説明

基板処理方法,記録媒体及び基板処理装置

【課題】基板にウォーターマークが発生することを防止でき,かつ,低コストを図ることができる基板処理方法,記録媒体及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】複数種類の薬液を用いて基板Wを処理した後,基板Wを乾燥させる方法であって,第一の薬液で処理する第一の薬液処理工程と,前記第一の薬液処理工程の後に第二の薬液で処理する第二の薬液処理工程と,前記第二の薬液処理工程の後に基板Wを乾燥させる乾燥処理工程とを行い,少なくとも前記乾燥処理工程において,基板Wの周囲の湿度を前記第一の薬液処理工程時よりも低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板処理方法,記録媒体及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては,半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という。)を薬液,リンス液等の処理液によって洗浄する洗浄処理が行われている。かかる洗浄処理においては,ウェハにDHF液(希フッ酸)等の薬液を供給して処理する薬液処理工程,ウェハに純水等のリンス液を供給して処理するリンス処理工程を行った後,ウェハを乾燥させる乾燥処理工程が行われている。
【0003】
従来,ウェハを乾燥させる方法として,ウェハを回転させながらウェハにIPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤の蒸気を使用した蒸気乾燥方式が知られている。また,乾燥時のウォーターマークの発生を抑制するため,除湿された空気を供給することにより,ウェハの周囲の湿度を低減させる方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】実開平6−9130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の基板処理方法にあっては,ウェハの周囲の湿度を低減させようとする場合,除湿した空気の供給量が多く,ウェハの処理に要するコストが高くなる問題があった。特に,一つのチャンバー内(処理空間)で複数種類の処理工程を選択的に行うことが可能な構成である場合,また,一つのチャンバー内で複数種類の処理工程を連続して行う場合などに,総ての処理工程においてウェハの周囲の湿度を低減させようとすると,コストが非常に高くなる問題があった。
【0006】
本発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,基板にウォーターマークが発生することを防止でき,かつ,低コストを図ることができる基板処理方法,記録媒体及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため,本発明によれば,数種類の薬液を用いて基板を処理した後,基板を乾燥させる方法であって,第一の薬液で処理する第一の薬液処理工程と,前記第一の薬液処理工程の後に第二の薬液で処理する第二の薬液処理工程と,前記第二の薬液処理工程の後に基板を乾燥させる乾燥処理工程とを行い,少なくとも前記乾燥処理工程において,前記基板の周囲の湿度を前記第一の薬液処理工程時よりも低減させることを特徴とする,基板処理方法が提供される。
【0008】
前記第二の薬液には、例えばDHF液又はHF液が含まれている。また、前記第一の薬液は、例えばSC−1液又はSC−2液である。
【0009】
また,前記乾燥処理工程において,水より揮発性が高い流体を基板に供給するようにしても良い。
【0010】
前記湿度を低減する場合は,露点温度を−40℃以下にしても良い。前記湿度の低減は,基板の周囲にFFUから供給されるクリーンエアを供給する状態と,前記クリーンエアよりも湿度が低い低露点ガスを供給する状態とを切り換えることにより行っても良い。前記低露点ガスは,CDA又は窒素ガスでも良い。
【0011】
また,本発明によれば,基板の薬液処理及び乾燥処理を行う基板処理装置の制御コンピュータによって実行することが可能なソフトウェアが記録された記録媒体であって,前記ソフトウェアは,前記制御コンピュータによって実行されることにより,前記基板処理装置に,上記のいずれかの基板処理方法を行わせるものであることを特徴とする,記録媒体が提供される。
【0012】
さらに,本発明によれば,薬液を用いて基板を処理する装置であって,互いに異なる種類の薬液を供給する複数の薬液供給源と,基板の周囲の湿度を調節する湿度調節機構と,前記湿度調節機構を制御する制御部とを備え,前記制御部は,第一の薬液で処理する第一の薬液処理工程と,前記第一の薬液処理工程の後に第二の薬液で処理する第二の薬液処理工程と,前記第二の薬液処理工程の後に基板を乾燥させる乾燥処理工程とを行うように制御し,かつ,少なくとも前記乾燥処理工程において,前記基板の周囲の湿度を前記第一の薬液処理工程時よりも低減させるように制御することを特徴とする,基板処理装置が提供される。
【0013】
前記第二の薬液には、例えばDHF液又はHF液が含まれている。また、前記第一の薬液は、例えばSC−1液又はSC−2液である。
【0014】
また,前記乾燥処理工程において,水より揮発性が高い流体を基板に供給するようにしても良い。
【0015】
前記湿度を低減させる場合,露点温度は−40℃以下にしても良い。また,クリーンエアを供給するFFUと,前記クリーンエアよりも湿度が低い低露点ガスを供給する低露点ガス供給源とを備え,前記基板の周囲に前記クリーンエアを供給する状態と前記低露点ガスを供給する状態とを切り換えることが可能な構成としても良い。前記FFUから供給される前記クリーンエアを取り込む取り込み用カップと,前記取り込み用カップ内のクリーンエアを前記基板の周囲に導入するクリーンエア供給路と,前記取り込み用カップ内のクリーンエアを前記取り込み用カップの外部に排出させるクリーンエア排出口とを備えても良い。
【0016】
前記クリーンエア又は前記低露点ガスを前記基板の周囲に導入する主供給路と,前記FFUから供給される前記クリーンエアを前記主供給路に導入するクリーンエア供給路と,前記低露点ガス供給源から供給される前記低露点ガスを前記主供給路に導入する低露点ガス供給路とを備え,前記クリーンエア供給路と前記主供給路を連通させる状態と遮断する状態とを切り換える切換部を設けても良い。前記切換部において,前記クリーンエア供給路の下流端部は,前記主供給路の上流端部に向かって前記クリーンエアを吐出する方向に指向させても良い。前記クリーンエア供給路と前記主供給路は,互いに同一の直線上に備えても良い。前記低露点ガス供給路は,前記切換部を介して前記主供給路に接続しても良い。前記切換部において,前記低露点ガス供給路の下流端部は,前記主供給路の上流端部とは異なる位置に向かって前記低露点ガスを吐出する方向に指向させても良い。前記低露点ガスは,CDA又は窒素ガスでも良い。
【0017】
即ち,本発明は,本発明者らの研究の結果,基板の薬液処理時に使用される薬液の種類(基板に施される処理の種類)により,除湿した雰囲気で乾燥処理を行う必要がある場合と,必ずしも除湿した雰囲気で乾燥処理を行わなくても良い場合とがあることの知見が得られ,かかる点に鑑みてなされたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,基板に供給される薬液の種類に応じて,基板の周囲の湿度を調節することにより,一つのチャンバーで複数種類の処理工程を選択的に行うことが可能な構成である場合,また,一つのチャンバーで複数種類の処理工程を連続して行う場合などであっても,必要な時のみ,基板の周囲の湿度を低減させることができる。従って,基板の周囲の湿度を低減させるために要するコストを低減できる。例えばCDA(Clean Dry Air(低露点空気))等の低露点ガスの供給量及びコストを低減できる。これにより,基板処理に要するコストの低減を図ることができる。また,必要な時は湿度を減少させることで,基板にウォーターマークが発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明の好ましい実施の形態を,基板としてのシリコンウェハWの表面を洗浄する基板処理装置に基づいて説明する。図1に示すように,本実施の形態にかかる基板処理装置1のチャンバー2内には,略円板形のウェハWを略水平に保持するスピンチャック3が備えられている。また,ウェハWに洗浄用の薬液として例えばDHF液(希フッ酸),SC−1液(アンモニアと過酸化水素と水の混合溶液),SC−2液(塩酸と過酸化水素と水の混合溶液)等を選択的に供給する薬液ノズルとしての,また,リンス液として例えば純水(DIW)を供給するリンス液ノズルとしてのノズル5が備えられている。このノズル5は,ノズルアーム6によって支持されている。さらに,IPAを含む流体(リンス液である純水より揮発性が高い流体)としてIPA(イソプロピルアルコール)液等を供給する流体ノズル12と,乾燥用ガスとして例えば窒素(N)ガス等の不活性ガスを供給する乾燥用ガスノズルとしての不活性ガスノズル13とが備えられている。流体ノズル12と不活性ガスノズル13は,乾燥用ノズルアーム15によって支持されている。また,スピンチャック3によって保持されたウェハWの周囲の雰囲気の湿度,即ちチャンバー2内(処理空間S中)の雰囲気の湿度を調節可能な湿度調節機構16が設けられている。基板処理装置1の各部の制御は,CPUを備えた制御部としての制御コンピュータ17の命令によって行われる。
【0020】
図2に示すように,チャンバー2には,チャンバー2内の処理空間SにウェハWを搬入出させるための搬入出口18,搬入出口18を開閉するシャッター18aが設けられている。この搬入出口18を閉じることにより,ウェハWの周囲の雰囲気,即ち処理空間Sを密閉状態にすることが可能である。なお,搬入出口18の外側は,ウェハWを搬送する搬送エリア20になっており,搬送エリア20には,ウェハWを一枚ずつ保持して搬送する搬送アーム21aを有する搬送装置21が設置されている。また,図1に示すように,チャンバー2の底面には,処理空間Sを排気する排気路24が開口されている。
【0021】
図1及び図2に示すように,スピンチャック3は,上部に3個の保持部材3aを備えており,これらの保持部材3aをウェハWの周縁3箇所にそれぞれ当接させてウェハWを略水平に保持するようになっている。スピンチャック3の下部には,スピンチャック3を略垂直方向の回転中心軸を中心として回転させるモータ25が取り付けられている。このモータ25の駆動により,スピンチャック3を回転させると,ウェハWがスピンチャック3と一体的に,ウェハWの略中心Poを回転中心として,略水平面内で回転させられるようになっている。図示の例では,ウェハWの上方からみた平面視において,ウェハWは反時計方向(CCW)の回転方向に回転させられる。モータ25の駆動は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0022】
ノズルアーム6は,スピンチャック3に支持されたウェハWの上方に備えられている。ノズルアーム6の基端部は,略水平に配置されたガイドレール31に沿って移動自在に支持されている。また,ガイドレール31に沿ってノズルアーム6を移動させる駆動機構32が備えられている。駆動機構32の駆動により,ノズルアーム6は,スピンチャック3に支持されたウェハWの上方とウェハWの周縁より外側(図1においては左側)との間で移動することができる。また,ノズルアーム6の移動に伴って,ノズル5がウェハWの略中心部上方から周縁部上方に向かってウェハWと相対的に移動するようになっている。駆動機構32の駆動は制御コンピュータ17によって制御される。
【0023】
ノズル5は,ノズルアーム6の先端下面に固定された昇降機構35の下方に突出する昇降軸36の下端に取り付けられている。昇降軸36は,昇降機構35により昇降自在になっており,これにより,ノズル5が任意の高さに昇降されるようになっている。昇降機構35の駆動は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0024】
ノズル5には,互いに異なる薬液を供給する複数の薬液供給源,例えば3つの薬液供給源41,42,43が,薬液供給路44,45,46を介してそれぞれ接続されている。即ち,DHF液を供給する薬液(DHF液)供給源41に接続された薬液供給路44と,SC−1液を供給する薬液(SC−1液)供給源42に接続された薬液供給路45と,SC−2液を供給する薬液(SC−2液)供給源46に接続された薬液供給路46とが,それぞれノズル5に対して接続されている。さらに,ノズル5には,DIWを供給するリンス液(DIW)供給源47に接続されたリンス液供給路48が接続されている。薬液供給路44,45,46,リンス液供給路48には,開閉弁44a,45a,46a,48aがそれぞれ介設されている。各開閉弁44a,45a,46a,48aの開閉動作は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0025】
なお,薬液供給源41から供給されるDHF液は,シリコン酸化膜(SiO)をエッチングにより除去することができる薬液である。即ち,主にウェハWに付着した自然酸化膜を除去する洗浄用の薬液として用いられる。薬液供給源42から供給されるSC−1液は,主に有機性の汚れ,パーティクル(付着粒子)等を除去する洗浄用の薬液として用いられる。SC−2液は,主に金属不純物等を除去する洗浄用の薬液として用いられるものである。
【0026】
乾燥用ノズルアーム15は,スピンチャック3に支持されたウェハWの上方に備えられている。乾燥用ノズルアーム15の基端部は,略水平に配置されたガイドレール51に沿って移動自在に支持されている。また,ガイドレール51に沿って乾燥用ノズルアーム15を移動させる駆動機構52が備えられている。駆動機構52の駆動により,乾燥用ノズルアーム15は,ウェハWの上方とウェハWの周縁より外側(図1においては右側)との間で移動することができる。また,乾燥用ノズルアーム15の移動に伴って,流体ノズル12及び不活性ガスノズル13がウェハWの略中心部上方から周縁部上方に向かってウェハWと相対的に移動するようになっている。駆動機構52の駆動は制御コンピュータ17によって制御される。
【0027】
乾燥用ノズルアーム15の先端下面には,昇降軸54を備えた昇降機構55が固定されている。昇降軸54は,昇降機構55の下方に突出するように配置されており,この昇降軸54の下端に,流体ノズル12及び不活性ガスノズル13が取り付けられている。昇降軸54は昇降機構55の駆動により伸縮し,これにより,流体ノズル12及び不活性ガスノズル13が一体的に昇降させられるようになっている。昇降機構55の駆動は,制御コンピュータ17によって制御される。即ち,制御コンピュータ17の命令により,駆動機構52の駆動を制御して乾燥用ノズルアーム15,流体ノズル12及び不活性ガスノズル13を水平方向に移動させるとともに,昇降機構55の駆動を制御して,流体ノズル12及び不活性ガスノズル13の高さを調節するようになっている。
【0028】
流体ノズル12と不活性ガスノズル13は,ウェハWの中心と周縁右端部とを結ぶ略半径方向に向かう直線に沿って,ウェハWの上方において並ぶように設けられている。また,不活性ガスノズル13は,図1において流体ノズル12の左側に設けられている。即ち,乾燥用ノズルアーム15の移動により,流体ノズル12が図1において中心PoからウェハWの周縁部右側に向かう移動方向Dに沿って移動するとき,不活性ガスノズル13は,移動方向Dにおいて流体ノズル12の後方,即ち,平面視において,中心Poと流体ノズル12との間に配置されながら,流体ノズル12を追従して移動するような構成になっている。
【0029】
流体ノズル12には,IPA液を貯溜するタンク等の流体供給源66に接続された流体供給路67が接続されている。流体供給路67には開閉弁68が介設されている。開閉弁68の開閉動作は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0030】
不活性ガスノズル13には,不活性ガス(N)供給源71に接続された不活性ガス供給路72が接続されている。不活性ガス供給路72には開閉弁73が介設されている。開閉弁73の開閉動作は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0031】
次に,湿度調節機構16について説明する。図1に示すように,湿度調節機構16は,処理空間Sに湿度調節用ガス(空気)としてクリーンエア(清浄空気)又はCDA(Clean Dried Air:クリーンドライエア(低露点清浄空気))を吹き込むガス供給チャンバー91と,ガス供給チャンバー91に湿度調節用ガスを供給する湿度調節用ガス供給ライン92を備えている。なお,湿度調節機構16は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0032】
ガス供給チャンバー91は,チャンバー2の天井部,即ち,スピンチャック3によって保持されたウェハWの上方に配置されている。図3に示すように,ガス供給チャンバー91の下面には,ガス供給チャンバー91の内部から湿度調節用ガスを吐出させる複数のガス吐出口91aが,下面全体に均等に分布した状態で設けられている。即ち,スピンチャック3によって保持されたウェハWの上面全体に,複数のガス吐出口91aが均等に対向するように設けられおり,処理空間Sに湿度調節用ガスの整流されたダウンフローが形成されるようになっている。なお,ガス供給チャンバー91の下面を構成する下板91bとしては,例えばパンチング板(パンチングスクリーン),即ち,プレス打ち抜き加工によって多数の孔を空けた板を使用しても良く,そのパンチング板に空けられた孔を,ガス吐出口91aとしても良い。
【0033】
ガス供給チャンバー91の側壁には,湿度調節用ガス供給ライン92の下流端部(後述する主供給路101の水平部101a)が接続されている。
【0034】
湿度調節用ガス供給ライン92は,湿度調節用ガスをガス供給チャンバー91に供給し,ガス供給チャンバー91を介して処理空間Sに導入する主供給路101,クリーンエアを供給する湿度調節用ガス供給源であるFFU(Fan Filter Unit:空気清浄機)102,FFU102から供給されるクリーンエアを主供給路101に導入させるクリーンエア供給路103,CDAを供給する湿度調節用ガス供給源(低露点ガス供給源)であるCDA供給源104,CDA供給源104から供給されるCDAを主供給路101に導入させるCDA供給路(低露点ガス供給路)105を備えている。主供給路101の上流端部とクリーンエア供給路103の下流端部とは,切換部としての切換ダンパ107を介して互いに接続されている。主供給路101の上流端部とCDA供給路105の下流端部も,切換ダンパ107を介して互いに接続されている。
【0035】
主供給路101は,例えば管状のダクトの内部流路であり,略水平方向に沿って延設された水平部101aと略鉛直方向に沿って延設された鉛直部101bとを有する略L字型に形成されている。水平部101aの先端部は,ガス供給チャンバー91の側壁に開口されている。鉛直部101bの上端部は,切換ダンパ107(後述する筐体121の下面)に開口されている。
【0036】
FFU102は,チャンバー2の外部上方に配設されており,例えば,基板処理装置1が配置されているクリーンルームの天井部,あるいは,基板処理装置1が内蔵されている処理システムの天井部等に設置されている。図示の例では,搬送エリア20の天井部に設置されている。なお,図示はしないが,FFU102の内部には,空気を送風する送風機,空気を清浄化してクリーンエアにするフィルタ等が設けられている。また,FFU102の下面には,整流板,クリーンエアを吐出する複数のクリーンエア吐出口等が設けられており,FFU102の下面からは,整流されたクリーンエアが吐出され,クリーンエアのダウンフローが形成されるようになっている。
【0037】
FFU102の下方には,FFU102から供給されるクリーンエアを受け止めてクリーンエア供給路103に取り込むための取り込み用カップ110が備えられている。この取り込み用カップ110は,上面が開口部110aとなっており,開口部110aをFFU102の下面に対向させるようにして設置されている。取り込み用カップ110の下面には,クリーンエア供給路103の上流端部が接続されている。また,取り込み用カップ110の一側壁の上縁部とFFU102の下面との間には,取り込み用カップ110内からクリーンエアを排出するクリーンエア排出口としての隙間111が形成されている。
【0038】
クリーンエア供給路103は,例えば管状のダクトの内部流路であり,取り込み用カップ110の下面から下方に向かって,略鉛直方向に沿って真っ直ぐに延設されている。クリーンエア供給路103の下流端部は,切換ダンパ107の上面(後述する筐体121の上面)に接続されている。なお,クリーンエア供給路103の下流端部と前述した主供給路101の鉛直部101bの上流端部とは,切換ダンパ107の内部(後述するクリーンエア供給路接続室123)を挟んで,互いに対向するように設けられており,クリーンエア供給路103と鉛直部101bは,互いにほぼ同一の鉛直線上に並ぶように設けられている。
【0039】
CDA供給源104としては,例えば,CDAを圧縮した状態で内部に貯蔵したボンベ等が使用される。なお,CDAは,例えば圧縮空気中の有機物,水分等の不純物を吸着剤や触媒を充填した精製器等を用いて精製(除去)することにより得られる乾燥した空気であって,その湿度は,通常の空気(大気)やFFU102から供給されるクリーンエアの湿度と比較して,大幅に低減されている。即ち,通常の空気やクリーンエアよりも露点温度が低くなっている。CDA供給源104から供給するCDAの露点温度は,例えば約−40℃以下程度であれば良く,さらに好ましくは,約−110℃〜−120℃程度であることが望ましい。
【0040】
CDA供給路105には,上流側(CDA供給源104側)と下流側(切換ダンパ107側)とを遮断する状態と連通させる状態とを切り換え可能な開閉弁112が介設されている。CDA供給路105の下流端部は,切換ダンパ107に接続されている。開閉弁112の開閉動作は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0041】
図4及び図5に示すように,切換ダンパ107は,筐体121と,筐体121内においてクリーンエア供給路103の下流端部開口を開閉する略平板状の可動部材122とを備えている。
【0042】
筐体121は,例えば略直方体状をなしており,クリーンエア供給路103の端部が接続されているクリーンエア供給路接続室123と,CDA供給路105の端部が接続されているCDA供給路接続室124とを備えている。クリーンエア供給路接続室123とCDA供給路接続室124は,互いに横に隣接するように並べて設けられており,また,互いに連通させられている。図示の例では,筐体121内の空間のうち,右半分(筐体121の内側面121c側)がクリーンエア供給路接続室123となっており,残りの左半分(内側面121c及びクリーンエア供給路接続室123と対向する内側面121d側)がCDA供給路接続室124になっている。
【0043】
クリーンエア供給路接続室123において,筐体121の上面(天井面)121aには,クリーンエア供給路103の下流端部が開口されており,筐体121の下面(底面)121bには,主供給路101(鉛直部101b)の上流端部が開口されている。即ち,クリーンエア供給路103の端部は,主供給路101の端部の上方,かつ,主供給路101の端部とクリーンエア供給路接続室123を挟んで対向する位置に設けられており,主供給路101の端部に向かってクリーンエアを吐出する方向に指向している。
【0044】
可動部材122は,クリーンエア供給路接続室123内に設けられており,回転中心軸126を介して,筐体121に対して回転可能に支持されている。回転中心軸126は,クリーンエア供給路接続室123における筐体121の上面121a側において,クリーンエア供給路103の端部の側方(内側面121c側)に配置されており,可動部材122の縁部を支持している。可動部材122は,この回転中心軸126を回転中心として回転することにより,可動部材122の一側面(上面)をクリーンエア供給路103の端部に対して近接及び離隔させることができる。具体的には,上面121aに沿って横向きに配置され,クリーンエア供給路103の端部を可動部材122の一側面によって閉塞する閉塞位置P1(図4)と,クリーンエア供給路103の端部から離隔して,クリーンエア供給路103の端部を開口させる開放位置P2(図5)と,に移動することができる。開放位置P2に配置された状態では,可動部材122は,回転中心軸126の下方において,内側面121cに沿うように,縦向きにして配置させられる。かかる可動部材122の回転動作,即ち,クリーンエア供給路103を主供給路101に対して連通させる状態と遮断させる状態とを切り換える動作は,制御コンピュータ17によって制御される。
【0045】
CDA供給路接続室124は,筐体121の内側面121d側に設けられている。CDA供給路接続室124内には,CDA供給路105の下流端部側が,筐体121の下面121bを上下に貫通するようにして挿入されており,CDA供給路105の下流端部は,内側面121dに対向するようにして開口され,内側面121dに向かってCDAを吐出する方向に指向している。即ち,切換ダンパ107の内部において,CDA供給路105の端部は,主供給路101の端部と対向しない位置に設けられており,主供給路101の端部とは異なる位置に向かってCDAを吐出する方向に指向している。このようにすると,CDA供給路105の端部をクリーンエア供給路接続室123側に指向させる場合や,主供給路101の端部に向かってCDAを吐出するように指向させる場合よりも,CDA供給路105の端部から吐出されるCDAの流れの勢いを弱めることができる。
【0046】
次に,制御コンピュータ17について説明する。図1に示すように,基板処理装置1の各機能要素は,基板処理装置1全体の動作を自動制御する制御コンピュータ17に,信号ラインを介して接続されている。ここで,機能要素とは,例えば前述したモータ25,駆動機構32,昇降機構35,駆動機構52,昇降機構55,開閉弁44a,45a,46a,48a,68,73,切換ダンパ107,開閉弁112等の,所定のプロセス条件を実現するために動作する総ての要素を意味している。制御コンピュータ17は,典型的には,実行するソフトウェアに依存して任意の機能を実現することができる汎用コンピュータである。
【0047】
図1に示すように,制御コンピュータ17は,CPU(中央演算装置)を備えた演算部17aと,演算部17aに接続された入出力部17bと,入出力部17bに挿着され制御ソフトウェアを格納した記録媒体17cと,を有する。この記録媒体17cには,制御コンピュータ17によって実行されることにより基板処理装置1に後述する所定の基板処理方法を行わせる制御ソフトウェアが記録されている。制御コンピュータ17は,該制御ソフトウェアを実行することにより,基板処理装置1の各機能要素を,所定のプロセスレシピにより定義された様々なプロセス条件(例えば,モータ25の回転数等)が実現されるように制御する。なお,該制御ソフトウェアに基づいた基板処理方法には,後に詳細に説明するように,薬液処理工程,リンス処理工程,IPA液膜形成工程,及び,乾燥処理工程が含まれており,これらの工程を行う制御が順次行われるようになっている。
【0048】
記録媒体17cは,制御コンピュータ17に固定的に設けられるもの,あるいは,制御コンピュータ17に設けられた図示しない読み取り装置に着脱自在に装着されて該読み取り装置により読み取り可能なものであっても良い。最も典型的な実施形態においては,記録媒体17cは,基板処理装置1のメーカーのサービスマンによって制御ソフトウェアがインストールされたハードディスクドライブである。他の実施形態においては,記録媒体17cは,制御ソフトウェアが書き込まれたCD−ROM又はDVD−ROMのような,リムーバブルディスクである。このようなリムーバブルディスクは,制御コンピュータ17に設けられた図示しない光学的読取装置により読み取られる。また,記録媒体17cは,RAM(random access memory)又はROM(read only memory)のいずれの形式のものであっても良い。さらに,記録媒体17cは,カセット式のROMのようなものであっても良い。要するに,コンピュータの技術分野において知られている任意のものを記録媒体17cとして用いることが可能である。なお,複数の基板処理装置1が配置される工場においては,各基板処理装置1の制御コンピュータ17を統括的に制御する管理コンピュータに,制御ソフトウェアが格納されていても良い。この場合,各基板処理装置1は,通信回線を介して管理コンピュータにより操作され,所定のプロセスを実行する。
【0049】
次に,以上のように構成された基板処理装置1を用いたウェハWの処理方法について説明する。この基板処理装置1においては,複数種類の洗浄処理,例えば,DHF液を用いた第一の洗浄処理L1,SC−1液を用いた第二の洗浄処理L2,SC−2液を用いた第三の洗浄処理L3の3種類の洗浄処理を,除去対象物に応じて選択的に実施することができる。例えば,ウェハWの表面に発生した自然酸化膜を除去しようとする場合は,洗浄処理L1が行われる。一方,ウェハWの表面に付着した有機性の汚れやパーティクルを除去しようとする場合は,洗浄処理L2が選択される。また,ウェハWの表面に付着した金属不純物を除去しようとする場合は,洗浄処理L3が行われる。
【0050】
基板処理装置1におけるウェハWの処理が行われる前に,制御コンピュータ17は,洗浄処理L1,L2,L3のうちいずれが実施されるかを認識する。さらに,制御コンピュータ17は,洗浄処理L1,L2,L3のうちいずれが実施されるかに基づいて,即ち,ウェハWに供給される薬液の種類に応じて,処理空間S内の湿度を低減させる必要があるか否かを判定するとともに,湿度調節機構16を操作し,処理空間S内の湿度を調節する制御を行う。
【0051】
例えば,洗浄処理L1が行われる場合,即ち,DHF液が用いられる場合は,後に詳細に説明するように,薬液処理工程後にIPA液を使用するが,この場合は,ガス供給チャンバー91からCDAを供給して,処理空間S内の湿度を減少させるようにする。一方,洗浄処理L2が行われる場合,即ち,SC−1液が用いられる場合は,後に説明するように,薬液処理工程後にIPA液を使用しないが,この場合は,ガス供給チャンバー91からクリーンエアを供給する。また,洗浄処理L3が行われる場合,即ち,SC−2液が用いられる場合も,洗浄処理L2と同様に,薬液処理工程後にIPA液を使用せず,ガス供給チャンバー91からクリーンエアを供給する。このように,制御コンピュータ17は,洗浄処理L1,L2,L3のいずれが行われるかに基づいて,即ち,ウェハWに供給される薬液の種類に応じて(さらに換言すれば,薬液処理工程後にIPA液を使用するか否かに応じて,あるいは,薬液処理工程後のウェハWの疎水性の強度に応じて),CDAとクリーンエアのいずれを供給するか,即ち,処理空間S内の湿度を低減させるか否かを判定するようになっている。
【0052】
先ず,ガス供給チャンバー91からCDAを供給する場合について説明する。この場合は,制御コンピュータ17の制御命令によって,切換ダンパ107の可動部材122を閉塞位置P1(図4参照)に配置させ,かつ,開閉弁112は開いた状態にする。即ち,可動部材122によってFFU102及びクリーンエア供給路103を主供給路101から遮断させ,かつ,CDA供給源104及びCDA供給路105を主供給路101に対して連通させた状態にする。
【0053】
かかる状態においては,CDA供給源104から送出されたCDAは,CDA供給路105を通じて,切換ダンパ107のCDA供給路接続室124に導入される。図4に示すように,CDAは,CDA供給路接続室124においては,CDA供給路105の端部から,クリーンエア供給路接続室123とは反対側に位置する内側面121dに向かって,横向きに吐出される。そして,内側面121dに衝突することにより,気流の向きが逆向きに,即ち,クリーンエア供給路接続室123側に向かうように方向転換させられる。その後,CDA供給路接続室124からクリーンエア供給路接続室123に向かって流入し,クリーンエア供給路接続室123の下部に設けられている主供給路101の端部に流入し,主供給路101を通じて,ガス供給チャンバー91内に導入される。そして,複数のガス吐出口91aを通って整流されながら下向きに吐出される。こうして,CDA供給源104から供給されたCDAは,CDA供給路105,CDA供給路接続室124,クリーンエア供給路接続室123,主供給路101,ガス供給チャンバー91を順に通過することにより,処理空間S内に導入される。処理空間Sに供給されたCDAは,処理空間S内を下降して,チャンバー2の底部に設けられた排気路24によって,処理空間Sから排気される。こうして,処理空間S内にCDAが供給されながら,処理空間Sの排気が行われることで,処理空間S内の雰囲気がCDAに置換され,処理空間S内の湿度が減少する(露点温度が低くなる)。処理空間S内の雰囲気の露点温度は,CDAと同じ露点温度,例えば約−40℃以下程度,好ましくは約−110℃〜−120℃程度にまで低減される。これにより,後に説明する洗浄処理L1のIPA液膜形成工程や乾燥処理工程において,IPAに取り込まれる水分の量を低減できる。また,後に説明する乾燥処理工程においては,ウェハWの乾燥性能を向上させることができる。なお,通常,基板処理装置1等が設置されるクリーンルーム内の温度は常温(約23℃程度)であり,相対湿度は約40%〜45%程度になっているが,処理空間S中の湿度は,かかるクリーンルーム内の相対湿度よりも低減させられる。
【0054】
なお,上記のように,切換ダンパ107において,CDAをCDA供給路105の端部から内側面121dに向かって吐出させてから,方向転換させることにより,CDAをクリーンエア供給路接続室123に導入させる際,適切な流速にして,円滑に導入させることができる。また,クリーンエア供給路接続室123においては,CDAをCDA供給路接続室124からクリーンエア供給路接続室123に向かって横方向に導入させ,クリーンエア供給路接続室123において,CDAの流れの方向を横向きから縦向きに方向転換させ,下部の主供給路101の端部開口に導入させる構成としたことにより,CDAの流速をさらに低減させることができ,CDAを主供給路101の端部に導入させる際,適切な流速にして,円滑に導入させることができる。従って,CDAを処理空間Sに対して安定した流量で円滑に供給することができ,処理空間S内の雰囲気をCDAに良好に置換できる。
【0055】
また,ガス供給チャンバー91においては,CDAをガス供給チャンバー91の側壁から横向きに導入させることにより,ガス供給チャンバー91の内部全体にCDAを拡散させてから,各ガス吐出口91aを介して均等に吐出させることができる。即ち,CDAをガス供給チャンバー91の天井部から導入させる場合よりも,ガス供給チャンバー91の内部全体にCDAを拡散させることができ,各ガス吐出口91aからより均等に吐出させることができる。従って,CDAを処理空間S全体に供給することができ,これにより,処理空間S内の湿度を確実に,むらなく低減させることができる。
【0056】
一方,処理空間S内にCDAとクリーンエアのいずれが供給されるかに関わらず,FFU102内の送風機は常時作動しており,FFU102からは常にクリーンエアが供給されている。上記のように,クリーンエア供給路103の下流端部が可動部材122によって閉塞されている状態では,FFU102から取り込み用カップ110,クリーンエア供給路103に向かって供給されるクリーンエアは,クリーンエア供給路接続室123に流入することができず,隙間111(図3参照)を通じて,取り込み用カップ110からオーバーフローするようにして,取り込み用カップ110の外部に排出される。こうして,隙間111によって取り込み用カップ110内のクリーンエアを逃がす構成にすることにより,クリーンエアが処理空間Sに供給されない間,FFU102を稼動させたままにしても,FFU102にクリーンエアが逆流することを防止でき,送風機の駆動を安定させることができ,FFU102に悪影響を与えることを防止できる。また,FFU102の稼動を停止させたり再開させたりするよりも,切換ダンパ107によってクリーンエアの供給を切り換える構成にするほうが,切り換えを迅速に行うことができ,FFU102の稼動効率も良い。なお,隙間111によって取り込み用カップ110の外部に排出されたクリーンエアは,例えば搬送エリア20に導入されるように構成しても良い。
【0057】
次に,ガス供給チャンバー91からクリーンエアを供給する場合について説明する。この場合は,制御コンピュータ17の制御命令によって,切換ダンパ107の可動部材122を開放位置P2(図5参照)に配置させ,かつ,開閉弁112は閉じた状態にする。即ち,FFU102及びクリーンエア供給路103を主供給路101に対して連通させ,かつ,CDA供給源104及びCDA供給路105を主供給路101から遮断させた状態にする。
【0058】
かかる状態においては,FFU102から送出されたクリーンエアは,開口部110aを通じて取り込み用カップ110内に流入し,取り込み用カップ110からクリーンエア供給路103を通じて,切換ダンパ107のクリーンエア供給路接続室123に導入される。そして,クリーンエア供給路接続室123から主供給路101を通じて,ガス供給チャンバー91内に導入される。そして,複数のガス吐出口91aを通って整流されながら下向きに吐出される。こうして,FFU102から供給されたクリーンエアは,取り込み用カップ110,クリーンエア供給路103,クリーンエア供給路接続室123,主供給路101,ガス供給チャンバー91を順に通過することにより,処理空間S内に導入される。処理空間Sに供給されたクリーンエアは,処理空間S内を下降して,排気路24によって処理空間Sから排気される。こうして,処理空間S内にクリーンエアが供給されながら排気が行われることで,処理空間S内の雰囲気がクリーンエアに置換される。この場合,処理空間S内の雰囲気の露点温度は,例えばクリーンルーム内とほぼ同じになる。
【0059】
なお,可動部材122が開放位置P2に配置された状態では,可動部材122は,クリーンエア供給路103の端部と主供給路101の端部との間から退避しており,クリーンエア供給路103の端部から主供給路101の端部に向かうクリーンエアの流れが,可動部材122の干渉によって乱されることを防止できる。また,クリーンエア供給路103,クリーンエア供給路接続室123,主供給路101の鉛直部101bがほぼ同一直線上に並んでいるので,FFU102から整流された状態で供給されたクリーンエアは,取り込み用カップ110内,クリーンエア供給路103,クリーンエア供給路接続室123,主供給路101の鉛直部101bの順に,略鉛直方向に沿って円滑に下降することができる。従って,FFU102において整流されたクリーンエアの流れが乱れることを防止して,クリーンエアを主供給路101に対して円滑に導入させ,処理空間Sに対して安定した流量で供給することができる。従って処理空間S内の雰囲気をクリーンエアに良好に置換できる。
【0060】
また,ガス供給チャンバー91においては,クリーンエアをガス供給チャンバー91の側壁から横向きに導入させることにより,ガス供給チャンバー91の内部全体にクリーンエアを拡散させてから,各ガス吐出口91aを介して均等に吐出させることができる。即ち,クリーンエアをガス供給チャンバー91の天井部から導入させる場合よりも,ガス供給チャンバー91の内部全体にクリーンエアを拡散させることができ,各ガス吐出口91aからより均等に吐出させることができる。従って,クリーンエアを処理空間S全体に供給することができ,これにより,処理空間S内の雰囲気をクリーンエアに確実に置換させることができる。
【0061】
なお,取り込み用カップ110においては,FFU102から供給されるクリーンエアの大部分が取り込み用カップ110内からクリーンエア供給路103に導入され,残りの一部は,隙間111を通じて,取り込み用カップ110の外部に排出されるようにしても良い。例えば,FFU102から供給されるクリーンエアの流量のうち約80%が,取り込み用カップ110内からクリーンエア供給路103に導入され,残りの約20%が,取り込み用カップ110の外部に排出されるようにしても良い。
【0062】
次に,ウェハWに供給する薬液がDHF液である洗浄処理L1について説明する。先ず,搬入出口18を開き,上記のようなCDAの供給によって湿度が調節(低減)された状態の処理空間S内に,搬送機構21の搬送アーム21aにより,未だ洗浄されていないウェハWを搬入し,図1に示すようにウェハWをスピンチャック3に受け渡す。ウェハWをスピンチャック3に受け渡すときは,図2において二点鎖線で示すように,ノズルアーム6及び乾燥用ノズルアーム15をスピンチャック3の左右に位置する待機位置にそれぞれ退避させておく。
【0063】
ウェハWがスピンチャック3に受け渡されたら,処理空間Sから搬送アーム21aを退出させ,シャッター18aによって搬入出口18を閉じ,モータ25の駆動によりスピンチャック及びウェハWの回転を開始させ,薬液(DHF液)処理工程を開始する。まず,ノズルアーム6をウェハWの上方に移動させ(図2において一点鎖線),ノズル5をウェハWの中心Po上方に配置する。そして,開閉弁45a,46a,48aを閉じたまま,開閉弁44aを開き,薬液供給路44にDHF液を送液させ,回転するウェハWの中心Poに向かって,ノズル5からDHF液を供給する。中心Poに供給されたDHF液は,遠心力によりウェハWの上面全体に拡散する。これにより,ウェハWの上面にDHF液の液膜が形成される。なお,DHF液供給時のウェハWの回転数は,例えば約500rpm程度にしても良い。DHF液の液膜が形成されたら,ノズル5からのDHF液の供給を停止させ,所定時間,DHF液の液膜によってウェハWの上面を処理する。あるいは,DHF液の供給を停止させず,DHF液の供給やウェハWの回転を継続しながら処理しても良い。なお,このDHF液処理が行われると,ウェハWの上面の疎水性が,DHF液処理前よりも強められる。
【0064】
DHF液処理が終了したら,リンス処理工程を行う。リンス処理工程においては,ウェハWを回転させながら,ノズル5からウェハWの中心Poに向かって純水を供給する。中心Poに供給された純水は,遠心力によりウェハWの上面全体に拡散させられる。ウェハWの上面に付着していたDHF液は,純水によってウェハWから洗い流される。なお,リンス処理時のウェハWの回転数は,DHF液供給時より高くすることが好ましく,例えば約1000rpm程度にしても良い。ウェハWが純水によって十分にリンス処理されたら,ノズル5からの純水の供給を停止させ,ノズルアーム6をウェハWの上方から退避させ,待機位置に戻す。
【0065】
かかるリンス処理工程後,ウェハWにIPA液の液膜を形成するIPA液膜形成工程を行う。先ず,乾燥用ノズルアーム15をウェハWの上方に移動させ(図2において一点鎖線),流体ノズル12をウェハWの中心Po上方に配置する。そして,図6に示すように,ウェハWをスピンチャック3によって回転させながら,流体ノズル12からウェハWの中心Poに向かってIPA液を供給する。中心Poに供給されたIPA液は,遠心力によりウェハWの上面全体に拡散させられ,ウェハWの上面全体にIPA液が液膜状に塗布される。なお,IPA液膜形成工程におけるウェハWの回転数は,リンス処理時より低くすることが好ましく,例えば約300rpm程度にしても良い。
【0066】
このようにウェハWの上面にIPA液の液膜を形成することにより,ウェハWの上面全体において,純水をIPAに置換させることができる。また,ウェハWの上面をIPA液の液膜で覆うことにより,ウェハWの上面,特に上面周縁部が自然乾燥することを防止できる。この場合,ウェハWの上面にパーティクルやウォーターマークが発生することを防止できる。特に,DHF液による薬液処理によって,ウェハWの上面の疎水性が強められた場合であっても,パーティクルの発生を効果的に防止できる。大口径のウェハWであっても,ウェハWの周縁部付近に発生するパーティクル(薬液などの析出によって生じる筋状のウォーターマーク等)を抑制することができる。
【0067】
こうして,ウェハWの上面にIPA液の液膜を形成した後,ウェハWにIPA液と窒素ガスを供給してウェハWを乾燥させる乾燥処理工程を行う。先ず,流体ノズル12と不活性ガスノズル13をウェハWの中心Po上方近傍に配置した状態において,流体ノズル12からのIPA液の供給,及び,不活性ガスノズル13からの窒素ガスの供給を開始する。そして,スピンチャック3によってウェハWを回転させながら,IPA液と窒素ガスを供給しつつ,乾燥用ノズルアーム15を移動させる。これにより,流体ノズル12と不活性ガスノズル13が乾燥用ノズルアーム15と一体的に移動方向Dに移動させられ,図7に示すように,ウェハの上面における流体ノズル12からのIPA液の供給位置Sfと,不活性ガスノズル13からの窒素ガスの供給位置Snとが,移動方向Dに沿って,ウェハWの中心Poから周縁までの間をスキャンするように移動させられる。このように,ウェハWを回転させながら,IPA液の供給位置Sfと窒素ガスの供給位置Snとを少なくともウェハWの中心Poから周縁部まで移動させることにより,ウェハWの上面全体にIPA液と窒素ガスを供給する。
【0068】
回転するウェハWの上面に供給されたIPA液は,遠心力によってウェハWの外周側に向かって流れる。また,IPA液の供給位置SfがウェハWの中心Po側から周縁部側に向かって移動する間,不活性ガスノズル13から供給された窒素ガスは,IPA液の供給位置Sfよりも常にウェハWの中心Po側において,供給位置Sfに隣接した供給位置Snに供給される。また,窒素ガスの供給位置Snは,中心Poと供給位置Sfとの間に配置されながら,供給位置Sfを追従するように,中心Po側から周縁部側に移動させられる。乾燥処理工程におけるウェハWの回転数は例えば約500rpm〜800rpm程度にしても良く,IPA液の供給位置Sfと窒素ガスの供給位置Snの移動方向Dにおける移動速度は,例えば約150mm/sec程度としても良い。
【0069】
このように,供給位置Sfに対して中心Po側に隣接した供給位置Snに窒素ガスを供給することで,ウェハWの上面に供給されたIPA液がすぐに窒素ガスによって押し流され,ウェハWの乾燥が促進させられる。また,ウェハWの上面をむらなく効率的に乾燥させることができる。さらに,ウォーターマークの発生原因である酸素濃度も低くできるため,ウォーターマークの発生を防止できる。また,IPAと純水との揮発性の差から生じるパーティクルの発生を防止でき,ウェハWの品質を向上させることができる。
【0070】
IPA液の供給位置SfをウェハWの周縁まで移動させたら,流体ノズル12からのIPA液の供給を停止させる。そして,窒素ガスの供給位置SnをウェハWの周縁まで移動させたら,不活性ガスノズル13からの窒素ガスの供給を停止させる。こうして,乾燥処理工程が終了する。
【0071】
乾燥処理工程後,スピンチャック3の回転を停止させてウェハWを静止させ,搬入出口18を開き,搬送アーム21aをチャンバー2内に進入させ,ウェハWをスピンチャック3から受け取り,チャンバー2から搬出する。こうして,基板処理装置1におけるウェハWの一連の処理が終了する。
【0072】
以上のように薬液処理工程,リンス処理工程,IPA液膜形成工程,乾燥処理工程を行う間,処理空間Sには,ガス供給チャンバー91からCDAが常時供給され,処理空間S内の湿度が低減された状態(露点温度約−40℃以下程度)が維持される。こうして,ウェハWの周囲の雰囲気における湿度を低減させることにより,特にIPA液膜形成工程,乾燥処理工程を行う際に,ウェハW上に供給されたIPA液に,処理空間S中の水分が溶け込むことを防止できる。これにより,乾燥後のウェハWにパーティクルが発生することを防止できる。また,乾燥処理工程時には,ウェハWの乾燥を促進させることができる。
【0073】
なお,本発明者の研究によれば,薬液処理後,ウェハWの疎水性が強い状態(疎水性の層が多く露出している状態,特に,シリコン酸化膜が除去されている状態)になっている場合,その後の乾燥処理において,通常の乾燥処理方法,即ち,例えば単にウェハWを回転させて液を振り切ることで乾燥させたり,あるいは,ウェハWに窒素ガス等の乾燥用ガスを供給したりして乾燥させるだけでは,ウェハWにウォーターマークが発生しやすい傾向にある知見を得た。これに対し,以下に説明する洗浄処理L2,L3のように,薬液処理後,ウェハWの疎水性が弱い状態(疎水性の層の露出が少ない状態,親水性の面が多い状態)になっている場合は,その後の乾燥処理において,上述した通常の乾燥処理方法で乾燥させるだけでも,ウェハWにウォーターマークが発生しない傾向にある知見を得た。
【0074】
次に,ウェハWに供給する薬液がSC−1液である洗浄処理L2について説明する。この洗浄処理L2においては,薬液(SC−1液)処理工程,純水を用いたリンス処理工程,ウェハWを乾燥させる乾燥処理工程が行われる。かかる薬液処理工程においてSC−1液をウェハWに供給した場合は,DHF液を供給した場合のようにウェハWの疎水性が強められることは無く,DHF液を使用した場合に問題になりやすいパーティクルやウォーターマークの発生も,それほど問題にはならない。また,IPA液膜形成工程は省略することができる。さらに,乾燥処理工程においては,IPA液を供給する必要は無く,ウェハWの回転によってリンス液を振り切って乾燥させるか,あるいは,窒素ガスを供給することでウェハWの乾燥を促進させるようにしても良い。このように,ウェハWに供給する薬液がSC−1液である場合は,ウェハWの疎水性の強さが弱く,また,IPA液を使用せずに処理でき,処理空間S内の湿度を低減させなくても,乾燥後のウェハWにパーティクルやウォーターマークが発生する心配が無い。即ち,CDAよりも低コストで供給できるクリーンエアを使用できる。
【0075】
次に,ウェハWに供給する薬液がSC−2液である洗浄処理L3について説明する。この洗浄処理L3においては,薬液(SC−2液)処理工程,純水を用いたリンス処理工程,ウェハWを乾燥させる乾燥処理工程が行われる。かかる薬液処理工程においてSC−2液をウェハWに供給した場合は,DHF液を供給した場合のようにウェハWの疎水性が強められることは無く,DHF液を使用した場合に問題になりやすいパーティクルやウォーターマークの発生も,それほど問題にはならない。また,この洗浄処理L3においても,洗浄処理L2と同様に,IPA液膜形成工程は省略できる。乾燥処理工程においては,IPA液を供給する必要は無く,ウェハWの回転によってリンス液を振り切って乾燥させるか,あるいは,窒素ガスを供給することでウェハWの乾燥を促進させるようにしても良い。このように,ウェハWに供給するSC−2液である場合も,SC−1液である場合と同様に,IPA液を使用せずに処理でき,処理空間S内の湿度を低減させなくても,乾燥後のウェハWにパーティクルやウォーターマークが発生する心配が無い。即ち,CDAよりも低コストで供給できるクリーンエアを使用できる。
【0076】
かかる基板処理装置1によれば,ウェハWに供給される薬液の種類に応じて,ウェハWの周囲の湿度を調節することにより,必要な時のみ,即ち,IPA液がウェハWに供給される洗浄処理L1が行われる場合のみ,湿度を低減させることができる。従って,例えばCDA等のガスの供給量を低減することができ,IPA液が供給されない洗浄処理L2,L3においては,FFU102から供給される比較的安価なクリーンエア等を使用することができる。これにより,ウェハWの処理に要するコストの低減を図ることができる。また,必要な時はウェハWの周囲の湿度を減少させることで,洗浄処理後のウェハWにパーティクル(ウォーターマーク)が発生することを防止できる。
【0077】
以上,本発明の好適な実施の形態の一例を示したが,本発明はここで説明した形態に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
例えば以上の実施形態では,処理空間S内の雰囲気の湿度は,FFU102から供給されるクリーンエアの湿度,又は,CDA供給源104から供給されるCDAの湿度のいずれか一方に,即ち2段階に調節される構成としたが,処理空間S内の湿度は,3段階以上に調節できるようにしても良いし,任意の値に調節できるようにしても良い。例えば,切換ダンパ107において,可動部材122の傾斜角度を調節し,クリーンエア供給路103の端部の開度を調整とすることで,クリーンエアとCDAの混合比を変え,これにより,処理空間Sに導入される湿度調節用ガスの湿度を調節しても良い。
【0079】
また,湿度調節機構16の構成は,以上の実施形態に示したような,FFU102から供給されるクリーンエアとCDA供給源104から供給されるCDAとを用いて湿度調節を行うものに限定されない。例えば,湿度調節用ガスの水分含有量を任意の値に調整できる水分調整器や,湿度調節用ガスを除湿する除湿機等を備えた構成としても良い。この場合,水分含有量が調整された状態の湿度調節用ガスを処理空間Sに導入して,処理空間S内の雰囲気を置換させることにより,処理空間S内の湿度を任意の値に調節できる。
【0080】
また,湿度調節用ガスとして用いられる気体は,空気(クリーンエア,CDA)には限定されない。例えばクリーンエアに代えて他のガスを用いても良く,CDAに代えて他の低露点ガスを用いても良い。例えば窒素ガス等の不活性ガスであっても良い。例えば,清浄化した(通常の露点温度の)不活性ガスと清浄化した低露点の不活性ガスとを,湿度調整用ガスとして選択的に供給できるようにしても良い。また,以上の実施形態では,同一の種類の気体(空気)であるクリーンエアとCDAを湿度調節用ガスとして用いる形態としたが,互いに異なる種類であり,かつ,互いに異なる露点温度を有する気体を,湿度調節用ガスとして用いても良い。例えば,FFUから供給されるクリーンエアを第一の湿度調節用ガスとし,CDAに代えて低露点の窒素ガスを第二の湿度調節用ガスとして用いても良い。
【0081】
以上の実施形態においては,洗浄処理L1を行う場合,処理空間SにウェハWを搬入する前に,予め処理空間Sの湿度を減少させ,洗浄処理L1が行われている間中,処理空間Sの湿度が低減された状態を維持するようにしたが,少なくともIPA液が供給される工程,即ち,IPA液膜形成工程,及び,乾燥処理工程においてのみ,処理空間Sの湿度が低減された状態になるようにしても良く,薬液処理工程及びリンス処理工程においては,必ずしも,処理空間Sの湿度が低減されていなくても良い。ただし,処理空間Sの湿度が所望の値に調節されるまで,即ち,処理空間Sの雰囲気がCDAに置換されるまでには,ある程度の時間が必要である。従って,IPA液膜形成工程又は乾燥処理工程が開始される前に,CDAの供給を開始させ,IPA液膜形成工程又は乾燥処理工程が行われるときには,処理空間Sの湿度が所望の値に低減された状態になるようにすると良い。また,このようなウェハWに施される複数の処理工程を含む一連の工程中における湿度調節(クリーンエアとCDAの供給の切り換え)も,制御コンピュータ17の判断に基づいて行い,さらに,制御コンピュータ17の制御命令によって湿度調節機構16を操作することにより行っても良い。
【0082】
洗浄処理L1のIPA液膜形成工程,乾燥処理工程において供給されるIPAを含む流体は,液体状のもののほか,ミスト状(霧状),噴流,気体状のものなどであっても良い。例えば,IPA液のミスト,IPA溶液のミスト,IPA蒸気,又は,IPA溶液の蒸気(IPA蒸気と水蒸気が混合した混合蒸気)などを,IPAを含む流体として使用しても良い。さらに,IPA液のミスト,IPA溶液のミスト,IPA蒸気,又は,IPA溶液の蒸気などに,窒素ガスなどの気体を混合させたものを,IPAを含む流体として使用しても良い。このようなIPAを含む流体を使用する場合も,処理空間Sの湿度を減少させることで,IPAに水分が取り込まれることを防止できる。IPAを含む流体を供給するためのノズルとしては,二流体ノズルを用いても良い。
【0083】
また,IPA液膜形成工程において供給されるIPAを含む流体と,乾燥処理工程において供給されるIPAを含む流体とは,互いに異なる状態(相)のものでも良い。例えばIPA液膜形成工程ではIPA液等の液体を使用し,乾燥処理工程ではIPA蒸気等の気体やIPA液等のミストを使用しても良い。
【0084】
乾燥処理工程において乾燥用ガスとして供給されるガスは,窒素には限定されず,他の不活性ガスであっても良い。また,かかる乾燥用ガスは不活性ガスには限定されず,例えば空気等であっても良い。この場合も,ウェハWの上面に供給されたIPA液等を押し流し,ウェハWの乾燥を促進させることができる。さらに,乾燥用ガスは,乾燥した状態のガス,即ち,湿度が通常状態より強制的に低減されたガスであっても良く,例えばドライエア等でも良い。そうすれば,ウェハWの表面付近の湿度を低減させることができ,ウェハWに付着したIPA液等の液体の蒸発を促進させ,ウェハWの乾燥をさらに効果的に促進させることができる。
【0085】
基板処理装置1においてウェハWに供給可能な薬液の種類は,DHF,SC−1,SC−2の3種類には限定されず,その他の種類の薬液であっても良いし,2種類以下,あるいは4種類以上の薬液を供給できるようにしても良い。また,薬液の種類は,ウェハWの洗浄用のものに限定されず,例えば,HF(フッ化水素)などのエッチング用の薬液であっても良い。例えば洗浄処理L1の薬液処理工程に代えて,HF(フッ化水素)などのエッチング用の薬液をウェハWに供給してエッチングする工程を行うことにより,リンス処理工程,乾燥処理工程等を含む一連のエッチング処理を行うことができる。
【0086】
即ち,基板処理装置1にて行われる処理は,3種類の洗浄処理L1,L2,L3には限定されず,本実施形態は,様々な処理に応用することができる。例えば,エッチング処理,レジスト除去処理,エッチング残渣を除去する処理などにも適用できる。また,本実施の形態では,リンス液として純水を例示したが,リンス液はかかるものに限定されない。
【0087】
また,互いに異なる種類の薬液を用いてウェハWを処理する複数種類の薬液処理工程を,処理空間Sにおいて順次行うようにしても良い。そのように複数種類の薬液を用いる場合において,当該複数種類の薬液に,ウェハWの疎水性を強めるような性質の薬液,例えばDHF液又はHF液等が含まれているときは,少なくともDHF液又はHF液等を用いてウェハWを処理した後の乾燥処理工程においては,そのDHF液又はHF液等を用いた薬液処理工程の前に行われる工程,即ち,DHF液又はHF液以外の他の薬液を用いてウェハWを処理する薬液処理工程時やリンス処理工程時よりも,処理空間Sの湿度を低減させると良い。即ち,DHF液又はHF液等の供給によってウェハWの疎水性が強められた状態になったら,DHF液又はHF液等を供給する前のウェハWの疎水性が弱い状態のときよりも,処理空間Sの湿度を低減させると良い。
【0088】
例えば,ウェハWを基板処理装置1に搬入した後,最初にDHF液又はHF液とは異なる第一の薬液として例えばSC−1液等を供給してウェハWを処理する第一の薬液処理工程を行い,次に,例えば純水等をリンス液として供給してウェハWをリンス処理する第一のリンス処理工程を行い,続いて,例えばDHF液等のウェハWの疎水性を強める性質の薬液を第二の薬液として供給してウェハWを処理する第二の薬液処理工程を行い,さらに,例えば純水等をリンス液として供給してウェハWをリンス処理する第二のリンス処理工程を行い,その後,ウェハWを乾燥させる乾燥処理工程を行うようにしても良い。この乾燥処理工程においては,洗浄処理L1において行われる乾燥処理工程と同様に,IPA液を利用した乾燥処理を行っても良い。かかる第一の薬液処理工程,第二の薬液処理工程を含む第四の洗浄処理L4によれば,SC−1液を用いることにより,有機性の汚れ,パーティクル等を除去でき,DHF液を用いることにより,自然酸化膜を除去することができる。
【0089】
なお,この洗浄処理L4においては,少なくともDHF液を用いる第二の薬液処理工程の後に行われる工程,即ち,IPA液膜形成工程,乾燥処理工程等においてのみ,処理空間Sの湿度を低減した状態(低露点ガスを供給する状態)になるようにしても良い。このように,処理空間Sで複数種類の薬液処理工程を連続して行う場合などであっても,必要なときのみ低露点ガスを供給して湿度を低減させることにより,低露点ガスの供給量を大幅に低減できる。また,このように複数の薬液処理工程を含む一連の洗浄処理L4を行う制御も,制御コンピュータ17によって行い,洗浄処理L4中の湿度調節(クリーンエアとCDAの供給の切り換え)も,制御コンピュータ17の判断に基づいて行い,さらに,制御コンピュータ17の制御命令によって湿度調節機構16を操作することにより行っても良い。
【0090】
さらに,以上の実施形態では,ウェハWをスピンチャック3によって保持して一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置1を例示したが,本実施形態は,複数枚のウェハWを一括して処理するバッチ式の処理装置に応用することもできる。また,基板は半導体ウェハに限らず,その他のLCD基板用ガラスやCD基板,プリント基板,セラミック基板などであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は,例えば基板処理方法,記録媒体及び基板処理装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施形態にかかる基板処理装置の概略縦断面図である。
【図2】処理空間の概略平面図である。
【図3】湿度調節機構の構成を説明する説明図である。
【図4】切換ダンパの構成を示し,クリーンエア供給路と主供給路とが遮断させられている状態を説明する概略縦断面図である。
【図5】切換ダンパの構成を示し,クリーンエア供給路と主供給路とが連通させられている状態を説明する概略縦断面図である。
【図6】IPA液膜形成工程における流体ノズルの配置を説明する説明図である。
【図7】乾燥処理工程における流体ノズルと不活性ガスノズルの動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0093】
S 処理空間
W ウェハ
1 基板処理装置
2 チャンバー
16 湿度調節機構
17 制御コンピュータ
17c 記録媒体
41 薬液(DHF液)供給源
42 薬液(SC−1液)供給源
43 薬液(SC−2液)供給源
47 リンス液供給源
91 ガス供給チャンバー
101 主供給路
102 FFU
103 クリーンエア供給路
104 CDA供給源
105 CDA供給路
107 切換ダンパ
112 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の薬液を用いて基板を処理した後,基板を乾燥させる方法であって,
第一の薬液で処理する第一の薬液処理工程と,
前記第一の薬液処理工程の後に第二の薬液で処理する第二の薬液処理工程と,
前記第二の薬液処理工程の後に基板を乾燥させる乾燥処理工程とを行い,
少なくとも前記乾燥処理工程において,前記基板の周囲の湿度を前記第一の薬液処理工程時よりも低減させることを特徴とする,基板処理方法。
【請求項2】
前記第二の薬液には、DHF液又はHF液が含まれていることを特徴とする,請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第一の薬液は、SC−1液又はSC−2液であることを特徴とする,請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記乾燥処理工程において,水より揮発性が高い流体を基板に供給することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記湿度を低減させる場合,露点温度を−40℃以下にすることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記湿度の低減は,前記基板の周囲にFFUから供給されるクリーンエアを供給する状態と,前記クリーンエアよりも湿度が低い低露点ガスを供給する状態とを切り換えることにより行うことを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記低露点ガスは,CDA又は窒素ガスであることを特徴とする,請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板の薬液処理及び乾燥処理を行う基板処理装置の制御コンピュータによって実行することが可能なソフトウェアが記録された記録媒体であって,
前記ソフトウェアは,前記制御コンピュータによって実行されることにより,前記基板処理装置に,請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理方法を行わせるものであることを特徴とする,記録媒体。
【請求項9】
薬液を用いて基板を処理する装置であって,
互いに異なる種類の薬液を供給する複数の薬液供給源と,基板の周囲の湿度を調節する湿度調節機構と,前記湿度調節機構を制御する制御部とを備え,
前記制御部は,第一の薬液で処理する第一の薬液処理工程と,前記第一の薬液処理工程の後に第二の薬液で処理する第二の薬液処理工程と,前記第二の薬液処理工程の後に基板を乾燥させる乾燥処理工程とを行うように制御し,かつ,少なくとも前記乾燥処理工程において,前記基板の周囲の湿度を前記第一の薬液処理工程時よりも低減させるように制御することを特徴とする,基板処理装置。
【請求項10】
前記第二の薬液には、DHF液又はHF液が含まれていることを特徴とする,請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第一の薬液は、SC−1液又はSC−2液であることを特徴とする,請求項9または10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記乾燥処理工程において,水より揮発性が高い流体を基板に供給することを特徴とする,請求項9〜11のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記湿度を低減させる場合,露点温度を−40℃以下にすることを特徴とする,請求項9〜12のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
クリーンエアを供給するFFUと,前記クリーンエアよりも湿度が低い低露点ガスを供給する低露点ガス供給源とを備え,
前記基板の周囲に前記クリーンエアを供給する状態と前記低露点ガスを供給する状態とを切り換えることが可能な構成としたことを特徴とする,請求項9〜13のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記FFUから供給される前記クリーンエアを取り込む取り込み用カップと,前記取り込み用カップ内のクリーンエアを前記基板の周囲に導入するクリーンエア供給路と,前記取り込み用カップ内のクリーンエアを前記取り込み用カップの外部に排出させるクリーンエア排出口とを備えることを特徴とする,請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記クリーンエア又は前記低露点ガスを前記基板の周囲に導入する主供給路と,前記FFUから供給される前記クリーンエアを前記主供給路に導入するクリーンエア供給路と,前記低露点ガス供給源から供給される前記低露点ガスを前記主供給路に導入する低露点ガス供給路とを備え,
前記クリーンエア供給路と前記主供給路を連通させる状態と遮断する状態とを切り換える切換部を設け,
前記切換部において,前記クリーンエア供給路の下流端部は,前記主供給路の上流端部に向かって前記クリーンエアを吐出する方向に指向し,
前記クリーンエア供給路と前記主供給路は,互いに同一の直線上に備えられ,
前記低露点ガス供給路は,前記切換部を介して前記主供給路に接続され,
前記切換部において,前記低露点ガス供給路の下流端部は,前記主供給路の上流端部とは異なる位置に向かって前記低露点ガスを吐出する方向に指向していることを特徴とする,請求項14又は15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記低露点ガスは,CDA又は窒素ガスであることを特徴とする,請求項14〜16のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−177585(P2008−177585A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23342(P2008−23342)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【分割の表示】特願2006−90297(P2006−90297)の分割
【原出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】