説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】金属膜が形成された基板においてパターンの倒壊を抑制すること。
【解決手段】水を含むリンス液が、金属膜が形成された基板に供給される(S2)。その後、水酸基を含まない第1溶剤が、基板に供給されることにより、基板に保持されている液体が第1溶剤に置換される(S4、S5)。その後、水酸基を含まない第2溶剤を含み金属を疎水化する疎水化剤が、基板に供給されることにより、基板に保持されている液体が疎水化剤に置換される(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板がたとえば一枚ずつ処理される。具体的には、薬液が基板に供給されることにより、基板の表面が薬液によって処理される。その後、純水が基板に供給されることにより、基板に付着している薬液が洗い流される。薬液が洗い流された後は、水よりも沸点が低いIPA(イソプロピルアルコール)が基板に供給され、基板に付着している純水がIPAに置換される。その後、基板が高速回転されることにより、基板に付着しているIPAが基板から除去され、基板が乾燥する。
【0003】
しかしながら、このような基板処理方法では、基板を乾燥させるときに、基板の表面に形成されたパターンが倒壊する場合がある。そのため、特許文献1では、パターンの倒壊を防止するために、基板の表面を疎水化させた後に乾燥させる方法が開示されている。具体的には、疎水化剤が基板に供給されることにより、基板の表面が疎水化される。その後、IPAが基板に供給され、基板に付着している疎水化剤がIPAに置換される。疎水化剤がIPAに置換された後は、純水が基板に供給されることにより、基板に付着しているIPAが、純水に置換される。その後、基板が高速回転されることにより、基板が乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4403202号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板の表面を十分に疎水化させれば、パターンの倒壊を抑制することができる。しかしながら、基板の表面が十分に疎水化されていない場合には、パターンの倒壊を抑制することができない。具体的には、たとえば、金属膜が形成された基板に疎水化剤としてのシリル化剤を供給したとしても、金属膜が疎水化されないので、基板を十分に疎水化させることができない。その一方で、金属を疎水化させるメタル系の疎水化剤を基板に供給すれば、金属膜が基板に形成されている場合であっても、この金属膜を疎水化させることができる。しかしながら、本願発明者の研究によると、メタル系の疎水化剤を用いた場合でも、基板を十分に疎水化できない場合があることが分かった。
【0006】
具体的には、メタル系の疎水化剤は、それ自体では安定しないので、他の溶剤(希釈溶剤)をメタル系の疎水化剤に混合させる必要がある。しかしながら、水酸基を含む溶剤をメタル系の疎水化剤に混合させると、メタル系の疎水化剤の能力(基板を疎水化させる能力)が低下してしまう。つまり、水酸基を含む溶剤がメタル系の疎水化剤に混合されている場合や、水酸基を含む溶剤が保持されている基板にメタル系の疎水化剤が供給された場合には、メタル系の疎水化剤は、その能力を十分に発揮することができない。
【0007】
さらに、メタル系の疎水化剤によって基板を疎水化したとしても、メタル系の疎水化剤を供給した後に水を含む液体または蒸気を基板に供給すると、基板に対する処理液の接触角が小さくなる。そのため、基板を乾燥させるときに、パターンに加わる力(パターンを倒壊させる力)が大きくなる。さらに、基板の表面に水が保持されている状態でこの基板の表面にメタル系の疎水化剤を供給したとしても、基板が十分に疎水化しない。すなわち、本願発明者は、金属膜が形成されている基板にメタル系の疎水化剤を供給したとしても、水の存在下では金属膜を十分に疎水化できないことを見出した。
【0008】
そこで、この発明の目的は、金属膜が形成された基板においてパターンの倒壊を抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、金属膜(M)が形成された基板(W)を処理する基板処理方法であって、水を含むリンス液を基板に供給するリンス液供給工程(S2)と、前記リンス液供給工程が行われた後に、水酸基を含まない第1溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換する第1溶剤供給工程(S4,S5)と、前記第1溶剤供給工程が行われた後に、水酸基を含まない第2溶剤を含み金属を疎水化する疎水化剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を疎水化剤に置換する疎水化剤供給工程(S6)と、を含む、基板処理方法である。基板に供給される疎水化剤は、疎水化剤の液体であってもよいし、疎水化剤の蒸気であってもよい。同様に、基板に供給される第1溶剤は、第1溶剤の液体であってもよいし、第1溶剤の蒸気であってもよい。疎水化剤の蒸気は、疎水化剤が気化したものであってもよいし、疎水化剤の液滴とこの液滴を運ぶキャリアガス(たとえば、窒素ガスなどの不活性ガス)とを含む混合流体であってもよい。第1溶剤の蒸気についても同様である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【0009】
この方法によれば、金属膜が形成された基板に水を含むリンス液が供給される。その後、水酸基を含まない第1溶剤が基板に供給され、基板に保持されている液体(リンス液またはリンス液を含む液体)が第1溶剤に置換される。これにより、基板からリンス液が除去される。そして、第1溶剤の供給が行われた後に、水酸基を含まない第2溶剤を含み金属を疎水化する疎水化剤が、基板に供給される。これにより、基板に保持されている液体(第1溶剤の液体)が疎水化剤に置換される。疎水化剤が基板に供給されるときに基板に保持されている液体は、第1溶剤の液体である。第1溶剤は水酸基を含まないので、疎水化剤と第1溶剤とが混ざり合うことにより、疎水化剤の能力(基板を疎水化させる能力)が低下することを抑制または防止することができる。さらに、水酸基を含まない第2溶剤が疎水化剤に含まれているので、疎水化剤を安定させることができると共に、疎水化剤の能力が低下することを抑制または防止することができる。しかも、疎水化剤が基板に供給される前に、第1溶剤の供給によって基板からリンス液が除去されているので、疎水化剤は、水が基板に残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、基板に供給される。したがって、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、基板を乾燥させたときにパターンが倒壊することを抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記リンス液供給工程が行われた後であって、前記第1溶剤供給工程が行われる前に、水に対する溶解度が第1溶剤よりも高い水溶性溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を水溶性溶剤に置換する水溶性溶剤供給工程(S3)をさらに含む、請求項1記載の基板処理方法である。第1溶剤は、水に溶ける溶剤であってもよいし、水に溶けない溶剤であってもよい。
【0011】
この方法によれば、水を含むリンス液が基板に供給された後に、水溶性溶剤および第1溶剤が、この順番で基板に順次供給される。リンス液が保持されている基板に水溶性溶剤が供給されることにより、基板に保持されているリンス液の大部分が水溶性溶剤によって押し流されて除去される。さらに、水溶性溶剤は、水に対する溶解度が第1溶剤よりも高いので、リンス液が水溶性溶剤に置換される過程で、基板に保持されているリンス液の一部は、水溶性溶剤に溶け込み、この水溶性溶剤と共に基板から除去される。そして、水溶性溶剤の供給後に第1溶剤が基板に供給されることにより、基板に保持されている水溶性溶剤が第1溶剤に置換される。基板に保持されている水溶性溶剤にリンス液が含まれている場合でも、このリンス液は、水溶性溶剤が第1溶剤に置換される過程で、水溶性溶剤と共に基板から除去される。これにより、基板に対する水の残留量を低減することができる。したがって、水が基板に残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、疎水化剤を基板に供給することができる。これにより、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記第1溶剤供給工程は、物理的な力(たとえば、振動や運動エネルギ)が加えられた第1溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換する物理的置換工程(S5)を含む、請求項1または2記載の基板処理方法である。
この方法によれば、物理的な力が加えられた第1溶剤が基板に供給される。基板に保持されている液体(リンス液またはリンス液を含む液体)は、第1溶剤が基板に沿って流れる力に加えて、第1溶剤に加えられた物理的な力によって基板から除去される。これにより、基板に対する水の残留量を低減することができる。したがって、水が基板に残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、疎水化剤を基板に供給することができる。これにより、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記第1溶剤供給工程は、前記物理的置換工程が行われる前に、第1溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換する置換工程(S4)をさらに含む、請求項3記載の基板処理方法である。
この方法によれば、リンス液が供給された基板に第1溶剤が供給される。その後、物理的な力が加えられた第1溶剤が基板に供給される。すなわち、最初の第1溶剤の供給によって基板に保持されている液体(リンス液またはリンス液を含む液体)が除去された後に、物理的な力が加えられた第1溶剤が基板に供給される。そのため、最初の第1溶剤の供給後に極僅かなリンス液が基板に残留していたとしても、物理的な力が加えられた第1溶剤の供給によって、この僅かに残っているリンス液を基板から除去することができる。したがって、水が基板に残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、疎水化剤を基板に供給することができる。これにより、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記物理的置換工程は、振動が加えられた第1溶剤を基板に供給する工程(S5)と、運動エネルギが与えられた第1溶剤の液滴を基板に衝突させる工程とのうちの少なくとも一方を含む、請求項3または4記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板に保持されている液体(リンス液またはリンス液を含む液体)は、第1溶剤が基板に沿って流れる力に加えて、第1溶剤の振動および/または第1溶剤の運動エネルギによって基板から除去される。これにより、基板に対する水の残留量を低減することができる。したがって、水が基板に残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、疎水化剤を基板に供給することができる。これにより、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記疎水化剤供給工程が行われた後に、基板から液体を除去して基板を乾燥させる乾燥工程(S8)と、前記疎水化剤供給工程が終了してから前記乾燥工程が終了するまで基板が水に接触しない状態を維持する非接触状態維持工程(S7)と、をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、疎水化剤が基板に供給された後に、基板から液体が除去される。これにより、基板が乾燥する。そして、疎水化剤の供給が終了してから基板の乾燥が終了するまでの間、基板に対する水の接触が防止される。すなわち、疎水化剤の供給が終了してから基板の乾燥が終了するまでの間、水を含む液体または蒸気が基板に供給されない。したがって、疎水化剤が供給された基板に対する水の接触により、基板に対する処理液の接触角が減少することを抑制または防止することができる。これにより、基板を乾燥させるときに、パターンに加わる力(パターンを倒壊させる力)が大きくなることを抑制または防止することができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0016】
請求項7記載の発明は、前記非接触状態維持工程は、前記疎水化剤供給工程が行われた後であって、前記乾燥工程が行われる前に、水を含まず、水よりも沸点が低い乾燥剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を乾燥剤に置換する乾燥剤供給工程(S7)を含む、請求項6記載の基板処理方法である。
この方法によれば、疎水化剤が基板に供給された後に、乾燥剤が基板に供給される。これにより、基板に保持されている液体が乾燥剤に置換される。その後、乾燥剤が基板から除去され、基板が乾燥する。乾燥剤は、水を含んでいないから、疎水化剤が供給された基板に乾燥剤が接触することにより、基板に対する処理液の接触角が減少することを抑制または防止することができる。したがって、基板を乾燥させたときに、パターンが倒壊することを抑制または防止することができる。さらに、乾燥剤は、水よりも沸点が低いから、乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0017】
請求項8記載の発明は、前記疎水化剤供給工程は、基板に供給される疎水化剤の原液が貯留されている疎水化剤タンク(28)から当該基板に至る疎水化剤の流通経路(16、17、30、38)で第2溶剤と疎水化剤の原液とを混合し、この混合された第2溶剤と疎水化剤の原液とを当該基板に供給する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理方法である。「疎水化剤の原液」とは、第2溶剤と混合される前の液体を意味する。すなわち、「疎水化剤の原液」とは、予め希釈液(たとえば、第2溶剤)で希釈された液であってもよいし、複数の液体の混合物であってもよい。
【0018】
この方法によれば、第2溶剤と疎水化剤の原液とが基板に供給される直前で混合される。そして、この混合された第2溶剤と疎水化剤の原液との混合液(疎水化剤)が基板に供給される。基板に供給される直前で第2溶剤と疎水化剤の原液とが混合されるので、疎水化剤が希釈されることにより、疎水化剤の活性が時間の経過と共に低下する場合であっても、活性が低下していない、または活性が殆ど低下していない疎水化剤を基板に供給することができる。これにより、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0019】
請求項9記載の発明は、第1溶剤と第2溶剤とは、同種の溶剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、第2溶剤と同種の溶剤である第1溶剤が保持された基板に、第2溶剤を含む疎水化剤が供給される。したがって、第1溶剤と疎水化剤とがスムーズに混ざり合い、基板に保持されている第1溶剤がスムーズに疎水化剤に置換される。これにより、第1溶剤から疎水化剤への置換に要する時間を短縮することができる。
【0020】
請求項10記載の発明は、有底筒状の凹部(S)が基板に形成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法である。前記凹部は、たとえば、DRAM(dynamic random access memory)に設けられるキャパシタの電極を構成するシリンダであってもよいし、配線層の間を接続するビアホール(via hole)を含んでいてもよい。
この方法によれば、凹部が形成された基板にリンス液が供給される。凹部は、有底筒状であるから、凹部の底にリンス液が残り易い。したがって、疎水化剤が基板に供給される前に、第1溶剤等を基板に供給することにより、凹部の底に溜まっているリンス液を除去して、水が基板に残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、疎水化剤を基板に供給することができる。これにより、基板を十分に疎水化させることができる。そのため、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0021】
請求項11記載の発明は、基板を保持する基板保持手段(2)と、水を含むリンス液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給するリンス液供給手段(16)と、水酸基を含まない第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する第1溶剤供給手段(12、16)と、水酸基を含まない第2溶剤を含み金属を疎水化する疎水化剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する疎水化剤供給手段(16)と、前記リンス液供給手段によってリンス液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させるリンス液供給工程と、前記リンス液供給工程が行われた後に、前記第1溶剤供給手段によって第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換させる第1溶剤供給工程と、前記第1溶剤供給工程が行われた後に、前記疎水化剤供給手段によって疎水化剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を疎水化剤に置換させる疎水化剤供給工程と、を実行する制御手段(27)と、を含む、基板処理装置(1)である。この方法によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0022】
請求項12記載の発明は、水に対する溶解度が第1溶剤よりも高い水溶性溶剤を基板に供給する水溶性溶剤供給手段(16)をさらに含み、前記制御手段は、前記リンス液供給工程が行われた後であって、前記第1溶剤供給工程が行われる前に、前記水溶性溶剤供給手段によって水溶性溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を水溶性溶剤に置換させる水溶性溶剤供給工程をさらに実行する、請求項11記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項2の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0023】
請求項13記載の発明は、前記第1溶剤供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に供給される第1溶剤に物理的な力を加える物理力付与手段(15、239)をさらに含み、前記制御手段は、前記物理力付与手段によって物理的な力が加えられた第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換させる物理的置換工程を含む前記第1溶剤供給工程を実行する、請求項11または12記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項3の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0024】
請求項14記載の発明は、前記制御手段は、前記物理的置換工程が行われる前に、前記第1溶剤供給手段によって第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換させる置換工程をさらに含む前記第1溶剤供給工程を実行する、請求項13記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項4の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0025】
請求項15記載の発明は、前記物理力付与手段は、前記第1溶剤供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に供給される第1溶剤に振動を加える振動付与手段(15)と、前記第1溶剤供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に供給される第1溶剤に運動エネルギを与えて第1溶剤の液滴を生成する液滴生成手段(239)とのうちの少なくとも一方を含む、請求項13または14記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項5の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0026】
請求項16記載の発明は、前記基板保持手段に保持されている基板から液体を除去して基板を乾燥させる乾燥手段(6)と、前記基板保持手段に保持されている基板が水に接触しない状態を維持する非接触状態維持手段(16)と、をさらに含み、前記制御手段は、前記疎水化剤供給工程が行われた後に、前記基板保持手段に保持されている基板から前記乾燥手段によって液体を除去させて基板を乾燥させる乾燥工程と、前記非接触状態維持手段によって前記疎水化剤供給工程が終了してから前記乾燥工程が終了するまで基板が水に接触しない状態を維持させる非接触状態維持工程と、をさらに実行する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項6の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0027】
請求項17記載の発明は、前記非接触状態維持手段は、水を含まず、水よりも沸点が低い乾燥剤を基板に供給する乾燥剤供給手段(16)を含み、前記制御手段は、前記疎水化剤供給工程が行われた後であって、前記乾燥工程が行われる前に、前記乾燥剤供給手段によって乾燥剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を乾燥剤に置換させる乾燥剤供給工程を含む前記非接触状態維持工程を実行する、請求項16記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項7の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0028】
請求項18記載の発明は、前記疎水化剤供給手段は、前記基板保持手段に保持されている基板に供給される疎水化剤の原液が貯留されている疎水化剤タンク(28)と、前記疎水化剤タンクから前記基板保持手段に保持されている基板に至る疎水化剤の流通経路(16、17、30、38)に供給される第2溶剤が貯留されている第2溶剤タンク(29)と、を含み、前記疎水化剤タンクに貯留されている疎水化剤の原液と前記第2溶剤タンクに貯留されている第2溶剤とを前記流通経路で混合させて、この混合された第2溶剤と疎水化剤の原液とを前記基板保持手段に保持されている基板に供給するように構成されている、請求項11〜17のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この方法によれば、請求項8の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る疎水化剤供給ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板処理装置によって基板を処理するときの処理例について説明するための工程図である。
【図6】パターンに加わる力について説明するための模式的な基板の断面図である。
【図7】疎水化剤によって疎水化された基板に純水が供給される前後での基板に対する処理液の接触角を示すグラフである。
【図8】疎水化剤によって疎水化された基板に純水またはIPAを供給した後に当該基板を乾燥させたときのパターンの倒壊率を示すグラフである。
【図9】従来の処理方法によって基板を処理したときのパターンの倒壊率と、図5の処理例によって基板を処理したときのパターンの倒壊率を示すグラフである。
【図10】本発明の他の実施形態に係る液滴生成ノズルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式図であり、それぞれ異なる状態を示している。
基板処理装置1は、薬液やリンス液などの処理液によって半導体ウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック2(基板保持手段)と、スピンチャック2の上方に配置された遮断板3と、スピンチャック2に保持された基板Wに処理液を供給する処理液供給機構とを備えている。
【0031】
スピンチャック2は、たとえば、基板Wを挟持して保持する挟持式のチャックである。スピンチャック2は、たとえば、水平に配置された円盤状のスピンベース4と、スピンベース4上に配置された複数個の挟持部材5と、スピンベース4に連結されたスピンモータ6(乾燥手段)とを含む。スピンチャック2は、各挟持部材5を基板Wの周端面に接触させることにより、基板Wを周囲から挟むことができる。さらに、スピンチャック2は、基板Wを保持した状態でスピンモータ6の駆動力をスピンベース4に入力することにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線まわりに基板Wを回転させることができる。スピンチャック2は、挟持式のチャックに限らず、基板Wの下面(裏面)を吸着して保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0032】
遮断板3は、たとえば、円板状である。遮断板3の直径は、たとえば、基板Wの直径とほぼ同じ、または基板Wの直径よりもやや大きい。遮断板3は、遮断板3の下面が水平になるように配置されている。さらに、遮断板3は、遮断板3の中心軸線がスピンチャック2の回転軸線上に位置するように配置されている。遮断板3の下面は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に対向している。遮断板3は、水平な姿勢で支軸7の下端に連結されている。遮断板3および支軸7は、遮断板昇降機構8によって、鉛直方向に昇降される。遮断板昇降機構8は、遮断板3の下面がスピンチャック2に保持された基板Wの上面に近接する処理位置(図2に示す位置)と、処理位置の上方に設けられた退避位置(図1に示す位置)との間で遮断板3を昇降させる。
【0033】
また、処理液供給機構は、薬液ノズル9と、薬液供給配管10と、薬液バルブ11とを含む。薬液供給配管10は、薬液ノズル9に接続されている。薬液バルブ11は、薬液供給配管10に介装されている。薬液バルブ11が開かれると、薬液供給配管10から薬液ノズル9に薬液が供給される。また、薬液バルブ11が閉じられると、薬液供給配管10から薬液ノズル9への薬液の供給が停止される。薬液ノズル9は、ノズル移動機構(図示せず)に連結されている。ノズル移動機構は、スピンチャック2の上方に設けられた処理位置(図1に示す位置)と、薬液ノズル9がスピンチャック2の上方から退避する退避位置(図2に示す位置)との間で薬液ノズル9を移動させる。処理位置は、薬液ノズル9から吐出された薬液がスピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給されるように設定されている(図1参照)。
【0034】
また、処理液供給機構は、溶剤ノズル12(第1溶剤供給手段)と、第1溶剤供給配管13と、第1溶剤バルブ14と、超音波振動子15(物理力付与手段、振動付与手段)とを含む。第1溶剤供給配管13は、溶剤ノズル12に接続されている。第1溶剤バルブ14は、第1溶剤供給配管13に介装されている。第1溶剤バルブ14が開かれると、第1溶剤供給配管13から溶剤ノズル12に第1溶剤(液体)が供給される。また、第1溶剤バルブ14が閉じられると、第1溶剤供給配管13から溶剤ノズル12への第1溶剤の供給が停止される。超音波振動子15の振動は、溶剤ノズル12から吐出される第1溶剤に与えられる。溶剤ノズル12は、ノズル移動機構(図示せず)に連結されている。ノズル移動機構は、スピンチャック2の上方に設けられた処理位置と、溶剤ノズル12がスピンチャック2の上方から退避する退避位置(図1および図2に示す位置)との間で溶剤ノズル12を移動させる。処理位置は、溶剤ノズル12から吐出された第1溶剤がスピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給されるように設定されている。
【0035】
また、処理液供給機構は、中心軸ノズル16(リンス液供給手段、第1溶剤供給手段、疎水化剤供給手段、水溶性溶剤供給手段、非接触状態維持手段、乾燥剤供給手段)と、処理液供給配管17とを含む。中心軸ノズル16は、遮断板3の中心軸線に沿って配置されている。中心軸ノズル16は、支軸7の内部で上下に延びている。中心軸ノズル16は、遮断板3および支軸7と共に昇降する。処理液供給配管17は、遮断板3の上方で中心軸ノズル16に接続されている。処理液供給配管17から中心軸ノズル16には、たとえば、疎水化剤、第1溶剤、水溶性溶剤、乾燥剤、およびリンス液などの処理液が供給される。中心軸ノズル16に供給された処理液は、中心軸ノズル16の下端に設けられた吐出口から下方に吐出される。そして、図2に示すように、中心軸ノズル16から吐出された処理液は、遮断板3の中央部を上下に貫通する貫通孔(図示せず)を通って、遮断板3の下面中央部から下方に吐出される。これにより、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に処理液が供給される。
【0036】
処理液供給機構は、疎水化剤供給ユニット18と、第2溶剤バルブ19が介装された第2溶剤供給配管20と、水溶性溶剤バルブ21が介装された水溶性溶剤供給配管22と、乾燥剤バルブ23が介装された乾燥剤供給配管24と、リンス液バルブ25が介装されたリンス液供給配管26とを含む。処理液供給配管17は、疎水化剤供給ユニット18、第2溶剤供給配管20、リンス液供給配管26、および乾燥剤供給配管24に接続されている。疎水化剤供給ユニット18から処理液供給配管17には、疎水化剤(液体)が供給される。また、第2溶剤バルブ19が開かれると、第1溶剤(液体)が、第2溶剤供給配管20から処理液供給配管17に供給される。また、水溶性溶剤バルブ21が開かれると、水溶性溶剤(液体)が、水溶性溶剤供給配管22から処理液供給配管17に供給される。また、乾燥剤バルブ23が開かれると、乾燥剤(液体)が、乾燥剤供給配管24から処理液供給配管17に供給される。また、リンス液バルブ25が開かれると、リンス液(図1および図2では、純水)が、リンス液供給配管26から処理液供給配管17に供給される。
【0037】
リンス液は、水を含む液体である。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(deionized water))、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれであってもよい。
疎水化剤は、金属を疎水化するメタル系の疎水化剤である。疎水化剤は、配位性の高い疎水化剤である。すなわち、疎水化剤は、主として配位結合によって金属を疎水化する溶剤である。疎水化剤は、たとえば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物の少なくとも一つを含む。
【0038】
第1溶剤は、水酸基を含まない溶剤である。すなわち、第1溶剤は、水酸基を含まない化合物からなる溶剤である。第1溶剤は、疎水化剤を溶解可能である。第1溶剤は、水を含んでおらず、水よりも表面張力が低いことが好ましい。第1溶剤は、ケトン類の溶剤、またはエーテル類の溶剤である。第1溶剤の具体例としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)や、アセトンが挙げられる。ケトン類またはエーテル類の溶剤は、疎水化剤の溶解度が高く、疎水化剤をケトン類またはエーテル類の溶剤に混合すると、疎水化剤は、ケトン類またはエーテル類の溶剤に十分に分散する。その一方で、アルコール類の溶剤は、疎水化剤の溶解度が低いため、疎水化剤をアルコール類の溶剤に混合させたとしても、疎水化剤は、アルコール類の溶剤に十分に分散しない。
【0039】
水溶性溶剤は、水を溶解可能である。水溶性溶剤は、水を含んでいてもよい。水溶性溶剤は、第1溶剤および第2溶剤よりも水に対する溶解度が高い。言い換えると、水溶性溶剤は、第1溶剤および第2溶剤よりも水溶性が高い。第1溶剤は、水溶性溶剤を溶解可能である。水溶性溶剤の具体例としては、アルコールや、PGMEAや、EGMEA(エチレングリコールモノメチルエーテル)や、フッ素系溶剤とアルコールの混合液が挙げられる。アルコールは、たとえば、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、およびIPAの少なくとも一つを含む。フッ素系溶剤は、たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の少なくとも一つを含む。
【0040】
乾燥剤は、水を含んでいない溶剤である。乾燥剤は、水よりも沸点が低い。さらに、乾燥剤は、疎水化剤を溶解可能である。乾燥剤は、水よりも表面張力が低いことが好ましい。乾燥剤の具体例としては、アルコールや、フッ素系溶剤とアルコールの混合液が挙げられる。
図3は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0041】
図3に示すように、基板処理装置1は、制御装置27(制御手段)を備えている。スピンモータ6、遮断板昇降機構8、および疎水化剤供給ユニット18は、制御装置27によって制御される。また、基板処理装置1に備えられた各バルブの開閉は、制御装置27によって制御される。図1に示すように、制御装置27は、スピンチャック2によって基板Wを回転させた状態で、薬液ノズル9または溶剤ノズル12を処理位置に位置させ、薬液ノズル9または溶剤ノズル12から処理液を吐出させる(図1では、薬液ノズル9から処理液が吐出されている状態が示されている)。薬液ノズル9または溶剤ノズル12から吐出された処理液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給される。そして、基板Wの上面中央部に供給された処理液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に処理液が供給され、基板Wが処理液によって処理される。
【0042】
一方、図2に示すように、制御装置27は、スピンチャック2によって基板Wを回転させた状態で、遮断板3を処理位置に位置させ、中心軸ノズル16から処理液を吐出させる。中心軸ノズル16から吐出された処理液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給される。そして、基板Wの上面中央部に供給された処理液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に処理液が供給され、基板Wが処理液によって処理される。また、遮断板3の下面が基板Wの上面に近接した状態で基板Wに処理液が供給されるので、基板Wの周囲に振り切られた処理液が跳ね返って基板Wに付着することが抑制または防止される。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係る疎水化剤供給ユニット18の概略構成を示す模式図である。
疎水化剤供給ユニット18は、疎水化剤の原液が貯留されている疎水化剤タンク28と、希釈溶剤としての第2溶剤(液体)が貯留されている第2溶剤タンク29とを含む。さらに、疎水化剤供給ユニット18は、疎水化剤タンク28に接続された第1配管30と、第2溶剤タンク29に接続された第2配管31と、第1配管30に介装された第1ポンプ32、第1バルブ33、および第1流量調整バルブ34と、第2配管31に介装された第2ポンプ35、第2バルブ36、および第2流量調整バルブ37と、第1配管30および第2配管31に接続された集合配管38とを含む。疎水化剤タンク28には、100%の疎水化剤と第2溶剤との混合液(原液)が貯留されている。
【0044】
疎水化剤タンク28に貯留されている疎水化剤の原液は、第1ポンプ32の吸引力によって第1配管30に吸い込まれる。同様に、第2溶剤タンク29に貯留されている第2溶剤は、第2ポンプ35の吸引力によって第2配管31に吸い込まれる。疎水化剤タンク28に貯留されている疎水化剤の原液は、疎水化剤タンク28内に気体を供給して、疎水化剤タンク28内の気圧を上昇させることにより、第1配管30に供給されてもよい。第2溶剤タンク29に貯留されている第2溶剤についても同様である。集合配管38は、処理液供給配管17に接続されている(図1および図2参照)。第1流量調整バルブ34および第2流量調整バルブ37の開度は、制御装置27によって制御される。制御装置27は、疎水化剤の原液と第2溶剤とがたとえば一定の割合で集合配管38に供給されるように、第1流量調整バルブ34および第2流量調整バルブ37の開度を制御する。したがって、処理液供給配管17には一定濃度の疎水化剤(疎水化剤の原液と第2溶剤との混合液)が供給される。
【0045】
第2溶剤は、水酸基を含まない溶剤である。すなわち、第2溶剤は、水酸基を含まない化合物からなる溶剤である。第2溶剤は、疎水化剤を溶解可能である。第2溶剤は、水を含んでおらず、水よりも表面張力が低いことが好ましい。第2溶剤は、ケトン類の溶剤、またはエーテル類の溶剤である。第2溶剤の具体例としては、PGMEAや、アセトンが挙げられる。第2溶剤は、第1溶剤と同種の溶剤であってもよいし、第1溶剤とは異なる種類の溶剤であってもよい。
【0046】
制御装置27が、第1バルブ33を開くと、疎水化剤タンク28に貯留されている疎水化剤の原液が、第1流量調整バルブ34の開度に応じた流量で集合配管38に供給される。同様に、制御装置27が、第2バルブ36を開くと、第2溶剤タンク29に貯留された第2溶剤が、第2流量調整バルブ37の開度に応じた流量で集合配管38に供給される。これにより、疎水化剤の原液と第2溶剤とが、集合配管38内で混合される。そのため、疎水化剤の原液が第2溶剤に溶解し、疎水化剤の原液が希釈される。そして、希釈された疎水化剤の原液、すなわち、疎水化剤が、集合配管38から処理液供給配管17に供給され、中心軸ノズル16から吐出される。つまり、疎水化剤タンク28からスピンチャック2に保持されている基板Wに至る疎水化剤の流通経路で、疎水化剤の原液と第2溶剤とが混合され、この混合された疎水化剤の原液と第2溶剤とが基板Wに供給される。したがって、第1配管30、集合配管38、処理液供給配管17、および中心軸ノズル16は、疎水化剤の流通経路の一部を構成している。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1によって基板Wを処理するときの処理例について説明するための工程図である。以下では、デバイス形成面である表面にパターンP(図6参照)が形成された基板Wを処理するときの処理例について説明する。パターンPは、たとえば、金属膜Mによって形成された複数のシリンダS(凹部)を含む(図6参照)。シリンダSは、DRAM(dynamic random access memory)に設けられるキャパシタの電極を構成している。シリンダSは、基板Wの厚み方向に凹む有底筒状の凹部を形成している。以下の説明における「基板Wの上面(表面)」は、基板W自体の上面(表面)およびパターンPの表面を含む。
【0048】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって搬送され、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック2上に載置される。そして、制御装置27は、スピンチャック2によって基板Wを保持させる。基板Wがスピンチャック2上に搬送されるとき、制御装置27は、搬送ロボットおよび基板Wが、薬液ノズル9、溶剤ノズル12、および遮断板3に衝突することを防止するために、薬液ノズル9、溶剤ノズル12、および遮断板3をそれぞれの退避位置に位置させている。
【0049】
次に、薬液を基板Wに供給する薬液処理が行われる(S1)。具体的には、制御装置27は、遮断板3を退避位置に位置させた状態で、薬液ノズル9を退避位置から処理位置に移動させる。また、制御装置27は、スピンモータ6を制御して、スピンチャック2に保持されている基板Wを回転させる。そして、制御装置27は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、薬液バルブ11を開いて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液を吐出させる。これにより、基板Wの上面全域に薬液が供給され、基板Wが薬液によって処理される(薬液処理)。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、薬液バルブ11を閉じて薬液の吐出を停止させる。その後、制御装置27は、薬液ノズル9を退避位置に移動させる。
【0050】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wに供給する水リンス処理(リンス液供給工程)が行われる(S2)。具体的には、制御装置27は、遮断板昇降機構8を制御して、薬液ノズル9を退避位置に位置させた状態で、遮断板3を退避位置から処理位置に移動させる。そして、制御装置27は、リンス液バルブ25を開いて、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、中心軸ノズル16から基板Wの上面中央部に向けて純水を吐出させる。これにより、基板Wに保持されている薬液が純水に置換され、基板Wの上面全域に純水が供給される。このようにして、基板Wに付着している薬液が純水によって洗い流される(水リンス処理)。そして、水リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、リンス液バルブ25を閉じて純水の吐出を停止させる。
【0051】
次に、水溶性溶剤の一例であるIPAを基板Wに供給する第1溶剤リンス処理(水溶性溶剤供給工程)が行われる(S3)。具体的には、制御装置27は、遮断板3を処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、水溶性溶剤バルブ21を開いて、中心軸ノズル16から基板Wの上面中央部に向けてIPAを吐出させる。これにより、中心軸ノズル16から吐出されたIPAが、基板Wの上面全域に供給される。したがって、基板Wに保持されている純水の大部分は、IPAによって洗い流される。また、IPAは、水を溶解可能であるから、基板Wに保持されている純水の一部は、IPAに溶け込み、IPAと共に基板Wから除去される(排出される)。これにより、基板Wから純水が除去され、基板Wに保持されている純水が、IPAに置換される(第1溶剤リンス処理)。そして、第1溶剤リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、水溶性溶剤バルブ21を閉じてIPAの吐出を停止させる。第1溶剤リンス処理が行われることにより、基板Wから水が除去され、基板Wに対する水の残留量が低減される。
【0052】
次に、第1溶剤の一例であるPGMEAを基板Wに供給する第2溶剤リンス処理(第1溶剤供給工程、置換工程)が行われる(S4)。具体的には、制御装置27は、遮断板3を処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第2溶剤バルブ19を開いて、中心軸ノズル16から基板Wの上面中央部に向けてPGMEAを吐出させる。これにより、中心軸ノズル16から吐出されたPGMEAが、基板Wの上面全域に供給される。前述のように、第1溶剤は、水溶性溶剤を溶解可能であるから、基板Wに保持されているIPAは、基板Wに供給されたPGMEAに溶け込みながら、PGMEAと共に基板Wから除去される(排出される)。したがって、PGMEAが供給されることにより、基板Wに保持されているIPAが、PGMEAによって洗い流されてPGMEAに置換される(第2溶剤リンス処理)。そして、第2溶剤リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、第2溶剤バルブ19を閉じてPGMEAの吐出を停止させる。第1溶剤リンス処理が行われた後に基板Wに純水が残留していたり、基板Wに保持されているIPAに純水が溶け込んでいたとしても、この第2溶剤リンス処理が行われることにより、基板Wに対する水の残留量が一層低減される。
【0053】
次に、第1溶剤の一例であるPGMEAに振動を付与し、この振動が付与されたPGMEAを基板Wに供給する第3溶剤リンス処理(第1溶剤供給工程、物理的置換工程)が行われる(S5)。具体的には、制御装置27は、遮断板昇降機構8を制御して、遮断板3を処理位置から退避位置に移動させる。その後、制御装置27は、溶剤ノズル12を退避位置から処理位置に移動させる。そして、制御装置27は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第1溶剤バルブ14を開いて、溶剤ノズル12から基板Wの上面中央部に向けてPGMEAを吐出させる。これにより、超音波振動子15からの振動が付与されたPGMEAが基板Wの上面全域に供給され、基板Wに保持されているPGMEAが、溶剤ノズル12から吐出されたPGMEAによって置換される(第3溶剤リンス処理)。基板Wに供給されたPGMEAに振動が付与されているから、基板W(たとえば、シリンダSの底部。図6参照)に純水が残っていたとしても、この純水は、PGMEAの振動によって撹拌されて、PGMEAと共に基板Wから除去される。これにより、基板Wから純水が除去される。そして、第3溶剤リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、第1溶剤バルブ14を閉じてPGMEAの吐出を停止させる。このように、第3溶剤リンス処理が行われることにより、基板Wに対する水の残留量が一層低減される。
【0054】
次に、疎水化剤(液体)を基板Wに供給して、基板Wを疎水化させる疎水化処理(疎水化剤供給工程)が行われる(S6)。具体的には、制御装置27は、溶剤ノズル12を処理位置から退避位置に移動させる。その後、制御装置27は、遮断板昇降機構8を制御して、遮断板3を退避位置から処理位置に移動させる。そして、制御装置27は、疎水化剤供給ユニット18を制御することにより、遮断板3を処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、中心軸ノズル16から基板Wの上面中央部に向けて疎水化剤を吐出させる。これにより、疎水化剤が基板Wの上面全域に供給される。疎水化剤は、第1溶剤を溶解可能であるから、基板Wの上面全域に疎水化剤が供給されることにより、基板Wに保持されているPGMEAが、疎水化剤に置換される。これにより、疎水化剤がパターンPの内部にまで入り込んで、基板Wの上面が疎水化される(疎水化処理)。そして、疎水化処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、疎水化剤供給ユニット18を制御して疎水化剤の吐出を停止させる。
【0055】
次に、乾燥剤の一例であるIPAを基板Wに供給する第4溶剤リンス処理(非接触状態維持工程、乾燥剤供給工程)が行われる(S7)。具体的には、制御装置27は、遮断板3を処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、乾燥剤バルブ23を開いて、中心軸ノズル16から基板Wの上面中央部に向けて溶剤を吐出させる。これにより、中心軸ノズル16から吐出されたIPAが、基板Wの上面全域に供給される。したがって、基板Wに保持されている疎水化剤の大部分は、IPAによって洗い流される。また、IPAは、疎水化剤を溶解可能であるから、基板Wに残留している疎水化剤は、IPAに溶け込み、IPAと共に基板Wから除去される(排出される)。これにより、基板Wから疎水化剤が除去され、基板Wに保持されている疎水化剤が、IPAに置換される(第4溶剤リンス処理)。そして、第4溶剤リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御装置27は、乾燥剤バルブ23を閉じてIPAの吐出を停止させる。
【0056】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(乾燥工程)が行われる(S8)。具体的には、制御装置27は、スピンモータ6を制御して、遮断板3を処理位置に位置させた状態で、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着しているIPAに大きな遠心力が作用して、IPAが基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、IPAが基板Wから除去され、基板Wが乾燥する(乾燥処理)。そして、乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御装置27は、スピンモータ6を制御して、スピンチャック2による基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置27は、遮断板昇降機構8を制御して、遮断板3を処理位置から退避位置に移動させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットによってスピンチャック2から搬出される。
【0057】
図6は、パターンPに加わる力について説明するための模式的な基板Wの断面図である。
パターンPが形成された基板Wを乾燥させると、基板Wが乾燥していく過程でパターンP同士を引き付ける力が生じて、パターンPが倒壊する場合がある。このときパターンPに加わる力Fは、たとえば、以下の式(1)により表される。
【0058】
F=(2×σ×Hcosθ)/W・・・(式1)
「σ」は、処理液の表面張力であり、「θ」は、接触角であり、「H」は、パターンPの高さであり、「W」は、パターンP間の間隔である。
この式(1)から、処理液の表面張力σが小さいほどパターンPに加わる力Fが減少することが分かる。したがって、処理液の表面張力σを低下させることにより、パターンPに加わる力Fを減少させて、パターンPの倒壊を抑制できる。
【0059】
また、式(1)から、接触角θが90度に近づくほどパターンPに加わる力Fが減少することが分かる。したがって、基板Wの表面を疎水化させて接触角θを90度に近づけることにより、パターンPの倒壊を抑制することができる。
すなわち、基板Wを乾燥させる前に基板Wに保持されている処理液の表面張力σを低下させ、さらに、接触角θを90度に近づけることにより、パターンPの倒壊を抑制することができる。したがって、パターンPの倒壊を十分に抑制するために、基板Wの表面全体を十分に疎水化させることが好ましい。
【0060】
図7は、疎水化剤によって疎水化された基板Wに純水が供給される前後での基板Wに対する処理液の接触角を示すグラフである。図8は、疎水化剤によって疎水化された基板Wに純水またはIPAを供給した後に当該基板Wを乾燥させたときのパターンPの倒壊率を示すグラフである。図8における比較例の倒壊率は、図5の処理例の第4溶剤リンス処理において、乾燥剤の代わりに純水を用いたときの値である。一方、図8における実施例の倒壊率は、図5の処理例の第4溶剤リンス処理において、乾燥剤の一例であるIPAを用いたときの値である。
【0061】
図7に示す2つの接触角を比較すると分かるように、疎水化剤(メタル系の疎水化剤)によって疎水化された基板Wに純水を供給すると、基板Wに対する処理液の接触角が減少してしまう。前述のように、接触角θが0度に近づくとパターンPに加わる力が増加する。したがって、図8に示すように、疎水化剤によって疎水化された基板Wに純水を供給し、その後当該基板Wを乾燥させた場合(比較例)、乾燥剤の一例であるIPAを供給した場合(実施例)に比べて、パターンPの倒壊率が極めて大きい。言い換えると、疎水化剤によって疎水化された基板Wに乾燥剤を供給し、その後当該基板Wを乾燥させることにより、純水を供給した場合に比べて、パターンPの倒壊率を大幅に低下させることができる。さらに、IPAは純水よりも表面張力が小さいので、純水が保持された基板Wを乾燥させた場合に比べて、パターンPの倒壊率が大幅に低減されている。
【0062】
図9は、従来の基板処理方法によって基板Wを処理したときのパターンPの倒壊率と、図5の処理例によって基板Wを処理したときのパターンPの倒壊率を示すグラフである。すなわち、図9における比較例の倒壊率は、薬液、純水、およびIPAを基板Wに順次供給した後に当該基板Wを乾燥させたときの値である。一方、図9における実施例の倒壊率は、図5の一連の処理を行ったときの値である。図9における比較例に示すように、従来の基板処理方法では、基板Wが疎水化されておらずパターンPに加わる力が大きいので、倒壊率が高い(約60%)。一方、図9における実施例に示すように、基板Wが十分に疎水化されている場合には、パターンPに加わる力が小さいので、倒壊率が低い(約5%)したがって、図5の一連の処理を行うことにより、従来の基板処理方法に比べて、パターンPの倒壊率を大幅に低減することができる。
【0063】
以上のように本実施形態では、水を含むリンス液が基板Wに供給された後に、水溶性溶剤および第1溶剤が、この順番で基板Wに順次供給される。その後、振動が加えられた第1溶剤が基板Wに供給される。水溶性溶剤が供給されることにより、基板Wに保持されているリンス液が水溶性溶剤に溶け込みながら基板Wから除去される。また、水溶性溶剤が供給された後に第1溶剤が供給されるので、基板Wにリンス液が残留していたとしても、このリンス液は、水溶性溶剤が第1溶剤に置換される過程で、水溶性溶剤と共に基板Wから除去される。さらに、最初に第1溶剤が供給された後に振動が加えられた第1溶剤が供給されるので、基板Wにリンス液が残留していたとしても、このリンス液は、第1溶剤が基板Wに沿って流れる力に加えて、第1溶剤の振動によって基板Wから除去される。有底筒状の凹部が基板Wに形成されている場合には、基板W(特に、凹部の底)にリンス液が残り易い。しかし、このように水溶性溶剤および第1溶剤を基板Wに供給することにより、凹部の底からもリンス液を除去することができる。これにより、基板Wに対する水の残留量を極めて減少させることができる。
【0064】
疎水化剤は、基板Wへの水溶性溶剤および第1溶剤の供給が行われた後に基板Wに供給される。したがって、疎水化剤は、リンス液が基板Wに残っていない状態、または水の残留量が極めて少ない状態で、基板Wに供給される。そのため、水との接触によって、疎水化剤の能力(基板Wを疎水化させる能力)が低下することを抑制または防止することができる。さらに、疎水化剤は、水酸基を含まない第1溶剤が保持されている基板Wに供給されるので、第1溶剤との接触によって疎水化剤の能力が低下することを抑制または防止することができる。さらにまた、水酸基を含まない第2溶剤が疎水化剤に含まれているので、疎水化剤を安定させることができると共に、疎水化剤の能力が低下することを抑制または防止することができる。したがって、疎水化剤を基板Wに供給することにより、基板Wを十分に疎水化させることができる。すなわち、基板Wに対する処理液の接触角を90度に近づけて、パターンPの倒壊を抑制することができる。しかも、前述の処理例では、疎水化剤に含まれている第2溶剤が第1溶剤と同種の溶剤であるので、両者の親和性が高い。したがって、基板Wに保持されている第1溶剤は、疎水化剤にスムーズに置換される。これにより、第1溶剤から疎水化剤への置換に要する時間を短縮することができる。
【0065】
また本実施形態では、疎水化剤が基板Wに供給された後に、乾燥剤が基板Wに供給される。その後、乾燥剤が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。疎水化剤の供給が終了してから基板Wの乾燥が終了するまで、基板Wに対する水の接触が防止される。すなわち、疎水化剤の供給が終了してから基板Wの乾燥が終了するまで、水を含む液体または蒸気が基板Wに供給されない。したがって、疎水化剤が供給された基板Wに対する水の接触により、基板Wに対する処理液の接触角が減少することを抑制または防止することができる。これにより、基板Wを乾燥させるときに、パターンPを倒壊させる力が大きくなることを抑制または防止することができる。そのため、パターンPの倒壊を抑制することができる。さらに、乾燥剤は、水より表面張力が小さいので、パターンPの倒壊をさらに抑制することができる。しかも、乾燥剤は、水よりも沸点が低いから、基板Wの乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0066】
また本実施形態では、集合配管38内で第2溶剤と疎水化剤の原液とが混合される。すなわち、第2溶剤と疎水化剤の原液とが基板Wに供給される直前で混合される。そして、この混合された第2溶剤と疎水化剤の原液との混合液(疎水化剤)が基板Wに供給される。基板Wに供給される直前で第2溶剤と疎水化剤の原液とが混合されるので、疎水化剤が希釈されることにより、疎水化剤の活性が時間の経過と共に低下する場合であっても、活性が低下していない、または活性が殆ど低下していない疎水化剤を基板Wに供給することができる。これにより、基板Wを十分に疎水化させることができる。そのため、パターンPの倒壊を抑制することができる。
【0067】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、水リンス処理(リンス液供給工程)が行われた後であって疎水化処理(疎水化剤供給工程)が行われる前に、第1溶剤リンス処理(水溶性溶剤供給工程)、第2溶剤リンス処理(置換工程)、および第3溶剤リンス処理(物理的置換工程)が順次行われる場合について説明した。しかし、第1溶剤リンス処理と、第2溶剤リンス処理および第3溶剤リンス処理の一方とが省略されてもよい。また、第2溶剤リンス処理および第3溶剤リンス処理の一方が省略されてもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、第1溶剤、疎水化剤、水溶性溶剤、および乾燥剤の液体が基板Wに供給される場合について説明した。しかし、第1溶剤の蒸気が基板Wに供給されてもよい。疎水化剤、水溶性溶剤、および乾燥剤についても同様である。蒸気は、対象となる化合物(たとえば、第1溶剤)が気化したものであってもよいし、対象となる化合物の液滴とこの液滴を運ぶキャリアガス(たとえば、窒素ガスなどの不活性ガス)とを含む混合流体であってもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、基板Wを処理液によって処理している間中、いずれかのノズルから処理液を吐出させる場合について説明した。しかし、基板W上に処理液の液膜を保持させることにより基板Wを処理してもよい。すなわち、基板Wへの処理液の供給を停止させた状態で、基板W上に処理液の液膜を保持させることにより処理を進行させるパドル(puddle)処理が行われてもよい。
【0070】
具体的には、スピンチャック2によって10〜30rpm程度の低回転速度で基板Wを回転させながら、または基板Wの回転を停止させながら、いずれかのノズルから処理液を吐出させる。そして、基板Wの上面を覆う処理液の液膜が形成された後に処理液の吐出を停止させる。その後、処理液の吐出を停止させた状態で、前述の低回転速度で基板Wを回転させる、または基板Wの回転を停止させる。これにより、処理液の液膜が基板Wに保持された状態で基板Wが処理される。
【0071】
また、前述の実施形態では、疎水化処理(疎水化剤供給工程)、第4溶剤リンス処理(乾燥剤供給工程)、および乾燥処理(乾燥工程)が順次行われる場合について説明した。しかし、疎水化処理が行われた後であって第4溶剤リンス処理が行われる前に、再び疎水化剤が基板Wに供給されてもよい。すなわち、疎水化処理が複数回行われてもよい。この場合、最初に行われる疎水化処理(第1疎水化剤供給工程)で用いられる疎水化剤と、次に行われる疎水化処理(第2疎水化剤供給工程)で用いられる疎水化剤(第2疎水化剤)とは、同種のメタル系の疎水化剤であってもよいし、異なる種類のメタル系の疎水化剤(第2疎水化剤)であってもよい。また、第1疎水化剤および第2疎水化剤の一方が、メタル系の疎水化剤であり、他方が、シリコン系の疎水化剤であってもよい。
【0072】
シリコン系の疎水化剤は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる疎水化剤である。シリコン系疎水化剤は、たとえば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、たとえば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化剤の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化剤は、たとえば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0073】
また、前述の実施形態では、振動が加えられた第1溶剤が、超音波ノズルとしての溶剤ノズル12から吐出される場合について説明した。しかし、超音波ノズルに代えて、図10に示す液滴生成ノズル239(液滴生成手段)が設けられていてもよい。液滴生成ノズル239は、スピンチャック2に保持されている基板Wに吹き付けられる第1溶剤の液滴を生成するノズルである。したがって、液滴生成ノズル239から第1溶剤を吐出させることにより、第1溶剤の液滴が基板Wに衝突し(第1溶剤の液滴を基板に衝突させる工程)、液滴の運動エネルギによって、基板Wに保持されているリンス液が除去される。液滴生成ノズル239は、第1溶剤の液体と気体とを衝突させて第1溶剤の液滴を生成する二流体ノズルであってもよいし、圧電素子によって第1溶剤に振動を加えることに第1溶剤の液滴を噴射するインクジェットノズルであってもよい。超音波ノズルに代えて液滴生成ノズル239が設けられる場合、液滴生成ノズル239に超音波振動子15が取り付けられ、基板Wに向けて噴射される第1溶剤の液滴に振動が加えられてもよい。
【0074】
また、前述の実施形態では、第2溶剤によって一定の濃度に希釈された疎水化剤が基板Wに供給される場合について説明した。しかし、希釈されていない疎水化剤(疎水化剤の原液)が基板Wに供給されてもよい。また、基板Wに疎水化剤が供給されているときに、制御装置27が、第1流量調整バルブ34および/または第2流量調整バルブ37の開度を制御することにより、疎水化剤の濃度を連続的にまたは段階的に増加させてもよい。
【0075】
また、前述の実施形態では、疎水化剤の原液と第2溶剤とが集合配管38で混合される場合について説明した。しかし、疎水化剤の原液と第2溶剤とは、集合配管38に限らず、疎水化剤タンク28からスピンチャック2に保持されている基板Wに至る疎水化剤の流通経路の任意の位置で混合されてもよい。具体的には、疎水化剤の原液と第2溶剤とは、第1配管30、処理液供給配管17、および中心軸ノズル16のいずれかで混合されてもよい。さらに、疎水化剤の原液と第2溶剤とは、中心軸ノズル16と基板Wとの間で混合されてもよいし、基板W上で混合されてもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、スピンモータ6の駆動力によって基板Wを高回転速度で回転させることにより、基板Wから液体を除去して基板Wを乾燥させる場合について説明した。しかし、窒素ガスなどの不活性ガスやクリーンエアなどの気体を基板Wに吹き付ける気体ノズルが設けられ、この気体ノズルから吐出された気体によって基板Wから液体を除去して基板Wを乾燥させてもよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、疎水化剤、水溶性溶剤、乾燥剤、およびリンス液が、共通のノズル(中心軸ノズル16)から吐出される場合について説明した。しかし、疎水化剤、水溶性溶剤、乾燥剤、およびリンス液は、それぞれ専用のノズルから吐出されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板保持手段)
6 スピンモータ(乾燥手段)
12 溶剤ノズル(第1溶剤供給手段)
15 超音波振動子(物理力付与手段、振動付与手段)
16 中心軸ノズル(リンス液供給手段、第1溶剤供給手段、疎水化剤供給手段、水溶性溶剤供給手段、非接触状態維持手段、乾燥剤供給手段、流通経路)
17 処理液供給配管(流通経路)
27 制御装置(制御手段)
28 疎水化剤タンク
29 第2溶剤タンク
30 第1配管(流通経路)
38 集合配管(流通経路)
239 液滴生成ノズル(物理力付与手段、液滴生成手段)
M 金属膜
S シリンダ(凹部)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜が形成された基板を処理する基板処理方法であって、
水を含むリンス液を基板に供給するリンス液供給工程と、
前記リンス液供給工程が行われた後に、水酸基を含まない第1溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換する第1溶剤供給工程と、
前記第1溶剤供給工程が行われた後に、水酸基を含まない第2溶剤を含み金属を疎水化する疎水化剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を疎水化剤に置換する疎水化剤供給工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記リンス液供給工程が行われた後であって、前記第1溶剤供給工程が行われる前に、水に対する溶解度が第1溶剤よりも高い水溶性溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を水溶性溶剤に置換する水溶性溶剤供給工程をさらに含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1溶剤供給工程は、物理的な力が加えられた第1溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換する物理的置換工程を含む、請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1溶剤供給工程は、前記物理的置換工程が行われる前に、第1溶剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換する置換工程をさらに含む、請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記物理的置換工程は、振動が加えられた第1溶剤を基板に供給する工程と、運動エネルギが与えられた第1溶剤の液滴を基板に衝突させる工程とのうちの少なくとも一方を含む、請求項3または4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記疎水化剤供給工程が行われた後に、基板から液体を除去して基板を乾燥させる乾燥工程と、
前記疎水化剤供給工程が終了してから前記乾燥工程が終了するまで基板が水に接触しない状態を維持する非接触状態維持工程と、をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記非接触状態維持工程は、前記疎水化剤供給工程が行われた後であって、前記乾燥工程が行われる前に、水を含まず、水よりも沸点が低い乾燥剤を基板に供給することにより、基板に保持されている液体を乾燥剤に置換する乾燥剤供給工程を含む、請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記疎水化剤供給工程は、基板に供給される疎水化剤の原液が貯留されている疎水化剤タンクから当該基板に至る疎水化剤の流通経路で第2溶剤と疎水化剤の原液とを混合し、この混合された第2溶剤と疎水化剤の原液とを当該基板に供給する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
第1溶剤と第2溶剤とは、同種の溶剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
有底筒状の凹部が基板に形成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板を保持する基板保持手段と、
水を含むリンス液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給するリンス液供給手段と、
水酸基を含まない第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する第1溶剤供給手段と、
水酸基を含まない第2溶剤を含み金属を疎水化する疎水化剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する疎水化剤供給手段と、
前記リンス液供給手段によってリンス液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させるリンス液供給工程と、前記リンス液供給工程が行われた後に、前記第1溶剤供給手段によって第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換させる第1溶剤供給工程と、前記第1溶剤供給工程が行われた後に、前記疎水化剤供給手段によって疎水化剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を疎水化剤に置換させる疎水化剤供給工程と、を実行する制御手段と、を含む、基板処理装置。
【請求項12】
水に対する溶解度が第1溶剤よりも高い水溶性溶剤を基板に供給する水溶性溶剤供給手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記リンス液供給工程が行われた後であって、前記第1溶剤供給工程が行われる前に、前記水溶性溶剤供給手段によって水溶性溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を水溶性溶剤に置換させる水溶性溶剤供給工程をさらに実行する、請求項11記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第1溶剤供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に供給される第1溶剤に物理的な力を加える物理力付与手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記物理力付与手段によって物理的な力が加えられた第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換させる物理的置換工程を含む前記第1溶剤供給工程を実行する、請求項11または12記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記物理的置換工程が行われる前に、前記第1溶剤供給手段によって第1溶剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を第1溶剤に置換させる置換工程をさらに含む前記第1溶剤供給工程を実行する、請求項13記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記物理力付与手段は、前記第1溶剤供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に供給される第1溶剤に振動を加える振動付与手段と、前記第1溶剤供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に供給される第1溶剤に運動エネルギを与えて第1溶剤の液滴を生成する液滴生成手段とのうちの少なくとも一方を含む、請求項13または14記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記基板保持手段に保持されている基板から液体を除去して基板を乾燥させる乾燥手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板が水に接触しない状態を維持する非接触状態維持手段と、をさらに含み、
前記制御手段は、前記疎水化剤供給工程が行われた後に、前記基板保持手段に保持されている基板から前記乾燥手段によって液体を除去させて基板を乾燥させる乾燥工程と、前記非接触状態維持手段によって前記疎水化剤供給工程が終了してから前記乾燥工程が終了するまで基板が水に接触しない状態を維持させる非接触状態維持工程と、をさらに実行する、請求項11〜15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記非接触状態維持手段は、水を含まず、水よりも沸点が低い乾燥剤を基板に供給する乾燥剤供給手段を含み、
前記制御手段は、前記疎水化剤供給工程が行われた後であって、前記乾燥工程が行われる前に、前記乾燥剤供給手段によって乾燥剤を前記基板保持手段に保持されている基板に供給させることにより、基板に保持されている液体を乾燥剤に置換させる乾燥剤供給工程を含む前記非接触状態維持工程を実行する、請求項16記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記疎水化剤供給手段は、前記基板保持手段に保持されている基板に供給される疎水化剤の原液が貯留されている疎水化剤タンクと、前記疎水化剤タンクから前記基板保持手段に保持されている基板に至る疎水化剤の流通経路に供給される第2溶剤が貯留されている第2溶剤タンクと、を含み、前記疎水化剤タンクに貯留されている疎水化剤の原液と前記第2溶剤タンクに貯留されている第2溶剤とを前記流通経路で混合させて、この混合された第2溶剤と疎水化剤の原液とを前記基板保持手段に保持されている基板に供給するように構成されている、請求項11〜17のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−209299(P2012−209299A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71590(P2011−71590)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】