためにはDIW温度を0゜Cに近づけるのが望ましいが、配管621Aの断熱構造や熱交換器623Aの熱交換能力などを考慮すると、実用上、冷却DIWの温度を2゜C程度に設定するのが最適凍結処理時間を最小化する限界設定であるといえる。
【0051】
また、この実施形態では、液膜形成前において、スローリーク処理を実行することで液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で冷却DIWを配管621Aから流出させて配管621A内に冷却DIWを流通させている。このため、配管621A内の冷却DIWの温度上昇が防止される。このため、液膜形成のためにノズル27、97からDIWの吐出を開始すると、図9の実線に示すように、ノズルからのDIW吐出開始時点ではDIW温度は比較的高いものの、短時間で冷却DIWの温度(同図では2゜C)に低下して液膜が形成される。これに対し、スローリーク処理を行わない場合には、液膜形成前に配管621A内のDIWが配管621Aの周囲、つまり常温雰囲気によって暖められてDIW温度が上昇しているため、吐出開始から比較的長い時間が経過した後で所望温度の冷却DIWが基板Wに供給されることとなる。したがって、本実施形態によれば、スローリーク処理によって十分な冷却状態(10゜Cよりも低い温度)に保たれた冷却DIWをノズル27、97から吐出するように構成しているため、基板処理のスループットを確実に向上させることができる。また、液膜形成処理の開始から冷却DIWがノズル27、97から吐出されるまでの所要時間が短縮されることは、その間に吐出されるDIW量を低減させることができ、その結果、液膜形成時のDIWの使用量も大幅に抑制することができる。なお、上記作用効果を得るためには液膜形成前にスローリーク処理を行うのが最も効果的であるが、この実施形態では液膜形成前のみならず液膜形成工程以外のときにスローリーク処理を継続的に実行しているので、配管621A内の冷却DIWの温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0052】
また、この実施形態によれば、基板Wの表面Wfから凍結膜13fを除去するとともに基板Wの裏面Wbから凍結膜13bを除去している。このため、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクルを効果的に除去できる。これにより、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの全体を良好に洗浄できる。しかも、表面Wf側の液膜11fの凍結と同時に裏面Wb側の液膜11bを凍結しているので、スループットを低下させることなく、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbを洗浄できる。すなわち、基板Wの反転等を行うことなく、基板Wの表面Wfのみならず、基板Wの裏面Wbに対しても洗浄処理を施すことができるため、基板Wの表面Wf側の洗浄処理に要する処理時間とほぼ同等の処理時間で基板Wの表面Wfおよび裏面Wbを洗浄できる。
【0053】
また、この実施形態によれば、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを構成する液体の凝固点よりも低い温度を有する冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて局部的に吐出している。そして、基板Wを回転させながら冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの回転中心位置Pcと基板Wの端縁位置Peとの間で移動させて、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fを生成している。このため、冷却ガスの供給部位が基板Wの表面Wf上の微小領域に限定されることとなり、スピンチャック2などの基板周辺部材の温度低下を最小限に止めることができる。したがって、基板周辺部材が劣化するのを抑制しながら基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fを生成することができる。その結果、基板周辺部材を耐冷熱性の確保が困難な、耐薬品性を備えた樹脂材料で形成しても、冷熱による基板周辺部材の材質劣化を抑制できる。
【0054】
さらに、この実施形態によれば、凍結膜が融解しないうちに凍結膜除去処理を実行開始している。このため、液膜凍結処理において基板Wの表面Wfから脱離したパーティクルが、凍結膜の融解とともに基板Wの表面Wfに再付着するのを回避できる。その結果、凍結膜除去処理の実行により凍結膜とともにパーティクルを基板Wの表面Wfから効率良く除去することができ、パーティクル除去率を向上させる点で有利となっている。
【0055】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、本発明の液膜を形成する液体としてDIWを用いているが、これに限られず、例えば純水、炭酸水、水素水などを液膜を形成する液体として用いてもよい。また、冷却DIW供給系62Aから供給される冷却液体はDIW等に限定されるものではなく、基板Wの表面Wfに対して主に化学的な洗浄作用を有する薬液、例えばSC1溶液を本発明の「冷却液体」として用いてもよい。このようにSC1溶液を基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに供給した場合、SC1溶液中の固体表面のゼータ電位(界面動電位)は比較的大きな値を有することから、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbと該基板Wの表面Wfおよび裏面Wb上のパーティクルとの間がそれぞれSC1溶液で満たされることにより、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbと各パーティクルとの間にそれぞれ大きな反発力が作用する。したがって、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからのパーティクルの脱離をさらに容易にして、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbからパーティクルを効果的に除去することができる。また、SC1溶液による洗浄後、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに常温DIW供給系62BからDIWを供給して常温DIWによるリンス処理を行うことができる。なお、基板Wの表面Wfや裏面Wbに対して主に化学的な洗浄作用を有する化学洗浄としてSC1溶液による洗浄を実行しているが、化学洗浄としては、SC1溶液による洗浄に限定されない。例えば、化学洗浄としてSC1溶液以外のアルカリ性溶液、酸性溶液、有機溶剤、界面活性剤などを処理液として使用したり、それらを適宜に組み合わせたものを処理液として使用する湿式洗浄が挙げられる。
【0056】
また、上記実施形態では、配管621Aの中間部位はPFA製のチューブ622Aで構成されているが、PFAに代えてステンレス鋼(SUS)やアルミニウム、チタン製のチューブで構成してもよい。ステンレス鋼(SUS)は具体的にはSUS−304、SUS−316、SUS−316Lが好ましい。そしてステンレス鋼(SUS)とすることで、DIWや純水を流通する時の熱交換率を上げることができ、DIWや純水をより早く低くなるよう冷却することが出来る。
【0057】
また、上記実施形態では、常温DIW供給系62Bは常温DIWをそのままリンス液として用いられているが、常温DIW供給系62Bの配管621Bに加熱部を介挿し、当該加熱部によって常温以上に昇温されたDIWをノズル27、97から吐出するように構成してもよい。このように高温DIWを用いることで凍結膜除去を短時間で行うことができる。
【0058】
また、上記実施形態では、液体供給ユニット62に冷却DIW供給系62Aと常温DIW供給系62Bの2つの供給系が設けられているが、冷却DIW供給系62Aのみを設けて図10に示すように熱交換器623AのON/OFF制御とエアバルブV1A、V2Aの開閉制御を組み合わせてもよい。図10の実施形態によれば、熱交換器623AのON/OFF制御によりノズル27、97から吐出されるDIWの温度を切替可能となっている。また、エアバルブV1A、V2Aの開閉制御により液膜形成処理前にスローリーク処理が実行されて上記実施形態と同様の作用効果が得られる。また、図11に示すように熱交換器623Aを常時ON状態に設定した上でエアバルブV1A、V2Aの開閉制御により液膜形成処理前にスローリーク処理を実行するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された液膜を凍結させる基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】液体供給ユニットの構成を示す模式図である。
【図4】冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図である。
【図5】基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに対する処理を示す図である。
【図6】基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに対する処理を示す図である。
【図7】DIWの温度を低下させることの効果を示すグラフである。
【図8】DIWの温度と最適凍結処理時間の関係を示すグラフである。
【図9】ノズルからの冷却DIWの吐出開始後における温度変化を示すグラフである。
【図10】この発明にかかる基板処理装置の他の実施形態を示す図である。
【図11】この発明にかかる基板処理装置の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
3…冷却ガス吐出ノズル(冷却ガス吐出手段)
11b,11f…液膜
13f,13b…凍結膜
22…チャック回転機構
27、97…液吐出ノズル
31…回転モータ(相対移動機構)
62…液体供給ユニット(液膜形成手段)
62A…冷却DIW供給系(液膜形成手段)
621A…配管
622A…PFAチューブ
623A…熱交換器
625A…スローリーク部
W…基板
Wf…基板表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却された液体を配管を介してノズルに供給することによって前記ノズルから基板に所定の流量で前記冷却液体を吐出して前記基板上に液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板上の前記液膜を凍結させる凍結工程とを備え、
前記液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で前記冷却液体を前記配管から流出させる、スローリーク処理を前記液膜形成工程前に行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記液膜形成工程の開始時に前記スローリーク処理を停止する一方、前記液膜形成工程の完了後に前記スローリーク処理を再開する請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記液膜形成工程以外のときに、前記スローリーク処理を継続的に実行する請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記凍結工程は、前記液膜に冷却ガスを供給して凍結させる工程である請求項1、2または3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記凍結工程は、前記冷却ガスを前記液膜に向けて吐出する、ガス吐出手段を前記液膜に沿って前記基板に対して相対移動させる工程である請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記凍結工程後に、凍結された前記液膜を前記基板から除去する除去工程をさらに備えた請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
基板に向けて液体を吐出可能なノズルと、
配管を介して冷却された液体を前記ノズルに供給することによって前記ノズルから所定の流量で前記冷却液体を吐出させて前記基板上に液膜を形成する液膜形成手段と、
前記基板上の前記液膜を凍結させる凍結手段とを備え、
前記液膜形成時の流量よりも小さな微小流量で前記冷却液体を前記配管から流出させる、スローリーク処理を前記液膜形成手段は前記液膜形成前に実行することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記配管の一方端は液体を供給する液体供給源に接続される一方、前記配管の他方端は前記ノズルに接続され、
前記液膜形成手段は、
前記配管を介して前記液体供給源から供給される液体と熱交換することによって当該液体を冷却して前記冷却液体を生成する熱交換器と、
前記熱交換器と前記ノズルとの間で前記配管に接続されて前記配管内の前記冷却液体を前記微小流量で排出して前記スローリーク処理を実行可能なスローリーク部とを有し、
前記スローリーク部は前記液膜形成前に前記スローリーク処理を実行する請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記液体は純水または脱イオン水である請求項7または8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記配管のうち前記熱交換器による熱交換が実行される配管部位はパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体製またはステンレス鋼(SUS)製のチューブで構成されている請求項7、8または9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記凍結手段は、
前記液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを前記基板の表面に向けて局部的に吐出する冷却ガス吐出手段と、
前記冷却ガス吐出手段を前記基板の表面に沿って前記基板に対して相対移動させる相対移動機構とを備え、
前記冷却ガス吐出手段から冷却ガスを吐出させながら前記相対移動機構により前記冷却ガス吐出手段を前記基板に対して相対移動させて前記液膜を凍結させる請求項7ないし10のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−254965(P2009−254965A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106411(P2008−106411)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】