説明

基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体

【課題】他の基板に優先して処理開始すべき基板と、通常のスケジュールで処理される基板とを並行して処理することが可能な基板処理装置等を提供する。
【解決手段】
処理ブロック14a(14b)は、基板搬送部141a、141bを用いて、基板搬入ブロック11から搬入された基板Wに対し、複数の処理ユニット2にて同種の処理を行い、制御部5は他の基板Wよりも処理を優先する優先基板WPが搬送される場合に、複数の処理ユニット2の一部または全部が割り振られた優先処理ユニット2Pのうち、次の基板Wの搬入が可能になった優先処理ユニット2Pに、他の基板Wに優先して優先基板WPを搬入して処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の処理ユニットを用いて例えば半導体ウエハなどの基板に液処理や表面処理などの同種の処理を実行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造工程には、半導体ウエハ(以下、ウエハという)などの基板の表面に薬液や純水などの処理液を供給して基板に付着したパーティクルや汚染物質の除去を行う液処理などの処理工程がある。
【0003】
こうした液処理を行う液処理装置の一つに、スピンチャック上に基板を一枚ずつ載置し、基板を回転させながら当該基板の表面に処理液を供給して液処理を実行する液処理装置がある。この種の液処理装置には例えば同種の液処理を実行可能な複数の液処理ユニットに対して共通の基板搬送機構を用いて基板を搬送することにより、複数の液処理ユニットにて並行して液処理を実行しながら連続的に基板を入れ替え、単位時間当たりの基板の処理枚数(スループット)を向上させたものがある(特許文献1)。
【0004】
こうした複数の液処理ユニットを備えた液処理装置では、例えばFOUP(Front-Opening Unified Pod)などの基板搬送容器に格納されて工場内を搬送されてきた複数枚のウエハを順番に取り出し、これらのウエハを液処理装置内の各液処理ユニットへと予め定められた順序で搬入することにより、所定の液処理が実行される。ここで1個のFOUP内に格納されているウエハを1ロットとすると、通常の運転状態においては、液処理装置は予め定められたスケジュールに基づいてウエハをロット毎に処理していく。
【0005】
ところが、例えば製品の納入先からの要請や生産調整、プロセスの試験などの理由により、スケジュールには含まれていない他のFOUP内のウエハを緊急的に処理する必要が生じる場合がある。従来、このような緊急的なウエハの処理は、例えば現在実行中のロットに対する液処理が終了するのを待ってから、次のロットの処理を開始する前に、緊急に処理するウエハのロット(以下、優先ロットという)の処理を優先して開始したり、また現在実行中のロットの処理を一旦すべて停止してから優先ロットの処理を開始したりするなどしていた。
【0006】
こうした従来法によれば、実行中のロットの処理が終了するのを待つ場合には、優先ロットの処理を開始する時期が後回しになってしまい緊急の処理が必要との要請に十分に応えることができない。また、現在実行中のロットの処理を一旦停止して優先ロットの処理を割り込ませる場合には、現行ロットの停止操作や優先ロット終了後の復帰操作など、普段は行わない操作が発生するため、これらの操作に失敗して不良品が発生するおそれもある。
【0007】
特許文献2には、例えばウエハに対してレジスト膜などの塗布処理や現像処理などの一連の処理を行う基板処理装置において、処理のフローが異なる優先ロットを割り込ませる場合にも、ロットの切り替えの際に発生するスループットの低下を抑える技術が記載されている。しかしながら当該技術においても実行中の処理を一旦停止する必要がある点については上述の液処理装置と共通しており、現行ロットの処理の停止操作や再開操作に係る既述の問題を解決することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−34490号公報:0020段落、図1
【特許文献2】特開平8−153765号公報:段落0146〜段落0168、図20〜図28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、他の基板に優先して処理開始すべき基板と、通常のスケジュールで処理される基板とを並行して処理することが可能な基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板処理装置は、基板を収納した複数の基板搬送容器を載置可能な容器載置部と、この容器載置部に載置された基板搬送容器に対して基板の受け渡しを行う受け渡し機構と、を含む基板搬入ブロックと、
この基板搬入ブロックから搬入された基板に対して同種の処理を行うため複数の処理ユニットと、前記基板搬入ブロックと各処理ユニットとの間で基板を搬送する基板搬送部とを含む処理ブロックと、
他の基板よりも処理を優先する優先基板が基板搬送容器により前記容器載置部に搬送されたときに、前記複数の処理ユニットの一部または全部が割り振られた優先処理ユニットのうち、次の基板の搬入が可能になった優先処理ユニットに、他の基板に優先して優先基板を搬入して処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記優先処理ユニットの割り振りは、前記容器載置部に優先基板を含む基板搬送容器が載置された後に行われること。
(b)前記優先処理ユニットの割り振りは、前記容器載置部に優先基板を含む基板搬送容器が載置される前に予め決められていること。
(c)前記優先処理ユニットの数は、優先基板の枚数に応じて変更されること。
【0012】
(d)前記優先基板の処理の優先度と優先処理ユニットの数とを対応付けるためのデータを記憶する記憶部を有し、優先基板には前記優先度が割り当てられ、前記制御部は、基板搬送容器内の優先基板の優先度に応じて優先処理ユニットの数を変更すること。
(e)優先基板には処理に許容される許容処理時間が決められ、前記制御部は、優先基板の許容処理時間を取得し、実際の処理時間が前記許容処理時間に近くなるように、優先処理ユニットの台数に対応させて記憶した推定処理時間に基づいて優先処理ユニットに割り振る処理ユニットの数を決定すること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同種の処理を並行して行うことが可能な複数の処理ユニットのうち、一部または全部の処理ユニットを優先処理ユニットに割り振って他の基板に優先して処理を開始すべき優先基板を処理し、他の処理ユニットが残されている場合には、当該処理ユニットにて優先基板以外の基板の処理を並行して行うことができる。このため、一方の処理が終わるまで他方の処理の開始を待ったり、優先基板の処理を実行するために他の基板の処理を停止、再開したりする特別な操作を必要とせず、必要なときに迅速に優先基板の処理を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る液処理装置の横断平面図である。
【図2】前記液処理装置の縦断側面図である。
【図3】前記液処理装置の内部構成を示す斜視図である。
【図4】前記液処理装置に搭載されている液処理ユニットの構成を示す説明図である。
【図5】前記液処理装置の電気的構成を示す説明図である。
【図6】優先処理ユニットの割り振り台数を決定する手法を説明する第1の説明図である。
【図7】優先処理ユニットの割り振り台数を決定する手法を説明する第2の説明図である。
【図8】優先処理ユニットへ割り振られる処理ユニットの順序を示す説明図である。
【図9】前記液処理装置にて優先基板の処理を行う動作の流れを示すフロー図である。
【図10】前記液処理装置の動作を示す第1の説明図である。
【図11】前記液処理装置の動作を示す第2の説明図である。
【図12】前記液処理装置の動作を示す第3の説明図である。
【図13】前記液処理装置の動作を示す第4の説明図である。
【図14】前記液処理装置の動作を示す第5の説明図である。
【図15】前記液処理装置の動作を示す第6の説明図である。
【図16】前記液処理装置の動作を示す第7の説明図である。
【図17】前記液処理装置の動作を示す第8の説明図である。
【図18】前記液処理装置の動作を示す第9の説明図である。
【図19】前記液処理装置の動作を示す第10の説明図である。
【図20】前記液処理装置の動作を示す第11の説明図である。
【図21】前記液処理装置の動作を示す第12の説明図である。
【図22】他の例に係る液処理装置の動作を示す第1の説明図である。
【図23】他の例に係る液処理装置の動作を示す第2の説明図である。
【図24】さらに他の例に係る液処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の基板処理装置に係る実施の形態として、基板であるウエハWに処理液である薬液を供給して基板に付着したパーティクルや汚染物質を除去する液処理を行う液処理装置1の構成について図1〜図5を参照しながら説明する。図1は液処理装置1の全体構成を示す横断平面図、図2は縦断側面図であり、これらの図に向かって左側を前方とすると、液処理装置1は複数枚のウエハWを収納した基板搬送容器であり、例えば最大で25枚のウエハWを搬送可能なFOUP6が載置されるFOUP載置部11と、このFOUP6からウエハWを取り出して液処理装置1内に搬入する搬送部12と、搬送部12にて取り出されたウエハWを後段の液処理ブロック14a、14bに受け渡すための受け渡し部13と、受け渡し部13から受け渡されたウエハWを液処理ユニット2に搬入して液処理を実行する液処理ブロック14a、14bと、を前方からこの順番に接続した構造となっている。また本実施の形態に係る液処理装置1は、上下に積層された2つの液処理ブロック14a、14bを備えている。
【0016】
FOUP載置部11は、例えば4個のFOUP6を載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各FOUP6を固定して搬送部12に接続する容器載置部としての役割を果たす。搬送部12は、各FOUP6との接続面に設けられた開閉扉を開閉する不図示の開閉機構と、FOUP6と受け渡し部13との間でのウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構である搬入出アーム121とを共通の筐体内に設けた構造となっている。
【0017】
搬入出アーム121は例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在及び、回動、昇降自在に構成された搬送アーム及びその駆動部から構成されており、搬送部12と受け渡し部13とを区画する区画壁に設けられた第1の開口部123を介して、受け渡し部13との間でウエハWの受け渡しを行う役割を果たす。
【0018】
受け渡し部13は、前後を搬送部12及び液処理ブロック14a、14bに挟まれた位置に設けられた筐体内の空間であり、例えば搬送部12側の第1の開口部123に接続された第1の受け渡し棚133と、この第1の受け渡し棚133の上方位置及び下方位置に各々設けられ、当該第1の受け渡し棚133と各液処理ブロック14a、14b側の区画壁に設けられた第2の開口部132a、132bとの間で、液処理前後のウエハWの受け渡しを行うための第2の受け渡し棚131a、131bと、を設けた構造となっている。各第2の受け渡し棚131a、131bは例えば8枚のウエハWを載置可能である。
【0019】
また図1に示すように、受け渡し部13内には、上下方向に昇降自在、前後方向に進退自在に構成された昇降搬送機構134が設けられている。この昇降搬送機構134は、第1の受け渡し棚133と第2の受け渡し棚131a、131bとの間でウエハWの搬送を行う役割を果たす。
以上に説明したFOUP載置部11、搬送部12、受け渡し部13は、本実施の形態の基板搬入ブロックを構成している。
【0020】
受け渡し部13の後段には、当該受け渡し部13に隣接して2つの液処理ブロック14a、14bが上下に積層して配置されている。これらの液処理ブロック14a、14bは、互いにほぼ同様の構成を備えており、ウエハWに対する液処理が実行される複数個、例えば10台の液処理ユニット2を筐体内に配置した構造となっている。各液処理ブロック14a、14bには、前後方向に伸びる、ウエハWの搬送路142a、142bが設けられており、この搬送路142a、142bを挟んで左右に各々5台の液処理ユニット2が互いに対向するように列設されている。
【0021】
図1〜図3に示すように各搬送路142a、142b内には、搬送路142a、142bに沿って移動可能、搬送路142a、142bの左右に設けられた各液処理ユニット2に向けて進退可能、そして鉛直軸回りに回転可能、昇降可能に構成され、各々本実施の形態の基板搬送部に相当するプロセスアーム141a、141bが設けられており、各々の液処理ブロック14a、14bに対応する受け渡し部13側の第2の受け渡し棚131a、131bと各液処理ユニット2との間でウエハWを搬送することができる。ここで図1〜図3には各液処理ブロック14a、14bに1台のプロセスアーム141a、141bを設けた例を示したが、液処理ユニット2の台数などに応じて2台以上のプロセスアーム141a、141bを設けてもよい。
【0022】
次に図4を参照しながら各液処理ブロック14a、14bに設けられた液処理ユニット2の構成について説明する。液処理ユニット2は、ウエハWに対する液処理、リンス洗浄、振切乾燥の各処理が実行される密閉された処理空間を形成するアウターチャンバー21と、このアウターチャンバー21内に設けられ、ウエハWをほぼ水平に保持した状態で回転させるウエハ保持機構23と、ウエハ保持機構23に保持されたウエハWの上面側に薬液を供給するノズルアーム24と、ウエハ保持機構23を取り囲むようにアウターチャンバー21内に設けられ、回転するウエハWから周囲に飛散した薬液を受けるためのインナーカップ22とを備えている。
【0023】
アウターチャンバー21は、図1〜図3に示すように互いに隣り合う他の液処理ユニット2とは区画された筐体内に設けられており、不図示のウエハ搬入口を介してプロセスアーム141a、141bによりウエハWが搬入出される。アウターチャンバー21の底面に設けられた26は、アウターチャンバー21の底面に溜まったDIWなどの排水を排出するための排水ライン、27はアウターチャンバー21内の雰囲気を排気するための排気ラインである。またウエハ保持機構23の内部には薬液供給路231が形成されており、回転するウエハWの下面に当該薬液供給路231を介して薬液を供給することができる。
【0024】
ノズルアーム24は、先端部に薬液供給用のノズルを備えており、不図示の駆動機構によってウエハ保持機構23に保持されたウエハW中央側の上方位置と、例えばアウターチャンバー21の外部に設けられた待機位置との間で前記ノズルを移動させることができる。インナーカップ22は、ウエハ保持機構23に保持されたウエハWを取り囲む処理位置と、この処理位置の下方へ退避した退避位置との間を昇降し、回転するウエハW表面に供給された各種の薬液を受け止めて、インナーカップ22の底面に設けられた排液ライン25を介してこれらの薬液を液処理ユニット2外へと排出する役割を果たす。
【0025】
次に各液処理ユニット2への薬液の供給機構について説明すると、ノズルアーム24に設けられたノズルは上面側供給ライン47に接続されており、この上面側供給ライン47はIPA供給ライン411と薬液供給中間ライン44とに分岐している。IPA供給ライン411はIPA供給部31に接続されており、このIPA供給部31は高い揮発性を利用してウエハWを乾燥させるためのIPAをウエハWの上面側に供給する役割を果たす。IPA供給ライン411にはマスフローコントローラ42が介設されており、所定量のIPAをノズルアーム24aに供給することができる。
【0026】
上面側供給ライン47から分岐したもう一方側の薬液供給中間ライン44は、切替弁43を介して3系統の薬液供給ライン412、413、414に接続されている。これらのうち、DIW供給ライン412の上流には、薬液処理後のウエハWに残存するDHF液やSC1液を除去するリンス液であるDIW(DeIonized Water)を供給するためのDIW供給部32が設けられている。SC1供給ライン413の上流側にはウエハW表面のパーティクルや有機性の汚染物質を除去する薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水との混合液)を供給するSC1供給部33が設けられている。そして残るDHF供給ライン414の上流側にはウエハW表面の自然酸化膜を除去する酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid)液という)を供給するDHF供給部34が設けられている。
【0027】
またこれらのDIW供給部32、SC1供給部33、DHF供給部34が接続された薬液供給中間ライン44は、ウエハWの下面に薬液を供給する薬液供給路231とも下面側供給ライン48を介して接続されている。図4中、45、46は、各々ノズルアーム24側、ウエハ保持機構23側への薬液供給量を調整するマスフローコントローラである。
【0028】
また液処理装置1には、例えば図1に示すように制御部5が接続されている。制御部5は例えばCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には当該液処理装置1の作用、即ち各液処理ブロック14a、14bの液処理ユニット2にウエハWを搬入して液処理を行った後、液処理後のウエハWをFOUP6に格納するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0029】
以上に説明した構成を備えた液処理装置1は、例えば他のロットに優先して緊急に処理する必要がある優先ロットが発生した場合に、直ちに優先ロットのウエハW(以下、優先ウエハWPという)の処理を開始すると共に、先行して処理を行っているロット内のウエハWについても並行して液処理を継続することができる構成となっている。以下、当該機能に係る詳細な構成について説明する。
【0030】
図5は液処理装置1の電気的構成を示すブロック図を示しており、各液処理ユニット2やプロセスアーム141a、141b、搬入出アーム121は、既述の制御部5(例えばCPU51と記憶部52とから構成されている)に接続されている。
【0031】
また制御部5には、ロット情報取得部53が接続されており、優先ロットのFOUP6内の優先ウエハWPの枚数やその優先度を表す情報、また優先ロットの処理を終えるまでに許容される処理時間に関する情報を取得することができる。ロット情報取得部53は、例えば液処理装置1のオペレータがこれらの情報を直接入力するタッチパネルなどのデータ入力部として構成してもよいし、例えばFOUP6に取り付けられたICタグやFOUP6の外面に印刷されたバーコードなどの情報を読み取るデータ読取部として構成してもよい。また、液処理装置1の外部から、通信手段を用いてこれらの情報を取得するデータ受信部として構成してもよいし、これ以外の方法で上述の各情報を取得してもよい。
【0032】
また例えば制御部5の記憶部52には、液処理ブロック14a、14bに合計20台設けられている液処理ユニット2の一部または全部を、優先ウエハWPの処理を行うための優先処理ユニット2Pに割り振り、各処理ユニット2、2Pにて優先ウエハWPと通常のウエハWとに対して並行して液処理を実行するための優先処理プログラム521が記憶されている。
【0033】
本実施の形態において、既述のロット情報取得部53においては、例えば全ての優先ロットについて優先ウエハWPの枚数に関する情報が取得される一方、優先度や許容処理時間に関する情報はこれらの情報は入力側の必要に応じていずれか一方の情報を取得することができるようになっている。また記憶部52には、例えば割り振り台数設定テーブル522や優先度設定テーブル523、処理時間推定テーブル524が記憶されている。そして優先度、許容処理時間のいずれの情報も取得しなかった場合、または優先度に関する情報を取得した場合には、割り振り台数設定テーブル522及び優先度設定テーブル523を用いて優先処理ユニット2Pに割り振る処理ユニット2の台数が決定される。一方、許容処理時間に関する情報を取得した場合には、処理時間推定テーブル524を用いて優先処理ユニット2Pに割り振る台数を決定するようになっている。
【0034】
図6は、割り振り台数設定テーブル522、優先度設定テーブル523及びこれらのテーブル522、523を用いて優先処理ユニット2Pへの割り振り台数を決定する手法を示した説明図である。割り振り台数設定テーブル522には、優先ロットのFOUP6内に収納された優先ウエハWPの枚数に応じて選択される優先処理ユニット2Pの基準の割り振り台数が記憶されている。本例に係る割り振り台数設定テーブル522では、優先ウエハWPが1枚〜9枚のときには優先ウエハWPと同数の優先処理ユニットWPが割り振られ、優先ウエハWPが10枚のときには10台の優先処理ユニットWPが割り振られるようになっている。
【0035】
一方、優先度設定テーブル523には、優先度の高さを表す「低、中、高、最高」の4つの情報に関連付けて、前記割り振り台数設定テーブル522にて選択された基準割り振り台数に乗算される係数が記憶されている。例えば優先ロットのFOUP6に最大収納可能枚数である25枚の優先ウエハWPが収容されていた場合には、優先処理ユニット2Pの基準割り振り台数は「10台」となる。そして優先度、許容処理時間に関する情報のいずれも取得しなかった場合(デフォルト状態)、または優先度が「中」であった場合には、前記基準割り振り台数に係数「1.0」が乗算されて優先処理ユニット2Pの割り振り台数は10台となる(ケース1)。そして、優先度が「低、高、最高」の場合には基準割り振り台数「10台」に係数「0.6、1.4、2.0」が各々乗算されて割り振り台数は「6台、14台、20台」となる(ケース2〜ケース3)。
【0036】
一方、FOUP6内の優先ウエハWPの枚数が例えば5枚の場合には、デフォルト、または優先度「中」で5台、優先度「低」にて3台の優先処理ユニット2Pが割り振られるが(ケース4、ケース5)、例えば優先度が「高」の場合には計算上7台の優先処理ユニット2Pが割り振られることになる(優先度が最高の場合も同様)。しかし、FOUP6に収容されている枚数を超える優先処理ユニット2Pを割り振っても、6台目以降の優先処理ユニット2Pには搬入する優先ウエハWPが存在しないので、この場合には優先ウエハWPと同数の優先処理ユニット2Pが割り振られる(ケース6)。
【0037】
このように、本例では優先ウエハWPの枚数が多いほど、またその優先度が高いほど、優先処理ユニット2Pの割り振り台数を増やすように構成されている。また、優先度設定テーブル523で選択された係数を乗じた値が端数となる場合には、例えば乗算結果を四捨五入したり繰り上げたりして実際の割り振り台数を決定するとよい。
【0038】
次にロット情報取得部52にて取得した許容処理時間に基づいて優先処理ユニット2Pの割り振り台数を決定する手法について図7を参照しながら説明する。図7は、処理時間推定テーブル524の一例を示しており、表の左右方向の列は優先処理ユニット2Pの割り振り台数を表しており、上下方向の行は優先ウエハWPの枚数が記載されている。そしてこれら各行と列とが交差するセル内には、その優先処理ユニット2Pの割り振り台数にて対象枚数の優先ウエハWPを処理したときに、要する概略の推定処理時間が記憶されている。例えば、4枚の優先ウエハWPを3台の優先処理ユニット2Pを用いて液処理を行った場合には、処理を終えるまでの概略の推定処理時間は「T0403」であることが分かる。
【0039】
このように、処理時間推定テーブル524には、優先ウエハ25枚、優先処理ユニット20台までの各場合における処理時間が記憶されている。但し、図6の(ケース6)でも説明したように、FOUP6に収容されている枚数を超える優先処理ユニット2Pを割り振る場合は考慮せず、この場合は図7中には「-」で表示してある。
【0040】
そして優先処理プログラム521は、許容処理時間に関する情報を取得すると、FOUP6内の優先ウエハWPの枚数に応じて、処理時間推定テーブル524に記載された推定処理時間の中から、例えば許容処理時間に最も近い推定処理時間を探索し、その推定処理時間に対応する台数を優先処理ユニット2Pに割り振るようにプログラムされている。このとき例えば許容処理時間を超えない範囲で当該許容処理時間に最も近い処理時間を探索するようにしてもよい。また、例えば取得した許容処理時間を満足する処理時間が処理時間推定テーブル524に記憶されていない場合には、例えば液処理装置1に設けられた表示部にエラー表示を行い、オペレータに許容処理時間の修正を促したり、許容処理時間に替えて優先度の情報を受け付けたりするように構成してもよい。
【0041】
以上に説明した割り振り台数設定テーブル522、優先度設定テーブル523及び処理時間推定テーブル524を用いて優先処理ユニット2Pへの割り振り台数が決定されたら、例えば図8に模式的に示した各液処理ユニット2に付した数字の小さい順に、各液処理ユニット2が優先処理ユニット2Pに割り振られる。例えば10台の液処理ユニット2が優先処理ユニット2Pに割り振られた場合には、「1〜10」までの液処理ユニット2が優先処理ユニットとなる。
【0042】
ここで図8に示した模式図において図8に向かって上から2行のカラム(載置部11に接続した状態で示してある)が下段側の液処理ブロック14b内の液処理ユニット2(1〜10)を示し、その下の2行のカラムが上段側の液処理ブロック14b内の液処理ユニット2(11〜20)を示している。また当図では、搬送部12や受け渡し部13、プロセスアーム141a、141bなどの記載は省略してある。当該模式図の構成については、後述する図10〜図24においても同様である。
【0043】
以上に説明した構成を備えた液処理装置1の作用について説明する。液処理装置1にて処理を開始すると、搬入出アーム121は載置ブロック11に載置されたFOUP6からウエハWを取り出し、第1の受け渡し棚133内にウエハWを載置する。昇降搬送機構134は、当該第1の受け渡し棚133からウエハWを取り出して、各液処理ブロック14a、14bに対応する第2の受け渡し棚131a、131bにウエハWを順次載置する。
【0044】
各液処理ブロック14a、14bではプロセスアーム141a、141bが第2の受け渡し棚131a、131bからウエハWを受け取り、液処理ユニット2の一つに進入して、当該ウエハWをウエハ保持機構23に受け渡す。ウエハWが保持されたらノズルアーム24をウエハW中央側の上方位置まで移動させ、インナーカップ22を処理位置まで上昇させて、ウエハ保持機構23によりウエハWを回転させながらウエハ保持機構23側のノズル及びウエハ保持機構23側の薬液供給路231よりウエハWの上下面両側にSC1液を供給する。これによりウエハWに薬液の液膜が形成されてアルカリ性薬液洗浄が行われる。
【0045】
アルカリ性薬液洗浄が終了すると、インナーカップ22が退避位置に移動し、またインナーカップ22及びウエハ保持機構23の薬液供給路231へDIWを供給することによりウエハW表面のSC1液を除去するリンス洗浄が実行される。
【0046】
リンス洗浄を終えたら振切乾燥実行し、しかる後、再びインナーカップ22を処理位置まで上昇させ、ウエハWを回転させながら、ノズルアーム24及びウエハ保持機構23の薬液供給路231より、ウエハWの上下面にDHF液を供給する。これによりこれらの面にDHF液の液膜が形成され、酸性薬液洗浄が行われる。そして所定時間の経過後、インナーカップ22を退避位置まで降下させ、薬液の供給系統を純水に切り替えて再びリンス洗浄を行う。
【0047】
リンス洗浄の後、インナーカップ22を処理位置まで上昇させ、液処理ユニット2の上面にIPAを供給しながらウエハWを回転させ、IPAの揮発性を利用したIPA乾燥を実行する。これによりウエハW表面に残存するリンス後の純水が完全に除去される。しかる後、インナーカップ22を退避位置まで退避させ、不図示の搬入出口を開き、液処理ユニット2内にプロセスアーム141a、141bを進入させて処理後のウエハWを搬出する。
【0048】
液処理を終えたウエハWは搬入時とは逆の経路で第2の受け渡し棚131a、131b、昇降搬送機構134、第1の受け渡し棚133、搬入出アーム121へと受け渡され、載置ブロック11のFOUP6内に格納される。
【0049】
液処理装置1は、以上に説明した動作を連続的に行うことにより、上下2段に設けられた液処理ブロック14a、14b内の合計20台の液処理ユニット2を並行して稼動させてウエハWの洗浄、乾燥を行うことができる。次に、図9のフロー図及び図10〜図17を参照しながら、これら20台の液処理ユニット2にウエハWを搬入し、液処理を実行する手順、及び液処理ユニット2の一部または全部を優先処理ユニット2Pに割り振って、優先ウエハWPの処理を実行し、その処理を終えたら通常のウエハWの処理を再開する手順の一例について説明する。以下に説明する図10〜図23の各図では、FOUP載置部11に載置されるFOUP6には「A、B、C、…」の符号を付し、これらのFOUP6に収納されているウエハWには、搬送される順に「A1〜A25、B1〜B25、C1〜C25、…」の符号を付して各FOUP6及びウエハWを区別してある。また各液処理ユニットは、図8に示したものと同様の「1〜20」の符号を付して区別する。また、各FOUP6には最大枚数の25枚のウエハWが収納されているものとして説明を行う。
【0050】
図9のフロー図に示すように、液処理装置1の稼動を開始すると(スタート)、通常のスケジュールに基づいてFOUP載置部11に載置されたFOUP6からウエハWを搬出し、各ウエハWについての液処理を実行する。本例に係る液処理装置1では、例えば図10(a)に示すように、FOUP載置台11に1番目のFOUP6(A)が載置されると、ここから1番目のウエハW(A-1)が取り出され、例えば下段側の液処理ブロック14bの前方側から見て左手、最奥位置の液処理ユニット2(1)に搬入されて液処理が開始される。
【0051】
次いで、2枚目のウエハW(A-2)は、上段側の液処理ブロック14aの前方側から見て左手、最奥位置の液処理ユニット2(11)に搬入されて液処理が開始され(図10(b))、3枚目のウエハW(A-3)は、下段側の液処理ブロック14bの左手、奥から2番目の液処理ユニット2(3)に搬入されて液処理が開始される(図11(a))。
【0052】
こうして、上段側、下段側の液処理ブロック14a、14bに交互に、左手の液処理ユニット2列の奥手側から手前側へ向けて各液処理ユニット2内にウエハWを搬入し、次いで手前側から見て右手の液処理ユニット2列についても、上下段交互に、奥手側から手前側へ向けてウエハWを搬入する。この結果、液処理装置1内では、図11(b)に示すように「A-1〜A-20」までのウエハWに対して、搬入された順に液処理が実行されることになる。
【0053】
ここで例えば各ウエハWについて液処理ユニット2内で実行される液処理に要する処理時間が等しいとすると、1番目にウエハWを搬入した液処理ユニット2(1)において最初にウエハW(A-1)に対する液処理が終了することになる。ウエハW(A-1)の液処理が終了すると、図12(a)に示すように、当該ウエハWと入れ替えて、次のウエハW(A-21)を搬入して液処理を開始し、このように液処理を終えた各液処理ユニット2順にウエハWの入れ替えが行われる。液処理装置1では、優先ロットの処理を介する要求がない限り、上述の搬送スケジュールに基づいて液処理が実行されることになる(図9のフロー図のステップS101〜ステップS102;NO)。
【0054】
ここで図12(a)に示したように、上段側液処理ブロック14aの液処理ユニット2(11)にてウエハW(A-22)の搬入を終えたところで、図12(b)に示すようにFOUP載置部11上に優先ロットのFOUP6(B)が載置された場合について考える(図9のステップS102;YES)。ここで以下、優先ロットのFOUP6及び優先ウエハWPには、右上向きの斜線のハッチを付して通常のロットと区別することにする。
【0055】
FOUP載置部11に優先ロットのFOUP6(B)が載置されると、ロット情報取得部53では当該優先ロットの優先ウエハWPの枚数や優先度、許容される処理時間などの情報を取得し(ステップS103)、図6や図7を用いて説明した手法により優先処理ユニット2Pに割り振る液処理ユニット2の台数を決定する(ステップS104)。優先処理ユニット2Pの台数が決まったら、図8に示した数字の小さい順に各液処理ユニット2を優先処理ユニット2Pとして選択する(ステップS105)。
【0056】
例えば10台の液処理ユニット2を優先処理ユニット2Pに割り振る場合について説明すると、図12(b)に太い線で囲んで示した下段側の液処理ブロック14bの液処理ユニット2(1〜10)が優先処理ユニット2Pに割り振られる。そして通常のスケジュールに基づけば、次にウエハWを搬入可能となる液処理ユニット2(3)にはウエハW(A-23)が搬入されるところ、当該ユニットは優先処理ユニット2P(3)のであるので、通常のウエハW(A-22)に優先して優先ウエハWP(B-1)が搬入される(図12(b))。
【0057】
次いで、ウエハWを搬入可能となるのは上段側の処理ユニット2(13)であり、こちらは優先処理ユニット2Pではないので通常のウエハW(A-23)の搬入、処理が行われる(図13(a))。このようにして、下段側の優先処理ユニット2Pには優先ウエハWPが優先して搬入され(例えば図13(b)では優先処理ユニット2P(5)に優先ウエハWP(B−2)が搬入されている)、下段側の液処理ユニット2には通常のウエハWが搬入されていく(例えば図14(a)では液処理ユニット2(15)に、通常のウエハW(A-24)が搬入されている)(図9のフロー図のステップS106)。
【0058】
図14(b)は、下段側の全ての優先処理ユニット2Pにて、先行して処理されていた通常のウエハWが優先ウエハWPに入れ替えられた直後の状態を示している。このとき、上段側の液処理ユニット2では、優先ロットのFOUP6(B)の次にFOUP載置部11に載置された通常ロットのFOUP6(C)内のウエハWについての処理が開始されている。優先ロットのFOUP6(B)内に未処理の優先ウエハWPが残っている限り、優先処理ユニット2Pと通常の液処理ユニット2に振り分けて優先ウエハWPまたはウエハWを搬送する動作が継続される(図9のフロー図のステップS107;NO)。
【0059】
次に、優先ウエハWPの処理を終了する手順について説明すると、図15(a)は、優先処理ユニット2P(2)に25枚目の最後の優先ウエハWP(B−25)が搬入され、次いで上段側の液処理ユニット2(12)に通常のウエハW(C−22)が搬入され直後の状態を示している。この後、優先ウエハWPが残っている場合には、優先処理ユニット2P(4)には次の優先ウエハWPが搬入されることになるが、この例では次に搬入する未処理の優先ウエハWPが存在しないので、当該優先処理ユニット2Pには通常のウエハW(C-23)が搬入される(図15(b))。
【0060】
この後、上段側の液処理ユニット2(4)、下段側の優先処理ユニット2P(6)に、順次、通常のウエハWが搬入され(図16(a)、図16(b))、こうして優先処理ユニットWPが通常のウエハWに置き替えられる。図17(a)は最後の優先ウエハWP(B-25)が優先処理ユニット2P(2)から搬出される直前の状態を示しており、このとき液処理装置1には次の通常ロットのFOUP6(D)についてのウエハW(D-1〜D25)の搬入が開始されている。
【0061】
そして優先処理ユニット2P(2)から当該優先ウエハWP(B-25)が搬出されて、通常のウエハW(D-16)が搬入されると、FOUP6(B)内の優先ウエハWP(B-1〜B-25)の処理が終了し(図9のフロー図のステップS107;YES)、「1〜10」までの液処理ユニット2が優先処理ユニット2Pに割り振られた状態が解除されて、通常のスケジュールに基づいてウエハWの搬送、液処理が実行されることになる(ステップS101)。
【0062】
ここで例えば「C」のFOUP6も緊急ロットである場合には、例えば連続して搬送される複数の優先ロット内の全ての優先ウエハWについて一括して枚数情報と優先度や許容処理時間の情報を取得して、優先処理ユニット2Pの割り振りを行ってもよい。また例えば、「B、D」と間欠的に優先ロットのFOUP6が搬送されてくる場合もあるので、例えば先頭のFOUP6「B」について優先処理ユニット2の割り振りの判断を行い、FOUP6「D」からの優先ウエハWPの搬出時に、先に実行された優先処理ユニット2Pの割り振り状態が解除されていない場合には、その状態を維持してFOUP6「D」の優先ウエハWPの処理を行うようにしてもよい。
【0063】
以上、図12(b)〜図17(a)では、10台の液処理ユニット2を優先処理ユニット2Pに割り振って優先ウエハWPの液処理を行う例について説明したが、例えば図6に示した(ケース2)のように優先処理ユニット2Pの割り振り台数が6台の場合には、例えば図8に示した順番に基づいて優先処理ユニット2Pに割り振られる液処理ユニット2を決定する。そして図12(a)の状態の次の動作としては、図18(a)に示すように優先処理ユニット2P(3)に優先ウエハWP(B-1)を搬入し、こうして下段側の6台の優先処理ユニット2P(1〜6)では優先ウエハWPの液処理を実行し、残る液処理ユニット2(7〜20)では通常のウエハWの処理が並行して実行されることになる(図18(b))。
【0064】
また図19(a)〜図21は、例えば14台の液処理ユニット2(1〜14)を優先処理ユニット2Pに割り振った場合における優先ウエハWPの搬入順序の例を示している。この例では、図12(a)の状態の次の動作としては、下段側の優先処理ユニット2P(3)に優先ウエハWP(B-1)が搬入され(図19(a))、続く上段側の処理ユニット2についても優先処理ユニット2P(13)に割り振られているので、優先ウエハWP(B-2)が搬入される(図19(b))。
【0065】
そして続く下段側の優先処理ユニット2P(5)には優先ウエハWP(B-3)が搬入されるが(図20(a))、この次の液処理ユニット2(15)は優先処理ユニット2Pに割り振られていないので通常のウエハW(A-23)が搬入される(図20(b))。このようにして各液処理ユニット2、2PにウエハW、WPが搬入され、図21に示すように下段側の全てと上段側の最奥位置から数えて手前側2番目までとの合計14台の優先処理ユニット2P(1〜14)にて優先ウエハWPの液処理が実行され、残る液処理ユニット(15〜19)では通常のウエハWの液処理が並行して行われる。
【0066】
また図示は省略するが、図6の(ケース4)に示したように20台の全ての液処理ユニット2が優先処理ユニット2Pに割り振られる場合もある。この場合には、FOUP6「A」の通常のウエハWについての液処理が一旦停止される。そして全優先処理ユニット2PがFOUP6(B)の優先ウエハWPに置き替えられ、こうして優先ロットの処理を終えた後、再びFOUP6(A)のウエハWの液処理を開始する動作が自動的に実行される。
【0067】
本実施の形態に係る液処理装置1によれば以下の効果がある。同種の液処理を並行して行うことが可能な複数の液処理ユニット2のうち、一部または全部の処理ユニットを優先処理ユニット2Pに割り振って、通常のウエハWに優先して処理を開始すべき優先ウエハWPの液処理を行い、他の液処理ユニット2が残されている場合には、当該液処理ユニット2にて優先ウエハWP以外の通常のウエハWの処理を並行して行うことができる。このため、一方の液処理が終わるまで他方の液処理の開始を待ったり、優先ウエハWPの液処理を実行するために他のウエハWの処理を停止、再開したりする特別な操作を必要とせず、必要なときに迅速に優先ウエハWの液処理を開始することができる。
【0068】
ここで優先処理ユニット2Pに割り振られる液処理ユニット2を特定する手法は、例えば図8に示したように各液処理ユニット2の割り振り順序を予め決定しておく場合に限定されない。例えば図9のステップS104にて優先処理ユニット2Pの割り振り台数を決定した後、例えば図22(a)〜図23に示すように、次のウエハWが搬送される位置の液処理ユニット2から、決定された台数分だけ、液処理の終了する順(言い替えるとウエハWが搬入される順)に優先処理ユニット2Pに割り振るようにしてもよい。
【0069】
図22(a)〜図23の例は上述の割り振り例を示しており、図12(a)の状態の次の動作として、6台の優先処理ユニット2P(3、5、7、13、15、17)が割り振られ、先行する液処理の終わる優先処理ユニット2Pから「3→13」の順番で優先ウエハWP(B-1、B-2)が搬入された状態(図22(a)、図22(b))と、さらに「5→15→7→17」の順番で優先ウエハW(B-3〜B-6)が搬入された後、後段の通常ロットのFOUP6(C)についての液処理が開始された状態(図23)と、を示している。
【0070】
優先処理ユニット2Pに割り振る液処理ユニット2の増減単位は、図8に例示したように、1台ごとに増減する場合に限定されない。例えば搬送路142a、142bを挟んで対向する2台の液処理ユニット(例えば液処理ユニット2の「1と2、11と12」)からなる液処理ユニット群を増減単位としてもよいし、搬送路142a、142bに沿って並ぶ5台の液処理ユニット(例えば液処理ユニット2の「1、3、5、7、9」、「11、13、15、17、19」)からなる液処理ユニット群を増減単位としてもよい。
【0071】
また図6に示した例では、優先ロット内の優先ウエハWPの枚数に応じて選択される優先処理ユニット2Pの基準の割り振り台数に、当該優先ウエハWPの処理の優先度に応じて選択される係数を乗じた値を優先処理ユニット2Pの実際の割り振り台数とする例を示したが、優先度に応じて優先処理ユニット2Pの台数を変更する手法はこれに限定されない。例えば優先度と対応付けて優先処理ユニット2Pへの割り振り台数を設定して記憶部52に記憶しておき、優先度についての情報を取得したら、これに対応する割り振り台数を読み出して、優先処理ユニット2Pの台数を決定するようにしてもよい。
【0072】
さらに上述の各例では、例えば優先処理ユニット2Pに割り振られていない液処理ユニット2に優先ウエハWPを搬入するケースは含まれていないが、これを否定するものではない。例えば図14(b)に示すように通常ロットのFOUP6(A)についての液処理を終えた後、通常ロットのFOUP6(C)がFOUP載置部11に搬送されて来ていない場合には、例えば図14(b)に示した処理ユニット2(19、12、14、16、18、20)に優先ウエハWを搬入して液処理を実行してもよい。
【0073】
さらに上述の各例では、例えば通常のウエハW及び優先ウエハWPの液処理に要する時間が同じ場合について説明したが、これらの処理時間は例えばロット毎やウエハW、WP毎に異なっていてもよい。この場合は、図10(a)〜図17(b)に示した上下段交互に、奥手側から手前側へ向けて並んだ液処理ユニット2(優先処理ユニット2P)に順番にウエハW(優先ウエハWP)が搬送される例とは異なり、次にウエハWを搬入可能となる液処理ユニット2(優先処理ユニット2P)の順番がずれてくる。この場合においても、次にウエハW(優先ウエハWP)を搬入可能となるユニットが液処理ユニット2であるか優先処理ユニット2Pであるかを把握し、そのユニットに応じて搬入するウエハW(優先ウエハWP)を選択することで通常のウエハW及び優先ウエハWPの液処理を並行して実行することが可能である。また、処理の内容によって液処理の時間が異なる場合には、記憶部52にはこの処理の種類に対応した数の処理時間推定テーブル524が記憶されている。
【0074】
また液処理装置1が同種の液処理を実行可能な複数の液処理ユニット2を備えている場合には、例えば配管制約などの問題から、既述のDHF、SC1液に加え、一部の液処理ユニット2のみについて金属不純物の除去を行うSC2液(塩酸と過酸化水素水との混合液)の供給が可能な構成となっている場合などがある。図24には、このような特別な処理が可能な液処理ユニット2(1〜10)を左上向きの斜線のハッチで塗りつぶして示してある。このとき、優先ロットの優先ウエハWPが前記の特別な処理を必要な場合には、優先処理ユニット2Pを割り振りは当該特別な処理を必要な液処理ユニット2(1〜10)の範囲内で行われる(図24の例では例えば優先処理ユニット2P(1〜6))。そして通常のウエハWの液処理については、当該通常のウエハWについても特別な処理を必要とする場合には、特別な処理の可能な残る液処理ユニット2(図24では液処理ユニット2(7〜9))で処理が行われ、特別な処理が必要でない場合には、残る全ての液処理ユニット2(7〜20)で通常の液処理が行われる。
【0075】
このほか上述の例では、ウエハWの枚数や優先度、許容処理時間に応じて優先処理ユニット2Pに割り振る例について説明したが、優先処理ユニット2Pの台数や位置は変更しなくてもよい。例えば図Hに示した下段側の10台の液処理ユニット2(1〜10)については、優先ロットが搬送されてきた場合には常に優先処理ユニット2Pに割り振るように固定してもよい。
さらには、上述の液処理装置1においては、各々10台の液処理ユニット2を備える液処理ブロック14a、14bが上下に2段積み重ねられた例を用いて説明したが、各液処理ブロック14a、14bに設けられる液処理ユニット2の台数、液処理ブロック14a、14bの数を適宜増減してもよいことは勿論である。
【0076】
また流体を使う処理は上述の液処理に限られるものではなく、例えばウエハWにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)などの蒸気を供給してウエハWの表面を疎水化する処理装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
W ウエハ
WP 優先ウエハ
1 液処理装置
11 FOUP載置部
12 搬送部
121 搬入出アーム
13 受け渡し部
14a、14b
液処理ブロック
141a、141b
プロセスアーム
2 液処理ユニット
2P 優先処理ユニット
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納した複数の基板搬送容器を載置可能な容器載置部と、この容器載置部に載置された基板搬送容器に対して基板の受け渡しを行う受け渡し機構と、を含む基板搬入ブロックと、
この基板搬入ブロックから搬入された基板に対して同種の処理を行うため複数の処理ユニットと、前記基板搬入ブロックと各処理ユニットとの間で基板を搬送する基板搬送部とを含む処理ブロックと、
他の基板よりも処理を優先する優先基板が基板搬送容器により前記容器載置部に搬送されたときに、前記複数の処理ユニットの一部または全部が割り振られた優先処理ユニットのうち、次の基板の搬入が可能になった優先処理ユニットに、他の基板に優先して優先基板を搬入して処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記優先処理ユニットの割り振りは、前記容器載置部に優先基板を含む基板搬送容器が載置された後に行われることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記優先処理ユニットの割り振りは、前記容器載置部に優先基板を含む基板搬送容器が載置される前に予め決められていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記優先処理ユニットの数は、優先基板の枚数に応じて変更されることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記優先基板の処理の優先度と優先処理ユニットの数とを対応付けるためのデータを記憶する記憶部を有し、
優先基板には前記優先度が割り当てられ、
前記制御部は、基板搬送容器内の優先基板の優先度に応じて優先処理ユニットの数を変更することを特徴とする請求項2または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
優先基板には処理に許容される許容処理時間が決められ、
前記制御部は、優先基板の許容処理時間を取得し、実際の処理時間が前記許容処理時間に近くなるように、優先処理ユニットの台数に対応させて記憶した推定処理時間に基づいて優先処理ユニットに割り振る処理ユニットの数を決定することを特徴とする請求項2、4、5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を収納した複数の基板搬送容器を載置可能な容器載置部と、基板に対して同種の処理を行うための複数の処理ユニットと、を用い、
前記容器載置部に載置された基板搬送容器から通常基板を取り出して前記処理ユニットに搬送し、当該通常基板に対して処理を行う工程と、
通常基板を収納した基板搬送容器が載置されている容器載置部以外の容器載置部に、通常基板よりも処理を優先する優先基板が収納された基板搬送容器を載置する工程と、
前記複数の処理ユニットの一部または全部が割り振られた優先処理ユニットのうち次の基板が搬入可能になった優先処理ユニットに、通常基板に優先して優先基板を搬入して処理を行うと共に、優先処理ユニット以外の処理ユニットでは通常基板に対して処理を並行して行う工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
前記優先基板が収納された基板搬送容器が載置された後に、前記複数の処理ユニットの一部または全部に優先処理ユニットを割り振る工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記優先処理ユニットの割り振りは、前記容器載置部に優先基板を含む基板搬送容器が載置される前に予め決められていることを特徴とする請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板に対して同種の処理を行うための複数の処理ユニットを用いて基板を処理する方法に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項7ないし9のいずれか一つに記載の基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−82276(P2011−82276A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231969(P2009−231969)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】