説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板上に供給された処理液の逆流を防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】処理対象となる基板Wはローラコンベア10によって矢印FWの基板進行方向に移動される。移動される基板Wの面上に液盛りノズル20,30によって現像液が隙間無く液盛りされて、現像処理が進行する。基板W上に液膜が形成されているときに、微差圧計40が液盛りノズル20よりも前方側に形成される前方側空間と後方側に形成される後方側空間との気圧差を検出する。制御部90は、微差圧計40の検出結果に基づいて、後方側空間が前方側空間よりも高圧となるように、ファンフィルタユニット50から後方側空間に供給する空気の供給流量を制御する。液盛りノズル20よりも後方側空間を前方側空間よりも高圧にすれば、現像液の逆流を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ(FPD)用途のガラス基板や半導体ウェハー等の薄板状の精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に現像液やエッチング液などの処理液を供給する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板の処理工程には、基板の上面に処理液を供給して液処理を行う幾つかのプロセスが含まれている。例えば、基板の現像処理では、レジスト膜を形成した後にパターンを露光した被処理基板の上面に現像液を供給することによって現像処理を進行させる。また、基板のエッチング処理では、酸化膜などの膜形成を行った被処理基板の上面にエッチング液を供給する。
【0003】
特許文献1には、ローラコンベアによって基板を水平方向に移動させつつ、当該基板の上面に2つの液盛りノズルから現像液を供給して液盛りする技術が開示されている。特許文献1に開示される基板処理装置においては、下流側の液盛りノズルに現像液を留めて基板に面上に液盛りするための液盛面を形成し、これによって現像液を高速に液盛りできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−324751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の基板処理装置においては、図6に示すように、基板の上面に供給された処理液が逆流するという問題が発生するおそれがあった。図6において、基板Wは図示省略のローラコンベアによって水平方向に沿って矢印AR6の向きに移動されている。移動される基板Wの上面に2つの液盛りノズル101,102から現像液が供給される。供給された現像液は基板Wの上面に液盛りされる。矢印AR6の向きに移動される基板Wの上面に固定設置された液盛りノズル101,102から現像液が吐出されるため、本来は基板W上面の液盛りノズル101よりも下流側(基板Wが移動される向きに沿って前方側)の全面に現像液が液盛りされることとなる。
【0006】
ところが、何らかの要因によって液盛りノズル101よりも上流側に現像液が逆流することがある。逆流の原因としては、基板Wの大型化にともなって液盛りノズル101も長くなり、液盛りノズル101と基板Wとのギャップのばらつきや液盛りノズル101のノズル長手方向における吐出流速のばらつきが大きくなった結果、液盛りされた液膜の液圧と表面張力とのバランスに不均衡が生じやすくなったためと考えられる。このような現像液の逆流が生じると、基板Wの面内において現像時間が不均一となり現像結果にばらつきが生じるおそれがある。また、エッチング処理においてエッチング液の逆流が生じると、エッチング時間が不均一となってエッチングムラが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板上に供給された処理液の逆流を防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に処理液を供給する基板処理装置において、処理液を下方に向けて吐出する吐出口を有するノズルと、前記ノズルの下方にて、前記ノズルに対して基板を水平方向に沿って相対移動させる移動手段と、前記ノズルに対して基板が相対移動される方向に沿って、前記ノズルよりも前方側に形成される前方側空間と、前記ノズルよりも後方側に形成される後方側空間との気圧差を検出する差圧検出手段と、前記差圧検出手段による検出結果に基づいて、前記後方側空間の気圧が前記前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるように気圧差を制御する圧力制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、前記圧力制御手段は、前記ノズルの前記吐出口から基板上に吐出された処理液によって基板上に形成された液膜に後方側に作用する液圧と、当該液膜に前方側に作用する表面張力および前記後方側空間と前記前方側空間との気圧差の和とがつり合うように、前記気圧差を制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板処理装置において、前記移動手段は、前記ノズルに対して基板を第1の方向に沿って相対移動させ、前記ノズルは、前記吐出口から前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って延びる線状に処理液を吐出することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る基板処理装置において、前記ノズルは、基板と平行に前記吐出口と連設され、前記吐出口から吐出された処理液を留めて基板上に液膜を形成するための液盛面を有し、前記ノズルに対して基板が相対移動される方向に沿って、前記液盛面の後端に前記吐出口から吐出された処理液によって形成される液膜の端部が一致するように前記圧力制御手段が前記気圧差を制御することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記後方側空間に気体を供給する気体供給手段をさらに備え、前記圧力制御手段は、前記差圧検出手段による検出結果に基づいて、前記気体供給手段から前記後方側空間に供給する気体供給量を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記前方側空間の気体を排気する排気手段をさらに備え、前記圧力制御手段は、前記差圧検出手段による検出結果に基づいて、前記排気手段が前記前方側空間から排気する気体排気量を制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記差圧検出手段は、前記ノズルの前記吐出口から基板上に吐出された処理液によって基板上に液膜が形成されているときに、前記前方側空間と前記後方側空間との気圧差を検出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、基板に処理液を供給する基板処理方法であって、ノズルの吐出口から処理液を下方に向けて吐出しつつ、前記ノズルの下方にて、前記ノズルに対して基板を水平方向に沿って相対移動させて基板の上面に液膜を形成する液膜形成工程と、前記液膜形成工程にて、前記ノズルに対して基板が相対移動される方向に沿って、前記ノズルよりも前方側に形成される前方側空間と、前記ノズルよりも後方側に形成される後方側空間との気圧差を検出する差圧検出工程と、前記差圧検出工程における検出結果に基づいて、前記後方側空間の気圧が前記前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるように気圧差を制御する圧力制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る基板処理方法において、前記圧力制御工程では、前記ノズルの前記吐出口から基板上に吐出された処理液によって基板上に形成された液膜に後方側に作用する液圧と、当該液膜に前方側に作用する表面張力および前記後方側空間と前記前方側空間との気圧差の和とがつり合うように、前記気圧差を制御することを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項8または請求項9の発明に係る基板処理方法において、前記圧力制御工程は、前記後方側空間に気体を供給する工程と、前記差圧検出工程における検出結果に基づいて、前記後方側空間に供給する気体供給量を制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項8から請求項10のいずれかの発明に係る基板処理方法において、前記圧力制御工程は、前記前方側空間の気体を排気する工程と、前記差圧検出工程における検出結果に基づいて、前記前方側空間から排気する気体排気量を制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1から請求項7の発明によれば、ノズルよりも後方側に形成される後方側空間の気圧がノズルよりも前方側に形成される前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるように気圧差を制御しているため、基板上に供給された処理液に後方側から前方側へと向かう力が作用し、処理液の逆流を防止することができる。
【0020】
特に、請求項4の発明によれば、吐出口から吐出された処理液によって形成される液膜の端部が液盛面の後端に一致するように気圧差を制御するため、処理液が液盛面の後端よりも後方に逆流するのを防止することができる。
【0021】
また、請求項8から請求項11の発明によれば、ノズルよりも後方側に形成される後方側空間の気圧がノズルよりも前方側に形成される前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるように気圧差を制御しているため、基板上に供給された処理液に後方側から前方側へと向かう力が作用し、処理液の逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【図2】液盛りノズルの近傍を拡大した図である。
【図3】液盛りノズルの下方を移動する基板の平面図である。
【図4】液盛りノズルによる基板への液盛りの様子を示す図である。
【図5】本発明に係る基板処理装置の構成の他の例を示す図である。
【図6】従来の基板処理装置において処理液が逆流する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置の構成を示す図である。この基板処理装置1は、レジスト膜が形成された後にパターン露光のなされた基板Wに現像液を供給して現像処理を行う基板現像装置である。本実施形態の基板処理装置1において、処理対象となる基板Wは液晶表示装置用途の矩形形状のガラス基板である。基板処理装置1は、主要な構成としてローラコンベア10と、2つの液盛りノズル20,30と、微差圧計40と、ファンフィルタユニット(FFU)50と、を備える。また、基板処理装置1は、これらの動作を制御する制御部90を備える。なお、基板処理装置1は、レジスト塗布装置、露光機などとインラインに組み込まれ、一連のフォトリソグラフィー処理の一部を行うものであっても良い。
【0025】
基板処理装置1の上部および下部を構成する筐体19の間が基板Wの搬送経路となる。基板Wの搬送系路にローラコンベア10が設けられる。ローラコンベア10は、処理対象となる基板Wを保持しつつ水平方向に沿って移動させる。ローラコンベア10は、複数の搬送ローラ11を列設して備える。これら搬送ローラ11が図示省略の回転駆動機構により矢印AR1の向きに回転することによって、基板Wは水平方向に沿って矢印FWにて示す向きに移動する。以下、液盛りノズル20に対して基板Wが移動される矢印FWにて示す方向を基板進行方向とする。
【0026】
液盛りノズル20,30は、いずれも処理液としての現像液を吐出して基板Wの上面に液盛りするための機構である。図2は、液盛りノズル20,30の近傍を拡大した図である。また、図3は、液盛りノズル20,30の下方を移動する基板Wの平面図である。液盛りノズル30は、ローラコンベア10によって基板Wが移動される方向に沿って液盛りノズル20よりも前方側に設けられる。本明細書において、基板Wが移動される方向に沿って「前方側」とは、矢印FWにて示す基板進行方向の下流側であり、図1〜図3の紙面上の右側である。逆に、基板Wが移動される方向に沿って「後方側」とは、矢印FWにて示す基板進行方向の上流側であり、図1〜図3の紙面上の左側である。
【0027】
液盛りノズル20,30は、現像液を下方に向けて吐出する吐出口21,31をそれぞれ有する。ここで、「下方」とは、水平方向よりも下側という意味であり、必ずしも鉛直方向下向きを意味するものでは無い。液盛りノズル20,30は、図外の現像液供給源から送給された現像液をそれぞれ吐出口21,31から下方に向けて吐出する。現像液としては、例えばTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)等のアルカリ現像液が用いられる。
【0028】
図3に示すように、吐出口21,31は少なくとも基板Wの幅と同等以上の長さを有するスリット状吐出口である。第1実施形態においては、矢印FWにて示す基板進行方向(第1の方向)と、矢印IPにて示すスリット状の吐出口21,31の長手方向(第2の方向)とが直交する。すなわち、液盛りノズル20,30は、ローラコンベア10による基板Wの移動方向と直交する方向に沿って延びる線状に現像液を吐出する。
【0029】
液盛りノズル20は、ローラコンベア10によって移動される基板Wに対して傾斜した姿勢に設けられる。液盛りノズル20には、吐出口21と連絡面22を介して連設された平坦な液盛面23が形成されている。この液盛面23がローラコンベア10によって移動される基板Wと平行となるように、つまり液盛面23が水平面と平行となるように液盛りノズル20は固定設置される。液盛面23は、吐出口21から吐出された現像液を留めて基板Wの上面に面上に接触させるためのものである。ローラコンベア10によって移動される基板Wの上面と液盛面23とのギャップは2mm〜3mmである。
【0030】
一方、液盛りノズル30は、ローラコンベア10によって移動される基板Wに対して正対する姿勢に設けられる。すなわち、吐出口31の吐出方向が基板Wと垂直となるように液盛りノズル30は固定設置される。下流側の液盛りノズル30と基板Wとのギャップの方が上流側の液盛りノズル20と基板Wとのギャップ(正確には液盛面23と基板Wとのギャップ)よりも大きい。
【0031】
液盛りノズル20の吐出口21から吐出されて液盛面23に留められた現像液を基板Wに面状に接触させて液盛りすることとなるため、基板Wを高速に移動させたとしても確実に液盛りをすることができる。また、2つの液盛りノズル20,30によって重ねて現像液を液盛りすれば、より確実に液盛りを行うことができる。なお、「液盛り」とは、基板Wの上面に処理液を供給して液膜を形成することである。
【0032】
また、基板Wの搬送系路は、仕切壁15,16,17によって区分けされている。もっとも、仕切壁15,16,17のそれぞれには基板Wが通過するための開口が形成されているため、基板Wの搬送系路は仕切壁15,16,17によって完全に閉塞されるものではない。上流側の液盛りノズル20の上部後端は仕切壁16と当接している。
【0033】
本実施形態においては、仕切壁16と仕切壁17とに挟まれた空間のうち、基板進行方向に沿って液盛りノズル20よりも前方側(下流側)の空間、より厳密には液盛面23の前端26よりも前方側の空間が「前方側空間」として規定される。
【0034】
一方、仕切壁16と仕切壁17とに挟まれた空間のうち、基板進行方向に沿って液盛りノズル20よりも後方側(上流側)の空間、より厳密には液盛面23の後端25よりも後方側の空間は、仕切壁15と仕切壁16とに挟まれた空間と仕切壁16の開口を介して連通している。そして、仕切壁16と仕切壁17とに挟まれた空間のうち液盛面23の後端25よりも後方側の空間と、仕切壁15と仕切壁16とに挟まれた空間とを合わせた空間が「後方側空間」として規定される。仕切壁15および仕切壁17にも基板Wが通過するための開口が形成されているため、前方側空間および後方側空間は完全な密閉空間ではないものの、半密閉空間であると言える。なお、液盛面23の前端26および後端25は矢印FWにて示す基板進行方向に沿ってそれぞれ前側の端部および後側の端部である。
【0035】
微差圧計40は、上記の前方側空間と後方側空間との気圧差を検出する。前方側空間および後方側空間における微差圧計40の測定ポイントはそれぞれの空間内の任意の位置とすることができるが、なるべく液盛面23の前端26および後端25の近傍が好ましい。
【0036】
仕切壁15と仕切壁16とに挟まれた空間の天井部にはファンフィルタユニット50が設置されている。ファンフィルタユニット50は、送風用のファンとパーティクルを除去するフィルタとを備えて構成され、仕切壁15と仕切壁16とに挟まれた空間に清浄な空気をダウンフローとして供給する。ファンフィルタユニット50が供給する空気の供給流量はファンの回転数によって調整される。これにより、半密閉空間である後方側空間に空気が供給されて後方側空間が加圧されることとなる。
【0037】
また、制御部90は、基板処理装置1に設けられた種々の動作機構(ローラコンベア10、ファンフィルタユニット50など)を制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。また、制御部90は微差圧計40とも電気的に接続されており、微差圧計40による検出結果が制御部90に伝達される。
【0038】
次に、上述の構成を有する基板処理装置1における処理動作について説明する。以下に説明する処理動作は、制御部90が磁気ディスクなどの記憶部に格納された所定の処理用ソフトウェアを実行して基板処理装置1の各機構を制御することによって実行されるものである。
【0039】
まず、パターン露光後の基板Wがローラコンベア10によって上流側から下流側に向けて(図1の紙面左側から右側に向けて)水平方向に搬送される。基板Wの先端が液盛りノズル20の下方に到達する前に、液盛りノズル20,30からプリディスペンスを行っておく。プリディスペンスは、液盛りノズル20,30内に溜まっている古い現像液を予め吐出して排出しておく処理である。プリディスペンスが終了すると、液盛りノズル20,30からの吐出流量が少なくなり、やがて基板Wの先端が液盛りノズル20の下方に到達して現像液の液盛りが実行される。
【0040】
図4は、液盛りノズル20による基板Wへの液盛りの様子を示す図である。液盛りノズル20の吐出口21から吐出された現像液は、表面張力により連絡面22に伝わり、さらに連絡面22から液盛面23に伝わり、この液盛面23に留められる。基板Wの先端が液盛りノズル20の下方に到達すると、液盛面23に留められた現像液が基板Wに面状に接触する。この状態で基板Wが矢印FWにて示す基板進行方向にさらに移動されると、基板Wの先端から後端に向けて順に現像液が液盛り、すなわち現像液の液膜が形成される。
【0041】
また、液盛りノズル30の吐出口31からも鉛直方向下向きに現像液が吐出され、液盛りノズル20によって液盛りされた部分にさらに現像液が液盛りされる。これによりローラコンベア10によって移動される基板Wの面上に隙間無く確実に現像液の液膜が形成され、現像処理が進行する。なお、現像処理は次工程にてリンス液(純水)が供給されて現像液が希釈されることにより停止する。
【0042】
一方、液盛りノズル20の吐出口21から基板W上に吐出された現像液によって基板W上に液膜が形成されているときに、制御部90による制御下において微差圧計40が前方側空間と後方側空間との気圧差を検出する。このときには、図2および図4に示すように、液盛りノズル20の液盛面23と基板Wとの間の隙間が現像液によって満たされており、当該隙間を介して前方側空間と後方側空間とは連通していない。従って、前方側空間と後方側空間との間に微差圧が生じやすい状態である。
【0043】
微差圧計40によって検出された前方側空間と後方側空間との気圧差は制御部90に伝達される。そして、制御部90は、微差圧計40の検出結果に基づいて、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも所定圧だけ高くなるように両空間の気圧差を制御する。具体的には、微差圧計40の検出結果に基づいて、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも10Pa〜40Pa高くなるように、ファンフィルタユニット50から後方側空間に供給する空気の供給流量を制御する。
【0044】
ファンフィルタユニット50が半密閉空間である後方側空間に空気を供給すると、後方側空間が大気圧よりも加圧される。一方、給気も排気も行わない前方側空間の気圧は大気圧のままである。その結果、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも高くなるような気圧差が生じる。制御部90は、その気圧差が10Pa〜40Paの範囲内となるようにファンフィルタユニット50から後方側空間に供給する空気の供給流量をフィードバック制御するのである。
【0045】
液盛りノズル20よりも上流側の後方側空間が下流側の前方側空間よりも高圧になると、基板W上に供給された現像液の逆流を防止する効果がある。これについて図4を参照しつつさらに説明する。液盛りノズル20の液盛面23と基板Wの上面との間の隙間に満たされた現像液の液膜には、その液膜を崩そうとする内部からの液圧が絶えず作用している。このような液圧は基板W上に形成されている液膜の全周に向けて作用するものであるが、逆流が問題となる液盛面23の後端25近傍においては、図4の矢印AR41に示すように液膜の後方側(基板Wが移動される方向に沿って後方側)に作用する。
【0046】
また、液膜には表面積を出来るだけ小さくしようとする表面張力も作用する。表面張力も液膜の全表面に作用するのであるが、液盛面23の後端25近傍においては、矢印AR42にて示すように液膜の前方側に作用する。前方側空間と後方側空間との間に気圧差が無い場合には、液膜の後方側に作用する液圧が前方側に作用する表面張力よりも大きくなりがちであるため、液膜が崩れて図6に示したような現像液の後方側(上流側)への逆流が発生するのである。
【0047】
そこで、本実施形態においては、ファンフィルタユニット50から後方側空間に空気を供給し、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも10Pa〜40Pa高くなるようにしている。この気圧差によって、図4の矢印AR43に示すように、液盛面23と基板Wとの間の液膜は後方側から前方側に向かう圧力を受ける。そして、液膜に後方側に作用する液圧(矢印AR41の力)が、液膜の前方側に作用する表面張力(矢印AR42の力)と気圧差(矢印AR43の力)との和に等しくなれば、液膜が崩れて現像液が逆流するのを防止することができる。
【0048】
後方側空間と前方側空間との気圧差が10Pa未満であると、液膜に作用する前方側に向かう圧力が不足し、液膜が崩れて現像液が逆流するのを防止することが困難となる。逆に、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも40Paを超えて高くなると、液膜に作用する前方側に向かう圧力が強くなりすぎ、その結果液盛面23と基板Wとの間に形成される液膜に空気が入り込んで液盛りに支障をきたすこととなる。このため、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも10Pa〜40Pa高くなるようにしている。
【0049】
第1実施形態においては、液盛りノズル20の吐出口21から基板W上に吐出された現像液によって基板W上に形成された液膜に後方側に作用する液圧と、当該液膜に前方側に作用する表面張力および後方側空間と前方側空間との気圧差の和とがつり合うように、制御部90が両空間の気圧差を制御している。これにより、図4に示すように、基板Wが移動されている間においても、液盛りノズル20の吐出口21から吐出された現像液によって形成される液膜の端部が液盛面23の後端25に一致するように気圧制御しつつ液盛りが進行し、基板W上に供給された現像液の逆流を防止することができる。その結果、基板Wの面内における現像時間が均一となり、現像結果にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態の基板処理装置の構成を示す図である。この基板処理装置1aは、レジスト膜が形成された後にパターン露光のなされた基板Wに現像液を供給して現像処理を行う基板現像装置である。第2実施形態の基板処理装置1aは、主要な構成としてローラコンベア10と、2つの液盛りノズル20,30と、微差圧計40と、排気流量調整弁60と、を備える。また、基板処理装置1aは、これらの動作を制御する制御部90を備える。
【0051】
第1実施形態ではファンフィルタユニット50から後方側空間に空気を供給して気圧差を発生させていたのに対し、第2実施形態では前方側空間から空気を排気して気圧差を発生させている。具体的には、第2実施形態ではファンフィルタユニット50に代えて排気流量調整弁60を設けている。第2実施形態の基板処理装置1aの残余の構成については第1実施形態と概ね同じであり、第1実施形態と同一の要素については図5に同一の符号を付して詳説を省略する。
【0052】
第2実施形態においては、仕切壁16と仕切壁17とに挟まれた空間の天井部に排気ダクト61が連通接続されている。排気ダクト61の基端部は、例えば排気ポンプやイジェクターなどの排気手段に接続されている。そして、排気ダクト61の経路途中には排気流量調整弁60が介設されている。排気流量調整弁60を開放すると、仕切壁16と仕切壁17とに挟まれた空間から空気が排気される。排気される空気の排気流量は流量調整弁60によって調整される。これにより、半密閉空間である前方側空間から空気が排気されて前方側空間が減圧されることとなる。
【0053】
第2実施形態においても、レジスト膜が形成された後にパターン露光のなされた基板Wがローラコンベア10によって上流側から下流側に向けて水平方向に搬送される。そして、移動される基板Wの面上に液盛りノズル20,30によって現像液が隙間無く液盛りされて、現像処理が進行する。
【0054】
液盛りノズル20の吐出口21から基板W上に吐出された現像液によって基板W上に液膜が形成されているときに、制御部90による制御下において微差圧計40が前方側空間と後方側空間との気圧差を検出する。微差圧計40によって検出された前方側空間と後方側空間との気圧差は制御部90に伝達される。そして、制御部90は、微差圧計40の検出結果に基づいて、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも所定圧だけ高くなるように両空間の気圧差を制御する。ここで第2実施形態においては、微差圧計40の検出結果に基づいて、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも10Pa〜40Pa高くなるように、排気流量調整弁60を介して前方側空間から排気する空気の排気流量を制御する。
【0055】
排気ダクト61から半密閉空間である前方側空間の空気を排気すると、前方側空間が大気圧よりも減圧される。一方、給気も排気も行わない後方側空間の気圧は大気圧のままである。その結果、前方側空間の気圧が後方側空間の気圧よりも低くなるような気圧差が生じる。制御部90は、その気圧差が10Pa〜40Paの範囲内となるように排気流量調整弁60を介して前方側空間から排気する空気の排気流量をフィードバック制御するのである。
【0056】
液盛りノズル20よりも下流側の前方側空間が上流側の後方側空間よりも低圧であることは、第1実施形態における液盛りノズル20の後方側空間が前方側空間よりも相対的に高圧であることと同義である。すなわち、第2実施形態のようにしても、第1実施形態と同様に、液盛りノズル20の吐出口21から吐出された現像液によって形成される液膜の端部が液盛面23の後端25に一致するように気圧制御しつつ液盛りが進行し、基板W上に供給された現像液の逆流を防止することができる。
【0057】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態においては後方側空間に空気を供給し、第2実施形態においては前方側空間から空気を排気して気圧差を発生させていたが、これらの双方を組み合わせるようにしても良い。すなわち、ファンフィルタユニット50から後方側空間に空気を供給して後方側空間を加圧するとともに、流量調整弁60を開放して前方側空間から空気を排気して前方側空間を減圧するようにしても良い。このときにも、微差圧計40の検出結果に基づいて、後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも10Pa〜40Pa高くなるように、制御部90がファンフィルタユニット50から後方側空間に供給する空気の供給流量および排気流量調整弁60を介して前方側空間から排気する空気の排気流量を制御する。このようにしても、上記第1および第2実施形態と同様に、基板W上に供給された現像液の逆流を防止することができる。要するに、液盛りノズル20の後方側空間の気圧が前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるようにすれば良い。
【0058】
また、上記各実施形態においては、2つの液盛りノズル20,30によって基板Wに液盛りを行うようにしていたが、下流側の液盛りノズル30は必ずしも必須の要素ではない。もっとも、基板W上に確実に液盛りを行うためには、液盛りノズル30を設けておいた方が好ましい。
【0059】
また、基板Wの移動は、ローラコンベア10によって移動されることに限定されるものではなく、例えば搬送ロボットやベルトコンベアによって水平方向に移動されるものであっても良い。
【0060】
また、上記各実施形態においては、液盛りノズル20,30を固定設置して基板Wをローラコンベア10によって移動するようにしていたが、基板Wを水平姿勢にて静止状態で保持し、その上方にて液盛りノズル20,30を水平方向に沿ってスライド移動させるようにしても良い。すなわち、液盛りノズル20に対して基板Wを水平方向に沿って相対移動させる形態であれば良い。なお、静止状態の基板Wに対して液盛りノズル20,30を移動させる場合であっても、液盛りノズル20に対して基板Wが相対移動される方向に沿って前方側(液盛りノズル20の移動方向と反対側)に前方側空間が形成され、後方側(液盛りノズル20の移動方向と同じ側)に後方側空間が形成される。
【0061】
また、上記各実施形態においては、処理液として現像液を液盛りノズル20,30から吐出するようにしていたが、液盛りノズル20,30から他の種類の処理液、例えばエッチング液を吐出するようにしても良い。基板W上に供給されたエッチング液の逆流を防止することができ、その結果、エッチングムラの発生を抑制することができる。
【0062】
また、上記各実施形態においては、基板進行方向と、スリット状の吐出口21,31の長手方向とが直交するようにしていたが、これに限定されるものではなく、基板進行方向と吐出口21,31との交差角度は任意のものとすることができる(平行は除く)。すなわち、基板進行方向に対して液盛りノズル20,30を斜めに設置するようにしても良い。このようにしても、液盛りノズル20,30は、ローラコンベア10による基板Wの移動方向と交差する方向に沿って延びる線状に現像液を吐出することができる。
【0063】
また、上記各実施形態においては、上流側の液盛りノズル20を基板Wに対して傾斜した姿勢に設けていたが、これを液盛りノズル30と同様の正対姿勢に設けるようにしても良い。この場合であっても、ノズルの平坦な底面が液盛面として機能する。
【0064】
また、第1実施形態においてはファンフィルタユニット50から後方側空間に空気を供給し、第2実施形態においては排気流量調整弁60を介して前方側空間から空気を排気していたが、これに限定されるものではない。例えば、基板Wの搬送経路が窒素ガス雰囲気とされている場合には、後方側空間に窒素ガス(N2)を供給し、前方側空間から窒素ガスを排気する。すなわち、第1実施形態では後方側空間に気体を供給し、第2実施形態では前方側空間から気体を排気する形態であれば良い。
【0065】
また、微差圧計40は基板処理装置に必ずしも固定設置しなければならないものではなく、ファンフィルタユニット50の供給流量などの処理条件を装置稼働前に定めるときのみ基板処理装置に取り付けられていても良い。すなわち、微差圧計40は基板処理装置に仮設置されるものであっても良い。
【0066】
また、本発明に係る基板処理装置の処理対象となる基板Wは液晶表示装置用途のガラス基板に限定されるものではなく、プラズマディスプレイパネル(PDP)用などの他のフラットパネルディスプレイ用途のガラス基板や半導体ウェハーであっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1,1a 基板処理装置
10 ローラコンベア
11 搬送ローラ
15,16,17 仕切壁
20,30 液盛りノズル
21,31 吐出口
23 液盛面
25 後端
26 前端
40 微差圧計
50 ファンフィルタユニット
60 排気流量調整弁
61 排気ダクト
90 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理液を供給する基板処理装置であって、
処理液を下方に向けて吐出する吐出口を有するノズルと、
前記ノズルの下方にて、前記ノズルに対して基板を水平方向に沿って相対移動させる移動手段と、
前記ノズルに対して基板が相対移動される方向に沿って、前記ノズルよりも前方側に形成される前方側空間と、前記ノズルよりも後方側に形成される後方側空間との気圧差を検出する差圧検出手段と、
前記差圧検出手段による検出結果に基づいて、前記後方側空間の気圧が前記前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるように気圧差を制御する圧力制御手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記圧力制御手段は、前記ノズルの前記吐出口から基板上に吐出された処理液によって基板上に形成された液膜に後方側に作用する液圧と、当該液膜に前方側に作用する表面張力および前記後方側空間と前記前方側空間との気圧差の和とがつり合うように、前記気圧差を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、
前記移動手段は、前記ノズルに対して基板を第1の方向に沿って相対移動させ、
前記ノズルは、前記吐出口から前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って延びる線状に処理液を吐出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の基板処理装置において、
前記ノズルは、基板と平行に前記吐出口と連設され、前記吐出口から吐出された処理液を留めて基板上に液膜を形成するための液盛面を有し、
前記ノズルに対して基板が相対移動される方向に沿って、前記液盛面の後端に前記吐出口から吐出された処理液によって形成される液膜の端部が一致するように前記圧力制御手段が前記気圧差を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記後方側空間に気体を供給する気体供給手段をさらに備え、
前記圧力制御手段は、前記差圧検出手段による検出結果に基づいて、前記気体供給手段から前記後方側空間に供給する気体供給量を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記前方側空間の気体を排気する排気手段をさらに備え、
前記圧力制御手段は、前記差圧検出手段による検出結果に基づいて、前記排気手段が前記前方側空間から排気する気体排気量を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記差圧検出手段は、前記ノズルの前記吐出口から基板上に吐出された処理液によって基板上に液膜が形成されているときに、前記前方側空間と前記後方側空間との気圧差を検出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
基板に処理液を供給する基板処理方法であって、
ノズルの吐出口から処理液を下方に向けて吐出しつつ、前記ノズルの下方にて、前記ノズルに対して基板を水平方向に沿って相対移動させて基板の上面に液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜形成工程にて、前記ノズルに対して基板が相対移動される方向に沿って、前記ノズルよりも前方側に形成される前方側空間と、前記ノズルよりも後方側に形成される後方側空間との気圧差を検出する差圧検出工程と、
前記差圧検出工程における検出結果に基づいて、前記後方側空間の気圧が前記前方側空間の気圧よりも相対的に高くなるように気圧差を制御する圧力制御工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
請求項8記載の基板処理方法において、
前記圧力制御工程では、前記ノズルの前記吐出口から基板上に吐出された処理液によって基板上に形成された液膜に後方側に作用する液圧と、当該液膜に前方側に作用する表面張力および前記後方側空間と前記前方側空間との気圧差の和とがつり合うように、前記気圧差を制御することを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の基板処理方法において、
前記圧力制御工程は、
前記後方側空間に気体を供給する工程と、
前記差圧検出工程における検出結果に基づいて、前記後方側空間に供給する気体供給量を制御する工程と、
を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記圧力制御工程は、
前記前方側空間の気体を排気する工程と、
前記差圧検出工程における検出結果に基づいて、前記前方側空間から排気する気体排気量を制御する工程と、
を含むことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146592(P2011−146592A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7214(P2010−7214)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】