説明

基板処理装置および基板処理の終了時点を検出する方法

【課題】基板表面に薄膜を形成する基板処理で、処理の進行具合をリアルタイムで把握して処理の終了時点を精度よく検出できる方法を提供すること。
【解決手段】基板1上に絶縁膜2を形成する基板処理装置10であって、絶縁膜2を波長可変単色光sで照射し、絶縁膜2および基板1からの各反射光を干渉させる干渉光発生手段12と、所望膜厚での干渉光強度Iが極小になるように単色光sの基準波長λを設定する基準波長設定部28と、基準波長を挟む2波長(λ、λ)間で単色光sを波長変調する変調部26と、これに応じた干渉光強度Iを検出する干渉光検出器18と、絶縁膜2が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの干渉光強度Iの変化に基づいて、最大波長(λ)時と最小波長(λ)時の干渉光強度の差分ΔIが零または所定値になる時点を基板処理の終了時点として検出する終了時点検出手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体ウエハー、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板表面に、所望膜厚の薄膜を形成する基板処理装置および基板処理の終了時点を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造プロセスにおいては、基板表面に薄膜を蒸着により形成する基板処理や、基板表面に形成された膜をエッチング処理して所定パターンに加工する基板処理が多用されている。
このような基板処理では、形成される薄膜の膜厚を精度良く管理する必要がある。そのため、薄膜の蒸着量やエッチング量を正確に検出して、所望膜厚に達した時点で、蒸着処理やエッチング処理を終了させなければならない。
【0003】
従来の基板処理装置において、処理中の薄膜の厚みを管理するモニタリング装置を備えたものがある(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、エッチング速度を正確に検出して、薄膜の厚みをリアルタイムで取得するモニタリング装置が記載されている。この装置は、薄膜にレーザ光を照射した時の反射光が干渉光になることを利用している。エッチング処理が進行して膜厚が徐々に薄くなっていく間に、干渉光強度の極大値と極小値とが繰り返して生じるため、これらの極値が生じる時間幅に基づいてエッチング速度を取得する。取得したエッチング速度を使えば、薄膜の膜厚をリアルタイムで知ることができ、薄膜が所望膜厚に達したかどうかを判定する。
【0004】
また、特許文献2には、干渉光強度の時間微分値をモニターすることによって、薄膜が所望膜厚に達したかどうかを判定する方法が記載されている。この方法では、干渉光強度が所望膜厚において極小値となるような特定波長を選択し、その特定波長における干渉光強度の時間微分値をモニターする。そして、干渉光強度の時間微分値がちょうど零になるタイミングが基板処理の完了時点であるという基準で、薄膜が所望膜厚に達したかどうかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−012522号公報
【特許文献2】特開2002−081917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、これら特許文献1、2に記載の装置や方法で、基板処理の終了時点を検出する場合、次のような課題があった。
特許文献1では、常にエッチング速度を取得して、所望膜厚に達するまでの処理時間を推定し、その処理時間でエッチングを停止させることになる。そうすると、最後にエッチング速度を取得したタイミングから所望膜厚に達するタイミングまでの間で、推定した処理時間と実際に必要な処理時間とが一致しない可能性があり、処理停止時の膜厚が所望膜厚から外れる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2では、干渉光強度の時間微分値が零になるタイミングを正確に検出する必要がある。図1(A)のように、エッチングにより膜厚tが徐々に薄くなって所望膜厚tに達するタイミングを処理の終了時点とすると、特定波長の干渉光強度Iは同図(B)のように終了時点で極小値となり、また干渉光強度Iの時間微分値は同図(C)のように終了時点で零になるはずである。しかし、干渉光強度Iがちょうど零になる付近(図中のDで示す範囲)では、同図(D)の拡大図のように、干渉光強度Iの波形がほぼフラットになっていて、このフラット領域において、干渉光強度Iの時間微分値がちょうど零になるタイミングを正確に検出することは困難である。
このように従来の装置や方法でも、基板処理の終了時点を正しく検出することができず、エッチング不足や過剰エッチングを生じてしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、基板表面に薄膜を形成する基板処理において、処理の進行具合をリアルタイムで把握して処理の終了時点を従来よりも精度よく検出することができる方法を提供すること、および、その検出方法を好適に実施することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、基板の表面に透光材料膜を所望膜厚となるまで形成する、または基板表面に形成された透光材料膜を所望膜厚となるまで除去する基板処理を行う装置であって、干渉光発生手段と、基準波長設定手段と、変調手段と、干渉光検出手段と、終了時点検出手段と、を備えることを特徴とする。ここで、干渉光発生手段は、前記透光材料膜を波長可変単色光で照射し、前記透光材料膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光を干渉させて干渉光を発生させる。基準波長設定手段は、前記透光材料膜が所望膜厚になった時の前記干渉光の強度(I)が極小または極大になるように、前記単色光の基準波長(λ)を予め設定する。変調手段は、前記基準波長を挟む2波長(λ、λ)間で前記透光材料膜を照射する単色光の波長を変調する。干渉光検出手段は、該波長変調に応じた干渉光の強度を検出する。終了時点検出手段は、前記透光材料膜が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの波長変調に対する前記干渉光強度の変化に基づいて、前記波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分が零または所定値になる時点を前記基板処理の終了時点として検出する。
【0010】
本発明の基板処理には、基板表面に対する透光材料膜の蒸着形成や、基板表面の透光材料膜をエッチング加工などが含まれる。また、透光材料膜に波長可変単色光を照射する手段としては、分光器や波長可変レーザ光源などを採用できる。分光器として例えばモノクロメータを用いれば、モノクロメータに内蔵される回折格子とこの回折格子の姿勢を周期的に変化させる駆動部とにより単色光の波長変調を行えるので、干渉光発生手段および変調手段として分光器を用いてもよい。
【0011】
ここで、所望膜厚になった時の干渉光強度が極小または極大になるように、予め単色光の基準波長を設定することについて説明する。例えば、透光材料膜の屈折率nが波長λの変化に対して一定であると考えることができれば、次の式(1)を満たす波長λを基準波長として設定すればよい。
mλ=2 n t …(1)
ここで、mは整数、tは所望膜厚とする。
【0012】
基準波長を所望膜厚の2倍に屈折率を掛けた値に設定すると、透光材料膜の表面の反射光と基板表面の反射光との光路差がちょうど単色光の1波長分になり、両反射光が強め合って干渉光の強度が極大になる。また、4倍に屈折率を掛けた値に設定すると、光路差が半波長分になり、両反射光が弱め合って干渉光の強度が極小になる。しかし、実際には透光材料膜の屈折率nが波長λの変化が波長の変化に対して一定ではなく、波長に応じて変化する。屈折率を n(λ) として表す。このため、予め屈折率 n(λ) の値を調べておき、次の式(2)を満たす波長λを基準波長として設定するとよい。
mλ=2 n(λ) t …(2)
【0013】
なお、基準波長の設定において、膜に対する単色光の入射角を考慮する必要もある。従って、膜厚既知の基準膜試料を用いて予め最適の基準波長を決定しておくとよい。
【0014】
また、本発明に係る基板処理装置では、前記終了時点検出手段は、交流成分検波部と、直流成分検出部と、終了時点判定部とを有することが好ましい。ここで、交流成分検波部は、前記変調手段の変調周期に同期する信号を用いて、前記干渉光検出手段で検出された干渉光の強度変化から、前記最大波長(λ)時と最小波長(λ)時の各干渉光強度を検波し、検波された干渉光強度の差分(ΔI)を取得する。直流成分検出部は、前記干渉光検出手段で検出された干渉光強度の時間平均(IAVE)を取得する。終了時点判定部は、前記干渉光強度の差分を前記干渉光強度の時間平均で除した値が零または前記所定値になる時点を前記基板処理の終了時点として判定する。
【0015】
さらに、本発明に係る基板処理装置は、前記透光材料膜を照射する前の前記単色光の一部を取り出して該単色光の強度を検出する測定光検出手段を有し、前記終了時点検出手段および前記交流成分検波部が以下のように構成されていることが好ましい。すなわち、前記終了時点検出手段は、さらに、前記干渉光検出手段で検出される干渉光強度から、前記測定光検出手段で同時に検出される単色光強度を差し引くことにより、前記変調手段にて波長変調された前記単色光のベースラインを補正するベースライン補正部を有する。前記交流成分検波部は、前記ベースライン補正部からの干渉光強度に基づいて前記最大波長時と最小波長時の各干渉光強度を検波し、また、前記直流成分検出部は、前記ベースライン補正部からの干渉光強度に基づいて前記時間平均を取得する。
【0016】
また、本発明に係る基板処理装置では、前記干渉光発生手段は、可視光を発生する光源と分光器とを有し、前記分光器は、前記可視光から予め設定された前記基準波長(λ)の単色光を取り出すための回折格子と、前記変調手段とを内蔵する。前記変調手段は、前記基準波長を挟む2波長(λ、λ)間で前記単色光の波長を変調させるために前記回折格子の姿勢を周期的に変化させる駆動部からなることが好ましい。
【0017】
一方、基板の表面に透光材料膜を所望膜厚となるまで形成する、または基板表面に形成された透光材料膜を所望膜厚となるまで除去する基板処理において、本発明に係る基板処理の終了時点を検出する方法は、基準波長設定工程と、予備測定工程と、基板処理中の干渉光強度取得工程と、終了時点判定工程と、を有することを特徴とする。基準波長設定工程は、所望膜厚の前記透光材料膜を波長可変単色光で照射した場合に、該透光材料膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光の干渉による干渉光強度(I)が極小または極大になるように、前記単色光の基準波長(λ)を予め設定する。予備測定工程は、基板表面に形成された前記所望膜厚に等しい膜厚の基準膜を用いて、該基準膜を前記波長可変単色光で照射するとともに、前記基準波長(λ)を中心に任意の波長範囲で該単色光の波長を変調し、該基準膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光を干渉させ、前記波長範囲に応じた干渉光強度の変化を取得し、該干渉光強度の変化に基づき、前記基準波長よりも小さい波長範囲および前記基準波長よりも大きい波長範囲から前記干渉光強度が等しくなる波長をそれぞれ取得し、これらの波長を予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)とする。基板処理中の干渉光強度取得工程は、前記基板処理中に、前記透光材料膜を照射する前記単色光の波長を前記予備測定に基づく前記最小波長(λ)および最大波長(λ)の波長範囲で変調し、該波長範囲に応じた干渉光強度の変化を取得する。終了時点判定工程は、前記透光材料膜が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの前記干渉光強度の変化に基づいて、前記波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)が零になる時点を前記基板処理の終了時点として判定する。
【0018】
なお、前記基板処理の終了時点を検出する方法において、前記予備測定工程は、基板表面に形成された前記所望膜厚に等しい膜厚の基準膜を用いて、該基準膜を前記波長可変単色光で照射するとともに、前記基準波長(λ)を中心に最小波長(λ)と最大波長(λ)との間で該単色光の波長を変調し、該基準膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光を干渉させ、前記波長幅に応じた干渉光強度の変化を取得し、該干渉光強度の変化に基づき、最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)を予備測定に基づく所定値として取得してもよい。この場合、前記基板処理中の干渉光強度取得工程は、前記基板処理中に、前記基準波長(λ)を中心に最小波長(λ)と最大波長(λ)との間で前記透光材料膜を照射する前記単色光の波長を変調し、該所定の波長幅に応じた干渉光強度の変化を取得する。また、前記終了時点判定工程は、前記透光材料膜が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの前記干渉光強度の変化に基づいて、前記波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)が前記予備測定に基づく所定値になる時点を前記基板処理の終了時点として判定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、基準波長λを挟む2波長(λ、λ)間で透光材料膜を照射する単色光の波長を変調することで、最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分が零または予備測定などで設定された所定値になる時点を検出することができ、この時点を基板処理の終了時点として用いることができる。
【0020】
本発明の検出原理を図2、図3を例に説明する。図2のように例えばエッチング処理が進行して膜厚がt→t→t(所望膜厚)と変化する場合、各膜厚に達した時点で検出される干渉光強度Iは図3のようになる。すなわち所望膜厚tに達する直前の膜厚t、tでは、まだ膜厚が大きいので、変調波長が基準波長λよりも大きいときに干渉光強度Iが極小になる。本発明では所望膜厚tの時の干渉光強度が極小になるように基準波長λを設定しているからである。膜厚がt、tでは、図3のように最大波長(λ)時の干渉光強度Iλ2と最小波長(λ)時の干渉光強度Iλ1との差分(ΔI=Iλ2−Iλ1)が負の値になる。エッチング処理が進んで所望膜厚tに近づくと、差分ΔIの絶対量は徐々に小さくなり、所望膜厚tに到達した時点で干渉光強度Iλ2と干渉光強度Iλ1とが一致して差分ΔIが零になる。
【0021】
また、蒸着処理などで膜厚を所望膜圧まで形成する場合の前記干渉光強度Iの変化を図4に示す。蒸着などの場合、膜厚が所望膜圧に達する前で干渉光強度の差分ΔIが正の値となり、所望膜厚tに到達した時点で差分ΔIが零になる時点を判定すればよい。従って、干渉光強度の差分ΔIをリアルタイムで監視すれば、差分ΔIが零になる時点を判定して、その時点を基板処理の終了時点として検出できる。この際、干渉光強度の差分ΔIの信号の符号の変化を監視して、符号が負から正、または正から負に変わる時点を検出することで、差分が零になる時点を取得すればよい。
【0022】
なお、干渉光強度自身を判定基準にすると、同じ所望膜厚の条件下でも膜の種類により干渉光の強度変化が異なり、判定基準がばらばらになってしまう。これに対して、本発明では、膜の種類が異なっていても、同じ所望膜厚に達すれば必ず干渉光強度の差分の符号が変化するので、所望膜厚に対する判定基準を一定にすることができる。なお、干渉光強度が極小となる時点でも、ある程度の信号強度を持つとしても、極大になる時点での信号強度に比べれば、小さい信号強度になる。従って、干渉光強度が極大になる時点での差分を監視するよりも、干渉光強度が極小になる時点での差分を監視する方が、検出器の感度を上げて変調成分を大きくとることができるため、終了時点の検出精度が良い。
【0023】
また、干渉光発生手段および変調手段として分光器などを用いる際、本発明における波長変調によって得られる干渉光強度Iの変化が、基準波長λを中心に対称的に変化せず、所望膜厚tに到達した時点で干渉光強度Iλ1と干渉光強度Iλ2とが一致しない場合もある。そのような場合には、膜厚既知の基準膜試料を用いて予備測定を行い、干渉光強度の差分ΔIが零になる2つの波長、すなわち最小波長(λ)と最大波長(λ)とを予備測定において決定しておけばよい。実際の基板処理における本測定では、予備測定に基づく最小波長(λ)と最大波長(λ)の波長範囲で単色光の波長を変調させることで、干渉光強度の差分が零になる時点を、基板処理の終了時点として検出できる。または、膜厚既知の基準膜における干渉光強度の差分を予備測定に基づく所定値として取得しておき、実際の基板処理における本測定では、差分が予備測定に基づく所定値になった時点を、基板処理の終了時点として検出してもよい。
【0024】
また、従来の検出方法に優る点として、本発明では、図1(D)に示したように干渉光強度がフラットになる波長領域が存在していても、処理の終了時点を高精度に検出できる。基準波長λを挟む2つの波長(λ、λ)間の幅を大きくして、波長変調における最大波長(λ)と最小波長(λ)がフラットになる波長領域の外側に達するようにできるからである。
【0025】
このように、本発明によれば、基板表面に薄膜を形成する基板処理において、所望膜厚に到達する直前から到達するまでの間の処理の進行具合をリアルタイムで把握できる。そして基板処理の終了時点を従来よりも精度よく検出することができる。よって、基板処理におけるエッチング不足や過剰エッチングの発生を防止して、極薄の透光材料膜の膜厚を精度良く管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の基板処理の終了時点を検出する方法について説明するグラフ。
【図2】基板処理中に斜入射方式で干渉光を取得する方法を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板処理の終了時点を検出する方法を説明するグラフである。
【図4】前記実施形態の基板処理の終了時点を検出する別の方法を説明するグラフ。
【図5】前記実施形態の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】予備測定を行って前記基板処理の終了時点を検出する方法を説明するグラフである。
【図7】前記基板処理装置の詳細構成を示すブロック図である。
【図8】前記実施形態での干渉光強度の差分を取得する方法を示すグラフである。
【図9】前記干渉光強度の差分が零になる時点を検出する方法を説明するグラフ。
【図10】前記実施形態の干渉光発生装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態に係る基板処理装置について説明する。基板処理装置は、本発明に係る基板処理の終了時点の検出方法を実施するための装置でもある。図5は、基板1に対してエッチング処理を施す基板処理装置10の概略構成図である。表面に絶縁膜2が形成された基板1は、基板保持台上に載置されている。エッチング処理手段として例えばドライエッチング装置を用いる場合、基板1は密閉処理容器内に収容されて、基板表面の絶縁膜2がプラズマ雰囲気中においてドライエッチングされる。なお、絶縁膜2は、ポリシリコン膜などの透光材料膜である。
【0028】
基板処理装置10は、干渉光発生手段12と、波長変調制御手段14と、測定光検出器16と、干渉光検出器18と、終了時点検出手段20とを備え、エッチング処理中に絶縁膜2の膜厚tをリアルタイムで取得する機能および、絶縁膜2が所望膜厚tに達した時点でエッチング処理を終了する機能を有している。なお、エッチング処理手段については公知の手段を用いることができる。
【0029】
干渉光発生手段12は、可視光を出射するランプ等の光源22と、この光源22からの可視光を回折格子および固定スリット板で所定波長の単色光に分光する分光器24とを有して、分光器24から出射される単色光sが基板表面の絶縁膜2に対して斜め方向に入射するように配置されている。
【0030】
干渉光発生手段12の分光器24が内蔵する回折格子は、図示しない駆動装置により、その姿勢が周期的に変化するように設けられている。また、分光器24内には、回折格子により分散された光の一部を通すスリット板が固定されている。分光器24では、回折格子とスリット板によって回折格子の姿勢の変化に応じた波長の単色光が生成される。例えば、回折格子を振動可能な駆動装置でもよく、または回折格子の回転角を基準角度中心に所定の振幅で周期的に変化可能な駆動装置でもよい。駆動装置としてはこれに限られず、単色光の波長を変調できる装置であれば、他の方式の装置でもよい。回折格子、スリット板および回折格子の駆動装置が、単色光の変調部26を構成している。
【0031】
干渉光発生手段12の分光器24と基板1との間には、ビームスプリッター(BS)が配置されている。ビームスプリッターBSは、単色光の一部を測定光検出器16に向けて反射し、残りの単色光を透過して基板1に向けて出射する。
【0032】
波長変調制御手段14は、基準波長設定部28と変調幅設定部30とを有し、分光器24が生成する単色光sの波長変調を制御する。すなわち、基準波長設定部28からは基準波長λの情報が、また、変調幅設定部30からは所定の波長幅(±λ)の情報をそれぞれ分光器の変調部26に送られる。すると、変調部26が波長変調制御手段14からの情報に基づいて回折格子の姿勢制御を行い、単色光の波長を基準波長λを挟む2波長(λ、λ)間で波長変調する。
【0033】
波長変調制御手段14の基準波長設定部28において、所望膜厚tに応じて定まる干渉光の光路差ΔLに屈折率を掛けた値が、基準波長の半波長(λ/2)の1倍または2倍に等しい長さになるように、単色光の基準波長λが予め設定される。さらに、薄膜の特性が既知のものであれば、干渉光強度の信号の挙動を十分に予測することができるので、上述のような半波長(λ/2)の1倍または2倍に限られず、光路差ΔLに屈折率を掛けた値が、半波長(λ/2)の3倍、4倍、…n倍(nは自然数)に等しい長さになるように、基準波長λを設定して、処理の終了時点を検出することもできる。なお、干渉光強度の極大を監視する場合には、基準波長の半波長(λ/2)の偶数倍に等しい長さになるようにし、干渉光強度の極小を監視する場合には、基準波長の半波長(λ/2)の奇数倍に等しい長さになるようにする。
【0034】
実際の基板処理においては、透光材料膜の屈折率nが波長λの変化が波長の変化に対して一定ではなく、波長に応じて変化する。屈折率を n(λ) で表すと、予め屈折率 n(λ) の値を調べておき、次の式(3)を満たす波長λを基準波長として設定するとよい。
mλ=2 n(λ) t …(3)
ここで、mは整数、tは所望膜厚とする。
【0035】
なお、基準波長λの最終決定には単色光の入射角も考慮する。本実施形態では、膜厚既知の基準膜試料を用いて予め最適の基準波長を決定する。また、波長変調制御手段14には図示しない変調周波数設定部31が設けられ、ここで設定された変調周波数fで単色光が波長変調する。
【0036】
測定光検出器16は、ビームスプリッターBSを反射した単色光の光量を検出する。また、干渉光検出器18は、基板表面の反射光s’と絶縁膜表面の反射光s’’との干渉光の光量を検出する。このように本実施形態では絶縁膜2表面に対して単色光を斜め方向から照射して干渉光を発生させる斜入射干渉計の構造を用いている。この構成では、分光器24や検出器16、18を絶縁膜2の真上に配置しなくてもよいので、エッチング処理に何ら支障を与えない。
【0037】
終了時点検出手段20は、ベースライン補正器32と、干渉光強度の差分取得部34と、エッチング処理の終了時点判定部36とを有する。
【0038】
分光器24で生成される単色光の光量は、その波長に応じて変化してしまう。そこで、本実施形態では、終了時点検出手段20にベースライン補正器32を設けて、波長変調された単色光のベースラインを補正している。このベースラインの補正は、測定光検出器16からの光強度が所定値になるように、該光強度信号をAGC(ゲインコントロール)することによって行っている。
【0039】
終了時点検出手段20の差分取得部34は、ベースライン補正器32から、最大波長時の干渉光強度情報(Iλ2)と最小波長時の干渉光強度情報(Iλ1)とを得て、その差分ΔIを取得する。
【0040】
終了時点判定部36は、波長変調に応じた光干渉強度の差分(ΔI=Iλ2−Iλ1)を監視し、光干渉強度の差分ΔIが零になる時点、正確には差分の符号が変わる時点を検出し、この時点を基板処理の終了時点として外部に処理終了信号を発信する。干渉光強度の差分ΔIの監視は、少なくとも絶縁膜2が所望膜厚tに達する直前から所望膜厚tに達するまでの間、連続して実行されればよい。
【0041】
基板処理装置10は、終了時点検出手段20からの処理終了信号を用いて、エッチング処理装置に処理終了の指令を送る。これによりエッチング処理が停止し、所望の膜厚の絶縁膜が得られる。
【0042】
本実施形態では、絶縁膜を照射する単色光sの波長を、基準波長λを挟む2波長(λ、λ)間の波長範囲で変調することで、最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分ΔIが零になる時点を検出することができ、この時点を基板処理の終了時点として用いることに特徴がある。
【0043】
ここで、処理終了時点の検出方法を詳しく説明する。図2のようにエッチング処理が進行して膜厚がt→t→t(所望膜厚)と変化する場合、各膜厚に達した時点で検出される干渉光強度Iは図3のようになる。すなわち所望膜厚tに達する直前の膜厚t、tでは、まだ膜厚が大きいので、変調波長が基準波長λよりも大きいときに干渉光強度Iが極小になる。これは所望膜厚tの時の干渉光強度が極小になるように基準波長λを設定しているからである。膜厚がt、tでは、図3のように最大波長時の干渉光強度Iλ2と最小波長時の干渉光強度Iλ1との差分(ΔI=Iλ2−Iλ1)が負の値になる。そしてエッチング処理が進んで所望膜厚tに近づくと、差分ΔIの絶対量は徐々に小さくなり、所望膜厚tに到達した時点で干渉光強度Iλ2と干渉光強度Iλ1とが一致して差分ΔIが零になる。従って、干渉光強度の差分ΔIをリアルタイムで監視すれば、差分ΔIが零になる時点、すなわち差分ΔIの符号が逆転する時点を判定して、その時点を基板処理の終了時点として検出できる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、基板表面に薄い膜を形成する基板処理において、所望膜厚に到達する直前から到達するまでの間の処理の進行具合をリアルタイムで把握できる。そして基板処理の終了時点を従来よりも精度よく検出することができる。よって、基板処理におけるエッチング不足や過剰エッチングの発生を防止して、極薄の透光材料膜の膜厚を精度良く管理することができる。
【0045】
また、波長変調制御手段14の変調幅設定部30では、図1(D)に示すような干渉光強度がフラットになる波長領域(フラット領域)を考慮して、基準波長λを挟む2波長(λ、λ)間の波長範囲が予め設定される。この波長幅(λ〜λ)の設定値を大きくすることによって、最大波長(λ)と最小波長(λ)がフラット領域の外側に達するようにできるため、フラット領域が存在していても、処理の終了時点を高精度に検出できる。
【0046】
また、本実施形態の基板処理装置を用いて基板上に絶縁膜を蒸着処理によって形成する場合での処理終了時点を検知する方法を図4に基づいて説明する。蒸着処理では膜厚がt→t→tと徐々に厚くなっていく。図4には各膜厚での干渉光強度Iの波形を示す。所望膜厚tに達する直前のまだ厚い膜厚t、tでは、基準波長λよりも小さい波長において干渉光強度Iの極小が現れる。膜厚がt、tでは、最大波長時の干渉光強度Iλ2と最小波長時の干渉光強度Iλ1との差分(ΔI=Iλ2−Iλ1)が正の値になる。エッチング処理が進んで所望膜厚tに近づくと、差分ΔIの絶対量は徐々に小さくなり、所望膜厚tに到達した時点で干渉光強度Iλ2と干渉光強度Iλ1とが一致して差分ΔIが零になる。従って、干渉光強度の差分ΔIをリアルタイムで監視すれば、差分ΔIが零になる時点、すなわち差分ΔIの符号が逆転する時点を判定して、その時点を基板処理の終了時点として検出できる。
【0047】
以下に本実施形態に係る基板処理の終了時点の検出方法について、図6に基づいて詳細に説明する。干渉光強度Iの波形を測定する際、図3、4のように、基準波長λが最小波長(λ’)および最大波長(λ’)のちょうど真ん中の値である場合、干渉光強度Iが基準波長λに対して必ずしも対称的に変化するとは限らない。一例を図6(A)に示す。同図では、膜厚に応じて定まる基準波長λでの干渉光強度Iは極小を示すが、最大波長時の干渉光強度Iλ2’と最小波長時の干渉光強度Iλ1’とが一致していない。
【0048】
このような場合、膜厚(t)が既知である基準膜を用いて予備測定を行う。予備測定では、既知の膜厚で定まる基準波長λを用いて、この基準波長を中心に所定の波長幅(λ’〜λ’)で波長変調を行う。そして最大波長時の干渉光強度Iλ2’と最小波長時の干渉光強度Iλ1’とを取得する。このようにして既知の膜厚(t)における、単色光の波長λと干渉光強度Iとの関係を把握しておく。
【0049】
次に、予備測定に基づく中心波長λ’を算出する。図6(B)に示すように、中心波長λ’の算出では、予備測定の結果に基づき、基準波長λよりも小さい波長範囲と大きい波長範囲において、干渉光強度Iが等しくなる波長をそれぞれ取得する。これらの波長を予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)とする。また、最小波長(λ)と最大波長(λ)の平均値を予備測定に基づく中心波長λ’とする。
【0050】
次に、予備測定に基づく中心波長λ’、最小波長(λ)および最大波長(λ)を用いて本測定を行う。図6(C)に示すように、本測定では、基板処理を実行しながら、中心波長λ’を中心に2波長(λ、λ)間の波長範囲で単色光の波長変調を行う。そして最大波長時の干渉光強度Iλ2と最小波長時の干渉光強度Iλ1とを取得し、これらの差分(ΔI=Iλ2−Iλ1)が零、すなわち差分ΔIの符号が逆転する時点を判定して、その時点を基板処理の終了時点として検出する。
【0051】
本実施形態での予備測定は、図5で示した前記実施形態の基板処理装置を用いて実行することができる。予備測定に必要な構成として、図5に示す波長変調制御手段14に、予備測定に基づく中心波長λ’の取得部と、予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)の取得部を設ければよい。なお、予備測定に基づく中心波長λ’の取得は必ずしも要さず、予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)の取得部だけでもよい。また、本測定では、基準波長設定部28および変調幅設定部30が、前記各取得部からの中心波長λ’、最小波長(λ)および最大波長(λ)に基づいて単色光の波長変調を制御すればよい。
【0052】
本実施形態によれば、波長変調による単色光の強度変化に伴って、干渉光強度が変化する場合であっても、絶縁膜が所望膜厚に達する時の干渉光強度の極小または極大点を高精度に検出することができる。従って、高い信頼性を備えた基板処理の終了時点の検出方法を提供できる。
【0053】
次に、本実施形態に係る基板処理装置の詳しい構成および基板処理の終了時点の検出方法について、図7〜図9に基づいて説明する。図7に示すように基板処理装置10の終了時点検出手段20は、交流成分検波部134と、直流成分検出部としての低域ろ過フィルタ234と、ゲインコントロール用のアンプ334を有する。
アンプ334には、干渉光検出器18からの干渉光強度Iの信号が入力される。なお、必要に応じて、図5のベースライン補正器32を設けて、同図の測定光検出器16からの検出信号に基づくAGCを行ってもよい。
【0054】
交流成分検波部134は、通常、ロックインアンプと呼ばれ、波長変調制御手段14に設けられた変調周波数設定部31からの参照信号を用いて、アンプ334からの干渉光強度の波形から、波長変調の最大波長(λ)時と最小波長(λ)時の各干渉光強度を検波し、その差分(ΔI)を取得する。
【0055】
参照信号は、単色光の変調周期に同期する信号である。ここで、同期するとは、単色光の変調周波数がfである場合に、参照信号の周波数がfと同じか、fの整数倍であることを示す。
【0056】
図8に、エッチング処理により絶縁膜が任意の膜厚tに達した状態における、差分ΔIの取得方法を説明する。図中の左上のグラフは、変調波長λと干渉光強度Iの特性図を示す。この特性図に示す最大波長(λ)と最小波長(λ)は上述の予備測定に基づく波長である。基板処理装置10を用いて干渉光強度Iの波形を測定すると、基準波長λでの干渉光強度Iは極小を示す。膜厚が所定膜厚tに達する前であるので、干渉光強度Iが基準波長λに対して対称的に変化せず、最大波長時の干渉光強度Iλ2と最小波長時の干渉光強度Iλ1とが一致していない。
【0057】
図8の右上には、単色光の波長を基準波長(λ)中心に2波長(λ、λ)間の波長範囲で正弦波状に変調させた場合の、干渉光強度の時間変化のグラフを合わせて示した。縦軸を干渉光強度Iとし、横軸を処理時間とする。このグラフのように、波長変調の一周期内に、最大波長時の干渉光強度Iλ2と最小波長時の干渉光強度Iλ1とが順番に現れる。本実施形態では、ロックインアンプを用いて、これらの干渉光強度を検波し、その差分ΔIを取得する。
【0058】
一方、低域ろ過フィルタ234は、アンプ334から出力される干渉光信号にフィルタをかけ、干渉光強度信号の直流成分、すなわち時間平均(IAVE )に相当する値を取得する。低域ろ過フィルタ234からの直流成分の信号は、干渉光強度が一定になるようにAGC(ゲインコントロール)回路でアンプ334にフィードバックされる。
【0059】
ロックインアンプを用いて干渉光強度を検波する方法の一例を説明する。例えば、波長変調と同周期の参照信号を用いて、その参照信号が、一周期の前半分で1を示し、後半分で零を示すような矩形信号とする。そうすると、ロックインアンプが、波長変調の最大波長時の干渉光強度(Iλ2)を検波する。また、参照信号として、一周期の前半分で零を示し、後半分で1を示すような矩形信号を用いれば、ロックインアンプが、波長変調の最小波長時の干渉光強度(Iλ1)を検波する。これらの干渉光強度から、差分(ΔI=Iλ2−Iλ1)を取得できる。
【0060】
図9は、エッチング処理が進行して膜厚がt→t→t(所望膜厚)と変化する場合の干渉光強度の変化を示し、具体的に基板処理の終了時点を検出する方法を説明する図である。すなわち、各膜厚(t、t、t)に達した状態で、波長変調による干渉光強度Iの変化が同図の左上のグラフに示されている。図9によると、膜厚がtに達した状態では、干渉光強度の差分(ΔI)が負の値を示し、その絶対量が大きい。膜厚がtに達した状態でのΔIは、まだ負の値ではあるが、その絶対量が小さくなっている。そして、所望膜厚tに達した状態では、ΔIが零になる。
【0061】
本実施形態では、図7に示すように、終了時点判定部136が、交流成分検波部134が取得した干渉光強度の差分(ΔI)を、直流成分検出部である低域ろ過フィルタ234が取得した干渉光強度の時間平均(IAVE )で除した値(ΔI/IAVE )を監視している。既知の膜厚の試料での予備測定で、この値(ΔI/IAVE )が零になる2波長(λ、λ)を求めておく。すなわち、この値(ΔI/IAVE )が零になるように、分光器24により単色光の波長変調の範囲を調整し、予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)を取得しておく。そして、本測定において、予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)の範囲で波長を変調させて、上記の値(ΔI/IAVE )が零になった時点をエッチング処理の終了時点として判定する。
【0062】
本実施形態によれば、波長変調による単色光の強度変化に伴って、干渉光強度が変化する場合であっても、前述の実施形態と同様に、絶縁膜が所望膜厚に達する時の干渉光強度の極小点を高精度に検出することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、光源22および分光器24を有する干渉光発生手段12を用いるが、これに限らず、干渉光発生手段12としては、波長可変レーザ光源を用いてもよい。あるいは、レーザ光源と変調器とを組み合わせて単色光の波長変調を行ってもよい。
【0064】
また、本実施形態では図5のように斜入射干渉計型の構成を用いるが、これに限らず、例えば図10のように、垂直入射干渉計型の構成を用いた基板処理装置110でもよい。同図のようにエッチング処理で用いるマスク材3の間隔が狭く、この間隔に対してエッチング深さが比較的深い場合であっても、絶縁膜2の表面に対して単色光を直角に入射して干渉光を発生させるので、干渉光がマスク材3で遮られることなく膜厚を容易に管理することができる。
【0065】
また、本実施形態では図3、図4のように所望膜厚tにおいて干渉光強度が極小となるように、単色光の基準波長λを設定する場合を説明した。干渉光強度が極大になる波長を基準波長として用いることも可能であるが、極大点では信号強度に対して変調成分が小さくなるため検出器のダイナミックレンジが不足する場合がある。そのため、本実施形態では、干渉光強度が極小となるように基準波長λを設定している。
【0066】
本実施形態では波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)が零になる時点を用いたが、これに限られず差分(ΔI)が予備測定に基づく所定値になる時点を基板処理の終了時点として検出してもよい。予備測定では、所望膜厚(t)に等しい既知膜厚の基準膜を用いる。この基準膜に対して、基準波長(λ)を中心に任意の最小波長(λ)と最大波長(λ)との間で該単色光の波長を変調し、干渉光強度の変化を取得する。干渉光強度の変化に基づき、最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)または前述の値(ΔI/IAVE )を予備測定に基づく所定値として取得する。本測定では、差分(ΔI)または前述の値(ΔI/IAVE )が予備測定に基づく所定値に一致する時点を基板処理の終了時点として判定すればよい。
【0067】
なお、本実施形態では透光材料膜として絶縁膜の場合を例示したが、本発明の処理終了時点検出方法は、絶縁膜に限られず、基材表面に透光材料からなる薄膜を形成する処理に幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 絶縁膜(透光材料膜)
10、110 基板処理装置
12 干渉光発生手段
16 測定光検出器(測定光検出手段)
18 干渉光検出器(干渉光検出手段)
20 終了時点検出手段
22 光源
24 分光器
26 変調部(変調手段)
28 基準波長設定部(基準波長設定手段)
32 ベースライン補正器(ベースライン補正部)
34 差分取得部
134 ロックインアンプ(交流成分検波部)
234 低域ろ過フィルタ(直流成分検出部)
36、136 終了時点判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に透光材料膜を所望膜厚となるまで形成する、または基板表面に形成された透光材料膜を所望膜厚となるまで除去する基板処理を行う装置であって、
前記透光材料膜を波長可変単色光で照射し、前記透光材料膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光を干渉させて干渉光を発生させる干渉光発生手段と、
前記透光材料膜が所望膜厚になった時の前記干渉光の強度(I)が極小または極大になるように、前記単色光の基準波長(λ)を予め設定する基準波長設定手段と、
前記基準波長を挟む2波長(λ、λ)間で前記透光材料膜を照射する単色光の波長を変調する変調手段と、
該波長変調に応じた干渉光の強度を検出する干渉光検出手段と、
前記透光材料膜が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの波長変調に対する前記干渉光強度の変化に基づいて、前記波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)が零または所定値になる時点を前記基板処理の終了時点として検出する終了時点検出手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記終了時点検出手段は、
前記変調手段の変調周期に同期する信号を用いて、前記干渉光検出手段で検出された干渉光の強度変化から、前記最大波長(λ)時と最小波長(λ)時の各干渉光強度を検波し、検波された干渉光強度の差分(ΔI)を取得する交流成分検波部と、
前記干渉光検出手段で検出された干渉光強度の時間平均(IAVE)を取得する直流成分検出部と、
前記干渉光強度の差分を前記干渉光強度の時間平均で除した値が零または前記所定値になる時点を前記基板処理の終了時点として判定する終了時点判定部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の基板処理装置において、さらに
前記透光材料膜を照射する前の前記単色光の一部を取り出して該単色光の強度を検出する測定光検出手段を有し、
前記終了時点検出手段は、さらに、前記干渉光検出手段で検出される干渉光強度から、前記測定光検出手段で同時に検出される単色光強度を差し引くことにより、前記変調手段にて波長変調された前記単色光のベースラインを補正するベースライン補正部を有し、
前記交流成分検波部は、前記ベースライン補正部からの干渉光強度に基づいて前記最大波長時と最小波長時の各干渉光強度を検波し、また、前記直流成分検出部は、前記ベースライン補正部からの干渉光強度に基づいて前記時間平均を取得することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記干渉光発生手段は、可視光を発生する光源と分光器とを有し、
前記分光器は、前記可視光から予め設定された前記基準波長(λ)の単色光を取り出すための回折格子と、前記変調手段とを内蔵し、
前記変調手段は、前記基準波長を挟む2波長(λ、λ)間で前記単色光の波長を変調させるために前記回折格子の姿勢を周期的に変化させる駆動部からなることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
基板の表面に透光材料膜を所望膜厚となるまで形成する、または基板表面に形成された透光材料膜を所望膜厚となるまで除去する基板処理において、該基板処理の終了時点を検出する方法であって、
所望膜厚の前記透光材料膜を波長可変単色光で照射した場合に、該透光材料膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光の干渉による干渉光強度(I)が極小または極大になるように、前記単色光の基準波長(λ)を予め設定する基準波長設定工程と、
基板表面に形成された前記所望膜厚に等しい膜厚の基準膜を用いて、該基準膜を前記波長可変単色光で照射するとともに、前記基準波長(λ)を中心に任意の波長範囲で該単色光の波長を変調し、該基準膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光を干渉させ、前記波長範囲に応じた干渉光強度の変化を取得し、該干渉光強度の変化に基づき、前記基準波長よりも小さい波長範囲および前記基準波長よりも大きい波長範囲から前記干渉光強度が等しくなる波長をそれぞれ取得し、これらの波長を予備測定に基づく最小波長(λ)および最大波長(λ)とする予備測定工程と、
前記基板処理中に、前記透光材料膜を照射する前記単色光の波長を前記予備測定に基づく前記最小波長(λ)および最大波長(λ)の波長範囲で変調し、該波長範囲に応じた干渉光強度の変化を取得する基板処理中の干渉光強度取得工程と、
前記透光材料膜が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの前記干渉光強度の変化に基づいて、前記波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)が零になる時点を前記基板処理の終了時点として判定する終了時点判定工程と、を有することを特徴とする基板処理の終了時点の検出方法。
【請求項6】
基板の表面に透光材料膜を所望膜厚となるまで形成する、または基板表面に形成された透光材料膜を所望膜厚となるまで除去する基板処理において、該基板処理の終了時点を検出する方法であって、
所望膜厚の前記透光材料膜を波長可変単色光で照射した場合に、該透光材料膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光の干渉による干渉光強度(I)が極小または極大になるように、前記単色光の基準波長(λ)を予め設定する基準波長設定工程と、
基板表面に形成された前記所望膜厚に等しい膜厚の基準膜を用いて、該基準膜を前記波長可変単色光で照射するとともに、前記基準波長(λ)を中心に最小波長(λ)と最大波長(λ)との間で該単色光の波長を変調し、該基準膜の表面および前記基板表面で反射した各単色光を干渉させ、前記波長幅に応じた干渉光強度の変化を取得し、該干渉光強度の変化に基づき、最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)を予備測定に基づく所定値として取得する予備測定工程と、
前記基板処理中に、前記基準波長(λ)を中心に最小波長(λ)と最大波長(λ)との間で前記透光材料膜を照射する前記単色光の波長を変調し、該所定の波長幅に応じた干渉光強度の変化を取得する基板処理中の干渉光強度取得工程と、
前記透光材料膜が所望膜厚に達する直前から所望膜厚に達するまでの前記干渉光強度の変化に基づいて、前記波長変調における最大波長(λ)時の干渉光強度と最小波長(λ)時の干渉光強度との差分(ΔI)が前記予備測定に基づく所定値になる時点を前記基板処理の終了時点として判定する終了時点判定工程と、を有することを特徴とする基板処理の終了時点の検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156456(P2012−156456A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16533(P2011−16533)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(501194123)分光計器株式会社 (6)
【Fターム(参考)】