説明

基板処理方法

【課題】気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御することにより、基板へのパーティクル等の付着を防止し、基板の処理環境を一様にできる
【解決手段】ステップS4の基板搬出動作において、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかが判断される(ステップS42)。チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、ドライエア供給装置31に内蔵された発生器内インバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口が絞られる(ステップS43)。チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵された発生器内インバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放している(ステップS44)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して薬液、純水等の処理液により、洗浄、エッチング等の液処理を行った後、基板を乾燥させる基板処理方法に関し、処理対象となる基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用ガラス基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から実施されている基板処理装置として、複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の洗浄・乾燥装置がある。この種の基板処理装置は、基板に対して薬液、純水等の処理液により、洗浄、エッチング等の液処理を行った後、基板を乾燥させるためのチャンバーと、このチャンバー内に収容され、処理液を貯留する処理槽と、複数枚の基板の下端を支持し、処理槽の内部と処理槽の上方位置(基板乾燥位置)とにわたって昇降可能に構成されたリフタと、処理槽の液面近傍に備えられ、水平方向に向けて、ドライエア等の乾燥用気体を供給するための供給部とを備えている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【0003】
このように構成された基板処理装置では、以下のような基板処理方法が実施されている。まず、例えば、純水を貯留している処理槽にリフタを下降させて基板を純水に浸漬させ、次いで、処理槽にフッ化水素酸を混合してエッチング用の処理液を生成する。そして、所定時間の処理の後に、純水を供給してフッ化水素酸を含む処理液を純水で置換する。純水によるリンス処理を所定時間行った後、ノズルから乾燥用気体を供給させつつ複数枚の基板を一括して支持したリフタを上昇させる。これにより、処理液の液面から引き上げられる基板をドライエアにより乾燥させる。なお、ドライエアを生成しているドライエア供給装置は、低露点のドライエアを生成するのに長時間を要するので、常時作動されているのが一般的である。その関係上、エッチング用の処理液による処理が行われている際にも供給部からはドライエアが供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−78190号公報
【特許文献2】特開2008−210882号公報
【特許文献3】特開2009−193999号公報
【特許文献4】特開2010−238771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来からの基板処理装置では、パーティクル等のゴミをチャンバー内に持ち込まないために、チャンバー内を陽圧にしておく必要があり、通常チャンバー内は陽圧状態に制御されている。しかしながら、このようにチャンバー内を陽圧にしていると、種々の要因でチャンバー内の圧力が変動することがある。特に、複数枚の基板を保持したリフタを処理槽から基板乾燥位置へ引き上げる際に、リフタに保持されている基板の枚数や基板の位置により、チャンバー内の負荷が変動し、場合によってはチャンバー内が負圧になってしまうことがある。このようにチャンバー内が負圧になってしまうと、基板にパーティクル等が付着する恐れがある。
【0006】
また、チャンバー内の圧力環境が大きく変化すると、この圧力環境の変化が原因で、基
板の処理に悪影響を及ぼしてしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御することにより、基板へのパーティクル等の付着を防止し、基板の処理環境を一様に制御できる基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基板を処理液に浸漬させた後、基板を処理液から引き上げて基板を乾燥させる基板処理方法において、チャンバー内に収容され、かつ処理槽に貯留された処理液に基板を保持した保持機構を浸漬させる搬入工程と、前記処理槽内の処理液に基板を浸漬させて、処理液により基板を液処理する液処理工程と、前記処理槽の液面近傍に備えられた気体供給手段から乾燥用気体を供給させつつ、前記処理槽内の処理液から基板を保持した保持機構を引き上げる搬出工程とを有し、前記搬出工程が、前記チャンバー内を陽圧にすべきか負圧にすべきかを判断する搬出時判断工程と、前記搬出時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する搬出時制御工程とを有することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理方法において、前記搬出時制御工程が、陽圧及び負圧の状況に対応した乾燥用気体の供給量と基板の処理枚数との関係に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の基板処理方法において、前記液処理工程が、前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する液処理時判断工程と、前記液処理時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する液処理時制御工程とを有することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の基板処理方法において、前記搬入工程が、前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する搬入時判断工程と、前記搬入時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する搬入時制御工程とを有することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかにに記載の基板処理方法において、前記搬出工程の後に、前記処理槽内に貯留された処理液を排出する処理液排出工程をさらに有し、前記処理液排出工程が、前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する処理液排出時判断工程と、前記排出時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する処理液排出時制御工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る基板処理装置によれば、チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断し、その判断結果に基づいて、気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御しているので、基板へのパーティクル等の付着を防止し、基板の処理環境を一様に制御できるという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る基板処理方法を実施する基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】基板処理装置の一連の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】待機動作の具体的な処理工程示すフローチャートである。
【図4】基板搬入動作の具体的な処理工程示すフローチャートである。
【図5】基板処理動作の具体的な処理工程示すフローチャートである。
【図6】基板搬出動作の具体的な処理工程示すフローチャートである。
【図7】処理液排出動作の具体的な処理工程示すフローチャートである。
【図8】基板の処理枚数とドライエアの供給量との関係を示す図である。
【図9】リフタの引き上げスピードとインバータの立ち上げスピードとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る基板処理方法を実施する基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0016】
この基板処理装置は、処理液を貯留する処理槽1を備えている。この処理槽1は、処理液を貯留し、起立姿勢とされ、かつ水平方向に配列された複数枚の基板Wを収容可能に構成されている。処理槽1の底部には、複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理槽1内へ処理液を供給するための二本の噴出管7が配設されている。各噴出管7には、基板Wの整列方向に沿って複数個の噴出孔が形成されている。
【0017】
各噴出管7には、供給管9の下流の一端側が接続され、供給管9の上流の他端側は、図示しない処理液供給源に連通接続されている。供給管9は、フッ化水素酸(HF)等の薬液や、純水などを処理液として処理槽1へ供給する。
【0018】
処理槽1は、その周囲がチャンバー11で囲われている。チャンバー11は、上部に開閉自在の上部カバー13を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ15は、チャンバー11の上方にあたる「待機位置」と、処理槽1の内部にあたる「処理位置」と、処理槽1の上方であってチャンバー11の内部にあたる「乾燥位置」の3ポジションとにわたって移動可能である。
【0019】
処理槽1の底部には、排出口17が形成されている。この排出口17には、QDR弁19が取り付けられている。このQDR弁19を開放して排出口17から処理槽1内の処理液を排出すると、処理液がチャンバー11内の底部に一旦排出される。チャンバー11の底部には排液弁21が取り付けられており、排液弁21が開放されると、チャンバー11の底部に排出された処理液が外部に排出される。
【0020】
チャンバー11のうち、処理槽1の上縁一方側には、乾燥用気体としてのドライエアを供給するための気体供給部23が配設されている。また、処理槽1を挟んで気体供給部23と対向する位置であって、処理槽1の上縁他方側には、ドライエアを排出するための気体排出部25が配設されている。気体供給部23は、処理槽1に貯留している処理液の液面近傍に開口するように、ドライエアを噴出する噴射口27を備え、気体排出部25は、ドライエアをチャンバー11外へ排出するための排出口29を処理槽1側に備えている。
【0021】
上述した気体供給部23には、上流の一端側がドライエア供給装置31に連通接続された供給配管33の他端側が連通接続されている。ドライエア供給装置31は、低露点に調整した空気をドライエアとして供給する。その供給量は、ドライエア供給装置31内に内蔵されたインバータ(図示省略)によって調整される。インバータは、気体供給部23へのドライエアの供給量を調整する他、気体供給部23へのドライエアを全て一般排気へ供
給して、気体供給部23へのドライエアの供給を停止する機能を備えている。なお、気体供給部23及び供給配管33並びに気体排出部25は、薬液雰囲気の耐性を考慮して、ポリ塩化ビニル(PVC)などのエンジニアリングプラスチックス製や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂製とするのが好ましい。
【0022】
また、気体排出部25には、電動ダンパ37が配設されている。この電動ダンパ37は、気体排出部25から排出されるドライエアの流量を調整するために用いられる。
【0023】
処理槽1の側壁の一部位には、処理槽1内に貯留している純水の比抵抗を測定するための比抵抗計39が配設されている。この比抵抗計39は、測定の開始を指示された後、順次に測定した比抵抗値を出力信号SR1として制御部45へ出力する。
【0024】
また、チャンバー11は、内部の気体を排出するための排気管41を備えている。この排気管41は、流量制御弁43を備えており、この流量制御弁43の開閉動作等によってチャンバー11からの気体の排気流量が調整される。
【0025】
チャンバー11の側壁の一部位には、チャンバー11内の圧力を測定するための圧力計47が配設されている。この圧力計47は、測定の開始を指示された後、順次に測定した圧力値を出力信号SR2として制御部45へ出力する。
【0026】
制御部45は、上述した上部カバー13の開閉動作や、リフタ15の昇降、QDR弁19及び排液弁21の開閉動作、電動ダンパ37の開度などの制御を行う。また、制御部45は、圧力計47からの出力信号SR2に応じて、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量の制御等を行う。
【0027】
次に、図2〜図9を参照して、上述した基板処理装置を使用した本発明に係る基板処理方法の実施形態について説明する。なお、図2は、基板処理装置の一連の処理動作を示すフローチャートである。
【0028】
ここでは、処理対象である基板Wの表面には、既に酸化膜(SiO2)が被着されているものとする。また、純水を供給管9から処理槽1に供給し、その後、フッ化水素酸(HF)を注入してエッチングを行い、次いで純水だけを供給してリンスを行った後にドライエアを供給しつつ、リフタ15に保持された基板Wを処理槽1から引き上げる、基板Wの洗浄及び引き上げ乾燥を例に採って説明する。なお、初期状態では、QDR弁19は閉止され、排液弁21は開放されているものとする。また、上部カバー13は閉塞された状態である。
【0029】
まず、図2に示す待機動作を実施する(ステップS1)。図3は、待機動作の具体的なを処理工程を示すフローチャートである。まず、制御部45は、供給管9から処理液としての純水を処理槽1に供給させる(ステップS11)。処理槽1を溢れた純水は、チャンバー11の底部に回収される。次に、圧力計47により、チャンバー11内の圧力値を測定する(ステップS12)。圧力計47により測定された圧力値に基づいて、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する(ステップS13)。なお、圧力計47により測定された基準となる圧力値を基本データとして、比抵抗値、ウエハマッピング情報、リフタ15の位置情報、各弁の状態、処理レシピ等に基づいて、チャンバー11内の汚染を防止したい場合、チャンバー11内を陽圧にする。一方、圧力計47により測定された基準となる圧力値等に基づいて、チャンバー11内の雰囲気の拡散防止をしたい場合、チャンバー11内を負圧にする。
【0030】
ステップS13において、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS14)。一方、ステップS13において、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開放する(ステップS15)。ステップS14またはステップS15のそれぞれの工程が終了すると、制御部45は、インバータを通常モードに戻し、電動ダンパ37及び流量制御弁43をともに開放させた状態(通常モード)にする(ステップS16)。以上により、待機動作が終了する。
【0031】
待機動作(ステップS1)が終了すると、次に図2に示すように、基板搬入動作を実施する(ステップS2)。図4は、基板搬入動作の具体的な処理工程を示すフローチャートである。まず、制御部45は、上部カバー13を開放する(ステップS21)。次に、圧力計47により、チャンバー11内の圧力値を測定する(ステップS22)。このとき、圧力計47により測定された基準となる圧力値を基本データとして、比抵抗値、ウエハマッピング情報、リフタ15の位置情報、各弁の状態、処理レシピ等に基づいて、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する(ステップS23)。
【0032】
ステップS23において、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS24)。一方、ステップS23において、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放する(ステップS25)。ステップS24またはステップS25のそれぞれの工程が終了すると、起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ15は、チャンバー11の上方にあたる「待機位置」から処理槽1の内部にあたる「処理位置」へ移動する(ステップS26)。これにより、リフタ15に保持された複数枚の基板Wが、処理槽1内に貯留された処理液内に浸漬される。ステップS26が終了すると、制御部45はインバータを通常モードに戻し、電動ダンパ37及び流量制御弁43をともに開放させた状態(通常モード)にする(ステップS27)。最後に、制御部45は、上部カバー13を閉塞する(ステップS28)。以上により、基板搬入動作が終了する。
【0033】
基板搬入動作(ステップS2)が終了すると、次に図2に示すように、基板処理動作を実施する(ステップS3)。図5は、基板処理動作の具体的な処理工程示すフローチャートである。まず、基板Wを処理液に浸漬させた状態で、圧力計47により、チャンバー11内の圧力値を測定する(ステップS31)。このとき、圧力計47により測定された基準となる圧力値を基本データとして、比抵抗値、ウエハマッピング情報、リフタ15の位置情報、各弁の状態、処理レシピ等に基づいて、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する(ステップS32)。
【0034】
ステップS32において、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS33)。一方、ステップS32において、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放する(ステップS34)。ステップS33及びステップS34のそれぞれの工程が終了すると、設定された時間基板Wが処理液により処理されたか否かが判断される(ステップS35)。設定された時間だけ基板Wが処理液により処理された場合、制御部45は、インバータを通常モードに戻し、電動ダンパ37及び流量制御弁43をともに開放させた状態(通常モード)にする(ステップS36)。以上により、基板処理動作が終了する。
【0035】
基板処理動作(ステップS3)が終了すると、次に図2に示すように、基板搬出動作を実施する(ステップS4)。図6は、基板搬出動作の具体的な処理工程を示すフローチャートである。まず、基板Wを処理液に浸漬させた状態で、圧力計47により、チャンバー11内の圧力値を測定する(ステップS41)。このとき、圧力計47により測定された基準となる圧力値を基本データとして、比抵抗値、ウエハマッピング情報、リフタ15の位置情報、各弁の状態、処理レシピ等に基づいて、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する(ステップS42)。
【0036】
ステップS42において、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS43)。一方、ステップS42において、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開放する(ステップS44)。
【0037】
このステップS43とステップS44においては、インバータの調整により制御されているドライエアの供給量は、リフタ15に保持された基板の枚数に関連付けられて設定されている。図8は、基板の処理枚数とドライエアの供給量との関係を示す図である。図中グラフの縦軸はドライエアの供給量(リットル/分)、横軸は基板の枚数を示している。図8に示すように、基板の処理枚数が多いほど、ドライエアの供給量を増加させるように制御されている。なお、ステップS43の陽圧の場合の方が、ステップS44の負圧の場合よりも、基板の処理枚数とドライエアの供給量との関連性を示す直線の傾きが大きい。
【0038】
また、このステップS43とステップS44においては、インバータの立ち上げスピードは、リフタの引き上げスピードに関連付けられて設定されている。図9は、インバータの立ち上げスピードとリフタの引き上げスピードとの関連性を示す図である。図中グラフの縦軸はインバータの立ち上げスピード、すなわちステップS43またはステップS44を実行するときのインバータの出力周波数の初期値(Hz)、横軸は基板の引き上げスピード(mm/秒)を示している。図9に示すように、ステップS43とステップS44のいずれの場合にも、リフタの引き上げスピードが速いほど、インバータの立ち上げスピードを速く(インバータの出力周波数を大きく)するように制御されている。
【0039】
ステップS43またはステップS44のそれぞれの工程が終了すると、起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ15は、処理槽1の内部にあたる「処理位置」から処理槽1の上方であってチャンバー11の内部にあたる「乾燥位置」へ移動する。このとき、ドライエア発生装置31から供給されるドライエアにより、リフタ15に保持された基板Wは乾燥させられる(ステップS45)。ステップS45が終了すると、制御部45は、インバータは通常モードに戻し、電動ダンパ37及び流量制御弁43ともに開放させた状態(通常モード)にする(ステップS46)。次に制御部45は、上部カバー13を開放する(ステップS47)。
【0040】
ステップS47において、上部カバー13が開放すると、起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ15は、処理槽1の上方であってチャンバー11の内部にあたる「乾燥位置」からチャンバー11の上方にあたる「待機位置」へ移動し、基板Wをチャンバー11
から搬出する(ステップS48)。最後に、制御部45は、上部カバー13を閉塞する(ステップS49)。以上により、基板搬出動作が終了する。
【0041】
基板搬出動作(ステップS4)が終了すると、図2に示すように、処理液排出動作を実施する(ステップS5)。図7は、処理液排出動作の具体的な処理工程を示すフローチャートである。まず、制御部45はQDR弁19を開き、排水を開始する(ステップS51)。そして、基板Wを処理液に浸漬させた状態で、圧力計47により、チャンバー11内の圧力を測定する(ステップS52)。このとき、圧力計47により測定された基準となる圧力値を基本データとして、比抵抗値、ウエハマッピング情報、リフタ15の位置情報、各弁の状態、処理レシピ等に基づいて、制御部45はチャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する(ステップS53)。
【0042】
ステップS53において、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS54)。一方、ステップS53において、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開放する(ステップS55)。次に、制御部45はQDR弁19を開き、排水を開始する(ステップS56)。ステップS56が終了すると、制御部45は、インバータを通常モードに戻し、電動ダンパ37及び流量制御弁43をともに開放させた状態(通常モード)にする(ステップS57)。以上により、処理液排出動作が終了し、一連の基板処理動作が終了する。
【0043】
以上説明したように、この実施の形態の基板処理方法では、ステップS4の基板搬出動作において、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかの搬出時判断(ステップS42)を行っている。そして、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS43)搬出時制御を行う。一方、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放する(ステップS44)搬出時制御を行う。その結果、ステップS4の基板搬出動作において、基板Wへのパーティクル等の付着を防止し、基板Wの処理環境を一様に制御できるという顕著な効果がある。
【0044】
また、この実施の形態の基板処理方法では、このステップS43とステップS44においては、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータの調整により制御されているドライエアの供給量は、リフタ15に保持された基板の枚数に関連付けられて設定されているので、リフタに保持されている基板の枚数や基板の位置によるチャンバー内の負荷の変動が基板に与える影響を抑制できる。
【0045】
また、この実施の形態の基板処理方法では、ステップS3の基板処理動作において、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかの液処理時判断(ステップS32)を行っている。そして、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS33)液処理時制御を行う。一方、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵された発生器内インバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放する(ステップS34)液処理時制御を行う。その結果、ステップS3の基板処理動作において、基板Wへのパーティクル等の付着を防止し、基板Wの処理環境を一様に制御できるという顕著な効果がある。
【0046】
また、この実施の形態の基板処理方法では、ステップS2の基板搬入動作において、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかの搬入時判断(ステップS23)を行っている。そして、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS24)搬入時制御を行う。一方、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放する(ステップS25)搬入時制御を行う。その結果、ステップS2の基板搬入動作において、基板Wへのパーティクル等の付着を防止し、基板Wの処理環境を一様に制御できるという顕著な効果がある。
【0047】
また、この実施の形態の基板処理方法では、ステップS5の排水動作において、制御部45は、チャンバー11内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかの処理液排出時判断(ステップS53)を行っている。そして、チャンバー11内を陽圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を増加させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43の開口を絞る(ステップS54)処理液排出時制御を行う。一方、チャンバー11内を負圧にすべきと判断された場合、制御部45は、ドライエア供給装置31に内蔵されたインバータを調整して、ドライエアの供給量を減少させるとともに、電動ダンパ37及び流量制御弁43を開放する(ステップS55)処理液排出時制御を行う。その結果、ステップS5の排水動作において、基板Wへのパーティクル等の付着を防止し、基板Wの処理環境を一様に制御できるという顕著な効果がある。
【0048】
本発明は、上記実施の形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0049】
上述した実施の形態では、電動ダンパ37によって乾燥用気体を気体供給部23と一般排気とに切り換えたが、これを三方弁と流量制御弁とで構成してもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態では、処理槽1が単体の槽で構成されているが、内槽と、内槽から溢れた処理液を回収する外槽とを備える複槽としてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施の形態では、薬液としてフッ化水素酸を例にとって説明したが、それ以外の薬液、例えば、硫酸及び過酸化水素水や、塩酸、燐酸などの薬液であっても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 チャンバー
15 リフタ
23 気体供給部
31 ドライエア供給装置
33 供給配管
45 制御部
47 圧力計
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液に浸漬させた後、基板を処理液から引き上げて基板を乾燥させる基板処理方法において、
チャンバー内に収容され、かつ処理槽に貯留された処理液に基板を保持した保持機構を浸漬させる搬入工程と、
前記処理槽内の処理液に基板を浸漬させて、処理液により基板を液処理する液処理工程と、
前記処理槽の液面近傍に備えられた気体供給手段から乾燥用気体を供給させつつ、前記処理槽内の処理液から基板を保持した保持機構を引き上げる搬出工程とを有し、
前記搬出工程は、
前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する搬出時判断工程と、
前記搬出時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する搬出時制御工程とを有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法において、
前記搬出時制御工程は、陽圧及び負圧の状況に対応した乾燥用気体の供給量と基板の処理枚数との関係に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御することを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法において、
前記液処理工程は、
前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する液処理時判断工程と、
前記液処理時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する液処理時制御工程とを有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかにに記載の基板処理方法において、
前記搬入工程は、
前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する搬入時判断工程と、
前記搬入時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する搬入時制御工程とを有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかにに記載の基板処理方法において、
前記搬出工程の後に、前記処理槽内に貯留された処理液を排出する処理液排出工程をさらに有し、
前記処理液排出工程は、
前記チャンバー内を陽圧にすべきか、負圧にすべきかを判断する処理液排出時判断工程と、
前記排出時判断工程における判断結果に基づいて、前記気体供給手段から供給される乾燥用気体の供給量を制御する処理液排出時制御工程とを有することを特徴とする基板処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−204417(P2012−204417A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65128(P2011−65128)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】