説明

基板処理方法および記憶媒体

【課題】 変性処理およびその後の溶解処理によるダメージにより低誘電率膜のk値が上昇した場合にも十分にk値を回復させることができる基板処理方法を提供すること。
【解決手段】 低誘電率膜をエッチング処理して所定パターンを形成し(ステップ3)、エッチング処理を終了した後に残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性し(ステップ8)、ステップ8の後、パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、ステップ8の際に低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をし、変性された物質を溶解除去し(ステップ9)、ステップ9の後、パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、ステップ9の際に低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をし(ステップ10)、ステップ10の後、基板をベークしてシリル化処理後の低誘電率膜の比誘電率を下げる(ステップ11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デュアルダマシン法等による半導体装置の製造過程において所定の物質を変性させるための変性処理および変性物質の溶解除去処理を行う基板処理方法およびそのような方法を実行するためのプログラムを記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスにおいては、微細化による配線間隔の減少が、配線間に大きな容量を発生させ、信号の伝播速度を低下させることにより動作速度の遅延を招く。この問題を解決するため、比誘電率(k値)の低い絶縁材料(Low−k材料)の開発ならびにそれを用いた多層配線の開発がなされている。一方、配線材料として、低抵抗かつ高いエレクトロマイグレーション耐性を有する銅が注目されており、銅の溝配線や接続孔の形成には、シングルダマシン法やデュアルダマシン法が多用されている。
【0003】
図1は、デュアルダマシン法により多層銅配線を形成する一連の工程を説明するための説明図である。まず、シリコン基板(図示せず)の上のLow−k材料からなる絶縁膜である低誘電率膜(Low−k膜)200に、バリアメタル層201を介して銅からなる下部配線202を形成し、エッチングストッパ膜203を介して層間絶縁膜としてLow−k膜204を形成し、さらにその表面に反射防止膜(BARC;Bottom Anti-Reflective Corting)205を形成した後に反射防止膜205の表面にレジスト膜206を形成し、次いでレジスト膜206を所定のパターンで露光し、これを現像することによって、レジスト膜206に回路パターンを形成する(工程(a))。
【0004】
次いで、レジスト膜206をマスクとしてLow−k膜204をエッチングし、ビアホール204aを形成する(工程(b))。反射防止膜205とレジスト膜206を、薬液処理やアッシング処理等によって除去した後に、ビアホール204aを有する絶縁膜204の表面に犠牲膜207を形成する(工程(c))。このときビアホール204aも犠牲膜207によって埋められる。
【0005】
犠牲膜207の表面にレジスト膜208を形成して、レジスト膜208を所定のパターンで露光し、これを現像することによって、レジスト膜208に回路パターンを形成する(工程(d))。その後、レジスト膜208をマスクとして犠牲膜207およびLow−k膜204をエッチング処理することによって、ビアホール204aの上により幅の広いトレンチ204bが形成される(工程(e))。その後、レジスト膜208と犠牲膜207を除去することによって、絶縁膜204にビアホール204aとトレンチ204bが形成される(工程(f))。そして、これらの中に上部配線として銅が埋め込まれる。
【0006】
ところで、犠牲膜207としてはSi−O系の無機材料が多用されており、従来のレジスト膜除去に用いられているアッシング処理では犠牲膜207を除去することが困難である。また、薬液で溶解することも試みられているが、極めて処理速度が遅くなってしまう。
【0007】
このような犠牲膜を除去する技術として、水蒸気とオゾンを含む処理ガスにより犠牲膜を所定の薬液に可溶に変性させ、その後、その薬液により犠牲膜を除去する技術が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、このような水蒸気とオゾンを含む処理ガスによって液可溶化処理を行い、その後に薬液による洗浄処理を行うと、Low−k材料にダメージが生じて比誘電率が上昇してしまい、層間絶縁膜としてLow−k材料を用いた効果が低減してしまうことが懸念される。
【0009】
一方、このようなダメージを回復させる技術として、特許文献2には、エッチングやレジスト膜除去後に、ダメージを受けた部分の表面をシリル化剤で改質してメチル基等のアルキル基を末端基とするシリル化処理が提案されており、上記洗浄処理後や変性処理後のダメージを回復させる際にもこの技術を適用することが考えられる。
【0010】
しかしながら、このような洗浄処理や変性処理の後にシリル化処理を行っても、k値の回復の程度が十分とは言えない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−214388号公報
【特許文献2】特開2006−049798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、変性処理およびその後の溶解処理によるダメージにより低誘電率膜のk値が上昇した場合にも十分にk値を回復させることができる基板処理方法を提供することにある。
また他の目的は、そのような製造方法を実行するプログラムが記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点によれば、基板上に形成された低誘電率膜をエッチング処理して所定パターンを形成することと、前記エッチング処理を終了した後に残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させることと、前記残存する物質を変性させた後、変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記所定の液を供給して前記変性された物質を溶解除去することと、さらに前記変性された物質の溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることとを有する基板処理方法が提供される。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、基板上に形成された低誘電率膜の上に犠牲膜を形成することと、前記犠牲膜の上にエッチングマスクを形成し、前記犠牲膜と前記低誘電率膜をエッチングして所定パターンを形成することと、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に可溶化するように変性させることと、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを変性させた後、変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去する前に、前記パターンが形成されたエッチングマスク、犠牲膜、および低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記所定の液を供給して前記変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去することと、さらに前記変性された犠牲膜とエッチングマスクの溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることとを有する基板処理方法が提供される。
【0015】
上記第1、第2の観点において、前記低誘電率膜としては、ポーラス低誘電率材料が好適である。前記低誘電率膜としては、アルキル基を末端基として有するものを用いることができる。
【0016】
さらに、前記残存する物質の変性又は前記犠牲膜とエッチングマスクの変性は、水蒸気とオゾンを含む処理ガスを供給して行うことができる。また、前記残存する物質の変性又は前記犠牲膜とエッチングマスクの変性は、オゾンを含む処理ガスを供給して行うこともできる。前記所定の液は、酸性またはアルカリ性薬液を用いることができる。
【0017】
さらにまた、前記シリル化処理を行うためのシリル化剤としては、分子内にシラザン結合(Si−N)を有する化合物を用いることができ、前記分子内にシラザン結合を有する化合物として、TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、およびDMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)から選択されたものを用いることができる。
【0018】
さらにまた、前記基板のベークは、前記シリル化処理する工程よりも高い温度で行うことが好ましく、具体的には150〜400℃で行われることが好ましい。さらにまた、前記シリル化処理に先立ってベーク処理を行ってもよい。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、被エッチング膜を有し、エッチング処理により被エッチング膜に所定パターンが形成され、エッチング処理後に残存する物質が所定の液に対して可溶化するように変性され、この変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された被エッチング膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、さらに前記所定の液により前記変性された物質が溶解除去された基板に対し、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された被エッチング膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法が提供される。
【0020】
本発明の第4の観点によれば、コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、基板上に形成された低誘電率膜をエッチング処理して所定パターンを形成することと、前記エッチング処理を終了した後に残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させることと、前記残存する物質を変性させた後、変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記所定の液を供給して前記変性された物質を溶解除去することと、さらに前記変性された物質の溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることとを有する基板処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる、記憶媒体が提供される。
【0021】
本発明の第5の観点によれば、コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、基板上に形成された低誘電率膜の上に犠牲膜を形成することと、犠牲膜の上にエッチングマスクを形成し、前記犠牲膜と前記低誘電率膜をエッチングして所定パターンを形成することと、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に可溶化するように変性させることと、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを変性させた後、変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去する前に、前記パターンが形成されたエッチングマスク、犠牲膜、および低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記所定の液を供給して前記変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去することと、さらに前記変性された犠牲膜とエッチングマスクの溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることとを有する基板処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる、記憶媒体が提供される。
【0022】
本発明の第6の観点によれば、コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、被エッチング膜を有し、エッチング処理により被エッチング膜に所定パターンが形成され、エッチング処理後に残存する物質が所定の液に対して可溶化するように変性され、この変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された被エッチング膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、さらに前記所定の液により前記変性された物質が溶解除去された基板に対し、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された被エッチング膜の比誘電率を下げることとを有する基板処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる、記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、変性処理後の溶解処理の後にシリル化処理し、その後基板をベークするので、ダメージを受けて比誘電率(k値)が低下した低誘電率膜について、そのk値を十分に回復させることができる。すなわち、溶解処理の後は、低誘電率膜には水分が含まれており、その水分とシリル化剤とが反応することによりSi系副生成物が形成される。このSi系副生成物はそれ自体のk値が高いため、シリル化処理によりメチル基等のアルキル基を末端基としてダメージを回復させても、結果的にk値が十分に低下しないのである。特に、ポーラス低誘電率膜の場合には、気孔中に水分が多量に含まれ、内部にこのようなSi系副生成物が入り込むため、このようなことが生じやすい。そこで、本発明では、ベーク処理により、このようなSi系副生成物を分解除去する。これにより、k値を上昇させるSi系副生成物が低誘電率膜中に存在しなくなり、低誘電率膜のk値を十分に回復させることができる。また、上記変性処理によって、パターンが形成された低誘電率膜にダメージが入ることがあり、そのようなダメージが入った状態でその後の薬液を用いた溶解除去処理を行うとパターンはがれが生じるおそれがある。この点、本発明によれば、溶解除去処理の前にもシリル化処理を行うので、変性処理によって低誘電率膜に入ったダメージを回復することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のデュアルダマシン法により多層銅配線を形成する一連の工程を説明するための説明図。
【図2】本発明の一実施形態に基板処理方法が適用される、デュアルダマシン法による半導体装置の製造プロセスに用いられるウエハ処理システムの概略構成を示す説明図。
【図3】図2のウエハ処理システムに用いられる洗浄処理装置の概略構造を示す平面図。
【図4】図2のウエハ処理システムに用いられる洗浄処理装置の概略構造を示す正面図。
【図5】図2のウエハ処理システムに用いられる洗浄処理装置の概略構造を示す背面図。
【図6】洗浄処理装置に搭載された変性処理ユニットを示す概略断面図。
【図7】洗浄処理装置に搭載されたシリル化ユニットを示す概略断面図。
【図8】洗浄処理装置に搭載された洗浄ユニットを示す概略断面図。
【図9】洗浄処理装置に搭載されたホットプレートユニットを示す概略断面図。
【図10】本発明の一実施形態に基板処理方法が適用される、デュアルダマシン法による半導体装置の製造プロセスを示すフローチャート。
【図11】図10のフローチャートに示す各工程の状態を説明するための説明図。
【図12】Low−k膜のダメージおよびシリル化による回復を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。ここでは、デュアルダマシン法により半導体装置を製造する際に本発明を適用した例について説明する。
【0026】
図2は本発明の一実施形態に基板処理方法が適用される、デュアルダマシン法による半導体装置の製造プロセスに用いられるウエハ処理システムの概略構成を示す説明図である。このウエハ処理システムは、SOD(Spin On Dielectric)装置101と、レジスト塗布/現像装置102と、露光装置103と、洗浄処理装置104と、エッチング装置105と、PVD装置の1つであるスパッタ装置106と、電解メッキ装置107と、研磨装置としてのCMP装置109とを備えた処理部100と、プロセスコントローラ111、ユーザーインターフェース112、記憶部113を含むメイン制御部110を備えている。ここで、処理部100のSOD装置101とスパッタ装置106と電解メッキ装置107は、成膜装置である。なお、処理部100の装置間でウエハWを搬送する方法としては、オペレータによる搬送方法や、図示しない搬送装置による搬送方法が用いられる。
【0027】
処理部100の各装置は、CPUを備えたプロセスコントローラ111に接続されて制御される構成となっている。プロセスコントローラ111には、工程管理者が処理部100の各装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理部100の各装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース112と、処理部100で実行される各種処理をプロセスコントローラ111の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部113とが接続されている。
【0028】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース112からの指示等を受けて、任意のレシピを記憶部113から呼び出してプロセスコントローラ111に実行させることで、プロセスコントローラ111の制御下で、処理部100において所望の各種処理が行われる。また、前記レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、不揮発性メモリなどの読み出し可能な記憶媒体に格納された状態のものであってもよく、さらに、処理部100の各装置間、あるいは外部の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
なお、メイン制御部110による全体的な制御は行なわず、あるいは、メイン制御部110による全体的な制御と重畳して、処理部100の各装置毎にプロセスコントローラ、ユーザーインターフェースおよび記憶部を含む制御部を個別に配備して制御を行なう構成を採用することもできる。
【0029】
上記SOD装置101は、ウエハWに薬液を塗布してLow−k膜等の層間絶縁膜やエッチングストッパ膜等をスピンコート法により形成するために用いられる。SOD装置101の詳細な構成は図示しないが、SOD装置101は、スピンコーターユニットと、塗布膜が形成されたウエハWを熱処理する熱処理ユニットを備えている。ウエハ処理システムでは、SOD装置101に代えて、化学気相蒸着法(CVD;chemical vapor deposition)によりウエハWに絶縁膜等を形成するCVD装置を用いてもよい。
【0030】
上記レジスト塗布/現像装置102は、エッチングマスクとして用いられるレジスト膜や反射防止膜等を形成するために用いられる。レジスト塗布/現像装置102の詳細な構成は図示しないが、レジスト塗布/現像装置102は、ウエハWにレジスト液等を塗布してレジスト膜等をスピンコート成膜するレジスト塗布処理ユニットと、ウエハWに反射防止膜(BARC)を塗布するBARC塗布処理ユニットと、ウエハWに犠牲膜(SLAM)を塗布する犠牲膜塗布処理ユニットと、露光装置103において所定のパターンで露光されたレジスト膜を現像処理する現像処理ユニットと、レジスト膜が成膜されたウエハWや露光処理されたウエハW、現像処理が施されたウエハWをそれぞれ熱的に処理する熱的処理ユニット等を有している。
【0031】
露光装置103は、レジスト膜が形成されたウエハWに所定の回路パターンを露光するために用いられる。洗浄処理装置104は、後に詳細に説明するように、純水や薬液による洗浄処理、エッチング処理後のポリマー残渣等の変性処理、層間絶縁膜のエッチングによるダメージからの回復処理が行われる。
【0032】
エッチング装置105は、ウエハW上に形成された層間絶縁膜等にエッチング処理を施すためのものである。エッチング処理は、プラズマを利用するものであってもよく、薬液を用いるものであってもよい。スパッタ装置106は、例えば、拡散防止膜やCuシードを形成するために用いられる。電解メッキ装置107ではCuシードが形成された溝配線等にCuが埋め込まれ、CMP装置109はCuが埋め込まれた溝配線等の表面の平坦化処理を行うためのものである。
【0033】
次に、本発明にとって重要な役割を果たす洗浄処理装置104について詳細に説明する。図3は洗浄処理装置104の概略平面図であり、図4はその概略正面図であり、図5はその概略背面図である。洗浄処理装置104は、ウエハWが収容されたキャリアが他の処理装置等から順次搬入され、逆に洗浄処理装置104における処理の終了したウエハWを収容したキャリアを次の処理を行う処理装置等へ搬出するためのキャリアステーション4と、洗浄処理や変性処理、回復処理をそれぞれ行う複数の処理ユニットが設けられた処理ステーション2と、処理ステーション2とキャリアステーション4との間でウエハWの搬送を行う搬送ステーション3と、処理ステーション2で使用する薬液や純水、ガス等の製造、調製、貯留を行うケミカルステーション5とを具備している。
【0034】
キャリアCの内部において、ウエハWは略水平姿勢で鉛直方向(Z方向)に一定の間隔で収容されている。このようなキャリアCに対するウエハWの搬入出はキャリアCの一側面を通して行われ、この側面は蓋体10a(図3には図示せず。図4および図5に蓋体10aが取り外された状態を示す)によって開閉自在となっている。
【0035】
図3に示すように、キャリアステーション4は、図中Y方向に沿って3箇所にキャリアCを載置できる載置台6を有している。キャリアCは蓋体10aが設けられた側面がキャリアステーション4と搬送ステーション3との間の境界壁8a側を向くようにして載置台6に載置される。境界壁8aにおいてキャリアCの載置場所に対応する位置には窓部9aが形成されており、各窓部9aの搬送ステーション3側には窓部9aを開閉するシャッタ10が設けられている。このシャッタ10はキャリアCの蓋体10aを把持する把持手段(図示せず)を有しており、図4および図5に示すように、蓋体10aを把持した状態で搬送ステーション3側に、蓋体10aを退避させることができるようになっている。
【0036】
搬送ステーション3に設けられたウエハ搬送装置7はウエハWを保持可能なウエハ搬送ピック7aを有している。ウエハ搬送装置7は搬送ステーション3の床にY方向に延在するように設けられたガイド(図4および図5参照)7bに沿ってY方向に移動可能である。また、ウエハ搬送ピック7aは、X方向にスライド自在であり、かつ、Z方向に昇降自在であり、かつ、X−Y平面内で回転自在(θ回転)である。
【0037】
このような構造により、キャリアCの内部と搬送ステーション3とが窓部9aを介して連通するようにシャッタ10を退避させた状態において、ウエハ搬送ピック7aは、載置台6に載置された全てのキャリアCにアクセス可能であり、キャリアC内の任意の高さ位置にあるウエハWをキャリアCから搬出することができ、逆にキャリアCの任意の位置にウエハWを搬入することができる。
【0038】
処理ステーション2は、搬送ステーション3側に2台のウエハ載置ユニット(TRS)13a,13bを有している。例えば、ウエハ載置ユニット(TRS)13bは搬送ステーション3からウエハWを受け入れる際にウエハWを載置するために用いられ、ウエハ載置ユニット(TRS)13aは処理ステーション2において所定の処理が終了したウエハWを搬送ステーション3に戻す際にウエハWを載置するために用いられる。
【0039】
処理ステーション2の背面側には、エッチング処理後のポリマー残渣やレジスト膜、犠牲膜等を水蒸気とオゾン(O)とを含むガスにより所定の薬液に対して可溶化するように変性させる変性処理ユニット(VOS)15a〜15fが配置されている。この変性処理ユニット(VOS)15a〜15fでは、エッチング処理後のポリマー残渣やレジスト膜、犠牲膜等の形状はそのままに維持されつつ、その化学的性質のみが所定の薬液に可溶化するように変化する。
【0040】
変性処理ユニット(VOS)15a,15dの上には、変性処理および洗浄処理等によってダメージを受けた層間絶縁膜をダメージ等から回復させるためにシリル化処理するシリル化ユニット(SCH)11a,11bが設けられている。
【0041】
処理ステーション2の正面側には、変性処理ユニット(VOS)15a〜15fにおける処理が終了したウエハWに薬液処理や水洗処理を施して、変性したポリマー残渣等を除去する洗浄ユニット(CNU)12a〜12dが配置されている。
【0042】
処理ステーション2において、主ウエハ搬送装置14を挟んでウエハ載置ユニット(TRS)13a,13bと対向する位置には、シリル化ユニット(SCH)11a,11bでシリル化処理した後のベークや、洗浄処理ユニット(CNU)12a〜12dでの処理を終えたウエハWの加熱乾燥を行うホットプレートユニット(HP)19a〜19dが4段に積み重ねられて配置されている。さらにまた、ウエハ載置ユニット(TRS)13aの上側には、加熱乾燥処理されたウエハWを冷却するクーリングプレートユニット(COL)21a,21bが積み重ねられている。なお、ウエハ載置ユニット(TRS)13bは、クーリングプレートユニットとして用いることが可能である。処理ステーション2の上部には処理ステーション2の内部に清浄な空気を送風するファンフィルターユニット(FFU)25が設けられている。
【0043】
処理ステーション2の略中央部には、処理ステーション2内においてウエハWを搬送する主ウエハ搬送装置14が設けられている。主ウエハ搬送装置14は、ウエハWを搬送するウエハ搬送アーム14aを有している。主ウエハ搬送装置14はZ軸周りに回転自在である。また、ウエハ搬送アーム14aは水平方向で進退自在であり、かつZ方向に昇降自在である。このような構造により、主ウエハ搬送装置14は、それ自体をX方向に移動させることなく、処理ステーション2に設けられた各ユニットにアクセスすることができ、これら各ユニット間でウエハWを搬送することができるようになっている。
【0044】
ケミカルステーション5には、処理ステーション2に設けられた変性処理ユニット(VOS)15a〜15fへ処理ガスとしてオゾンや水蒸気等を供給する処理ガス供給部16と、洗浄ユニット(CNU)12a〜12dへ洗浄液を供給する洗浄液供給部17と、シリル化処理ユニット(SCH)11a,11bにシリル化剤やキャリアガス等を供給するシリル化剤供給部18とを有している。
【0045】
次に、変性処理ユニット(VOS)15aの構造について、図6に示す概略断面図を参照しながら詳細に説明する。なお、他の変性処理ユニット(VOS)15b〜15fも全く同様の構造を有している。この変性処理ユニット(VOS)15aは、ウエハWを収容する密閉式のチャンバ30を有しており、チャンバ30は固定された下部容器41aと、下部容器41aの上面を覆う蓋体41bから構成され、蓋体41bは膜変性処理ユニット(VOS)15aのフレーム42に固定されたシリンダ43によって昇降自在である。図6は蓋体41bを下部容器41aに密接させた状態と、蓋体41bは下部容器41aの上方に待避した状態を示している。
【0046】
下部容器41a周縁の立起部の上面にはOリング51が配置されている。シリンダ43を駆動して蓋体41bを降下させると、蓋体41bの裏面周縁が下部容器41a周縁の立起部の上面に当接するとともに、Oリング51が圧縮されてチャンバ30内に密閉された処理空間が形成される。
【0047】
下部容器41aにはウエハWを載置するステージ33が設けられており、このステージ33の表面には、ウエハWを支持するプロキシミティピン44が複数箇所に設けられている。
【0048】
ステージ33の内部にはヒータ45aが、蓋体41bにはヒータ45bがそれぞれ埋設されており、ステージ33と蓋体41bをそれぞれ所定温度で保持することができるようになっている。これによりウエハWの温度が一定に保持される。
【0049】
蓋体41bの裏面には、ウエハWを保持する爪部材46が、例えば3箇所(図6では2箇所のみ図示)に設けられている。ウエハ搬送アーム14aはこの爪部材46に対してウエハWの受け渡しを行う。爪部材46がウエハWを保持した状態で蓋体41bを降下させると、その降下途中でウエハWは、ステージ33に設けられたプロキシミティピン44に受け渡しされる。
【0050】
チャンバ30では、処理ガスを内部に導入するガス導入口34aおよび処理ガスを外部へ排気するガス排出口34bが下部容器41aに設けられている。処理ガス供給装置16はガス導入口34aに接続され、ガス排出口34bには排気装置32が接続されている。
【0051】
ウエハWの処理ガスによる処理は、チャンバ30の内部を一定の陽圧に保持して行うことが好ましい。このために下部容器41aと蓋体41bとをシリンダ43により押圧力するだけでなく、これらの端面に設けられた突起部47a,47bどうしをロック機構35によって締め付ける。
【0052】
このロック機構35は、支持軸52と、回転装置54によって回転自在にされた回転筒55と、回転筒55に固定された円板56と、円板56の周縁に設けられた挟持部材57とを有している。挟持部材57は、押圧ローラ59a,59bと、回転軸58を保持するローラ保持部材48とを有している。
【0053】
突起部47a,47bは、等間隔に4カ所に設けられており、これらの間には間隙部49が形成されている。突起部47a,47bはそれぞれ重なる位置に配置される。この間隙部49の位置に挟持部材57が配置されている状態では、蓋体41bの昇降を自由に行うことができる。
【0054】
回転筒55とともに円板56を所定角度回転させると、押圧ローラ59bは突起部47bの上面で静止し、押圧ローラ59aは突起部47aの下側で静止する。なお、他の変性処理ユニットも全く同様の構造を有している。
【0055】
次に、シリル化ユニット(SCH)11aについて、図7に示す概略断面図を参照しながら詳細に説明する。なお、シリル化ユニット(SCH)11bも全く同様の構造を有している。シリル化ユニット(SCH)11aは、ウエハWを収容するチャンバ61を備えており、チャンバ61は、固定された下部容器61aと、下部容器61aを覆う蓋体61bから構成され、蓋体61bは図示しない昇降装置により昇降自在である。下部容器61aにはホットプレート62が設けられており、ホットプレート62の周囲からシリル化剤、例えばDMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)の蒸気を含む窒素ガスがチャンバ61内に供給されるようになっている。DMSDMAは気化器63によって気化され、Nガスにキャリアされてチャンバ61に供給される。
【0056】
ホットプレート62は、例えば、室温〜400℃の範囲で温度調節が可能であり、その表面にはウエハWを支持するピン64が設けられている。ウエハWをホットプレート62に直接載置しないことで、ウエハWの裏面の汚染が防止される。下部容器61aの外周部上面には第1シールリング65が設けられており、蓋体61bの外周部下面には、蓋体61bを下部容器61aに押し付けた際に第1シールリング65と接触する第2シールリング66が設けられている。これら第1および第2シールリング65,66間の空間は減圧可能となっており、この空間を減圧することにより、チャンバ61の気密性が確保される。蓋体61bの略中心部には、チャンバ61に供給されたDMSDMAを含む窒素ガスを排気するための排気口67が設けられており、この排気口67は圧力調整装置68を介して、真空ポンプ69に接続されている。
【0057】
なお、図7では、液体のDMSDMAガスを気化器63により気化させ、Nガスによりキャリアさせてチャンバ61に供給するようにしたが、DMSDMAを気化させたガス(つまりDMSDMA蒸気)のみをチャンバ61に供給する構成としてもよい。DMSDMAをチャンバ61内に供給する際には、チャンバ61内は所定の真空度に保持されているので、気化器63とチャンバ61の圧力差を利用して、DMSDMAガスをチャンバ61に導入することは容易に行うことができる。
【0058】
次に、洗浄ユニット(CNU)12aについて、図8に示す概略断面図を参照しながら詳細に説明する。なお、他の洗浄ユニット(CNU)12b〜12dについても全く同様の構造を有している。この洗浄ユニット(CNU)12aは、その中央部に環状のカップ(CP)が配置され、カップ(CP)の内側にはスピンチャック71が配置されている。スピンチャック71は真空吸着によってウエハWを固定保持した状態で駆動モータ72によって回転駆動される。カップ(CP)の底部には洗浄液、純水を排出するドレイン配管73が設けられている。
【0059】
駆動モータ72は、ユニット底板74に設けられた開口74aに昇降移動可能に配置され、キャップ状のフランジ部材75を介して例えばエアシリンダからなる昇降駆動機構76および昇降ガイド77と結合されている。駆動モータ72の側面には、筒状の冷却ジャケット78が取り付けられ、フランジ部材75は、この冷却ジャケット78の上半部を覆うように取り付けられている。
【0060】
薬液等をウエハWに供給する際には、フランジ部材75の下端75aは、開口74aの周縁付近でユニット底板74に密着し、これによってユニット内部が密閉される。スピンチャック71とウエハ搬送アーム14aとの間でウエハWの受け渡しが行われるときは、昇降駆動機構76が駆動モータ72およびスピンチャック71を上方へ持ち上げることでフランジ部材75の下端がユニット底板74から浮くようになっている。
【0061】
カップ(CP)の上方には、変性処理ユニット(VOS)15a〜15fのいずれかで変性された物質(以下変性物質という)、例えば変性された犠牲膜が存在するウエハWの表面に、当該変性物質を溶解する所定の洗浄液を供給する洗浄液供給機構80を備えている。
【0062】
洗浄液供給機構80は、スピンチャック71に保持されたウエハWの表面に洗浄液を吐出する洗浄液吐出ノズル81と、洗浄液吐出ノズル81に所定の洗浄液を送液する洗浄液供給部17と、洗浄液吐出ノズル81を保持し、Y方向に進退自在なスキャンアーム82と、スキャンアーム82を支持する垂直支持部材85と、ユニット底板74の上でX軸方向に敷設されたガイドレール84に取り付けられ、垂直支持部材85をX軸方向へ移動させるX軸駆動機構86とを有している。スキャンアーム82はZ軸駆動機構87によって上下方向(Z方向)に移動可能であり、これにより洗浄液吐出ノズル81をウエハW上の任意の位置に移動させ、またカップ(CP)外の所定位置に退避させることができるようになっている。
【0063】
洗浄液供給部17は、変性処理ユニット(VOS)15a〜15fで変性された犠牲膜等の変性物質を溶解する例えば希フッ酸、アミン系薬液等の溶解除去液と、リンス液として用いられる純水とを選択的に洗浄液吐出ノズル81へ送液することができるようになっている。
【0064】
次に、シリル化処理後のベーク処理に用いられるホットプレートユニット(HP)19aについて、図9に示す概略断面図を参照しながら詳細に説明する。なお、ホットプレートユニット(HP)19b〜19dも全く同様の構造を有している。このホットプレートユニット(HP)19aは、略円筒状に形成された処理チャンバ91を備えており、その内部の底部には、ウエハ載置台92が設けられている。ウエハ載置台92にはヒータ93が埋設されており、これによりウエハ載置台92上のウエハWにシリル化後のベーク処理等の加熱処理が施される。ヒータ93にはヒータ電源94が接続されている。ウエハ載置台93には図示しないウエハリフトピンが突没可能に設けられており、ウエハWの搬入出の際等にウエハWをウエハ載置台92の上方の所定位置に位置される。なお、チャンバ91の側壁91aにはウエハ搬入出口(図示せず)が設けられている。
【0065】
チャンバ91の側壁91aの載置台92上に載置されたウエハWに対応する位置には、空気導入口95が設けられ、チャンバ91の天壁91bの中央には、空気排出口96が設けられている。
【0066】
なお、上述した変性処理ユニット(VOS)15a〜15cと変性処理ユニット(VOS)15d〜15fとは境界壁22bについて略対称な構造を有しており、シリル化ユニット(SCH)11aとシリル化ユニット(SCH)11bは境界壁22bについて略対称な構造を有している。同様に、洗浄ユニット(CNU)12a,12bと洗浄ユニット(CNU)12c,12dとが境界壁22aについて略対称な構造を有している。
【0067】
次に、本発明の一実施形態の基板処理方法が適用される、デュアルダマシン法による半導体装置の製造プロセスについて説明する。
図10はデュアルダマシン法による半導体装置の製造プロセスを示すフローチャート、図11は図10のフローチャートに示す各工程の状態を説明するための説明図である。
【0068】
まず、Si基板(図示せず)上に絶縁膜120が形成され、その中の上部にバリアメタル層121を介して下部銅配線122が形成され、絶縁膜120および下部銅配線122の上にストッパ膜(例えば、SiN膜、SiC膜)123が形成されているウエハWを形成しておき、このウエハWをSOD装置101に搬入して、そこでストッパ膜123上に低誘電率材料(Low−k材料)からなる層間絶縁膜(以下、Low−k膜と記す)124を形成する(ステップ1)。これにより図11の(a)の状態が形成される。
【0069】
次にLow−k膜124が形成されたウエハWを、レジスト塗布/現像装置102に搬入して、そこで、レジスト塗布処理ユニットを用いてLow−k膜124上に反射防止膜125、レジスト膜126を順次形成し、次いで、ウエハWを露光装置103に搬送して、そこで所定のパターンで露光処理し、さらに、ウエハWをレジスト塗布/現像装置102に戻して、現像処理ユニットにおいてレジスト膜126を現像処理することによって、レジスト膜126に所定の回路パターンを形成する(ステップ2)。引き続きウエハをエッチング装置105に搬送して、そこでエッチング処理を行う(ステップ3)。これにより、図11の(b)に示すように、ストッパ膜123に達するビアホール124aがLow−k膜124に形成される。
【0070】
このビアホール124aが形成されたウエハWは、次に洗浄処理装置104に搬送されて、洗浄処理ユニット(CNU)12a〜12dのいずれかにおいて薬液処理され、ウエハWからレジスト膜126および反射防止膜125が除去される(ステップ4、図11の(c))。
【0071】
続いてウエハWは、レジスト塗布/現像装置102に搬送されて、そこで犠牲膜塗布処理ユニットを用いて、ビアホール124aを有するLow−k膜124の表面に無機系材料(例えば、Si−O系材料)からなる犠牲膜127を形成する(ステップ5)。このとき、ビアホール124aも犠牲膜127によって埋められる。続いて、レジスト塗布処理ユニットにおいて犠牲膜127の表面にエッチングマスクとなるレジスト膜128を形成し、レジスト膜128を露光装置103において所定のパターンで露光し、次いで現像処理ユニットにおいてレジスト膜128を現像する(ステップ6)。これによって、図11の(d)に示すように、レジスト膜128に回路パターンが形成される。ここで、レジスト膜128には、ビアホール124aの幅よりも広い溝がビアホール124aの上方位置に形成される。
【0072】
次いで、ウエハWをエッチング装置105に搬送し、そこでウエハWのLow−k膜124にエッチング処理を施す(ステップ7)。これによって図11の(e)に示すように、ビアホール124aの上方に、より幅の広いトレンチ124bが形成される。Low−k膜124の上に犠牲膜127を形成しておくことによって、Low−k膜124においてエッチングされた部分の底面を平坦な形態とすることができる。
【0073】
エッチング処理の終了したウエハWは、洗浄処理装置104に搬送され、そこで犠牲膜127とレジスト膜128の変性処理(ステップ8、図11の(f))と、犠牲膜127とレジスト膜128とポリマー残渣の除去処理が行われる(ステップ9、図11の(g))。
【0074】
具体的には、まず、エッチング処理が終了したウエハの収容されたキャリアCが載置台6に載置され、キャリアCの蓋体10aとシャッタ10を搬送ステーション3側に退避させることによって窓部9aが開かれる。続いてウエハ搬送ピック7aによって、キャリアCの所定位置にある1枚のウエハWがウエハ載置ユニット(TRS)13bへ搬送される。
【0075】
そして、ウエハ載置ユニット(TRS)13bに載置されたウエハをウエハ搬送アーム14aによって変性処理ユニット(VOS)15a〜15hのいずれかに搬入し、上記ステップ8の、犠牲膜127とレジスト膜128の変性処理を行う(図11の(f))。
【0076】
この場合に、まずチャンバ30の蓋体41bを下部容器41aの上方に退避させた状態とし、その後、蓋体41bに設けられた爪部材46のウエハWを保持する部分(水平方向に突出した部分)よりも僅かに高い位置へウエハWが進入するように、ウエハWを保持したウエハ搬送アーム14aを進入させる。次いで、ウエハ搬送アーム14aを下方へ降下させると、ウエハWは爪部材46に受け渡される。
【0077】
ウエハ搬送アーム14aを変性処理ユニット(VOS)15aから退避させた後に蓋体41bを降下させて、蓋体41bを下部容器41aに密着させ、さらにロック機構35を動作させて、チャンバ30を密閉状態とする。蓋体41bを降下させる途中で、ウエハWは爪部材46からプロキシミティピン44へ受け渡される。
【0078】
ヒータ45a,45bにてステージ33、蓋体41bを所定の温度に保持する。例えば、ステージ33を100℃に保持し、蓋体41bを110℃に保持する。
【0079】
ステージ33および蓋体41bが所定温度(例えば、110℃〜120℃)に保持され、かつ、ウエハWの温度分布がほぼ一定となったら、最初に処理ガス供給装置16からオゾン/窒素混合ガス(例えば、オゾン含有量が9wt%で、流量が4L/分)のみをチャンバ30内に供給して、チャンバ30の内部がオゾン/窒素混合ガスで充満され、かつ、所定の陽圧、例えばゲージ圧で0.2MPaとなるように調節する。
【0080】
その後、オゾン/窒素混合ガスに水蒸気を混合させた処理ガス(例えば、水蒸気量が水換算で16ml/分)を、処理ガス供給装置16からチャンバ30内に供給する。この処理ガスによってウエハWに形成されている犠牲膜127は特定の薬液、例えばHFに溶解され易い性質へと変性され、レジスト膜128とウエハWに付着しているポリマー残渣(例えば、エッチング処理後に生ずるポリマー残渣)もその薬液により溶解されやすくなる。このように処理ガスは、犠牲膜127、レジスト膜、ポリマー残渣をそれぞれ変性させる。チャンバ30への処理ガスの供給量とチャンバ30からの排気量は、チャンバ30内が所定の陽圧となるように調整される。
【0081】
ウエハWの処理ガスによる処理が終了したら、処理ガスの供給を停止して、処理ガス供給装置16からチャンバ30内に窒素ガスを供給し、チャンバ30内を窒素ガスでパージする。このパージ処理時には、その後にチャンバ30を開いたときに、排気装置32からオゾン/窒素混合ガスが逆流してオゾン/窒素混合ガスがチャンバ30から排出されないように、排気装置32内からもオゾン/窒素混合ガスを完全に排出する。
【0082】
窒素ガスによるパージ処理が終了した後には、チャンバ30の内圧が外気圧と同じであることを確認する。これは、チャンバ30の内部圧力が大気圧よりも高い状態でチャンバ30を開くと、チャンバ30が損傷するおそれがあるからである。チャンバ30の内圧確認後、ロック機構35による下部容器41aと蓋体41bの締め付けを解除し、蓋体41bを上昇させる。蓋体41bを上昇させる際に、ウエハWは爪部材46に保持されて蓋体41bとともに上昇する。ウエハ搬送アーム14aを下部容器41aと蓋体41bとの隙間に進入させて、ウエハWを爪部材46からウエハ搬送アーム14aに受け渡す。
【0083】
変性処理ユニット(VOS)15a〜15fのいずれかにおける変性処理が終了した時点では、犠牲膜127等はウエハWから除去されていない。そこでウエハWから犠牲膜127等を除去するための溶解除去処理(洗浄処理)を行う(上記ステップ9)。
【0084】
この溶解除去処理を行う際には、洗浄ユニット(CNU)12a〜12dのいずれかに搬入し、そこで犠牲膜127等を溶解可能な所定の薬液(例えば、希フッ酸、アミン系薬液)によって犠牲膜127等の溶解除去処理が行われる(上記ステップ9、図11の(g))。
【0085】
この溶解除去処理を行う際には、洗浄ユニット(CNU)12a〜12dの一つのスピンチャック71上にウエハWを搬送し、略水平姿勢に吸着保持させ、洗浄液供給機構80の洗浄液吐出ノズル81からウエハWの表面に犠牲膜127等の変性物質が溶解可能な薬液を供給してパドルを形成し、所定時間が経過した後にウエハWを回転させてウエハWの表面から薬液を振り切る。さらにウエハWを回転させながらウエハWの表面に薬液を供給して犠牲膜127等を完全に除去する。犠牲膜127等の除去に使用される薬液により、レジスト膜128やポリマー残渣も溶解除去される。薬液による処理の後には、駆動モータ72によりウエハWを回転させながらウエハWに純水を供給してウエハWを水洗処理し、さらにウエハWを高速回転させてスピン乾燥を行う。ウエハWのスピン乾燥はウエハWに乾燥ガスを供給しながら行ってもよい。
【0086】
この処理の際には、Low−k膜124の表面部分に図11の(g)に示すようなダメージ部130が形成される。このダメージ部130は最初疎水性であったLow−k膜124がステップ9の溶解除去処理によりダメージを受けて親水化した部分であり、Low−k膜124の比誘電率を増大させてしまい、配線形成後、配線間の寄生容量が増大するため、信号遅延や溝配線どうしの間の絶縁性が低下する等の電気特性上の問題が生ずる。なお、Low−k膜124に形成されたダメージ部130を便宜上明確に示しているが、ダメージ部130と非ダメージ部の境界は必ずしも明確なものではない。
【0087】
このような場合に、ステップ9の溶解除去処理の後に、シリル化処理を行い(ステップ10、図11の(h))、Low−k膜124のダメージ部130のダメージを回復する。
【0088】
このようなダメージ部は、図12に示すように、末端基がメチル基(Me)であり疎水性であるLow−k膜124が、水蒸気とオゾンによる変性処理および溶解除去処理の際に水分子と反応してビアホール124aの側壁近傍におけるメチル基が減少し、水酸基が増加した部分であり、これにより比誘電率(k値)が上昇してしまう。このため、シリル化処理を施して、Low−k膜表面を疎水性にすることによりダメージを回復させる。
【0089】
シリル化処理においては、ウエハWをシリル化ユニット(SCH)11a,11bの一方に搬送し、ホットプレート62上の支持ピン64に載置し、シリル化剤、例えばDMSDMAの蒸気をNガスにキャリアさせてチャンバ61内に導入する。シリル化処理の条件は、シリル化剤の種類に応じて選択すればよく、例えば、気化器63の温度は室温〜50℃、シリル化剤流量は0.6〜1.0g/min、Nガス(パージガス)流量は1〜10L/min、処理圧力は532〜95976Pa(4〜720Torr)、ホットプレート62の温度は室温〜200℃などの範囲から適宜設定できる。シリル化剤としてDMSDMAを用いる場合は、例えば、ホットプレート62の温度を100℃とし、チャンバ61内圧力を5Torr(=666Pa)に減圧し、その後DMSDMA蒸気をNガスにキャリアさせてチャンバ61内圧力が55Torrになるまで供給し、その圧力を維持しながら、例えば3分間保持し、処理する方法が挙げられる。DMSDMAを用いたシリル化反応は、下記化1式で示される。
【0090】
【化1】

【0091】
シリル化剤としては、以上のDMSDMAに限らず、シリル化反応を起こす物質であれば特に制限なく使用可能であるが、分子内にシラザン結合(Si−N結合)を有する化合物群の中で比較的小さな分子構造を持つもの、例えば分子量が260以下のものが好ましく、分子量170以下のものがより好ましい。具体的には、例えば、前記DMSDMAのほか、HMDS(Hexamethyldisilazane)、TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、TMSpyrole(1-Trimethylsilylpyrole)、BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)、BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)等を用いることが可能である。これらの中では、TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、およびDMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)が好ましい。これらの化学構造を以下に示す。
【0092】
【化2】

【0093】
このようなシリル化処理によるダメージ回復によってk値はある程度低下するが、所望のレベルまで到達しないことが多い。その原因について検討した結果、Low−k膜124として現在多用されているポーラス材料を用いた場合に、変性処理および溶解除去処理においてLow−k膜124が水分を含んだ状態となり(図11の(f)、(g)参照)、この水分とシリル化処理の際に供給されるシリル化剤とが反応してSi系副生成物が形成されるためであることが判明した。すなわち、このようにして形成されたSi系副生成物は、通常、k値が高く、これが表面および内部に形成されるため、シリル化処理によりメチル基等のアルキル基を末端基としてダメージを回復させても、結果的にk値が十分に回復しない。
【0094】
そこで、本実施形態では、このようなシリル化処理の後のウエハWに対してホットプレートユニット(HP)19a〜19dのいずれかにおいて、ベーク処理を施す(ステップ11、図11の(i))。これによりLow−k膜124中のSi系副生成物が分解除去され、k値を上昇させるSi系副生成物がLow−k膜124中に存在しなくなり、Low−k膜124のk値を十分に回復させることができる。
【0095】
ホットプレートユニット(HP)19a〜19dのいずれかにおいてベーク処理を行う際には、まず、チャンバ91の側壁91aに設けられたウエハ搬入出口(図示せず)からウエハWを搬入して載置台92に載置し、ヒータ93に給電して載置台92上のウエハWを加熱する。この際の加熱温度は、上記Si系副生成物が分解される必要があることから、シリル化処理の際の温度よりも高いことが好ましい。具体的には150〜400℃が好ましく、300〜360℃が一層好ましい。なお、このようなベーク処理は、シリル化ユニット11a,11bで行うようにしてもよい。
【0096】
このようにしてベーク処理を行った後のウエハWは、搬送アーム14aによってホットプレートユニット(HP)から搬出されてウエハ載置ユニット(TRS)13aに載置され、ウエハ搬送装置7によりキャリアCに収容され、洗浄処理装置104から搬出される。
【0097】
その後、ウエハWをスパッタ装置106へ搬送して、そこでビアホール124aおよびトレンチ124bの内壁にバリアメタル膜およびCuシード層(つまり、メッキシード層)を形成し、次いで、ウエハWを電解メッキ装置107に搬送して、そこで電解メッキによりビアホール124aおよびトレンチ124bに配線金属として銅131を埋め込む(ステップ12、図11の(j))。その後、ウエハWを熱処理することによってビア124aおよびトレンチ124bに埋め込まれた銅131のアニール処理を行い(アニール装置は図1に示さず)、さらにウエハWをCMP装置109へ搬送し、そこでCMP法による平坦化処理が行われる(ステップ13)。これにより所望の半導体装置が製造される。
【0098】
このように犠牲膜127等を除去するために、犠牲膜127等を所定の薬液に対して可溶化するように変性させ、その後そのような薬液を用いて変性物質を溶解除去する手法を採用する場合に、溶解除去処理までにLow−k膜124に与えられたダメージをシリル化処理により回復させ、その後さらにベーク処理を行うので、シリル化によりLow−k膜124に形成されるk値の回復を妨げるSi系副生成物を分解させることができ、十分にLow−k膜124のk値の回復を図ることができる。
【0099】
なお、変性処理ユニット(VOS)における水蒸気とオゾンの処理によって、パターンが形成されたLow−k膜124にダメージが入ることがあり、そのようなダメージが入った状態でその後の薬液を用いた溶解除去処理を行うとパターンはがれが生じるおそれがあるので、溶解除去処理に先立ってシリル化処理を行って、Low−k膜124のこのようなダメージを回復するようにしてもよい。この場合のシリル化処理は、上記溶解除去処理後のシリル化処理と同様、シリル化ユニット11a,11bのいずれかにおいて全く同様の手順で行うことができる。
【0100】
また、上記溶解除去処理後のシリル化処理に先立って、プリベーク処理を行ってもよい。この加熱によりウエハWに残存している水分を除去してシリル化処理の効果を高めることができる。この場合の加熱温度は200℃以下であることが好ましい。また、水分除去を有効に行うためには50℃以上が好ましい。このプリベーク処理は、ホットプレートユニット(HP)19a〜19dでおこなってもよいし、シリル化ユニット11a,11bで行ってもよい。
【0101】
次に、本発明の効果を確認した実験について説明する。ここではLow−k膜124としてポーラスLow−k膜(k値:約2.5)を使用し、表1に示すように、何も処理を行わない場合(initial;No.1)、シリル化処理を行わずに、変性処理(VOS)と溶解除去処理(Wet)のみを行った場合(No.2)、変性処理(VOS)と溶解除去処理(Wet)を行った後シリル化処理(LKR)を行った場合(No.3)、変性処理(VOS)、溶解除去処理(Wet)およびシリル化処理(LKR)を行った後、250℃でベーク処理(Bake)を行った場合(No.4)、変性処理(VOS)、溶解除去処理(Wet)およびシリル化処理(LKR)を行った後、350℃でベーク処理(Bake)を行った場合(No.5)について、室温でのk値、1MVでのリーク電流、HOのデガス、分子量75の物質のデガスを測定した。その結果を表1に併記する。
【0102】
なお、各処理の条件は以下の通りとした。
変性処理(VOS):105℃、1分
溶解除去処理(Wet):有機アルカリ系薬液 1分
シリル化処理(LKR):150℃、150秒
ベーク処理(Bake):大気圧下、30分
【0103】
表1に示すように、シリル化処理を行うことによりk値の回復、リーク電流の低下が見られるが、その後、ベーク処理を行うことにより、k値の回復が見られた。特に、ベーク処理を350℃で行うことにより、シリル化処理のみの場合と比較してk値が0.3程度回復したことが確認された。また、シリル化処理後には分子量75の物質のデガスが多いが、ベーク処理を行った場合、特に350℃でのベーク処理を行った場合に、そのデガスが減少していることがわかる。分子量75の物質はSi系副生成物であると考えられ、ベーク処理によるk値の回復は、このSi系副生成物が減少することによるものと推測される。また、ベーク処理により水分も若干低下しており、水分減少もk値回復に多少寄与しているものと推測される。
【0104】
【表1】

【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。たとえば、上記実施形態では、犠牲膜等の変性処理を水蒸気とオゾンとの混合ガスにより行ったが、水蒸気を用いずにオゾンのみの処理であってもよい。オゾンによって処理する場合には、水蒸気+オゾンの場合よりも反応性は低いが、その後の薬液による溶解除去処理により変性した犠牲膜等を十分に溶解可能である。
【0106】
また、シリル化処理によってダメージ回復を図ることができるLow−k膜は、特に限定されるものではないが、SOD膜であるポーラスMSQを用いることができる。そのほか、例えば、CVDで形成される無機絶縁膜の1つであるSiOC系膜を対象とすることもできる。これは従来のSiO膜のSi−O結合にメチル基(−CH)を導入して、Si−CH結合を混合させたもので、Black Diamond(Applied Materials社)、Coral(Novellus社)、Aurora(ASM社)等がこれに該当する。SiOC系膜はポーラス(多孔質)であってもよい。また、MSQ系の絶縁膜はポーラスなものに限定されず、緻密質であってもよい。
【0107】
さらに、上記実施形態ではデュアルダマシン法による銅配線を含む半導体装置の製造プロセスに本発明を適用した例について示したが、これに限らず、エッチング対象膜の劣化が懸念され、変性すべき除去物質が存在する処理であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
2;処理ステーション
11a・11b;シリル化ユニット(SCH)
12a〜12d;洗浄ユニット(CNU)
15a〜15f;変性処理ユニット(VOS)
19a〜19d;ホットプレートユニット(HP)
100;処理部
101;SOD装置
102;レジスト塗布/現像装置
103;露光装置
104;洗浄処理装置
105;エッチング装置
106;スパッタ装置
107;電解メッキ装置
109;CMP装置
110;メイン制御部
111;プロセスコントローラ
112;ユーザーインターフェース
113;記憶部
W;ウエハ(基板)
120;絶縁膜
122;下部銅配線
123;ストッパ膜
124;Low−k膜
124a:ビアホール
124b;トレンチ
125;反射防止膜
126;レジスト膜
127;犠牲膜
128;レジスト膜
130;ダメージ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された低誘電率膜をエッチング処理して所定パターンを形成することと、
前記エッチング処理を終了した後に残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させることと、
前記残存する物質を変性させた後、変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記所定の液を供給して前記変性された物質を溶解除去することと、
さらに前記変性された物質の溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記低誘電率膜は、ポーラス低誘電率材料からなる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記低誘電率膜は、アルキル基を末端基として有する、請求項1又は請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記残存する物質の変性は、水蒸気とオゾンを含む処理ガスを供給して行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記残存する物質の変性は、オゾンを含む処理ガスを供給して行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記所定の液は、酸性またはアルカリ性薬液である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記シリル化処理を行うためのシリル化剤は、分子内にシラザン結合(Si−N)を有する化合物である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記分子内にシラザン結合を有する化合物は、TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、およびDMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)から選択されたものである、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板のベークは、前記シリル化処理の際の温度よりも高い温度で行う、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板のベークは、150〜400℃で行う、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記変性された物質の溶解除去後のシリル化処理に先立ってベーク処理を行うことをさらに有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板上に形成された低誘電率膜の上に犠牲膜を形成することと、
前記犠牲膜の上にエッチングマスクを形成し、前記犠牲膜と前記低誘電率膜をエッチングして所定パターンを形成することと、
前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に可溶化するように変性させることと、
前記犠牲膜と前記エッチングマスクを変性させた後、変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去する前に、前記パターンが形成されたエッチングマスク、犠牲膜、および低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記所定の液を供給して前記変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去することと、
さらに前記変性された犠牲膜とエッチングマスクの溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法。
【請求項13】
前記低誘電率膜は、ポーラス低誘電率材料からなる、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記低誘電率膜は、アルキル基を末端基として有する、請求項12又は請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記犠牲膜とエッチングマスクの変性は、水蒸気とオゾンを含む処理ガスを供給して行う、請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記犠牲膜とエッチングマスクの変性は、オゾンを含む処理ガスを供給して行う、請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記所定の液は、酸性またはアルカリ性薬液である、請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記シリル化処理を行うためのシリル化剤は、分子内にシラザン結合(Si−N)を有する化合物である、請求項12から請求項17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記分子内にシラザン結合を有する化合物は、TMDS(1,1,3,3-Tetramethyldisilazane)、TMSDMA(Dimethylaminotrimethylsilane)、およびDMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)から選択されたものである、請求項18に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記基板のベークは、前記シリル化処理の際の温度よりも高い温度で行う、請求項12から請求項19のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記基板のベークは、150〜400℃で行う、請求項20に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記変性された犠牲膜とエッチングマスクの溶解除去後のシリル化処理に先立ってベーク処理を行うことをさらに有する、請求項12から請求項21のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項23】
被エッチング膜を有し、エッチング処理により被エッチング膜に所定パターンが形成され、エッチング処理後に残存する物質が所定の液に対して可溶化するように変性され、この変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された被エッチング膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
さらに前記所定の液により前記変性された物質が溶解除去された基板に対し、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された被エッチング膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法。
【請求項24】
コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、
基板上に形成された低誘電率膜をエッチング処理して所定パターンを形成することと、
前記エッチング処理を終了した後に残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させることと、
前記残存する物質を変性させた後、変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記所定の液を供給して前記変性された物質を溶解除去することと、
さらに前記変性された物質の溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる、記憶媒体。
【請求項25】
コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、
基板上に形成された低誘電率膜の上に犠牲膜を形成することと、
犠牲膜の上にエッチングマスクを形成し、前記犠牲膜と前記低誘電率膜をエッチングして所定パターンを形成することと、
前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に可溶化するように変性させることと、
前記犠牲膜と前記エッチングマスクを変性させた後、変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去する前に、前記パターンが形成されたエッチングマスク、犠牲膜、および低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された低誘電率膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記所定の液を供給して前記変性された犠牲膜とエッチングマスクを溶解除去することと、
さらに前記変性された犠牲膜とエッチングマスクの溶解除去後の、前記パターンが形成された低誘電率膜の表面にシリル化剤を供給し、前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記犠牲膜と前記エッチングマスクを溶解除去した際に、前記パターンが形成された低誘電率膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された低誘電率膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる、記憶媒体。
【請求項26】
コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、
被エッチング膜を有し、エッチング処理により被エッチング膜に所定パターンが形成され、エッチング処理後に残存する物質が所定の液に対して可溶化するように変性され、この変性された物質を溶解除去する前に、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記残存する物質を所定の液に対して可溶化するように変性させた際に、前記パターンが形成された被エッチング膜に入ったダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
さらに前記所定の液により前記変性された物質が溶解除去された基板に対し、前記パターンが形成された被エッチング膜の表面にシリル化剤を供給し、前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理をすることと、
前記変性された物質を溶解除去した際に、前記パターンが形成された被エッチング膜が受けたダメージを回復するためのシリル化処理の後、基板をベークすることによってシリル化処理後の前記パターンが形成された被エッチング膜の比誘電率を下げることと
を有する基板処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる、記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195613(P2012−195613A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153943(P2012−153943)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2008−533160(P2008−533160)の分割
【原出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】