基板処理方法および基板処理装置
【課題】基板の表面の全域に対して、薬液による処理を均一に施すことができる基板処理方法および基板処理装置を提供すること。
【解決手段】高温エッチング液供給工程では、高温(約60℃)のエッチング液がウエハの表面に供給される。このエッチング液の供給と並行して、ウエハが回転される。高温エッチング液供給工程の後、ウエハWの回転速度が所定の低回転速度(たとえば10rpm)まで減速される。また、DIWノズル6からDIW、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハW表面に供給されたDIWにウエハWの回転による遠心力はほとんど作用せず、ウエハW表面の中央部に供給されたDIWは当該中央部に留まり、ウエハW表面の周縁部にエッチング液が残留する。この残留エッチング液により、ウエハW表面の周縁部がエッチング処理される。
【解決手段】高温エッチング液供給工程では、高温(約60℃)のエッチング液がウエハの表面に供給される。このエッチング液の供給と並行して、ウエハが回転される。高温エッチング液供給工程の後、ウエハWの回転速度が所定の低回転速度(たとえば10rpm)まで減速される。また、DIWノズル6からDIW、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハW表面に供給されたDIWにウエハWの回転による遠心力はほとんど作用せず、ウエハW表面の中央部に供給されたDIWは当該中央部に留まり、ウエハW表面の周縁部にエッチング液が残留する。この残留エッチング液により、ウエハW表面の周縁部がエッチング処理される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に処理液を用いた処理を施すための基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板の表面に薬液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。
この枚葉式の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ回転させるスピンチャックと、スピンチャックによって回転される基板の表面に薬液を供給する薬液ノズルと、スピンチャックによって回転される基板の表面の中央部に純水を供給する純水ノズルとを備えている。
【0003】
枚葉式の基板処理装置では、回転中の基板の表面に、薬液ノズルから薬液が供給される。これにより、基板の表面に薬液による処理(薬液処理)が施される。薬液の供給停止後、純水ノズルから基板の表面の中央部に純水が供給される。基板の表面上に供給された純水は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を周縁に向けて流れる。これにより、基板に付着している薬液が純水で洗い流される(リンス処理)。リンス処理時における基板の回転速度は、薬液処理時における基板の回転速度と同速度である。また、純水ノズルから供給される純水の供給流量は、薬液の供給流量と同程度で、かつ一定である。純水の供給停止後、基板の回転が加速され、基板に付着している純水が振り切られて除去される。これにより、基板が乾燥し、一連の薬液処理が終了する。
【0004】
薬液を基板に供給する方式として、スピンチャックによって回転される基板の表面の回転中心に向けて薬液を吐出する中心吐出方式(特許文献1参照)と、スピンチャックによって回転される基板の表面に薬液ノズルから薬液を供給しつつ、その薬液ノズルを基板上で移動させるスキャン方式(特許文献2参照)との2種類がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−286221号公報
【特許文献2】特開2007−88381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような枚葉式の基板処理装置において、たとえば、処理速度を向上させるために、高温に加熱された薬液が用いられる場合がある。この場合、薬液ノズルから供給される薬液は、基板の表面に供給された直後は高温であるが、基板の表面を流れる過程で基板や周囲雰囲気に熱を奪われ、その液温が低下してしまう。すなわち、薬液ノズルから基板の表面に供給された高温の薬液は、供給位置において最も高い処理能力を発揮する。
【0007】
薬液の供給を、中心吐出方式を用いて行う場合、基板の表面の中央部に供給された薬液は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を周縁に向けて流れ、基板の表面の全域に行き渡る。これにより、基板の表面の全域に薬液による処理が施される。この中心吐出方式において高温に加熱された薬液が基板に供給される場合、基板上において、その中央部で薬液の温度が相対的に高くなり、中央部以外の領域で薬液の温度が相対的に低くなってしまう。その結果、基板面内で処理効率がばらつき、基板の表面の中央部では薬液による処理が相対的に速く進むのに対して、基板の表面における中央部以外の領域では処理が相対的に遅くなり、基板の表面内に処理の不均一が生じる。
【0008】
一方、薬液の供給を、スキャン方式を用いて行う場合、ノズルの移動にともなってノズルからの薬液が導かれる基板の表面上の供給位置が移動する。この供給位置を、基板の表面の回転中心と周縁部との間でスキャンさせることにより、基板の表面の全域に薬液を行き渡らせることができる。基板の表面の中央部に供給された薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の表面を周端縁に向けて移動する。
【0009】
しかしながら、このスキャン方式において高温に加熱された薬液が供給される場合、次に述べる問題がある。すなわち、基板の表面位置は回転中心から離れているほど高速で移動するので、薬液供給流量が一定ならば、薬液の供給位置が回転中心から離れるほど、単位面積あたりの薬液の供給量が少なくなる。薬液ノズルから基板の表面に供給された高温の薬液は、供給位置において最も高い処理能力を発揮する。その結果、基板面内で処理効率がばらつき、基板の表面の中央部では薬液による処理が相対的に速く進むのに対して、基板の表面における中央部以外の領域では薬液による処理が相対的に遅くなる。すなわち、スキャン方式を用いて基板に高温薬液を供給する場合であっても、基板の表面に対して均一な薬液による処理を実現することができない。
【0010】
そこで、この発明の目的は、基板の表面の全域に対して、薬液による処理を均一に施すことができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理室(3)内で、前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板(W)の表面に供給する高温薬液供給工程(S1;S11)と、前記高温薬液供給工程後、前記基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給工程(S3;S13)とを含み、前記リンス液供給工程は、その初期において、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を含む、基板処理方法である。
【0012】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
高温の薬液が基板の表面に供給される高温薬液供給工程では、基板の表面の中央部では薬液による処理が相対的に速く進むのに対して、基板の表面における中央部以外の領域では薬液による処理が相対的に遅くなる。そのため、基板の表面内に、薬液による処理の不均一が生じる。
【0013】
この発明の方法によれば、高温薬液供給工程に次いで実行されるリンス液供給工程の初期において、基板の表面の中央部にリンス液が選択的に供給される。このリンス液の選択的な供給により、基板の表面の中央部の薬液は速やかにリンス液に置換されるが、基板表面の周縁部ではリンス液への置換効率が低く、そのため、基板表面の周縁部に薬液が残留する。この残留薬液によって基板の周縁部が選択的に処理される。このような残留薬液による処理により、基板表面の周縁部における薬液による処理の遅れを補うことができる。これにより、基板の表面の全域に対して薬液による均一な処理を施すことができる。
【0014】
また、リンス液供給工程中に周縁部処理工程が実行されるので、別途、周縁部を、薬液を用いて選択的に処理する必要がない。すなわち、全体の処理時間が長期化することなく、基板の表面に薬液による処理を均一に施すことができる。
この発明の一実施形態に係る基板処理方法は、請求項2に記載されているように、前記高温薬液供給工程と並行して実行され、前記基板を所定の第1回転速度で回転させる薬液処理回転工程をさらに含み、前記周縁部処理工程は、前記基板を、前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させる低回転工程を含むものである。
【0015】
この発明の方法によれば、周縁部処理工程における基板の回転速度は、高温薬液供給工程における基板の回転速度よりも遅い回転速度を含む。そのため、周縁部処理工程において、低速回転時には、基板の表面に供給されたリンス液に作用する遠心力は小さいかあるいはほとんどない。したがって、基板の表面の中央部に供給されたリンス液は当該中央部に留まる。これにより、リンス液供給工程の初期において、基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給することができる。
【0016】
この場合、請求項3に記載のように、前記周縁部処理工程は、前記リンス液供給工程の少なくとも開始時において前記第1回転速度と同等の速度で前記基板を回転させる高回転工程と、前記高回転工程後に前記第2回転速度で基板を回転させる低回転工程とを含むものであってもよい。
この発明の方法によれば、前記リンス液供給工程の少なくとも開始時には高回転工程が実行され、高回転工程後に低回転工程が実行される。高回転工程では、基板の表面上に供給されたリンス液は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を拡がる。高回転工程後に実行される低回転工程では基板の回転速度が下げられて、基板の表面を流れるリンス液に作用する遠心力が小さくなるかあるいはほとんどなくなる。そして、リンス液が基板の表面の中央部全域を覆ったタイミングで低回転工程を実行することにより、基板表面の周縁部にのみ薬液を残留させることができる。これにより、基板表面の周縁部のみを選択的に薬液により処理することができる。
【0017】
この発明の一実施形態に係る基板処理方法は、請求項4に記載されているように、前記周縁部処理工程におけるリンス液の供給流量は、前記高温薬液供給工程における薬液の供給流量よりも少ないものである。
この発明の方法によれば、周縁部処理工程におけるリンス液の供給流量が高温薬液供給工程における薬液の供給流量よりも少ない。そのため、基板の表面に供給されたリンス液はほとんど拡がらず、基板の表面の中央部に留まる。これにより、リンス液供給工程の初期において基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、前記リンス液供給工程において前記基板の表面に供給されるリンス液が、前記処理室の温度よりも高温である、請求項1〜4記載のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
リンス液供給工程において基板に常温のリンス液が供給される場合には、リンス液供給工程の開始時には基板の表面上の薬液が、基板の表面に供給されるリンス液によって熱を奪われ、急激に温度低下するおそれがある。この場合、基板の周縁部に残留する薬液の液温が低下し、その薬液が発揮する処理能力が低くなるおそれがある。
【0019】
これに対し、請求項5記載の発明の方法によれば、基板の表面に高温のリンス液が供給される。そのため、周縁部に残留する薬液の液温の低下を抑制することができる。これにより、周縁部に残留する薬液に高い処理能力を発揮させることができる。
請求項6記載の発明は、処理室(3)と、前記処理室内で基板(W)を回転するための回転手段(8)と、前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板の表面に供給するための高温薬液供給手段(5,14,15)と、基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するためのリンス液供給手段(6,16,17,202,203)と、前記回転手段の回転動作、前記高温薬液供給手段の薬液供給動作および前記リンス液供給手段のリンス液供給動作を制御するための制御手段(20)とを含み、前記制御手段が、前記基板の表面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程の初期に、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を実行する、基板処理装置(1;101;201)である。
【0020】
この構成によれば、請求項1の発明に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】処理例1を示す工程図である。
【図4】処理例1におけるウエハの回転速度の変化を示す図である。
【図5】処理例1を説明するための図である。
【図6】処理例2におけるウエハの回転速度の変化を示す図である。
【図7】処理例2を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】処理例3における処理液の供給流量の変化を示す図である。
【図10】処理例3を説明するための図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】処理例4を示す工程図である。
【図13】第1エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフである。
【図14】第2エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す断面図である。この基板処理装置1は、基板の一例としての円形の半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)におけるデバイス形成領域側の表面に対して、洗浄処理の一例としてのエッチング処理(たとえば、酸化膜エッチング処理)を施すための枚葉型の装置である。このエッチング処理では、薬液としてエッチング液が用いられる。このエッチング液として希ふっ酸を例示することができる。
【0023】
この基板処理装置1は、隔壁2により区画された処理室3内に、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線CまわりにウエハWを回転させるスピンチャック4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(すなわち、上面)に向けて、高温エッチング液を供給するための薬液ノズル5と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面の中央部に、リンス液としての常温(たとえば25℃)のDIW(脱イオン水)を供給するためのDIWノズル6と、スピンチャック4を収容するカップ7とを備えている。
【0024】
スピンチャック4は、スピンモータ(回転手段)8と、このスピンモータ8の回転駆動力によって回転軸線Cまわりに回転される円盤状のスピンベース9と、スピンベース9の周縁の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材10とを備えている。これにより、スピンチャック4は、複数個の挟持部材10によってウエハWを挟持した状態で、スピンモータ8の回転駆動力によってスピンベース9を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース9とともに回転軸線Cまわりに回転させることができる。
【0025】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
薬液ノズル5は、たとえば、連続流の状態で高温(たとえば60℃)に加熱されたエッチング液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム11の先端部に取り付けられている。アーム11の基端部は、カップ7の側方においてほぼ鉛直に延びる支持軸12の上端部に支持されている。支持軸12には、モータ(図示しない)を含むノズル駆動機構13が結合されている。ノズル駆動機構13から支持軸12に回転力を入力して支持軸12を回動させることにより、スピンチャック4の上方でアーム11を揺動させ、薬液ノズル5を移動させることができる。
【0026】
薬液ノズル5には、高温エッチング液供給源からの高温のエッチング液が供給されるエッチング液供給管14が接続されている。エッチング液供給管14の途中部には、薬液ノズル5からのエッチング液の供給/供給停止を切り換えるためのエッチング液バルブ15が介装されている。
スピンチャック4にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に薬液ノズル5が配置された状態で、薬液ノズル5からエッチング液を供給させることにより、ウエハWの表面にエッチング液を供給することができる。そして、この薬液ノズル5からウエハWの表面へのエッチング液の供給時に、アーム11を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面におけるエッチング液の供給位置を、ウエハWの回転中心(ウエハWにおける回転軸線C上の点)からウエハWの周縁に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0027】
DIWノズル6は、たとえば、連続流の状態でDIWを供給するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方で、その供給口をウエハWの回転中心付近に向けて固定的に配置されている。このDIWノズル6には、DIW供給源からの常温(たとえば25℃)のDIWが供給されるDIW供給管16が接続されている。DIW供給管16の途中部には、DIWノズル6からのDIWの供給/供給停止を切り換えるためのDIWバルブ18が介装されている。
【0028】
カップ7は、ウエハWの処理に用いられた後のエッチング液およびDIWを処理するためのものであり、有底円筒容器状に形成されている。
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置20を備えている。この制御装置20には、スピンモータ8、ノズル駆動機構13、エッチング液バルブ15、DIWバルブ18などが制御対象として接続されている。
【0029】
図3は、基板処理装置1において実行されるエッチング処理の一例である処理例1を示す工程図である。図4は、処理例1におけるウエハWの回転速度の変化を示す図である。図5は、処理例1を説明するための図である。以下、図3〜図5を参照しつつ説明する。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示しない)によって処理室3内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、薬液ノズル5は、カップ7の側方のホームポジションに配置されている。
【0030】
ウエハWがスピンチャック4に保持された後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWを第1液処理速度(第1回転速度。たとえば300rpm)で回転させる。また、アーム11が旋回されて、薬液ノズル5がホームポジションからウエハWの回転軸線C上に移動される。
薬液ノズル5の移動が完了すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を開いて、薬液ノズル5から高温(たとえば60℃)のエッチング液を供給する(ステップS1:高温エッチング液供給工程)。この高温エッチング液供給工程中、薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量はたとえば2.0L/minで一定である。また、この高温エッチング液供給工程中、制御装置20はノズル駆動機構13を制御して、アーム11を所定の角度範囲内で揺動する。アーム11の揺動は等速である。このアーム11の揺動により、薬液ノズル5を、ウエハWの回転軸線C上と、ウエハWの周縁部の上方との間との間を往復移動させる。これによって、薬液ノズル5からのエッチング液が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する(図5(a)参照)。この高温エッチング液供給工程中、ウエハの回転速度はたとえば300rpmで一定である(図4参照)。なお、ウエハWの周縁部とは、たとえば、ウエハWの回転中心を中心とし、ウエハWの半径の2/3程度の半径を有する円(外径200mmのウエハWで、ウエハWの回転中心を中心とする半径70mm程度の円、外径300mmのウエハWで、ウエハWの回転中心を中心とする半径100mm程度の円)の外側の環状領域をいう。
【0031】
ウエハWの表面に供給されたエッチング液は、ウエハWの表面の全域に拡がる。これにより、ウエハWの表面の全域に、エッチング液がむらなく速やかに供給される。薬液ノズル5からウエハWの表面にエッチング液が供給されることにより、そのエッチング液の化学的能力により、ウエハWの表面に形成された酸化膜を除去することができる。
薬液ノズル5からのエッチング液の供給開始から所定時間(たとえば35秒間)が経過すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を閉じて、ウエハWへのエッチング液の供給を停止する(ステップS2:高温エッチング液停止)。また、制御装置20は、スピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を所定の低回転速度(第2回転速度。たとえば10rpm)まで減速させる。そして、アーム11の旋回により、薬液ノズル5がウエハWの回転軸線C上からホームポジションに戻される。
【0032】
ところで、ステップS1の高温エッチング液供給工程では、薬液ノズル5からウエハWの表面に供給される高温のエッチング液は、供給位置に供給された直後は高温であるが、ウエハW上を流れる過程でウエハWや周囲雰囲気に熱を奪われ、その液温が低下してしまう。すなわち、薬液ノズル5からの高温のエッチング液は、供給位置において最も高いエッチング力を発揮する。その一方で、ウエハWの表面位置は、回転軸線Cから離れるに従って高速で移動する。そのため、この処理例1のように高温エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給流量が一定である場合には、エッチング液の供給位置が回転軸線Cから離れるに従って、単位面積あたりのエッチング液の供給量が少なくなる。これにより、ウエハWの中央部の方がウエハWの周縁部よりもエッチング効率が高くなる。すなわち、ウエハW表面の中央部ではエッチング処理が相対的に速く進むのに対して、ウエハW表面における中央部以外の領域ではエッチング処理が相対的に遅くなり、ウエハWの表面内にエッチング処理の不均一が生じる。
【0033】
エッチング液の供給停止およびウエハWの減速の後、制御装置20は、DIWバルブ18を開いて、DIWノズル6から常温(たとえば25℃)のDIWを供給する。DIWノズル6から吐出されるDIWは、回転中のウエハWの表面の回転中心付近に供給される(ステップS3:DIW供給工程)。DIWノズル6からのDIWの供給流量はたとえば2.0L/minで一定である。
【0034】
このとき、ウエハWの回転速度が低回転速度(たとえば10rpm)であるので、ウエハWの表面に供給されたDIWに、ウエハWの回転による遠心力はほとんど作用しない。したがって、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハW表面の中央部に留まる。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハWの表面の周縁部にエッチング液が残留する(図5(b)参照)。図5(b)に示すようにこの処理例1では、ウエハWの表面の周縁部だけでなく、ウエハWの中央部の外周部分にもエッチング液が残留している。この残留エッチング液によって、ウエハWの表面の周縁部およびウエハWの中央部の外周部分が選択的にエッチング処理される。
【0035】
そして、DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定の低回転期間T1(たとえば1〜10秒間)が経過すると、制御装置20は、スピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を第2液処理速度(たとえば500rpm)まで加速させる。そのため、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面上を周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に拡がる(図5(c)参照)。これにより、ウエハWの表面に付着しているエッチング液がDIWにより洗い流される。
【0036】
この処理例1では、図4に示すようにウエハWは第2液処理速度に加速された後は、当該第2液処理速度のまま維持される。しかし、所定のタイミング(DIWの供給開始からたとえば25秒間の経過)以降は、ウエハWの回転速度は、複数段階に切り換えられる。
具体的には、所定のタイミングになって以降、制御装置20によるスピンモータ8の制御により、ウエハWの回転速度は、第3液処理速度(たとえば280rpm。たとえば5秒間)、第2液処理速度(たとえば1秒間)、第4液処理速度(たとえば30rpm。たとえば5秒間)、第5液処理速度(たとえば15rpm。たとえば3秒間)、第6液処理速度(たとえば10rpm。たとえば5秒間)の順で変化する。このウエハWの回転速度の変化に伴ってウエハWの周縁からのDIWの飛散方向が変化し、カップ7上壁やスピンベース9の上面などに付着しているエッチング液などが洗い流される。
【0037】
DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定時間(たとえば40秒間)が経過すると、制御装置20は、DIWバルブ18を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する(ステップS4:DIW停止)。
その後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば3000rpm)まで加速させる。これにより、ウエハWに付着しているDIWが振り切られて除去される(ステップS5:スピンドライ)。
【0038】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられると、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するエッチング処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理室3から搬出される。
以上により処理例1では、高温エッチング液供給工程に次いで実行されるDIW供給工程の開始時においてウエハWの回転速度が低回転速度(たとえば10rpm)に低下される。そのため、ウエハW表面に供給されたDIWに、ウエハWの回転による遠心力はほとんど作用しない。したがって、ウエハW表面の中央部に供給されたDIWは当該中央部に留まる。これにより、DIW供給工程の初期においてウエハW表面の中央部にDIWが選択的に供給される。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハW表面の周縁部にエッチング液が残留する。この残留エッチング液によって、ウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理される。すなわち、ウエハW表面の中央部にDIWを選択的に供給することにより、ウエハW表面の周縁部におけるエッチング処理の遅れを補うことができる。これにより、ウエハW表面の全域に対して均一なエッチング処理を施すことができる。
【0039】
また、DIW供給工程中にウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理されるので、別途、周縁部を、選択的にエッチング処理する必要がない。すなわち、全体の処理時間が長期化することなく、ウエハWの表面に均一なエッチング処理を施すことができる。
図6は、処理例2におけるウエハWの回転速度の変化を示す図である。図7は、処理例2を説明するための図である。処理例2を、図3、図6および図7を参照しつつ説明する。
【0040】
処理例2では処理例1と同様、高温エッチング液供給工程(図3に示すステップS1)、高温エッチング液停止工程(図3に示すステップS2)、DIW供給工程(図3に示すステップS3)、DIW停止工程(図3に示すステップS4)およびスピンドライ(図3に示すステップS5)が、この順に実行される。この処理例2が処理例1と相違する点は、DIW供給工程において、ウエハWの回転速度を低回転速度(たとえば10rpm)に低下させるタイミングを、DIW供給工程の開始よりも所定の遅延期間T2(たとえば0.5〜1.0秒間)だけ遅らせるようにした点である。それ以外の点については、処理例1と同様であるので説明を省略する。
【0041】
具体的には、DIW供給工程の開始(図3でステップS3)において、DIWノズル6から常温(たとえば25℃)のDIWを供給後遅延期間T2が経過するまでの間は、ウエハWの第1液処理速度で回転されている。したがって、ウエハWの表面上に供給されたDIWは、ウエハWの回転により生じる遠心力を受けてウエハWの表面上を拡がる。
そして、DIWノズル6からのDIWの供給開始から遅延期間T2が経過すると、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を低回転速度(たとえば10rpm)まで減速させる。このウエハWの減速により、ウエハW表面を流れるDIWにウエハWの回転による遠心力がほとんど作用しなくなる。そして、ウエハWの表面上のDIWの拡大が停止し、ウエハWの表面の中央部に比較的大きなDIWの液溜りができる。したがって、遅延期間T2を、DIWノズル6から供給されたDIWが、ウエハWの表面の中央部全域を覆うまでに要する時間に設定すれば、ウエハW表面の周縁部のみにエッチング液を残留させることができる(図7参照)。これにより、ウエハWの周縁部のみをエッチング処理することができる。
【0042】
図8は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置101の構成を模式的に示す断面図である。図8において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。図8に示す基板処理装置101が図1に示す基板処理装置1と相違する点は、DIW供給管16の途中部に、DIW供給管16を流通するDIWの流量を調節する流量調節バルブ17が介装されている点である。流量調節バルブ17はDIWバルブ18よりもDIWノズル6側に介装されている。流量調節バルブ17は制御装置20(図2参照)に、制御対象として接続されている。
【0043】
図9は、基板処理装置101において実行されるエッチング処理の一例である処理例3における処理液(エッチング液およびDIW)の供給流量の変化を示す図である。図10は、処理例3を説明するための図である。
処理例3が処理例1や処理例2と相違する点は、ウエハWの表面の中央部にDIWを選択的に供給するために、DIW供給工程の初期におけるDIWの供給流量を、高温エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給流量よりも少なくした点である。
【0044】
処理例3では処理例1と同様、高温エッチング液供給工程(図3に示すステップS1)、高温エッチング液停止工程(図3に示すステップS2)、DIW供給工程(図3に示すステップS3)、DIW停止工程(図3に示すステップS4)およびスピンドライ(図3に示すステップS5)がこの順に実行される。
以下、処理例3について、図3、図4および図8〜図10を参照しつつ説明する。
【0045】
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示しない)によって、処理室3内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、また、薬液ノズル5は、カップ7の側方のホームポジションに配置されている。
ウエハWがスピンチャック4に保持された後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWを所定の液処理速度(たとえば300rpm)で回転させる。また、アーム11が旋回されて、薬液ノズル5がホームポジションからウエハWの回転軸線C上に移動される。
【0046】
薬液ノズル5の移動が完了すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を開いて、薬液ノズル5から高温(たとえば60℃)のエッチング液を供給する(図3に示すステップS1:高温エッチング液供給工程)。この高温エッチング液供給工程中、薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量はたとえば2.0L/minで一定である。また、この高温エッチング液供給工程中、制御装置20はノズル駆動機構13を制御して、アーム11を所定の角度範囲内で揺動する。アーム11の揺動は等速である。このアーム11の揺動により、薬液ノズル5を、ウエハWの回転軸線C上と、ウエハWの周縁部の上方との間との間を往復移動させる。これによって、薬液ノズル5からのエッチング液が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する(図10(a)参照)。この高温エッチング液供給工程中、ウエハの回転速度はたとえば300rpmで一定である(図9参照)。以上のエッチング液による処理は、前述の第1実施形態の処理例1および処理例2と同様である。
【0047】
薬液ノズル5からのエッチング液の供給開始から所定時間(たとえば35秒間)が経過すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を閉じて、ウエハWへのエッチング液の供給を停止する(図3に示すステップS2:高温エッチング液停止)。また、アーム11の旋回により、薬液ノズル5がウエハWの回転軸線C上からホームポジションに戻される。ステップS1の高温エッチング液供給工程では、前述のように、ウエハW表面の中央部ではエッチング処理が相対的に速く進むのに対して、ウエハW表面における中央部以外の領域ではエッチング処理が相対的に遅くなり、ウエハWの表面内にエッチング処理の不均一が生じる。
【0048】
エッチング液の供給停止の後、制御装置20は、DIWバルブ18を開いて、DIWノズル6から常温(たとえば25℃)のDIWを供給する。DIWノズル6から供給されるDIWは、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される(ステップS3:DIW供給工程)。このとき、流量調節バルブ17は、DIWノズル6からのDIWの供給流量が、エッチング液供給工程におけるエッチング液の流量よりも少ない所定の小流量(たとえば0.5L/min)になるようにその開度が設定されている。
【0049】
DIWノズル6からのDIWの供給流量が小流量であるので、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハW表面の中央部に留まる。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハWの表面の周縁部にエッチング液が残留する(図10(b)参照)。この残留エッチング液によって、ウエハWの表面の周縁部が選択的にエッチング処理される。
【0050】
そして、DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定の低流量期間T3(たとえば1〜10秒間)が経過すると、制御装置20は、流量調節バルブ17の開度を制御して、DIWノズル6からのDIWの供給流量を、所定の大流量(たとえば2.0L/min)にする。
そのため、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面上を周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に拡がる(図10(c)参照)。これにより、ウエハWの表面に付着しているエッチング液がDIWにより洗い流される。
【0051】
処理例3では、図4に破線Aで示すようにウエハWの回転速度は、液処理速度(300rpm)に維持されている。しかし、所定のタイミング(DIWの供給開始からたとえば25秒間の経過)以降は、ウエハWの回転速度は、処理例1と同様に切り換えられる(図4参照)。このウエハWの回転速度の変化に伴ってウエハWの周縁からのDIWの飛散方向が変化し、カップ7上壁やスピンベース9の上面などに付着しているエッチング液などが洗い流される。
【0052】
DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定時間(たとえば40秒間)が経過すると、制御装置20は、DIWバルブ18を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する(ステップS4:DIW停止)。
その後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば3000rpm)まで加速させる。これにより、ウエハWに付着しているDIWが振り切られて除去される(ステップS5:スピンドライ)。
【0053】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられると、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するエッチング処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理室3から搬出される。
以上により第2実施形態(処理例3)によれば、DIW供給工程の初期におけるDIWの供給流量が、高温エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給流量よりも低流量である。そのため、ウエハW表面に供給されたDIWはほとんど拡がらず、ウエハW表面の中央部に留まる。
【0054】
これにより、DIW供給工程の初期においてウエハW表面の中央部にDIWが選択的に供給される。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハW表面の周縁部にエッチング液が残留する。この残留エッチング液によって、ウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理される。すなわち、ウエハW表面の中央部にDIWを選択的に供給することにより、ウエハW表面の周縁部におけるエッチング処理の遅れを補うことができる。これにより、ウエハW表面の全域に対して均一なエッチング処理を施すことができる。
【0055】
また、DIW供給工程中にウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理されるので、別途、周縁部を、選択的にエッチング処理する必要がない。すなわち、全体の処理時間が長期化することなく、ウエハWの表面に均一なエッチング処理を施すことができる。
図11は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置201の構成を模式的に示す断面図である。図11において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。図11に示す基板処理装置101が図1に示す基板処理装置1と相違する点は、DIW供給管16に代えて、高温DIW供給源からの約60℃に加熱されたDIW(高温DIW)が供給される高温DIW供給管202がDIWノズル6に接続されている点である。高温DIW供給管202の途中部には、DIWノズル6からの高温DIWの供給/供給停止を切り換えるための高温DIWバルブ203が介装されている。高温DIWバルブ203は制御装置20(図2参照)に、制御対象として接続されている。
【0056】
図12は、基板処理装置201において実行されるエッチング処理の一例である処理例4を示す工程図である。
処理例4が、第1実施形態の処理例1や処理例2と相違する点は、リンス処理に用いるリンス液として、常温のDIWに代えて高温(約60℃)のDIWを用いた点にある。
図12に示す高温エッチング液供給工程(ステップS11)、高温エッチング液停止工程(ステップS12)、高温DIW供給工程(ステップS13)、高温DIW停止工程(ステップS14)およびスピンドライ工程(ステップS15)は、それぞれ、高温エッチング液供給工程(図3に示すステップS1)、高温エッチング液停止工程(図3に示すステップS2)、DIW供給工程(図3に示すステップS3)、DIW停止工程(図3に示すステップS4)およびスピンドライ工程(図3に示すステップS5)と同様の処理である。
【0057】
前述の第1実施形態の処理例1または処理例2では、リンス液として常温のDIWがウエハWの表面に供給される。そのため、DIW供給工程(図3に示すステップS3)の開始時に、ウエハWの表面上のエッチング液が、ウエハWの表面に供給されるDIWによって熱を奪われ、急激に温度低下するおそれがある。この場合、ウエハWの周縁部に残留するエッチング液の液温が低下し、そのエッチング液が発揮するエッチング力が低くなるおそれがある。
【0058】
これに対し、この第3実施形態(処理例4)では、ウエハW表面に高温のDIWが供給される。そのため、周縁部に残留するエッチング液の液温の低下を抑制することができる。これにより、周縁部に残留するエッチング液に高いエッチング力を発揮させることができる。
また、第3実施形態は、とくに第1実施形態の処理例2と組み合わされることが好ましい。DIW供給工程の開始時において、処理例2では処理例1と比べて、ウエハWの表面上に残留するエッチング液の量が少ないが、ウエハWの表面上に残留するエッチング液が高いエッチング力を発揮するので、ウエハWにエッチング処理を良好に施すことができる。
【0059】
また、第3実施形態は、第1実施形態の処理例1や処理例2だけでなく、第2実施形態(処理例3)と組み合わせていてもよい。
また、第1実施形態(処理例1または処理例2)と第2実施形態(処理例3)とを組み合わせることもできる。また、第1実施形態(処理例1または処理例2)と第2実施形態(処理例3)とを組み合わせたものに、さらに第3実施形態(処理例4)を組み合わせることもできる。
【0060】
また、前述の各実施形態において、高温エッチング液の供給中(図3に示すステップS1または図3に示すステップS11)、薬液ノズル5を、その吐出口をウエハWの表面の回転中心付近に向けた状態で停止させていてもよい(いわゆる中心吐出方式)。この場合、ウエハWの表面の中央部にエッチング液が供給される。ウエハWの表面に供給されたエッチング液は、ウエハWの回転により生じる遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面の全域にエッチング液による処理が施される。
【0061】
次に、第1エッチング試験について説明する。
表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハW(外径300mm)を試料として用い、基板処理装置1を用いて次に述べるエッチング処理を行った。
<実施例1>
処理例1のエッチング処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1を10秒間とした。
<実施例2>
処理例2のエッチング処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1を10秒間とした。また、遅延期間T2を0.7秒間とした。
<比較例1>
処理例1において、エッチング液の供給停止後も、ウエハWの回転速度を第1液処理速度のまま維持させた(図4に破線Aで示す)。DIWの供給開始からたとえば10秒間の経過後、ウエハWの回転速度を、処理例1と同様に切り換えた(図4参照)。
【0062】
実施例1、実施例2および比較例1において、第1液処理速度(エッチング液供給工程におけるウエハWの回転速度)を300rpmとし、第2液処理速度(DIW供給工程におけるウエハWの回転速度)を300rpmとした。
薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量および液温は、それぞれ2.0L/minおよび60℃であった。エッチング液として希ふっ酸を用いた。DIWノズル6からのDIWの供給流量は2.0L/mであり、一定であった。また、DIWの液温は25℃であった。
【0063】
そして、ウエハWの酸化膜のエッチング量の面内分布(半径方向位置とエッチング量との関係)を求めた。このエッチング試験の結果を図13に示す。図13は、第1エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフであり、横軸はウエハWの半径を示しており、縦軸はエッチング量を示している。
次に、第2エッチング試験について説明する。
【0064】
表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハW(外径300mm)を試料として用い、基板処理装置1,101,201を用いて次に述べるエッチング処理を行った。
<実施例3>
基板処理装置1を用いて、処理例1のエッチング処理と同様の処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1を10秒間とした。また、DIWノズル6からのDIWの液温は25℃であった。この実施例3の処理が処理例1と相違する点は、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた点(いわゆる中心吐出方式)である。
<実施例4>
基板処理装置101を用いて、処理例3のエッチング処理と同様の処理を試料に施した。低流量期間T3におけるDIWノズル6からのDIWの供給流量は0.5L/minであった。また、DIWノズル6からのDIWの液温は25℃であった。この実施例4の処理が処理例1と相違する点は、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた点(いわゆる中心吐出方式)である。
<実施例5>
基板処理装置201を用いて、処理例1と処理例3と処理例4とを組み合わせた処理と同様の処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1および低流量期間T3をともに10秒間とした。低流量期間T3におけるDIWノズル6からのDIWの供給流量は0.5L/minであった。また、DIWノズル6からのDIWの液温は60℃であった。この実施例5の処理が処理例3および処理例4と相違する点は、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた点(いわゆる中心吐出方式)である。
<比較例2>
処理例1において、エッチング液の供給停止後も、ウエハWの回転速度を第1液処理速度のまま維持させた(図4に破線Aで示す)。DIWの供給開始からたとえば10秒間の経過後、ウエハWの回転速度を、処理例1と同様に切り換えた(図4参照)。
【0065】
また、処理例1とは異なり、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた(いわゆる中心吐出方式)。また、DIWノズル6からのDIWの液温は25℃であった。
実施例3、実施例4、実施例5および比較例2において、第1液処理速度(エッチング液供給工程におけるウエハWの回転速度)を1000rpmとし、第2液処理速度(DIW供給工程および高温DIW供給工程におけるウエハWの回転速度)を1000rpmとした。
【0066】
薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量および液温は、それぞれ2.0L/minおよび60℃であった。エッチング液として希ふっ酸を用いた。また、DIWノズル6からのDIWの供給流量は、低流量期間T3を除き2.0L/minであった。
そして、ウエハWの酸化膜のエッチング量の面内分布(半径方向位置とエッチング量との関係)を求めた。このエッチング試験の結果を図14に示す。図14は、第2エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフであり、横軸はウエハWの半径を示しており、縦軸はエッチング量を示している。
【0067】
実施例1〜5では、ウエハWの周縁部におけるエッチング量の低下を抑制できたことが理解される。とくに、実施例2は、エッチングによる面内均一性が優れていることが理解される。
以上、本発明の3つの実施形態について説明したが、本発明は他の形態でも実施するこができる。
【0068】
たとえば、第1実施形態の処理例1において、ウエハWの減速のタイミングを、高温エッチング液供給工程終了(ステップS2)ではなく、DIW供給工程開始(ステップS3)としてもよい。
また、DIW供給工程(図3に示すステップS3)または高温DIW供給工程(図12に示すステップS13)では、エッチング液の供給停止に連続して、DIW(高温DIW)が供給開始されてもよい。
【0069】
また、ウエハWの低回転速度(低回転期間T1における回転速度)としてたとえば10rpmを例示したが、低回転速度は、ウエハWに供給されるDIWがウエハWの回転による遠心力による移動を生じない範囲、すなわち0rpm〜100rpmの範囲内であることが望ましい。
また、第2実施形態の処理例3において、DIW供給工程(図3に示すステップS3)または高温DIW供給工程(図12に示すステップS13)の期間を通じて、DIWノズル6からのDIWの供給流量を、小流量(たとえば0.5L/min)としてもよい。
【0070】
また、前述の各実施形態において、エッチング液供給工程(図3に示すステップS1、図12に示すステップS11)における薬液ノズル5のスキャンは、一方向に移動中にのみ薬液ノズル5から薬液を供給させるいわゆる一方向スキャンであってもよい。また、薬液ノズル5のスキャンは、ウエハWの回転中心を挟んで対向関係にある一対の位置の間をスキャンするものであってもよい。
【0071】
また、前述の各実施形態では、酸化膜の除去のためのエッチング処理を例に挙げて説明したが、ウエハWの窒化膜の除去のためのエッチング処理を施すものであってもよい。かかる場合には、エッチング液としてたとえば燐酸が採用される。また、ウエハWのシンニングのためのエッチング処理を施す場合には、エッチング液としてたとえばふっ硝酸が採用される。
【0072】
また、洗浄処理などウエハWに対して薬液による他の処理が施されていてもよい。この薬液として、前述のふっ酸に加え、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、バファードフッ酸(Buffered HF:ふっ酸とふっ化アンモニウムとの混合液)などを例示することができる。
【0073】
また、前述の各実施形態では、リンス液としてDIWを用いる場合を例にとって説明したが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、還元水(水素水)、磁気水、などをリンス液として採用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201 基板処理装置
3 処理室
5 薬液ノズル
6 DIWノズル
8 スピンモータ
14 エッチング液供給管
15 エッチング液バルブ
16 DIW供給管
17 流量調節バルブ
18 DIWバルブ
202 高温DIW供給管
203 高温DIWバルブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に処理液を用いた処理を施すための基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板の表面に薬液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。
この枚葉式の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ回転させるスピンチャックと、スピンチャックによって回転される基板の表面に薬液を供給する薬液ノズルと、スピンチャックによって回転される基板の表面の中央部に純水を供給する純水ノズルとを備えている。
【0003】
枚葉式の基板処理装置では、回転中の基板の表面に、薬液ノズルから薬液が供給される。これにより、基板の表面に薬液による処理(薬液処理)が施される。薬液の供給停止後、純水ノズルから基板の表面の中央部に純水が供給される。基板の表面上に供給された純水は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を周縁に向けて流れる。これにより、基板に付着している薬液が純水で洗い流される(リンス処理)。リンス処理時における基板の回転速度は、薬液処理時における基板の回転速度と同速度である。また、純水ノズルから供給される純水の供給流量は、薬液の供給流量と同程度で、かつ一定である。純水の供給停止後、基板の回転が加速され、基板に付着している純水が振り切られて除去される。これにより、基板が乾燥し、一連の薬液処理が終了する。
【0004】
薬液を基板に供給する方式として、スピンチャックによって回転される基板の表面の回転中心に向けて薬液を吐出する中心吐出方式(特許文献1参照)と、スピンチャックによって回転される基板の表面に薬液ノズルから薬液を供給しつつ、その薬液ノズルを基板上で移動させるスキャン方式(特許文献2参照)との2種類がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−286221号公報
【特許文献2】特開2007−88381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような枚葉式の基板処理装置において、たとえば、処理速度を向上させるために、高温に加熱された薬液が用いられる場合がある。この場合、薬液ノズルから供給される薬液は、基板の表面に供給された直後は高温であるが、基板の表面を流れる過程で基板や周囲雰囲気に熱を奪われ、その液温が低下してしまう。すなわち、薬液ノズルから基板の表面に供給された高温の薬液は、供給位置において最も高い処理能力を発揮する。
【0007】
薬液の供給を、中心吐出方式を用いて行う場合、基板の表面の中央部に供給された薬液は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を周縁に向けて流れ、基板の表面の全域に行き渡る。これにより、基板の表面の全域に薬液による処理が施される。この中心吐出方式において高温に加熱された薬液が基板に供給される場合、基板上において、その中央部で薬液の温度が相対的に高くなり、中央部以外の領域で薬液の温度が相対的に低くなってしまう。その結果、基板面内で処理効率がばらつき、基板の表面の中央部では薬液による処理が相対的に速く進むのに対して、基板の表面における中央部以外の領域では処理が相対的に遅くなり、基板の表面内に処理の不均一が生じる。
【0008】
一方、薬液の供給を、スキャン方式を用いて行う場合、ノズルの移動にともなってノズルからの薬液が導かれる基板の表面上の供給位置が移動する。この供給位置を、基板の表面の回転中心と周縁部との間でスキャンさせることにより、基板の表面の全域に薬液を行き渡らせることができる。基板の表面の中央部に供給された薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の表面を周端縁に向けて移動する。
【0009】
しかしながら、このスキャン方式において高温に加熱された薬液が供給される場合、次に述べる問題がある。すなわち、基板の表面位置は回転中心から離れているほど高速で移動するので、薬液供給流量が一定ならば、薬液の供給位置が回転中心から離れるほど、単位面積あたりの薬液の供給量が少なくなる。薬液ノズルから基板の表面に供給された高温の薬液は、供給位置において最も高い処理能力を発揮する。その結果、基板面内で処理効率がばらつき、基板の表面の中央部では薬液による処理が相対的に速く進むのに対して、基板の表面における中央部以外の領域では薬液による処理が相対的に遅くなる。すなわち、スキャン方式を用いて基板に高温薬液を供給する場合であっても、基板の表面に対して均一な薬液による処理を実現することができない。
【0010】
そこで、この発明の目的は、基板の表面の全域に対して、薬液による処理を均一に施すことができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理室(3)内で、前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板(W)の表面に供給する高温薬液供給工程(S1;S11)と、前記高温薬液供給工程後、前記基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給工程(S3;S13)とを含み、前記リンス液供給工程は、その初期において、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を含む、基板処理方法である。
【0012】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
高温の薬液が基板の表面に供給される高温薬液供給工程では、基板の表面の中央部では薬液による処理が相対的に速く進むのに対して、基板の表面における中央部以外の領域では薬液による処理が相対的に遅くなる。そのため、基板の表面内に、薬液による処理の不均一が生じる。
【0013】
この発明の方法によれば、高温薬液供給工程に次いで実行されるリンス液供給工程の初期において、基板の表面の中央部にリンス液が選択的に供給される。このリンス液の選択的な供給により、基板の表面の中央部の薬液は速やかにリンス液に置換されるが、基板表面の周縁部ではリンス液への置換効率が低く、そのため、基板表面の周縁部に薬液が残留する。この残留薬液によって基板の周縁部が選択的に処理される。このような残留薬液による処理により、基板表面の周縁部における薬液による処理の遅れを補うことができる。これにより、基板の表面の全域に対して薬液による均一な処理を施すことができる。
【0014】
また、リンス液供給工程中に周縁部処理工程が実行されるので、別途、周縁部を、薬液を用いて選択的に処理する必要がない。すなわち、全体の処理時間が長期化することなく、基板の表面に薬液による処理を均一に施すことができる。
この発明の一実施形態に係る基板処理方法は、請求項2に記載されているように、前記高温薬液供給工程と並行して実行され、前記基板を所定の第1回転速度で回転させる薬液処理回転工程をさらに含み、前記周縁部処理工程は、前記基板を、前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させる低回転工程を含むものである。
【0015】
この発明の方法によれば、周縁部処理工程における基板の回転速度は、高温薬液供給工程における基板の回転速度よりも遅い回転速度を含む。そのため、周縁部処理工程において、低速回転時には、基板の表面に供給されたリンス液に作用する遠心力は小さいかあるいはほとんどない。したがって、基板の表面の中央部に供給されたリンス液は当該中央部に留まる。これにより、リンス液供給工程の初期において、基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給することができる。
【0016】
この場合、請求項3に記載のように、前記周縁部処理工程は、前記リンス液供給工程の少なくとも開始時において前記第1回転速度と同等の速度で前記基板を回転させる高回転工程と、前記高回転工程後に前記第2回転速度で基板を回転させる低回転工程とを含むものであってもよい。
この発明の方法によれば、前記リンス液供給工程の少なくとも開始時には高回転工程が実行され、高回転工程後に低回転工程が実行される。高回転工程では、基板の表面上に供給されたリンス液は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を拡がる。高回転工程後に実行される低回転工程では基板の回転速度が下げられて、基板の表面を流れるリンス液に作用する遠心力が小さくなるかあるいはほとんどなくなる。そして、リンス液が基板の表面の中央部全域を覆ったタイミングで低回転工程を実行することにより、基板表面の周縁部にのみ薬液を残留させることができる。これにより、基板表面の周縁部のみを選択的に薬液により処理することができる。
【0017】
この発明の一実施形態に係る基板処理方法は、請求項4に記載されているように、前記周縁部処理工程におけるリンス液の供給流量は、前記高温薬液供給工程における薬液の供給流量よりも少ないものである。
この発明の方法によれば、周縁部処理工程におけるリンス液の供給流量が高温薬液供給工程における薬液の供給流量よりも少ない。そのため、基板の表面に供給されたリンス液はほとんど拡がらず、基板の表面の中央部に留まる。これにより、リンス液供給工程の初期において基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、前記リンス液供給工程において前記基板の表面に供給されるリンス液が、前記処理室の温度よりも高温である、請求項1〜4記載のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
リンス液供給工程において基板に常温のリンス液が供給される場合には、リンス液供給工程の開始時には基板の表面上の薬液が、基板の表面に供給されるリンス液によって熱を奪われ、急激に温度低下するおそれがある。この場合、基板の周縁部に残留する薬液の液温が低下し、その薬液が発揮する処理能力が低くなるおそれがある。
【0019】
これに対し、請求項5記載の発明の方法によれば、基板の表面に高温のリンス液が供給される。そのため、周縁部に残留する薬液の液温の低下を抑制することができる。これにより、周縁部に残留する薬液に高い処理能力を発揮させることができる。
請求項6記載の発明は、処理室(3)と、前記処理室内で基板(W)を回転するための回転手段(8)と、前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板の表面に供給するための高温薬液供給手段(5,14,15)と、基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するためのリンス液供給手段(6,16,17,202,203)と、前記回転手段の回転動作、前記高温薬液供給手段の薬液供給動作および前記リンス液供給手段のリンス液供給動作を制御するための制御手段(20)とを含み、前記制御手段が、前記基板の表面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程の初期に、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を実行する、基板処理装置(1;101;201)である。
【0020】
この構成によれば、請求項1の発明に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】処理例1を示す工程図である。
【図4】処理例1におけるウエハの回転速度の変化を示す図である。
【図5】処理例1を説明するための図である。
【図6】処理例2におけるウエハの回転速度の変化を示す図である。
【図7】処理例2を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】処理例3における処理液の供給流量の変化を示す図である。
【図10】処理例3を説明するための図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】処理例4を示す工程図である。
【図13】第1エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフである。
【図14】第2エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す断面図である。この基板処理装置1は、基板の一例としての円形の半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)におけるデバイス形成領域側の表面に対して、洗浄処理の一例としてのエッチング処理(たとえば、酸化膜エッチング処理)を施すための枚葉型の装置である。このエッチング処理では、薬液としてエッチング液が用いられる。このエッチング液として希ふっ酸を例示することができる。
【0023】
この基板処理装置1は、隔壁2により区画された処理室3内に、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線CまわりにウエハWを回転させるスピンチャック4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(すなわち、上面)に向けて、高温エッチング液を供給するための薬液ノズル5と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面の中央部に、リンス液としての常温(たとえば25℃)のDIW(脱イオン水)を供給するためのDIWノズル6と、スピンチャック4を収容するカップ7とを備えている。
【0024】
スピンチャック4は、スピンモータ(回転手段)8と、このスピンモータ8の回転駆動力によって回転軸線Cまわりに回転される円盤状のスピンベース9と、スピンベース9の周縁の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材10とを備えている。これにより、スピンチャック4は、複数個の挟持部材10によってウエハWを挟持した状態で、スピンモータ8の回転駆動力によってスピンベース9を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース9とともに回転軸線Cまわりに回転させることができる。
【0025】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
薬液ノズル5は、たとえば、連続流の状態で高温(たとえば60℃)に加熱されたエッチング液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム11の先端部に取り付けられている。アーム11の基端部は、カップ7の側方においてほぼ鉛直に延びる支持軸12の上端部に支持されている。支持軸12には、モータ(図示しない)を含むノズル駆動機構13が結合されている。ノズル駆動機構13から支持軸12に回転力を入力して支持軸12を回動させることにより、スピンチャック4の上方でアーム11を揺動させ、薬液ノズル5を移動させることができる。
【0026】
薬液ノズル5には、高温エッチング液供給源からの高温のエッチング液が供給されるエッチング液供給管14が接続されている。エッチング液供給管14の途中部には、薬液ノズル5からのエッチング液の供給/供給停止を切り換えるためのエッチング液バルブ15が介装されている。
スピンチャック4にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に薬液ノズル5が配置された状態で、薬液ノズル5からエッチング液を供給させることにより、ウエハWの表面にエッチング液を供給することができる。そして、この薬液ノズル5からウエハWの表面へのエッチング液の供給時に、アーム11を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面におけるエッチング液の供給位置を、ウエハWの回転中心(ウエハWにおける回転軸線C上の点)からウエハWの周縁に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0027】
DIWノズル6は、たとえば、連続流の状態でDIWを供給するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方で、その供給口をウエハWの回転中心付近に向けて固定的に配置されている。このDIWノズル6には、DIW供給源からの常温(たとえば25℃)のDIWが供給されるDIW供給管16が接続されている。DIW供給管16の途中部には、DIWノズル6からのDIWの供給/供給停止を切り換えるためのDIWバルブ18が介装されている。
【0028】
カップ7は、ウエハWの処理に用いられた後のエッチング液およびDIWを処理するためのものであり、有底円筒容器状に形成されている。
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置20を備えている。この制御装置20には、スピンモータ8、ノズル駆動機構13、エッチング液バルブ15、DIWバルブ18などが制御対象として接続されている。
【0029】
図3は、基板処理装置1において実行されるエッチング処理の一例である処理例1を示す工程図である。図4は、処理例1におけるウエハWの回転速度の変化を示す図である。図5は、処理例1を説明するための図である。以下、図3〜図5を参照しつつ説明する。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示しない)によって処理室3内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、薬液ノズル5は、カップ7の側方のホームポジションに配置されている。
【0030】
ウエハWがスピンチャック4に保持された後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWを第1液処理速度(第1回転速度。たとえば300rpm)で回転させる。また、アーム11が旋回されて、薬液ノズル5がホームポジションからウエハWの回転軸線C上に移動される。
薬液ノズル5の移動が完了すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を開いて、薬液ノズル5から高温(たとえば60℃)のエッチング液を供給する(ステップS1:高温エッチング液供給工程)。この高温エッチング液供給工程中、薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量はたとえば2.0L/minで一定である。また、この高温エッチング液供給工程中、制御装置20はノズル駆動機構13を制御して、アーム11を所定の角度範囲内で揺動する。アーム11の揺動は等速である。このアーム11の揺動により、薬液ノズル5を、ウエハWの回転軸線C上と、ウエハWの周縁部の上方との間との間を往復移動させる。これによって、薬液ノズル5からのエッチング液が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する(図5(a)参照)。この高温エッチング液供給工程中、ウエハの回転速度はたとえば300rpmで一定である(図4参照)。なお、ウエハWの周縁部とは、たとえば、ウエハWの回転中心を中心とし、ウエハWの半径の2/3程度の半径を有する円(外径200mmのウエハWで、ウエハWの回転中心を中心とする半径70mm程度の円、外径300mmのウエハWで、ウエハWの回転中心を中心とする半径100mm程度の円)の外側の環状領域をいう。
【0031】
ウエハWの表面に供給されたエッチング液は、ウエハWの表面の全域に拡がる。これにより、ウエハWの表面の全域に、エッチング液がむらなく速やかに供給される。薬液ノズル5からウエハWの表面にエッチング液が供給されることにより、そのエッチング液の化学的能力により、ウエハWの表面に形成された酸化膜を除去することができる。
薬液ノズル5からのエッチング液の供給開始から所定時間(たとえば35秒間)が経過すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を閉じて、ウエハWへのエッチング液の供給を停止する(ステップS2:高温エッチング液停止)。また、制御装置20は、スピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を所定の低回転速度(第2回転速度。たとえば10rpm)まで減速させる。そして、アーム11の旋回により、薬液ノズル5がウエハWの回転軸線C上からホームポジションに戻される。
【0032】
ところで、ステップS1の高温エッチング液供給工程では、薬液ノズル5からウエハWの表面に供給される高温のエッチング液は、供給位置に供給された直後は高温であるが、ウエハW上を流れる過程でウエハWや周囲雰囲気に熱を奪われ、その液温が低下してしまう。すなわち、薬液ノズル5からの高温のエッチング液は、供給位置において最も高いエッチング力を発揮する。その一方で、ウエハWの表面位置は、回転軸線Cから離れるに従って高速で移動する。そのため、この処理例1のように高温エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給流量が一定である場合には、エッチング液の供給位置が回転軸線Cから離れるに従って、単位面積あたりのエッチング液の供給量が少なくなる。これにより、ウエハWの中央部の方がウエハWの周縁部よりもエッチング効率が高くなる。すなわち、ウエハW表面の中央部ではエッチング処理が相対的に速く進むのに対して、ウエハW表面における中央部以外の領域ではエッチング処理が相対的に遅くなり、ウエハWの表面内にエッチング処理の不均一が生じる。
【0033】
エッチング液の供給停止およびウエハWの減速の後、制御装置20は、DIWバルブ18を開いて、DIWノズル6から常温(たとえば25℃)のDIWを供給する。DIWノズル6から吐出されるDIWは、回転中のウエハWの表面の回転中心付近に供給される(ステップS3:DIW供給工程)。DIWノズル6からのDIWの供給流量はたとえば2.0L/minで一定である。
【0034】
このとき、ウエハWの回転速度が低回転速度(たとえば10rpm)であるので、ウエハWの表面に供給されたDIWに、ウエハWの回転による遠心力はほとんど作用しない。したがって、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハW表面の中央部に留まる。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハWの表面の周縁部にエッチング液が残留する(図5(b)参照)。図5(b)に示すようにこの処理例1では、ウエハWの表面の周縁部だけでなく、ウエハWの中央部の外周部分にもエッチング液が残留している。この残留エッチング液によって、ウエハWの表面の周縁部およびウエハWの中央部の外周部分が選択的にエッチング処理される。
【0035】
そして、DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定の低回転期間T1(たとえば1〜10秒間)が経過すると、制御装置20は、スピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を第2液処理速度(たとえば500rpm)まで加速させる。そのため、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面上を周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に拡がる(図5(c)参照)。これにより、ウエハWの表面に付着しているエッチング液がDIWにより洗い流される。
【0036】
この処理例1では、図4に示すようにウエハWは第2液処理速度に加速された後は、当該第2液処理速度のまま維持される。しかし、所定のタイミング(DIWの供給開始からたとえば25秒間の経過)以降は、ウエハWの回転速度は、複数段階に切り換えられる。
具体的には、所定のタイミングになって以降、制御装置20によるスピンモータ8の制御により、ウエハWの回転速度は、第3液処理速度(たとえば280rpm。たとえば5秒間)、第2液処理速度(たとえば1秒間)、第4液処理速度(たとえば30rpm。たとえば5秒間)、第5液処理速度(たとえば15rpm。たとえば3秒間)、第6液処理速度(たとえば10rpm。たとえば5秒間)の順で変化する。このウエハWの回転速度の変化に伴ってウエハWの周縁からのDIWの飛散方向が変化し、カップ7上壁やスピンベース9の上面などに付着しているエッチング液などが洗い流される。
【0037】
DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定時間(たとえば40秒間)が経過すると、制御装置20は、DIWバルブ18を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する(ステップS4:DIW停止)。
その後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば3000rpm)まで加速させる。これにより、ウエハWに付着しているDIWが振り切られて除去される(ステップS5:スピンドライ)。
【0038】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられると、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するエッチング処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理室3から搬出される。
以上により処理例1では、高温エッチング液供給工程に次いで実行されるDIW供給工程の開始時においてウエハWの回転速度が低回転速度(たとえば10rpm)に低下される。そのため、ウエハW表面に供給されたDIWに、ウエハWの回転による遠心力はほとんど作用しない。したがって、ウエハW表面の中央部に供給されたDIWは当該中央部に留まる。これにより、DIW供給工程の初期においてウエハW表面の中央部にDIWが選択的に供給される。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハW表面の周縁部にエッチング液が残留する。この残留エッチング液によって、ウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理される。すなわち、ウエハW表面の中央部にDIWを選択的に供給することにより、ウエハW表面の周縁部におけるエッチング処理の遅れを補うことができる。これにより、ウエハW表面の全域に対して均一なエッチング処理を施すことができる。
【0039】
また、DIW供給工程中にウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理されるので、別途、周縁部を、選択的にエッチング処理する必要がない。すなわち、全体の処理時間が長期化することなく、ウエハWの表面に均一なエッチング処理を施すことができる。
図6は、処理例2におけるウエハWの回転速度の変化を示す図である。図7は、処理例2を説明するための図である。処理例2を、図3、図6および図7を参照しつつ説明する。
【0040】
処理例2では処理例1と同様、高温エッチング液供給工程(図3に示すステップS1)、高温エッチング液停止工程(図3に示すステップS2)、DIW供給工程(図3に示すステップS3)、DIW停止工程(図3に示すステップS4)およびスピンドライ(図3に示すステップS5)が、この順に実行される。この処理例2が処理例1と相違する点は、DIW供給工程において、ウエハWの回転速度を低回転速度(たとえば10rpm)に低下させるタイミングを、DIW供給工程の開始よりも所定の遅延期間T2(たとえば0.5〜1.0秒間)だけ遅らせるようにした点である。それ以外の点については、処理例1と同様であるので説明を省略する。
【0041】
具体的には、DIW供給工程の開始(図3でステップS3)において、DIWノズル6から常温(たとえば25℃)のDIWを供給後遅延期間T2が経過するまでの間は、ウエハWの第1液処理速度で回転されている。したがって、ウエハWの表面上に供給されたDIWは、ウエハWの回転により生じる遠心力を受けてウエハWの表面上を拡がる。
そして、DIWノズル6からのDIWの供給開始から遅延期間T2が経過すると、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を低回転速度(たとえば10rpm)まで減速させる。このウエハWの減速により、ウエハW表面を流れるDIWにウエハWの回転による遠心力がほとんど作用しなくなる。そして、ウエハWの表面上のDIWの拡大が停止し、ウエハWの表面の中央部に比較的大きなDIWの液溜りができる。したがって、遅延期間T2を、DIWノズル6から供給されたDIWが、ウエハWの表面の中央部全域を覆うまでに要する時間に設定すれば、ウエハW表面の周縁部のみにエッチング液を残留させることができる(図7参照)。これにより、ウエハWの周縁部のみをエッチング処理することができる。
【0042】
図8は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置101の構成を模式的に示す断面図である。図8において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。図8に示す基板処理装置101が図1に示す基板処理装置1と相違する点は、DIW供給管16の途中部に、DIW供給管16を流通するDIWの流量を調節する流量調節バルブ17が介装されている点である。流量調節バルブ17はDIWバルブ18よりもDIWノズル6側に介装されている。流量調節バルブ17は制御装置20(図2参照)に、制御対象として接続されている。
【0043】
図9は、基板処理装置101において実行されるエッチング処理の一例である処理例3における処理液(エッチング液およびDIW)の供給流量の変化を示す図である。図10は、処理例3を説明するための図である。
処理例3が処理例1や処理例2と相違する点は、ウエハWの表面の中央部にDIWを選択的に供給するために、DIW供給工程の初期におけるDIWの供給流量を、高温エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給流量よりも少なくした点である。
【0044】
処理例3では処理例1と同様、高温エッチング液供給工程(図3に示すステップS1)、高温エッチング液停止工程(図3に示すステップS2)、DIW供給工程(図3に示すステップS3)、DIW停止工程(図3に示すステップS4)およびスピンドライ(図3に示すステップS5)がこの順に実行される。
以下、処理例3について、図3、図4および図8〜図10を参照しつつ説明する。
【0045】
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示しない)によって、処理室3内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、また、薬液ノズル5は、カップ7の側方のホームポジションに配置されている。
ウエハWがスピンチャック4に保持された後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWを所定の液処理速度(たとえば300rpm)で回転させる。また、アーム11が旋回されて、薬液ノズル5がホームポジションからウエハWの回転軸線C上に移動される。
【0046】
薬液ノズル5の移動が完了すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を開いて、薬液ノズル5から高温(たとえば60℃)のエッチング液を供給する(図3に示すステップS1:高温エッチング液供給工程)。この高温エッチング液供給工程中、薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量はたとえば2.0L/minで一定である。また、この高温エッチング液供給工程中、制御装置20はノズル駆動機構13を制御して、アーム11を所定の角度範囲内で揺動する。アーム11の揺動は等速である。このアーム11の揺動により、薬液ノズル5を、ウエハWの回転軸線C上と、ウエハWの周縁部の上方との間との間を往復移動させる。これによって、薬液ノズル5からのエッチング液が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する(図10(a)参照)。この高温エッチング液供給工程中、ウエハの回転速度はたとえば300rpmで一定である(図9参照)。以上のエッチング液による処理は、前述の第1実施形態の処理例1および処理例2と同様である。
【0047】
薬液ノズル5からのエッチング液の供給開始から所定時間(たとえば35秒間)が経過すると、制御装置20は、エッチング液バルブ15を閉じて、ウエハWへのエッチング液の供給を停止する(図3に示すステップS2:高温エッチング液停止)。また、アーム11の旋回により、薬液ノズル5がウエハWの回転軸線C上からホームポジションに戻される。ステップS1の高温エッチング液供給工程では、前述のように、ウエハW表面の中央部ではエッチング処理が相対的に速く進むのに対して、ウエハW表面における中央部以外の領域ではエッチング処理が相対的に遅くなり、ウエハWの表面内にエッチング処理の不均一が生じる。
【0048】
エッチング液の供給停止の後、制御装置20は、DIWバルブ18を開いて、DIWノズル6から常温(たとえば25℃)のDIWを供給する。DIWノズル6から供給されるDIWは、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される(ステップS3:DIW供給工程)。このとき、流量調節バルブ17は、DIWノズル6からのDIWの供給流量が、エッチング液供給工程におけるエッチング液の流量よりも少ない所定の小流量(たとえば0.5L/min)になるようにその開度が設定されている。
【0049】
DIWノズル6からのDIWの供給流量が小流量であるので、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハW表面の中央部に留まる。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハWの表面の周縁部にエッチング液が残留する(図10(b)参照)。この残留エッチング液によって、ウエハWの表面の周縁部が選択的にエッチング処理される。
【0050】
そして、DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定の低流量期間T3(たとえば1〜10秒間)が経過すると、制御装置20は、流量調節バルブ17の開度を制御して、DIWノズル6からのDIWの供給流量を、所定の大流量(たとえば2.0L/min)にする。
そのため、ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面上を周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に拡がる(図10(c)参照)。これにより、ウエハWの表面に付着しているエッチング液がDIWにより洗い流される。
【0051】
処理例3では、図4に破線Aで示すようにウエハWの回転速度は、液処理速度(300rpm)に維持されている。しかし、所定のタイミング(DIWの供給開始からたとえば25秒間の経過)以降は、ウエハWの回転速度は、処理例1と同様に切り換えられる(図4参照)。このウエハWの回転速度の変化に伴ってウエハWの周縁からのDIWの飛散方向が変化し、カップ7上壁やスピンベース9の上面などに付着しているエッチング液などが洗い流される。
【0052】
DIWノズル6からのDIWの供給開始から所定時間(たとえば40秒間)が経過すると、制御装置20は、DIWバルブ18を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する(ステップS4:DIW停止)。
その後、制御装置20はスピンモータ8を制御して、ウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば3000rpm)まで加速させる。これにより、ウエハWに付着しているDIWが振り切られて除去される(ステップS5:スピンドライ)。
【0053】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられると、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するエッチング処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理室3から搬出される。
以上により第2実施形態(処理例3)によれば、DIW供給工程の初期におけるDIWの供給流量が、高温エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給流量よりも低流量である。そのため、ウエハW表面に供給されたDIWはほとんど拡がらず、ウエハW表面の中央部に留まる。
【0054】
これにより、DIW供給工程の初期においてウエハW表面の中央部にDIWが選択的に供給される。このDIWの供給により、ウエハW表面の中央部のエッチング液は速やかにDIWに置換されるが、ウエハW表面の周縁部ではDIWへの置換効率が低く、そのため、ウエハW表面の周縁部にエッチング液が残留する。この残留エッチング液によって、ウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理される。すなわち、ウエハW表面の中央部にDIWを選択的に供給することにより、ウエハW表面の周縁部におけるエッチング処理の遅れを補うことができる。これにより、ウエハW表面の全域に対して均一なエッチング処理を施すことができる。
【0055】
また、DIW供給工程中にウエハWの周縁部が選択的にエッチング処理されるので、別途、周縁部を、選択的にエッチング処理する必要がない。すなわち、全体の処理時間が長期化することなく、ウエハWの表面に均一なエッチング処理を施すことができる。
図11は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置201の構成を模式的に示す断面図である。図11において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。図11に示す基板処理装置101が図1に示す基板処理装置1と相違する点は、DIW供給管16に代えて、高温DIW供給源からの約60℃に加熱されたDIW(高温DIW)が供給される高温DIW供給管202がDIWノズル6に接続されている点である。高温DIW供給管202の途中部には、DIWノズル6からの高温DIWの供給/供給停止を切り換えるための高温DIWバルブ203が介装されている。高温DIWバルブ203は制御装置20(図2参照)に、制御対象として接続されている。
【0056】
図12は、基板処理装置201において実行されるエッチング処理の一例である処理例4を示す工程図である。
処理例4が、第1実施形態の処理例1や処理例2と相違する点は、リンス処理に用いるリンス液として、常温のDIWに代えて高温(約60℃)のDIWを用いた点にある。
図12に示す高温エッチング液供給工程(ステップS11)、高温エッチング液停止工程(ステップS12)、高温DIW供給工程(ステップS13)、高温DIW停止工程(ステップS14)およびスピンドライ工程(ステップS15)は、それぞれ、高温エッチング液供給工程(図3に示すステップS1)、高温エッチング液停止工程(図3に示すステップS2)、DIW供給工程(図3に示すステップS3)、DIW停止工程(図3に示すステップS4)およびスピンドライ工程(図3に示すステップS5)と同様の処理である。
【0057】
前述の第1実施形態の処理例1または処理例2では、リンス液として常温のDIWがウエハWの表面に供給される。そのため、DIW供給工程(図3に示すステップS3)の開始時に、ウエハWの表面上のエッチング液が、ウエハWの表面に供給されるDIWによって熱を奪われ、急激に温度低下するおそれがある。この場合、ウエハWの周縁部に残留するエッチング液の液温が低下し、そのエッチング液が発揮するエッチング力が低くなるおそれがある。
【0058】
これに対し、この第3実施形態(処理例4)では、ウエハW表面に高温のDIWが供給される。そのため、周縁部に残留するエッチング液の液温の低下を抑制することができる。これにより、周縁部に残留するエッチング液に高いエッチング力を発揮させることができる。
また、第3実施形態は、とくに第1実施形態の処理例2と組み合わされることが好ましい。DIW供給工程の開始時において、処理例2では処理例1と比べて、ウエハWの表面上に残留するエッチング液の量が少ないが、ウエハWの表面上に残留するエッチング液が高いエッチング力を発揮するので、ウエハWにエッチング処理を良好に施すことができる。
【0059】
また、第3実施形態は、第1実施形態の処理例1や処理例2だけでなく、第2実施形態(処理例3)と組み合わせていてもよい。
また、第1実施形態(処理例1または処理例2)と第2実施形態(処理例3)とを組み合わせることもできる。また、第1実施形態(処理例1または処理例2)と第2実施形態(処理例3)とを組み合わせたものに、さらに第3実施形態(処理例4)を組み合わせることもできる。
【0060】
また、前述の各実施形態において、高温エッチング液の供給中(図3に示すステップS1または図3に示すステップS11)、薬液ノズル5を、その吐出口をウエハWの表面の回転中心付近に向けた状態で停止させていてもよい(いわゆる中心吐出方式)。この場合、ウエハWの表面の中央部にエッチング液が供給される。ウエハWの表面に供給されたエッチング液は、ウエハWの回転により生じる遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れ、ウエハWの表面の全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面の全域にエッチング液による処理が施される。
【0061】
次に、第1エッチング試験について説明する。
表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハW(外径300mm)を試料として用い、基板処理装置1を用いて次に述べるエッチング処理を行った。
<実施例1>
処理例1のエッチング処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1を10秒間とした。
<実施例2>
処理例2のエッチング処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1を10秒間とした。また、遅延期間T2を0.7秒間とした。
<比較例1>
処理例1において、エッチング液の供給停止後も、ウエハWの回転速度を第1液処理速度のまま維持させた(図4に破線Aで示す)。DIWの供給開始からたとえば10秒間の経過後、ウエハWの回転速度を、処理例1と同様に切り換えた(図4参照)。
【0062】
実施例1、実施例2および比較例1において、第1液処理速度(エッチング液供給工程におけるウエハWの回転速度)を300rpmとし、第2液処理速度(DIW供給工程におけるウエハWの回転速度)を300rpmとした。
薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量および液温は、それぞれ2.0L/minおよび60℃であった。エッチング液として希ふっ酸を用いた。DIWノズル6からのDIWの供給流量は2.0L/mであり、一定であった。また、DIWの液温は25℃であった。
【0063】
そして、ウエハWの酸化膜のエッチング量の面内分布(半径方向位置とエッチング量との関係)を求めた。このエッチング試験の結果を図13に示す。図13は、第1エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフであり、横軸はウエハWの半径を示しており、縦軸はエッチング量を示している。
次に、第2エッチング試験について説明する。
【0064】
表面に酸化膜が形成されたシリコンウエハW(外径300mm)を試料として用い、基板処理装置1,101,201を用いて次に述べるエッチング処理を行った。
<実施例3>
基板処理装置1を用いて、処理例1のエッチング処理と同様の処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1を10秒間とした。また、DIWノズル6からのDIWの液温は25℃であった。この実施例3の処理が処理例1と相違する点は、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた点(いわゆる中心吐出方式)である。
<実施例4>
基板処理装置101を用いて、処理例3のエッチング処理と同様の処理を試料に施した。低流量期間T3におけるDIWノズル6からのDIWの供給流量は0.5L/minであった。また、DIWノズル6からのDIWの液温は25℃であった。この実施例4の処理が処理例1と相違する点は、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた点(いわゆる中心吐出方式)である。
<実施例5>
基板処理装置201を用いて、処理例1と処理例3と処理例4とを組み合わせた処理と同様の処理を試料に施した。低回転速度を10rpmとし、低回転期間T1および低流量期間T3をともに10秒間とした。低流量期間T3におけるDIWノズル6からのDIWの供給流量は0.5L/minであった。また、DIWノズル6からのDIWの液温は60℃であった。この実施例5の処理が処理例3および処理例4と相違する点は、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた点(いわゆる中心吐出方式)である。
<比較例2>
処理例1において、エッチング液の供給停止後も、ウエハWの回転速度を第1液処理速度のまま維持させた(図4に破線Aで示す)。DIWの供給開始からたとえば10秒間の経過後、ウエハWの回転速度を、処理例1と同様に切り換えた(図4参照)。
【0065】
また、処理例1とは異なり、エッチング液供給工程で、薬液ノズル5の吐出口をウエハWの表面の回転中心に向けた状態で停止させた(いわゆる中心吐出方式)。また、DIWノズル6からのDIWの液温は25℃であった。
実施例3、実施例4、実施例5および比較例2において、第1液処理速度(エッチング液供給工程におけるウエハWの回転速度)を1000rpmとし、第2液処理速度(DIW供給工程および高温DIW供給工程におけるウエハWの回転速度)を1000rpmとした。
【0066】
薬液ノズル5からのエッチング液の供給流量および液温は、それぞれ2.0L/minおよび60℃であった。エッチング液として希ふっ酸を用いた。また、DIWノズル6からのDIWの供給流量は、低流量期間T3を除き2.0L/minであった。
そして、ウエハWの酸化膜のエッチング量の面内分布(半径方向位置とエッチング量との関係)を求めた。このエッチング試験の結果を図14に示す。図14は、第2エッチング試験におけるエッチング量の面内分布を示すグラフであり、横軸はウエハWの半径を示しており、縦軸はエッチング量を示している。
【0067】
実施例1〜5では、ウエハWの周縁部におけるエッチング量の低下を抑制できたことが理解される。とくに、実施例2は、エッチングによる面内均一性が優れていることが理解される。
以上、本発明の3つの実施形態について説明したが、本発明は他の形態でも実施するこができる。
【0068】
たとえば、第1実施形態の処理例1において、ウエハWの減速のタイミングを、高温エッチング液供給工程終了(ステップS2)ではなく、DIW供給工程開始(ステップS3)としてもよい。
また、DIW供給工程(図3に示すステップS3)または高温DIW供給工程(図12に示すステップS13)では、エッチング液の供給停止に連続して、DIW(高温DIW)が供給開始されてもよい。
【0069】
また、ウエハWの低回転速度(低回転期間T1における回転速度)としてたとえば10rpmを例示したが、低回転速度は、ウエハWに供給されるDIWがウエハWの回転による遠心力による移動を生じない範囲、すなわち0rpm〜100rpmの範囲内であることが望ましい。
また、第2実施形態の処理例3において、DIW供給工程(図3に示すステップS3)または高温DIW供給工程(図12に示すステップS13)の期間を通じて、DIWノズル6からのDIWの供給流量を、小流量(たとえば0.5L/min)としてもよい。
【0070】
また、前述の各実施形態において、エッチング液供給工程(図3に示すステップS1、図12に示すステップS11)における薬液ノズル5のスキャンは、一方向に移動中にのみ薬液ノズル5から薬液を供給させるいわゆる一方向スキャンであってもよい。また、薬液ノズル5のスキャンは、ウエハWの回転中心を挟んで対向関係にある一対の位置の間をスキャンするものであってもよい。
【0071】
また、前述の各実施形態では、酸化膜の除去のためのエッチング処理を例に挙げて説明したが、ウエハWの窒化膜の除去のためのエッチング処理を施すものであってもよい。かかる場合には、エッチング液としてたとえば燐酸が採用される。また、ウエハWのシンニングのためのエッチング処理を施す場合には、エッチング液としてたとえばふっ硝酸が採用される。
【0072】
また、洗浄処理などウエハWに対して薬液による他の処理が施されていてもよい。この薬液として、前述のふっ酸に加え、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、バファードフッ酸(Buffered HF:ふっ酸とふっ化アンモニウムとの混合液)などを例示することができる。
【0073】
また、前述の各実施形態では、リンス液としてDIWを用いる場合を例にとって説明したが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、還元水(水素水)、磁気水、などをリンス液として採用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201 基板処理装置
3 処理室
5 薬液ノズル
6 DIWノズル
8 スピンモータ
14 エッチング液供給管
15 エッチング液バルブ
16 DIW供給管
17 流量調節バルブ
18 DIWバルブ
202 高温DIW供給管
203 高温DIWバルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内で、前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板の表面に供給する高温薬液供給工程と、
前記高温薬液供給工程後、前記基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給工程とを含み、
前記リンス液供給工程は、その初期において、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記高温薬液供給工程と並行して実行され、前記基板を所定の第1回転速度で回転させる薬液処理回転工程をさらに含み、
前記周縁部処理工程は、前記基板を、前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させる低回転工程を含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記周縁部処理工程は、前記リンス液供給工程の少なくとも開始時において前記第1回転速度と同等の速度で前記基板を回転させる高回転工程と、前記高回転工程後に前記第2回転速度で基板を回転させる低回転工程とを含む、請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記周縁部処理工程におけるリンス液の供給流量は、前記高温薬液供給工程における薬液の供給流量よりも少ない、請求項1〜3記載のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記リンス液供給工程において前記基板の表面に供給されるリンス液が、前記処理室の温度よりも高温である、請求項1〜4記載のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
処理室と、
前記処理室内で基板を回転するための回転手段と、
前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板の表面に供給するための高温薬液供給手段と、
基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するためのリンス液供給手段と、
前記回転手段の回転動作、前記高温薬液供給手段の薬液供給動作および前記リンス液供給手段のリンス液供給動作を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段が、前記基板の表面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程の初期に、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を実行する、基板処理装置。
【請求項1】
処理室内で、前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板の表面に供給する高温薬液供給工程と、
前記高温薬液供給工程後、前記基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給工程とを含み、
前記リンス液供給工程は、その初期において、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記高温薬液供給工程と並行して実行され、前記基板を所定の第1回転速度で回転させる薬液処理回転工程をさらに含み、
前記周縁部処理工程は、前記基板を、前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させる低回転工程を含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記周縁部処理工程は、前記リンス液供給工程の少なくとも開始時において前記第1回転速度と同等の速度で前記基板を回転させる高回転工程と、前記高回転工程後に前記第2回転速度で基板を回転させる低回転工程とを含む、請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記周縁部処理工程におけるリンス液の供給流量は、前記高温薬液供給工程における薬液の供給流量よりも少ない、請求項1〜3記載のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記リンス液供給工程において前記基板の表面に供給されるリンス液が、前記処理室の温度よりも高温である、請求項1〜4記載のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
処理室と、
前記処理室内で基板を回転するための回転手段と、
前記処理室の温度よりも高温の薬液を基板の表面に供給するための高温薬液供給手段と、
基板の表面に、薬液を洗い流すためのリンス液を供給するためのリンス液供給手段と、
前記回転手段の回転動作、前記高温薬液供給手段の薬液供給動作および前記リンス液供給手段のリンス液供給動作を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段が、前記基板の表面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程の初期に、前記基板の表面の中央部にリンス液を選択的に供給して、前記基板表面の周縁部に残留する薬液を用いて当該周縁部を選択的に処理させる周縁部処理工程を実行する、基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−74475(P2012−74475A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217217(P2010−217217)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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