説明

基板処理装置および半導体装置の製造方法

【課題】移載室内のエア滞留発生を抑制して、移載室内における確実なエアフロー形成を実現する。
【解決手段】基板を処理する処理室と、基板を保持した状態で処理室内に対して搬入出される基板保持体と、未処理基板を基板保持体に保持させるチャージ動作および処理済基板を基板保持体から取り出すディスチャージ動作が行われる移載室と、移載室内にクリーンエアを吹き出すクリーンユニットと、を備えた基板処理装置において、クリーンユニットを、平面多角形状に構成された移載室内における角部に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程で用いられる縦型の基板処理装置は、ウエハを処理する処理室の下方側に配設された移載室内にて、処理室内へ搬入する基板保持体(ボート)への未処理ウエハの装填(ウエハチャージ)、および、処理室内から搬出された基板保持体からの処理済ウエハの脱装(ウエハディスチャージ)を行う。そして、移載室内では、ウエハをパーティクルによる汚染から護るクリーン化のため、および、処理室内から搬出された高温の処理済ウエハを所定温度まで冷却するために、クリーンエアによるエアフローを形成する。このエアフローは、フィルタとブロアを内蔵したクリーンユニットを移載室の一側の側壁に沿って設け、そのクリーンユニットから移載室内にクリーンエアを吹き出すことで形成するようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−175999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術による移載室内のエアフロー形成では、当該移載室の一側の側壁に沿って設けられたクリーンユニットからのサイドフローとなるため、以下に述べるような問題が生じる。
一つは、サイドフローの場合、移載室内の角部(コーナー部)にてエアの滞留が発生し易いという点である。移載室内でのエアの滞留は、ウエハをパーティクルによって汚染してしまう原因となり得るため、その発生を抑制すべきである。特に、移載室内では、処理直後のウエハのような熱を発する部材が存在し、その熱によりウエハ移載機等からパーティクルが発生する可能性がある。そのため、移載室内において、パーティクル発生の原因となり得るエアの滞留の発生を抑制することは、非常に重要である。
他の一つは、サイドフローの場合、基板処理装置の設置の省スペース化が困難という点である。クリーンユニットを移載室の側壁に沿って設ける分、装置幅を要してしまうからである。このことは、特にウエハが大径化(例えば300mmから450mm)した場合に、非常に大きな問題となり得る。
【0005】
本発明は、移載室内のエア滞留発生を抑制して当該移載室内における確実なエアフロー形成を実現するとともに、当該移載室内のスペースを有効活用して装置設置の省スペース化を実現可能とする基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記基板を保持した状態で前記処理室内に対して搬入出される基板保持体と、未処理基板を前記基板保持体に保持させるチャージ動作および処理済基板を前記基板保持体から取り出すディスチャージ動作が行われる移載室と、前記移載室内にクリーンエアを吹き出すクリーンユニットと、を備え、前記クリーンユニットは、平面多角形状に構成された前記移載室内における角部に配設される基板処理装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、処理室内に連通する移載室内にて、前記処理室内へ搬入す
る前の基板保持体に未処理基板を保持させるチャージ動作を行う搬入前移載工程と、前記未処理基板を保持した状態の前記基板保持体を前記移載室内から前記処理室内へ搬入する搬入工程と、前記処理室内に搬入された前記基板保持体が保持する前記未処理基板に対して処理を行う処理工程と、前記処理が行われた処理済基板を保持する前記基板保持体を当該処理室内から前記移載室内へ搬出する搬出工程と、前記移載室内にて、前記処理室内から搬出された前記基板保持体が保持する前記処理済基板を当該基板保持体から取り出すディスチャージ動作を行う搬出後移載工程と、を備え、前記搬入前移載工程と前記搬出後移載工程との少なくとも一方では、平面多角形状に構成された前記移載室内における角部に配設されたクリーンユニットが、前記移載室内にクリーンエアを吹き出す半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、移載室内の角部にクリーンユニットを配設するので、当該角部から移載室内の他の角部等に向けてクリーンエアを吹き出すことになる。したがって、移載室内(特に当該移載室内の各角部)では、エアの滞留発生が抑制され、確実にエアフローを形成することができる。つまり、例えば処理室内から搬出された基板が熱を発する場合であっても、パーティクル発生の原因となり得るエアの滞留発生が抑制されるので、当該パーティクルによる基板の汚染を未然に回避することができる。しかも、本発明によれば、移載室内の角部へのクリーンユニットの配設によって、当該移載室内のスペースを有効活用することができ、従来構成(サイドフローの場合)に比べると基板処理装置の設置の省スペース化を容易に実現することができる。つまり、例えば基板が大型化した場合であっても、装置幅を極力大きくしないように構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成例を示す斜透視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置に用いられる処理炉の構成例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置に用いられる移載室内の構成例を示す斜透視図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置に用いられるボート交換装置の概要を示す平面図である。
【図5】本発明の比較例となる従来構成による移載室内のエアフロー形成の概略を示す斜透視図である。
【図6】基板処理装置における移載室内のエアフロー形成の具体例を示す平面図であり、(a)は本発明の一実施形態にかかるエアフロー形成を示す図、(b)は本発明の比較例となる従来構成によるエアフロー形成を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の移載室の上方側におけるエア循環経路中のエアフローの概要を示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかる基板処理装置の移載室内におけるエアフロー形成を示す平面図であり、(a)はその一具体例を示す図、(b)は他の具体例を示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態にかかる基板処理装置の移載室内におけるエアフロー形成の具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の概要
先ず、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概要について簡単に説明する。
【0012】
本実施形態で説明する基板処理装置は、半導体装置の製造工程で用いられるもので、処理対象となる基板を処理室に収容した状態で当該基板をヒータによって加熱して処理を施すものである。さらに詳しくは、複数の基板を鉛直方向に所定の間隔で積層した状態で同時に処理を行う縦型の基板処理装置である。
【0013】
基板処理装置が処理対象とする基板としては、例えば、半導体集積回路装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体ウエハ基板(以下、単に「ウエハ」という。)が挙げられる。また、基板処理装置が行う処理としては、例えば、酸化処理、拡散処理、イオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローやアニール、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)反応による成膜処理等が挙げられる。
【0014】
(2)基板処理装置の概略構成
次に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成例について説明する。
【0015】
(装置全体)
図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成例を示す斜透視図である。
基板処理装置10は、内部に処理炉40等の主要部が配置される筐体12を備えている。筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されている。ポッドステージ18上には、ウエハ14を収納する基板収納具としてのフープ(以下、「ポッド」という。)16が搬送されて載置される。ポッド16は、その内部に例えば25枚のウエハ14が収納され、図示しない蓋が閉じられた状態でポッドステージ18上に載置されるように構成されている。つまり、基板処理装置10では、ポッド16がウエハキャリアとして使用される。
【0016】
筐体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。ポッド搬送装置20の近傍には、ポッド棚22、ポッドオープナ24および基板枚数検知器26がそれぞれ配置されている。
ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18とポッド棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送するように構成されている。
ポッド棚22は、ポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。ポッド棚22は、複数段の棚板を有して、モータ等の図示せぬ間欠回転駆動装置によって一方向にピッチ送り回転される、いわゆる回転棚によって構成することが考えられる。ただし、回転機能は必須ではない。また、ポッド棚22の近傍には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aを設け、そのクリーンユニット134aから清浄化した雰囲気であるクリーンエアを流通させるように構成してもよい。
ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋を開けるように構成されている。
基板枚数検知器26は、ポッドオープナ24に隣接して配置されており、蓋を開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知するように構成されている。
【0017】
ポッドオープナ24よりも筐体12内の背面側には、当該筐体12内において一つの部屋として区画される移載室50が形成されている。この移載室50については、詳細を後述する。
【0018】
移載室50内には、基板移載機28と、基板保持体としてのボート30とが配置されている。
基板移載機28は、例えば5枚のウエハ14を取り出すことができるアーム(ツィーザ)32を有している。図示しない駆動手段によりアーム32を上下回転動作させることに
より、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16とボート30との間にて、ウエハ14を搬送させることが可能なように構成されている。
ボート30は、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ14を、水平姿勢で、かつ、その中心を揃えた状態で、鉛直方向に所定間隔を空けて整列積層させて、縦方向に多段保持するように構成されている。ウエハ14を保持したボート30は、図示せぬ昇降機構としてのボートエレベータによって、昇降させることが可能なように構成されている。
【0019】
筐体12内の背面側上部、すなわち移載室50の上方側には、処理炉40が配置されている。処理炉40内には、複数枚のウエハ14を装填した上述のボート30が、下方から搬入されるように構成されている。
【0020】
(処理炉)
続いて、上述した処理炉40について簡単に説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置に用いられる処理炉の構成例を示す縦断面図である。
【0021】
処理炉40は、反応管41を備えている。反応管41は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状となっている。
【0022】
反応管41の筒内には、処理室42が形成されている。処理室42内には、基板保持体としてのボート30が下方から挿入されて、ボート30によって水平姿勢に保持されたウエハ14が鉛直方向に多段に整列した状態で収容されるように構成されている。処理室42内に収容されるボート30は、回転機構43によって回転軸44を回転させることで、処理室42内の気密を保持したまま、複数のウエハ14を搭載した状態で回転可能に構成されている。
【0023】
反応管41の下方には、この反応管41と同心円状にマニホールド45が配設されている。マニホールド45は、例えばステンレス鋼等の金属材料から構成され、上端部および下端部が開放された円筒形状となっている。このマニホールド45により、反応管41は、下端部側から縦向きに支持される。つまり、処理室42を形成する反応管41がマニホールド45を介して鉛直方向に立脚されて、処理炉40が構成されることになる。
マニホールド45の下端部は、図示せぬボートエレベータが上昇した際に、シールキャップ46により気密に封止されるように構成されている。マニホールド45の下端部とシールキャップ46との間には、処理室42内を気密に封止するOリング等の封止部材46aが設けられている。
また、マニホールド45には、処理室42内に原料ガスやパージガス等を導入するためのガス導入管47と、処理室42内のガスを排気するための排気管48とが、それぞれ接続されている。
【0024】
反応管41の外周には、反応管41と同心円状に加熱手段(加熱機構)としてのヒータユニット49が配されている。ヒータユニット49は、処理室42内が全体にわたって均一または所定の温度分布となるように、処理室42内に対する加熱を行うように構成されている。
【0025】
(3)基板処理工程
次に、本実施形態にかかる基板処理装置10を用いて、半導体デバイス製造の一工程として、ウエハ14に対する処理を行う場合の動作手順について説明する。
【0026】
(ウエハ供給工程)
基板処理装置10にてウエハ14に対する処理を行う場合は、先ず、ポッドステージ18に複数枚のウエハ14を収容したポッド16を載置する。そして、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド棚22上に移載する。さらに、ポッド搬送装置20により、ポッド棚22上に載置されたポッド16をポッドオープナ24に搬送する。その後、ポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、ポッド16に収容されているウエハ14の枚数を基板枚数検知器26により検知する。
【0027】
(搬入前移載工程)
ポッドオープナ24がポッド16の蓋を開いたら、次いで、移載室50内に配置された基板移載機28が、ポッド16からウエハ14を取り出す。そして、ポッド16から取り出した未処理状態のウエハ14を、基板移載機28と同じく移載室50内に位置するボート30に移載する。つまり、基板移載機28は、移載室50内にて、処理室42内へ搬入する前のボート30に未処理状態のウエハ14を装填するウエハチャージ動作を行う。これにより、ボート30は、複数枚のウエハ14を鉛直方向にそれぞれが間隔を成す積層状態で保持することになる。ボート30が積層状態で保持して一括処理するウエハ14の枚数は、例えば25枚〜100枚である。これにより、量産性を高めることができる。
【0028】
(搬入工程)
ウエハチャージ動作後は、ボートエレベータの昇降動作により、未処理状態のウエハ14を複数枚保持したボート30を処理室42内へ搬入(ボートローディング)する。つまり、ボートエレベータを動作させて、未処理状態のウエハ14を保持したボート30を、移載室50内から処理室42内へ搬入する。これにより、シールキャップ46は、封止部材46aを介してマニホールド45の下端をシールした状態となる。
【0029】
(処理工程)
ボートローディング後は、処理室42内に搬入されたボート30が保持する未処理状態のウエハ14に対して、所定の処理を行う。具体的には、例えば熱CVD反応による成膜処理を行う場合であれば、排気管48を用いて排気を行い、処理室42内が所望の圧力(真空度)となるようにする。そして、ヒータユニット49を用いて処理室42内に対する加熱を行うとともに、回転機構43を動作させてボート30が回転させ、これに伴いウエハ14も回転させる。ウエハ14の回転は、後述するウエハ14の搬出まで継続する。さらには、ガス導入管47により処理室42内へ原料ガスやパージガス等を供給する。これにより、ボート30に保持された未処理状態のウエハ14の表面には、熱による分解反応や化学反応等を利用した薄膜形成が行われる。
【0030】
ウエハ14の表面への薄膜形成の完了後は、ヒータユニット49による過熱を停止して、処理済状態のウエハ14の温度を所定温度まで降温させる。そして、予め設定された時間が経過したら、処理室42内へのガス供給を停止するとともに、当該処理室42内への不活性ガスの供給を開始する。これにより、処理室42内を不活性ガスで置換するとともに、処理室42内の圧力を常圧に復帰させる。
【0031】
(搬出工程)
その後は、ボートエレベータの昇降動作により、シールキャップ46を下降させてマニホールド45の下端を開口させるとともに、処理済状態のウエハ14を保持したボート30をマニホールド45の下端から処理室42外へ搬出(ボートアンローディング)する。つまり、ボートエレベータを動作させて、処理済状態のウエハ14を保持したボート30を、処理室42内から移載室50内へ搬出する。そして、ボート30に支持された全てのウエハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。
【0032】
(搬出後移載工程)
待機させたボート30のウエハ14が所定温度(例えば室温程度)まで冷えた後は、移載室50内に配置された基板移載機28が、ボート30からのウエハ14の脱装を行う。そして、ボート30から脱装した処理済状態のウエハ14を、ポッドオープナ24に載置されている空のポッド16に搬送して収容する。つまり、基板移載機28は、移載室50内にて、処理室42内から搬出されたボート30が保持する処理済状態のウエハ14を、当該ボート30から取り出してポッド16へ移載するウエハディスチャージ動作を行う。
【0033】
その後は、ポッド搬送装置20により、処理済状態のウエハ14を収容したポッド16を、ポッド棚22上またはポッドステージ18上へ搬送する。
このようにして、本実施形態にかかる基板処理装置10による基板処理工程の一連の処理動作が完了する。
【0034】
(4)移載室の構成
次に、本実施形態にかかる基板処理装置10における特徴的な構成である、移載室50内の構成について、具体例を挙げて詳しく説明する。ここでは、高スループット化のために、2つのボート30を処理室42内に対して交互に搬入出する、いわゆる2ボート装置における移載室を例に挙げて、以下の説明を行う。
【0035】
(移載室)
図3は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置に用いられる移載室内の構成例を示す斜透視図である。
上述したように、基板処理装置10は、未処理状態のウエハ14をボート30に保持させるチャージ動作、および、処理済状態のウエハ14をボート30から取り出すディスチャージ動作が行われる移載室50を備える。移載室50は、天井、床および四方を囲う側壁によって、平面四角形状に構成された一つの部屋として区画形成されている。ただし、必ずしも平面四角形状に限定されることはなく、平面多角形状(例えば、平面三角形状、平面五角形状等)に構成されていればよい。ここで、移載室50内は、ロードロック室や窒素パージボックス等を構成している必要はなく、大気雰囲気でよい。
【0036】
移載室50のポッドオープナ24が配された側の側壁には、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16と移載室50内のボート30との間におけるウエハ14の搬送のために、基板収容具側連通口としてのウエハ搬入出口51が設けられている。また、移載室50の天井には、ウエハ14を保持したボート30が通過し得る形状および大きさで、処理室42内に連通する開口(ただし不図示)が設けられている。
【0037】
このような移載室50内には、上述した基板移載機28、ボート30および図示せぬボートエレベータに加えて、クリーンユニット52および排気部53a,53bが配置されている。
【0038】
(クリーンユニット)
移載室50内に配置されたクリーンユニット52は、当該移載室50内にクリーンエアを吹き出すように構成されている。そのために、クリーンユニット52は、例えばULPA(Ultra Low Penetration Air−filter)から構成されるフィルタと、電動により送風を行うブロアとを内蔵している。
このような構成のクリーンユニット52は、詳細を後述する理由により、平面多角形状に構成された移載室50内における角部に配設されている。
【0039】
(排気部)
移載室50内に配置された排気部53a,53bは、当該移載室50内のエア(クリー
ンエアの他に、パーティクルが混在するエアを含む。)を、当該移載室50外へ排気するように構成されている。そのために、排気部53a,53bは、移載室50内から移載室50外へ連なるダクトと、そのダクト内に設けられた電動排気ファンとを備えている。
このような構成の排気部53a,53bは、詳細を後述する理由により、クリーンユニット52が配設された角部とは別の移載室50内における角部に設けられている。
【0040】
(エアフロー循環路)
以上のような内部構成の移載室50の上方側には、処理炉40が配置されている。ただし、移載室50の上方側における筐体12内の空間の全てが処理炉40によって占められているわけではなく、処理炉40の周囲に位置する空間にはエアフロー循環路55が形成されている。
【0041】
エアフロー循環路55は、移載室50内から排気されたエアを当該移載室50内へクリーンユニット52を介して再供給するためのものである。さらに詳しくは、排気部53a,53bによって移載室50内から排気されたエアを受け取って、その受け取ったエアをクリーンユニット52のエア吸入口まで導くエア経路を有しており、クリーンユニット52にエアを吸入させることで、当該クリーンユニット52を介して移載室50内へのクリーンエアの再供給が可能となるように構成されている。
【0042】
エアフロー循環路55には、そのエア経路中に、図示せぬエアダンパが設けられている。エアダンパは、エアフロー循環路55を流れるエアの流量調整を行うことが可能に構成されている。具体的には、エアダンパは、バタフライ弁やニードル機構等といった公知の流量調整機構を利用して構成することが考えられる。ただし、エアダンパは、流量調整をオート制御できる機能を有しており、クリーンユニット52との連動制御が可能なものであることが望ましい。
【0043】
また、移載室50の上方側には、第2のクリーンユニット56が設けられていてもよい。第2のクリーンユニット56は、ウエハ搬入出口51の近傍にて局所的なクリーンエアのダウンフローを発生させるように構成されている。具体的には、クリーンユニット52と同様に、ULPA等のフィルタとブロアとを内蔵した構成されたものを用いればよい。このような第2のクリーンユニット56が設けられた場合、エアフロー循環路55は、クリーンユニット52と第2のクリーンユニット56との両方に対して、移載室50内から排気されたエアを吸入させて、移載室50内へのクリーンエアの再供給を行わせることになる。
【0044】
(ボート交換装置)
図4は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置に用いられるボート交換装置の概要を示す平面図である。
2ボート装置では、2つのボート30を処理室42内に対して交互に搬入出するために、移載室50内にボート交換装置54を備えている。ここで、図4を参照しながら、移載室50内におけるボート交換装置54の動きを説明する。
【0045】
移載室50内において、ボート30は、ボート交換装置54の旋回アームにより円弧状に軌跡を描いて移動され、3つの位置を取り得る。図中において、円弧左端は基板移載機28によるボート30へのウエハ移載位置A、反対側の円弧右端はボート冷却位置B、円弧の中央は処理室42内にボート30を搬入し処理室42内からボートを搬出するボートロード/アンロード位置C、である。
【0046】
ボート交換装置54は、以下に述べるように機能する。予め空の2個のボート30を、位置A、Bのそれぞれに置く。位置Aにあるボート30には、ポッド16より取り出し、
図示せぬノッチ合せ機によりノッチ合せを行ったウエハを装填する。そして、位置Aにあるノッチ合せ済みのウエハで満たされたボート30を旋回アームにより位置Cに搬送する。位置Cにあるボート30は、処理室42内に搬入され、所定の処理が行われる。処理室42内での処理の間、位置Bにある空のボート30を旋回アームにより位置Aに搬送し、別なノッチ合せ前のウエハをポッド16から取り出し、ノッチ合せ機によりノッチ合せを行い、位置Aにあるボート30に移載してウエハで満たす。そして、下記の動作(a)〜(d)を繰り返す。
【0047】
(a)処理室42内での処理が終了したら、処理済ウエハを保持したボート30を処理室42内から搬出し、位置Cに下降させた後、旋回アームにより位置B搬送して冷却する。(b)冷却している間、位置Aにあるノッチ合せ済みのウエハで満ちたボート30を旋回アームにより位置Cに移し、位置Cから処理室42内へ搬入して、所定の処理を行う。
(c)処理室42内で処理している間、位置Bで冷却されたボート30を旋回アームにより位置Aに搬送して、位置Aで処理済ウエハをボート30から脱装して、ポッド16内へ戻す。
(d)処理済ウエハを取り出して空になったボート30に対し、新規にポッド16より取り出してノッチ合せを行った後のウエハを装填して、当該ボート30を未処理ウエハで満たす。
【0048】
(5)移載室内におけるエアフロー形成
次に、以上のような構成の移載室50内において形成されるエアフロー(クリーンエアの流れ)について、詳しく説明する。
【0049】
(比較例)
ここで、本実施形態における移載室50内のエアフロー形成の説明に先立ち、その比較例となる従来構成によるエアフロー形成について説明する。
【0050】
図5は、本発明の比較例となる従来構成による移載室内のエアフロー形成の概略を示す斜透視図である。
既に説明したように、従来構成の基板処理装置における移載室50内では、フィルタとブロアを内蔵したクリーンユニット61を、当該移載室50の一側の側壁に沿って設けている。そして、移載室50のウエハ搬入出口51が設けられた側の側壁の下部には、移載室50内のエアをクリーンユニット61により当該移載室50内へ再供給するための循環経路62を配している。このような構成により、移載室50内に形成されるエアフローは、クリーンユニット61からのサイドフローとなる。
【0051】
したがって、従来構成によるエアフロー形成では、サイドフローであるが故に、移載室50内の角部(コーナー部)63にてエアの滞留が発生し易くなってしまう。特に、ウエハ搬入出口51の近傍におけるエアの滞留は、当該ウエハ搬入出口51を通じて搬送されるウエハに対するパーティクル汚染の原因となり得るため、その発生を未然に回避すべきである。
【0052】
また、従来構成によるエアフロー形成では、移載室50内の限られたスペースを利用してエアを循環(再供給)させている。そのため、クリーンユニット61および循環経路62のための十分な設置スペースを確保することが困難であり、これに伴って十分なクリーンエア風量を確保することも困難となる。したがって、十分な風量確保が困難なためエアフローに乱れが生じ易くなり、この点によっても移載室50内の角部(コーナー部)63にてエアの滞留が発生し易くなってしまう。
【0053】
ところで、移載室50内では、処理直後のウエハのような熱を発する部材が存在するこ
とになる。そのため、その熱によりウエハ移載機等からパーティクルが発生する可能性がある。つまり、同じ筐体内であっても、例えばポッド棚が配置される空間(回転棚設置室)等では問題とならない程度のエアの滞留が、移載室50内では熱によるパーティクル発生の可能性があるために非常に大きな問題となり得るのである。
【0054】
また、従来構成によるエアフロー形成では、クリーンユニット61を移載室50の一側の側壁に沿って設けているため、当該側壁から一定の領域範囲に必ずクリーンユニット61のための設置スペースを必要としてしまう。したがって、特に装置幅方向において、基板処理装置の設置の省スペース化が困難になってしまう。このことは、特にウエハが大径化(例えば300mmから450mm)した場合に、非常に大きな問題となり得る。
【0055】
(本実施形態におけるエアフロー形成)
以上のような状況下にある移載室50内においても最適なエアフロー形成を行うために鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は、移載室50の角部からクリーンエアを循環させることがよいのではないかという知見に至った。そして、本願発明者は、移載室50内における角部にクリーンユニット52を配設し、当該クリーンユニット52から移載室50内に向けてクリーンエアを吹き出す、という従来とは異なる構成に想到したのである。
【0056】
さらに詳しくは、図3に示すように、移載室50内において、ウエハ搬入出口51が設けられた側壁と当該側壁に連なる他の側壁とによって形成される角部には、クリーンユニット52を配設する。一方、ウエハ搬入出口51が設けられた側壁の対面に位置する側壁の両角部には、排気部53a,53bを配設する。そして、クリーンユニット52からクリーンエアを吹き出すとともに、排気部53a,53bが積極的に排気を行うことによって、移載室50内にクリーンユニット52から両排気部53a,53bへ向けたクリーンエアの流れ(エアフロー)を形成する。このエアフローは、クリーンユニット52および排気部53a,53bが移載室50内の各角部に配されているので、移載室50内の対角線に沿った方向の流れが主流となり、従来構成によるサイドフローの場合とは異なり、移載室50内の角部(コーナー部)であってもエアの滞留が発生し難いものとなる。
【0057】
クリーンユニット52を移載室50内の角部に配設するという構成は、移載室50内の限られたスペースを利用してエアを循環させる場合、その実現が必ずしも容易であるとはいえない。クリーンユニット52と対角にある角部から当該クリーンユニット52までエア循環経路を構築することを考えると、そのためのスペース確保が困難だからである。
これに対して、本願発明者は、移載室50内の限られたスペースを利用するという既成概念に囚われず、移載室50の上方側における筐体12内の空間を利用してエアフロー循環路55を形成するという従来にはない着想を得て、これにより排気部53a,53bからクリーンユニット52までのエア循環経路を構築しつつ、クリーンユニット52を移載室50内の角部に配設するという構成を実現可能にしているのである。
【0058】
なお、第2のクリーンユニット56が設けられている場合には、移載室50内において、クリーンユニット52から排気部53a,53bへ向けたエアフローに加えて、ウエハ搬入出口51に面した位置に局所的なクリーンエアのダウンフローが形成されることになる。
【0059】
図6は、基板処理装置における移載室内のエアフロー形成の具体例を示す平面図である。
図6(a)に示すように、移載室50内の角部にクリーンユニット52を配設した構成の場合、クリーンユニット52からクリーンエアを吹き出すとともに、クリーンユニット52と対面する角部に設置した各排気部53a,53bが積極的に排気を行うことで、クリーンユニット52と各排気部53a,53bとの間にエアフローが形成される(図中矢
印参照)。つまり、移載室50内の一つの角部から他の角部に向けてエアフローが形成されることになる。したがって、従来構成によるサイドフローの場合に比べると、移載室50内の角部におけるエアの滞留が発生し難くなり、確実にエアフローを形成することができる。さらには、エアの滞留が発生し難いので、ウエハ14に対する冷却効果も十分に得ることができる。
【0060】
特に、第2のクリーンユニット56がウエハ搬入出口51の近傍で局所的なダウンフローを形成する場合には、例えばウエハ搬入出口51の近傍における角部に排気部の設置スペースを確保することが困難であっても、当該角部でのエアの滞留を解消することができ、ウエハ搬入出口51を通じて搬送されるウエハに対するパーティクル汚染を抑制する上で非常に有効である。
【0061】
クリーンユニット52による風量と各排気部53a,53bによる総風量との風量バランスは、それぞれを同等であることが望ましい。例えば、クリーンユニット52の風量1に対して、一つの排気部53aの風量を0.5、他の一つの排気部53bの風量を0.5とすると、バランス良くエアフローを形成できることが解析の結果から分かっている。ただし、風量バランスについては、ここで挙げた例に限定されることはなく、処理室42での処理内容(成膜する膜種等)によってウエハ温度も変わってくるので、ケースバイケースで適宜決定すればよい。
【0062】
移載室50内の角部に配設するクリーンユニット52はそのまま使用してもよいが、クリーンユニット52のエア吹き出し側には、当該クリーンユニット52が吹き出すクリーンエアの風向を少なくとも互いに異なる3方向とする風向板57を設置することが好ましい。風向板57は、風向を変える羽板等を備えて構成されたものであればよい。風向板57が風向を分ける少なくとも3つの方向としては、例えば、(イ)ウエハ搬入出口51前および基板移載機28へのフロー、(ロ)ボートエレベータへのフロー、(ハ)ボート交換装置54へのフローが考えられる。このような少なくとも3つの方向フローを分けることで、各々が上記(イ)〜(ハ)のように異なる役割をもってクリーンエアを供給することになる。したがって、風向板57を設置することは、ウエハ14を含め移載室50内のクリーン度をより保ち易くなる点で、非常に有効である。
【0063】
以上のような構成は、移載室50内のエア滞留を抑制し得ることに加えて、ウエハ14の径が大きくなった場合(例えば300mmから450mm)にも、装置幅をなるべく広くしないで済むようになる点でも、非常に有利となる。
【0064】
例えば、従来構成によるサイドフローの場合には、図6(b)に示すように、クリーンユニット61を設置するために移載室50の一側の側壁から一定の領域範囲に必ずスペースを要する。つまり、移載室50内のスペースを必ずしも有効活用しているとはいえない。なお、図6(b)には、クリーンユニット61の対面側に排気ファンが配された構成例を示している。
処理対象となるウエハ14が300mm径であれば従来構成によるサイドフローであっても構成可能であったが、ウエハ14が450mm径の場合には、移載室50内に確保可能なスペースが極端に狭くなり(装置幅方向に細くなり)、従来のような設置は非常に困難である。
【0065】
これに対して、本実施形態で説明したように、移載室50内の角部にクリーンユニット52を配設すれば、図6(a)からも明らかなように、ウエハ14が450mm径の場合であっても、移載室50内におけるエアフロー形成を確保するとともに、ウエハ14の大口径化に伴って大きくなる装置外寸の省スペース化をすることができる。つまり、移載室50内の角部にクリーンユニット52を設けることで、移載室50内のスペースを有効活
用して装置幅を可能な限り狭くすることを可能にしつつ、移載室50内での確実なエアフロー形成を行って当該移載室50内のクリーン度を好適に保つことが可能になる。
【0066】
図7は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の移載室の上方側におけるエア循環経路中のエアフローの概要を示す平面図である。
各排気部53a,53bが移載室50内から排気したエアは、移載室50の上方側に設けられたエアフロー循環路55によって循環され、クリーンユニット52または第2のクリーンユニット56へ戻る。このように、移載室50の上方側における筐体12内の空間を利用してエアフロー循環路55を形成すれば、移載室50内の限られたスペースを利用してエアを循環させていた従来構成に比べて、スペース上の制限が緩和されるので、循環させるエア流量を増大させることが容易に実現可能となる。また、移載室50内に複数の排気部53a,53bが配されている場合であっても、それぞれの排気部53a,53bから(具体的には2箇所から)エアを循環させることが可能となる。したがって、クリーンユニット52または第2のクリーンユニット56に対して、十分な流量のエアを循環させることができる。つまり、クリーンユニット52または第2のクリーンユニット56の風量不足が生じてしまうのを未然に解消することができる。
さらに、移載室50内の角部にクリーンユニット52を配し、かつ、移載室50の上方側における筐体12内の空間を利用してエアフロー循環路55を形成した場合は、従来構成においてクリーンユニット61および循環経路62があった部分が空きスペースとなる。したがって、従来構成に比べると、移載室50内での各構成要素の配置に関する自由度が増大する。
【0067】
また、エアフロー循環路55において、そのエア経路中にエアダンパ58が設けられていれば、エアダンパ58での流量調整によって移載室50内へのクリーンエアの風圧調整を行うことができるようになる。つまり、従来はクリーンユニット61の風量で制御していた移載室50内の風圧調整を、エア経路中にエアダンパ58が設けることで、排気側から調節できるようになる。その場合に、エアダンパ58での流量調整をオート制御できるようにして、クリーンユニット52または第2のクリーンユニット56と連動させると、風圧調整の精度向上が実現可能となるので、なおのこと良い。
【0068】
(6)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に挙げる一つ又はそれ以上の効果を奏する。
【0069】
(i)本実施形態によれば、移載室50内の角部にクリーンユニット52を配設することで、当該移載室50内(特に当該移載室50内の各角部)でのエアの滞留を発生し難くして、確実にエアフローを形成することができる。つまり、例えば処理室42内から搬出されたウエハ14が熱を発する場合であっても、パーティクル発生の原因となり得るエアの滞留発生が抑制されるので、当該パーティクルによるウエハ14の汚染を未然に回避することができる。しかも、本実施形態によれば、移載室50内の角部へのクリーンユニット52の配設によって、当該移載室50内のスペースを有効活用することができ、従来構成(サイドフローの場合)に比べると基板処理装置10の設置の省スペース化を容易に実現することができる。つまり、例えばウエハ14が大型化した場合であっても、装置幅を極力大きくしないように構成することが可能となる。
【0070】
このように、本実施形態では、従来構成のようなサイドフローではなく、少なくとも平面四角形状の移載室50における対角線に沿った方向にクリーンエアの流れを生じさせ、これにより移載室50内におけるエアの滞留発生を抑制して、移載中のウエハ14へのパーティクル汚染を抑えることができる。しかも、移載室50を省スペースに抑えながら、当該移載室50内のエアフローを確保することができる。
【0071】
(ii)本実施形態によれば、クリーンユニット52とは別の角部に排気部53a,53bを設けることで、移載室50内におけるエアフロー形成を確実なものとすることができる。すなわち、クリーンユニット52から排気部53a,53bへ向けたエアフローを形成することで、移載室50内におけるエアフローは、移載室50内の対角線に沿った方向の流れが主流となる。したがって、従来構成によるサイドフローの場合とは異なり、移載室50内の角部(コーナー部)であってもエアの滞留が発生し難いものとなる。
【0072】
(iii)本実施形態によれば、クリーンユニット52が吹き出すクリーンエアの風向を互
いに異なる少なくとも3方向とする風向板57を設置することで、各方向へ異なる役割をもってクリーンエアを供給することが可能となる。したがって、風向板57を設置することによって、移載室50内のクリーン度をより保ち易くなる。
【0073】
(iv)本実施形態によれば、移載室50の上方側における筐体12内の空間を利用してエアフロー循環路55を形成するので、移載室50内の限られたスペースを利用してエアを循環させていた従来構成に比べて、クリーンユニット52または第2のクリーンユニット56の風量不足を解消できる。
また、エアフロー循環路55のエア経路中にエアの流量調整を行うエアダンパ58を設けることで、そのエアダンパ58での流量調整によって移載室50内へのクリーンエアの風圧調整を行うことが可能になる。つまり、エア経路中にエアダンパ58が設けることで、従来はクリーンユニット風量で制御していた移載室50内の風圧調整を、排気側から調節できるようになる。
【0074】
(v)本実施形態によれば、第2のクリーンユニット56がウエハ搬入出口51の近傍で局所的なダウンフローを形成する。したがって、例えばウエハ搬入出口51の近傍における角部に排気部の設置スペースを確保することが困難であっても、当該角部でのエアの滞留を解消することができ、ウエハ搬入出口51を通じて搬送されるウエハに対するパーティクル汚染を抑制する上で非常に有効である。
【0075】
(vi)本実施形態によれば、移載室50内における複数の角部のそれぞれに排気部53a,53bを設ける場合において、各排気部53a,53bによる総風量とクリーンユニット52による風量とが同等となる風量バランスにしているので、バランス良くエアフローを形成することができる。
【0076】
<本発明の他の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0077】
上述した実施形態では、2ボート装置における移載室を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。つまり、本発明は、1つのボート30を処理室42内に対して搬入出する、いわゆる1ボート装置にも適用可能であることは勿論である。
【0078】
図8は、本発明の他の実施形態にかかる基板処理装置の移載室内におけるエアフロー形成を示す平面図である。
図例では、1ボート装置における移載室50内のエアフローを示している。
1ボート装置では、2ボート装置の場合に比べて移載室50内に配置すべき構成要素が少ないため、当該移載室50内にスペース的な余裕ができる可能性がある。
【0079】
そのため、1ボート装置に適用する場合には、スペース的な余裕を利用して、例えば図8(a)に示すように、移載室50内の角部に配されている排気部53a,53bのうちの一つをクリーンユニット52aに変えて、当該移載室50内に2箇所からのコーナーフローを形成することが考えられる。つまり、クリーンユニット52が配された角部とは別
の角部に他のクリーンユニット52aを配設し、それぞれのクリーンユニット52,52aを併用する。このようにすることで、移載室50内においては、角部でのエア滞留を抑制しつつ、ボート30の位置近辺にきれいな(整然と流れる)サイドフローを形成することができる。
【0080】
また、例えば図8(b)に示すように、クリーンユニット52に加えて、移載室50の一側の側壁に沿った位置(移載室50を構成する平面四角形状の構成辺に沿った位置)に他のクリーンユニット52bを並べて、それぞれのクリーンユニット52,52bを併用することも考えられる。このようにした場合には、移載室50内において、角部でのエア滞留を抑制しつつ、ボート30の位置近辺に更にきれいな(整然と流れる)サイドフローを形成することができるので、なお一層好ましい。
【0081】
以上のように、クリーンユニット52と他のクリーンユニット52a,52bを併用して得られるエアフローによれば、ボート30の位置近辺にきれいなサイドフローが形成されるため、当該ボート30に保持されるウエハ14に対するクリーン度を好適に維持することができる。
【0082】
図9は、本発明のさらに他の実施形態にかかる基板処理装置の移載室内におけるエアフロー形成の具体例を示す平面図である。
図例では、2ボート装置における移載室50内のエアフローを示しているが、1ボート装置の場合であっても同様に適用可能であることは勿論である。
図9に示す構成例では、移載室50内におけるクリーンエア経路上の特定箇所に、エアフロー循環路55への局所的な排気を行う局所排気部59を設けている。特定箇所としては、例えば特に温度が上がり易い箇所のように、移載室50内の環境(クリーン度や温度等)を好適に保つ上で支障を来すおそれのある箇所が挙げられる。特定箇所の数については、特に限定されることはない。このような特定箇所に局所排気部59を設けて、移載室50内のエアをエアフロー循環路55へ流すようにすれば、当該局所排気部59がない場合に比べて移載室50内の環境を好適に保つことが容易となり、なお一層好ましい。
【0083】
以上のように、局所排気部59を設けた構成によれば、移載室50内の環境を好適に保つことで、ウエハ14に対するクリーン度を好適に維持することができ、しかもウエハ14に対する冷却効果も十分に期待できる。
【0084】
また、図9に示す構成例では、ウエハ搬入出口51の近傍における角部に排気部53cを設けている。設置スペースを確保できれば、かかる箇所に排気部53cを設けてもよく、これによりウエハ搬入出口51の近傍角部でのエアの滞留発生を確実に抑制することができる。
【0085】
なお、上述した各実施形態以外にも、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々様々に変形して実施可能なことは勿論である。
【0086】
<本発明の好ましい形態>
以下に、本実施形態にかかる好ましい形態を付記する。
【0087】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持した状態で前記処理室内に対して搬入出される基板保持体と、
未処理基板を前記基板保持体に保持させるチャージ動作および処理済基板を前記基板保持体から取り出すディスチャージ動作が行われる移載室と、
前記移載室内にクリーンエアを吹き出すクリーンユニットと、を備え、
前記クリーンユニットは、平面多角形状に構成された前記移載室内における角部に配設される基板処理装置が提供される。
【0088】
[付記2]
好ましくは、
前記クリーンユニットが配設された前記角部とは別の前記移載室内における角部に、当該移載室内のエアを排気する排気部を設ける。
【0089】
[付記3]
また好ましくは、
前記クリーンユニットが吹き出すクリーンエアの風向を少なくとも互いに異なる3方向とする風向板を備える。
【0090】
[付記4]
また好ましくは、
前記移載室内から排気されたエアを当該移載室内へ前記クリーンユニットを介して再供給するためのエアフロー循環路と、
前記エアフロー循環路を流れるエアの流量調整を行うエアダンパと、を備え、
前記エアダンパでの流量調整によって前記移載室内への風圧調整を行うように構成する。
【0091】
[付記5]
また好ましくは、
前記移載室における基板収容具側連通口の近傍にて局所的なクリーンエアのダウンフローを発生させる第2のクリーンユニットを備える。
【0092】
[付記6]
また好ましくは、
前記移載室内における複数の角部のそれぞれに前記排気部を設け、
それぞれの角部における各排気部による総風量と前記クリーンユニットによる風量とが同等となる風量バランスにするよう構成する。
【0093】
[付記7]
また好ましくは、
前記クリーンユニットが配設された前記移載室内の前記角部とは別の角部、または当該移載室における前記平面多角形状の構成辺に沿った位置に、当該クリーンユニットとは別に他のクリーンユニットを配設し、
前記クリーンユニットと前記他のクリーンユニットとを併用するように構成する。
【0094】
[付記8]
また好ましくは、
前記移載室内におけるクリーンエア経路上の特定箇所に前記エアフロー循環路への局所的な排気を行う局所排気部を設ける。
【0095】
[付記9]
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持した状態で前記処理室内に対して搬入出される基板保持体と、
未処理基板を前記基板保持体に保持させるチャージ動作および処理済基板を前記基板保
持体から取り出すディスチャージ動作が行われる移載室と、
前記移載室内にクリーンエアを吹き出すクリーンユニットと、を備え、
前記クリーンユニットは、平面多角形状に構成された前記移載室内で、少なくとも当該平面多角形状の対角線に沿った方向に前記クリーンエアの流れを生じさせる基板処理装置が提供される。
【0096】
[付記10]
本発明の更に他の態様によれば、
処理室内に連通する移載室内にて、前記処理室内へ搬入する前の基板保持体に未処理基板を保持させるチャージ動作を行う搬入前移載工程と、
前記未処理基板を保持した状態の前記基板保持体を前記移載室内から前記処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記処理室内に搬入された前記基板保持体が保持する前記未処理基板に対して処理を行う処理工程と、
前記処理が行われた処理済基板を保持する前記基板保持体を当該処理室内から前記移載室内へ搬出する搬出工程と、
前記移載室内にて、前記処理室内から搬出された前記基板保持体が保持する前記処理済基板を当該基板保持体から取り出すディスチャージ動作を行う搬出後移載工程と、を備え、
前記搬入前移載工程と前記搬出後移載工程との少なくとも一方では、平面多角形状に構成された前記移載室内における角部に配設されたクリーンユニットが、前記移載室内にクリーンエアを吹き出す半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0097】
10 基板処理装置
14 ウエハ(基板)
30 ボート(基板保持体)
42 処理室
50 移載室
52 クリーンユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持した状態で前記処理室内に対して搬入出される基板保持体と、
未処理基板を前記基板保持体に保持させるチャージ動作および処理済基板を前記基板保持体から取り出すディスチャージ動作が行われる移載室と、
前記移載室内にクリーンエアを吹き出すクリーンユニットと、を備え、
前記クリーンユニットは、平面多角形状に構成された前記移載室内における角部に配設される
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記クリーンユニットが配設された前記角部とは別の前記移載室内における角部に、当該移載室内のエアを排気する排気部を設ける
ことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記クリーンユニットが吹き出すクリーンエアの風向を少なくとも互いに異なる3方向とする風向板を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記移載室内から排気されたエアを当該移載室内へ前記クリーンユニットを介して再供給するためのエアフロー循環路と、
前記エアフロー循環路を流れるエアの流量調整を行うエアダンパと、を備え、
前記エアダンパでの流量調整によって前記移載室内への風圧調整を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の基板処理装置。
【請求項5】
処理室内に連通する移載室内にて、前記処理室内へ搬入する前の基板保持体に未処理基板を保持させるチャージ動作を行う搬入前移載工程と、
前記未処理基板を保持した状態の前記基板保持体を前記移載室内から前記処理室内へ搬入する搬入工程と、
前記処理室内に搬入された前記基板保持体が保持する前記未処理基板に対して処理を行う処理工程と、
前記処理が行われた処理済基板を保持する前記基板保持体を当該処理室内から前記移載室内へ搬出する搬出工程と、
前記移載室内にて、前記処理室内から搬出された前記基板保持体が保持する前記処理済基板を当該基板保持体から取り出すディスチャージ動作を行う搬出後移載工程と、を備え、
前記搬入前移載工程と前記搬出後移載工程との少なくとも一方では、平面多角形状に構成された前記移載室内における角部に配設されたクリーンユニットが、前記移載室内にクリーンエアを吹き出す
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79907(P2012−79907A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223418(P2010−223418)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】