説明

基板処理装置、ダミーディスペンス方法及び記憶媒体

【課題】別の処理ユニットからのケミカル雰囲気の進入を抑制できる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板を保持する基板保持部42、及び基板に処理液を供給する供給ノズル61と、この供給ノズル61を待機位置から基板保持部42の上方に旋回させるシャフト63とを有する処理液供給部41を備えた複数の基板処理部22と、基板処理部22の各々を互いに独立して収容する複数のチャンバ43と、待機位置の各々に設けられ、供給ノズル61から吐出される処理液を受ける排液ポート82と、排液ポート82の各々が接続され、複数の基板処理部22で共有される主排液配管81と、排液ポート82と主排液配管81との間の各々に設けられ、主排液配管81からの気体の進入を防ぐ進入防止弁85と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ等の基板に対して洗浄処理のような所定の液処理を行う基板処理装置、ダミーディスペンス方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に処理液を供給して液処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理を挙げることができる。
【0003】
このような基板処理装置としては、半導体ウエハ等の基板をスピンチャックに保持し、基板を回転させた状態でウエハの表面または表裏面に処理液を供給して処理を行う枚葉式の処理ユニットを複数備えたものが多用されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、処理ユニットを複数備えた基板処理装置は、処理ユニット毎に違う処理を行うことがある。このため、各処理ユニットで共有される排液配管や共有空間を介して他の処理ユニットからケミカル雰囲気が進入してきて、処理に影響を及ぼす可能性がある。
【特許文献1】特開2005−93769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、別の処理ユニットからのケミカル雰囲気の進入を抑制できる基板処理装置、ダミーディスペンス方法及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明の第1の態様に係る基板処理装置は、基板を保持する基板保持部、及び基板に処理液を供給する供給ノズルと、この供給ノズルを待機位置から前記基板保持部の上方に旋回させるシャフトとを有する処理液供給部を備えた複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部を互いに独立して収容するとともに、前記基板処理部で共有される共有空間に通じ、前記シャフトが挿通される貫通孔を有する複数のチャンバと、前記待機位置に設けられ、前記供給ノズルから吐出される処理液を受ける排液ポートと、前記排液ポートに接続され、前記複数の基板処理部で共有される主排液配管と、前記排液ポートと前記主排液配管との間に設けられ、前記主排液配管からチャンバ内への気体の進入を防ぐ進入防止弁と、前記貫通孔の周囲に設けられ、前記共有空間と前記チャンバ内との間の気体の往来を防ぐ往来防止機構と、を具備する。
【0007】
この発明の第2の態様に係る基板処理装置は、基板を保持する基板保持部、及び基板に処理液を供給する供給ノズルと、この供給ノズルを待機位置から前記基板保持部の上方に旋回させるシャフトとを有する処理液供給部を備えた複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部を互いに独立して収容する複数のチャンバと、前記待機位置に設けられ、前記供給ノズルから吐出される処理液を受ける排液ポートと、前記排液ポートに接続され、前記複数の基板処理部で共有される主排液配管と、前記排液ポートと前記主排液配管との間に設けられ、前記主排液配管からチャンバ内への気体の進入を防ぐ進入防止弁と、を具備する。
【0008】
この発明の第3の態様に係る基板処理装置は、基板を保持する基板保持部、及び基板に処理液を供給する供給ノズルと、この供給ノズルを待機位置から前記基板保持部の上方に旋回させるシャフトとを有する処理液供給部を備えた複数の基板処理部と、前記複数の基板処理部を互いに独立して収容するとともに、前記基板処理部で共有される共有空間に通じ、前記シャフトが挿通される貫通孔を有する複数のチャンバと、前記貫通孔の各々に設けられ、前記共有空間と前記チャンバ内との間の気体の往来を防ぐ往来防止機構と、を具備する。
【0009】
この発明の第4の態様に係るダミーディスペンス方法は、ダミーディスペンス時に使用される排液ポートと主排液配管との間に水封トラップを備えた基板処理装置のダミーディスペンス方法であって、供給ノズルから処理液を吐出する工程と、前記処理液を吐出した後、前記供給ノズルから純水を吐出し、前記水封トラップの水封体を純水に置換する工程と、を備える。
【0010】
この発明の第5の態様に係るダミーディスペンス方法は、ダミーディスペンス時に使用される排液ポートと主排液配管との間に開閉制御可能なバルブを備えた基板処理装置のダミーディスペンス方法であって、前記開閉制御可能なバルブを開ける工程と、供給ノズルから処理液を吐出する工程と、前記処理液を吐出した後、前記開閉制御可能なバルブを閉める工程と、を備える。
【0011】
この発明の第6の態様に係る記憶媒体は、コンピュータ上で動作し、ダミーディスペンスを制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、第4の態様に係るダミーディスペンス方法が行われるように、コンピュータに基板処理装置を制御させる。
【0012】
この発明の第7の態様に係る記憶媒体は、コンピュータ上で動作し、ダミーディスペンスを制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、第5の態様に係るダミーディスペンス方法が行われるように、コンピュータに基板処理装置を制御させる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、別の処理ユニットからのケミカル雰囲気の進入を抑制できる基板処理装置、ダミーディスペンス方法及び記憶媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。参照する図面全てにわたり、同一の部分については同一の参照符号を付す。
【0015】
図1はこの発明の一実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す平面図、図2は図1のA−A線に沿った正面側の断面図、図3は図1のB−B線に沿った側面側の断面図である。
【0016】
液処理装置100は、複数のウエハWを収容するウエハキャリアCを載置し、ウエハWの搬入・搬出を行う搬入出ステーション(基板搬入出部)1と、ウエハWに洗浄処理を施すための処理ステーション(液処理部)2と、制御機構3とを備えており、これらは隣接して設けられている。
【0017】
搬入出ステーション1は、複数のウエハWを水平状態で収容するウエハキャリアCを載置するキャリア載置部11と、ウエハWの搬送を行う搬送部12と、ウエハWの受け渡しを行う受け渡し部13と、搬送部12および受け渡し部13が収容される筐体14とを有している。
【0018】
キャリア載置部11は4個のウエハキャリアCが載置可能であり、載置されたウエハキャリアCは筐体14の垂直壁部に密着された状態とされ、大気に触れることなくその中のウエハWが搬送部12に搬入可能となっている。
【0019】
搬送部12は、搬送機構15と、その上方に設けられた清浄空気のダウンフローを供給するファン・フィルター・ユニット(図示せず)とを有している。搬送機構15は、ウエハWを保持するウエハ保持アーム15aを有しており、さらに、このウエハ保持アーム15aをウエハキャリアCの配列方向に対する垂直方向であるY方向に移動させる機構、ウエハキャリアCの配列方向であるX方向に延在する水平ガイド17に沿って移動させる機構、垂直方向に設けられた垂直ガイド(図示せず)に沿って移動させる機構、及び水平面内で回転させる機構を有している。搬送機構15は、ウエハキャリアCと受け渡し部13との間でウエハWを搬送する。
【0020】
受け渡し部13は、受け渡しステージ19と、その上に設けられたウエハWを載置可能な載置部を複数備えた受け渡し棚20とを有しており、この受け渡し棚20を介して処理ステーション2との間でウエハWの受け渡しが行われるようになっている。
【0021】
処理ステーション2は直方体状をなす筐体21を有する。筐体21内には、その中央上部にウエハキャリアCの配列方向であるX方向に直交するY方向に沿って延びる搬送路を構成する搬送室21aと、搬送室21aの両側に設けられた2つのユニット室21b、21cとを有している。ユニット室21b、21cにはそれぞれ搬送室21aに沿って8個ずつ合計16個の液処理ユニット22が水平に配列されている。
【0022】
筐体21内のユニット室21b、21cの下には、それぞれ各液処理ユニット22の駆動系を収容した駆動エリア21eが設けられ、さらに、これら駆動エリア21eの下には、それぞれ配管を収容した配管ボックス21gが設けられている。また、配管ボックス21gの下には、薬液供給機構が配置されるユニット室21iが設けられている。一方、搬送室21aの下方は排気のための排気空間21jが設けられている。
【0023】
搬送室21aの上方には、ファン・フィルター・ユニット(FFU)23が設けられ、搬送室21aに清浄空気のダウンフローを供給するようになっている。搬送室21aの内部には搬送機構24が設けられている。搬送機構24は、ウエハWを保持するウエハ保持アーム24aを有しており、このウエハ保持アーム24aをX方向に移動させる機構、搬送室21aに設けられた水平ガイド25に沿ってY方向に移動させる機構、垂直方向に設けられた垂直ガイド(図示せず)に沿って移動させる機構、及び水平面内で回転させる機構を有している。搬送機構24は、各液処理ユニット22に対するウエハWの搬入出を行う。
【0024】
ユニット室21b、21cは、複数の液処理ユニット22で共有される共有空間である。複数の液処理ユニット22が配置される。複数の液処理ユニット22は各々、処理液供給部41と、ウエハWを回転可能に保持するウエハ保持部(基板保持部)42と、処理液供給部41及びウエハ保持部42を収容するチャンバ43とを備えている。チャンバ43は液処理ユニット22毎に設けられており、液処理ユニット22の各々を互いに独立して収容する。
【0025】
ウエハ保持部42は、水平に設けられた円板状の回転プレート51と、その裏面に接続され、下方鉛直に延びる円筒状の回転軸52とを有している。回転軸は回転モータ(図示せず)に接続されている。回転モータは回転プレート51を回転させる。回転プレート51には、ウエハWの外縁を保持する保持部材(図示せず)が設けられている。回転軸52は、軸受け部材53を介してベースプレート44に回転可能に支持されている。
【0026】
回転プレート51を囲繞するように設けられた排気・排液カップ45は、ウエハWの表面から排出される気体及び液体を回収する。排気・廃液カップ45は、図示せぬ排気機構及び排液回収機構に接続されている。排気・排液カップ45の周囲には、排気・排液カップ45及びウエハWの上方を覆うケーシング46が設けられている。ケーシング46の上部にはFFU23からの気流を導入する気流導入部47が設けられており、ウエハ保持部42に保持されたウエハWに清浄空気のダウンフローが供給されるようになっている。気流導入部47には、搬送室21aに繋がる開口47aが形成されており、気流は開口47aを介して導入される。
【0027】
処理液供給部41は、処理液供給ノズル61と、スキャンアーム62と、シャフト63とを備えている。供給ノズル61は、スキャンアーム62の一端に接続されている。シャフト63の一端は、スキャンアーム62の他端に接続されている。チャンバ43の底壁43aにはユニット室21bに通じる貫通孔43bが設けられている。シャフト63はチャンバ43内からユニット室21bに貫通孔43bを介して延びている。シャフト63は、ベースプレート44に設けられた貫通孔44aを介して駆動エリア21eへさらに延び、駆動エリア21eにおいて駆動機構64に接続されている。駆動機構64はシャフト63を回転させる。シャフト63が回転することで、スキャンアーム62の一端に保持された供給ノズル61は、ウエハ保持部42の上方にある処理液供給位置とウエハ保持部42の上方から離れた位置にある待機位置との間で旋回移動可能となっている。さらに、本例の駆動機構64はシャフト63を上下方向に駆動する。供給ノズル61は待機位置から旋回して供給位置に移動し、さらに、供給位置にて降下することでウエハWの表面近傍まで移動する。供給ノズル61は、供給位置にてウエハWの表面に処理液を供給する。処理液を供給する処理液供給機構の一例を図4に示す。
【0028】
図4に示すように、スキャンアーム62内には、処理液供給機構71から供給ノズル61に処理液を流す流路72a乃至72cが設けられている。流路72aの一端は供給ノズル61aに接続され、他端は開閉バルブ73aを介してIPA供給源74aに接続される。同様に、流路72bの一端は供給ノズル61bに接続され、他端は開閉バルブ73bを介してDIW供給源74bに接続される。流路72cの一端は供給ノズル61cに接続され、他端は開閉バルブ73cを介してDHF供給源74c、開閉バルブ73dを介してSC1供給源74d、及び開閉バルブ73eを介してDIW供給源74bに接続される。
【0029】
配管ボックス21gには、処理液配管群(図示せず)、排気配管群(図示せず)、及び排液配管群81が水平方向に配置される。
【0030】
処理液配管群は、特に図示してはいないが、例えば、アンモニア水と過酸化水素を混合して形成されたアンモニア過水(SC1)を供給するSC1配管、希フッ酸(DHF)を供給するDHF配管、イソプロピルアルコール(IPA)を供給するIPA配管、および純水(DIW)を供給する純水配管を有している。
【0031】
排液配管群81は、例えば、酸を排液するための酸排液配管81a、アルカリを排液するためのアルカリ排液配管81b、及び有機系を排液するための有機排液配管81cを有している。これら排液配管81a乃至81cは、複数の液処理ユニット22で共有される共有配管である。チャンバ43内の待機位置には排液ポート82が設けられている。排液ポート82は、処理液の乾燥や変質を防止するために、供給ノズル61により、一定時間毎に実施されるダミーディスペンス時の排液部として使用される。また、排液ポート82は、供給ノズル61が待機位置にあるときに、供給ノズル61からの液だれを受け止める役目も持つ。本例の排液ポート82は、酸又はアルカリ用のポート82aと、有機系用のポート82bとを備える。ポート82aは、ダミーディスペンスライン83aを介して酸排液配管81a、又はアルカリ排液配管81bに接続される。ポート82aを、酸排液配管81aに接続するか、アルカリ排液配管81bに接続するかはスイッチャ84で切り換える。ポート82bは、ダミーディスペンスライン83bを介して有機系排液配管81cに接続される。
【0032】
制御機構3は、ユーザーインターフェース31と、記憶部32と、プロセスコントローラ33とを備える。ユーザーインターフェース31は、操作者が装置100を制御するためにコマンドを入力する入力手段、例えば、キーボードや、操作者に対して稼働状況を可視化して表示する表示手段、例えば、ディスプレイ等を備える。記憶部32は、被処理基板に対する処理を実行するプログラム(レシピ)が格納されている。プロセスコントローラ33は、レシピに従って装置100を制御する。本例のレシピは、記憶部32の中のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであっても良いし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のある記憶媒体であっても良い。また、レシピは記憶媒体に格納するだけでなく、例えば、専用回線を介して他の装置からプロセスコントローラ33に伝送させることも可能である。
【0033】
上述のように、基板処理装置100は液処理ユニット22を複数備えており、液処理ユニット22毎に違う処理が行われることがある。この場合には、各液処理ユニット22で共有される主排液配管(排液配管81a乃至81c)や共有空間(ユニット室21b、21c)を介して他の処理ユニットからケミカル雰囲気が進入してきて、処理に影響を及ぼす可能性がある。参考例を図5に示す。
【0034】
図5に示すように、例えば、有機系排液配管81cに排液86が流れていた、とする。排液86は蒸発するから、有機系排液配管81c内にはケミカル雰囲気87が漂っている。この状況は、酸排液配管81aやアルカリ排液配管81bでも同様である。有機系排液配管81c内を漂うケミカル雰囲気87は、参照符号200に示すように、ダミーディスペンスライン83bを上昇し、排液ポート82bを介してチャンバ43の内部に放出されて拡散する。チャンバ43の内部に拡散したケミカル雰囲気は、チャンバ43の内部で行われる処理に影響を与える可能性がある。
【0035】
そこで、本実施形態では、図2及び図3に示されるように、ダミーディスペンスライン81a及び81b各々に、排液配管81a乃至81cからのケミカル雰囲気の進入を防ぐ進入防止弁85を設けるようにした。
【0036】
(進入防止弁の一例)
進入防止弁85の一例は、例えば、図6に示す水封トラップ85aである。水封トラップ85aに水封体(液体)88を溜めておくことで、排液配管81a乃至81cからのケミカル雰囲気を遮断することができる。よって、チャンバ43の内部への、排液ポート82a及び82bを介したケミカル雰囲気の拡散を防止でき、チャンバ43の内部においては、清浄度の高い処理を行うことができる。
【0037】
本実施形態では、水封トラップ85aを使用した際に、さらに清浄度の高い処理を行うために、ダミーディスペンス時に、以下に説明するような工夫をした。工夫されたダミーディスペンスの流れの一例を図7に示す。
【0038】
図7に示すように、まず、ダミーディスペンスを行う前に、ステップST.1、2に示すように、スキャンアームが待機位置にあるか否かを確認する。スキャンアームが待機位置にきたら、ステップST.3に示すように、処理液を吐出する(ダミーディスペンス)。処理液吐出終了後、ステップST.4に示すように、純水(DIW)を吐出する。DIWを吐出することで、水封トラップ85aの水封体88をDIWに置換する。DIWに置換され次第、ダミーディスペンスは終了される。
【0039】
このように、本実施形態では、ダミーディスペンスを実施したら、水封体88をDIWに置換するようにする。
【0040】
もし、水封体88がDHFのような酸、又はSC1のようなアルカリ、又はIPAのような有機系液体であったならば、水封体88自身からケミカル雰囲気が発生してしまう可能性がある。このような可能性は、水封体88をDIWに置換しておくことで解消できる。
【0041】
また、図7に示したような流れをレシピに組み込み、上記ダミーディスペンスを図1に示した制御機構3のプロセスコントローラ33に実行させると、チャンバ43の内部の清浄度を悪化させないダミーディスペンスを実施できる。
【0042】
(進入防止弁の他例)
進入防止弁85は、水封トラップ85aに限られるものではない。例えば、開閉制御可能なバルブを用いることも可能である。開閉制御可能なバルブの例としては、エア・オペレーショナル・バルブを挙げることができる。
【0043】
開閉制御可能なバルブを、進入防止弁85に用いた場合には、ダミーディスペンスの流れを図8に示すような流れとすると、チャンバ43の内部の清浄度を悪化させないダミーディスペンスを実施することができる。
【0044】
図8に示すように、図7に示した流れと同様に、ステップST.11、12に示すように、スキャンアームが待機位置にあるか否かを確認する。スキャンアームが待機位置にきたら、バルブを開けて(ST.13)、ステップST.14に示すように、処理液を吐出する(ダミーディスペンス)。処理液吐出終了後、ステップST.15に示すように、バルブを閉めて、ダミーディスペンスを終了する。
【0045】
このように開閉制御可能なバルブを進入防止弁85に用いた場合には、例えば、ダミーディスペンスの時のみバルブを開け、これ以外の時にはバルブを閉めておくようにする。これにより、チャンバ43の内部への、排液ポート82a及び82bを介したケミカル雰囲気の拡散を防止することができる。
【0046】
また、図8に示したような流れをレシピに組み込み、図1に示した制御機構3のプロセスコントローラ33に実行させると、チャンバ43の内部の清浄度を悪化させないダミーディスペンスを実施することができる。
【0047】
上述の図5には、他のケミカル雰囲気の侵入経路が示されている。他の侵入経路とは、基板処理部で共有される共有空間に通じる箇所である。このような箇所は、他の基板処理部と雰囲気が通じ合う可能性がある。本実施形態ではその一例として、シャフト63を挿通させるための、底壁43aに形成された貫通孔43bを示す。
【0048】
チャンバ43の内部で処理をしている際に発生したケミカル雰囲気は、参照符号201に示すように、貫通孔43bを介して共有空間であるユニット室21b(又は21c)に漏れ出てしまう。さらに、貫通孔43bは、参照符号202に示すように、ユニット室21bを漂うケミカル雰囲気を、チャンバ43の内部に引き込んでしまう。
【0049】
そこで、本実施形態では、他の基板処理部と雰囲気が通じ合う可能性があるところに、雰囲気の往来を防ぐ往来防止機構を設けるようにした。この往来防止機構の一例を図2及び図3に示す。図2及び図3に示すように、一例に係る往来防止機構91は、貫通孔43bの周囲に設けられ、ユニット室21b(又は21c)とチャンバ43の内部との間で雰囲気の往来を防ぐ。図9に、処理液供給部41及び貫通孔43bの近傍を拡大した拡大図を示しておく。
【0050】
(往来防止機構の第1例)
第1例に係る往来防止機構を図10に、また、第1例に係る往来防止機構の分解斜視図を図11に示す。
【0051】
図10及び図11に示すように、第1例に係る往来防止機構91aは、貫通孔43bの周囲に沿って設けられた環状溝92と、シャフト63に設けられ、環状溝92に嵌り合う環状部位94を有した往来防止キャップ93と、を備える。本例の往来防止キャップ93は、特に図示しないが、ねじなどの固定部材を用いてシャフト63に固定される。シャフト63は中空軸となっているが、その中空部には、例えば、図4に示した流路72a乃至72cなどが通される。
【0052】
第1例に係る往来防止機構91は、チャンバ43の内部とユニット室21b(又は21c)との間の気体の往来経路300が、上がる部分と下がる部分とが交互に繰り返された、いわゆるラビリンス構造である。往来経路をラビリンス構造とすることで、チャンバ43の内部の雰囲気がユニット室21bに漏れにくくなるとともに、ユニット室21bの雰囲気がチャンバ43の内部に侵入し難くなる。
【0053】
このような第1例に係る往来防止機構91を備えた装置100によれば、チャンバ43の内部での処理の際に発生したケミカル雰囲気が漏れにくくなり、しかも、ユニット室21bを漂うケミカル雰囲気を、チャンバ43の内部に引き込みにくくなるので、別の処理ユニットからのケミカル雰囲気の進入を抑制できる基板処理装置を得ることができる。
【0054】
また、溝92、及び溝92に嵌り合う部位94をそれぞれ環状とすることで、シャフト63が回転した場合でも、上記ラビリンス構造が崩れることはない。
【0055】
(往来防止機構の第2例)
シャフト63は、基本的に回転すれば良い。しかしながら、一実施形態のように、シャフト63を回転させるとともに上下動させる場合もある。シャフト63が、回転かつ上下動する場合において、図12に示すように、シャフト63が最高位置まで上昇すると、環状溝92と環状部位93との嵌り具合が浅くなってしまうことがある。嵌り具合が浅くなると、チャンバ43の内部とユニット室21bとの間の気体の往来を防止する効果が弱まってしまう。
【0056】
これを防ぎたい場合には、本第2例に係る往来防止機構を採用すると良い。第2例に係る往来防止機構を図13に示す。
【0057】
図13に示すように、第2例に係る往来防止機構91bは、第1例に係る往来防止機構91aの環状溝92と、環状部位94を有した往来防止キャップ93とに加えて、環状溝92が設けられた面と反対の面に、貫通孔43bの周囲に沿って設けられた環状突起95と、シャフト63に設けられ、環状突起95に被さり合う環状部位97を有した第2の往来防止キャップ96を備えたものである。
【0058】
図13に示す状態は、シャフト63の位置が最も低い状態である。この状態では、往来防止キャップ93と環状溝92とが深く嵌り合う。図14に、シャフト63の位置が最も高い状態を示す。図14に示すように、シャフト63の位置が最も高い状態では、反対に第2の往来防止キャップ96が環状突起95に深く嵌り合う。結果として、シャフト63が上下動しても、往来防止キャップ93か、第2の往来防止キャップ96かのいずれかが、環状溝92、又は環状突起95のいずれかに深く嵌り合う。
【0059】
このように第2例に係る往来防止機構91bによれば、シャフト63が上下動しても、嵌り具合が浅くなってしまう事情が解消され、チャンバ43の内部とユニット室21bとの間の気体の往来を防止する効果を、常に高い状態に維持できる。
【0060】
なお、図1乃至図3に示した処理装置100の往来防止機構91は、本第2例が採用されている。
【0061】
(往来防止機構の第3例)
図15は、第3例に係る往来防止機構を示す断面図である。
【0062】
図15に示すように、第3例に係る往来防止機構91cは、第2例に係る往来防止機構91bから、環状溝92と往来防止キャップ93とを取り除いたものである。
【0063】
このような往来防止機構91cにおいても、例えば、第1例に係る往来防止機構91aと同様な効果を得ることができる。
【0064】
(往来防止機構の第4例)
図16は、第4例に係る往来防止機構を示す断面図である。
【0065】
図16に示すように、第4例に係る往来防止機構91dは、環状溝92の内部に不活性ガスを供給する供給機構97を備えたものである。環状溝92には環状部位94が嵌り合う。このような環状溝92に不活性ガス、例えば、窒素などを吹き付けると、環状部位94によってチャンバ43の内部に向かう流れ301aと、ユニット室21bに向かう流れ301bとの二通りの流れが形成される。流れ301aは、チャンバ43の内部からユニット室21bに漏れだそうとする流れを阻止する。また、流れ301bはユニット室21bからチャンバ43の内部に侵入しようとする流れを阻止する。結果として、チャンバ43とユニット室21bとの間の気体の往来を、より強く抑制することができる。
【0066】
以上、この発明を一実施形態により説明したが、この発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、また、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0067】
例えば、処理液としてSC1、DHF、IPAを用いた例を示したが、これに限るものではない。
【0068】
また、往来防止機構として、シャフト63を挿通させるための貫通孔43bの周囲に形成されたものを例示したが、往来防止機構は貫通孔43の周囲に設けられるばかりではなく、他の基板処理部と雰囲気が通じ合う可能性があるところであれば、いかなるところに設けられても良い。
【0069】
また、液処理ユニットの構成も上記のようなものに限るものではなく、例えば表面洗浄のみまたは裏面洗浄のみのものであってもよく、さらには洗浄処理に限らず、他の液処理であっても適用可能である。さらに、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の一実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す平面図
【図2】図1のA−A線に沿った正面側の断面図
【図3】図1のB−B線に沿った側面側の断面図
【図4】処理液供給機構の一例を示す図
【図5】参考例を示す断面図
【図6】進入防止弁の一例を示す断面図
【図7】ダミーディスペンスの流れを示す流れ図
【図8】ダミーディスペンスの流れを示す流れ図
【図9】処理液供給部及び貫通孔の近傍を拡大して示す拡大図
【図10】第1例に係る往来防止器機構を示す断面図
【図11】第1例に係る往来防止器機構を示す分解斜視図
【図12】第1例に係る往来防止器機構が持つ事情を示す断面図
【図13】第2例に係る往来防止器機構を示す断面図(最低位置)
【図14】第2例に係る往来防止器機構を示す断面図(最高位置)
【図15】第3例に係る往来防止器機構を示す断面図
【図16】第4例に係る往来防止器機構を示す断面図
【符号の説明】
【0071】
22…液処理ユニット、41…処理液供給部、42…ウエハ保持部、43…チャンバ、43b…貫通孔、61…ノズル、63…シャフト、43…チャンバ、82…排液ポート、81…排液配管、85…進入防止弁、91…往来防止機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部、及び基板に処理液を供給する供給ノズルと、この供給ノズルを待機位置から前記基板保持部の上方に旋回させるシャフトとを有する処理液供給部を備えた複数の基板処理部と、
前記複数の基板処理部を互いに独立して収容するとともに、前記基板処理部で共有される共有空間に通じ、前記シャフトが挿通される貫通孔を有する複数のチャンバと、
前記待機位置に設けられ、前記供給ノズルから吐出される処理液を受ける排液ポートと、
前記排液ポートに接続され、前記複数の基板処理部で共有される主排液配管と、
前記排液ポートと前記主排液配管との間に設けられ、前記主排液配管からチャンバ内への気体の進入を防ぐ進入防止弁と、
前記貫通孔の周囲に設けられ、前記共有空間と前記チャンバ内との間の気体の往来を防ぐ往来防止機構と、
を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板を保持する基板保持部、及び基板に処理液を供給する供給ノズルと、この供給ノズルを待機位置から前記基板保持部の上方に旋回させるシャフトとを有する処理液供給部を備えた複数の基板処理部と、
前記複数の基板処理部を互いに独立して収容する複数のチャンバと、
前記待機位置に設けられ、前記供給ノズルから吐出される処理液を受ける排液ポートと、
前記排液ポートに接続され、前記複数の基板処理部で共有される主排液配管と、
前記排液ポートと前記主排液配管との間に設けられ、前記主排液配管からチャンバ内への気体の進入を防ぐ進入防止弁と、
を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
基板を保持する基板保持部、及び基板に処理液を供給する供給ノズルと、この供給ノズルを待機位置から前記基板保持部の上方に旋回させるシャフトとを有する処理液供給部を備えた複数の基板処理部と、
前記複数の基板処理部を互いに独立して収容するとともに、前記基板処理部で共有される共有空間に通じ、前記シャフトが挿通される貫通孔を有する複数のチャンバと、
前記貫通孔の各々に設けられ、前記共有空間と前記チャンバ内との間の気体の往来を防ぐ往来防止機構と、
を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
前記進入防止弁が、水封トラップであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記進入防止弁が、開閉制御可能なバルブであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記往来防止機構が、
前記貫通孔の周囲に沿って設けられた環状溝と、
前記環状溝が設けられた面と反対の面に、前記貫通孔の周囲に沿って設けられた環状突起と、
前記シャフトに設けられ、前記環状溝に嵌り合う環状部位を有した第1の往来防止キャップと、
前記シャフトに設けられ、前記環状突起に被さり合う環状部位を有した第2の往来防止キャップと、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記進入防止機構が、
前記貫通孔の周囲に沿って設けられた環状溝と、
前記シャフトに設けられ、前記環状溝に嵌り合う環状部位を有した往来防止キャップと、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記環状溝の内部に不活性ガスを供給する供給機構を、さらに備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記進入防止機構が、
前記貫通孔の周囲に沿って設けられた環状突起と、
前記シャフトに設けられ、前記環状突起に被さり合う環状部位を有した往来防止キャップと、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項10】
ダミーディスペンス時に使用される排液ポートと主排液配管との間に水封トラップを備えた基板処理装置のダミーディスペンス方法であって、
供給ノズルから処理液を吐出する工程と、
前記処理液を吐出した後、前記供給ノズルから純水を吐出し、前記水封トラップの水封体を純水に置換する工程と、
を備えることを特徴とするダミーディスペンス方法。
【請求項11】
ダミーディスペンス時に使用される排液ポートと主排液配管との間に開閉制御可能なバルブを備えた基板処理装置のダミーディスペンス方法であって、
前記開閉制御可能なバルブを開ける工程と、
供給ノズルから処理液を吐出する工程と、
前記処理液を吐出した後、前記開閉制御可能なバルブを閉める工程と、
を備えることを特徴とするダミーディスペンス方法。
【請求項12】
コンピュータ上で動作し、ダミーディスペンスを制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、請求項10に記載のダミーディスペンス方法が行われるように、コンピュータに基板処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項13】
コンピュータ上で動作し、ダミーディスペンスを制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、請求項11に記載のダミーディスペンス方法が行われるように、コンピュータに基板処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−43868(P2009−43868A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206199(P2007−206199)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】