基板処理装置および基板処理方法
【課題】混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理するにあたって、基板温度の面内均一性を高めることができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板の中心領域に向けて第1および第2処理液を供給する第1供給部(32、200)と、中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて第1および第2処理液を供給する第2供給部(120,130)とを備えている。第1供給部および第2供給部にはそれぞれ、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続されている。第1供給部は、第1および第2処理液との混合液を基板の中心領域に向けて吐出するように構成された中心部吐出口を有しており、第2供給部は、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第1吐出口と、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第2処理液を吐出する複数の第2吐出口とを有している。
【解決手段】基板処理装置は、基板の中心領域に向けて第1および第2処理液を供給する第1供給部(32、200)と、中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて第1および第2処理液を供給する第2供給部(120,130)とを備えている。第1供給部および第2供給部にはそれぞれ、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続されている。第1供給部は、第1および第2処理液との混合液を基板の中心領域に向けて吐出するように構成された中心部吐出口を有しており、第2供給部は、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第1吐出口と、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第2処理液を吐出する複数の第2吐出口とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を水平に保持した状態で回転させながら基板に処理液を供給することにより所定の液処理を行う基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ等の基板(以下、単に「ウエハ」ともいう)に形成された処理対象膜の上に所定のパターンでレジスト膜が形成され、このレジスト膜をマスクとしてエッチング、イオン注入等の処理が処理対象膜に施されるようになっている。処理後、不要となったレジスト膜はウエハ上から除去される。
【0003】
レジスト膜の除去方法として、SPM処理がよく用いられている。SPM処理は、硫酸と過酸化水素水とを混合して得た高温のSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)をレジスト膜に供給することにより行われる。
【0004】
上記のSPM処理を行うためのレジスト除去装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の装置では、スピンチャックによって保持されて回転するウエハの表面(レジスト膜形成されている面)の中心に、ノズルから既に混合された硫酸および過酸化水素水の混合液、すなわちSPMが供給される。
【0005】
ウエハの中心にSPM液を供給した場合、SPM液が遠心力によりウエハ中心部から周縁部に流れる過程でウエハがSPM液から熱を奪うので、ウエハ中心部から遠ざかるほどSPM液の温度が低くなる傾向にある。また、ウエハの回転により生じる気流により、ウエハ周縁部の近傍ではウエハの温度が低くなる傾向にある。また、硫酸と過酸化水素水との混合反応による発熱は、SPM液がウエハ周縁部に到達する頃には小さくなっており、ウエハ周縁部の近傍ではSPM液の温度が低くなる傾向にある。このため、SPM液とレジスト膜の反応速度が、ウエハ中心部で高く、ウエハ周縁部で低くなり、SPM処理の面内均一性が確保できない。ウエハ周縁部での十分な反応を確保しようとすると、ウエハ中心部においてレジスト膜の下地膜にダメージを与えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−35866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理するにあたって、基板温度の面内均一性を高めることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理装置において、基板を水平に支持し、回転可能な基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転機構と、基板の中心領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第1供給部と、前記基板の中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第2供給部と、を備え、前記第1供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、前記第2供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、前記第1供給部は、第1処理液と第2処理液との混合液を基板の中心領域に向けて吐出するように構成された中心部吐出口を有しており、前記第2供給部は、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第1吐出口と、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第2吐出口とを有していることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理方法において、基板を水平姿勢で回転させる基板回転工程と、前記基板の中心領域に向けて、前記第1処理液と前記第2処理液とを混合した後の混合液を供給するとともに、前記中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて、混合前の前記第1処理液と前記第2処理液とを、これらが前記基板に供給された後に混合されるように別々に供給する処理液供給工程と、を備えたことを特徴とする基板処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の半径方向の異なる領域にそれぞれ対応する処理液供給部から処理液を供給しているため、各領域における処理速度を均一化することができ、面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態による液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上面図である。
【図2】前記液処理装置の側面図である。
【図3】図2に示す液処理装置のA−A矢視による上面図である。
【図4】図2に示す液処理装置のB−B矢視による上面図である。
【図5】図2に示す液処理装置における基板保持部およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図6】図2に示す液処理装置における天板およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図7】図2に示す液処理装置における各ノズルおよび各ノズル支持アームの構成を示す説明図である。
【図8】SPM液供給用ノズルおよびノズル支持アームの構造を示す長手方向断面図(a)および横断方向断面図(b)である。
【図9】(a)〜(d)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【図10】(e)〜(h)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【図11】SPM液を供給するノズルの他の実施形態を示す概略平面図(a)および概略側面図(b)である。
【図12】SPM液を供給するノズルのさらに他の実施形態を示す概略側面図である。
【図13】SPM液を供給するノズルのさらに他の実施形態を示す概略側面図である。
【図14】SPM液を供給するノズルのさらに他の実施形態を示す概略図であって、(a)が概略側面図、(b)が概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
まず、本発明による基板処理装置の一実施形態に係る液処理装置を含む液処理システムについて説明する。図1に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハ等の基板W(以下、「ウエハW」ともいう)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図示例では4個)の液処理装置10が設けられている。
【0014】
次に、液処理装置10の概略的な構成について説明する。
【0015】
図2乃至図4に示すように、本実施の形態による液処理装置10は、ウエハWが収容され、この収容されたウエハWの液処理が行われる処理領域すなわちチャンバ20と、チャンバ20に隣接して形成された待機領域80と、を備えている。液処理装置10の天井部には、チャンバ20内に清浄空気のダウンフローを形成するファンフィルタユニット(FFU)12が取り付けられている。本実施形態の液処理装置10では、チャンバ20および待機領域80は連通している。図2に示すように、チャンバ20内には、ウエハWを水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させるための基板保持部21が設けられており、この基板保持部21の周囲にはリング状の回転カップ40が配設されている。回転カップ40は、ウエハWの液処理を行う際に当該ウエハWに供給された後の処理液を受けるために設けられている。基板保持部21および回転カップ40の構成の詳細については後に説明する。
【0016】
図2に示すように、液処理装置10には、基板保持部21に保持されたウエハWに対して上方から処理液を供給するためのノズル(進退ノズル)82aおよびこのノズル82aを支持ないし担持するノズル支持アーム82が設けられている。図3に示すように、1つの液処理装置10には複数(具体的には例えば4つ)のノズル支持アーム82が設けられており、各ノズル支持アーム82にそれぞれ1つまたは複数のノズル(82a,120,130など)が設けられている。図2に示すように、各ノズル支持アーム82にはアーム支持部82bが設けられており、各アーム支持部82bは図示しない駆動機構によって図2における左右方向に駆動され、これにより、各ノズル支持アーム82は、付設されたノズル(82a,120,130など)がウエハWの上方に位置する進出位置と、ウエハWの上方から退避した退避位置との間で水平方向に直線運動を行うようになっている(図2および図3における各ノズル支持アーム82に付けられた矢印を参照)。
【0017】
図2および図4に示すように、基板保持部21に保持されたウエハWを上方から覆うための円形の天板31が水平方向に移動自在に設けられている。より具体的には、天板31は、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う進出位置(図4の実線)と、水平方向において進出位置から退避した位置である退避位置(図4の二点鎖線)との間で往復移動を行うようになっている。天板31の構成の詳細については後に説明する。
【0018】
図2および図3に示すように、待機領域80の底部には、待機領域80内の雰囲気の排気を行う排気部58が設けられている。
【0019】
図3に示すように、液処理装置10の側壁には、搬送アーム104によりチャンバ20内へウエハWを搬入したりチャンバ20からウエハWを搬出したりするための開口94aが設けられており、この開口94aには、当該開口94aを開閉するためのシャッター94が設けられている。
【0020】
次に、図2乃至図4に示すような液処理装置10の各構成要素の詳細について図5乃至図7を用いて説明する。
【0021】
まず、基板保持部21およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である図5を参照して、基板保持部21について説明する。
【0022】
図5に示すように、基板保持部21は、ウエハWを保持するための円板形状の保持プレート26と、保持プレート26の上方に設けられた円板形状のリフトピンプレート22とを備えている。リフトピンプレート22の上面には、ウエハWを下方から支持するためのリフトピン23が周方向に等間隔で3つ(図5では2つのみ表示)設けられている。また、リフトピンプレート22の下方にはピストン機構24が周方向に等間隔で3つ(図5では1つのみ表示)設けられており、このピストン機構24によりリフトピンプレート22が昇降するようになっている。より具体的には、搬送アーム104(図1参照)によりウエハWをリフトピン23上に載置したりリフトピン23上からウエハWを取り出したりするときには、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図5に示すような位置から上方に移動させられ、このリフトピンプレート22は回転カップ40よりも上方に位置するようになる。一方、チャンバ20内でウエハWの液処理や乾燥処理等を行う際には、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図5に示すような下降位置に移動させられ、ウエハWの周囲に回転カップ40が位置するようになる。
【0023】
保持プレート26には、ウエハWを側方から支持するための保持部材25が周方向に等間隔で3つ(図5には2つのみ表示)設けられている。各保持部材25は、リフトピンプレート22が上昇位置から図5に示すような下降位置に移動したときにこのリフトピン23上のウエハWを側方から支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させるようになっている。
【0024】
リフトピンプレート22および保持プレート26の中心部分にはそれぞれ貫通穴が形成されており、これらの貫通穴を通るよう処理液供給管28が設けられている。この処理液供給管28は、保持プレート26の各保持部材25により保持されたウエハWの裏面に薬液や純水等の様々な種類の処理液を供給するようになっている。処理液供給管28はリフトピンプレート22と連動して昇降するようになっている。処理液供給管28の上端には、リフトピンプレート22の貫通穴を塞ぐよう設けられたヘッド部分28aが形成されている。処理液供給管28には処理液供給部29が接続されており、この処理液供給部29により処理液供給管28に様々な種類の処理液(例えば、加熱された純水または常温の純水)が供給されるようになっている。
【0025】
保持プレート26には図示しない接続部を介してリング状の回転カップ40が取り付けられており、回転カップ40は保持プレート26と一体的に回転するようになっている。
【0026】
回転カップ40の周囲には、ドレインカップ42および案内カップ44がそれぞれ設けられている。ドレインカップ42および案内カップ44はそれぞれリング状に形成されている。また、ドレインカップ42および案内カップ44はそれぞれ上部に開口を有している。ここで、ドレインカップ42はチャンバ20内においてその位置が固定されている。一方、案内カップ44には昇降シリンダ(図示せず)が連結されており、この案内カップ44は昇降シリンダにより昇降させられるようになっている。
【0027】
図5に示すように、ドレインカップ42や案内カップ44の下方には、第1排出部46aおよび第2排出部46bがそれぞれ設けられている。そして、案内カップ44の上下方向位置に依存して、ウエハWの液処理を行う際にウエハWから側方に飛散した処理液が、処理液の種類に基づいて、2つの排出部46a、46bのうちいずれか一つの排出部に選択的に送られるようになっている。具体的には、案内カップ44が上昇位置(図5に示すような状態)にあるときには、ウエハWから側方に飛散した所定の処理液、例えば後述するSC−1液が第2排出部46bに送られるようになっている。一方、案内カップ44が下降位置にあるときには、ウエハWから側方に飛散した所定の処理液、例えば後述するSPM液が第1排出部46aに送られるようになっている。また、図5に示すように、第1排出部46aおよび第2排出部46bには気液分離部48a、48bがそれぞれ接続されている。そして、第1排出部46aおよび第2排出部46bにおいて排液のみならず排気も行われるようになっており、図5に示すように、気液分離部48a、48bにおいて第1排出部46aおよび第2排出部46bから送られた処理液およびガスが分離されてそれぞれ排液および排気が行われるようになっている。
【0028】
また、図5に示すように、ドレインカップ42には、ウエハWの中心に向かって純水を供給する固定リンスノズル43が設けられている。この固定リンスノズル43により、ウエハWの中心に向かって純水等のリンス液が放物線状に吐出されるようになっている(図5の二点鎖線参照)。なお、後述のように、固定リンスノズル43は一連の液処理の開始から終了までの間、ウエハWの表面が乾く可能性があるとき(例えばホットリンス処理からSC−1処理に移行する際に、ノズル支持アームが入れ替わるとき)、それを防止するためにウエハW表面に純水を供給する。このため、固定リンスノズル43は、ある一つのノズル支持アーム82(例えば82q)に設けられたある一つのノズル82aからの処理液(例えばホットリンス液)の吐出終了の少し前に純水の吐出を開始し、別のノズル支持アーム82(例えば82r)に設けられた別のノズルからの処理液(例えばSC−1液)の吐出開始の少し後に純水の吐出を終了する。すなわち、固定リンスノズル43からの純水の吐出期間の両端は、ノズル支持アーム82に設けられたノズルからの処理液の吐出期間とオーバーラップしている。このオーバーラップ期間では固定リンスノズル43からの純水の吐出量を小さくし、それ以外の期間(固定リンスノズル43だけがウエハWに液を供給している期間)では固定リンスノズル43からの純水の吐出量を多くしている。これは、固定リンスノズル43から放物線を描いてウエハW表面に入射した純水がウエハW表面で跳ねてウエハW周囲へと飛散することを極力防止するためである。
【0029】
次に、4つのノズル支持アーム82(82p〜82s)のノズル82aからそれぞれ吐出される流体の詳細について説明する。
【0030】
図7(a)および図8に示すように、第1のノズル支持アーム82pには硫酸を吐出するための第1ノズル120と、過酸化水素水を吐出するための第2ノズル130とが組み込まれている。第1のノズル支持アーム82pは、進出位置にあるときに、その先端が、後述するセンターノズルの吐出口からウエハWに向けて吐出されるSPM液の流れを妨げないように、ウエハWの中心位置の真上よりもやや半径方向外側に位置する。第1ノズル120は、複数の吐出口121を有しており、これら複数の吐出口121は、第1のノズル支持アーム82pが進出位置にあるときに、平面視で、ウエハの半径方向に沿って並んでいる。平面視で、隣接する吐出口121同士の間の間隔は、半径方向外側にゆくに従って小さくなる。同様に、第2ノズル130は、複数の吐出口131を有しており、これら複数の吐出口131は、第2のノズル支持アーム82pが進出位置にあるときに、平面視で、ウエハWの半径方向に沿って並んでいる。平面視で、隣接する吐出口131同士の間の間隔は、ウエハWの半径方向外側(すなわち第1のノズル支持アーム82pの基端側)にゆくに従って小さくなる。図示例では、1つの吐出口121と1つの吐出口131が第1のノズル支持アーム82pの長手方向に関して同じ位置に位置して、対を成している。
【0031】
第1のノズル支持アーム82p内を、その長手方向に沿って、硫酸供給路122と過酸化水素水供給路132とが互いに平行に延びている。各吐出口121は硫酸供給路122と連通し、各吐出口131は過酸化水素水供給路132と連通している。硫酸供給路122は、第1のノズル支持アーム82pの基端部に接続された管路(この管路には、開閉弁、流量調整弁およびヒータ83dが介設されている)を介して、硫酸供給部83cに接続されている。過酸化水素水供給路132は、第1のノズル支持アーム82pの基端部に接続された管路(この管路には、開閉弁および流量調整弁が介設されている)を介して、過酸化水素水供給部83bに接続されている。
【0032】
硫酸供給部83cおよび過酸化水素水供給部83bからそれぞれ硫酸および過酸化水素水を送り出すことにより、対を成す吐出口121および吐出口131から、ウエハW表面上の同じ位置あるいはウエハW表面上の互いに近接した位置に硫酸および過酸化水素水が吐出され、硫酸と過酸化水素水とがウエハ表面上で混合され、SPM液が形成される。従って、硫酸と過酸化水素水との混合反応はこれら薬液がウエハ表面に到達した時点あるいはその直後から開始されるので、その分、混合反応による発熱は(硫酸と過酸化水素水とを吐出口から吐出する前に混合する場合と比較して)遅くまで続く。なお、隣接する吐出口121同士の間の間隔および隣接する吐出口131同士の間の間隔は、ウエハWの半径方向外側にゆくに従って小さくなり、また、各吐出口121の直径は互いに同一であり、かつ各吐出口131の直径は互いに同一であるので、ウエハ周縁部に近い位置ほど、硫酸および過酸化水素水の供給量は多くなる。このため、冷えやすいウエハW周縁部の温度が他の部分に比べて相対的に低下することを防止ないし抑制することができる。
【0033】
なお、隣接する吐出口121同士の間の間隔および隣接する吐出口131同士の間の間隔は、ウエハWの半径方向外側にゆくに従って徐々に小さくなるものとしたが、これに限定されるものではなく、等間隔で並んだ複数個の吐出口121(131)のグループを複数設け、各グループにおける隣接する吐出口121(131)同士の間隔を互いに異ならせてもよい(半径方向外側にあるグループほど隣接する吐出口121(131)同士の間隔を小さくする)。このようにすれば、図8に示した構成の場合と同様に、ウエハの周縁領域(後述のセンターノズル32が薬液吐出を受け持つウエハWの円形の中心領域よりも外側の環状領域)を半径方向外側にある外側領域と半径方向内側にある内側領域とに分割した場合、外側領域への硫酸および過酸化水素水の吐出量が、内側領域への硫酸および過酸化水素水の吐出量よりも多くなる。
【0034】
図7(a)に示すように、第1のノズル支持アーム82pに、乾燥ガスノズル140(図10には図示していない)をさらに組み込むことができる。乾燥ガスノズル140には、流量調整弁および開閉弁を介して乾燥ガス供給源142(ここではN2ガス供給源)が接続されている。乾燥ガスは、例えばCDA(clean dry air)でもよい。天板31が進出位置にありウエハWのSPM処理が行われているときに、乾燥ガスノズル140から乾燥ガス(乾燥したガス)を供給することにより、天板31とウエハWとの間の空間の湿度を低減することができる。このような乾燥ガスノズル140を設ける場合には、例えば、第1のノズル支持アーム82pの上側部分142(図8(b)参照)に、第1のノズル支持アーム82pの長手方向に延びるガス供給路(図示せず)を穿ち、このガス供給路を第1のノズル支持アーム82pの先端側部分の適当な位置で、第1のノズル支持アーム82pの表面に開口させればよい。この場合、ガス供給路には、例えば、流量調整弁および開閉弁を介してN2ガス供給部141(図7(a)参照)を接続することができる。
【0035】
図7(b)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第2のノズル支持アーム82qのノズル82aは下向きとなっており、この第2のノズル支持アーム82qのノズル82aからはウエハWにホットリンス処理を施すための純水(DIW)等の洗浄液が下方に吐出されるようになっている。より詳細には、第2のノズル支持アーム82q内にはノズル82aに接続された洗浄液供給管84aが設けられており、洗浄液供給部84bが流量調整弁および開閉弁を介し、さらに洗浄液を加熱するためのヒータ84cを介して、洗浄液供給管84aに接続されている。そして、洗浄液供給部84bから供給された純水等の洗浄液が洗浄液供給管84aを介して第2のノズル支持アーム82qのノズル82aに送られるようになっている。第2のノズル支持アーム82qが前進位置にある場合、ノズル82aはウエハWの中心の真上に位置する。
【0036】
図7(c)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第3のノズル支持アーム82rのノズル82aは下向きとなっており、この第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからはアンモニア水と過酸化水素水との混合液(以下、「SC−1液」ともいう)がウエハWに向かって下方に吐出されるようになっている。より詳細には、第3のノズル支持アーム82r内にはノズル82aに接続された処理液供給管85aが設けられており、並列に設けられた過酸化水素水供給部85bおよびアンモニア水供給部85cがそれぞれ流量調整弁および開閉弁を介して処理液供給管85aに接続されている。過酸化水素水供給部85bおよびアンモニア水供給部85cから供給された過酸化水素水およびアンモニア水が混合してSC−1液が生成され、このSC−1液が処理液供給管85aを介して第3のノズル支持アーム82rのノズル82aに送られるようになっている。なお、第3のノズル支持アーム82rのノズル82aから吐出されるSC−1液は、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aから吐出されるSPM液よりも低温となっており、具体的には例えば80℃未満となっている。第3のノズル支持アーム82rが前進位置にある場合、ノズル82aはウエハWの中心の真上に位置する。
【0037】
図7(d)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第4のノズル支持アーム82sのノズル82aは下向きとなっている。より詳細には、第4のノズル支持アーム82sのノズル82aには純水供給管86aが接続されており、純水供給管86aには純水供給部86bが接続されている。そして、純水供給部86bから純水供給管86aを介して供給された純水が下方に吐出されるようになっている。第4のノズル支持アーム82sが前進位置にある場合、ノズル82aはウエハWの中心の真上に位置する。
【0038】
次に、天板31およびその周辺に位置する構成要素の詳細の構造について図4および図6を用いて説明する。天板31は天板保持アーム35により保持されている。天板保持アーム35の基端には旋回軸37が設けられており、天板保持アーム35は旋回軸37を中心として回動し、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う進出位置と、図4の二点鎖線に示すような、水平方向において進出位置から退避した位置である退避位置との間を移動することができる。
【0039】
天板31の中央部には、センターノズル32が設けられている。センターノズル32の吐出口32aは、天板31が進出位置にあるときに、基板保持部21により保持されたウエハWの中心の真上に位置する。センターノズル32は、その内部に、吐出口32aに通じる吐出路32bを有している。吐出路32bには、硫酸供給管33aと過酸化水素水供給管34aが接続されている。硫酸供給管33aには、流量調整弁および開閉弁を介して硫酸供給部33bが接続されている。また、硫酸供給管33aには、硫酸を加熱するためのヒータ33cが介設されている。過酸化水素水供給管34aには、流量調整弁および開閉弁を介して過酸化水素水供給部34bが接続されている。硫酸供給管33aと過酸化水素水供給管34aからそれぞれ供給された硫酸および過酸化水素水は、吐出路32b内で混合された後、吐出口32aから混合液すなわちSPM液として供給される。詳細には、硫酸供給部33bから供給された硫酸は、ヒータ33cにより加熱された後、過酸化水素水と混合され、混合反応により発熱が生じる。このため、センターノズル32の吐出口32aからウエハWに向かって吐出されるSPM液の温度は、100℃以上、好ましくは170℃程度の高温となる。なお、図示例においては、センターノズル32内の吐出路32b内で硫酸と過酸化水素水を混合しているが、これに限定されるものではなく、センターノズル32より上流側で硫酸供給管33aと過酸化水素水供給管34aとを合流させることにより、硫酸と過酸化水素水を混合してもよい。
【0040】
天板31に、センターノズル32に隣接して乾燥ガスノズル36aを設けることができる。乾燥ガスノズル36aには、流量調整弁および開閉弁を介して乾燥ガス供給源36b(ここではN2ガス供給源)が接続されている。乾燥ガスは、例えばCDA(clean dry air)でもよい。天板31が進出位置にありウエハWのSPM処理が行われているときに、乾燥ガスノズル36aから乾燥ガス(乾燥したガス)を供給することにより、天板31とウエハWとの間の空間の湿度を低減することができる。なお、この乾燥ガスノズル36aおよび前述した第1のノズル支持アーム82p内の乾燥ガスノズル140は、少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0041】
図2および図4に示すように、液処理装置10の待機領域80には、天板31が退避位置に退避したときに当該天板31を収納する天板収納部38が設けられている。この天板収納部38の側方には開口が形成されており、天板31が進出位置から退避位置に移動したときにこの天板31は天板収納部38の側方の開口を介して天板収納部38内に完全に収納されるようになっている。また、天板収納部38には排気部39が設けられており、天板収納部38内の雰囲気は常に排気部39により排気されるようになっている。このことにより、ウエハWの液処理を行う際に天板31の下面にSPM液等の処理液の液滴が付着した場合でも、この天板31が天板収納部38内に収納されたときにはSPM液等の処理液の雰囲気は排気部39により排気されるので、処理液の雰囲気が待機領域80やチャンバ20内に流出することはない。天板収納部38内に、洗浄液を天板31の下面に噴射して天板31を洗浄する機構を設けることも好ましい。
【0042】
図2に示すように、液処理装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ200を有している。コントローラ200は、液処理装置10の全ての機能部品(例えば、基板保持部21、ピストン機構24、サーボモータ36等)の動作を制御する。コントローラ200は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が図2において参照符号201で示されている。プロセッサ202は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体201から呼び出して実行させ、これによってコントローラ200の制御の下で液処理装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ200は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0043】
次に、上述した液処理装置10を用いて、ウエハWの上面にある不要なレジスト膜を除去する洗浄処理の一連の工程について図10乃至図12を用いて説明する。以下に示す洗浄処理の一連の工程は、コントローラ200が液処理装置10の各機能部品の動作を制御することにより行われる。
【0044】
まず、図9(a)に示すように、天板31を退避位置に移動させ、この天板31を天板収納部38に収納させる。次に、基板保持部21におけるリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示す位置から上方に移動させ、チャンバ20の開口94aに設けられたシャッター94を開く。そして、液処理装置10の外部からウエハWが搬送アーム104により開口94aを介してチャンバ20内に搬入され、このウエハWがリフトピンプレート22のリフトピン23上に載置され、その後、搬送アーム104はチャンバ20から退避する。この際に、各ノズル支持アーム82はチャンバ20から退避した退避位置に位置し、待機領域80で待機している。
【0045】
次に、リフトピンプレート22および処理液供給管28を下方に移動させて図5に示すような下降位置に位置させる。この際に、保持プレート26に設けられた各保持部材25が、リフトピン23上のウエハWを側方から支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させる。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、天板31を退避位置から進出位置に移動させ、ウエハWを天板31によって覆う。
【0047】
次に、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第1のノズル支持アーム82pが、ウエハWの上方に進出する(図9(c)参照)。
【0048】
次に、基板保持部21の保持プレート26およびリフトピンプレート22を回転させる。これにより、保持プレート26の保持部材25により支持されているウエハWも回転する。そして、ウエハWが回転した状態で、天板31に装着されたセンターノズル32からウエハW表面の中心領域に、並びに第1のノズル支持アーム82pの第1のノズル120および第2のノズル130からウエハW表面の周縁領域(中心領域の外側の環状領域を意味する)にSPM液を供給する。詳細には、硫酸と過酸化水素水が、吐出口32aより上流側で混合された後にセンターノズル32からウエハWの中心領域に向けて吐出される。従って、ウエハWの表面に到達した時点では、硫酸と過酸化水素水との混合による反応熱により、SPM液の温度は比較的高くなっている(例えば170℃以上)。また、第1のノズル支持アーム82p第1のノズル120の吐出口121からは80℃程度に加熱された硫酸がウエハW表面の周縁領域に向けて吐出され、また、第2のノズル130の吐出口131からは常温の過酸化水素水がウエハW表面の周縁領域に向けて吐出され、この硫酸および過酸化水素水はウエハ表面上で混合されてSPM液となる。硫酸および過酸化水素水の混合は、ウエハ表面に到達した時点から開始されるため、混合に伴う発熱はウエハWに到達した後、比較的長い時間にわたって続く。また、隣接する2つの第1吐出口121同士の間隔、並びに隣接する2つの第2吐出口122同士の間隔は、第1のノズル支持アーム82pの先端側(ウエハの中央に近い側、すなわち環状領域のうちの内側領域)で広く、基端側(ウエハの周縁に近い側、すなわち環状領域のうちの外側領域)で狭くなっている。このため、ウエハの周縁に近い側で硫酸および過酸化水素水がより多く供給されるので、これらの混合により生じる反応熱量もウエハの周縁に近い側でより多くなる。このため気流より冷えやすいウエハWの周縁部においても、ウエハWの中央部と同様にSPM液とレジスト膜との反応温度が高くなるため、ウエハW面内の反応温度が均一化され、均一なSPM処理を行うことができる。このSPM処理において、ウエハWの表面のレジストがSPM液によって剥離され、SPM液とともに剥離されたレジストが、回転するウエハWの遠心力によって第1排出部46aに送られて回収される。具体的には、ウエハWに対してSPM処理が行われる際には、案内カップ44が下降位置に位置するようになっており、従って、SPM液および剥離されたレジストは、第1排出部46aに送られて回収される。SPM処理の間、天板31とウエハWとの間に乾燥したガス、例えばN2ガスまたはCDA(クリーンドライエア)を第1のノズル支持アーム82pに設けた乾燥ガスノズル140(あるいは天板31に設けた乾燥ガスノズル36a)から供給することが好ましい。このようにしてウエハW表面近傍の空間の湿度を下げることにより、ウエハWのレジスト膜の下層にSiN膜が有った場合、望ましくないSiN膜のフィルムロス(SPM液によりエッチングされることによる)を防止ないし抑制することができる。
【0049】
ウエハWに対するSPM処理が終了すると、図9(d)に示すように、第1のノズル支持アーム82pはウエハWの上方から退避して待機領域80で待機するようになる。この際に、ウエハWは回転し続けている。
【0050】
次に、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第2のノズル支持アーム82qがウエハWの上方に進出する(図10(e)参照)。そして、ウエハWおよび天板31が回転した状態で、ウエハW上方に進出した第2のノズル支持アーム82qのノズル82aからウエハWの中心に向けて、加熱された純水(例えば、80℃)を供給する。この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28から加熱された純水を供給する。これにより、ウエハWに対してホットリンス処理が行われる。
【0051】
なお、ウエハWに対するSPM処理(図9(c)参照)とホットリンス処理(図10(e)参照)との間には、以下に示すような中間処理工程が行われるようになっている。この中間処理工程は、第1の中間処理工程、振切処理工程、および第2の中間処理工程から構成されている。具体的には、まず、第1の中間処理工程において、SPM液の液温未満かつリンス液の液温よりも高い温度の第1の中間処理液をウエハWの表面に供給する。より詳細には、図7(a)に示すような第1のノズル支持アーム82pにおいて、硫酸供給部83c側の開閉弁を開放状態としたまま過酸化水素水供給部83b側の開閉弁だけを閉止状態として、ヒータ83dで加熱した硫酸だけを第1のノズル支持アーム82pの第1のノズル120の吐出口121からウエハWの表面に向けて所定時間吐出させる。また、センターノズル32からも同様に加熱した硫酸だけをウエハの表面に向けて所定時間吐出させる。このときに、過酸化水素水が供給されないために、過酸化水素水と硫酸との化学反応が生じず、ウエハWの表面には、SPM液の液温(例えば、170℃)未満で、かつ、リンス液(純水)の液温(例えば、80℃)以上の温度(例えば、140℃)の硫酸が供給されることになる。この第1の中間処理工程を行うことで、ウエハWの温度をSPM処理における温度からリンス処理における温度へと急激に下降させるのではなく、その中間の温度に徐々に下降させることができる。その結果、ウエハWの急激な温度変化に伴う熱変形を防止することができる。これにより、ウエハWを基板保持部21により良好に保持することができる。
【0052】
次に、ウエハWを回転させることで、ウエハWの表面から硫酸を振り切って除去する振切処理工程を行う。この際に、SPM処理および第1の中間処理工程よりも高速でウエハWを所定時間回転させる。その後、第1の中間処理液(硫酸)の液温未満かつリンス液の液温以上の温度の第2の中間処理液をウエハWの裏面に供給する第2の中間処理工程を実行する。より詳細には、処理液供給部29から処理液供給管28に、第1の中間処理液(硫酸)の液温(例えば、140℃)未満かつリンス液の液温(例えば、80℃)以上の温度(例えば、80℃)の純水を供給することにより、この処理液供給管28のヘッド部分28aからウエハWの裏面に80℃の純水が吐出されるようになる。この第2の中間処理工程を行うことで、ウエハWの裏面からこのウエハWの温度をリンス処理における温度近傍へゆるやかに下降させることができる。特に、ウエハWの裏面に純水を供給しているために、ウエハWの表面に第1の中間処理液(硫酸)が残留していたとしてもリンス液(純水)との急激な化学反応の発生を抑制することができ、これにより、化学反応に伴う反応生成物の飛散を防止してウエハW周辺の空間の汚染を防止することができる。
【0053】
以上のように、ウエハWに対するSPM処理とホットリンス処理との間に、第1の中間処理工程、振切処理工程、および第2の中間処理工程から構成されている中間処理工程を行うことにより、SPM液とリンス液(純水)との急激な化学反応の発生を抑制することができ、これにより、化学反応に伴う反応生成物の飛散を防止してウエハ周辺の空間の汚染を防止することができる。
【0054】
ウエハWに対するホットリンス処理が終了すると、図10(f)に示すように、第2のノズル支持アーム82qはウエハW上方から退避して待機領域80で待機するようになる。この際に、ウエハWは回転し続けている。また、第2のノズル支持アーム82qがウエハWの上方から退避する前から、固定リンスノズル43によりウエハWの中心に向かって純水(例えば、80℃)が供給されるようになる。固定リンスノズル43によりウエハWの表面に液膜が形成されるので、ウエハWの表面が露出せず、ウエハWの表面にパーティクルが付着することを防止することができる。
【0055】
その後、図10(g)に示すように、天板31を進出位置から退避位置に移動させ、この天板31を天板収納部38に収納させる。ここで、天板収納部38内の雰囲気は常に排気部39により排気されるようになっているため、ウエハWのSPM処理を行う際に天板31の下面にSPM液等の処理液の液滴が付着した場合でも、この天板31が天板収納部38内に収納されたときにはSPM液等の処理液の雰囲気は排気部39により排気されるので、SPM液の雰囲気が待機領域80やチャンバ20内に流出することはない。
【0056】
その後、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第3のノズル支持アーム82rがウエハWの上方に進出する(図10(h)参照)。そして、ウエハWを回転させたままでウエハWの上方に進出した第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからウエハWの中心に向けてSC−1液を供給する。これによって、ウエハWの表面に残るレジスト残渣を取り除くことができる。なお、SC−1液により液処理が行われる際には、案内カップ44が上昇位置に位置するようになっており、従ってSC−1液およびレジスト残渣は、第2排出部46bに送られて排出される。
【0057】
ウエハWに対するSC−1液による液処理が終了すると、第3のノズル支持アーム82rはウエハW上方から退避して待機領域80で待機するようになる(図10(g)と同じ状態)。この際に、ウエハWは回転し続けている。その後、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第4のノズル支持アーム82sがウエハWの上方に進出する(図10(h)と同じ状態)。そして、ウエハWが回転した状態で、ウエハW上方に進出した第4のノズル支持アーム82sのノズル82aからウエハWの中心に向けて、常温の純水を供給する。この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28から常温の純水を供給する。このことにより、ウエハWに対して常温リンス処理が行われる。その後、第4のノズル支持アーム82sを待機領域80まで退避させ、ウエハWを高速回転させることにより、ウエハWの乾燥処理が行われる。
【0058】
ウエハWの乾燥処理が終了すると、基板保持部21におけるリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示す位置から上方に移動させることと、チャンバ20の開口94aに設けられたシャッター94を開く。そして、開口94aを介して液処理装置10の外部から搬送アーム104がチャンバ20内に入り、リフトピンプレート22のリフトピン23上にあるウエハWが搬送アーム104に移載される。その後、搬送アーム104により取り出されたウエハWは液処理装置10の外部に搬送される。このようにして、一連のウエハWの液処理が完了する。
【0059】
上記の実施形態では、センターノズル32から吐出前に硫酸と過酸化水素水が混合されて反応熱により既に高温になっているSPM液(硫酸と過酸化水素水との混合液)をウエハW表面の中心領域に供給している。このSPM液は遠心力により半径方向外側に広がる過程においてウエハWに熱を奪われて冷えてゆくが、この半径方向外側に広がってゆく途中のSPM液に対して硫酸および過酸化水素水が添加されるように、第1のノズル120および第2のノズル130から硫酸および過酸化水素水が別々にウエハW表面の環状の周縁領域(中心領域より外側の領域)に供給される。添加された新鮮な硫酸および過酸化水素水は混合反応を引き起こすため、半径方向外側に広がってゆくSPM液の温度が半径方向外側にゆくに従って低下することが回避される。これにより、気流の影響により特に冷えやすいウエハW周縁近傍においても、SPM液の温度が低下することが防止できる。温度の面内均一化の効果は、処理液が硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPM液の場合に限らず、混合すると反応熱を生じる任意の処理液の組み合わせにおいて達成することができる。例えば、硫酸と硝酸の混合液であるいわゆる「混酸」において基板を処理する場合においても有益である。
【0060】
また、上記の実施形態においては、ウエハW表面の環状の周縁領域(円形の中心領域の外側の領域)のうち、半径方向内側の領域である内側領域よりも、半径方向外側の領域である外側領域において、硫酸および過酸化水素水の供給量が多くなっている。これにより、気流の影響により特に冷えやすいウエハW周縁近傍におけるSPM液の温度低下をより確実に防止することができる。
【0061】
また、上記の実施形態においては、ウエハWの上方でウエハWに対向するように天板31を配置した状態でSPM処理が行われるため、ウエハW全体の温度低下を防止することができ、より効率良くSPM処理を行うことができる。
【0062】
なお、本実施の形態による液処理装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0063】
例えば、図6に破線で示すように、天板31のウエハWの周縁部に対向する位置に、ウエハの周縁部を加熱する加熱機構150を設けてもよい。加熱機構150は、例えばLEDランプにより構成することができる。LEDランプとして、ウエハWを加熱するために適した波長、具体的には例えば880nmの波長の光を放射するものを用いることが好ましい。この場合、天板31は、880nmの波長の光を良く透過する材料であってSPMによる腐食に耐えうる材料、例えば、石英またはテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成することができる。
【0064】
上記実施形態においては、SPM液を供給するためのノズル(第1のノズル120および第2のノズル130)を第1のノズル支持アーム82pに設けたが、これに限定されない。
【0065】
例えば、図11(a)、(b)に示すように、第5のノズル支持アーム82tを追加して、第1のノズル支持アーム82pに設けられるとともにウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1のノズル124(硫酸供給用ノズル)および複数の吐出口を有する第2のノズル134(過酸化水素水供給用ノズル)にウエハW表面の周縁領域のうちの内側領域(図13(b)の領域Pi)へのSPM液の供給を受け持たせ、第5のノズル支持アーム82tに設けられるとともにウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1のノズル125(硫酸供給用ノズル)およびウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第2のノズル135(過酸化水素水供給用ノズル)にウエハW表面の周縁領域のうちの外側領域(図11(b)の領域Po)へのSPM液の供給を受け持たせてもよい。この場合、ウエハW表面の中心領域(図11(b)の領域C)へのSPM液の供給は、上記の実施形態と同様に天板31に設けたセンターノズル32により行う。なお、図11(b)では、図面作成の便宜上、第1のノズル支持アーム82pと第5のノズル支持アーム82tとが異なる高さに位置しているように表示されているが、実際には同じ高さに位置している。第1のノズル支持アーム82pの第1のノズル124および第2のノズル134への硫酸および過酸化水素水の供給と、第5のノズル支持アーム82tの第1のノズル125および第2のノズル135への硫酸および過酸化水素水の供給とは別々の薬液供給機構を用いて互いに独立して制御することができるようになっている。従って、ウエハW表面の周縁領域の外側領域Poと内側領域Piに供給されるSPM液(硫酸および過酸化水素水)の流量の比率を自在に調整することができ、言い換えれば流量のゾーン制御を行うことができ、これにより、温度の面内均一性を高めるような調整が容易となる。また、ウエハW半径方向に関する第1のノズル支持アーム82pと第5のノズル支持アーム82tの相対的位置関係を調整することが可能となるので、この点からも、温度の面内均一性を高めるような調整が容易となる。なお、この場合も、図1〜図10に示した実施形態と同様に、ウエハW表面の周縁領域の内側領域Piへの硫酸および過酸化水素水の供給流量よりも、外側領域Poへの供給流量を多くすることが好ましい。
【0066】
また例えば、図12に示すように、第1のノズル支持アーム82pの先端側にウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1の先端側ノズル126(硫酸供給用ノズル)およびウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第2の先端側ノズル136(過酸化水素水供給用ノズル)を設け、基端側にウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1の先端側ノズル127(硫酸供給用ノズル)およびウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第2の先端側ノズル137(過酸化水素水供給用ノズル)を設けることができる。各ノズル126、127、136、137には別々の薬液供給機構により薬液(硫酸または過酸化水素水)が供給され、各ノズル126、127、136、137への薬液供給流量の比率を自在に調整することができ、図13に示す実施形態と同様にゾーン制御を行うことができる。これにより、温度の面内均一性を高めるような調整が容易となる。
【0067】
また例えば、先に説明した実施形態において天板31に設けていたセンターノズル32を廃して、ウエハWの中心領域Cに(吐出前に混合された)硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM液)を供給するノズル(以下、センターノズル200と称する)をノズル支持アーム82に設けることができる。SPM処理時には、このセンターノズル200と、ウエハWの周縁領域Pi,Poに硫酸および過酸化水素水を混合せずに別々に吐出するノズル(第1ノズル120、第2ノズル130)とが同時にウエハWに薬液を供給する。このような変形実施形態について、図13および図14を参照して、図1〜図10に示した実施形態との相違点を中心に説明する。図13および図14において、図1〜図10に示した構成要素と同じ構成要素については同一符号を付して重複説明は省略する。また、図13および図14において、天板31の表示は省略しており、また、ノズル支持アーム82内に設けることができる乾燥ノズル140(図7(a)参照)の記載は省略している。
【0068】
図13(a)、(b)に示す変形実施形態においては、ウエハWの周縁領域Pi,Poに硫酸および過酸化水素水を混合せずに別々に吐出するノズル(第1ノズル120、第2ノズル130)が設けられたノズル支持アーム82(82p)に、ウエハWの中心領域CへのSPM液(吐出口から吐出される前に硫酸および過酸化水素水が混合されたもの)の吐出を行うノズル(センターノズル)200を設けている。図13(a)に示す変形実施形態においては、硫酸および過酸化水素水を混合せずに別々に吐出するノズルである第1ノズル120および第2ノズル130のための薬液供給機構と同じ薬液供給機構を用いて、センターノズル200への硫酸および過酸化水素水の供給を行っている。具体的には、第1ノズル120の吐出口121および第2ノズルの吐出口131に硫酸および過酸化水素水をそれぞれ供給するためにノズル支持アーム82(82p)内を長手方向に延びる硫酸供給路122および過酸化水素水供給路132に、センターノズル200の吐出口201が接続されている。図13(b)に示す変形実施形態においては、センターノズル200に硫酸および過酸化水素水を供給するための薬液供給機構を、第1ノズル120および第2ノズル130に硫酸および過酸化水素水を供給するための薬液供給機構と別個に設けている。この場合には、硫酸供給路122および過酸化水素水供給路132とは別の薬液供給路がノズル支持アーム82(82p)内に設けられる。なお、図13(b)では、センターノズル200に供給される硫酸と過酸化水素水は混合された後、ノズル支持アーム82に設けられた1つの供給路内に導入され、この1つの供給路に接続された吐出口201から供給されるようになっているが、これに限定されるものではなく、ノズル支持アーム82内に硫酸供給路および過酸化水素水供給路を設けて、これらの供給路をノズル支持アーム82内で合流させた後に、吐出口201に接続するようにしてもよい。
【0069】
図14(a)(b)に示す変形実施形態においては、図7(a)および図8に示した第1ノズル120および第2ノズル130を具備したノズル支持アーム82pがそのまま用いられ、これに加えてセンターノズル200のみを担持するノズル支持アーム82t’が用いられる。ノズル支持アーム82t’は進出位置にあるとき、センターノズル200の吐出口201がウエハWの中心Owの真上に位置するように構成される。
【0070】
なお、図13および図14の変形実施形態においても、他の実施形態と同様に、ウエハW表面の環状の周縁領域(円形の中心領域Cの外側の領域)のうち、半径方向内側の領域である内側領域Piよりも、半径方向外側の領域である外側領域Poにおいて、硫酸および過酸化水素水の供給量が多くなるように各ノズルは構成されている。
【符号の説明】
【0071】
21 基板保持部
31 天板
32、200 センターノズル(第1供給部)
120、124、125、126、127 第1のノズル(第2供給部)
130、134、135、136、137 第2のノズル(第2供給部)
150 加熱機構(LEDランプ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を水平に保持した状態で回転させながら基板に処理液を供給することにより所定の液処理を行う基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ等の基板(以下、単に「ウエハ」ともいう)に形成された処理対象膜の上に所定のパターンでレジスト膜が形成され、このレジスト膜をマスクとしてエッチング、イオン注入等の処理が処理対象膜に施されるようになっている。処理後、不要となったレジスト膜はウエハ上から除去される。
【0003】
レジスト膜の除去方法として、SPM処理がよく用いられている。SPM処理は、硫酸と過酸化水素水とを混合して得た高温のSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)をレジスト膜に供給することにより行われる。
【0004】
上記のSPM処理を行うためのレジスト除去装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の装置では、スピンチャックによって保持されて回転するウエハの表面(レジスト膜形成されている面)の中心に、ノズルから既に混合された硫酸および過酸化水素水の混合液、すなわちSPMが供給される。
【0005】
ウエハの中心にSPM液を供給した場合、SPM液が遠心力によりウエハ中心部から周縁部に流れる過程でウエハがSPM液から熱を奪うので、ウエハ中心部から遠ざかるほどSPM液の温度が低くなる傾向にある。また、ウエハの回転により生じる気流により、ウエハ周縁部の近傍ではウエハの温度が低くなる傾向にある。また、硫酸と過酸化水素水との混合反応による発熱は、SPM液がウエハ周縁部に到達する頃には小さくなっており、ウエハ周縁部の近傍ではSPM液の温度が低くなる傾向にある。このため、SPM液とレジスト膜の反応速度が、ウエハ中心部で高く、ウエハ周縁部で低くなり、SPM処理の面内均一性が確保できない。ウエハ周縁部での十分な反応を確保しようとすると、ウエハ中心部においてレジスト膜の下地膜にダメージを与えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−35866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理するにあたって、基板温度の面内均一性を高めることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理装置において、基板を水平に支持し、回転可能な基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転機構と、基板の中心領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第1供給部と、前記基板の中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第2供給部と、を備え、前記第1供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、前記第2供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、前記第1供給部は、第1処理液と第2処理液との混合液を基板の中心領域に向けて吐出するように構成された中心部吐出口を有しており、前記第2供給部は、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第1吐出口と、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第2吐出口とを有していることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理方法において、基板を水平姿勢で回転させる基板回転工程と、前記基板の中心領域に向けて、前記第1処理液と前記第2処理液とを混合した後の混合液を供給するとともに、前記中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて、混合前の前記第1処理液と前記第2処理液とを、これらが前記基板に供給された後に混合されるように別々に供給する処理液供給工程と、を備えたことを特徴とする基板処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の半径方向の異なる領域にそれぞれ対応する処理液供給部から処理液を供給しているため、各領域における処理速度を均一化することができ、面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態による液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上面図である。
【図2】前記液処理装置の側面図である。
【図3】図2に示す液処理装置のA−A矢視による上面図である。
【図4】図2に示す液処理装置のB−B矢視による上面図である。
【図5】図2に示す液処理装置における基板保持部およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図6】図2に示す液処理装置における天板およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である。
【図7】図2に示す液処理装置における各ノズルおよび各ノズル支持アームの構成を示す説明図である。
【図8】SPM液供給用ノズルおよびノズル支持アームの構造を示す長手方向断面図(a)および横断方向断面図(b)である。
【図9】(a)〜(d)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【図10】(e)〜(h)は、図2に示す液処理装置により行われるウエハの洗浄処理の一連の工程を順次示す説明図である。
【図11】SPM液を供給するノズルの他の実施形態を示す概略平面図(a)および概略側面図(b)である。
【図12】SPM液を供給するノズルのさらに他の実施形態を示す概略側面図である。
【図13】SPM液を供給するノズルのさらに他の実施形態を示す概略側面図である。
【図14】SPM液を供給するノズルのさらに他の実施形態を示す概略図であって、(a)が概略側面図、(b)が概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
まず、本発明による基板処理装置の一実施形態に係る液処理装置を含む液処理システムについて説明する。図1に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハ等の基板W(以下、「ウエハW」ともいう)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図示例では4個)の液処理装置10が設けられている。
【0014】
次に、液処理装置10の概略的な構成について説明する。
【0015】
図2乃至図4に示すように、本実施の形態による液処理装置10は、ウエハWが収容され、この収容されたウエハWの液処理が行われる処理領域すなわちチャンバ20と、チャンバ20に隣接して形成された待機領域80と、を備えている。液処理装置10の天井部には、チャンバ20内に清浄空気のダウンフローを形成するファンフィルタユニット(FFU)12が取り付けられている。本実施形態の液処理装置10では、チャンバ20および待機領域80は連通している。図2に示すように、チャンバ20内には、ウエハWを水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させるための基板保持部21が設けられており、この基板保持部21の周囲にはリング状の回転カップ40が配設されている。回転カップ40は、ウエハWの液処理を行う際に当該ウエハWに供給された後の処理液を受けるために設けられている。基板保持部21および回転カップ40の構成の詳細については後に説明する。
【0016】
図2に示すように、液処理装置10には、基板保持部21に保持されたウエハWに対して上方から処理液を供給するためのノズル(進退ノズル)82aおよびこのノズル82aを支持ないし担持するノズル支持アーム82が設けられている。図3に示すように、1つの液処理装置10には複数(具体的には例えば4つ)のノズル支持アーム82が設けられており、各ノズル支持アーム82にそれぞれ1つまたは複数のノズル(82a,120,130など)が設けられている。図2に示すように、各ノズル支持アーム82にはアーム支持部82bが設けられており、各アーム支持部82bは図示しない駆動機構によって図2における左右方向に駆動され、これにより、各ノズル支持アーム82は、付設されたノズル(82a,120,130など)がウエハWの上方に位置する進出位置と、ウエハWの上方から退避した退避位置との間で水平方向に直線運動を行うようになっている(図2および図3における各ノズル支持アーム82に付けられた矢印を参照)。
【0017】
図2および図4に示すように、基板保持部21に保持されたウエハWを上方から覆うための円形の天板31が水平方向に移動自在に設けられている。より具体的には、天板31は、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う進出位置(図4の実線)と、水平方向において進出位置から退避した位置である退避位置(図4の二点鎖線)との間で往復移動を行うようになっている。天板31の構成の詳細については後に説明する。
【0018】
図2および図3に示すように、待機領域80の底部には、待機領域80内の雰囲気の排気を行う排気部58が設けられている。
【0019】
図3に示すように、液処理装置10の側壁には、搬送アーム104によりチャンバ20内へウエハWを搬入したりチャンバ20からウエハWを搬出したりするための開口94aが設けられており、この開口94aには、当該開口94aを開閉するためのシャッター94が設けられている。
【0020】
次に、図2乃至図4に示すような液処理装置10の各構成要素の詳細について図5乃至図7を用いて説明する。
【0021】
まず、基板保持部21およびその周辺に位置する構成要素を示す縦断面図である図5を参照して、基板保持部21について説明する。
【0022】
図5に示すように、基板保持部21は、ウエハWを保持するための円板形状の保持プレート26と、保持プレート26の上方に設けられた円板形状のリフトピンプレート22とを備えている。リフトピンプレート22の上面には、ウエハWを下方から支持するためのリフトピン23が周方向に等間隔で3つ(図5では2つのみ表示)設けられている。また、リフトピンプレート22の下方にはピストン機構24が周方向に等間隔で3つ(図5では1つのみ表示)設けられており、このピストン機構24によりリフトピンプレート22が昇降するようになっている。より具体的には、搬送アーム104(図1参照)によりウエハWをリフトピン23上に載置したりリフトピン23上からウエハWを取り出したりするときには、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図5に示すような位置から上方に移動させられ、このリフトピンプレート22は回転カップ40よりも上方に位置するようになる。一方、チャンバ20内でウエハWの液処理や乾燥処理等を行う際には、ピストン機構24によりリフトピンプレート22が図5に示すような下降位置に移動させられ、ウエハWの周囲に回転カップ40が位置するようになる。
【0023】
保持プレート26には、ウエハWを側方から支持するための保持部材25が周方向に等間隔で3つ(図5には2つのみ表示)設けられている。各保持部材25は、リフトピンプレート22が上昇位置から図5に示すような下降位置に移動したときにこのリフトピン23上のウエハWを側方から支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させるようになっている。
【0024】
リフトピンプレート22および保持プレート26の中心部分にはそれぞれ貫通穴が形成されており、これらの貫通穴を通るよう処理液供給管28が設けられている。この処理液供給管28は、保持プレート26の各保持部材25により保持されたウエハWの裏面に薬液や純水等の様々な種類の処理液を供給するようになっている。処理液供給管28はリフトピンプレート22と連動して昇降するようになっている。処理液供給管28の上端には、リフトピンプレート22の貫通穴を塞ぐよう設けられたヘッド部分28aが形成されている。処理液供給管28には処理液供給部29が接続されており、この処理液供給部29により処理液供給管28に様々な種類の処理液(例えば、加熱された純水または常温の純水)が供給されるようになっている。
【0025】
保持プレート26には図示しない接続部を介してリング状の回転カップ40が取り付けられており、回転カップ40は保持プレート26と一体的に回転するようになっている。
【0026】
回転カップ40の周囲には、ドレインカップ42および案内カップ44がそれぞれ設けられている。ドレインカップ42および案内カップ44はそれぞれリング状に形成されている。また、ドレインカップ42および案内カップ44はそれぞれ上部に開口を有している。ここで、ドレインカップ42はチャンバ20内においてその位置が固定されている。一方、案内カップ44には昇降シリンダ(図示せず)が連結されており、この案内カップ44は昇降シリンダにより昇降させられるようになっている。
【0027】
図5に示すように、ドレインカップ42や案内カップ44の下方には、第1排出部46aおよび第2排出部46bがそれぞれ設けられている。そして、案内カップ44の上下方向位置に依存して、ウエハWの液処理を行う際にウエハWから側方に飛散した処理液が、処理液の種類に基づいて、2つの排出部46a、46bのうちいずれか一つの排出部に選択的に送られるようになっている。具体的には、案内カップ44が上昇位置(図5に示すような状態)にあるときには、ウエハWから側方に飛散した所定の処理液、例えば後述するSC−1液が第2排出部46bに送られるようになっている。一方、案内カップ44が下降位置にあるときには、ウエハWから側方に飛散した所定の処理液、例えば後述するSPM液が第1排出部46aに送られるようになっている。また、図5に示すように、第1排出部46aおよび第2排出部46bには気液分離部48a、48bがそれぞれ接続されている。そして、第1排出部46aおよび第2排出部46bにおいて排液のみならず排気も行われるようになっており、図5に示すように、気液分離部48a、48bにおいて第1排出部46aおよび第2排出部46bから送られた処理液およびガスが分離されてそれぞれ排液および排気が行われるようになっている。
【0028】
また、図5に示すように、ドレインカップ42には、ウエハWの中心に向かって純水を供給する固定リンスノズル43が設けられている。この固定リンスノズル43により、ウエハWの中心に向かって純水等のリンス液が放物線状に吐出されるようになっている(図5の二点鎖線参照)。なお、後述のように、固定リンスノズル43は一連の液処理の開始から終了までの間、ウエハWの表面が乾く可能性があるとき(例えばホットリンス処理からSC−1処理に移行する際に、ノズル支持アームが入れ替わるとき)、それを防止するためにウエハW表面に純水を供給する。このため、固定リンスノズル43は、ある一つのノズル支持アーム82(例えば82q)に設けられたある一つのノズル82aからの処理液(例えばホットリンス液)の吐出終了の少し前に純水の吐出を開始し、別のノズル支持アーム82(例えば82r)に設けられた別のノズルからの処理液(例えばSC−1液)の吐出開始の少し後に純水の吐出を終了する。すなわち、固定リンスノズル43からの純水の吐出期間の両端は、ノズル支持アーム82に設けられたノズルからの処理液の吐出期間とオーバーラップしている。このオーバーラップ期間では固定リンスノズル43からの純水の吐出量を小さくし、それ以外の期間(固定リンスノズル43だけがウエハWに液を供給している期間)では固定リンスノズル43からの純水の吐出量を多くしている。これは、固定リンスノズル43から放物線を描いてウエハW表面に入射した純水がウエハW表面で跳ねてウエハW周囲へと飛散することを極力防止するためである。
【0029】
次に、4つのノズル支持アーム82(82p〜82s)のノズル82aからそれぞれ吐出される流体の詳細について説明する。
【0030】
図7(a)および図8に示すように、第1のノズル支持アーム82pには硫酸を吐出するための第1ノズル120と、過酸化水素水を吐出するための第2ノズル130とが組み込まれている。第1のノズル支持アーム82pは、進出位置にあるときに、その先端が、後述するセンターノズルの吐出口からウエハWに向けて吐出されるSPM液の流れを妨げないように、ウエハWの中心位置の真上よりもやや半径方向外側に位置する。第1ノズル120は、複数の吐出口121を有しており、これら複数の吐出口121は、第1のノズル支持アーム82pが進出位置にあるときに、平面視で、ウエハの半径方向に沿って並んでいる。平面視で、隣接する吐出口121同士の間の間隔は、半径方向外側にゆくに従って小さくなる。同様に、第2ノズル130は、複数の吐出口131を有しており、これら複数の吐出口131は、第2のノズル支持アーム82pが進出位置にあるときに、平面視で、ウエハWの半径方向に沿って並んでいる。平面視で、隣接する吐出口131同士の間の間隔は、ウエハWの半径方向外側(すなわち第1のノズル支持アーム82pの基端側)にゆくに従って小さくなる。図示例では、1つの吐出口121と1つの吐出口131が第1のノズル支持アーム82pの長手方向に関して同じ位置に位置して、対を成している。
【0031】
第1のノズル支持アーム82p内を、その長手方向に沿って、硫酸供給路122と過酸化水素水供給路132とが互いに平行に延びている。各吐出口121は硫酸供給路122と連通し、各吐出口131は過酸化水素水供給路132と連通している。硫酸供給路122は、第1のノズル支持アーム82pの基端部に接続された管路(この管路には、開閉弁、流量調整弁およびヒータ83dが介設されている)を介して、硫酸供給部83cに接続されている。過酸化水素水供給路132は、第1のノズル支持アーム82pの基端部に接続された管路(この管路には、開閉弁および流量調整弁が介設されている)を介して、過酸化水素水供給部83bに接続されている。
【0032】
硫酸供給部83cおよび過酸化水素水供給部83bからそれぞれ硫酸および過酸化水素水を送り出すことにより、対を成す吐出口121および吐出口131から、ウエハW表面上の同じ位置あるいはウエハW表面上の互いに近接した位置に硫酸および過酸化水素水が吐出され、硫酸と過酸化水素水とがウエハ表面上で混合され、SPM液が形成される。従って、硫酸と過酸化水素水との混合反応はこれら薬液がウエハ表面に到達した時点あるいはその直後から開始されるので、その分、混合反応による発熱は(硫酸と過酸化水素水とを吐出口から吐出する前に混合する場合と比較して)遅くまで続く。なお、隣接する吐出口121同士の間の間隔および隣接する吐出口131同士の間の間隔は、ウエハWの半径方向外側にゆくに従って小さくなり、また、各吐出口121の直径は互いに同一であり、かつ各吐出口131の直径は互いに同一であるので、ウエハ周縁部に近い位置ほど、硫酸および過酸化水素水の供給量は多くなる。このため、冷えやすいウエハW周縁部の温度が他の部分に比べて相対的に低下することを防止ないし抑制することができる。
【0033】
なお、隣接する吐出口121同士の間の間隔および隣接する吐出口131同士の間の間隔は、ウエハWの半径方向外側にゆくに従って徐々に小さくなるものとしたが、これに限定されるものではなく、等間隔で並んだ複数個の吐出口121(131)のグループを複数設け、各グループにおける隣接する吐出口121(131)同士の間隔を互いに異ならせてもよい(半径方向外側にあるグループほど隣接する吐出口121(131)同士の間隔を小さくする)。このようにすれば、図8に示した構成の場合と同様に、ウエハの周縁領域(後述のセンターノズル32が薬液吐出を受け持つウエハWの円形の中心領域よりも外側の環状領域)を半径方向外側にある外側領域と半径方向内側にある内側領域とに分割した場合、外側領域への硫酸および過酸化水素水の吐出量が、内側領域への硫酸および過酸化水素水の吐出量よりも多くなる。
【0034】
図7(a)に示すように、第1のノズル支持アーム82pに、乾燥ガスノズル140(図10には図示していない)をさらに組み込むことができる。乾燥ガスノズル140には、流量調整弁および開閉弁を介して乾燥ガス供給源142(ここではN2ガス供給源)が接続されている。乾燥ガスは、例えばCDA(clean dry air)でもよい。天板31が進出位置にありウエハWのSPM処理が行われているときに、乾燥ガスノズル140から乾燥ガス(乾燥したガス)を供給することにより、天板31とウエハWとの間の空間の湿度を低減することができる。このような乾燥ガスノズル140を設ける場合には、例えば、第1のノズル支持アーム82pの上側部分142(図8(b)参照)に、第1のノズル支持アーム82pの長手方向に延びるガス供給路(図示せず)を穿ち、このガス供給路を第1のノズル支持アーム82pの先端側部分の適当な位置で、第1のノズル支持アーム82pの表面に開口させればよい。この場合、ガス供給路には、例えば、流量調整弁および開閉弁を介してN2ガス供給部141(図7(a)参照)を接続することができる。
【0035】
図7(b)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第2のノズル支持アーム82qのノズル82aは下向きとなっており、この第2のノズル支持アーム82qのノズル82aからはウエハWにホットリンス処理を施すための純水(DIW)等の洗浄液が下方に吐出されるようになっている。より詳細には、第2のノズル支持アーム82q内にはノズル82aに接続された洗浄液供給管84aが設けられており、洗浄液供給部84bが流量調整弁および開閉弁を介し、さらに洗浄液を加熱するためのヒータ84cを介して、洗浄液供給管84aに接続されている。そして、洗浄液供給部84bから供給された純水等の洗浄液が洗浄液供給管84aを介して第2のノズル支持アーム82qのノズル82aに送られるようになっている。第2のノズル支持アーム82qが前進位置にある場合、ノズル82aはウエハWの中心の真上に位置する。
【0036】
図7(c)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第3のノズル支持アーム82rのノズル82aは下向きとなっており、この第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからはアンモニア水と過酸化水素水との混合液(以下、「SC−1液」ともいう)がウエハWに向かって下方に吐出されるようになっている。より詳細には、第3のノズル支持アーム82r内にはノズル82aに接続された処理液供給管85aが設けられており、並列に設けられた過酸化水素水供給部85bおよびアンモニア水供給部85cがそれぞれ流量調整弁および開閉弁を介して処理液供給管85aに接続されている。過酸化水素水供給部85bおよびアンモニア水供給部85cから供給された過酸化水素水およびアンモニア水が混合してSC−1液が生成され、このSC−1液が処理液供給管85aを介して第3のノズル支持アーム82rのノズル82aに送られるようになっている。なお、第3のノズル支持アーム82rのノズル82aから吐出されるSC−1液は、第1のノズル支持アーム82pのノズル82aから吐出されるSPM液よりも低温となっており、具体的には例えば80℃未満となっている。第3のノズル支持アーム82rが前進位置にある場合、ノズル82aはウエハWの中心の真上に位置する。
【0037】
図7(d)に示すように、4つのノズル支持アーム82のうち第4のノズル支持アーム82sのノズル82aは下向きとなっている。より詳細には、第4のノズル支持アーム82sのノズル82aには純水供給管86aが接続されており、純水供給管86aには純水供給部86bが接続されている。そして、純水供給部86bから純水供給管86aを介して供給された純水が下方に吐出されるようになっている。第4のノズル支持アーム82sが前進位置にある場合、ノズル82aはウエハWの中心の真上に位置する。
【0038】
次に、天板31およびその周辺に位置する構成要素の詳細の構造について図4および図6を用いて説明する。天板31は天板保持アーム35により保持されている。天板保持アーム35の基端には旋回軸37が設けられており、天板保持アーム35は旋回軸37を中心として回動し、基板保持部21により保持されたウエハWを上方から覆う進出位置と、図4の二点鎖線に示すような、水平方向において進出位置から退避した位置である退避位置との間を移動することができる。
【0039】
天板31の中央部には、センターノズル32が設けられている。センターノズル32の吐出口32aは、天板31が進出位置にあるときに、基板保持部21により保持されたウエハWの中心の真上に位置する。センターノズル32は、その内部に、吐出口32aに通じる吐出路32bを有している。吐出路32bには、硫酸供給管33aと過酸化水素水供給管34aが接続されている。硫酸供給管33aには、流量調整弁および開閉弁を介して硫酸供給部33bが接続されている。また、硫酸供給管33aには、硫酸を加熱するためのヒータ33cが介設されている。過酸化水素水供給管34aには、流量調整弁および開閉弁を介して過酸化水素水供給部34bが接続されている。硫酸供給管33aと過酸化水素水供給管34aからそれぞれ供給された硫酸および過酸化水素水は、吐出路32b内で混合された後、吐出口32aから混合液すなわちSPM液として供給される。詳細には、硫酸供給部33bから供給された硫酸は、ヒータ33cにより加熱された後、過酸化水素水と混合され、混合反応により発熱が生じる。このため、センターノズル32の吐出口32aからウエハWに向かって吐出されるSPM液の温度は、100℃以上、好ましくは170℃程度の高温となる。なお、図示例においては、センターノズル32内の吐出路32b内で硫酸と過酸化水素水を混合しているが、これに限定されるものではなく、センターノズル32より上流側で硫酸供給管33aと過酸化水素水供給管34aとを合流させることにより、硫酸と過酸化水素水を混合してもよい。
【0040】
天板31に、センターノズル32に隣接して乾燥ガスノズル36aを設けることができる。乾燥ガスノズル36aには、流量調整弁および開閉弁を介して乾燥ガス供給源36b(ここではN2ガス供給源)が接続されている。乾燥ガスは、例えばCDA(clean dry air)でもよい。天板31が進出位置にありウエハWのSPM処理が行われているときに、乾燥ガスノズル36aから乾燥ガス(乾燥したガス)を供給することにより、天板31とウエハWとの間の空間の湿度を低減することができる。なお、この乾燥ガスノズル36aおよび前述した第1のノズル支持アーム82p内の乾燥ガスノズル140は、少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0041】
図2および図4に示すように、液処理装置10の待機領域80には、天板31が退避位置に退避したときに当該天板31を収納する天板収納部38が設けられている。この天板収納部38の側方には開口が形成されており、天板31が進出位置から退避位置に移動したときにこの天板31は天板収納部38の側方の開口を介して天板収納部38内に完全に収納されるようになっている。また、天板収納部38には排気部39が設けられており、天板収納部38内の雰囲気は常に排気部39により排気されるようになっている。このことにより、ウエハWの液処理を行う際に天板31の下面にSPM液等の処理液の液滴が付着した場合でも、この天板31が天板収納部38内に収納されたときにはSPM液等の処理液の雰囲気は排気部39により排気されるので、処理液の雰囲気が待機領域80やチャンバ20内に流出することはない。天板収納部38内に、洗浄液を天板31の下面に噴射して天板31を洗浄する機構を設けることも好ましい。
【0042】
図2に示すように、液処理装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ200を有している。コントローラ200は、液処理装置10の全ての機能部品(例えば、基板保持部21、ピストン機構24、サーボモータ36等)の動作を制御する。コントローラ200は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が図2において参照符号201で示されている。プロセッサ202は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体201から呼び出して実行させ、これによってコントローラ200の制御の下で液処理装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ200は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0043】
次に、上述した液処理装置10を用いて、ウエハWの上面にある不要なレジスト膜を除去する洗浄処理の一連の工程について図10乃至図12を用いて説明する。以下に示す洗浄処理の一連の工程は、コントローラ200が液処理装置10の各機能部品の動作を制御することにより行われる。
【0044】
まず、図9(a)に示すように、天板31を退避位置に移動させ、この天板31を天板収納部38に収納させる。次に、基板保持部21におけるリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示す位置から上方に移動させ、チャンバ20の開口94aに設けられたシャッター94を開く。そして、液処理装置10の外部からウエハWが搬送アーム104により開口94aを介してチャンバ20内に搬入され、このウエハWがリフトピンプレート22のリフトピン23上に載置され、その後、搬送アーム104はチャンバ20から退避する。この際に、各ノズル支持アーム82はチャンバ20から退避した退避位置に位置し、待機領域80で待機している。
【0045】
次に、リフトピンプレート22および処理液供給管28を下方に移動させて図5に示すような下降位置に位置させる。この際に、保持プレート26に設けられた各保持部材25が、リフトピン23上のウエハWを側方から支持し、このウエハWをリフトピン23からわずかに離間させる。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、天板31を退避位置から進出位置に移動させ、ウエハWを天板31によって覆う。
【0047】
次に、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第1のノズル支持アーム82pが、ウエハWの上方に進出する(図9(c)参照)。
【0048】
次に、基板保持部21の保持プレート26およびリフトピンプレート22を回転させる。これにより、保持プレート26の保持部材25により支持されているウエハWも回転する。そして、ウエハWが回転した状態で、天板31に装着されたセンターノズル32からウエハW表面の中心領域に、並びに第1のノズル支持アーム82pの第1のノズル120および第2のノズル130からウエハW表面の周縁領域(中心領域の外側の環状領域を意味する)にSPM液を供給する。詳細には、硫酸と過酸化水素水が、吐出口32aより上流側で混合された後にセンターノズル32からウエハWの中心領域に向けて吐出される。従って、ウエハWの表面に到達した時点では、硫酸と過酸化水素水との混合による反応熱により、SPM液の温度は比較的高くなっている(例えば170℃以上)。また、第1のノズル支持アーム82p第1のノズル120の吐出口121からは80℃程度に加熱された硫酸がウエハW表面の周縁領域に向けて吐出され、また、第2のノズル130の吐出口131からは常温の過酸化水素水がウエハW表面の周縁領域に向けて吐出され、この硫酸および過酸化水素水はウエハ表面上で混合されてSPM液となる。硫酸および過酸化水素水の混合は、ウエハ表面に到達した時点から開始されるため、混合に伴う発熱はウエハWに到達した後、比較的長い時間にわたって続く。また、隣接する2つの第1吐出口121同士の間隔、並びに隣接する2つの第2吐出口122同士の間隔は、第1のノズル支持アーム82pの先端側(ウエハの中央に近い側、すなわち環状領域のうちの内側領域)で広く、基端側(ウエハの周縁に近い側、すなわち環状領域のうちの外側領域)で狭くなっている。このため、ウエハの周縁に近い側で硫酸および過酸化水素水がより多く供給されるので、これらの混合により生じる反応熱量もウエハの周縁に近い側でより多くなる。このため気流より冷えやすいウエハWの周縁部においても、ウエハWの中央部と同様にSPM液とレジスト膜との反応温度が高くなるため、ウエハW面内の反応温度が均一化され、均一なSPM処理を行うことができる。このSPM処理において、ウエハWの表面のレジストがSPM液によって剥離され、SPM液とともに剥離されたレジストが、回転するウエハWの遠心力によって第1排出部46aに送られて回収される。具体的には、ウエハWに対してSPM処理が行われる際には、案内カップ44が下降位置に位置するようになっており、従って、SPM液および剥離されたレジストは、第1排出部46aに送られて回収される。SPM処理の間、天板31とウエハWとの間に乾燥したガス、例えばN2ガスまたはCDA(クリーンドライエア)を第1のノズル支持アーム82pに設けた乾燥ガスノズル140(あるいは天板31に設けた乾燥ガスノズル36a)から供給することが好ましい。このようにしてウエハW表面近傍の空間の湿度を下げることにより、ウエハWのレジスト膜の下層にSiN膜が有った場合、望ましくないSiN膜のフィルムロス(SPM液によりエッチングされることによる)を防止ないし抑制することができる。
【0049】
ウエハWに対するSPM処理が終了すると、図9(d)に示すように、第1のノズル支持アーム82pはウエハWの上方から退避して待機領域80で待機するようになる。この際に、ウエハWは回転し続けている。
【0050】
次に、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第2のノズル支持アーム82qがウエハWの上方に進出する(図10(e)参照)。そして、ウエハWおよび天板31が回転した状態で、ウエハW上方に進出した第2のノズル支持アーム82qのノズル82aからウエハWの中心に向けて、加熱された純水(例えば、80℃)を供給する。この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28から加熱された純水を供給する。これにより、ウエハWに対してホットリンス処理が行われる。
【0051】
なお、ウエハWに対するSPM処理(図9(c)参照)とホットリンス処理(図10(e)参照)との間には、以下に示すような中間処理工程が行われるようになっている。この中間処理工程は、第1の中間処理工程、振切処理工程、および第2の中間処理工程から構成されている。具体的には、まず、第1の中間処理工程において、SPM液の液温未満かつリンス液の液温よりも高い温度の第1の中間処理液をウエハWの表面に供給する。より詳細には、図7(a)に示すような第1のノズル支持アーム82pにおいて、硫酸供給部83c側の開閉弁を開放状態としたまま過酸化水素水供給部83b側の開閉弁だけを閉止状態として、ヒータ83dで加熱した硫酸だけを第1のノズル支持アーム82pの第1のノズル120の吐出口121からウエハWの表面に向けて所定時間吐出させる。また、センターノズル32からも同様に加熱した硫酸だけをウエハの表面に向けて所定時間吐出させる。このときに、過酸化水素水が供給されないために、過酸化水素水と硫酸との化学反応が生じず、ウエハWの表面には、SPM液の液温(例えば、170℃)未満で、かつ、リンス液(純水)の液温(例えば、80℃)以上の温度(例えば、140℃)の硫酸が供給されることになる。この第1の中間処理工程を行うことで、ウエハWの温度をSPM処理における温度からリンス処理における温度へと急激に下降させるのではなく、その中間の温度に徐々に下降させることができる。その結果、ウエハWの急激な温度変化に伴う熱変形を防止することができる。これにより、ウエハWを基板保持部21により良好に保持することができる。
【0052】
次に、ウエハWを回転させることで、ウエハWの表面から硫酸を振り切って除去する振切処理工程を行う。この際に、SPM処理および第1の中間処理工程よりも高速でウエハWを所定時間回転させる。その後、第1の中間処理液(硫酸)の液温未満かつリンス液の液温以上の温度の第2の中間処理液をウエハWの裏面に供給する第2の中間処理工程を実行する。より詳細には、処理液供給部29から処理液供給管28に、第1の中間処理液(硫酸)の液温(例えば、140℃)未満かつリンス液の液温(例えば、80℃)以上の温度(例えば、80℃)の純水を供給することにより、この処理液供給管28のヘッド部分28aからウエハWの裏面に80℃の純水が吐出されるようになる。この第2の中間処理工程を行うことで、ウエハWの裏面からこのウエハWの温度をリンス処理における温度近傍へゆるやかに下降させることができる。特に、ウエハWの裏面に純水を供給しているために、ウエハWの表面に第1の中間処理液(硫酸)が残留していたとしてもリンス液(純水)との急激な化学反応の発生を抑制することができ、これにより、化学反応に伴う反応生成物の飛散を防止してウエハW周辺の空間の汚染を防止することができる。
【0053】
以上のように、ウエハWに対するSPM処理とホットリンス処理との間に、第1の中間処理工程、振切処理工程、および第2の中間処理工程から構成されている中間処理工程を行うことにより、SPM液とリンス液(純水)との急激な化学反応の発生を抑制することができ、これにより、化学反応に伴う反応生成物の飛散を防止してウエハ周辺の空間の汚染を防止することができる。
【0054】
ウエハWに対するホットリンス処理が終了すると、図10(f)に示すように、第2のノズル支持アーム82qはウエハW上方から退避して待機領域80で待機するようになる。この際に、ウエハWは回転し続けている。また、第2のノズル支持アーム82qがウエハWの上方から退避する前から、固定リンスノズル43によりウエハWの中心に向かって純水(例えば、80℃)が供給されるようになる。固定リンスノズル43によりウエハWの表面に液膜が形成されるので、ウエハWの表面が露出せず、ウエハWの表面にパーティクルが付着することを防止することができる。
【0055】
その後、図10(g)に示すように、天板31を進出位置から退避位置に移動させ、この天板31を天板収納部38に収納させる。ここで、天板収納部38内の雰囲気は常に排気部39により排気されるようになっているため、ウエハWのSPM処理を行う際に天板31の下面にSPM液等の処理液の液滴が付着した場合でも、この天板31が天板収納部38内に収納されたときにはSPM液等の処理液の雰囲気は排気部39により排気されるので、SPM液の雰囲気が待機領域80やチャンバ20内に流出することはない。
【0056】
その後、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第3のノズル支持アーム82rがウエハWの上方に進出する(図10(h)参照)。そして、ウエハWを回転させたままでウエハWの上方に進出した第3のノズル支持アーム82rのノズル82aからウエハWの中心に向けてSC−1液を供給する。これによって、ウエハWの表面に残るレジスト残渣を取り除くことができる。なお、SC−1液により液処理が行われる際には、案内カップ44が上昇位置に位置するようになっており、従ってSC−1液およびレジスト残渣は、第2排出部46bに送られて排出される。
【0057】
ウエハWに対するSC−1液による液処理が終了すると、第3のノズル支持アーム82rはウエハW上方から退避して待機領域80で待機するようになる(図10(g)と同じ状態)。この際に、ウエハWは回転し続けている。その後、待機領域80で待機している4つのノズル支持アーム82のうち第4のノズル支持アーム82sがウエハWの上方に進出する(図10(h)と同じ状態)。そして、ウエハWが回転した状態で、ウエハW上方に進出した第4のノズル支持アーム82sのノズル82aからウエハWの中心に向けて、常温の純水を供給する。この際に、ウエハWの下面(裏面)に向かって処理液供給管28から常温の純水を供給する。このことにより、ウエハWに対して常温リンス処理が行われる。その後、第4のノズル支持アーム82sを待機領域80まで退避させ、ウエハWを高速回転させることにより、ウエハWの乾燥処理が行われる。
【0058】
ウエハWの乾燥処理が終了すると、基板保持部21におけるリフトピンプレート22および処理液供給管28を図5に示す位置から上方に移動させることと、チャンバ20の開口94aに設けられたシャッター94を開く。そして、開口94aを介して液処理装置10の外部から搬送アーム104がチャンバ20内に入り、リフトピンプレート22のリフトピン23上にあるウエハWが搬送アーム104に移載される。その後、搬送アーム104により取り出されたウエハWは液処理装置10の外部に搬送される。このようにして、一連のウエハWの液処理が完了する。
【0059】
上記の実施形態では、センターノズル32から吐出前に硫酸と過酸化水素水が混合されて反応熱により既に高温になっているSPM液(硫酸と過酸化水素水との混合液)をウエハW表面の中心領域に供給している。このSPM液は遠心力により半径方向外側に広がる過程においてウエハWに熱を奪われて冷えてゆくが、この半径方向外側に広がってゆく途中のSPM液に対して硫酸および過酸化水素水が添加されるように、第1のノズル120および第2のノズル130から硫酸および過酸化水素水が別々にウエハW表面の環状の周縁領域(中心領域より外側の領域)に供給される。添加された新鮮な硫酸および過酸化水素水は混合反応を引き起こすため、半径方向外側に広がってゆくSPM液の温度が半径方向外側にゆくに従って低下することが回避される。これにより、気流の影響により特に冷えやすいウエハW周縁近傍においても、SPM液の温度が低下することが防止できる。温度の面内均一化の効果は、処理液が硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPM液の場合に限らず、混合すると反応熱を生じる任意の処理液の組み合わせにおいて達成することができる。例えば、硫酸と硝酸の混合液であるいわゆる「混酸」において基板を処理する場合においても有益である。
【0060】
また、上記の実施形態においては、ウエハW表面の環状の周縁領域(円形の中心領域の外側の領域)のうち、半径方向内側の領域である内側領域よりも、半径方向外側の領域である外側領域において、硫酸および過酸化水素水の供給量が多くなっている。これにより、気流の影響により特に冷えやすいウエハW周縁近傍におけるSPM液の温度低下をより確実に防止することができる。
【0061】
また、上記の実施形態においては、ウエハWの上方でウエハWに対向するように天板31を配置した状態でSPM処理が行われるため、ウエハW全体の温度低下を防止することができ、より効率良くSPM処理を行うことができる。
【0062】
なお、本実施の形態による液処理装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0063】
例えば、図6に破線で示すように、天板31のウエハWの周縁部に対向する位置に、ウエハの周縁部を加熱する加熱機構150を設けてもよい。加熱機構150は、例えばLEDランプにより構成することができる。LEDランプとして、ウエハWを加熱するために適した波長、具体的には例えば880nmの波長の光を放射するものを用いることが好ましい。この場合、天板31は、880nmの波長の光を良く透過する材料であってSPMによる腐食に耐えうる材料、例えば、石英またはテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成することができる。
【0064】
上記実施形態においては、SPM液を供給するためのノズル(第1のノズル120および第2のノズル130)を第1のノズル支持アーム82pに設けたが、これに限定されない。
【0065】
例えば、図11(a)、(b)に示すように、第5のノズル支持アーム82tを追加して、第1のノズル支持アーム82pに設けられるとともにウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1のノズル124(硫酸供給用ノズル)および複数の吐出口を有する第2のノズル134(過酸化水素水供給用ノズル)にウエハW表面の周縁領域のうちの内側領域(図13(b)の領域Pi)へのSPM液の供給を受け持たせ、第5のノズル支持アーム82tに設けられるとともにウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1のノズル125(硫酸供給用ノズル)およびウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第2のノズル135(過酸化水素水供給用ノズル)にウエハW表面の周縁領域のうちの外側領域(図11(b)の領域Po)へのSPM液の供給を受け持たせてもよい。この場合、ウエハW表面の中心領域(図11(b)の領域C)へのSPM液の供給は、上記の実施形態と同様に天板31に設けたセンターノズル32により行う。なお、図11(b)では、図面作成の便宜上、第1のノズル支持アーム82pと第5のノズル支持アーム82tとが異なる高さに位置しているように表示されているが、実際には同じ高さに位置している。第1のノズル支持アーム82pの第1のノズル124および第2のノズル134への硫酸および過酸化水素水の供給と、第5のノズル支持アーム82tの第1のノズル125および第2のノズル135への硫酸および過酸化水素水の供給とは別々の薬液供給機構を用いて互いに独立して制御することができるようになっている。従って、ウエハW表面の周縁領域の外側領域Poと内側領域Piに供給されるSPM液(硫酸および過酸化水素水)の流量の比率を自在に調整することができ、言い換えれば流量のゾーン制御を行うことができ、これにより、温度の面内均一性を高めるような調整が容易となる。また、ウエハW半径方向に関する第1のノズル支持アーム82pと第5のノズル支持アーム82tの相対的位置関係を調整することが可能となるので、この点からも、温度の面内均一性を高めるような調整が容易となる。なお、この場合も、図1〜図10に示した実施形態と同様に、ウエハW表面の周縁領域の内側領域Piへの硫酸および過酸化水素水の供給流量よりも、外側領域Poへの供給流量を多くすることが好ましい。
【0066】
また例えば、図12に示すように、第1のノズル支持アーム82pの先端側にウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1の先端側ノズル126(硫酸供給用ノズル)およびウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第2の先端側ノズル136(過酸化水素水供給用ノズル)を設け、基端側にウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第1の先端側ノズル127(硫酸供給用ノズル)およびウエハW半径方向に並んだ複数の吐出口を有する第2の先端側ノズル137(過酸化水素水供給用ノズル)を設けることができる。各ノズル126、127、136、137には別々の薬液供給機構により薬液(硫酸または過酸化水素水)が供給され、各ノズル126、127、136、137への薬液供給流量の比率を自在に調整することができ、図13に示す実施形態と同様にゾーン制御を行うことができる。これにより、温度の面内均一性を高めるような調整が容易となる。
【0067】
また例えば、先に説明した実施形態において天板31に設けていたセンターノズル32を廃して、ウエハWの中心領域Cに(吐出前に混合された)硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM液)を供給するノズル(以下、センターノズル200と称する)をノズル支持アーム82に設けることができる。SPM処理時には、このセンターノズル200と、ウエハWの周縁領域Pi,Poに硫酸および過酸化水素水を混合せずに別々に吐出するノズル(第1ノズル120、第2ノズル130)とが同時にウエハWに薬液を供給する。このような変形実施形態について、図13および図14を参照して、図1〜図10に示した実施形態との相違点を中心に説明する。図13および図14において、図1〜図10に示した構成要素と同じ構成要素については同一符号を付して重複説明は省略する。また、図13および図14において、天板31の表示は省略しており、また、ノズル支持アーム82内に設けることができる乾燥ノズル140(図7(a)参照)の記載は省略している。
【0068】
図13(a)、(b)に示す変形実施形態においては、ウエハWの周縁領域Pi,Poに硫酸および過酸化水素水を混合せずに別々に吐出するノズル(第1ノズル120、第2ノズル130)が設けられたノズル支持アーム82(82p)に、ウエハWの中心領域CへのSPM液(吐出口から吐出される前に硫酸および過酸化水素水が混合されたもの)の吐出を行うノズル(センターノズル)200を設けている。図13(a)に示す変形実施形態においては、硫酸および過酸化水素水を混合せずに別々に吐出するノズルである第1ノズル120および第2ノズル130のための薬液供給機構と同じ薬液供給機構を用いて、センターノズル200への硫酸および過酸化水素水の供給を行っている。具体的には、第1ノズル120の吐出口121および第2ノズルの吐出口131に硫酸および過酸化水素水をそれぞれ供給するためにノズル支持アーム82(82p)内を長手方向に延びる硫酸供給路122および過酸化水素水供給路132に、センターノズル200の吐出口201が接続されている。図13(b)に示す変形実施形態においては、センターノズル200に硫酸および過酸化水素水を供給するための薬液供給機構を、第1ノズル120および第2ノズル130に硫酸および過酸化水素水を供給するための薬液供給機構と別個に設けている。この場合には、硫酸供給路122および過酸化水素水供給路132とは別の薬液供給路がノズル支持アーム82(82p)内に設けられる。なお、図13(b)では、センターノズル200に供給される硫酸と過酸化水素水は混合された後、ノズル支持アーム82に設けられた1つの供給路内に導入され、この1つの供給路に接続された吐出口201から供給されるようになっているが、これに限定されるものではなく、ノズル支持アーム82内に硫酸供給路および過酸化水素水供給路を設けて、これらの供給路をノズル支持アーム82内で合流させた後に、吐出口201に接続するようにしてもよい。
【0069】
図14(a)(b)に示す変形実施形態においては、図7(a)および図8に示した第1ノズル120および第2ノズル130を具備したノズル支持アーム82pがそのまま用いられ、これに加えてセンターノズル200のみを担持するノズル支持アーム82t’が用いられる。ノズル支持アーム82t’は進出位置にあるとき、センターノズル200の吐出口201がウエハWの中心Owの真上に位置するように構成される。
【0070】
なお、図13および図14の変形実施形態においても、他の実施形態と同様に、ウエハW表面の環状の周縁領域(円形の中心領域Cの外側の領域)のうち、半径方向内側の領域である内側領域Piよりも、半径方向外側の領域である外側領域Poにおいて、硫酸および過酸化水素水の供給量が多くなるように各ノズルは構成されている。
【符号の説明】
【0071】
21 基板保持部
31 天板
32、200 センターノズル(第1供給部)
120、124、125、126、127 第1のノズル(第2供給部)
130、134、135、136、137 第2のノズル(第2供給部)
150 加熱機構(LEDランプ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理装置において、
基板を水平に支持し、回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転機構と、
基板の中心領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第1供給部と、
前記基板の中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第2供給部と、
を備え、
前記第1供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、
前記第2供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、
前記第1供給部は、第1処理液と第2処理液との混合液を基板の中心領域に向けて吐出するように構成された中心部吐出口を有しており、
前記第2供給部は、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第1吐出口と、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第2処理液を吐出する複数の第2吐出口とを有している
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2供給部は、前記基板の周縁領域を半径方向外側にある外側領域と半径方向内側にある内側領域とに分割した場合、前記外側領域への第1処理液および第2処理液の吐出量が、前記内側領域への第1処理液および第2処理液の吐出量よりも多くなるように構成されるか、あるいは制御されることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板が処理されているときに、基板の上方で基板に対向する位置に位置する天板を設けたことを特徴とする、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記天板の基板周縁部に対応する位置に加熱機構を設けたことを特徴とする、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記加熱機構はLEDランプからなることを特徴とする、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記天板と基板との間に乾燥したガスを導入する乾燥ガス導入口を設けたことを特徴とする、請求項3から5のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の処理液は硫酸であり、前記第2の処理液は過酸化水素水であることを特徴とする、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理方法において、
基板を水平姿勢で回転させる基板回転工程と、
前記基板の中心領域に向けて、前記第1処理液と前記第2処理液とを混合した後の混合液を供給するとともに、前記中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて、混合前の前記第1処理液と前記第2処理液とを、これらが前記基板に供給された後に混合されるように別々に供給する処理液供給工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
前記処理液供給工程において、前記基板の周縁領域を半径方向外側にある外側領域と半径方向内側にある内側領域とに分割した場合、前記外側領域に向けた第1処理液および第2処理液の供給量が、前記内側領域に向けた第1処理液および第2処理液の供給量よりも多くなるように、前記第1および第2処理液が供給されることを特徴とする、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記混合液により前記基板が処理されているときに、前記基板の上方で前記基板に対向する位置に天板を配置することを特徴とする、請求項8または9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記混合液により前記基板が処理されているときに、加熱機構を用いて、前記天板の基板周縁部に対応する位置を加熱することを特徴とする、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記加熱機構はLEDランプからなることを特徴とする、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記混合液により前記基板が処理されているときに、前記天板と基板との間に乾燥したガスを導入することを特徴とする、請求項10から12のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第1の処理液は硫酸であり、前記第2の処理液は過酸化水素水であることを特徴とする、請求項8から13のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項1】
混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理装置において、
基板を水平に支持し、回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転機構と、
基板の中心領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第1供給部と、
前記基板の中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて第1処理液および第2処理液を供給する第2供給部と、
を備え、
前記第1供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、
前記第2供給部には、第1処理液を供給する第1処理液供給管と第2処理液を供給する第2処理液供給管が接続され、
前記第1供給部は、第1処理液と第2処理液との混合液を基板の中心領域に向けて吐出するように構成された中心部吐出口を有しており、
前記第2供給部は、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第1処理液を吐出する複数の第1吐出口と、基板の周縁領域内の半径方向の異なる位置に向けて第2処理液を吐出する複数の第2吐出口とを有している
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2供給部は、前記基板の周縁領域を半径方向外側にある外側領域と半径方向内側にある内側領域とに分割した場合、前記外側領域への第1処理液および第2処理液の吐出量が、前記内側領域への第1処理液および第2処理液の吐出量よりも多くなるように構成されるか、あるいは制御されることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板が処理されているときに、基板の上方で基板に対向する位置に位置する天板を設けたことを特徴とする、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記天板の基板周縁部に対応する位置に加熱機構を設けたことを特徴とする、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記加熱機構はLEDランプからなることを特徴とする、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記天板と基板との間に乾燥したガスを導入する乾燥ガス導入口を設けたことを特徴とする、請求項3から5のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の処理液は硫酸であり、前記第2の処理液は過酸化水素水であることを特徴とする、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
混合すると反応熱を生じる第1処理液と第2処理液の混合液を用いて基板を処理する基板処理方法において、
基板を水平姿勢で回転させる基板回転工程と、
前記基板の中心領域に向けて、前記第1処理液と前記第2処理液とを混合した後の混合液を供給するとともに、前記中心領域を取り囲む環状の周縁領域に向けて、混合前の前記第1処理液と前記第2処理液とを、これらが前記基板に供給された後に混合されるように別々に供給する処理液供給工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
前記処理液供給工程において、前記基板の周縁領域を半径方向外側にある外側領域と半径方向内側にある内側領域とに分割した場合、前記外側領域に向けた第1処理液および第2処理液の供給量が、前記内側領域に向けた第1処理液および第2処理液の供給量よりも多くなるように、前記第1および第2処理液が供給されることを特徴とする、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記混合液により前記基板が処理されているときに、前記基板の上方で前記基板に対向する位置に天板を配置することを特徴とする、請求項8または9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記混合液により前記基板が処理されているときに、加熱機構を用いて、前記天板の基板周縁部に対応する位置を加熱することを特徴とする、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記加熱機構はLEDランプからなることを特徴とする、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記混合液により前記基板が処理されているときに、前記天板と基板との間に乾燥したガスを導入することを特徴とする、請求項10から12のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第1の処理液は硫酸であり、前記第2の処理液は過酸化水素水であることを特徴とする、請求項8から13のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−110324(P2013−110324A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255401(P2011−255401)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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