説明

基板処理方法,基板処理装置,記録媒体

【課題】基板上にエッチング処理により形成された凹部に露出する低誘電率絶縁膜から水分を脱離させた上で新たな水分を吸収し難くすることができるとともに,エッチング処理などにより凹部に露出する金属層に形成された不所望の金属化合物を除去する。
【解決手段】ウエハを所定の温度に加熱しつつ,このウエハ上に水素ラジカルを供給することによって,凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理工程(ステップS130)と,水素ラジカル処理が施されたウエハに所定の処理ガスを供給することによって,凹部に露出した低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理工程(ステップS150)とを有し,水素ラジカル処理工程と疎水化処理工程とを大気に晒すことなく連続して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板処理方法,基板処理装置,記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路の高集積化に伴い,半導体装置には配線を多層に積み上げる多層配線構造が不可欠となりつつある。多層配線構造を有する半導体装置においては,水平方向に展開する各素子を接続するトレンチ配線と共に垂直方向に積層される各素子を接続するビアホール配線を形成する必要がある。そして集積回路の高速化を図るために,最近では,配線材料として低抵抗でエレクトロマイグレーション耐性に優れた金属例えば銅を用い,層間絶縁材料として低誘電率を確保できる多孔質のLow−k材料を用いる傾向にある。
【0003】
このようなLow−k膜と銅配線とから成る配線構造は,通常,ダマシン法により例えば以下のように形成される。まず,基板上に絶縁膜を形成し,これに銅配線を埋め込み配線層を形成する。次に,配線層の上にエッチングストッパ膜,Low−k材料から成る層間絶縁膜,キャップ膜,反射防止膜を順に形成する。さらに,フォトリソグラフィ技術を用いて,反射防止膜上に配線パターンに対応したパターンを有するフォトレジスト膜を形成し,このフォトレジスト膜をマスクとして用いて,反射防止膜,キャップ膜,Low−k膜,及びエッチングストッパ膜をエッチングする。これによって,Low−k膜には凹部としての配線用の溝(トレンチ)又は孔(ビア)が形成され,これら配線溝又は配線孔の底には銅配線の表面が露出することになる。
【0004】
次に,基板に対してアッシング処理を施すことによってフォトレジスト膜と反射防止膜を除去し,続いて,Low−k膜に形成された配線溝又は配線孔に配線金属として銅を埋め込み,最後に化学的機械研磨法(CMP)により余分な金属を除去する。これによって,水平方向への銅配線(配線層)と垂直方向への銅配線が接続され,多層配線構造の一部が完成する。
【0005】
【特許文献1】特開2006−049798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでこれらの工程のうち,反射防止膜,キャップ膜,Low−k膜,及びエッチングストッパ膜をエッチングする工程において,処理ガスとしてフッ素含有ガス例えばCFを用いると,配線溝又は配線孔の底に露出した銅配線の表面にCuF膜が形成される虞がある。また,銅配線が露出したまま基板を大気中に取り出すと,その銅配線の露出表面にCuO膜が形成される虞もある。
【0007】
このように,配線溝又は配線孔の底に露出した銅配線の表面に不所望の銅化合物膜が形成されたままでは,その後に配線溝又は配線孔に銅を埋め込むことによって水平方向への銅配線(配線層)と垂直方向への銅配線を接続したときに,その接続部分での電気抵抗が大きくなってしまい,多層配線構造において良好な電気特性が得られなくなるという問題があった。
【0008】
一方,近年,層間絶縁材料としてより低い誘電率が得られる多孔質のLow−k材が用いられる傾向にある。この多孔質のLow−k材は,層間絶縁材料として利点が多いものの,水分を吸収しやすく,この膜内に浸入した水分によって電気的特性と機械的特性の両方が損なわれてしまうという欠点も抱えている。具体的には,Low−k膜に水分が含まれていると,Low−k膜の誘電率が上昇してしまい,これによって多層配線構造における層間容量が増大し,電気信号の伝送時間に遅れが生じてくる。
【0009】
また,近年の回路の微細化に伴い,Low−k膜に形成する配線溝又は配線孔の開口幅も狭くなってきている。このような状況の中,Low−k膜に水分が浸入し膜の機械的強度が不足してしまうと所望の形状の配線溝又は配線孔を形成することが困難となってしまう。さらに,Low−k膜の機械的強度が不足すれば,膜の形状を保てなくなるため,Low−k膜の上に各種膜を安定的に積み上げることができなくなり,より多層の配線構造を得られなくなる。さらに,Low−k膜の表面に接している膜がLow−k膜から剥離してしまう虞もある。
【0010】
また,このようなLow−k膜などの低誘電材料を用いた層間絶縁膜はエッチング処理やアッシング処理(例えば酸素を含有するプラズマによるアッシング処理)によってダメージを受け易く,またそのようなダメージを受けた部分は,水分を吸着し易くなる傾向にある。このため,エッチング処理やアッシング処理後に,層間絶縁膜を大気中に取り出すと,水分を吸着して電気的特性と機械的特性が損われる虞がある。
【0011】
この点,上記特許文献1には,層間絶縁膜(Low−k膜)をエッチングした後に,層間絶縁膜を大気に晒すことなく層間絶縁膜に形成された配線溝又は配線孔の側面部にシリル化処理を施してダメージを回復し,これによって層間絶縁膜への水分吸着に起因する層間絶縁膜の誘電率の上昇を防止する技術が記載されている。
【0012】
しかしながら,特許文献1の技術では,層間絶縁膜のエッチング後にシリル化処理を施すことによって,エッチングによる層間絶縁膜の表面のダメージ回復により,新たな水分を吸着させ難くすることはできるものの,層間絶縁膜内に含まれる水分までも十分に除去するのは困難である。層間絶縁膜の電気的特性と機械的強度をさらに高めるには限界がある。
【0013】
しかも,層間絶縁膜に形成された配線溝又は配線孔の側面部にシリル化処理を施しても,配線溝又は配線孔の底に露出した銅配線の表面に形成されているCuO膜やCuF膜などの金属化合物膜を除去することはできない。このため,銅配線の電気抵抗が高くなってしまう。
【0014】
また,エッチング処理により配線溝又は配線孔の底に銅配線の表面が露出した状態で,上述したような酸素含有プラズマを用いたアッシング処理を行っても,銅配線の露出表面上に形成された金属化合物膜は除去されず,かえって酸化が進行してしまう。従って,このようなエッチング処理やアッシング処理によるダメージ回復のために連続してシリル化処理を行っても,銅配線の露出表面の金属化合物膜はそのまま残ってしまう。
【0015】
そこで,本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,基板上にエッチング処理により形成された凹部に露出する低誘電率絶縁膜から水分を脱離させた上で新たな水分を吸収し難くすることができるとともに,エッチング処理などにより凹部に露出する金属層に形成された不所望の金属化合物を除去することができる基板処理方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜と,前記低誘電率絶縁膜に前記金属層が露出するまでエッチングされた凹部とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理方法であって,前記被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理工程と,前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理工程とを有し,前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とを大気に晒すことなく連続して行うことを特徴とする基板処理方法が提供される。なお,この場合,前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とは同じ処理室内で行われるようにしてもよく,また別個の処理室内で行われるようにしてもよい。別個の処理室でそれぞれの処理を行う場合には,少なくとも前記水素ラジカル処理工程を行う処理室から前記疎水化処理工程を行う処理室への前記被処理基板の搬送は真空圧雰囲気下で行われることが好ましい。
【0017】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜と,前記低誘電率絶縁膜に前記金属層が露出するまでエッチングされた凹部とを有する被処理基板に対して所定の処理を実行可能な基板処理装置であって,前記被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理室と,前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記低誘電率絶縁膜をさらに脱水しながら,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理室と,前記各処理室に共通に接続され,前記各処理室間における前記被処理基板の搬送処理を真空圧雰囲気下で実行可能な真空搬送室と,を備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0018】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜と,前記低誘電率絶縁膜に前記金属層が露出するまでエッチングされた凹部とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,前記プログラムは,コンピュータに,前記被処理基板を真空圧雰囲気下で水素ラジカル処理室内に搬送するステップと,前記水素ラジカル処理室内を減圧し,所定の真空圧雰囲気下で,前記被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理ステップと,前記水素ラジカル処理が施された被処理基板を真空圧雰囲気下で疎水化処理室内に搬送するステップと,前記疎水化処理室内を減圧し,所定の真空圧雰囲気下で,前記被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理ステップと,を実行させることを特徴とする,コンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0019】
このような本発明によれば,低誘電率絶縁膜については,水素ラジカル処理によって低誘電率絶縁膜内の水分を十分に脱離させることができ,その後に連続して行う疎水化処理によって凹部に露出した低誘電率絶縁膜を疎水化することができる。このため,低誘電率絶縁膜に含まれる水分を十分に減少させた上で,再び低誘電率絶縁膜内に水分が吸収されることを防止できる。これによって,低誘電率絶縁膜の電気的特性と機械的強度を向上させることができる。一方,金属層については,水素ラジカル処理によって凹部に露出する金属層の表面がクリーニングされるため,エッチングなどによって金属層の露出表面に形成される不所望の金属化合物を除去することができる。これにより,凹部に配線用の金属を埋め込んだ場合,その配線用金属と金属層とをより低抵抗で接続することができる。
【0020】
さらに,前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とを例えば真空圧雰囲気下で大気に晒すことなく連続して行うので,水素ラジカル処理によって,凹部に露出した低誘電率絶縁膜が水分を吸収し易い組成になっていても,後の疎水化処理が終了するまで低誘電率絶縁膜内に再度水分が吸収されることを防止できる。
【0021】
また,上記水素ラジカル処理では,前記被処理基板の温度を250℃〜400℃の範囲内の所定の温度に加熱することが好ましい。被処理基板の温度をこの範囲内にすることによって,低誘電率絶縁膜に熱ダメージを与えない範囲で,低誘電率絶縁膜の表面のみならず,既に低誘電率絶縁膜内に含まれている水分までをも十分に離脱させることができる。
【0022】
また,上記疎水化処理工程では,例えば前記低誘電率絶縁膜の露出表面に前記所定の処理ガスとの化学反応で撥水層が形成されることによって前記低誘電率絶縁膜を疎水化することができる。これにより,低誘電率絶縁膜に再び水分が吸収されることを防止できる。この場合の所定のガスとしては,例えば分子内にシラザン結合(Si−N)を有する化合物から得られたシリル化ガスを用いることが好ましい。このようなシリル化ガスによって,エッチング処理などによってダメージを受けた前記低誘電率絶縁膜の露出表面がシリル化されることによって撥水層が形成される。すなわち,このようなシリル化ガスによれば,エッチング処理によってダメージを受けた低誘電率絶縁膜の膜質を回復させつつ,撥水層を形成することができる。
【0023】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理方法であって,前記低誘電率絶縁膜を前記金属層が露出するまでエッチングして,前記低誘電率絶縁膜に凹部を形成するエッチング処理工程と,前記エッチング処理が施された被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理工程と,前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理工程と,を有し,前記エッチング処理工程と前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とを大気に晒すことなく連続して行うことを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0024】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって,前記低誘電率絶縁膜を前記金属層が露出するまでエッチングして,前記低誘電率絶縁膜に凹部を形成するエッチング処理室と,前記エッチング処理が施された被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理室と,前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理室と,前記エッチング処理室と前記水素ラジカル処理室と前記疎水化処理室との間の前記被処理基板を真空圧雰囲気下で搬送可能な基板搬送機構を有する真空搬送室と,を備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0025】
このような本発明によれば,エッチング処理,水素ラジカル処理,疎水化処理を大気に晒すことなく連続して行うことができるので,水素ラジカル処理と疎水化処理との間のみならず,エッチング処理と水素ラジカル処理との間でも,低誘電率絶縁膜に水分が吸収されることを防止することができる。また,低誘電率絶縁膜のエッチング処理後に,連続して水素ラジカル処理及び疎水化処理を行うことによって,低誘電率絶縁膜については,その膜内に含まれる水分を十分に減少させた上で,再び膜内に水分が吸収されることを防止でき,金属層については,エッチングなどによって金属層の露出表面に形成される不所望の金属化合物を除去することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば,基板上にエッチング処理により形成された凹部に露出する低誘電率絶縁膜から水分を十分に脱離させた上で,新たな水分を吸収し難くすることができるとともに,エッチング処理などにより凹部に露出する金属層に形成された不所望の金属化合物を除去することができる。これにより,金属配線についてはその電気抵抗を低く抑えることができ,低誘電率絶縁膜についてはその低い誘電率を維持できるとともに,その機械的強度の低下を防止することができるので,より電気的特性及び機械的強度に優れた多層配線構造を基板上に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
(基板処理装置の構成例)
まず,本発明の実施形態にかかる基板処理装置について図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す図である。この基板処理装置100は,基板例えば半導体ウエハWに対して真空圧雰囲気中で,エッチング処理,表面処理等の各種の処理を行う複数の処理室を備える処理ユニット200と,この処理ユニット200に対して大気圧雰囲気中でウエハWを搬出入させる搬送ユニット300と,基板処理装置100全体の動作を制御する制御部120とを備える。
【0029】
搬送ユニット300は,図1に示すように,基板収納容器例えばカセット容器102(102A〜102C)と処理ユニット200との間でウエハWを搬出入する大気圧側の搬送室310を有している。搬送室310は,断面略多角形の箱体状に形成されている。搬送室310における断面略多角形状の長辺を構成する一側面には,複数のカセット台302(302A〜302C)が並設されている。これらカセット台302A〜302Cはそれぞれ,カセット容器102A〜102Cが載置可能なように構成されている。
【0030】
各カセット容器102(102A〜102C)は,例えばウエハWの端部を保持部で保持することにより,例えば最大25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるものであり,内部を例えば窒素(N)ガス雰囲気で満たすことができる密閉構造を有している。そして,複数のカセット台302(302A〜302C)が並設されている搬送室310の一側面には,搬出入口314(314A〜314C)が形成されており,各カセット容器102(102A〜102C)と搬送室310との間のウエハWの搬出入は,これら搬出入口314(314A〜314C)を介して可能となっている。なお,カセット台302とカセット容器102の数は,図1に示す場合に限られるものではない。
【0031】
搬送室310の端部,すなわち断面略多角形状の短辺を構成する一側面には,内部に回転載置台306とウエハWの周縁部を光学的に検出する光学センサ308とを備えた位置決め装置としてのオリエンタ(プリアライメントステージ)304が設けられている。このオリエンタ304では,例えばウエハWのオリエンテーションフラットやノッチが検出され,ウエハWの位置決めが行われる。
【0032】
搬送室310内には,ウエハWをその長手方向(図1に示す矢印方向)に沿って搬送する搬送ユニット側搬送機構320が設けられている。搬送ユニット側搬送機構320が固定される基台322は,搬送室310内の長手方向に沿って設けられた案内レール324上にスライド移動可能に支持されている。この基台322と案内レール324にはそれぞれ,リニアモータの可動子と固定子とが設けられている。案内レール324の端部には,このリニアモータを駆動するためのリニアモータ駆動機構(図示せず)が設けられている。リニアモータ駆動機構は,制御部120からの制御信号に基づいて制御され,これによって搬送ユニット側搬送機構320が基台322とともに案内レール324に沿って長手方向へ移動する。
【0033】
搬送ユニット側搬送機構320には,2つのアーム部からなるいわゆるダブルアーム構造が適用されている。また,各アーム部は,例えば屈伸・昇降・旋回が可能な多関節構造を有している。そして,各アームの先端にはウエハWを保持するためのピック326A,326Bが備えられており,搬送ユニット側搬送機構320は一度に2枚のウエハWを取り扱うことができる。このような搬送ユニット側搬送機構320によって,例えばカセット容器102,オリエンタ304,及び後述の第1,第2ロードロック室230M,230Nに対して,ウエハWを交換するように搬出入することができる。搬送ユニット側搬送機構320のピック326A,326Bはそれぞれ,ウエハWを保持しているか否かを検出するためのセンサ(図示せず)を備えている。なお,搬送ユニット側搬送機構320のアーム部の数は上記のものに限られず,例えば搬送ユニット側搬送機構320に1つのアーム部からなるシングルアーム構造を適用するようにしてもよい。
【0034】
次に,処理ユニット200の構成例について説明する。本実施形態にかかる基板処理装置100がクラスタツール型であることから,処理ユニット200は図1に示すように,断面多角形(例えば六角形)に形成された共通搬送室210と,その周囲に気密に接続された複数の処理室220(第1〜第6処理室220A〜220F)及び第1,第2ロードロック室230M,230Nから構成されている。
【0035】
各処理室220A〜220Fは,予め制御部120の記憶媒体などに記憶されたプロセス・レシピなどに基づいてウエハWに対して同種の処理又は相異なる異種の処理,例えばエッチング処理の他,後述する水素ラジカル処理や疎水化処理などの所定の処理を施すように構成されている。各処理室220(220A〜220F)内には,ウエハWを載置するための載置台222(222A〜222F)がそれぞれ設けられている。各処理室220の構成については後に詳述する。なお,処理室220の数は,図1に示す例に限られない。
【0036】
共通搬送室210は,内部空間を所定の真空度に制御することが可能なように構成されており,上述したような各処理室220A〜220Fの間,又は各処理室220A〜220Fと各第1,第2ロードロック室230M,230Nとの間でウエハWを搬出入する機能を有する。共通搬送室210は多角形(例えば六角形)に形成されており,その周りに処理室220(220A〜220F)がそれぞれゲートバルブ240(240A〜240F)を介して接続されているとともに,第1,第2ロードロック室230M,230Nの先端がそれぞれゲートバルブ(真空圧側ゲートバルブ)240M,240Nを介して接続されている。第1,第2ロードロック室230M,230Nの基端は,それぞれゲートバルブ(大気圧側ゲートバルブ)242M,242Nを介して搬送室310における断面略多角形状の長辺を構成する他側面に接続されている。
【0037】
第1,第2ロードロック室230M,230Nは,ウエハWを一時的に保持して圧力調整後に,次段へパスする機能を有している。第1,第2ロードロック室230M,230Nそれぞれの内部には,ウエハWを載置可能な受渡台232M,232Nが設けられている。
【0038】
共通搬送室210内には,例えば屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる処理ユニット側搬送機構250が設けられている。処理ユニット側搬送機構250は,2つのピック252A,252Bを有しており,一度に2枚のウエハWを取り扱うことができるようになっている。また,この処理ユニット側搬送機構250は基台254に回転自在に支持されている。基台254は,共通搬送室210内の基端側から先端側にわたって配設された案内レール256上を例えば図示しないスライド駆動用モータによりスライド移動自在に構成されている。なお,基台254には例えばアーム旋回用のモータなどの配線を通すためのフレキシブルアーム258が接続されている。このように構成された処理ユニット側搬送機構250によれば,この処理ユニット側搬送機構250を案内レール256に沿ってスライド移動させることにより,第1,第2ロードロック室230M,230N及び各処理室220A〜220Fにアクセス可能となる。
【0039】
例えば,処理ユニット側搬送機構250を第1,第2ロードロック室230M,230N及び対向配置された処理室220A,220Fにアクセスさせる際には,処理ユニット側搬送機構250を案内レール256に沿って共通搬送室210の基端側寄りに位置させる。また,処理ユニット側搬送機構250を4つの処理室220B〜220Eにアクセスさせる際には,処理ユニット側搬送機構250を案内レール256に沿って共通搬送室210の先端側寄りに位置させる。これにより,1つの処理ユニット側搬送機構250により,共通搬送室210に接続されているすべての処理室220A〜220F,第1,第2ロードロック室230M,230Nにアクセス可能となる。
【0040】
なお,処理ユニット側搬送機構250の構成は上記のものに限られず,2つの搬送機構によって構成してもよい。すなわち,共通搬送室210の基端側寄りに屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる第1搬送機構を設けるとともに,共通搬送室210の先端側寄りに屈伸・昇降・旋回可能に構成された多関節アームよりなる第2搬送機構を設けるようにしてもよい。また,処理ユニット側搬送機構250のピックの数は,2つに限られることはなく,例えば1つのみとしてもよい。
【0041】
(制御部の構成例)
続いて,制御部120の具体的な構成例について図面を参照しながら説明する。図2は,制御部120の構成を示すブロック図である。この制御部120は,上述のように基板処理装置100全体の動作を制御するものであって,例えば各処理室220のウエハWに対するプロセス処理制御,搬送ユニット側搬送機構320と処理ユニット側搬送機構250の移動制御,各ゲートバルブ240,242の開閉制御,オリエンタ304の回転載置台306の回転制御を行う。
【0042】
このような制御を行う制御部120は,図2に示すように,制御部本体を構成するCPU(中央処理装置)122,CPU122が各部を制御するデータなどを格納するROM(Read Only Memory)124,CPU122が行う各種データ処理のために使用されるメモリエリアなどを設けたRAM(Random Access Memory)126,操作画面や選択画面などを表示する液晶ディスプレイなどで構成される表示手段128,オペレータによる種々のデータの入出力などを行うことができる入出力手段130,例えばブザーのような警報器などで構成される報知手段132,基板処理装置100の各処理室220A〜220F,共通搬送室210,搬送室310,オリエンタ304など各モジュールの各部を制御するモジュールコントローラとして機能する各種コントローラ134,基板処理装置100に適用される各種プログラムデータやこのプログラムデータに基づくプログラム処理を実行するときに使用する各種設定情報を格納する記憶手段140を備えている。
【0043】
記憶手段140には,例えば搬送ユニット側搬送機構320と処理ユニット側搬送機構250の動作を制御する搬送プログラム142や各処理室220におけるウエハWに対する処理時に実行される処理プログラム144が記憶されている。また,記憶手段140には,各処理室220の室内圧力,ガス流量,高周波電力などの処理条件(レシピ)データ146が記憶されている。このような記憶手段140は,例えばフラッシュメモリ,ハードディスク,CD−ROMなどの記録媒体で構成され,必要に応じてCPU122によってデータが読み出される。
【0044】
そして,制御部120を構成するCPU122,ROM124,RAM126,表示手段128,入出力手段130,報知手段132,各種コントローラ134,及び記憶手段140は,制御バス,システムバス,データバスなどのバスライン150によって電気的に相互接続されている。
【0045】
(処理室の構成例)
次に,図1に示す基板処理装置100における処理室の構成例を説明する。基板処理装置100は,Siウエハ上に形成されている低誘電率絶縁膜(例えばLow−k膜)を所定のパターンで選択的にエッチングするエッチング処理,このエッチング処理によって露出した膜表面のクリーニングを行うとともにLow−k膜から水分を脱離(脱水)させる水素ラジカル処理,及びLow−k膜の少なくとも露出表面を疎水化する疎水化処理を連続して実行可能な構成にすることができる。本実施形態においては,例えば処理室220A,220B,220E,220Fをエッチング処理室として構成し,処理室220Cを水素ラジカル処理室として構成し,処理室220Dを疎水化処理室として構成する。なお,各処理室220A〜220Fの組み合わせを変更することによって,基板処理装置100が実行できる処理内容を変更することもできる。以下,各処理室220A〜220Fの具体的な構成例について詳細に説明する。
【0046】
(エッチング処理室の構成例)
まず,図1に示す処理室220A,220B,220E,220Fをエッチング処理室とする場合の具体的構成例について図面を参照しながら説明する。図3は,本実施形態にかかるエッチング処理室の概略構成を示す縦断面図である。ここでのエッチング処理室400は,例えばSiウエハ上に形成されているLow−k膜を所定のパターンで選択的にエッチングするエッチング処理を行うようになっている。各処理室220A,220B,220E,220Fの構成は同様なので,以下では代表して処理室220Aをエッチング処理室400とした場合を例に挙げて説明する。
【0047】
図3に示すように,エッチング処理室400は,例えば接地された金属製(例えば,アルミニウム製又はステンレス製)の処理容器402を備える。処理容器402によって囲まれた気密性の高い内部空間404には,ウエハWを載置する載置台を兼ねた導電性の下部電極406が上下動可能に配置されている。
【0048】
なお,図示はしないが,処理容器402の側壁の下方にはウエハWの搬出入口が形成されている。この搬出入口は,図1に示すゲートバルブ240Aによって開閉されるようになっている。このゲートバルブ240Aを開状態とすることによって,エッチング処理室400と共通搬送室210との間でウエハWの搬出入が可能となる。ウエハWを搬出入する場合には,下部電極406を下方の所定位置に移動させた状態にし,ウエハWのエッチング処理を行う場合には,下部電極406を上方の所定位置に移動させる。
【0049】
下部電極406は,温度調節機構(図示せず)により所定温度に維持され,ウエハWと下部電極406との間には伝熱ガス供給源(図示せず)から伝熱ガスが所定の圧力で供給される。下部電極406の載置面に対向する位置には,上部電極408が形成されている。
【0050】
処理容器402の上部にはガス導入口420が形成されており,ガス供給源(図示せず)から所定の処理ガスがこのガス導入口420を介して内部空間404に導入される。内部空間404に導入された処理ガスは,上部電極408に複数形成されたガス吐出口410から下部電極406の載置面に載置されているウエハWに供給される。例えばCFガス,CHFガス,Cガス,Oガス,Heガス,Arガス,Nガス,又はこれらの混合ガスが処理ガスとして内部空間404に導入される。
【0051】
処理容器402の下部には排気管422が接続されており,排気装置(図示せず)がこの排気管422を介して処理容器402に接続されている。処理容器402内は,この排気装置によって真空引きされることで,所定の真空度,例えば100mTorrに保たれる。また,処理容器402の側方には,磁石430が設けられており,この磁石430によって処理容器402の内壁近傍にプラズマを閉じ込めるための磁場(マルチポール磁場)が形成される。この磁場の強度は可変である。
【0052】
下部電極406には,2周波重畳電力を供給する電力供給装置440が接続されている。電力供給装置440は,第1周波数の第1高周波電力(プラズマ発生用高周波電力)を供給する第1電力供給源442Aと,第1周波数よりも低い第2周波数の第2高周波電力(バイアス電圧発生用高周波電力)を供給する第2電力供給源442Bから構成されている。
【0053】
第1電力供給源442Aは,下部電極406側から順次接続される第1フィルタ444A,第1整合器446A,及び第1電源448Aを有している。第1フィルタ444Aは,第2周波数の電力成分が第1整合器446A側に侵入することを防止する。第1整合器446Aは,第1高周波電力成分について下部電極406側のインピーダンスと第1電源448A側のインピーダンスとをマッチングさせる。第1周波数は例えば100MHzである。
【0054】
第2電力供給源442Bは,下部電極406側から順次接続される第2フィルタ444B,第2整合器446B,及び第2電源448Bを有している。第2フィルタ444Bは,第1周波数の電力成分が第2整合器446B側に侵入することを防止する。第2整合器446Bは,第2高周波電力成分について下部電極406側のインピーダンスと第2電源448B側のインピーダンスとをマッチングさせる。第2周波数は例えば3.2MHzである。
【0055】
このような構成を有する電力供給装置440によれば,下部電極406に例えば100MHzの第1高周波電力と,例えば3.2MHzの第2高周波電力を重畳して印加することができる。
【0056】
上記のように構成されたエッチング処理室400としての処理室220Aにおいては,電力供給装置440が出力する2種類の高周波電力と,磁石430が形成する水平磁場とによって,内部空間404に導入された処理ガスはプラズマ状態となり,発生する自己バイアス電圧により加速されたイオン及びラジカルのエネルギーにより,ウエハWに対してエッチング処理が施される。
【0057】
(水素ラジカル処理室の構成例)
次に,図1に示す処理室220Cを水素ラジカル処理室とする場合の具体的構成例について図面を参照しながら説明する。図4は,本実施形態にかかる水素ラジカル処理室の概略構成を示す縦断面図である。ここでの水素ラジカル処理室500は,水素を含む処理ガスを励起させて発生したプラズマ(以下,「水素プラズマ」ともいう)により生成された水素ラジカルを用いたダウンフロータイプのものとして構成した場合を例に挙げる。また,水素ラジカル処理室500は,上記水素ラジカルによって例えば上記エッチング処理によって露出した膜表面のクリーニングを行うとともに低誘電率絶縁膜(例えばLow−k膜)から水分を脱離(脱水)させる水素ラジカル処理を行うようになっている。
【0058】
図4に示すように,水素ラジカル処理室500は,ウエハWの処理を行う処理室本体502と,この処理室本体502に連通し,処理ガスを励起させてプラズマを生成するベルジャ504を備える。ベルジャ504は,処理室本体502の上方に設けられ,誘導結合プラズマ(ICP)方式によって導入される処理ガスのプラズマを生成するように構成されている。
【0059】
具体的には,ベルジャ504は,例えば石英,セラミックス等の絶縁部材料からなる略円筒状に構成される。ベルジャ504の上部にはガス導入口522が形成されており,ガス供給源520から所定の処理ガスがこのガス導入口522を介してベルジャ504の内部空間に導入されるようになっている。ガス供給源520とガス導入口522を接続するガス配管524には,図示はしないが,ガス配管524を開閉するための開閉バルブ,処理ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラなどが備えられている。
【0060】
上記処理ガスとしては,水素を含有するガスであって水素ラジカル(H)を発生させるガスを用いる。例えば水素ガス単体でもよく,また水素ガスと不活性ガスとの混合ガスであってもよい。この場合の不活性ガスとしては,例えばヘリウムガス,アルゴンガス,ネオンガスが挙げられる。なお,水素ガスと不活性ガスの混合ガスを処理ガスとして用いる場合には,水素ガスの混合比は,例えば4%に調整される。
【0061】
ベルジャ504の円筒状の側壁の外周には,アンテナ部材としてのコイル516が巻回されている。コイル516には高周波電源518が接続されている。高周波電源518は,300kHz〜60MHzの高周波電源を出力することができる。そして,高周波電源518からコイル516に例えば450kHzの高周波電力を供給することにより,ベルジャ504内に誘導電磁界が形成される。これにより,処理室本体502内に導入された処理ガスは励起され,プラズマが生成される。
【0062】
処理室本体502内にはウエハWを水平に支持する円板状の載置台506が設けられている。載置台506は,処理室本体502の底部に設けられた円筒状の支持部材508に支持されている。載置台506は,例えば窒化アルミニウムなどのセラミックスからなる。載置台506の外縁部には,載置台506に載置されたウエハWをクランプするクランプリング510が設けられている。また,載置台506内にはウエハWを加熱するためのヒータ512が埋設されており,このヒータ512はヒータ電源514から給電されることによりウエハWを所定の温度(例えば300℃)に加熱できるようになっている。このときの温度は,低誘電率絶縁膜が大きなダメージを受けない範囲で,低誘電率絶縁膜内から水分を十分に脱離させることができる程度の比較的高い温度,例えば250℃〜400℃程度の範囲で設定されることが好ましい。
【0063】
処理室本体502の底壁には排気管526が接続されており,この排気管526には真空ポンプを含む排気装置528が接続されている。排気装置528を作動させることにより処理室本体502及びベルジャ504内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0064】
また,処理室本体502の側壁には,図1に示すゲートバルブ240Cによって開閉自在な搬出入口532が形成されている。このゲートバルブ240Cを開状態とすることによって,水素ラジカル処理室500と共通搬送室210との間でウエハWの搬出入が可能となる。
【0065】
上記のように構成された水素ラジカル処理室500において,ウエハWを所定の温度に加熱し,ベルジャ504内に処理ガスとして水素含有ガスを供給しつつ,高周波電源518からコイル516に高周波電力を供給して,ベルジャ504内に誘導電磁界を形成すると,ベルジャ504内に水素含有ガスのプラズマが発生し,水素ラジカル(H)が生成される。そして,この水素ラジカルがウエハWに供給され,水素ラジカル処理が施される。これにより,低誘電率絶縁膜内に含まれる水分を十分に脱離させることができるとともに,Cuなどの金属層が露出している場合にその露出面をクリーニングすることができる。このような水素ラジカル処理の詳細については後述する。
【0066】
なお,ここでは,水素ラジカル処理室500を,誘導結合プラズマ方式によって水素プラズマを生成するタイプの装置として説明したが,必ずしもこれに限定されるものではない。例えばマイクロ波励起方式によって水素プラズマを生成する装置であってもよい。また,水素含有ガスを高温の触媒(例えば高温の触媒ワイヤ)に接触させることにより水素ラジカルを生成するタイプの装置であってもよい。また,水素ラジカル処理室500は,上述したダウンフロータイプのものに限られるものではなく,ウエハWから離れた空間にプラズマを発生させるリモートプラズマタイプのものであってもよい。
【0067】
(疎水化処理室の構成例)
次に,図1に示す処理室220Dを疎水化処理室とする場合の具体的構成例について図面を参照しながら説明する。図5は,本実施形態にかかる疎水化処理室の概略構成を示す縦断面図である。疎水化処理室600は,低誘電率絶縁膜(例えばLow−k膜)の疎水化処理を行うようになっている。ここでは,所定の処理ガスをウエハ上に供給して,ウエハ上の低誘電率絶縁膜の露出表面をシリル化することによって疎水化する処理を行う場合を例に挙げる。また,ここでいう疎水化とは,Low−k膜などの低誘電率絶縁膜に新たな水分が吸収され難くすることをいう。
【0068】
図5に示すように,疎水化処理室600は,ウエハWを収容し,内部空間を真空に保持可能な略円筒状の処理容器602を備えており,処理容器602の底部には,疎水化処理が施されるウエハWを載置するサセプタ604が設けられている。また,サセプタ604内にはウエハWを加熱するためのヒータ606が埋設されている。ヒータ電源608からヒータ606に給電されることにより,ウエハWは,所定の温度(例えば180℃)に加熱される。このときの温度は,低誘電率絶縁膜の膜質が熱によって劣化しない範囲で疎水化処理が適切に進行するように,上述した水素ラジカル処理のときの温度よりも低い温度,例えば100℃〜200℃程度の範囲で設定されることが好ましい。なお,水素ラジカル処理より低い温度とはいっても,100℃以上の比較的高い温度に設定することにより,低誘電率絶縁膜中に水分が残っていれば,それも脱離され易くなる。
【0069】
処理容器602内の上部には,サセプタ604に対向するように例えばシリル化剤を含む処理ガス(シリル化剤含有ガス)を処理容器602内に導入するための中空円盤状のシャワーヘッド610が設けられている。シャワーヘッド610は,上面中央にガス導入口612を有し,下面に多数のガス吐出孔614を有している。
【0070】
ガス導入口612にはガス供給配管620が接続されており,このガス供給配管620には,TMSDMA(Trimethylsilyldimethylamine)等のシリル化剤を供給するシリル化剤供給源630から延びる配管622と,シリル化剤を希釈するための希釈ガスを供給する希釈ガス供給源640から延びる配管624が接続されている。この希釈ガスとしては,例えばArやNガスなどが挙げられる。
【0071】
配管622には,シリル化剤供給源630から順に,シリル化剤を気化させる気化器632,マスフローコントローラ634,及び開閉バルブ636が設けられている。一方,配管624には,希釈ガス供給源640から順に,マスフローコントローラ644及び開閉バルブ646が設けられている。気化器632により気化されたシリル化剤は,希釈ガスで希釈され,シリル化剤含有ガスの状態でガス供給配管620,シャワーヘッド610を通って,処理容器602内に導入される。
【0072】
処理容器602の底部には排気口650が設けられ,この排気口650に排気管652が接続されている。排気管652には圧力制御バルブ654とターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有する排気装置656が接続されている。排気装置656を作動させることにより処理容器602内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0073】
また,処理容器602の側壁には,ゲートバルブ240Dによって開閉自在な搬出入口662が形成されている。このゲートバルブ240Dを開状態とすることによって,疎水化処理室600とこれに隣接する室,本実施形態においては共通搬送室210との間でウエハWの搬出入が可能となる。
【0074】
上記のように構成された疎水化処理室600においては,所定の温度に加熱されたウエハWに対して所定の処理ガス例えばシリル化剤含有ガスが供給される。これによって,ウエハ上の低誘電率絶縁膜の露出表面がシリル化され,その表面に撥水層が形成されることによって疎水化される。なお,低誘電率絶縁膜の露出表面がシリル化するので,低誘電率絶縁膜を疎水化させる効果のみならず,低誘電率絶縁膜のダメージを回復させる効果もある。このような疎水化処理の詳細については後述する。
【0075】
(処理対象となるウエハの膜構造の具体例)
次に,上述した本実施形態にかかる基板処理装置100により一連の処理(エッチング処理,水素ラジカル処理,疎水化処理)を施す処理対象となるウエハWの膜構造の具体例について説明する。図6は,基板処理装置100による処理前のウエハWの膜構造の具体例を示す断面図である。
【0076】
図6に示すウエハW上の膜構造は,Si基板(シリコン基板)710上に形成された複数の膜からなる。具体的には,Si基板710上に形成されたSiO等から成る下地絶縁膜720,この下地絶縁膜720に例えばCuを埋め込むことによって形成された金属層722,下地絶縁膜720の上に形成されたSiC等から成るエッチングストッパ膜730,その上に形成された例えばシリコンを含みメチル基を骨格とするLow−k膜(低誘電率絶縁膜)740,その上に形成されたSiO等から成るキャップ膜750,その上に形成された反射防止膜(BARC)760,その上に形成されたフォトレジスト膜770を有する。
【0077】
このようなウエハWの膜構造は,例えば基板処理装置100とは別の基板処理装置(図示せず)にてSi基板710に対して成膜処理などの処理が順次施されることによって得られる。また,ウエハWにおいてフォトレジスト膜770が形成された後にフォトリソグラフィ工程が行われ,フォトレジスト膜770には所定の配線パターンが形成されている。
【0078】
(ウエハ処理の具体例)
次に,基板処理装置100が上記ウエハWに対して行う一連の処理について図面を参照しながら説明する。図7は,本実施形態にかかる基板処理装置100が行う処理の工程を説明するためのフローチャートである。基板処理装置100は,所定のプログラムに基づいて制御部120により各部が制御されて,ウエハWに対する一連の処理を行うようになっている。ここでは,一連の処理として,図6に示すような膜構造を有するウエハWを各処理室に真空圧雰囲気下で搬送することにより,エッチング処理,水素ラジカル処理,疎水化処理を連続して行う場合を例に挙げて説明する。
【0079】
基板処理装置100は,先ずステップS100にて,カセット容器102から図6に示すような膜構造を有するウエハWを,エッチング処理室400として構成された処理室220A,220B,220E,220Fのいずれかに搬送する。具体的には,カセット容器102内のウエハWを,搬送ユニット側搬送機構320によってオリエンタ304へ搬送して位置決めを行う。次に,オリエンタ304において位置決めされたウエハWを再び搬送ユニット側搬送機構320によって第1,第2ロードロック室230M,230Nの一方,例えば第1ロードロック室230Mへ搬送する。続いて,第1ロードロック室230Mに搬送されたウエハWを処理ユニット側搬送機構250によってエッチング処理室400として構成された処理室220A,220B,220E,220Fのいずれかに搬送し,ウエハWに対して下記のように所定のエッチング処理を施す。
【0080】
(エッチング処理の具体例)
ここで,本実施形態にかかる基板処理装置100において実行されるウエハ処理のうち,ステップS110のエッチング処理の具体例について図面を参照しながら説明する。処理室220A,220B,220E,220Fのうちのいずれかのエッチング処理室400にて実行されるエッチング処理では,パターニングされたフォトレジスト膜770をマスクとして用いて,反射防止膜760,キャップ膜750,Low−k膜740,及びエッチングストッパ膜730を順次選択的にエッチングする。
【0081】
このエッチング処理におけるプロセス条件は例えば次の通りである。エッチング処理室400内の圧力を100mTorrに調整し,第1電力供給源442Aから下部電極406に印加する第1高周波電力(例えば,40MHz)を1000W,第2電力供給源442Bから下部電極406に印加する第2高周波電力(例えば,13.56MHz)を0W(すなわち,第2高周波電力を印加しない)とする。また,処理ガスとして,CFガスを用いる。そして,このエッチング処理は例えば23秒間で行われる。
【0082】
このようなエッチング処理を実施することによって,図8に示すように,Low−k膜740に凹部としての配線溝(又は配線孔。以下,同様)780が形成される。これによって,配線溝780の側壁部にてLow−k膜740の表面が露出し,配線溝780の底部にて金属層722の表面が露出する。
【0083】
(Low−k膜及び金属層がエッチング処理によって受ける影響)
ここで,Low−k膜及び金属層がエッチング処理によって受ける影響について説明する。エッチング処理を施すと,配線溝780の側壁部にLow−k膜740の表面が露出するので,そのLow−k膜740の露出表面にダメージが及んだり,配線溝780の底部に露出する金属層722の表面に金属化合物が付着したりする問題がある。
【0084】
先ず,上記エッチング処理によって下地の金属層が受ける影響についてより詳細に説明する。CFガスなどの処理ガスによるLow−k膜740のエッチングによって,図8に示すように,配線溝780に下地の金属層722が露出すると,CFガスに含まれるフッ素が金属層722を構成する金属(例えば銅)と反応してその露出表面に不所望の金属化合物膜(例えばCuF膜)724が生成されてしまう。この配線溝780には後の工程で配線用の金属例えば銅が埋め込まれるところでもあるため,この埋め込まれる銅と金属層722との接続部分に金属化合物膜724が存在するとその接続部分での電気抵抗が大きくなってしまい,多層配線構造において良好な電気特性が得られなくなってしまう問題がある。
【0085】
さらに,もし上記エッチング処理後に,配線溝780に金属層722の表面が露出した状態で大気に晒されると,金属層722の露出表面に金属化合物膜724として,上記のCuF膜の他にさらに酸化膜が形成されてしまう可能性がある。金属層722の露出表面に酸化膜が形成されると,配線溝780に埋め込まれる配線金属と金属層722との接続部分での電気抵抗がさらに大きくなってしまう。このため,エッチング処理後には,金属層722の露出表面からCuF膜や酸化膜などの金属化合物膜724を除去する必要がある。
【0086】
次に,上記エッチング処理によってLow−k膜が受ける影響についてより詳細に説明する。例えばLow−k膜740をCFガスなどの処理ガスによってエッチングすると,図8に示すように,配線溝780に露出するLow−k膜740の表面近傍に,ダメージ領域742が生じる。このダメージ領域742では,CFガスに含まれるフッ素と反応してメチル基(−CH)が減少し,水分と反応して水酸基(−OH)が増加する状態となって,Low−k膜740の誘電率を上昇させる要因となる。これを残しておくと,最終的にウエハWに構成される半導体デバイスにおいて電気的特性が劣化する要因ともなる。なお,図8ではダメージ領域742を模式的に明示しているが,ダメージ領域742とダメージを受けていない領域との境界は,必ずしも図8に示すように明確なものではない。
【0087】
また,Low−k膜には多孔質材料のものも多く,一般に吸水性が高い,すなわち水分(HO)を吸収し易いという性質がある。このため,Low−k膜が成膜された後に大気中に取り出されると,大気中の水分を吸収するので,エッチング前の段階でも既にLow−k膜の内部に水分が含まれている可能性が高く,またLow−k膜の雰囲気中に水分が含まれていれば,新たに水分を吸収してしまう可能性も高い。しかも,時間が経過するに連れてどんどん水分を吸収してしまう。
【0088】
このような性質があるにも拘わらず,図8に示すようにLow−k膜740がエッチング処理によってダメージを受けると,そのダメージ領域742では,水分をより一層吸収し易くなってしまう。従って,もしエッチング処理後に,後述する水素ラジカル処理と疎水化処理を施さずに,ウエハWを基板処理装置100から大気中に取り出せば,配線溝780においてLow−k膜740の表面が疎水化されない状態で大気中に晒されるため,大気中に含まれている水分(HO)が,Low−k膜740のダメージ領域742に吸着し易くなるとともに,雰囲気中の水分が内部に吸収され易くなる。
【0089】
このように,Low−k膜740に水分744が含まれていると,電気的特性と機械的特性の両面でLow−k膜740の膜質が劣化してしまう問題がある。例えば水は空気と比べても被誘電率が大きいため,Low−k膜740に含まれる水分744の量が増えるほど,Low−k膜740全体の誘電率が高くなり電気的特性が劣化してしまう。
【0090】
また,Low−k膜740に水分744が含まれ,機械的強度が劣化してしまうと,エッチングによって形成された微細幅の配線溝780の形状が配線金属が埋め込まれる前に崩れてしまいかねない。また,機械的強度が劣化したLow−k膜740上に他のLow−k膜等の各種膜を安定的に積み上げることができなくなり,ひいては多層の配線構造に耐えられなくなるという問題も生じ得る。また,Low−k膜740の強度劣化によって,そのLow−k膜740とその表面に接している膜(例えばエッチングストッパ膜730やキャップ膜750)とが剥離してしまう虞もある。
【0091】
特に近年では,回路の更なる微細化,更なる多層化に伴い,Low−k膜740については,電気的特性のみならず,機械的強度の劣化についても防止できることが益々重要になってきている。このため,エッチング処理後には,Low−k膜740中の水分はできる限り脱離させることが好ましく,またLow−k膜740中にできる限り新たな水分が吸収されないようにすることが好ましい。
【0092】
そこで,本実施形態では,エッチング処理後のウエハWに対して水素ラジカル処理を行い,その後にさらに疎水化処理を行う。具体的には,図7に示すように,エッチング処理が終了すると(ステップS110),ステップS120にてエッチング後のウエハWを水素ラジカル処理室500として構成された処理室220Cに搬送し,ステップS130にて水素ラジカル処理を施す。続いて,ステップS140にて水素ラジカル処理後のウエハWを疎水化処理室600として構成された処理室220Dに搬送して,ステップS150にて疎水化処理を施す。しかも,各処理室220の間のウエハの搬送は真空圧雰囲気下にて行う。
【0093】
こうすることにより,Low−k膜内の水分を十分に脱離(脱水)できるとともに,新たな水分が吸収されないようにすることができ,また金属層722の露出表面の金属化合物724も除去することができる。このように,劣化したLow−k膜740及び金属層722の膜質を回復させるとともに,その後にこれらの膜質の劣化を防止できるので,ウエハW上に良好な特性の半導体デバイスを構成することができる。以下,本実施形態において,上記のエッチング処理後に行う水素ラジカル処理及び疎水化処理について詳細に説明する。
【0094】
(水素ラジカル処理の具体例)
まず,水素ラジカル処理(ステップS130)の具体例について図面を参照しながら説明する。水素ラジカル処理室500としての処理室220Cにて実行される水素ラジカル処理では,まずゲートバルブ240Cを開いて,処理室本体502内に,図8に示すようなエッチング処理後のウエハWを搬入し,載置台506に載置してクランプリング510によって固定する。
【0095】
その後,ゲートバルブ240Cを閉じて,排気装置528によって処理室本体502内及びベルジャ504内を排気して所定の減圧状態(例えば1.5Torr)とする。続いて,ガス供給源520からガス配管524を介してベルジャ504内に所定のガス,例えば水素ガスとヘリウムガスの混合ガス(水素ガスの混合割合は例えば4%)を導入しつつ,高周波電源518からコイル516に高周波電力(例えば4000W)を供給して,ベルジャ504内に誘導電磁界を形成する。これによって,ベルジャ504内にプラズマが発生して,水素ラジカルが生成され,その水素ラジカルは下方のウエハWに供給される。
【0096】
また,載置台506に埋設されているヒータ512には,ヒータ電源514から電力を供給する。これによってヒータ512を発熱させて,ウエハWを所定の温度例えば300℃になるように加熱制御する。
【0097】
このように,水素ラジカル処理室500内にて,ウエハWに対して水素ラジカルを供給して,かつウエハWの温度を300℃に加熱することによって,ウエハWに水素ラジカル処理が施されることになる。この水素ラジカル処理後のウエハWの膜構造は図9に示すようになる。
【0098】
このような水素ラジカル処理を行うと,図9に示すように,金属層722の露出表面上の金属化合物膜(例えばCuF膜など)724が水素ラジカルによって還元されるので,これらの金属化合物膜を除去することができる。このように,水素ラジカル処理により金属層722の露出表面がクリーニングされて純粋な金属表面に回復するため,その面抵抗を大幅に低下させることができる。
【0099】
しかも,上記水素ラジカル処理では,ウエハWの温度が比較的高温の例えば300℃に加熱されるため,Low−k膜740の表面のみならず,その内部からも水分744を脱離させることができる。なお,水素ラジカル処理中にウエハWの温度を高い温度例えば250℃以上に加熱することによってLow−k膜740から水分744を効率よく脱離させることができる。ただし,ウエハWの温度が例えば400℃以上になるとLow−k膜740の膜質が熱により劣化してしまう可能性もある。従って,水素ラジカル処理において,Low−k膜740の膜質が劣化しない範囲でLow−k膜740から水分を脱離させることができる範囲として,250℃〜400℃の範囲内でウエハWの温度を設定することが好ましい。
【0100】
さらに,水素ラジカルの作用により,フォトレジスト膜770と反射防止膜760も除去できる。したがって,本実施形態にかかる水素ラジカル処理によれば,フォトレジスト膜770と反射防止膜760を除去するアッシング処理を別途行う必要がないため,スループットを向上させることができ,また基板処理装置100にアッシング処理室を別途取り付ける必要もない。
【0101】
ところで,フォトレジスト膜などを除去するアッシング処理としては,従来より酸素を含むガスのプラズマ(以下,「酸素含有プラズマ」ともいう)を用いた処理が多用されている。ところが,このような酸素プラズマを用いたアッシング処理では,酸素ラジカルによりLow−k膜740がダメージを受けてしまい,しかもこのダメージを回復させることは極めて難しくなってしまうという問題があった。具体的には,エッチングによりダメージを受けたLow−k膜740のダメージ領域742のあたりに酸素ラジカルによる化学反応が起り,Low−k膜740の露出表面からその内部に入り込んで,Si−Oの緻密な部分(ここでは,「シュリンク(Shrink)層)という)が形成されてしまう。ダメージ領域742にシュリンク層が形成されると,その後にシリル化処理を行っても,シリル化剤の浸透が妨げられるなど,ダメージ領域742を十分に回復させることは難しくなる。
【0102】
これに対して,本実施形態にかかる水素ラジカル処理では,酸素原子を含まない水素含有ガスを用いるので,酸素ラジカルも発生しないため,Low−k膜740のダメージ領域742にSi−O結合の緻密な部分であるシュリンク層は形成されることはなく,その代りにダメージ領域742にはSi−H結合が形成されるものと考えられる。このSi−H結合は,後に行う疎水化処理で例えばシリル化剤などのダメージ回復可能な処理ガスを用いることにより,元のSi−CHに戻り易いので,Low−k膜740のダメージ領域742を十分に回復させることができる。このように,本実施形態にかかる水素ラジカル処理によれば,Low−k膜740のダメージ領域742をより回復し易い組成に変えることができる。
【0103】
(疎水化処理の具体例)
次に,疎水化処理(ステップS150)の具体例について図面を参照しながら説明する。疎水化処理室600としての処理室220Dにて実行される疎水化処理では,まずゲートバルブ240Dを開いて,疎水化処理室600内に,図9に示すような水素ラジカル処理後のウエハWを搬入し,サセプタ604に載置する。
【0104】
その後,ゲートバルブ240Dを閉じて,排気装置656によって疎水化処理室600内を排気して減圧状態(例えば50Torr)とする。また,シリル化剤供給源630から気化器632にシリル化剤例えばTMSDMAを供給して気化させ,これを希釈ガス供給源640から供給される希釈ガスによって希釈してなる処理ガスをガス供給配管620及びシャワーヘッド610を介して,疎水化処理室600内に導入する。これによって,ウエハWにガス化したシリル化剤が供給される。気化器632の温度は例えば室温〜200℃,シリル化剤流量は700sccm(mL/min)以下に調整される。
【0105】
また,サセプタ604に埋設されているヒータ606には,ヒータ電源608から電力を供給する。これによってヒータ606を発熱させて,ウエハWを所定の温度例えば180℃になるように加熱制御する。
【0106】
シリル化剤としては,以上のTMSDMAに限らず,シリル化反応を起こす物質であれば使用可能である。分子内にシラザン結合(Si−N結合)を有する化合物群の中で比較的小さな分子構造を持つもの,例えば分子量が260以下のものが好ましく,分子量170以下のものがより好ましい。具体的には,例えば,前記TMSDMAの他,DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine),HMDS(Hexamethyldisilazane),TMDS(1,1,3,3−Tetramethyldisilazane),TMSpyrole(1−Trimethylsilylpyrole),BSTFA(N,O−Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide),BDMADMS(Bis(dimethylamino)dimethylsilane)等を用いることが可能である。これらの化学構造を以下に示す。
【0107】
【化1】

【0108】
上記化合物の中でも,誘電率の回復効果やリーク電流の低減効果が高いものとして,TMSDMA及びTMDSを用いることが好ましい。また,シリル化後の安定性の観点からは,シラザン結合を構成するSiが3つのアルキル基(例えばメチル基)と結合している構造のもの(例えばTMSDMA,HMDSなど)が好ましい。
【0109】
このように,疎水化処理室600内にて,ウエハWに対してシリル化剤を供給して,かつウエハWの温度を例えば180℃に制御することによって,ウエハWに疎水化処理が施される。そして,この疎水化処理後のウエハWの膜構造を図10に示す。
【0110】
このようなシリル化剤を含む処理ガスを用いた疎水化処理を行うと,図10に示すように,Low−k膜740のダメージ領域742にシリル化反応が起るので,減少したメチル基(−CH)を回復させることができる。しかも,上述したように,本実施形態による疎水化処理では,その直前に行われた水素ラジカル処理によりLow−k膜740のダメージ領域742がメチル基(−CH)になり易い状態になっているため,ダメージ領域742をより十分に回復させることができる。
【0111】
これにより,ダメージ領域742は元の組成に回復してダメージ領域742がなくなるとともに,配線溝780に露出するLow−k膜740の表面部分における組成もその末端がメチル基(−CH)の組成になることによってLow−k膜740の表面部分に撥水層764が形成される。これにより,Low−k膜740の露出表面に新たに水分が吸着されることを防止できるとともに,Low−k膜740の内部に新たに水分が吸収されることを防止できる。
【0112】
なお,シリル化反応が進むことによって,Low−k膜740の水分もさらに減少させることができる。しかも,ウエハWの温度をLow−k膜740の膜質が熱によって劣化しない範囲で,比較的高い温度(例えば180℃)に加熱するので,Low−k膜740中に水分744が残っていれば,それも脱離され易くなる。また,疎水化処理の処理時間(例えば150秒)は,水素ラジカル処理の処理時間(例えば69秒)の2倍以上であり,ウエハWをより長い時間高温に維持するので,これによっても水分744をより多く脱離させることができる。
【0113】
こうして,ステップS150にてLow−k膜740の疎水化処理が終了すると,ステップS160にて,共通搬送室210に備えられている処理ユニット側搬送機構250によってウエハWを疎水化処理室600としての処理室220Dから搬出し,第1,第2ロードロック室230M,230Nの一方,例えば第2ロードロック室230Nへ搬送する。次に,第2ロードロック室230Nに搬送されたウエハWを搬送ユニット側搬送機構320によって元のカセット容器102に戻す。ここで本実施形態にかかるウエハ処理が完了する。そして,カセット容器102に戻されたウエハWは,その後,他の基板処理装置(図示せず)へ搬送され,そこで所定のプロセス処理例えば,Low−k膜740に形成された配線溝780への配線金属としての銅の埋め込み処理が施される。
【0114】
以上のように本実施形態にかかるウエハ処理によれば,Low−k膜740から水分744を十分に除去することができ,しかも撥水層746を形成することによって,Low−k膜740に新たに水分が吸収されないようにすることができる。しかも,これら一連のウエハ処理は,ウエハWを大気に曝すことなく行われる。このため,ウエハWの搬送中にLow−k膜740に新たに水分744が吸収されてしまうことを防止することができる。また,金属層722の露出表面が酸化してしまうことも防止することができる。これによって,Low−k膜740の機械的強度が保たれ,Low−k膜740の形状を維持することができ,Low−k膜740からの他の膜の剥離を防止することができる。また,Low−k膜740の誘電率が低く抑えられ,良好な電気的特性を得ることができる。
【0115】
また,エッチング処理においてLow−k膜740がダメージを受けても,そのダメージ領域を修復してLow−k膜740の膜質を回復させることができる。これによっても,Low−k膜740について良好な電気的特性を得ることができる。また,エッチングによって形成された配線溝780の形状を崩すことなく維持することができる。
【0116】
また,金属層722の露出表面に金属化合物膜724が形成されていても,この露出表面をクリーニングすることができるため,金属層722の露出表面の面抵抗を小さくすることができる。したがって,配線溝780に埋め込まれる配線用金属と金属層722との接続部分での電気的抵抗を小さくすることができる。
【0117】
なお,水素ラジカル処理室500から疎水化処理室600へのウエハWの搬送は,真空圧雰囲気下で行うことが最も好ましいが,Low−k膜740への水分浸入や金属層722の露出表面の酸化を抑制するためには,少なくとも水分や酸素を低く抑えられた空間内で行うことが好ましい。
【0118】
ところで,水素ラジカル処理は,上述したように,従来以上に多くの水分をLow−k膜から脱離させることができるが,Low−k膜の露出表面に撥水層が形成されるわけではないので,Low−k膜の露出表面は水分が吸収され易い状態である。従って,水素ラジカル処理を行っただけでは,Low−k膜に再び水分が吸収される可能性が高い。このため,もし水素ラジカル処理を行った後にウエハWを大気中に放置すれば,時間経過とともに水分をどんどん吸収し,Low−k膜の電気的特性及び機械的強度は時間経過とともに劣化してしまう。このため,次に行う処理(例えばウエットクリーニング処理や配線用の金属の埋込み処理)などにも影響が生じる。従って,このように水素ラジカル処理を行った後に大気中に取り出す運用を行うときには,次に行う処理までの時間はできるだけ短くなるように管理しなければならない。
【0119】
これに対して,本実施形態にかかるウエハ処理では,このような水素ラジカル処理の欠点を補うことができる。すなわち,水素ラジカル処理後に連続して疎水化処理を行い,その間の搬送は真空圧雰囲気下で行うため,水素ラジカル処理後にLow−k膜の露出表面から再び水分が吸収されない状態で,疎水化処理によりLow−k膜の露出表面に撥水層を形成することができる。これにより,例えば本実施形態による疎水化処理後はウエハWを大気中に取り出しても,Low−k膜の露出表面から水分が吸収され難いので,時間経過によるLow−k膜の電気的特性及び機械的強度の劣化を防止できる。従って,本実施形態によれば,次に行う処理までの時間は特に管理する必要がなくなる。この点で,処理後のウエハWの管理を容易にすることができる効果もある。
【0120】
ここで,Low−k膜の時間経過による機械的強度の変化について,水素ラジカル処理のみを行った場合と,水素ラジカル処理と疎水化処理とを連続して行った場合とを比較する実験を行った結果について説明する。図11Aは,Low−k膜を有するサンプルウエハに対して水素ラジカル処理のみを行った直後と大気圧雰囲気下に48時間置いた後のLow−k膜の硬さ(ここでは弾性率の特性)をそれぞれ検出してグラフにしたものであり,図11Bは,水素ラジカル処理のみを行った直後と真空圧雰囲気下に48時間置いた後のLow−k膜の弾性率の特性をそれぞれ検出してグラフにしたものである。図11Cは水素ラジカル処理と疎水化処理を連続して行った直後と大気圧雰囲気下に48時間置いた後のLow−k膜の弾性率の特性をそれぞれ検出してグラフにしたものである。
【0121】
本実験におけるLow−k膜の弾性率の特性は,ナノインデンテーション(押込み)法を用いて検出した。具体的にはLow−k膜の表面から深さ方向に先端形状が三角錐の圧子(バーコビッチ圧子)を押し込み,そのときの圧子にかかる荷重を精密に制御しながら圧子の侵入量をnmの精度で測定し,得られたデータを解析してLow−k膜の弾性率を求めている。従って,図11A〜図11Cでは,Low−k膜の弾性率が大きいほど,Low−k膜の弾性特性が良好であり,Low−k膜の弾性率が小さいほどLow−k膜の弾性特性が劣化していることになる。また,サンプルウエハを大気圧雰囲気下に置く場合には,大気圧雰囲気であって高湿度環境下(例えば温度80℃,湿度80%)に48時間おいた後のLow−k膜の弾性率を測定する加速試験を行った。
【0122】
なお,本実験での水素ラジカル処理におけるプロセス条件は例えば次の通りである。水素ラジカル処理室500内の圧力を1.5Torrに調整し,水素ラジカル処理室500に水素ガスとヘリウムガスの混合ガス(水素ガスの混合割合は例えば4%)を導入しつつ,高周波電源518からコイル516に高周波電力例えば4000Wを供給して,ベルジャ504内に誘導電磁界を形成する。また,載置台506に埋設されているヒータ512には,ヒータ電源514から電力を供給する。これによってヒータ512を発熱させて,ウエハWを300℃に加熱制御する。そして,この水素ラジカル処理の時間は69秒とする。
【0123】
また,本実験での疎水化処理におけるプロセス条件は例えば次の通りである。疎水化処理室600内の圧力を50Torrに調整し,疎水化処理室600にTMSDMAガスを導入する。また,ウエハWを所定の温度例えば180℃に加熱制御する。そして,この疎水化処理の時間は150秒とする。
【0124】
この実験結果によれば,水素ラジカル処理のみを行った場合(図11A,図11B)には,処理直後よりも48時間経過後の方がLow−k膜の弾性率が全体的に低くなっているので,時間経過に応じてLow−k膜の機械的強度が劣化していくことがわかる。しかも,高湿度環境の大気圧雰囲気で48時間経過した場合(図11A)の方が,低湿度環境の真空圧雰囲気で48時間経過した場合(図11B)よりもLow−k膜の機械的強度の劣化が激しいこともわかる。これは,Low−k膜の周囲に水分が多いほど,Low−k膜により多くの水分が吸収され,膜強度が著しく低下することを示している。
【0125】
これに対して,水素ラジカル処理と疎水化処理とを連続して行った場合(図11C)には,処理直後よりも48時間経過後の方がLow−k膜の弾性率がほとんど変化していないので,時間が経過してもLow−k膜の機械的強度はほとんど劣化しないことがわかる。しかも,水素ラジカル処理と疎水化処理を連続して行った後は,真空圧雰囲気の場合は言うまでもなく,高湿度環境の大気圧雰囲気の場合に48時間経過しても,Low−k膜の機械的強度は劣化しない。
【0126】
このように,水素ラジカル処理後に連続して疎水化処理を行うことによって,水素ラジカル処理のみを行った場合に比して,時間経過によるLow−k膜の機械的強度の劣化を効果的に防止できる。従って,本実施形態によれば,水素ラジカル処理及び疎水化処理を施した後,次のプロセス処理,例えばウエットクリーニング処理やLow−k膜740に形成されている配線溝780への配線金属としての銅の埋め込み処理などを行うまでに,ウエハWを例えばカセット容器内に収容したまま長時間大気中で待機させなければならない場合であっても,Low−k膜740の機械的強度を保つことができる。この結果,配線溝780の形状が崩れることなく,そこに配線金属を埋め込むことができる。また,より多層の配線構造を形成することができる。
【0127】
なお,上記実施形態では,基板処理装置100にエッチング処理室400,水素ラジカル処理室500,疎水化処理室600を設けた場合について説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,基板処理装置100にエッチング処理室400を設けることなく,水素ラジカル処理室500と疎水化処理室600のみを設けるようにしてもよい。この場合,エッチング処理は,別の基板処理装置によって行うようにしてもよい。この場合,別の基板処理装置でエッチング処理が終了した後は,基板処理装置100に大気圧雰囲気内でウエハWを搬送するようにしてもよい。
【0128】
この場合には,エッチング処理後に凹部に露出した低誘電率絶縁膜と金属層の表面が大気に晒されるので,低誘電率絶縁膜内に大気中の水分が吸収されてしまう可能性が高くなるとともに,金属層の露出表面には不所望の金属化合物膜として金属酸化膜が形成される可能性が高くなる。このような場合でも,本実施形態にかかる水素ラジカル処理室500及び疎水化処理室600を行うことにより,大気搬送によって低誘電率絶縁膜内に取り込まれた大気中の水分についても十分に離脱させることができるとともに,金属層の表面に形成された不所望の金属酸化膜も除去することができる。
【0129】
上記実施形態により詳述した本発明については,上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体をシステムあるいは装置に供給し,そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体等の媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによっても達成され得る。
【0130】
この場合,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり,そのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体は本発明を構成することになる。プログラムを供給するための記憶媒体等の媒体としては,例えば,フロッピー(登録商標)ディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,CD−RW,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−RW,DVD+RW,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどが挙げられる。また,プログラムを上記の各記憶媒体に対してネットワークを介してダウンロードして提供することも可能である。
【0131】
なお,コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより,上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく,そのプログラムの指示に基づき,コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0132】
さらに,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムが,コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後,そのプログラムの指示に基づき,その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0133】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0134】
例えば,上記実施形態では,疎水化処理としてシリル化処理を例示したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,他の処理ガスを用いた疎水化処理であってもよい。また本発明には,Low−k膜として,SOD装置で形成されるMSQ(methyl−hydrogen−SilsesQuioxane)(多孔質又は緻密質)の他,CVDで形成される無機絶縁膜の1つであるSiOC系膜(従来のSiO膜のSi−O結合にメチル基(−CH)を導入して,Si−CH結合を混合させたもので,Black Diamond(Applied Materials社),Coral(Novellus社),Aurora(ASM社)等がこれに該当し,緻密質のものとポーラス(多孔質)なものが存在する)等を適用することができる。
【0135】
また,上記実施形態にかかる被処理基板には反射防止膜(BARC)が含まれているが,本発明において反射防止膜は必須ではない。また,被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について本発明の実施形態を説明したが,これに限らず他の基板であっても本発明の適用は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は,多層配線構造を有する半導体装置が形成される被処理基板の基板処理方法,基板処理装置,及び記録媒体に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施形態にかかる基板処理装置の構成例を示す横断面図である。
【図2】図1に示す制御部の構成例を示すブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる基板処理装置に設けられるエッチング処理室の構成例を示す縦断面図である。
【図4】同実施形態にかかる基板処理装置に設けられる水素ラジカル処理室の構成例を示す縦断面図である。
【図5】同実施形態にかかる基板処理装置に設けられる疎水化処理室の構成例を示す縦断面図である。
【図6】同実施形態にかかる基板処理装置での処理対象となる処理前のウエハの膜構造の具体例を示す断面図である。
【図7】同実施形態にかかる基板処理装置で行われるウエハ処理の各工程を示すフローチャートである。
【図8】エッチング処理後のウエハ上の膜構造の例を示す断面図である。
【図9】水素ラジカル処理後のウエハ上の膜構造の例を示す断面図である。
【図10】疎水化処理後のウエハ上の膜構造の例を示す断面図である。
【図11A】水素ラジカル処理のみを行った場合のLow−k膜について,水素ラジカル処理直後と大気圧雰囲気下に48時間置いた後の弾性率を検出した実験結果をグラフで示した図である。
【図11B】水素ラジカル処理のみを行った場合のLow−k膜について,水素ラジカル処理後と真空圧雰囲気下に48時間置いた後の弾性率を検出した実験結果をグラフで示した図である。
【図11C】水素ラジカル処理と疎水化処理を連続して行った場合について,水素ラジカル処理後と真空圧雰囲気下に48時間置いた後の弾性率を検出した実験結果をグラフで示した図である。
【符号の説明】
【0138】
100 基板処理装置
102(102A〜102C) カセット容器
120 制御部
122 CPU
124 ROM
126 RAM
128 表示手段
130 入出力手段
132 報知手段
134 各種コントローラ
140 記憶手段
142 搬送プログラム
144 処理プログラム
146 処理条件データ
150 バスライン
200 処理ユニット
210 共通搬送室
220(220A〜220F) 処理室
222(222A〜222F) 載置台
230(230M,230N) ロードロック室
232(232M,232N) 受渡台
240A〜240F ゲートバルブ
240M,240N ゲートバルブ
242M,242N ゲートバルブ
250 処理ユニット側搬送機構
252A,252B ピック
254 基台
256 案内レール
258 フレキシブルアーム
300 搬送ユニット
302(302A〜302C) カセット台
304 オリエンタ
306 回転載置台
308 光学センサ
310 搬送室
314(314A〜314C) 搬出入口
320 搬送ユニット側搬送機構
322 基台
324 案内レール
326A,326B ピック
400 エッチング処理室
402 処理容器
404 内部空間
406 下部電極
408 上部電極
410 ガス吐出口
420 ガス導入口
422 排気管
430 磁石
440 電力供給装置
442A 第1電力供給源
442B 第2電力供給源
444A 第1フィルタ
444B 第2フィルタ
446A 第1整合器
446B 第2整合器
448A 第1電源
448B 第2電源
500 水素ラジカル処理室
502 処理室本体
504 ベルジャ
506 載置台
508 支持部材
510 クランプリング
512 ヒータ
514 ヒータ電源
516 コイル
518 高周波電源
520 ガス供給源
522 ガス導入口
524 ガス配管
526 排気管
528 排気装置
532 搬出入口
600 疎水化処理室
602 処理容器
604 サセプタ
606 ヒータ
608 ヒータ電源
610 シャワーヘッド
612 ガス導入口
614 ガス吐出孔
620 ガス供給配管
622 配管
624 配管
630 シリル化剤供給源
632 気化器
634 マスフローコントローラ
636 開閉バルブ
640 希釈ガス供給源
644 マスフローコントローラ
646 開閉バルブ
650 排気口
652 排気管
654 圧力制御バルブ
656 排気装置
662 搬出入口
710 Si基板
720 下地絶縁膜
722 金属層
724 金属化合物膜
730 エッチングストッパ膜
740 Low−k膜
742 ダメージ領域
744 水分
746 撥水層
750 キャップ膜
760 反射防止膜
770 フォトレジスト膜
780 配線溝
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜と,前記低誘電率絶縁膜に前記金属層が露出するまでエッチングされた凹部とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理方法であって,
前記被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理工程と,
前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理工程と,
を有し,
前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とを大気に晒すことなく連続して行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とはそれぞれ,別個の処理室内で行われ,少なくとも前記水素ラジカル処理工程を行う処理室から前記疎水化処理工程を行う処理室への前記被処理基板の搬送は真空圧雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理方法であって,
前記低誘電率絶縁膜を前記金属層が露出するまでエッチングして,前記低誘電率絶縁膜に凹部を形成するエッチング処理工程と,
前記エッチング処理が施された被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理工程と,
前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理工程と,
を有し,
前記エッチング処理工程と前記水素ラジカル処理工程と前記疎水化処理工程とを大気に晒すことなく連続して行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
前記水素ラジカル処理工程では,前記被処理基板の温度を250℃〜400℃の範囲内の所定の温度に加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記疎水化処理工程では,前記低誘電率絶縁膜の露出表面に前記所定の処理ガスとの化学反応で撥水層が形成されることによって前記低誘電率絶縁膜を疎水化することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記疎水化処理工程で使用する所定の処理ガスは,シリル化ガスであることを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記シリル化ガスは,分子内にシラザン結合(Si−N)を有する化合物から得られたガスであることを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜と,前記低誘電率絶縁膜に前記金属層が露出するまでエッチングされた凹部とを有する被処理基板に対して所定の処理を実行可能な基板処理装置であって,
前記被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理室と,
前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記低誘電率絶縁膜をさらに脱水しながら,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理室と,
前記各処理室に共通に接続され,前記各処理室間における前記被処理基板の搬送処理を真空圧雰囲気下で実行可能な真空搬送室と,
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理装置であって,
前記低誘電率絶縁膜を前記金属層が露出するまでエッチングして,前記低誘電率絶縁膜に凹部を形成するエッチング処理室と,
前記エッチング処理が施された被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理室と,
前記水素ラジカル処理が施された被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理室と,
前記エッチング処理室と前記水素ラジカル処理室と前記疎水化処理室との間の前記被処理基板を真空圧雰囲気下で搬送可能な基板搬送機構を有する真空搬送室と,
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
金属層とこの金属層の上に形成された低誘電率絶縁膜と,前記低誘電率絶縁膜に前記金属層が露出するまでエッチングされた凹部とを有する被処理基板に対して所定の処理を施す基板処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,
前記プログラムは,コンピュータに,
前記被処理基板を真空圧雰囲気下で水素ラジカル処理室内に搬送するステップと,
前記水素ラジカル処理室内を減圧し,所定の真空圧雰囲気下で,前記被処理基板を所定の温度に加熱しつつ,この被処理基板上に水素ラジカルを供給することによって,前記凹部に露出した金属層の表面をクリーニングするとともに,前記低誘電率絶縁膜を脱水する水素ラジカル処理ステップと,
前記水素ラジカル処理が施された被処理基板を真空圧雰囲気下で疎水化処理室内に搬送するステップと,
前記疎水化処理室内を減圧し,所定の真空圧雰囲気下で,前記被処理基板に所定の処理ガスを供給することによって,前記凹部に露出した前記低誘電率絶縁膜を疎水化する疎水化処理ステップと,
を実行させることを特徴とする,コンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate


【公開番号】特開2009−10043(P2009−10043A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168132(P2007−168132)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】