説明

基板処理装置、基板保持具、及び半導体装置の製造方法

基板保持具を構成する支柱や基板載置部などの影響による基板上の膜厚不均一部分
を無くし、基板の膜厚均一性を向上する。
基板処理装置は、ボート(基板保持具)に保持された複数のウェハ(基板)を処理室に収容し、加熱された処理室に処理ガスを供給して、ウェハを成膜処理する。ボートは、略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱15と、支柱に多段に設けられて複数のウェハを所定の間隔で略水平に載置する複数のウェハ支持部16(基板載置部)と、支柱15に設置され、ウェハ支持部16に支持されるウェハに対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレート13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置、基板保持具、及び半導体装置の製造方法に係り、特に基板面内の処理量の均一性を改善したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦型CVD装置等において、複数のウェハを保持する基板保持具として、ホルダプレートを有するボートが用いられている(例えば、特許文献1)。このボートは、図15〜図16に示すように、垂直に設けられた4本の支柱32を持つ。支柱32はウェハの出し入れが可能なように略半円周の範囲で配設されている。前記支柱32にはリング状の石英製ホルダプレート33が支柱32に設けた溝部(図示省略)に水平姿勢で多段に溶接され、ホルダプレート33の上面にはウェハを載置する基板載置部としての支持つめ部34が複数設けられている。
このようなボートを使用してウェハ処理、例えばウェハ上に成膜を行えば、石英製ホルダプレート33がウェハ面上の処理ガスの流れを均一化することにより、ウェハ端の膜厚だけが厚くなるのを抑制することができる。また、略半円周に配設された4本の支柱32よりも内側のホルダプレート33上に設けた支持つめ部34の上に、ウェハを保持するので、支柱32とウェハとの距離が遠ざかることから、支柱32の影響が少なくなり、膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【特許文献1】特開平11−40509号公報(図5、図6、図7、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来のボートを使用しても、なお支柱やウェハ支持部が処理ガスの流れの不均一な部分を構成することとなるため、これらの支柱やウェハ支持部の影響を無くすことはできず、ウェハ処理結果でも、この支柱やウェハ支持部に対応するウェハ部分における処理量が少なくなる傾向にあった。
【0004】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、基板保持具を構成する支柱や基板載置部などの影響による基板処理量の基板面内不均一部分を無くし、基板面内均一性を向上することが可能な基板処理装置、基板保持具、および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、複数の基板を保持することが可能な基板保持具と、前記基板保持具に保持される基板を収容する処理室と、該処理室を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理するガス供給手段とを備え、前記基板保持具は、略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、該支柱に多段に設けられて前記複数の基板を所定の間隔で略水平に載置する複数の基板載置部と、前記支柱に設置され、前記基板載置部に支持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有することを特徴とする基板処理装置である。
【0006】
基板は基板保持具に保持された状態で、加熱手段によって加熱された処理室に収容されて処理される。ここで、基板を保持する基板保持具は、少なくとも3本の支柱を有するので、基板を安定に保持できる。また、支柱にリング状プレートが設けられているので、基板の周縁部の処理量が多くなるのを抑制できる。また、基板載置部を、リング状プレートにではなく支柱に設けることによって、支柱と基板載置部とを1つにまとめたことにより、支柱と基板載置部とが与える基板処理量への悪影響を低減することができる。したがって、基板処理量の面内均一性を改善できる。
なお、「基板に対して所定の間隔で略水平に設けられるリング状プレート」の所定の間隔とは、0値すなわち基板上面とリング状プレート上面とが一致、つまり面一になることも含む。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記基板載置部は、円柱状ないし略断面半円柱状をしている基板処理装置である。
基板載置部は、支柱に溝などを設けて凹部とすることも可能であるが、支柱から突設した凸部とするとよい。基板載置部を凸部で構成した場合、凸部は円柱状ないし略断面半円柱状をしていることが好ましい。断面略半円柱状の場合は、円弧側を基板載置面とする。このようにすると、基板との接触が線接触となり、パーティクルの発生を低減できる。なお、支柱に基板載置部を突設する場合、基板載置部は支柱とは別体に形成して支柱に取り付けるようにしてもよいが、支柱と一体に形成してもよい。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、前記基板載置部は、前記リング状プレートの径方向内方に向かって下方に傾斜していることを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、基板との接触が点接触となり、パーティクルの発生をより低減できる。
【0009】
第4の発明は、第1の発明において、前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする基板処理装置である。リング状プレートの内周面が支柱の周辺で切り欠いてあると、支柱の周辺での処理ガスが流れやすくなり、支柱の有る部分と支柱が無い部分とで基板に対する処理ガスの流れの均一化を図ることができる。したがって、基板処理量の面内均一性を改善できる。
【0010】
第5の発明は、第4の発明において、前記基板載置部は、円柱ないし略断面半円柱状をしている基板処理装置である。このようにすると、基板との接触が線接触となり、パーティクルの発生を低減できる。
【0011】
第6の発明は、第5の発明において、前記基板載置部は、先端をまるめるかもしくは面取りが行われている基板処理装置である。このようにすると、基板との接触が線接触となり、パーティクルの発生を低減できる。
【0012】
第7の発明は、第6の発明において、前記基板載置部は、前記リング状プレートの径方向内方に向かって下方に傾斜していることを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、基板との接触が点接触となり、パーティクルの発生をより低減できる。
【0013】
第8の発明は、第4の発明において、前記支柱は、断面略半円柱状で構成し、該支柱の弦側に前記基板載置部を突設することを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、支柱及び基板載置部に起因するガス流の障害を低減して、支柱及び基板載置部の近傍に流れる処理ガス流量を増加させることができる。なお、支柱を略ハーフパイプ状で構成して、その凹部側に基板載置部を突設するようにしてもよい。
【0014】
第9の発明は、第8の発明において、前記弦側は、前記リング状プレートの径方向内方側が抉れていることを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、支柱及び基板載置部の近傍に流れる処理ガス流量をより増加させることができる。
【0015】
第10の発明は、第4の発明において、前記支柱は、前記リング状プレートの外周より内側に設けることを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、支柱と処理室とのすき間をより適切に保つことが可能となる。
【0016】
第11の発明は、複数の基板を保持することが可能な基板保持具と、前記基板保持具に保持される基板を収容する処理室と、該処理室を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理するガス供給手段とを備え、前記基板保持具は、略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、前記少なくとも3本の支柱を取り囲み、かつ前記支柱に多段に設けられて、前記基板保持具に保持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有し、前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする基板処理装置である。
【0017】
ここで、基板を保持する基板保持具は、少なくとも3本の支柱を有するので、基板を安定に保持できる。また、支柱にリング状プレートが設けられているので、基板の周縁部の処理量が多くなるのを抑制できる。また、リング状プレートの内周面が支柱の周辺で切り欠いてあるため、支柱の周辺での処理ガスが流れやすくなり、支柱の有る部分と支柱が無い部分とで基板に対する処理ガスの流れの均一化を図ることができる。したがって、基板処理量の面内均一性を改善できる。
なお、「基板に対して所定の間隔で略水平に設けられるリング状プレート」の所定の間隔とは、0値すなわち基板上面とリング状プレート上面とが一致、つまり面一になることも含む。
また、第11の発明において、リング状プレートに支柱をはめる孔を設け、その孔をリング状プレートの内周面側に開口させることにより、リング状プレートの内周面を前記支柱の周辺で切り欠くようにしてもよい。また、複数の基板を保持することが可能な基板保持具における基板載置部は、支柱に設けるようにしても、リング状プレートに設けるようにしてもよい。
【0018】
第12の発明は、第11の発明において、前記支柱は、断面略半円柱状で構成し、該支柱の弦側に前記基板載置部を突設することを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、支柱及び基板載置部に起因するガス流の障害を低減して、支柱及び基板載置部の近傍に流れる処理ガス流量を増加させることができる。
【0019】
第13の発明は、第11の発明において、前記支柱は、前記リング状プレートの外周より内側に設けることを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、支柱と処理室とのすき間をより適切に保つことが可能となる。
【0020】
第14の発明は、第12の発明において、前記弦側は、前記リング状プレートの径方向内方側が抉れていることを特徴とする基板処理装置である。このようにすると、支柱及び基板載置部の近傍に流れる処理ガス流量をより増加させることができる。
【0021】
第15の発明は、複数の基板を保持することが可能な基板保持具であって、略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、該支柱に多段に設けられて前記複数の基板を所定の間隔で略水平に載置する複数の基板載置部と、前記支柱に設置され、前記基板載置部に支持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有することを特徴とする基板保持具である。
【0022】
基板を保持する基板保持具は、少なくとも3本の支柱を有するので、基板を安定に保持できる。また、支柱にリング状プレートが設けられているので、基板の周縁部の処理量が多くなるのを抑制できる。また、基板載置部を、リング状プレートにではなく支柱に設けることによって、支柱と基板載置部とを1つにまとめたことにより、支柱と基板載置部とが与える基板処理量への悪影響を低減することができる。したがって、基板処理量の面内均一性を改善できる。
なお、「基板に対して所定の間隔で略水平に設けられるリング状プレート」の所定の間隔とは、0値すなわち基板上面とリング状プレート上面とが一致、つまり面一になることも含む。
【0023】
第16の発明は、第15の発明において、前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする基板保持具である。このようにすると、支柱の周辺での処理ガスが流れやすくなり、支柱の有る部分と支柱が無い部分とで基板に対する処理ガスの流れの均一化を図ることができる。
【0024】
第17の発明は、複数の基板を保持することが可能な基板保持具であって、略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、前記少なくとも3本の支柱を取り囲み、かつ前記支柱に多段に設けられて、前記基板保持具に保持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有し、前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする基板保持具である。
【0025】
基板を保持する基板保持具は、少なくとも3本の支柱を有するので、基板を安定に保持できる。また、支柱にリング状プレートが設けられているので、基板の周縁部の処理量が多くなるのを抑制できる。また、リング状プレートの内周面が支柱の周辺で切り欠いてあるため、支柱の周辺での処理ガスが流れやすくなり、支柱の有る部分と支柱が無い部分とで基板に対する処理ガスの流れの均一化を図ることができる。したがって、基板処理量の面内均一性を改善できる。
なお、「基板に対して所定の間隔で略水平に設けられるリング状プレート」の所定の間隔とは、0値すなわち基板上面とリング状プレート上面とが一致、つまり面一になることも含む。
【0026】
第18の発明は、複数の基板を保持することが可能な基板保持具と、前記基板保持具に保持される基板を収容する処理室と、該処理室を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理するガス供給手段とを備え、前記基板保持具は、略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、該支柱に多段に設けられて前記複数の基板を所定の間隔で略水平に載置する複数の基板載置部と、前記支柱に設置され、前記基板載置部に支持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有する基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法において、前記基板保持具の基板載置部に前記基板を載置する工程と、前記基板保持具の基板載置部に載置された基板を前記処理室に搬入する工程と、前記加熱手段により前記処理室を加熱する工程と、前記加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0027】
複数の基板は基板載置部に載置されることにより基板保持具に保持される。複数の基板を保持した基板保持具が処理室に搬入される。処理室は加熱手段によって加熱され、加熱された処理室に処理ガスが供給されて、基板保持具に保持された複数の基板が処理される。ここで、基板を保持する基板保持具は、少なくとも3本の支柱を有するので、基板を安定に保持できる。また、支柱にリング状プレートが設けられているので、基板の周縁部の処理量が多くなるのを抑制できる。また、基板載置部を、リング状プレートにではなく支柱に設けることによって、支柱と基板載置部とを1つにまとめたことにより、支柱と基板載置部とが与える基板処理量への悪影響を低減することができる。したがって、基板処理量の面内均一性を改善できる。
なお、「基板に対して所定の間隔で略水平に設けられるリング状プレート」の所定の間隔とは、0値すなわち基板上面とリング状プレート上面とが一致、つまり面一になることも含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基板保持具を構成する支柱や基板載置部などの影響による基板処理量の基板面内不均一部分を無くし、基板面内均一性を向上することができる。したがって、半導体装置の製造における歩留まり及び品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の基板処理装置、基板保持具、及び半導体装置の製造方法を、縦型炉を有する半導体製造装置に適用した実施の形態を説明する。
【0030】
図11は縦型炉を有する半導体製造装置の概略図であり、図12は縦型炉としての減圧CVD処理炉の断面図である。図11に示すように、筐体10内部の前側にカセットローダ6が位置し、カセットローダ6の後側にカセット棚1が設けられる。カセット棚1の上方にバッファカセット棚7が設けられ、カセット棚1の後側にウェハ移載機2が設けられる。ウェハ移載機2の後側にボート217を昇降させるボートエレベータ8が設けられ、ボートエレベータ8の上方に縦型炉5が設けられる。
【0031】
縦型炉5は、図12に示すように、外管(以下、アウタチューブ205)と内管(以下、インナチューブ204)とを有する。アウタチューブ205は例えば石英(SiO2)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞され、下端に開口を有する円筒状の形態である。インナチューブ204は、上端及び下端の両端に開口を有する円筒状の形態を有し、アウタチューブ205内に同軸的に配置されている。アウタチューブ205とインナチューブ204の間の空間は筒状空間250を成す。インナチューブ204の上部開口から上昇したガスは、筒状空間250を通過して排気管231から排気されるようになっている。
【0032】
アウタチューブ205およびインナチューブ204の下端には、例えばステンレス等よりなるマニホールド209が係合され、このマニホールド209にアウタチューブ205およびインナチューブ204が保持されている。このマニホールド209は保持手段(以下ヒータベース251)に固定される。アウタチューブ205の下端部およびマニホールド209の上部開口端部には、それぞれ環状のフランジが設けられ、これらのフランジ間には気密部材(以下、Oリング220)が配置され、両者の間が気密にシールされている。
【0033】
マニホールド209の下端開口部には、例えばステンレス等よりなる円盤状の蓋体(以下シールキャップ219)がOリング220を介して気密シール可能に着脱自在に取付けられている。シールキャップ219には、ガス供給手段としてのガス供給管232が貫通するよう設けられている。このガス供給管232により、処理ガスがインナチューブ204内に供給されるようになっている。このガス供給管232はガスの流量制御手段(以下マスフローコントローラ(MFC)241)に連結されており、MFC241は第2の制御用コンピュータ120のガス流量制御部122に接続されており、供給する処理ガスの流量を所定の量に制御し得る。
【0034】
マニホールド209の上部には、圧力調節器(例えばAPC、N2バラスト制御器があり、以下ここではAPC242とする)及び、排気装置(以下真空ポンプ246)に連結されたガスの排気管231が接続されており、アウタチューブ205とインナチューブ204との間の筒状空間250を流れるガスを排出し、アウタチューブ205内をAPC242により圧力を制御することにより、所定の圧力の減圧雰囲気にするよう圧力検出手段(以下圧力センサ245)により検出し、第2の制御用コンピュータ120の圧力制御部123により制御する。
【0035】
シールキャップ219には、回転手段(以下回転軸254)が連結されており、回転軸254により、基板保持具(以下ボート217)及びボート217上に保持されているウェハ200を回転させる。又、シールキャップ219は昇降手段(以下ボートエレベータ225)に連結されていて、ボート217を昇降させる。回転軸254、及びボートエレベータ225を所定のスピードにするように、第2の制御用コンピュータ120の駆動制御部124により制御する。
【0036】
アウタチューブ205の外周には加熱手段(以下ヒータ207)が同軸的に配置されている。ヒータ207は、アウタチューブ205内の温度を所定の処理温度にするよう温度検出手段(以下熱電対263)により温度を検出し、第2の制御用コンピュータ120の温度制御部121により制御する。前述したインナチューブ204、アウタチューブ205と、マニホールド209とで、ボート217に支持されたウェハ200を収納して処理するための処理室201を構成する。
【0037】
上述した第2の制御用コンピュータ120は、第1の制御用コンピュータ110によって統括制御される。第1の制御用コンピュータ110と第2の制御用コンピュータ120とは、それぞれのインタフェース111、125を介して接続される。
図14は、図12に示した第1の制御用コンピュータ110のハードウェア構成を示す図である。図14に示すように、制御用コンピュータ110は、CPU300、メモリ304、キー及び表示装置などを含む表示・入力部302、及びCD装置、HDD装置等の記録部306から構成される。記録部306は記録媒体308を介して記録される。制御用コンピュータ110は半導体製造装置を制御するプログラム等を実行し、ウェハに対する処理を行わせるコンピュータとしての構成部分を備えている。
【0038】
なお、第2の制御用コンピュータ120も、第1の制御用コンピュータ110と同様な構成部分を1組以上有している。また、第2の制御用コンピュータ120は、上述した温度制御部121、ガス流量制御部122、圧力制御部123、駆動制御部124がそれぞれ単独で構成されても良いし、2つ以上を組合わせても良いし、種々の編成をなしても良い。
【0039】
図12に示した処理炉による減圧CVD処理方法の一例を説明すると、まず、ボートエレベータ225によりボート217を下降させる。ボート217に複数枚のウェハ200を保持する。次いで、ヒータ207により加熱しながら、処理室201内の温度を所定の処理温度にする。ガス供給管232に接続されたMFC241により予め処理室201内を不活性ガスで充填しておき、ボートエレベータ225により、ボート217を上昇させて処理室201内に移し、処理室201の内部温度を所定の処理温度に維持する。処理室201内を所定の真空状態まで排気した後、回転軸254により、ボート217及びボート217上に保持されているウェハ200を回転させる。同時にガス供給管232から処理用のガスを供給する。供給された処理ガスは、インナチューブ204内を下から上に向かって流れて、ウェハ200に対して均等に供給される。
減圧CVD処理中の処理室201内は、排気管231を介して排気され、所定の真空になるようAPC242により圧力が制御され、所定時間減圧CVD処理を行って、ウェハ200上に薄膜を形成する。
【0040】
このようにして減圧CVD処理が終了すると、次のウェハ200の減圧CVD処理に移るべく、処理室201内のガスを不活性ガスで置換するとともに、圧力を常圧にし、その後、ボートエレベータ225によりボート217を下降させて、ボート217及び処理済のウェハ200を処理室201から取り出す。処理室201から取り出されたボート217上の処理済のウェハ200は、未処理のウェハ200と交換され、再度前述同様にして処理室201内に上昇され、減圧CVD処理が成される。
【0041】
上述した減圧CVD処理において、ウェハ200上に形成される薄膜の膜厚の面内均一性を向上するためには、好ましくは、図15及び図16と同様な、支柱にリング状プレートを設ける構造のボートを使用する場合、ボート217を構成する支柱がリング状プレートからはみ出さないようにすると良い。また、ボート217は回転軸254により、回転させるため、特に支柱をリング状プレートの外周より内側にすることにより、回転の際のインナチューブ204とのすき間をより適切に保つことが可能となり、支柱とインナチューブ204の内壁とのこすれによるパーティクル発生等を回避できる。したがって、支柱がリング状プレートからはみ出さず、またリング状プレートの外形が変形や出っぱりのないほうが良い。
【0042】
ところで、上述した処理炉では、処理ガスがインナチューブ204内を下から上に向かって流れている場合を説明している。しかし、処理ガスの流れはこれに限定されない。例えば、処理ガスがインナチューブ204を横切って流れる場合もある。
【0043】
図13はそのような処理ガスがインナチューブ204を横切って流れる場合の処理炉の要部説明図である。ここでは、インナチューブ204は、その上端は閉じており、その一側面にスリット状の開口214が設けられるように構成されている。
インナチューブ204内におけるガスの流れを説明する。図13(a)はインナチューブ204とボート217の外径との隙間tが小さい場合、図13(b)は隙間が大きい場合を示す。
【0044】
図13(a)に示すように、ウェハ200面と平行な方向から処理ガスを噴射する場合、処理ガスの流れを均一にするために、インナチューブ204とボート217の外径との隙間tを可能なかぎり小さくする必要がある。これは処理ガスが、リング状プレート13に沿って導入され、ウェハ200の表面を通過した後、そのままガス流が乱されることなく、インナチューブ204に設けられたスリット状の開口214から導出されて、空間250から排気されるためである。これに対して図13(b)に示すように、隙間tが大きいと、インナチューブ204とボート217の外径との空間249で矢印で示すようなダウンフロー218が発生し、処理室201内の上下方向で排気が不均一となり、ウェハ200の膜厚均一性に影響を及ぼす。
【0045】
この場合にも、上記隙間tを可能な限り小さくして、膜厚のウェハ面内均一性を向上するためには、ボート217を構成する支柱がリング状プレート13からはみ出さないようにすると良い。また、支柱がはみ出していなくてもリング状プレート13の外形が変形していないようにすると良い。
【0046】
そこで、実施の形態のボート217では、インナチューブ204の構造によって、処理ガスがインナチューブ204を下から上に向かって流れるにせよ、インナチューブ204を横切るにせよ、上記要請に応えるために、リング状プレート13に基板載置部としてのウェハ支持部を固着するのではなく、支柱15に直接ウェハ支持部を固着するようにした。また、リング状プレート13の支柱に対向する内周面を支柱の周辺で切り欠くようにした。これにより、半導体製造装置において、ウェハの面内均一性を向上することができた。特に実施の形態のような縦型炉を有するバッチ式の半導体製造装置においては、成膜速度向上(デポレート向上)、およびウェハ品質向上の要求にも対応することもできた。
【0047】
以下、実施の形態のボートを図1〜図2を用いて説明する。図1は1枚のリング状プレートの説明図であって、(a)は1枚のリング状プレートに着目したボートの要部側面図、(b)は支柱を含めた平面図であり、図2はボートの全体構成図である。
【0048】
ボート217は、例えば石英製であり、図2に示すように、二枚の平行な板としての底円板17及び天円板11と、底円板17と天円板11との間に略垂直に設けられた複数本、例えば3本の支柱15と、を有する。支柱15は円柱状をしている。リング状プレート13を安定かつシンプルに支持するためには、支柱15の数は特に3本であることが好ましいが、3本以上であっても良い。
【0049】
3本の支柱15は、底円板17に略半円状に配列固定されている。天円板11は、3本の支柱15の上端部に固定されている。底円板17及び天円板11の中央部には、ボート217の内部に処理ガスが入りやすくなるための円形穴12、14がそれぞれ形成されている。底円板17と天円板11との間には、所定の間隔で多段に略水平姿勢で設けられた複数のリング状プレート13が、支柱15に固着されている。
【0050】
各支柱15には、複数のウェハ200を垂直方向に所定の間隔で略水平に載置することが可能な複数のウェハ支持部16が多段に突設される。図1に示すように、各ウェハ支持部16は円柱状をしており、ボート217の中心、すなわちリング状プレート13の中心に向けて突設されている。この場合、支柱15には、それぞれ1つずつウェハ支持部16を設ける。すなわち、1段に3つのウェハ支持部16が突設されている。この突設された3つのウェハ支持部16上に、ウェハ200の外周を支持させることにより、ウェハ200を載置するようになっている。このウェハ支持部16は水平度が保たれているのが好ましい。水平を保つことにより、ウェハ搬送時にウェハがウェハ支持部16に接触する等の干渉を回避でき、またボート217にウェハ200が載置された状態でのウェハ上に均一なガスの流れを確保できる。
【0051】
上述したリング状プレート13は、支柱15のウェハ支持部16の各設置位置よりも下方に設置され、ウェハ支持部16に支持されるウェハ200に対して所定の間隔で略水平に設けられる。このリング状プレート13は、中央が開口した略円形に形成され、リング状プレート13の内周面に3本の支柱15を納めることにより、3本の支柱15を取り囲むようになっている。本実施の形態のように、ウェハの全周に亘って略円形に形成されたリングを設けることにより、ウェハの周縁部の膜厚が全周で厚くなる傾向を改善することができる。
【0052】
リング状プレート13の支柱15に対向する内周面、あるいは支柱15に近接する内周面、ないしは支柱15の直近にある内周面には、3本の支柱15を挿入するために、前記支柱15の周辺で切り欠いた切欠き20が形成されている。切欠き20は、図1(b)に示すように、リング状プレート13の中心線21上のウェハの出し入れ側の反対側に1個、又中心線21に対して左右対称位置に1個ずつ計3個形成される。切欠き20は、支柱15がリング状プレート13のプレート幅内に納まるように内側から切り欠かれている。この切欠き20は、外側までは切り欠かれていない。また、膜厚への悪影響を低減するために、支柱15はリング状プレート13の内外径の幅間に設けることが好ましい。また、ボート217は回転軸254により、回転させるため、特に支柱をリング状プレートの外周より内側にすることにより、回転の際のインナチューブ204とのすき間をより適切に保つことが可能となり、支柱とインナチューブ204の内壁とのこすれによるパーティクル発生等を回避できる。したがって、支柱がリング状プレートからはみ出さず、またリング状プレートの外形が変形や出っぱりのないほうが良い。
【0053】
図3は、上述したウェハ支持部16近傍の支柱15周りを示した斜視図である。既述したように支柱15に円柱状のウェハ支持部16を突設している。ここでは、支柱15とは別体のウェハ支持部16を支柱15に固着することによって、支柱15にウェハ支持部16を突設している。リング状プレート13は、支柱15のウェハ支持部16の設置位置よりも下方に設置され、ウェハ支持部16に支持されるウェハに対して所定の間隔で略水平に設けられる。
【0054】
また、切欠き20は、リング状プレート13の内周面の支柱15の周辺で切り欠かれている。この切欠き20は、支柱15が嵌め込まれる孔としての略円形ないし略半円形の嵌込み部20aと、嵌め込み部をリング状プレート13の内周方向に開放させる開口部20bとから構成される。支柱15を嵌込み部20aに嵌めた状態で、この開口部20bを平面視して、この開口部20b上にウェハ支持部16を投影したとき、開口部20bは、ウェハ支持部16が開口部20bの中央に納まり、開口部20bの開口幅がウェハ支持部16の幅よりも大きくなっていることが好ましい。このように切欠き20にリング状プレート13の内周方向に開放す開口部20bを設けると、上方からウェハ支持部16に当たったガスが、ウェハ支持部16の両側に回り込んで、そのまま開口部20bを通過して下方に流れるので、ウェハ支持部16で乱流が生じがたくなる。したがって、ウェハ支持部付き支柱15が存在する部分と、それが存在しない部分とで、処理ガスの流れに、差異が生じなくなる。特に、図示例のように、開口部20bは前記内周面側へ扇形に開くようにすることが好ましい。開口部20bが扇形に開いていると、ウェハ支持部16で乱流が一層生じがたくなり、ウェハ支持部付き支柱15が存在する部分と、それが存在しない部分とで、処理ガスの流れに、より差異が生じなくなるからである。
【0055】
また、図5に示すように、円柱状としたウェハ支持部16の先端は、丸めるか(R)、もしくは面取り(C)を行うとよい。また、図5に示すように、円柱状のウェハ支持部16の支柱15への固着角度はウェハ200と平行にしても、あるいは図6のように、下方向にθ傾けて固着しても良い。
【0056】
なお、図3は、支柱15とは別体の円柱状のウェハ支持部16を支柱15に固着した実施例であるが、本発明はこれに限定されない。図4のように、支柱15とウェハ支持部16を一体の部材18としても良い。この場合、加工性を容易にするために、ウェハ支持部16を、円柱状ではなく、略三角形をしたプレート状にして、略三角形の底辺側を支柱15と一体にし、略三角形の頂点側を、リング状プレート13の径方向内方に向けるようにするとよい。また、ウェハ支持部16はウェハと平行である場合に限らず、図6と同様に、下方向にθ傾けて加工しても良い。
【0057】
上述したボート217を製作するには、ここでは、図示しない治具を用いてリング状プレート13を水平に多段に仮固定する。仮固定した多段のリング状プレート13の内側から3本の支柱15を、切欠き20に嵌め込み、溶着するという方法をとっている。すなわち、切欠き20を形成した複数のリング状プレート13を用意する。複数のリング状プレート13を、各切欠き20が互いに上下で合致するように揃えて積層させた状態で、治具で仮固定する。底円板17に3本の支柱15を半円状に配列して固定する。このとき、支柱15に突設したウェハ支持部16は径方向内方を向くようにする。支柱15を、仮固定した複数のリング状プレート13の切欠き20に嵌めて、嵌めた支柱15を切欠き部分でリング状プレート13に固定する。リング状プレート13は、垂直方向に設けられた複数のウェハ支持部16間のちょうど中間位置に、それぞれ位置するように固定する。支柱15に天円板11を固定する。治具を取り外すと、多数枚のウェハを多段に積載するボートが完成する。なお、リング状プレート13の固定を含めたボート部材間の固定は、石英ガラス同士の溶着で行なう。リング状プレート材や支持材、天円板材、底円板材(つまり、ボート217を構成する部材)は、耐熱性であれば特に限定されないが、石英の他に、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al23)、セラミック等の耐熱性材料が好ましい。
【0058】
リング状プレートを用いても、ウェハ支持部と支柱とが、ウェハの膜厚に対して個々に悪影響を与えている。この場合、リング状プレートにウェハ支持部を取り付けて、ウェハ支持部を支柱と重ならないように散在させる場合、取付け部周辺のリング状プレートの内周面に切欠きを設けることにより、ウェハ支持部の悪影響を低減することは可能である。しかし、この切欠きは支柱の悪影響を低減するものではないので、この切欠きでもってしても支柱の悪影響を低減することは不可能である。
この点で、本実施の形態によれば、支柱にウェハ支持部を設けることによって、ウェハの膜厚に対して個々に悪影響を与えているウェハ支持部と支柱とを集約させるようにしたうえで、支柱を嵌め込んだウェハ支持部取付け部周辺のリング状プレートの内周面に切欠きを設けるようにしたので、ウェハ支持部と支柱とを散在させた場合に比べて、ウェハ支持部と支柱との両方の膜厚に与える悪影響を1つにまとめて低減することが可能となる。
【0059】
ところで、いままで、支柱にウェハの載置部を設けていなかったのは、次の理由による。
当初、ウェハを多段に載置するものとしてノーマルボートと呼ばれる基板保持具が用いられていた。このノーマルボートは、円弧状に配設された複数本の支柱に溝(ウェハ載置部)を設けている形状となっている。そのため、成膜時、支柱周辺の膜厚が支柱の影響により薄くなり、支柱の無い部分のウェハ周縁部の膜厚が厚くなる傾向があった。
【0060】
そこで、膜厚に対する支柱の影響を減らすために、ウェハを載置するための支持つめ部を設けたリングをノーマルボートの支柱溝にのせて、ウェハを支柱から離すようにしたリングボートが提案された。すなわち、リングボートは、ウェハ載置部を支柱からリングに移設したものである。支持つめ部の周辺のウェハ上の成膜の膜厚に対する支柱の影響を減らすために、支持つめ部は支柱を避ける箇所に設けるようにしている。このリングボートの採用により、ノーマルボートでは薄くなっていた支柱周辺部分の膜厚を厚く改善できるようになった。さらに、ノーマルボートでは厚くなる傾向にあった支柱の無い部分のウェハの周縁部の膜厚を薄く改善できるようになった。
【0061】
しかしながら、このリングボートにあっては、折角、支柱の無い部分のウェハの周縁部の膜厚を薄く改善できるようになったものの、リングに設けられた支持つめ部の影響により、支持つめ部周辺のガスの流れが不均一になることで、この支持つめ部周辺のウェハの膜厚が薄くなり過ぎてしまうという問題が新たに生じてしまった。さらに、支柱の影響でガスの流れが不均一になることも完全には拭い切れず、リングボート支柱周辺は、ノーマルボートに比べて厚くなって、一応改善されてはいるものの、改善度は十分とは言えず、まだ他の部分の厚さと比べて薄かった。
【0062】
このように、リングボートの発想は、支柱に溝を設けてウェハを支持するノーマルボートでは、膜厚に対する支柱の影響が大きく、それを回避するために、支柱の内側にリングを配置して、そのリング上にウェハを載置することにより、ウェハを支柱から離そうとするものである。従って、ボートにリングを採用するタイプのボートにあっては、ウェハ支持部を支柱からリングに移設するという発想に基づいて提案されているものである。
【0063】
上述したように、本実施の形態では、支柱15にウェハ支持部16を固着することによって、ウェハの膜厚に及ぶ悪影響の2種類の要因である支柱とウェハ支持部とを1つにまとめたので、ウェハの膜厚への悪影響を低減することができる。また、支柱部分のリング状プレート13の内周面を切り欠くようにしたので、支柱15及びウェハ支持部16の有る部分において、ガス流の支柱15及びウェハ支持部16の影響が抑制されて、ウェハ支持部16及び支柱15の無い部分と同様な膜厚をウェハ200上に得ることができるようになった。
これを図8を用いて具体的に説明する。図8は、処理ガスがインナチューブを横切る場合において、処理ガスがウェハ200からリング状プレート13の方向へ流れ、下部へ排気される場合のガス流れの概念図である。図8(a)は支柱15及びウェハ支持部16が無い部分のガス流れ、図8(b)は支柱15及びウェハ支持部16が有る部分のガス流れを示す。CVD処理等において、石英表面でも処理ガスによる成膜反応が起こることは周知の事実であるが、本来ウェハ200で反応すべき処理ガスが石英表面で反応してしまうことにより、支柱15及びウェハ支持部16近傍のウェハ部へ供給される処理ガスの量が少なくなる。その結果として、支柱15及びウェハ支持部16近傍のウェハ部の膜厚が薄くなってしまう傾向にある。
【0064】
実施の形態では、図8において、リング状プレート13に切欠き20を設けることにより、支柱15及びウェハ支持部16が有る部分の支柱15とウェハ端との距離Lbを、支柱15及びウェハ支持部16が無い部分のリング状プレート13の内周面とウェハ端との距離Laより大きくすることによりコンダクタンスを大きくする。これによって、支柱15及びウェハ支持部16が有る部分に流れる処理ガスの量を増やすことにより、支柱15及びウェハ支持部16が無い部分のウェハ周縁部Wbの膜厚と、支柱15及びウェハ支持部16が有る部分のウェハ周縁部Waとの膜厚を同等とすることができる。
なお、図8では、処理ガスがインナチューブを横切る場合において、処理ガスがウェハ200からリング状プレート13方向へ流れる場合を説明したが、処理ガスがリング状プレート13からウェハ方向へ流れる場合や、処理ガスが下から上へ流れる場合も同様である。
したがって、処理ガスがインナチューブ204を下から上に向かって流れるにせよ、インナチューブ204を横切るにせよ、膜厚のウェハ面内均一性を向上するという前述した要請に応えることができる。また、リング状プレートは、支柱に垂直方向に複数所定の間隔で設けられるので、複数のウェハの面間の均一性も改善できる。
【0065】
また、図8に示すように、リング状プレート13とウェハ200との垂直方向の距離の関係は、処理ガスは、ウェハ上面とウェハ200より上部に配置されたリング状プレート下面との間を流すように供給するため、例えばウェハ上面とウェハ200より上部に配置されたリング状プレート下面との距離がせまいと、リング状プレートに直接ガスがあたり、ガスが乱流になりやすく、膜厚均一性に悪影響を及ぼすことになってしまう。したがって、ウェハ上面とウェハ200より上部に配置されたリング状プレート下面との距離は大きくなるように配置することが好ましい。とりわけ、図9に示すように、ウェハ上面とリング状プレートの上面とが一致する、つまり面一になるように配置すると、面内膜厚均一性よりいっそう良好となる。また、高い成膜速度を維持することができ、つまり成膜速度も改善できることとなる。
【0066】
図10に、図15及び図16に示した従来形状のボートと、図1及び図2に示した実施の形態の形状のボートとによる成膜の評価を行った比較結果を示す。本評価では、ボート217に積載された複数のウェハのうち、頂部(TOP)、中央部(CTR)、及び底部(BTM)の3ヵ所にある3枚のウェハを対象とした。これらの位置にあるCVD処理後のウェハの膜厚を測定し、面内均一性を求めた。横軸にウェハ位置、縦軸に面内均一性を示すが、従来形状のボートでは支持つめ部及び支柱の部分で膜厚が薄く、面内均一性は2.0%近傍であった。これに対して、本実施の形態の形状のボートでは、ウェハ支持部及び支柱の影響が抑制され、面内均一性は1%近傍であり、良好な結果となっている。
【0067】
なお、この評価を行なったときのガス種、ガス量、圧力、温度、時間等の成膜条件は、DPOLY膜(ドープトポリシリコン膜)で、シラン(S1H4)400cc、ホスフィン(PH3)50cc、圧力300Pa、処理室内温度530℃、成膜時間(デポ時間)30minであり、図8(a)に示す支柱が無い部分のリング状プレート13とウェハ200との距離La=4mmのとき、図8(b)に示す支柱15が有る部分の支柱15とウェハ200との距離Lb=8.5mmとした時の結果である。
【0068】
また、Laの最適値を実験により評価したところ、直径300mmウェハの成膜評価においては、Laが2mm未満ではウェハ周縁部の膜厚がウェハ中心の膜厚より薄くなり、逆にLaが7mmを超えるとウェハ周縁部の膜厚がウェハ中心の膜厚より厚くなることがわかった。このことより、ウェハ直径300mmサイズで、距離Laは2〜7mmが最適であると言える。また、Lbは、La<Lbであることが必須である。これはガス流の障害となる支柱15とウェハ支持部16の有る側のガス流路のコンダクタンスを大きくする必要があるからである。
【0069】
なお、上記実施の形態では、図7(a)に示すように、切欠き20に嵌まる支柱15の形状を円柱状としたが、特に円柱状に限定されない。支柱15の形状は、支柱15によって切欠き20が埋まらずに、ウェハ支持部16の固着部近傍の開口部20bが確保されて、支柱15及びウェハ支持部16の近傍に流れる処理ガス流量が増加する形状であればよい。例えば、図7(b)、(c)に示すように、支柱19を略断面半円柱状にして、半円中心部にウェハ支持部16を取り付けるようにしてもよい。さらに、支柱断面のウェハ側が抉れている形状であっても良い。この場合、例えば、図7(d)に示すように、支柱19を略ハーフパイプ形状とし、その凹部側にウェハ支持部16を突設するようにしても同様の効果が得られる。
また、好ましくは、図7に示すようにウェハ支持部16は、支柱15、19または、切欠き20に対し、中心部(図7で言えば上下対称)となると、より一層効果が得られる。
【0070】
また、実施の形態では、支柱15にウェハ支持部16を固着するようにしたので、ウェハ載置位置の精度を出すのは容易である。これは、支柱15とウェハ支持部16、支柱15と底円板17は、ともに機械加工されて精度の出た面をあてて溶接をすることができるからである。この点で、図16に示す従来例のものは、ウェハ載置位置の精度を出すのは難しい。これは、ホルダプレート33に支持つめ部34を接合する際に、ホルダプレート33の表面を鏡面状態に磨き上げて支持つめ部34を圧着(鏡面状態の部材同士を熱と力をかけて接合する方法)する工程を採用する場合が多い。これにともなって、ホルダプレート33は、例えば厚さ3mmの原材料から厚さ2mmの鏡面のプレートへ磨かなければならない工程が必然的に導入されるからである。 また、従来例のものは、上記工程を必要と摺るため、非常に製作時間がかかり、コストも高くなっていた。これに対して本実施の形態では、支柱にウェハ支持部を固着し、このウェハ支持部を設けた支柱にウェハ支持部の存在しない単純構造のリング状プレートを接合するだけなので、上記工程を省くことができ、製作時間を大幅に短縮でき、コストダウンを実現できる。
【0071】
また、支柱15にウェハ支持部16を固着していることにより、支柱15の本数を、対称形でウェハ200を保持できる最少本数である3本とすることができる。ガス流れがウェハに影響しないようにするために、リング状プレート13の中心線に対して左右対称位置に支柱15を設ける必要があるが、実施の形態では、図1(b)に示すように、リング状プレート13の中心線上のウェハの出し入れ側の反対側に設けたウェハ支持部16に、重ねて支柱15を設けることができるからである。したがって、支柱15にウェハ支持部16を設ける場合には、ガス流れがウェハに影響する部分を、最少の3ヶ所とすることができる。また、ウェハ支持部16を3つとすることにより、3点支持にてウェハを保持でき、安定した保持が可能となる。
【0072】
また、従来のホルダボートでは支持つめ部14とウェハが面接触しており、ウェハ挿入時の摺接等でパーティクルが発生する原因となっていた。また、CVD処理等の場合、支持つめ部14のウェハ接触部分では面接触となっているため、ウェハ裏面に成膜できない。このため、ウェハ裏面において成膜された部分とされない部分との間で熱による歪が発生し、ウェハ自体にダメージを与えたり、膜が剥離する原因でもあった。
この点で、本実施の形態では、図5に示すように、円柱状のウェハ支持部16の固着角度をウェハと平行にして、ウェハ支持部16の先端は丸めるか、もしくは面取りを行って接触面を線としたので、摺接して発生するパーティクルを大幅に低減することができる。また、支持つめ部14のウェハ接触部分が線接触であるため、ウェハ裏面に成膜できない領域を減らすことができる。このため、ウェハ裏面において成膜された部分とされない部分との間で熱により発生する歪を軽減することができ、ウェハ自体にダメージを与えたり、膜が剥離する原因を低減できる。
また、図6のように、円柱状のウェハ支持部16の固着角度を、下方向にθ傾けた場合は、ウェハとウェハ支持部16は点接触となるので、更にパーティクルを低減することができる。
【0073】
また、実施の形態のボートは、支柱にウェハ支持部を設けるという簡単な構成によって、ウェハ面内の膜厚の均一性を改善できるので、ボートサイズが大きくならず、装置サイズも大きくなることがない。したがって、熱量過多でスループットが悪化するということもない。
【0074】
なお、本発明の基板処理装置は、特に縦型装置に好適であるが、その他の基板処理装置にも適用可能である。また、対象膜種、D−POLY膜、Si3N4膜、HTO膜(高温酸化膜)などの他、CVD膜全般にわたっては当然適用可能であり、その他のアニール炉、拡散炉等にも適用可能である。
特に、本発明の基板処理装置は、CVD膜において、デポレートが従来20Å/minであったのを50Å/MlNに向上できるので、デポレートを向上する方法として有効である。またCVD膜において、本発明の基板処理装置は、ウェハ面内、ウェハ面間、バッチ間の均一性を、ノーマルボートないしリングボートを用いる従来の基板処理装置の±3%以内から±1%以内に向上できるので、ウェハ品質を向上する方法としても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施の形態によるリング状プレートの説明図であって、(a)は1枚のリング状プレートに着目したボートの要部側面図、(b)は支柱を含めたリング状プレートの平面図である。
【図2】実施の形態による基板保持具としてのボートの全体構成図である。
【図3】実施の形態によるウェハ支持部近傍の支柱周りを示した斜視図である。
【図4】実施の形態の変形例によるウェハ支持部近傍の支柱周りを示した斜視図である。
【図5】実施の形態によるボートのウェハ載置状態を示す説明図である。
【図6】実施の形態の変形例によるボートのウェハ載置状態を示す説明図である。
【図7】実施の形態による支柱形状の変形例を示す支柱部近傍の要部平面図であって、(a)は支柱が円柱である場合、(b),(c)は支柱が断面略半円状である場合、(d)は支柱がハーフパイプ状である場合の各変形例を示す説明図である。
【図8】実施の形態によるガス流れを示す説明図であって、(a)はウェハ支持部及び支柱が無い部分のガス流れを示す説明図、(b)はウェハ支持部及び支柱が有る部分のガスの流れを示す説明図である。
【図9】実施の形態によるガス流れを示す説明図であって、(a)はウェハ支持部及び支柱が無い部分のガスの流れを示す説明図、(b)ウェハ支持部及び支柱が有る部分のガスの流れを示す説明図である。
【図10】実施の形態のボートと従来例のボートとを用いてそれぞれ処理したときのウェハの面内均一性の比較図である。
【図11】実施の形態による基板処理装置としての半導体製造装置の全体構成を示す斜視図である。
【図12】実施の形態による制御用コンピュータを含めた反応炉の縦断面図である。
【図13】実施の形態による処理ガスがインナーチューブを横切る場合の、内管とリング状プレート間の距離とガス流れの関係を示す説明図で、(a)は内管とボートの外径との隙間tが小さい場合、(b)は隙間が大きい場合を示す。
【図14】実施の形態による第1の制御用コンピュータの構成図である。
【図15】従来例のホルダプレートの説明図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図16】従来例のボートの全体構成図である。
【符号の説明】
【0076】
13 リング状プレート
15 支柱
16 ウェハ支持部(基板載置部)
200 ウェハ(基板)
201 処理室
207 ヒータ(加熱手段)
217 ボート(基板保持具)
232 ガス供給管(ガス供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を保持することが可能な基板保持具と、前記基板保持具に保持される基板を収容する処理室と、該処理室を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理するガス供給手段とを備え、前記基板保持具は、
略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、
該支柱に多段に設けられて前記複数の基板を所定の間隔で略水平に載置する複数の基板載置部と、
前記支柱に設置され、前記基板載置部に支持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートと
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板載置部は、円柱ないし略断面半円柱状をしている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板載置部は、前記リング状プレートの径方向内方に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板載置部は、円柱ないし略断面半円柱状をしている請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板載置部は、先端をまるめるかもしくは面取りが行われている請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板載置部は、前記リング状プレートの径方向内方に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記支柱は、断面略半円柱状で構成し、該支柱の弦側に前記基板載置部を突設することを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記弦側は、前記リング状プレートの径方向内方側が抉れていることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記支柱は、前記リング状プレートの外周より内側に設けることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項11】
複数の基板を保持することが可能な基板保持具と、前記基板保持具に保持される基板を収容する処理室と、該処理室を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理するガス供給手段とを備え、前記基板保持具は、
略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、
前記少なくとも3本の支柱を取り囲み、かつ前記支柱に多段に設けられて、前記基板保持具に保持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有し、
前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
前記支柱は、断面略半円柱状で構成し、該支柱の弦側に前記基板載置部を突設することを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記支柱は、前記リング状プレートの外周より内側に設けることを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記弦側は、前記リング状プレートの径方向内方側が抉れていることを特徴とする請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
複数の基板を保持することが可能な基板保持具であって、
略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、
該支柱に多段に設けられて前記複数の基板を所定の間隔で略水平に載置する複数の基板載置部と、
前記支柱に設置され、前記基板載置部に支持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートと
を有することを特徴とする基板保持具。
【請求項16】
前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする請求項15に記載の基板保持具。
【請求項17】
複数の基板を保持することが可能な基板保持具であって、
略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、
前記少なくとも3本の支柱を取り囲み、かつ前記支柱に多段に設けられて、前記基板保持具に保持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有し、
前記リング状プレートの前記支柱に対向する内周面が、前記支柱の周辺で切り欠いてあることを特徴とする基板保持具。
【請求項18】
複数の基板を保持することが可能な基板保持具と、前記基板保持具に保持される基板を収容する処理室と、該処理室を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理するガス供給手段とを備え、前記基板保持具は、
略垂直に設けられた少なくとも3本の支柱と、該支柱に多段に設けられて前記複数の基板を所定の間隔で略水平に載置する複数の基板載置部と、前記支柱に設置され、前記基板載置部に支持される基板に対して所定の間隔で略水平に設けられる複数のリング状プレートとを有する基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法において、
前記基板保持具の基板載置部に前記基板を載置する工程と、
前記基板保持具の基板載置部に載置された基板を前記処理室に搬入する工程と、
前記加熱手段により前記処理室を加熱する工程と、
前記加熱された処理室に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【国際公開番号】WO2005/053016
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515837(P2005−515837)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017723
【国際出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】