説明

基板処理装置、及び、基板処理装置に用いられる反応管の表面へのコーティング膜の形成方法

【課題】CIS系太陽電池の光吸収層形成のためのセレン化又は硫化処理を行う基板処理装置において、石英製のチャンバーと比較して、加工が容易な炉体を有する基板処理装置また、取り扱いが容易なチャンバーを提供する。
【解決手段】銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムのいずれか一つからなる積層膜が形成された複数の基板を収納する処理室と、処理室を構成するように形成される反応管と、処理室にセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスを導入するガス供給管と、処理室内の雰囲気を排気する排気管と、反応管を囲うように設けられた加熱部と、を具備し、反応管の基材は、ステンレス等の金属材料で形成され、反応管の表面は、酸化クロム及びシリカの混合物を主成分とする5%から15%の空間率を有するポーラス状のコーティング膜が形成される基板処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、及び、その基板処理装置を用いた太陽電池の製造方法、ならびに、その基板処理装置に用いられる反応管の表面へのコーティング膜の形成方法に係り、特に、セレン化物系CIS太陽電池の光吸収層を形成するための基板処理装置、及び、これを用いたセレン化物系CIS太陽電池の製造方法、ならびに、セレン化物系CIS太陽電池の光吸収層を形成するための基板処理装置に用いられる反応管のコーティング膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セレン化物系CIS太陽電池は、ガラス基板、金属裏面電極層、CIS系光吸収層、高抵抗バッファ層、窓層が順に積層される構造を有する。ここでCIS系光吸収層は、銅(Cu)/ガリウム(Ga)、Cu/インジウム(In)、若しくは、Cu−Ga/Inのいずれか一つの積層構造をセレン化することにより形成される。このように、セレン化物系CIS太陽電池は、シリコン(Si)を用いずに光吸収係数の高い膜を形成できるため、基板を薄くできると共に製造コストを下げることができるという特徴を有する。
【0003】
ここで、セレン化を行う装置の一例として、特許文献1がある。特許文献1に記載されるセレン化装置は、ホルダーにより複数の平板状の対象物を一定の間隔を設けて、円筒状の石英チャンバーの長軸方向に平行にかつその板面を垂直に配置し、セレン源を導入することにより、対象物のセレン化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−186114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にも記載されるように、セレン化を行う基板処理装置では、石英製のチャンバー(炉体)を用いている。しかしながら、石英製のチャンバーは、その加工が難しいため製造コストが高い上、長期間の納期を有するという問題がある。また、非常に割れやすいため、その取り扱いが難しい。特に、CIS太陽電池では、その基板が非常に大きい(特許文献1では300mm×1200mm)ため、炉体自体を大きくしなければならず、上述の問題点がより顕著となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、石英製のチャンバーと比較して、加工が容易な炉体を有する基板処理装置を提供することにある。また、石英製のチャンバーと比較して、取り扱いが容易なチャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムのいずれか一つからなる積層膜が形成された複数の基板を収納する処理室と、前記処理室を構成するように形成される反応管と、前記処理室にセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスを導入するガス供給管と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気管と、前記反応管を囲うように設けられた加熱部とを具備し、前記反応管の前記処理室側の表面のうち、少なくとも前記セレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスに曝される表面は、酸化クロム(Cr:x,yは1以上の任意の整数)及びシリカ(Si:x,yは1
以上の任意の整数)の混合物を主成分とする5%から15%の空間率を有するポーラス状のコーティング膜を有する基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の他の一態様によれば、銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムの何れか一つからなる積層膜が形成された複数の基板をセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスの雰囲気に曝すための処理室を形成する反応管の表面へのコーティング膜の形成方法であって、前記反応管の基材の表面を脱脂、及び、洗浄する洗浄工程と、前記反応管の基材の表面をブラスティングし、基材表面を粗面化する粗面化工程と、前記粗面化された基材の表面に酸化クロム(Cr:x,yは1以上の任意の整数)及びシリカ(Si:x,yは1以上の任意の整数)の混合物のスラリーを塗布する塗布工程と、前記スラリーを塗布した基材を所定の温度で焼成する焼成工程と、前記焼成工程後の基材を化学緻密化処理剤を含侵させる含侵工程とを具備し、前記塗布工程、前記焼成工程、及び、前記含侵工程を所定回数繰り返す前記反応管の表面へのコーティング膜の形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
石英製のチャンバーと比較して、加工が容易な炉体が実現できる。また、石英製のチャンバーと比較して、取り扱いが容易な炉体が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る処理炉の側面断面図である。
【図2】図1の紙面左方向から見た処理炉の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るコーティング膜を説明する図である。
【図4】本発明のコーティング膜と反応炉の基材の線膨張係数の違いによる効果を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る処理炉の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明に係るセレン化処理を行う基板処理装置に組み込まれる処理炉10の側面断面図を示している。また、図2は、図1の紙面左側から見た処理炉の断面図を示している。
【0012】
処理炉10は、ステンレス等の金属材料で形成される炉体としての反応管100を有する。反応管100は、中空の円筒形状をしており、その一端が閉塞し、他端が開口する構造を有する。反応管100の中空部分により、処理室30が形成される。反応管100の開口側には、反応管100と同心円上に、その両端が開口した円筒形状のマニホールド120が設けられる。反応管100とマニホールド120との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。
【0013】
マニホールド120の反応管100が設けられない開口部には、可動性のシールキャップ110が設けられる。シールキャップ110は、ステンレス等の金属材料で形成され、マニホールド120の開口部に、その一部が挿入される凸型形状をしている。可動性のシールキャップ110とマニホールド120との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられ、処理を行う際には、シールキャップ110が反応管100の開口側を気密に閉塞する。
【0014】
反応管100の内部には、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)を含有する積層膜が形成された複数のガラス基板(例えば、30〜40枚)を保持するカセット410を載置するためのインナーウォール400が設けられる。インナーウォール400
は、図3に示されるように、その一端が反応管100の内周面に固定されると共に、反応管100の中心部にカセット410が設置台420を介して載置されるように構成される。インナーウォール400は、カセット410を挟むように一対の部材がその両端で繋がるように構成され、その強度を高くしている。カセット410は、図1に示されるように、ガラス基板20の両端に、複数のガラス基板20を立てた状態で横方向に並んで保持可能な保持部材を有する。また、両端の保持部材をその下面側に設けられた一対の固定棒にて固定するようにし、複数のガラス基板の下端の側面部は反応室内に露出するようになっている。なお、カセット410の両端を固定する固定棒を、両端の保持部材の上端側にも設け、カセット410の強度を高めても良い。
【0015】
また、反応管100を囲うように一端が閉塞し、他端が開口する中空の円筒形状をした炉体加熱部200が設けられる。また、シールキャップ110の反応管100と反対側の側面には、キャップ加熱部210が設けられる。この炉体加熱部200とキャップ加熱部210により処理室30内が加熱される。なお、炉体加熱部200は、図示しない固定部により反応管100に固定され、キャップ加熱部210は、図示しない固定部によりシールキャップ110に固定される。また、シールキャップ110やマニホールド120には、耐熱性の低いOリングを保護するため図示しない水冷との冷却手段が設けられる。
【0016】
マニホールド120には、セレン元素含有ガス(セレン化源)としての水素化セレン(以下、「HSe」)を供給するためのガス供給管300が設けられる。ガス供給管300から供給されたHSeは、ガス供給管300からマニホールド120とシールキャップ110との間の間隙を介して処理室30へ供給される。また、ガス供給管300の反対側のマニホールド120には、排気管310が設けられる。処理室30内の雰囲気は、マニホールド120とシールキャップ110との間の間隙を介して排気管310より排気される。なお、上述の冷却手段により冷却される箇所は、150℃以下まで冷却すると、その部分に未反応のセレンが凝縮してしまうため、150℃から170℃程度に温度制御すると良い。
【0017】
ここで、本発明の反応管100は、ステンレス等の金属材料で形成されている。ステンレス等の金属材料は、石英と比較して加工が容易である。よって、CIS系太陽電池のセレン化処理を行う基板処理装置に用いられるような大型の反応管100を容易に製造することが可能となる。従って、反応管100内に収納できるガラス基板の数を多くすることができ、CIS系太陽電池の製造コストを下げることができる。
【0018】
更に、本実施形態では、反応管100の少なくとも処理室30内の雰囲気に曝される表面は、図3(a)で示されるように、反応管100の基材101となるステンレス等の金属材料の上に、ステンレス等の金属材料と比較してセレン化耐性の高いコーティング膜が形成される。広く用いられるステンレス等の金属材料は、HSe等のガスが200℃以上に加熱されると、非常に高い反応性により腐食してしまうが、本実施形態のようにセレン化耐性の高いコーティング膜を形成することにより、HSe等のガスによる腐食を抑制できため、広く用いられるステンレス等の金属材料を用いることができ、基板処理装置の製造コストを下げることが可能となる。なお、このセレン化耐性の高いコーティング膜としては、セラミックを主成分とするコーティング膜が挙げられる。
【0019】
次に、セラミックを主成分とするコーティング膜として、反応管100の基材であるステンレスの上に(1)1〜2μmのシリカ(SiO)膜、(2)1〜2μmの酸化クロム(Cr)膜、(3)70μmのCrO3+SiO膜、(4)アルミナ(Al)を溶射し、その後SiOにより封孔処理を行った100μmのAl+SiO膜の4種類の膜を形成し、HSe(4%)及びAr(96%)のセレン化雰囲気内に曝すことにより、セレン化耐性について実験を行った。なお、温度は650度とし、
1回当たりの時間は1時間とした。その結果を表1に示す。
【表1】

まず、(2)のCr膜と(4)のAl+SiO膜は、セレン化雰囲気に1回曝しただけで剥れが生じてしまった。(1)のSiO膜は、1回曝しただけでは剥がれは生じなかったが、10回繰り返した後の表面をみると変色を起こしており、また、部分的な剥れが生じていた。一方、(3)のCr+SiO膜では、10回繰り返したとしても剥れは生じていなかった。
【0020】
上述の結果は、Cr+SiO膜が図3(b)のようにポーラス状の膜となっていることが影響しているものと考えられる。なお、図3(b)は、反応管の基材101であるステンレス上にCr+SiO膜をコーティングした部材の断面SEM写真である。このように、コーティング膜をポーラス状の膜とすることにより、反応管100のステンレス等の金属材料で形成される基材101とコーティング膜102との線膨張係数の違いによる熱膨張・収縮に柔軟に追従することが可能となり、剥れなかったものと考えられる。ここで、コーティング膜102は、5%〜15%の空間率を有するポーラス状の膜が望ましい。5%以下であると、熱膨張・収縮に柔軟に追従することが困難であり、また、15%以上とすると、基材であるステンレス材にセレン化源が到達してしまう恐れがある。なお、空間率は、図3(b)に示されるようなコーティング膜の断面のSEM写真から空間となっている部分の面積を推定することにより算出することができる。
【0021】
一方、(1)のSiO膜、及び、(2)のCr膜は、非常に緻密な膜であるが故、ステンレス等の金属材料である基材101の熱膨張に追従できず、応力による剥離が生じたものと考えられる。また、(4)のAl+SiO膜については、環境遮断性能が不足しており、セレン化源が皮膜内部を経由して、基材境界界面に到達したことにより基材表面に腐食を発生させ、剥離につながったと考えられる。
【0022】
図3(c)は、上述の試験を行った後のCr+SiO膜表面のSEM写真である。熱処理を繰り返したことによる数μm〜数十μmの微小亀裂が発生していることが分かるが、外観上は全く剥がれるような兆候はなくコーティング膜として十分機能していることがわかる。
【0023】
さらにコーティング膜のセレン化耐性の寿命を調べるため、セレン化処理を繰り返した際の界面およびコーティング膜中に蓄積あるいは酸化膜からセレン化膜に変化した際のSe量を評価した。図4は、セレン化処理サイクル数と界面およびコーティング膜中に蓄積あるいは酸化膜からセレン化膜に変化した際のSe量を比較した図を示す。
【0024】
上記図3(c)で説明したように、SUS304の上に形成したコーティング膜でも微小亀裂は発生するものの全く剥がれる兆候は見られなかったが、図4においても450℃において1000回まで処理を行ったが全く剥がれの兆候は見えなかった。界面のSeは飽和傾向を示しこれ以上セレン化処理を行っても増加の程度は僅かになると推定される。年間の稼働率を考慮すれば、図4での1000回の結果は、量産における約1年間セレン化処理を行った場合の結果に相当する。ここでは1000回までしか検証出来なかったが、これから処理回数を増やしてもコーティングの状態に変動が見られないことから、原理
的には何倍も寿命があると推定できる。
【0025】
以上のことから、セレン化処理装置の処理炉を大型化するためにステンレス等の金属材料を反応管の基材とした場合、シリカと酸化クロムの混合物を主成分とする5%から15%の空間率を有するポーラス状のコーティング膜を反応管の表面に形成することで、処理炉の長寿命化を図ることが可能となる。なお、上述の説明では、シリカをSiOとして、酸化クロムをCrとして説明したが、シリカは、Si(x,yは1以上の任意の整数)であればよく、酸化クロムは、Cr(x,yは1以上の任意の整数)であればよい。
【0026】
また、シールキャップ110、マニホールド120、ガス供給管300、及び、排気管310も同様にセレン化源に曝される部分を上述のコーティング膜を形成しても良い。但し、Oリング等を保護するために冷却手段により200℃以下に冷却されている部分は、ステンレス等の金属材料がセレン化源と接触しても反応しないためコーティングしなくとも良い。
【0027】
次に、コーティング膜であるポーラス状のCr+SiO膜の形成方法について説明する。
まず、反応管の基材101となるステンレス等の金属材料の表面の汚れ等を除去するために、基材の表面の脱脂・洗浄を行った後、基材表面をブラスティングし、基材表面を粗面化する。その後、シリカ(Si)と酸化クロム(Cr)を主成分とする混合物のスラリーを塗布し(塗布工程)、500℃から650℃で焼成する(焼成工程)。更に、前記焼成工程時に発生する微小亀裂に化学緻密化処理剤を含侵させる(含侵工程)。この塗布工程、焼成工程、含侵工程を繰り返すことによりコーティング膜を形成する。
このように塗布工程、焼成工程、含侵工程を繰り返すと、ステンレス基材とコーティング膜との界面の近傍にFeCr系の酸化物層を形成することができる。この酸化物層は、基材境界界面の腐食を抑止する効果を有しており、よりセレン化源によるステンレス基材の腐食を抑制することができる。
【0028】
次に、本実施形態の処理炉を用いて行う、CIS系太陽電池の製造方法の一部である基板の製造方法について説明する。
【0029】
まず、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)を含有する積層膜が形成された30枚から40枚のガラス基板をカセット410を準備し、可動性のシールキャップ110をマニホールド120から外した状態で、カセット410を処理室に搬入する(搬入工程)。カセットの搬入は、例えば、図示しない搬入出装置のアームによりカセット下部を支持し、持ち上げた状態で、カセット410を処理室30内に移動し、所定の位置に到達した後、当該アームを下方に移動させカセット410を設置台420に載置することにより行われる。
【0030】
その後、処理室30内を窒素ガス等の不活性ガスで置換する(置換工程)。不活性ガスで処理室30内の雰囲気を置換した後、常温の状態で、不活性ガスにて1〜20%(望ましくは、2〜10%)に希釈したHSeガス等のセレン化源をガス供給管300から導入する。次に、上記セレン化源を封じ込めた状態、若しくは、排気管310から一定量排気することにより上記セレン化源が一定量フローした状態で、400〜550℃、望ましくは450℃〜550℃まで、毎分3〜15℃で昇温する。所定温度まで昇温した後、10〜180分間、望ましくは、20〜120分間保持することにより、セレン化処理が行われ、CIS系太陽電池の光吸収層が形成される(形成工程)。
【0031】
その後、ガス供給管300から不活性ガスを導入し、処理室30内の雰囲気を置換し、
また、所定温度まで降温する(降温工程)。所定温度まで降温した後、シールキャップ110を移動させることにより、処理室30を開口し、図示しない搬入出装置のアームにてカセット410を搬出する(搬出工程)ことにより一連の処理が終了する。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、図1及び図2に示される処理炉10の他の実施形態を図5を用いて説明する。図5では、図1及び図2と同一の機能を有する部材には同一番号を付してある。また、ここでは、第1の実施形態と相違する点について主に説明する。
【0033】
図5に示す第2の実施形態では、複数のガラス基板20を保持するカセット410を一つのみ載置した第1の実施形態と異なり、複数のカセット410(ここでは、3つ)を複数のガラス基板の表面と平行な方向に並べて配置している点が異なる。
【0034】
本発明では、従来の石英製の反応管を用いるのではなく、ステンレス等の金属材料を反応管100の基材として用いている。従って、反応管100を大型化したとしても、石英製と比較してその成型が容易であり、また、そのコストの増加も石英製と比較して小さい。そのため、一度の処理できるガラス基板20の数を多くすることができ、CIS系太陽電池の製造コストを下げることができる。
【0035】
また、ステンレス等の金属材料を反応管の基材として使用することにより、石英製の反応管と比較して、その取り扱いも容易であり、反応管を大型化をすることができる。
【0036】
第1の実施形態及び第2の実施形態における本発明では、以下に記す効果のうち少なくとも一つを実現できる。
(1)酸化クロム及びSiOを主成分とする空間率が5%から15%のポーラス状のコーティング膜102を反応管100の基材101の上に形成することにより、セレン化耐性に優れた反応管100を形成でき、また、反応管100を金属材料で形成できるため大型の反応管100を実現することができる。
(2)上記(1)において、反応管100内には、複数のガラス基板20を保持するカセット410をガラス基板20の表面と平行な方向に並んで複数は位置することにより、一度に処理できるガラス基板の数を多くすることができ、CIS系太陽電池の製造コストを小さくすることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を図面を用いて説明してきたが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、様々な変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)が形成された複数のガラス基板をセレン化処理することで説明したが、これに限らず、銅(Cu)/インジウム(In)や銅(Cu)/ガリウム(Ga)等が形成された複数のガラス基板をセレン化処理するようにしてもよい。また、本実施形態では、金属材料との反応性の高いセレン化について言及したが、CIS系太陽電池では、セレン化処理に変えて、若しくは、セレン化処理の後に硫黄元素含有ガスを供給し硫化処理を行う場合もある。その際も、本実施形態の大型反応炉を用いることにより、一度に硫化処理をできる枚数を増やすことができるため、製造コストの低下を実現できる。
【0038】
最後に本発明の好ましい主な態様を以下に付記する。
【0039】
(1)銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムのいずれか一つからなる積層膜が形成された複数の基板を収納する処理室と、前記処理室を構成するように形成される反応管と、前記処理室にセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスを導入するガス供給管と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気管と、前記反応管を囲うように設けられた加熱部とを具備し、前記反応管の前記処理室側の表面のうち、少なくとも前記セ
レン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスに曝される表面は、酸化クロム(Cr:x,yは1以上の任意の整数)及びシリカ(Si:x,yは1以上の任意の整数)の混合物を主成分とする5%から15%の空間率を有するポーラス状のコーティング膜を有する基板処理装置。
(2)上記(1)において、前記反応管の基材の金属材料は、ステンレスである基板処理装置。
(3)上記(2)において、前記コーティング膜は、前記反応管の基材との境界近傍に、FeCr系の酸化物層を有する基板処理装置。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一つにおいて、前記カセットは、前記複数の基板の表面と平行方向に複数配置される基板処理装置。
(5)銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムの何れか一つからなる積層膜が形成された複数の基板をセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスの雰囲気に曝すための処理室を形成する反応管の表面へのコーティング膜の形成方法であって、
前記反応管の基材の表面を脱脂、及び、洗浄する洗浄工程と、
前記反応管の基材の表面をブラスティングし、基材表面を粗面化する粗面化工程と、
前記粗面化された基材の表面に酸化クロム(Cr:x,yは1以上の任意の整数)及びシリカ(Si:x,yは1以上の任意の整数)の混合物のスラリーを塗布する塗布工程と、
前記スラリーを塗布した基材を所定の温度で焼成する焼成工程と、
前記焼成工程後の基材を化学緻密化処理剤を含侵させる含侵工程とを具備し、
前記塗布工程、前記焼成工程、及び、前記含侵工程を所定回数繰り返す前記反応管の表面へのコーティング膜の形成方法。
【符号の説明】
【0040】
10:処理炉、20:ガラス基板、30:処理室、100:反応管、101:基材、102:コーティング膜、110:シールキャップ、120:マニホールド、200:炉体加熱部、210:キャップ加熱部、300:ガス供給管、310:排気管、400:インナーウォール、410:カセット、420:設置台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムのいずれか一つからなる積層膜が形成された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室を構成するように形成される反応管と、
前記処理室にセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスを導入するガス供給管と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気管と、
前記反応管を囲うように設けられた加熱部とを具備し、
前記反応管の前記処理室側の表面のうち、少なくとも前記セレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスに曝される表面は、酸化クロム(Cr:x,yは1以上の任意の整数)及びシリカ(Si:x,yは1以上の任意の整数)の混合物を主成分とする5%から15%の空間率を有するポーラス状のコーティング膜を有する基板処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記反応管の基材の金属材料は、ステンレスである基板処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記コーティング膜は、前記反応管の基材との境界近傍に、FeCr系の酸化物層を有する基板処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記カセットは、前記複数の基板の表面と平行方向に複数配置される基板処理装置。
【請求項5】
銅−インジウム、銅−ガリウム、又は、銅−インジウム−ガリウムの何れか一つからなる積層膜が形成された複数の基板をセレン元素含有ガス又は硫黄元素含有ガスの雰囲気に曝すための処理室を形成する反応管の表面へのコーティング膜の形成方法であって、
前記反応管の基材の表面を脱脂、及び、洗浄する洗浄工程と、
前記反応管の基材の表面をブラスティングし、基材表面を粗面化する粗面化工程と、
前記粗面化された基材の表面に酸化クロム(Cr:x,yは1以上の任意の整数)及びシリカ(Si:x,yは1以上の任意の整数)の混合物のスラリーを塗布する塗布工程と、
前記スラリーを塗布した基材を所定の温度で焼成する焼成工程と、
前記焼成工程後の基材を化学緻密化処理剤を含侵させる含侵工程とを具備し、
前記塗布工程、前記焼成工程、及び、前記含侵工程を所定回数繰り返す前記反応管の表面へのコーティング膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222158(P2012−222158A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86643(P2011−86643)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(000109875)トーカロ株式会社 (127)
【Fターム(参考)】