基板処理装置および半導体装置の製造方法
【課題】ターゲットの角度を調整可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、イオンを発生させるイオン源と、該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、該ターゲットを保持するターゲットホルダと、前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、を有している。ターゲットホルダに保持されたターゲットの角度を角度調整部により調整し、イオン源が発射したイオンビームを前記ターゲットに照射させて前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分を基板ホルダに保持された基板に堆積させる。
【解決手段】基板処理装置は、イオンを発生させるイオン源と、該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、該ターゲットを保持するターゲットホルダと、前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、を有している。ターゲットホルダに保持されたターゲットの角度を角度調整部により調整し、イオン源が発射したイオンビームを前記ターゲットに照射させて前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分を基板ホルダに保持された基板に堆積させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、半導体装置を作り込む基板に薄膜を形成する基板処理装置としては、真空容器内にスパッタリング装置を設けたもの、がある。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−124792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スパッタリング装置のターゲットの角度を調整することができないという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、ターゲットの角度を調整することができる基板処理装置およびそれを使用した半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
イオンを発生させるイオン源と、
該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、
該ターゲットを保持するターゲットホルダと、
前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、
前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、
を有している基板処理装置。
【発明の効果】
【0007】
この手段によれば、ターゲットの角度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施形態である基板処理装置を示す正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】その側面断面図である。
【図4】イオン源を示す側面断面図である。
【図5】ターゲットチャックを示しており、(a)は側面断面図、(b)は(a)のb−b矢視図、(c)は(b)のc−c線に沿う断面図である。
【図6】SPRAMの成膜例を示す断面図である。
【図7】入射角度別スパッタ粒子分布図である。
【図8】ターゲットの傾斜角度調整状態を示す各側面図である。
【図9】本発明の第二実施形態である基板処理装置のターゲットチャックを示す側面断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態である基板処理装置を示しており、(a)は正面断面図、(b)は側面断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態である基板処理装置を示しており、(a)は正面断面図、(b)は側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
図1〜図8は本発明の第一実施形態を示している。
本実施形態において、本発明に係る基板処理装置は、半導体装置の一例であるMRAM(Magnetic Random Access Memory)を製造するものとして構成されている。
MRAMはスピン注入磁化反転方式を利用したメモリーである。MRAMの製造方法においては、数原子層レベルの薄膜を積層して、MTJ(Magnetic tunnel Junction) 素子を作製する。絶縁膜(目標値で1nm以下のMgO膜(酸化マグネシウム膜))を電子の反転を利用するための磁性膜(CoFeB膜)によって挟んだ極薄膜が、膜の中心部分である。
本実施形態に係る基板処理装置は、基板としてのシリコンウエハ(以下、ウエハという)に複数の薄膜を積層する。
【0010】
図1〜図3に示されているように、本実施形態に係る基板処理装置10は、直方体函形状に形成された第一収納容器としての第一真空容器11を備えており、第一真空容器11は処理室12を構成している。第一真空容器11の正面壁には、処理室12に基板としてのウエハ1を搬入したり搬出するための開口13が設けられている。開口13はゲートバルブ14によって開閉される。
【0011】
処理室12の右側壁にはチルト装置15が設置されている。チルト装置15はチルト軸16を所定角度旋回可能に構成されており、例えば、90度だけ往復回転させる。チルト軸16は処理室12内に挿入されている。チルト軸16はチルトブロック17を処理室12内において支持する。チルトブロック17には基板ホルダとしてのウエハホルダ18が配置されている。チルトブロック17内には回転装置19が設置されている。回転装置19はウエハホルダ18を回転させる。
チルト装置15はウエハホルダ18が保持したウエハ1を、水平姿勢と垂直姿勢との間でチルトさせる。
処理室12の底壁には昇降装置20が設置されている。昇降装置20は処理室12内に配置された邪魔板21を昇降させる。邪魔板21はチルトブロック17の背面側に配置されており、昇降装置20によって昇降される。
【0012】
第一真空容器11の背面壁には、直方体函形状に形成された第二収納容器としての第二真空容器22が連結されている。第二真空容器22はターゲット室23を構成している。ターゲット室23の容積は処理室12の容積よりも大きい。すなわち、処理室12の容積はターゲット室23の容積よりも小さい。
第一真空容器11と第二真空容器22との合わせ壁は、処理室12とターゲット室23とを仕切る隔壁24を構成している。隔壁24には連通孔25が所定の位置に設けられている。所定の位置は、後述するターゲットに照射されて反射したイオンの一部が通過し、他部が隔壁24の壁面に衝突する位置、である。
第二真空容器22の背面壁下部には、第一真空ポンプとしてのターボ分子ポンプ26と、第二真空ポンプとしてのクライオポンプ27が設置されている。ターボ分子ポンプ26およびクライオポンプ27はターゲット室23、処理室12および後述するイオン源室を排気する。
【0013】
第二真空容器22の背面壁の上部には回転装置28が水平方向に設置されている。回転装置28の回転軸29はターゲット室23に前後方向に延在するように水平に挿入されている。回転軸29はターゲットホルダ30をターゲット室23内で支持している。
ターゲットホルダ30は錐形状で形成されている。具体的にはターゲットホルダ30は、八角錐(八方錐)台(切頭八角錐)形状に形成されており、錐の回転軸線(頂点の垂線)31に回転軸29が連結されている。図3に示されているように、錐の回転軸線31と錐面32とがなす夾角33は鋭角で設定され、例えば45度に設定されている。すなわち、回転軸線31と直交する面31Aと錐面32とがなす夾角33Aは、45度である。
錐面32は台形形状の側壁面34を8枚備えている。8枚の側壁面34は周方向に等間隔にそれぞれ位置している。8枚の側壁面34には角度調整部としてのターゲットチャック35が1台ずつ設置されている。図5に示されているように、ターゲットチャック35はターゲット36に対して傾斜可能に保持する。側壁面34に平行に保持されたターゲット36は、回転軸29に対して45度分傾斜する。ターゲット36は、平板状の正方形で形成されている。
隣り合うターゲット36、36の隣接する一端同士は、鋭角としての40度の夾角を構成する。つまり、隣接するターゲット36、36間の間隙が、回転軸線31を直交する面31A側の方が回転軸末端側より大きく形成されている。したがって、隣り合うターゲット36、36同士は、充分な間隙を挟む。
なお、第二真空容器22は回転軸線より下方に配置されている。
【0014】
第二真空容器22の底壁には射出孔39が設けられている。第二真空容器22の底壁下面にはイオン源40が設置されている。射出孔39の上方にはターゲット36が位置する。45度傾斜したターゲット36は射出孔39と連通孔25とに対向する。
【0015】
図4に示されているように、イオン源40はイオン源室41、フィラメント42、平板状の加速電極43、平板状の減速電極44を備えている。
イオン源室41内はターゲット室23に射出孔39によって連通している。フィラメント42はイオン源室41内に設けられる。加速電極43および減速電極44は射出孔39を横断するように設けられる。加速電極43および減速電極44はフィラメント42に対向する。フィラメント42にはフィラメント電源およびアーク電源から電力が供給され、加速電極43および減速電極44には加速電源および減速電源から電圧が印加される。
加速電極43および減速電極44は耐熱金属、例えば、モリブデン(Mo)によって形成される。加速電極43と減速電極44とは所定間隙dを置いて平行に配される。加速電極43は多数個の加速通過孔43aを有する。減速電極44は多数個の減速通過孔44aを有する。
減速通過孔44aは対向する加速通過孔43aに対して、軸心がずれる(偏心する)ようにそれぞれ配置される。この配置は、加速電極43からのイオンビーム45を偏向させるので、図4に示されているように、イオンビーム45はターゲット36上において収束する。イオンビーム45の収束は、イオンビーム密度(電流密度)を高め、成膜速度を増大させるので、不純物の発生を抑制し、ウエハ1の汚染を防止する。また、この配置は、ターゲット36を小型化し、イオン源40を小型化する。
【0016】
イオン源40にはガス供給源50が接続されている。ガス供給源50はイオン化されるガスをイオン源室41内に供給する。ガスとしては、通常、アルゴン(Ar)ガスが用いられる。
アルゴンガスがイオン源室41内に供給され、フィラメント42にアーク電力が供給されると、フィラメント42とイオン源室41の側壁との間においてアーク放電が起こる。このアーク放電により、アルゴンのプラスイオン(以下、アルゴンイオンという)と電子とが混在した状態(プラズマ状態)になる。加速電極43および減速電極44はアルゴンイオンに運動エネルギを与えることにより、アルゴンイオンを加速通過孔43aと減速通過孔44aとを通して、ターゲット室23内に引き出す。
ターゲット室23に引き出されたアルゴンイオンは、イオンビーム45となってターゲット36に照射する。ターゲット36に照射したイオンビーム45は、ターゲット36の構成材料を成分とする粒子(以下、スパッタ粒子という)46をターゲット36から叩き出す。スパッタ粒子46は大きな平均自由行程でターゲット室23および処理室12内を飛翔し、処理室12内のウエハ1上に付着する。ウエハ1上に付着したスパッタ粒子46は堆積することにより、ターゲット36の構成材料を成分とする薄膜を形成する。
【0017】
図5はターゲットチャックの第一実施形態を示している。
ターゲットチャック35はボス51を備えており、ボス51はターゲットホルダ30内から側壁面34に直交するように突き出されている。ボス51にはボールジョイント52の一端が三次元方向に回転可能に連結されている。側壁面34にはベローズ53が設置されている。ベローズ53の両端には内側フランジ54と外側フランジ55が配置されている。内側フランジ54は側壁面34に固定されており、外側フランジ55には長方形平盤形状のターゲット保持体としてのバッキングプレート56がねじ57aでねじ止めされて、固定されている。バッキングプレート56の中心であって内面にはボールジョイント52の他端が固定されており、バッキングプレート56の外面にはターゲット36が溶着されている。ベローズ53、内側フランジ54、外側フランジ55により、ボス51およびボールジョイント52、冷却水継手59はターゲット室23内の雰囲気から隔離されている。
バッキングプレート56の両端部には一対の調整ボルト57、57が位置調整可能にねじ込まれている。一対の調整ボルト57、57のねじ込み量を調整することにより、バッキングプレート56に溶着されたターゲット36の傾斜角度を調整することができる。
バッキングプレート56の内部には冷却水路58が形成されており、冷却水路58には冷却水継手59が接続されている。冷却水が冷却水路58を流れることにより、バッキングプレート56およびターゲット36は冷却される。
【0018】
図3に示されているように、基板処理装置10はコントローラ60を備えており、コントローラ60はパーソナルコンピュータまたはパネルコンピュータ等によって構成されている。コントローラ60はチルト装置15、ウエハホルダ18、回転装置19、昇降装置20、ターボ分子ポンプ26、クライオポンプ27、回転装置28、イオン源40およびガス供給源50等々を制御する。
【0019】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を、前記構成に係る基板処理装置を使用したSPRAM(Spin Transfer Torque Magnetic Rondom Access Memory) の製造方法における薄膜形成工程について説明する。
SPRAMはMRAMの一種であり、スピン注入磁化反転するものである。
図6はSPRAMの成膜例を示す断面図である。
この成膜例では、SiO2 (二酸化珪素)もしくはSi(シリコン)材で構成されるウエハ上に、Ta(タングステン)膜、Ta膜上にPtMn膜、その上にCoFe膜、第一のRu(ルテニウム)膜、第一のCoFeB膜、MgO膜、第二のCoFeB膜、第二のTa膜、第二のRu膜の順に積層され、トータル6種類の膜種にて9層の金属膜が積層される。
【0020】
以下の基板処理装置の作動はコントローラ60が制御する。
初期状態において、ゲートバルブ14は開口13を閉じている。チルト装置15はチルトブロック17を水平姿勢に維持し、ウエハホルダ18を解除している。回転装置19は停止している。昇降装置20は邪魔板21を下限に位置させている。
ターゲットホルダ30はホームポジションを維持している。すなわち、ターゲットホルダ30はTaのターゲット36を保持したターゲットチャック35をイオン源40に対向させている。
処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧は、クライオポンプ27の排気により10-5Pa(パスカル)以上10-7Pa以下に維持されている。
【0021】
ウエハローディングステップにおいて、コントローラ60はクライオポンプ27からターボ分子ポンプ26に切り替え、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧を、10-3Pa以上10-4Pa以下に維持する。ゲートバルブ14の動作により開口13を開く。ウエハ移載装置(図示せず)はウエハ1を処理室12内へ予備室(図示せず)から搬入し、ウエハホルダ18上に移載する。ウエハホルダ18はウエハ1を保持する。
【0022】
減圧ステップにおいて、コントローラ60はゲートバルブ14によって開口13を閉じた後に、ターボ分子ポンプ26からクライオポンプ27に切り替え、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41を10-3Pa以上10-4Pa以下の内圧から10-6Paに真空引きする。
次いで、クライオポンプ27からターボ分子ポンプ26へ切り替え、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧を、10-7Paに維持する。
【0023】
成膜(Ta)ステップにおいて、ガス供給源50はアルゴンガスをイオン源室41に供給する。フィラメント42には電力が供給され、加速電極43および減速電極44には電圧が印加される。必要に応じて、中和電源がONされる。
チルト装置15はチルトブロック17を処理位置である垂直姿勢に移行させる。回転装置19はウエハ1を回転させる。昇降装置20は邪魔板21を所定位置へ上昇させる。
アーク電力が供給されると、イオン源40はイオンビーム45をTaで構成されるターゲット36に照射する。ターゲット36に照射したイオンビーム45はTaで構成されるスパッタ粒子46をターゲット36から叩き出す。スパッタ粒子46は処理室12内に飛翔し、ウエハホルダ18に保持されたウエハ1上に付着する。ウエハ1上に付着したスパッタ粒子46は堆積することにより、Ta膜を形成する。この時の処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧は、10-2Paに維持されている。
予め、設定された処理時間が経過すると、アーク電源がOFFされる。中和電源がONしている場合にはOFFさせる。この時の処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧は、10-2Pa以上10-3Pa以下に維持される。
【0024】
次の成膜(PtMn)ステップにおいて、回転装置28はターゲットホルダ30を回転して、PtMnのターゲット36をイオン源40およびウエハ1に対向させる。必要に応じて、フィラメント42の電力値を変更し、加速電極43および減速電極44の電圧値を変更する。
続いて、必要に応じて、供給量が調整されて、アルゴンガスがイオン源室41に供給され、フィラメント42には電力が供給され、加速電極43および減速電極44には電圧が印加され、必要に応じて、中和電源がONされる。回転装置19はウエハ1を回転させる。必要に応じて、昇降装置20は邪魔板21を所定位置へ上昇させる。
アーク電源がONされると、イオン源40はイオンビーム45をPtMnで構成されるターゲット36に照射する。ターゲット36に照射したイオンビーム45はPtMnで構成されるスパッタ粒子46をターゲット36から叩き出す。スパッタ粒子46は処理室12内に飛翔し、ウエハホルダ18に保持されたウエハ1のTa膜上に付着する。ウエハ1のTa膜上に付着したスパッタ粒子46は堆積することにより、PtMn膜を形成する。
予め、設定された処理時間が経過すると、アーク電源がOFFされる。中和電源がONしている場合にはOFFさせる。
【0025】
以降、コントローラ60は使用するターゲット36を前述した成膜ステップに準じて切り替えることにより、ウエハ1上に図6に示された各種の膜を順次成膜して積層する。
【0026】
最後の成膜ステップとして、第二のRu膜成膜ステップが終了すると、コントローラ60はウエハアンローディグステップを実施する。
ウエハアンローディングステップにおいては、フィラメント42への電力供給が停止され、加速電極43および減速電極44への電圧印加が停止され、必要に応じて、中和電源がOFFされると、ターゲットホルダ30はTaのターゲット36をホームポジションに戻す。回転装置19が回転を停止し、昇降装置20が邪魔板21を下限位置に下降させると、チルト装置15はチルトブロック17を水平姿勢に移行させる。イオン源室41へのアルゴンガスの供給を停止する。この時、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧が10-5Pa以上10-7Pa以下に維持される。
処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧が、10-3Pa以上10-4Pa以下に維持されると、ゲートバルブ14は開口13を開く。ウエハ移載装置は処理済のウエハ1をウエハホルダ18上からピックアップし、処理室12内から予備室へ搬出する(ウエハアンローディグする)。
【0027】
図7はイオンビームの入射角度別スパッタ粒子の角度分布を示している。
図7において、黒丸は実験値を示しており、白丸はコンピュータシミュレーションによる値を示している。
図7(a)は、イオン照射エネルギ450evをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角0°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(b)は、イオン照射エネルギ450evをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角60°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(c)は、イオン照射エネルギ450evをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角80°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(d)は、イオン照射エネルギ1kevをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角0°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(e)は、イオン照射エネルギ1kevをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角60°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(f)は、イオン照射エネルギ1kevをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角80°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7によれば、入射角度によってスパッタ粒子の角度分布が異なることが判る。
これは、入射角度の変更によりスパッタ粒子の角度分布を変更可能であることを意味する。
また、ターゲットの種類によってイオンビームの入射角度に対するスパッタ粒子の飛散角度や分布が異なることが知られている。
そこで、図8に示されているように、ターゲットチャック35によってターゲット36の傾斜角度を調整して、ターゲット36に対するイオンビーム45の入射角度Θを選定することにより、スパッタ粒子の角度分布を制御することが考えられる。
図8(a)は、ターゲットチャック35をイオンビーム45のターゲット36に対する入射角度Θが増加(45度超)する方向に調整した場合を示している。
図8(b)は、ターゲットチャック35をイオンビーム45のターゲット36に対する入射角度Θが減少(45度未満)する方向に調整した場合を示している。
例えば、ターゲット36の構成成分(Ta、PtMn)に対応して、入射角度を選定することにより、スパッタ粒子分布を最適値に制御し、もって、スパッタリング成膜(Ta膜、PtMn膜)の成膜レートおよび膜厚分布均一性を向上させることができる。
【0028】
ところで、イオンビームのアルゴンイオンは高運動エネルギを有するため、ターゲットにおいて反射したアルゴンイオン(以下、反跳粒子という)がウエハに衝突すると、ウエハに悪影響を及ぼすので、反跳粒子がウエハに衝突するのを防止することが望ましい。
一般に、反跳粒子はスパッタ粒子分布と似た分布を持つ、と考えられている。
そこで、ターゲットチャック35によってターゲット36の傾斜角度を調整して、ターゲット36に対するイオンビーム45の入射角度Θを選定することにより、反跳粒子がウエハに衝突するのを防止することができる。すなわち、ターゲットチャック35によってターゲット36の傾斜角度を調整することにより、ウエハ上における反跳粒子分布が無くなるように、または、極めて少なくなるように制御する。
【0029】
イオンビームは高運動エネルギを有するため、イオンビームがターゲットに衝突すると、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度は上昇する。
そこで、冷却水をバッキングプレート56内に敷設された冷却水路58に流すことにより、バッキングプレート56およびターゲット36を冷却し、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度上昇を防止する。好ましくは、冷却はイオンビームがターゲットに照射されている時に限らず、常時実施する。
なお、ターゲットホルダ30内が大気圧に維持されているので、冷却水継手59は真空環境に晒されていない。したがって、冷却水継手59にリークが発生しても、冷却水がターゲット室23に浸入することはない。つまり、冷却水継手59のシール構造を簡素化することができるし、冷却水継手59に接続する冷却水配管を樹脂等によって形成することができる。
他面、第二真空容器22内に大気圧を確保するターゲットホルダ30を構築するので、重量およびコストが増加する。
【0030】
前記実施形態によれば、次の効果のうち、少なくとも1つ以上の効果が得られる。
【0031】
1) ターゲットチャックによってターゲットの傾斜角度を調整することにより、スパッタ粒子分布を制御することができるので、成膜レートおよび膜厚均一性を最適化することができる。
【0032】
2) ターゲットチャックによってターゲットの傾斜角度を調整することにより、反跳粒子がウエハに衝突するのを防止することができるので、反跳粒子のウエハへの悪影響を防止することができる。
【0033】
3) 冷却水をバッキングプレート内に敷設された冷却水路に流すことにより、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度上昇を防止することができる。
【0034】
4) 冷却水継手を真空環境に晒さないので、真空環境への浸水を防止することができ、また、冷却水継手および冷却水配管を簡素化することができる。
【0035】
5) 錐形状のターゲットホルダであって、錐面において複数のターゲットを保持するターゲットホルダを備えているので、ターゲット室の容積を小さくすることができ、スループットの向上やフットプリント拡大の抑制をすることができる。また、複数のターゲット間に充分な間隙を挟むことができるので、種類の異なるターゲットが隣接設置された場合にも、クロスコンタミネーションを抑制することができる。
【0036】
図9は本発明の第二実施形態を示している。
本実施形態は第一実施形態とターゲットチャック、回転軸、ターゲットホルダの形態が異なる。すなわち、本実施形態に係るターゲットチャック35Aはブラケット61を備えており、ブラケット61はターゲットホルダ30の側壁面34に固定されている。ブラケット61には気密容器からなるケース62がヒンジ63によって回動可能に支持されており、ケース62は調整ボルト64によってブラケット61に位置規制される。ケース62の気密室には大気圧配管65の一端が接続されており、大気圧配管65の他端は回転軸29内を経由して大気に連通されている。ケース62の外側主面にはバッキングプレート56が固定されており、バッキングプレート56の冷却水継手59に接続された冷却水配管66は、ケース62の側壁を貫通して真空室であるターゲット室23内に引き出されて、回転軸29内に形成された冷却水路67に接続されている。回転軸29はターゲットホルダ30の錐の回転軸線(頂点の垂線)上を貫通して設けられている。回転軸29の末端には冷却水路67が設けられており、冷却水路67は、回転軸29の軸内、軸心をつたってターゲット室23外の冷却水系統に接続されている。回転軸29に冷却水路67より基端側には、大気圧配管65が接続される大気路67Aが設けられている。大気路67Aは回転軸29の軸内であって、冷却水路67よりも外周側を軸方向につたって、ターゲット室23外の大気と連通されている。
本実施形態においても、ターゲットの傾斜角度を調整することができるので、スパッタ粒子分布および反跳粒子分布を制御することができる。
また、冷却水をバッキングプレート内に敷設された冷却水路に流すことができるので、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度上昇を防止することができる。
本実施形態においては、ターゲットホルダを気密容器構造に構築しないで済むので、構造およびメンテナンスを簡単化することができる。他面、冷却水がリークすると、真空環境へ浸水してしまう。
【0037】
図10は本発明の第三実施形態を示している。
第三実施形態が第一実施形態と異なる点は、八角柱形状に形成されたターゲットホルダ30Aの各側壁面34Aにターゲットチャック35がそれぞれ設置されている点、ターゲットホルダ30Aおよびウエハホルダ18がターゲット室23に共に設置されている点、である。
本実施形態においても、ターゲットの傾斜角度を調整することにより、スパッタ粒子分布を制御することができるので、成膜レートおよび膜厚均一性を最適化することができる等、第一実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0038】
図11は本発明の第四実施形態を示している。
第四実施形態が第一実施形態と異なる点は、四角柱形状に形成されたターゲットホルダ30Bの各側壁面34Bにターゲットチャック35がそれぞれ設置されている点、ターゲットホルダ30Bおよびウエハホルダ18がターゲット室23に共に設置されている点、である。
本実施形態においても、ターゲットの傾斜角度を調整することにより、スパッタ粒子分布を制御することができるので、成膜レートおよび膜厚均一性を最適化することができる等、第一実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0040】
例えば、ターゲットホルダは、八角錐(八角錐台を含む。他の錐も同じ)に形成するに限らず、三角錐、四角錐、五角錐、六角錐、七角錐等々のように多角錐に形成してもよいし、円錐に形成してもよい。
また、ターゲットホルダは、八角柱または四角柱に形成するに限らず、三角柱、五角柱、六角柱、七角柱等々のように多角柱に形成してもよいし、円柱に形成してもよい。
【0041】
ターゲット間の汚染防止等のために、ターゲットをターゲットホルダに一つ置きに配置してもよい。例えば、異なる材質のターゲットを一つ置きに配置することは、複数種の膜を積層する場合に有効である。
しかし、ターゲットホルダの高速回転の点では不利になる。
【0042】
ターゲットホルダに対するターゲットの傾斜角度は、各ターゲット毎に相異させてもよい。ターゲットホルダに対するターゲットの傾斜角度は基本的には45度であるが、他方で、ターゲットの傾斜角度は均一性等を考慮した成膜条件の一つであるとも考えられる。したがって、ターゲットホルダに対するターゲットの傾斜角度は、例えば、ターゲットの材質によって最適値を選択することが望ましい。
【0043】
基板はウエハに限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等であってもよい。
【0044】
本発明の好ましい態様を付記する。
(1)イオンを発生させるイオン源と、
該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、
該ターゲットを保持するターゲットホルダと、
前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、
前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、
を有している基板処理装置。
(2)ターゲットホルダに保持されたターゲットの角度を角度調整部により調整し、イオン源が発射したイオンビームを前記ターゲットに照射させて前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分を基板ホルダに保持された基板に堆積する、半導体装置の製造方法。
(3)前記ターゲットホルダは、横断面形状の外郭線が、回転軸からの距離が相対的に長い第一領域と前記回転軸からの距離が相対的に短い第二領域とを複数有し、縦断面形状の外郭線の一部が前記基板ホルダ側に近づくに従って漸次前記回転軸からの距離を短くしている前記第二領域で前記ターゲットを保持するように構成されている(1)の基板処理装置。
(4)前記ターゲットホルダは、前記第二領域に前記ターゲットを載置するターゲット載置部と、該ターゲット載置部を冷却する冷却部とを有する(3)の基板処理装置。
【符号の説明】
【0045】
1…ウエハ(基板)、
10…基板処理装置、11…第一真空容器、12…処理室、13…開口、14…ゲートバルブ、
15…チルト装置、16…チルト軸、17…チルトブロック、18…ウエハホルダ(基板ホルダ)、19…回転装置、
20…昇降装置、21…邪魔板、
22…第二真空容器、23…ターゲット室、24…隔壁、25…連通孔、26…ターボ分子ポンプ(第一真空ポンプ)、27…クライオポンプ(第二真空ポンプ)、28…回転装置、29…回転軸、30、30A、30B…ターゲットホルダ、31…回転軸線(頂点の垂線)、31A…回転軸線と直交する面、32…錐面、33、33A…夾角、34、34A、34B…側壁面、35、35A…ターゲットチャック、36…ターゲット、
39…射出孔、40…イオン源、41…イオン源室、42…フィラメント、43…加速電極、44…減速電極、43a…加速通過孔、44a…減速通過孔、45…イオンビーム、46…スパッタ粒子(ターゲット成分粒子)、
50…ガス供給源、
51…ボス、52…ボールジョイント、53…ベローズ、54…内側フランジ、55…外側フランジ、56…バッキングプレート、57…調整ボルト、58…冷却水路、59…冷却水継手、
60…コントローラ、61…ブラケット、62…ケース、63…ヒンジ、64…調整ボルト、65…大気圧配管、66…冷却水配管、67…冷却水路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、半導体装置を作り込む基板に薄膜を形成する基板処理装置としては、真空容器内にスパッタリング装置を設けたもの、がある。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−124792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スパッタリング装置のターゲットの角度を調整することができないという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、ターゲットの角度を調整することができる基板処理装置およびそれを使用した半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
イオンを発生させるイオン源と、
該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、
該ターゲットを保持するターゲットホルダと、
前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、
前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、
を有している基板処理装置。
【発明の効果】
【0007】
この手段によれば、ターゲットの角度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施形態である基板処理装置を示す正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】その側面断面図である。
【図4】イオン源を示す側面断面図である。
【図5】ターゲットチャックを示しており、(a)は側面断面図、(b)は(a)のb−b矢視図、(c)は(b)のc−c線に沿う断面図である。
【図6】SPRAMの成膜例を示す断面図である。
【図7】入射角度別スパッタ粒子分布図である。
【図8】ターゲットの傾斜角度調整状態を示す各側面図である。
【図9】本発明の第二実施形態である基板処理装置のターゲットチャックを示す側面断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態である基板処理装置を示しており、(a)は正面断面図、(b)は側面断面図である。
【図11】本発明の第四実施形態である基板処理装置を示しており、(a)は正面断面図、(b)は側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
図1〜図8は本発明の第一実施形態を示している。
本実施形態において、本発明に係る基板処理装置は、半導体装置の一例であるMRAM(Magnetic Random Access Memory)を製造するものとして構成されている。
MRAMはスピン注入磁化反転方式を利用したメモリーである。MRAMの製造方法においては、数原子層レベルの薄膜を積層して、MTJ(Magnetic tunnel Junction) 素子を作製する。絶縁膜(目標値で1nm以下のMgO膜(酸化マグネシウム膜))を電子の反転を利用するための磁性膜(CoFeB膜)によって挟んだ極薄膜が、膜の中心部分である。
本実施形態に係る基板処理装置は、基板としてのシリコンウエハ(以下、ウエハという)に複数の薄膜を積層する。
【0010】
図1〜図3に示されているように、本実施形態に係る基板処理装置10は、直方体函形状に形成された第一収納容器としての第一真空容器11を備えており、第一真空容器11は処理室12を構成している。第一真空容器11の正面壁には、処理室12に基板としてのウエハ1を搬入したり搬出するための開口13が設けられている。開口13はゲートバルブ14によって開閉される。
【0011】
処理室12の右側壁にはチルト装置15が設置されている。チルト装置15はチルト軸16を所定角度旋回可能に構成されており、例えば、90度だけ往復回転させる。チルト軸16は処理室12内に挿入されている。チルト軸16はチルトブロック17を処理室12内において支持する。チルトブロック17には基板ホルダとしてのウエハホルダ18が配置されている。チルトブロック17内には回転装置19が設置されている。回転装置19はウエハホルダ18を回転させる。
チルト装置15はウエハホルダ18が保持したウエハ1を、水平姿勢と垂直姿勢との間でチルトさせる。
処理室12の底壁には昇降装置20が設置されている。昇降装置20は処理室12内に配置された邪魔板21を昇降させる。邪魔板21はチルトブロック17の背面側に配置されており、昇降装置20によって昇降される。
【0012】
第一真空容器11の背面壁には、直方体函形状に形成された第二収納容器としての第二真空容器22が連結されている。第二真空容器22はターゲット室23を構成している。ターゲット室23の容積は処理室12の容積よりも大きい。すなわち、処理室12の容積はターゲット室23の容積よりも小さい。
第一真空容器11と第二真空容器22との合わせ壁は、処理室12とターゲット室23とを仕切る隔壁24を構成している。隔壁24には連通孔25が所定の位置に設けられている。所定の位置は、後述するターゲットに照射されて反射したイオンの一部が通過し、他部が隔壁24の壁面に衝突する位置、である。
第二真空容器22の背面壁下部には、第一真空ポンプとしてのターボ分子ポンプ26と、第二真空ポンプとしてのクライオポンプ27が設置されている。ターボ分子ポンプ26およびクライオポンプ27はターゲット室23、処理室12および後述するイオン源室を排気する。
【0013】
第二真空容器22の背面壁の上部には回転装置28が水平方向に設置されている。回転装置28の回転軸29はターゲット室23に前後方向に延在するように水平に挿入されている。回転軸29はターゲットホルダ30をターゲット室23内で支持している。
ターゲットホルダ30は錐形状で形成されている。具体的にはターゲットホルダ30は、八角錐(八方錐)台(切頭八角錐)形状に形成されており、錐の回転軸線(頂点の垂線)31に回転軸29が連結されている。図3に示されているように、錐の回転軸線31と錐面32とがなす夾角33は鋭角で設定され、例えば45度に設定されている。すなわち、回転軸線31と直交する面31Aと錐面32とがなす夾角33Aは、45度である。
錐面32は台形形状の側壁面34を8枚備えている。8枚の側壁面34は周方向に等間隔にそれぞれ位置している。8枚の側壁面34には角度調整部としてのターゲットチャック35が1台ずつ設置されている。図5に示されているように、ターゲットチャック35はターゲット36に対して傾斜可能に保持する。側壁面34に平行に保持されたターゲット36は、回転軸29に対して45度分傾斜する。ターゲット36は、平板状の正方形で形成されている。
隣り合うターゲット36、36の隣接する一端同士は、鋭角としての40度の夾角を構成する。つまり、隣接するターゲット36、36間の間隙が、回転軸線31を直交する面31A側の方が回転軸末端側より大きく形成されている。したがって、隣り合うターゲット36、36同士は、充分な間隙を挟む。
なお、第二真空容器22は回転軸線より下方に配置されている。
【0014】
第二真空容器22の底壁には射出孔39が設けられている。第二真空容器22の底壁下面にはイオン源40が設置されている。射出孔39の上方にはターゲット36が位置する。45度傾斜したターゲット36は射出孔39と連通孔25とに対向する。
【0015】
図4に示されているように、イオン源40はイオン源室41、フィラメント42、平板状の加速電極43、平板状の減速電極44を備えている。
イオン源室41内はターゲット室23に射出孔39によって連通している。フィラメント42はイオン源室41内に設けられる。加速電極43および減速電極44は射出孔39を横断するように設けられる。加速電極43および減速電極44はフィラメント42に対向する。フィラメント42にはフィラメント電源およびアーク電源から電力が供給され、加速電極43および減速電極44には加速電源および減速電源から電圧が印加される。
加速電極43および減速電極44は耐熱金属、例えば、モリブデン(Mo)によって形成される。加速電極43と減速電極44とは所定間隙dを置いて平行に配される。加速電極43は多数個の加速通過孔43aを有する。減速電極44は多数個の減速通過孔44aを有する。
減速通過孔44aは対向する加速通過孔43aに対して、軸心がずれる(偏心する)ようにそれぞれ配置される。この配置は、加速電極43からのイオンビーム45を偏向させるので、図4に示されているように、イオンビーム45はターゲット36上において収束する。イオンビーム45の収束は、イオンビーム密度(電流密度)を高め、成膜速度を増大させるので、不純物の発生を抑制し、ウエハ1の汚染を防止する。また、この配置は、ターゲット36を小型化し、イオン源40を小型化する。
【0016】
イオン源40にはガス供給源50が接続されている。ガス供給源50はイオン化されるガスをイオン源室41内に供給する。ガスとしては、通常、アルゴン(Ar)ガスが用いられる。
アルゴンガスがイオン源室41内に供給され、フィラメント42にアーク電力が供給されると、フィラメント42とイオン源室41の側壁との間においてアーク放電が起こる。このアーク放電により、アルゴンのプラスイオン(以下、アルゴンイオンという)と電子とが混在した状態(プラズマ状態)になる。加速電極43および減速電極44はアルゴンイオンに運動エネルギを与えることにより、アルゴンイオンを加速通過孔43aと減速通過孔44aとを通して、ターゲット室23内に引き出す。
ターゲット室23に引き出されたアルゴンイオンは、イオンビーム45となってターゲット36に照射する。ターゲット36に照射したイオンビーム45は、ターゲット36の構成材料を成分とする粒子(以下、スパッタ粒子という)46をターゲット36から叩き出す。スパッタ粒子46は大きな平均自由行程でターゲット室23および処理室12内を飛翔し、処理室12内のウエハ1上に付着する。ウエハ1上に付着したスパッタ粒子46は堆積することにより、ターゲット36の構成材料を成分とする薄膜を形成する。
【0017】
図5はターゲットチャックの第一実施形態を示している。
ターゲットチャック35はボス51を備えており、ボス51はターゲットホルダ30内から側壁面34に直交するように突き出されている。ボス51にはボールジョイント52の一端が三次元方向に回転可能に連結されている。側壁面34にはベローズ53が設置されている。ベローズ53の両端には内側フランジ54と外側フランジ55が配置されている。内側フランジ54は側壁面34に固定されており、外側フランジ55には長方形平盤形状のターゲット保持体としてのバッキングプレート56がねじ57aでねじ止めされて、固定されている。バッキングプレート56の中心であって内面にはボールジョイント52の他端が固定されており、バッキングプレート56の外面にはターゲット36が溶着されている。ベローズ53、内側フランジ54、外側フランジ55により、ボス51およびボールジョイント52、冷却水継手59はターゲット室23内の雰囲気から隔離されている。
バッキングプレート56の両端部には一対の調整ボルト57、57が位置調整可能にねじ込まれている。一対の調整ボルト57、57のねじ込み量を調整することにより、バッキングプレート56に溶着されたターゲット36の傾斜角度を調整することができる。
バッキングプレート56の内部には冷却水路58が形成されており、冷却水路58には冷却水継手59が接続されている。冷却水が冷却水路58を流れることにより、バッキングプレート56およびターゲット36は冷却される。
【0018】
図3に示されているように、基板処理装置10はコントローラ60を備えており、コントローラ60はパーソナルコンピュータまたはパネルコンピュータ等によって構成されている。コントローラ60はチルト装置15、ウエハホルダ18、回転装置19、昇降装置20、ターボ分子ポンプ26、クライオポンプ27、回転装置28、イオン源40およびガス供給源50等々を制御する。
【0019】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を、前記構成に係る基板処理装置を使用したSPRAM(Spin Transfer Torque Magnetic Rondom Access Memory) の製造方法における薄膜形成工程について説明する。
SPRAMはMRAMの一種であり、スピン注入磁化反転するものである。
図6はSPRAMの成膜例を示す断面図である。
この成膜例では、SiO2 (二酸化珪素)もしくはSi(シリコン)材で構成されるウエハ上に、Ta(タングステン)膜、Ta膜上にPtMn膜、その上にCoFe膜、第一のRu(ルテニウム)膜、第一のCoFeB膜、MgO膜、第二のCoFeB膜、第二のTa膜、第二のRu膜の順に積層され、トータル6種類の膜種にて9層の金属膜が積層される。
【0020】
以下の基板処理装置の作動はコントローラ60が制御する。
初期状態において、ゲートバルブ14は開口13を閉じている。チルト装置15はチルトブロック17を水平姿勢に維持し、ウエハホルダ18を解除している。回転装置19は停止している。昇降装置20は邪魔板21を下限に位置させている。
ターゲットホルダ30はホームポジションを維持している。すなわち、ターゲットホルダ30はTaのターゲット36を保持したターゲットチャック35をイオン源40に対向させている。
処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧は、クライオポンプ27の排気により10-5Pa(パスカル)以上10-7Pa以下に維持されている。
【0021】
ウエハローディングステップにおいて、コントローラ60はクライオポンプ27からターボ分子ポンプ26に切り替え、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧を、10-3Pa以上10-4Pa以下に維持する。ゲートバルブ14の動作により開口13を開く。ウエハ移載装置(図示せず)はウエハ1を処理室12内へ予備室(図示せず)から搬入し、ウエハホルダ18上に移載する。ウエハホルダ18はウエハ1を保持する。
【0022】
減圧ステップにおいて、コントローラ60はゲートバルブ14によって開口13を閉じた後に、ターボ分子ポンプ26からクライオポンプ27に切り替え、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41を10-3Pa以上10-4Pa以下の内圧から10-6Paに真空引きする。
次いで、クライオポンプ27からターボ分子ポンプ26へ切り替え、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧を、10-7Paに維持する。
【0023】
成膜(Ta)ステップにおいて、ガス供給源50はアルゴンガスをイオン源室41に供給する。フィラメント42には電力が供給され、加速電極43および減速電極44には電圧が印加される。必要に応じて、中和電源がONされる。
チルト装置15はチルトブロック17を処理位置である垂直姿勢に移行させる。回転装置19はウエハ1を回転させる。昇降装置20は邪魔板21を所定位置へ上昇させる。
アーク電力が供給されると、イオン源40はイオンビーム45をTaで構成されるターゲット36に照射する。ターゲット36に照射したイオンビーム45はTaで構成されるスパッタ粒子46をターゲット36から叩き出す。スパッタ粒子46は処理室12内に飛翔し、ウエハホルダ18に保持されたウエハ1上に付着する。ウエハ1上に付着したスパッタ粒子46は堆積することにより、Ta膜を形成する。この時の処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧は、10-2Paに維持されている。
予め、設定された処理時間が経過すると、アーク電源がOFFされる。中和電源がONしている場合にはOFFさせる。この時の処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧は、10-2Pa以上10-3Pa以下に維持される。
【0024】
次の成膜(PtMn)ステップにおいて、回転装置28はターゲットホルダ30を回転して、PtMnのターゲット36をイオン源40およびウエハ1に対向させる。必要に応じて、フィラメント42の電力値を変更し、加速電極43および減速電極44の電圧値を変更する。
続いて、必要に応じて、供給量が調整されて、アルゴンガスがイオン源室41に供給され、フィラメント42には電力が供給され、加速電極43および減速電極44には電圧が印加され、必要に応じて、中和電源がONされる。回転装置19はウエハ1を回転させる。必要に応じて、昇降装置20は邪魔板21を所定位置へ上昇させる。
アーク電源がONされると、イオン源40はイオンビーム45をPtMnで構成されるターゲット36に照射する。ターゲット36に照射したイオンビーム45はPtMnで構成されるスパッタ粒子46をターゲット36から叩き出す。スパッタ粒子46は処理室12内に飛翔し、ウエハホルダ18に保持されたウエハ1のTa膜上に付着する。ウエハ1のTa膜上に付着したスパッタ粒子46は堆積することにより、PtMn膜を形成する。
予め、設定された処理時間が経過すると、アーク電源がOFFされる。中和電源がONしている場合にはOFFさせる。
【0025】
以降、コントローラ60は使用するターゲット36を前述した成膜ステップに準じて切り替えることにより、ウエハ1上に図6に示された各種の膜を順次成膜して積層する。
【0026】
最後の成膜ステップとして、第二のRu膜成膜ステップが終了すると、コントローラ60はウエハアンローディグステップを実施する。
ウエハアンローディングステップにおいては、フィラメント42への電力供給が停止され、加速電極43および減速電極44への電圧印加が停止され、必要に応じて、中和電源がOFFされると、ターゲットホルダ30はTaのターゲット36をホームポジションに戻す。回転装置19が回転を停止し、昇降装置20が邪魔板21を下限位置に下降させると、チルト装置15はチルトブロック17を水平姿勢に移行させる。イオン源室41へのアルゴンガスの供給を停止する。この時、処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧が10-5Pa以上10-7Pa以下に維持される。
処理室12、ターゲット室23およびイオン源室41の内圧が、10-3Pa以上10-4Pa以下に維持されると、ゲートバルブ14は開口13を開く。ウエハ移載装置は処理済のウエハ1をウエハホルダ18上からピックアップし、処理室12内から予備室へ搬出する(ウエハアンローディグする)。
【0027】
図7はイオンビームの入射角度別スパッタ粒子の角度分布を示している。
図7において、黒丸は実験値を示しており、白丸はコンピュータシミュレーションによる値を示している。
図7(a)は、イオン照射エネルギ450evをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角0°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(b)は、イオン照射エネルギ450evをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角60°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(c)は、イオン照射エネルギ450evをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角80°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(d)は、イオン照射エネルギ1kevをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角0°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(e)は、イオン照射エネルギ1kevをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角60°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7(f)は、イオン照射エネルギ1kevをターゲットホルダ30に保持されたターゲット36に対し入射角80°にて照射した場合の、コンピュータシュミレーション結果と実験値とを示すグラフである。
図7によれば、入射角度によってスパッタ粒子の角度分布が異なることが判る。
これは、入射角度の変更によりスパッタ粒子の角度分布を変更可能であることを意味する。
また、ターゲットの種類によってイオンビームの入射角度に対するスパッタ粒子の飛散角度や分布が異なることが知られている。
そこで、図8に示されているように、ターゲットチャック35によってターゲット36の傾斜角度を調整して、ターゲット36に対するイオンビーム45の入射角度Θを選定することにより、スパッタ粒子の角度分布を制御することが考えられる。
図8(a)は、ターゲットチャック35をイオンビーム45のターゲット36に対する入射角度Θが増加(45度超)する方向に調整した場合を示している。
図8(b)は、ターゲットチャック35をイオンビーム45のターゲット36に対する入射角度Θが減少(45度未満)する方向に調整した場合を示している。
例えば、ターゲット36の構成成分(Ta、PtMn)に対応して、入射角度を選定することにより、スパッタ粒子分布を最適値に制御し、もって、スパッタリング成膜(Ta膜、PtMn膜)の成膜レートおよび膜厚分布均一性を向上させることができる。
【0028】
ところで、イオンビームのアルゴンイオンは高運動エネルギを有するため、ターゲットにおいて反射したアルゴンイオン(以下、反跳粒子という)がウエハに衝突すると、ウエハに悪影響を及ぼすので、反跳粒子がウエハに衝突するのを防止することが望ましい。
一般に、反跳粒子はスパッタ粒子分布と似た分布を持つ、と考えられている。
そこで、ターゲットチャック35によってターゲット36の傾斜角度を調整して、ターゲット36に対するイオンビーム45の入射角度Θを選定することにより、反跳粒子がウエハに衝突するのを防止することができる。すなわち、ターゲットチャック35によってターゲット36の傾斜角度を調整することにより、ウエハ上における反跳粒子分布が無くなるように、または、極めて少なくなるように制御する。
【0029】
イオンビームは高運動エネルギを有するため、イオンビームがターゲットに衝突すると、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度は上昇する。
そこで、冷却水をバッキングプレート56内に敷設された冷却水路58に流すことにより、バッキングプレート56およびターゲット36を冷却し、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度上昇を防止する。好ましくは、冷却はイオンビームがターゲットに照射されている時に限らず、常時実施する。
なお、ターゲットホルダ30内が大気圧に維持されているので、冷却水継手59は真空環境に晒されていない。したがって、冷却水継手59にリークが発生しても、冷却水がターゲット室23に浸入することはない。つまり、冷却水継手59のシール構造を簡素化することができるし、冷却水継手59に接続する冷却水配管を樹脂等によって形成することができる。
他面、第二真空容器22内に大気圧を確保するターゲットホルダ30を構築するので、重量およびコストが増加する。
【0030】
前記実施形態によれば、次の効果のうち、少なくとも1つ以上の効果が得られる。
【0031】
1) ターゲットチャックによってターゲットの傾斜角度を調整することにより、スパッタ粒子分布を制御することができるので、成膜レートおよび膜厚均一性を最適化することができる。
【0032】
2) ターゲットチャックによってターゲットの傾斜角度を調整することにより、反跳粒子がウエハに衝突するのを防止することができるので、反跳粒子のウエハへの悪影響を防止することができる。
【0033】
3) 冷却水をバッキングプレート内に敷設された冷却水路に流すことにより、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度上昇を防止することができる。
【0034】
4) 冷却水継手を真空環境に晒さないので、真空環境への浸水を防止することができ、また、冷却水継手および冷却水配管を簡素化することができる。
【0035】
5) 錐形状のターゲットホルダであって、錐面において複数のターゲットを保持するターゲットホルダを備えているので、ターゲット室の容積を小さくすることができ、スループットの向上やフットプリント拡大の抑制をすることができる。また、複数のターゲット間に充分な間隙を挟むことができるので、種類の異なるターゲットが隣接設置された場合にも、クロスコンタミネーションを抑制することができる。
【0036】
図9は本発明の第二実施形態を示している。
本実施形態は第一実施形態とターゲットチャック、回転軸、ターゲットホルダの形態が異なる。すなわち、本実施形態に係るターゲットチャック35Aはブラケット61を備えており、ブラケット61はターゲットホルダ30の側壁面34に固定されている。ブラケット61には気密容器からなるケース62がヒンジ63によって回動可能に支持されており、ケース62は調整ボルト64によってブラケット61に位置規制される。ケース62の気密室には大気圧配管65の一端が接続されており、大気圧配管65の他端は回転軸29内を経由して大気に連通されている。ケース62の外側主面にはバッキングプレート56が固定されており、バッキングプレート56の冷却水継手59に接続された冷却水配管66は、ケース62の側壁を貫通して真空室であるターゲット室23内に引き出されて、回転軸29内に形成された冷却水路67に接続されている。回転軸29はターゲットホルダ30の錐の回転軸線(頂点の垂線)上を貫通して設けられている。回転軸29の末端には冷却水路67が設けられており、冷却水路67は、回転軸29の軸内、軸心をつたってターゲット室23外の冷却水系統に接続されている。回転軸29に冷却水路67より基端側には、大気圧配管65が接続される大気路67Aが設けられている。大気路67Aは回転軸29の軸内であって、冷却水路67よりも外周側を軸方向につたって、ターゲット室23外の大気と連通されている。
本実施形態においても、ターゲットの傾斜角度を調整することができるので、スパッタ粒子分布および反跳粒子分布を制御することができる。
また、冷却水をバッキングプレート内に敷設された冷却水路に流すことができるので、ターゲットおよびバッキングプレート等の温度上昇を防止することができる。
本実施形態においては、ターゲットホルダを気密容器構造に構築しないで済むので、構造およびメンテナンスを簡単化することができる。他面、冷却水がリークすると、真空環境へ浸水してしまう。
【0037】
図10は本発明の第三実施形態を示している。
第三実施形態が第一実施形態と異なる点は、八角柱形状に形成されたターゲットホルダ30Aの各側壁面34Aにターゲットチャック35がそれぞれ設置されている点、ターゲットホルダ30Aおよびウエハホルダ18がターゲット室23に共に設置されている点、である。
本実施形態においても、ターゲットの傾斜角度を調整することにより、スパッタ粒子分布を制御することができるので、成膜レートおよび膜厚均一性を最適化することができる等、第一実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0038】
図11は本発明の第四実施形態を示している。
第四実施形態が第一実施形態と異なる点は、四角柱形状に形成されたターゲットホルダ30Bの各側壁面34Bにターゲットチャック35がそれぞれ設置されている点、ターゲットホルダ30Bおよびウエハホルダ18がターゲット室23に共に設置されている点、である。
本実施形態においても、ターゲットの傾斜角度を調整することにより、スパッタ粒子分布を制御することができるので、成膜レートおよび膜厚均一性を最適化することができる等、第一実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0040】
例えば、ターゲットホルダは、八角錐(八角錐台を含む。他の錐も同じ)に形成するに限らず、三角錐、四角錐、五角錐、六角錐、七角錐等々のように多角錐に形成してもよいし、円錐に形成してもよい。
また、ターゲットホルダは、八角柱または四角柱に形成するに限らず、三角柱、五角柱、六角柱、七角柱等々のように多角柱に形成してもよいし、円柱に形成してもよい。
【0041】
ターゲット間の汚染防止等のために、ターゲットをターゲットホルダに一つ置きに配置してもよい。例えば、異なる材質のターゲットを一つ置きに配置することは、複数種の膜を積層する場合に有効である。
しかし、ターゲットホルダの高速回転の点では不利になる。
【0042】
ターゲットホルダに対するターゲットの傾斜角度は、各ターゲット毎に相異させてもよい。ターゲットホルダに対するターゲットの傾斜角度は基本的には45度であるが、他方で、ターゲットの傾斜角度は均一性等を考慮した成膜条件の一つであるとも考えられる。したがって、ターゲットホルダに対するターゲットの傾斜角度は、例えば、ターゲットの材質によって最適値を選択することが望ましい。
【0043】
基板はウエハに限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等であってもよい。
【0044】
本発明の好ましい態様を付記する。
(1)イオンを発生させるイオン源と、
該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、
該ターゲットを保持するターゲットホルダと、
前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、
前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、
を有している基板処理装置。
(2)ターゲットホルダに保持されたターゲットの角度を角度調整部により調整し、イオン源が発射したイオンビームを前記ターゲットに照射させて前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分を基板ホルダに保持された基板に堆積する、半導体装置の製造方法。
(3)前記ターゲットホルダは、横断面形状の外郭線が、回転軸からの距離が相対的に長い第一領域と前記回転軸からの距離が相対的に短い第二領域とを複数有し、縦断面形状の外郭線の一部が前記基板ホルダ側に近づくに従って漸次前記回転軸からの距離を短くしている前記第二領域で前記ターゲットを保持するように構成されている(1)の基板処理装置。
(4)前記ターゲットホルダは、前記第二領域に前記ターゲットを載置するターゲット載置部と、該ターゲット載置部を冷却する冷却部とを有する(3)の基板処理装置。
【符号の説明】
【0045】
1…ウエハ(基板)、
10…基板処理装置、11…第一真空容器、12…処理室、13…開口、14…ゲートバルブ、
15…チルト装置、16…チルト軸、17…チルトブロック、18…ウエハホルダ(基板ホルダ)、19…回転装置、
20…昇降装置、21…邪魔板、
22…第二真空容器、23…ターゲット室、24…隔壁、25…連通孔、26…ターボ分子ポンプ(第一真空ポンプ)、27…クライオポンプ(第二真空ポンプ)、28…回転装置、29…回転軸、30、30A、30B…ターゲットホルダ、31…回転軸線(頂点の垂線)、31A…回転軸線と直交する面、32…錐面、33、33A…夾角、34、34A、34B…側壁面、35、35A…ターゲットチャック、36…ターゲット、
39…射出孔、40…イオン源、41…イオン源室、42…フィラメント、43…加速電極、44…減速電極、43a…加速通過孔、44a…減速通過孔、45…イオンビーム、46…スパッタ粒子(ターゲット成分粒子)、
50…ガス供給源、
51…ボス、52…ボールジョイント、53…ベローズ、54…内側フランジ、55…外側フランジ、56…バッキングプレート、57…調整ボルト、58…冷却水路、59…冷却水継手、
60…コントローラ、61…ブラケット、62…ケース、63…ヒンジ、64…調整ボルト、65…大気圧配管、66…冷却水配管、67…冷却水路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生させるイオン源と、
該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、
該ターゲットを保持するターゲットホルダと、
前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、
前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、
を有している基板処理装置。
【請求項2】
ターゲットホルダに保持されたターゲットの角度を角度調整部により調整し、イオン源が発射したイオンビームを前記ターゲットに照射させて前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分を基板ホルダに保持された基板に堆積する、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
イオンを発生させるイオン源と、
該イオン源が発射したイオンビームが照射されるターゲットと、
該ターゲットを保持するターゲットホルダと、
前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分粒子が堆積する位置で基板を保持する基板ホルダと、
前記ターゲットの前記イオンビームに対する角度を調整する角度調整部と、
を有している基板処理装置。
【請求項2】
ターゲットホルダに保持されたターゲットの角度を角度調整部により調整し、イオン源が発射したイオンビームを前記ターゲットに照射させて前記ターゲットからはじき出されたターゲット成分を基板ホルダに保持された基板に堆積する、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−68965(P2011−68965A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222261(P2009−222261)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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