説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】塵PおよびレジストRを基板Wの周縁部Eから同時に除去する。
【解決手段】基板Wの周縁部Eに液状の被覆剤Cを塗布して、基板Wの周縁部Eに付着した塵Pを液状の被覆剤Cによって覆う。そして、基板周縁部Eに付着した塵Pを覆う被覆剤Cを硬化させることで、当該塵Pを硬化された被覆剤Cの内部に捕捉する。したがって、被覆剤Cを基板Wの周縁部Eから除去することで、基板Wの周縁部Eから塵Pを除去することができる。さらに、基板Wの周縁部Eに被覆剤Cを塗布した後に、基板表面WfにフォトレジストRを塗布するため、基板Wの周縁部Eでは、フォトレジストRは被覆剤Cの上に塗布される。したがって、基板Wの周縁部Eから被覆剤Cを除去した際には、被覆剤Cの上に塗布されたフォトレジストRも被覆剤Cとともに基板Wの周縁部Eから除去される。こうして、塵PおよびフォトレジストRを基板Wの周縁部Eから同時に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の周縁部から塵およびレジストの除去を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布を実行した場合、その後に基板に実行する処理において基板の周縁部のレジストが剥がれ落ちて、周辺環境を汚染する汚染物質になるといった問題が知られている。このような問題に対して、例えば特許文献1では、基板の表面にレジストを塗布した後に、EBR(Edge Bead Removal)処理を実行して基板の周縁部からレジストを除去する技術が記載されている。このEBR処理は、微細ノズルから基板の周縁部に向けてレジストの溶剤を吐出することで、基板の周縁部のレジストを溶かして、基板の周縁部からレジストを除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板の周縁部には、レジスト以外に種々の塵が付着していることが多く、これらはレジストと同様に汚染物質となりうる。しかしながら、上述のEBR処理は、レジストを溶剤で溶かして除去するものであるため、レジストとは異なるこれらの塵の除去には必ずしも有効ではない。そのため、EBR処理を行うのみでは、基板周縁部の塵を十分に除去できず、その後に基板に実行する処理においてこの塵が周辺環境を汚染する汚染物質になってしまう場合があった。このような問題に対しては、例えば、これらの塵を除去する処理をEBR処理とは別に実行する構成も考えられるが、このような構成は基板への処理数を増大させることになるため効率的ではない。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、塵およびレジストを基板の周縁部から同時に除去することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、基板の周縁部に液状の被覆剤を塗布する被覆剤塗布手段と、周縁部に被覆剤が塗布された基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布手段と、被覆剤を硬化させる被覆剤硬化手段と、被覆剤硬化手段により硬化された被覆剤を、被覆剤の上に塗布されたレジストとともに基板の周縁部から除去する除去手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、基板の周縁部に液状の被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程と、被覆剤塗布工程で、周縁部に被覆剤が塗布された基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、被覆剤を硬化させる被覆剤硬化工程と、被覆剤硬化工程で硬化された被覆剤を、被覆剤の上に塗布されたレジストともに基板の周縁部から除去する除去工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理装置、基板処理方法)では、基板の周縁部に液状の被覆剤が塗布される。これによって、基板周縁部に付着した塵は、液状の被覆剤によって覆われる。そして、基板周縁部に付着した塵を覆う被覆剤を硬化させることで、当該塵を硬化された被覆剤の内部に捕捉することができる。したがって、硬化された被覆剤を基板の周縁部から除去することで、基板周縁部から塵を除去することができる。しかも、この発明では、基板周縁部に被覆剤を塗布した後に、基板表面にレジストが塗布されるため、基板周縁部では、レジストは被覆剤の上に塗布されることとなる。したがって、基板の周縁部から被覆剤を除去した際には、被覆剤の上に塗布されたレジストも被覆剤とともに基板の周縁部から除去される。こうして、この発明では、硬化された被覆剤を除去することで、塵およびレジストを基板周縁部から同時に除去することが可能になっている。
【0009】
また、被覆剤塗布手段は、基板を水平に保持しつつ回転する基板保持部と、基板の周縁部に液状の被覆剤を吐出する被覆剤吐出ノズルとを有し、基板保持部に伴って回転する基板の周縁部に被覆剤吐出ノズルから液状の被覆剤を吐出するように、基板処理装置を構成しても良い。
【0010】
また、除去手段は、基板の周縁部にガスを吹き付けるガス噴出ノズルを有し、ガス噴出ノズルが吹き付けたガスによって被覆剤を基板の周縁部から除去するように、基板処理装置を構成しても良い。このようにガスの吹き付けによって基板周縁部から被覆剤を除去する構成では、被覆剤の除去のために機械的な部材を基板に接触させる必要が無いため、基板の損傷を抑えつつ、基板周縁部から被覆剤を除去することができる。
【0011】
ちなみに、ガスの吹き付けによる被覆剤の除去を迅速に行うためには、被覆剤の端に対して効率的にガスを吹き付けることが好適となる。そこで、被覆剤塗布手段は、基板の周縁部の表面から裏面にかけて被覆剤を塗布し、除去手段の有するガス噴出ノズルは、基板の裏面側からガスを吹き付けて、被覆剤を基板の周縁部から除去するように、基板処理装置を構成しても良い。このように基板の周縁部の表面から裏面にかけて被覆剤を塗布した場合、基板表面側では被覆剤の端はレジストに覆われて露出しないが、基板裏面側では被覆剤の端が露出する。したがって、基板の裏面側から基板の周縁部にガスを吹き付けることで、被覆剤の端に対して効率的にガスを吹き付けることができ、その結果、被覆剤の除去を迅速に行うことが可能となる。
【0012】
なお、被覆剤は熱硬化性の性質を有しており、被覆剤硬化手段は液状の被覆剤を加熱することで被覆剤を硬化させるように、基板処理装置を構成しても良い。あるいは、被覆剤は光硬化性の性質を有しており、被覆剤硬化手段は液状の被覆剤に光を照射することで被覆剤を硬化させるように、基板処理装置を構成しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塵およびレジストを基板の周縁部から同時に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態にかかる基板処理装置の一例を模式的に示した部分断面図である。
【図2】図1の基板処理装置の一部を鉛直方向に分解して模式的に示した斜視図である。
【図3】図1の基板処理装置が実行する動作を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおける各ステップでの動作を説明するための動作説明図である。
【図5】フォトレジスト除去処理の動作を模式的に示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態にかかる基板処理装置の一例を模式的に示した部分断面図である。図2は、図1の基板処理装置の一部を鉛直方向に分解して模式的に示した斜視図である。この基板処理装置1は、基台2から上方に延びる支軸3の上端に円形の支持テーブル4を取り付けて、この支持テーブル4の支持平面4fに載置された基板Wに対して所定の処理を実行する概略構成を備える。なお、この実施形態では、半導体基板である基板Wに対して所定の処理を実行する場合を例示して説明する。
【0016】
基板Wが載置される支持テーブル4は、回転可能に構成されている。具体的には、基板処理装置1には、回転モーター21が具備されている。そして、制御部100の制御を受けて回転モーター21が回転すると、回転モーター21の駆動力が基台2に内蔵する動力伝達機構を介して支軸3に伝わり、支持テーブル4と支軸3とが一体的に鉛直軸を中心として回転する。
【0017】
支軸3の軸心には、鉛直方向に支持テーブル4の内部にまで延びる配管31が形成されている。この配管31は、支持テーブル4の内部で水平方向に放射状に分岐した後に、上方に延びて支持テーブル4の支持平面4fで開口する。こうして、鉛直上方を向く水平な支持平面4fにおいて、配管31に連通する複数の配管口4aが放射状に並んで開口する。また、支持テーブル4には、これら配管口4aの外側で同心円状に並ぶ複数の貫通孔4bが形成されている。これら貫通孔4bは、支持テーブル4を鉛直方向に貫通する孔である。さらに、支持テーブル4の底面には、ヒーター41が取り付けられており、このヒーター41で支持テーブル4の支持平面4fを加熱することができる。なお、この支持テーブル4は、支軸3の上端に固定された下部プレート42と、支持平面4fが形成されており前記下部プレート42に着脱自在な上部プレート43とに分離可能に構成されている。
【0018】
支持テーブル4の支持平面4fには、粘着性を有する円形の粘着シート5が固定されている。この粘着シート5には、その中心から放射状に並ぶ複数の通気孔5aが、支持テーブル4の複数の配管口4aに対応する位置に形成されている。つまり、各通気孔5aは、対応する配管口4aの上方で、粘着シート5を貫通するように形成されている。したがって、配管口4aから流出した気体は、この配管口4aの上方に位置する通気孔5aを介して粘着シート5を通過する。また、配管口4aに向かう気体は、この配管口4aの上方に位置する通気孔5aを介して粘着シート5を通過した後に、この配管口4aに流入する。このように、粘着シート5は、配管口4aに対して流入出する気体に対して通気性を有している。
【0019】
また、粘着シート5には、これら通気孔5aの外側で同心円状に並ぶ複数の貫通孔5bが、支持テーブル4の複数の貫通孔4bに対応する位置に形成されている。つまり、各貫通孔5bは、支持テーブル4に形成された対応する貫通孔4bの上方で、粘着シート5を貫通するように形成されている。したがって、支持テーブル4の貫通孔4bと粘着シート5の貫通孔5bとは鉛直方向に連なる。
【0020】
そして、このような粘着シート5が支持テーブル4の支持平面4fに固定されている。なお、上述したとおり、支持平面4fが形成された上部プレート43は、支軸3の上端に固定された下部プレート42に対して着脱自在となっている。したがって、支持平面4f上の粘着シート5と一体的に上部プレート43を下部プレート42から着脱することで、粘着シート5を交換できるようになっている。そして、この粘着シート5を介して支持テーブル4の上に基板Wが載置される。なお、支持テーブル4は基板Wより小さいサイズを有しており、支持テーブル4に載置された基板Wの周縁部Eは支持テーブル4より外側に突出する。
【0021】
一方、支持テーブル4の下方には、基板Wを上方に持ち上げて、粘着シート5から基板Wを離間させる基板上昇機構6が配置されている。この基板上昇機構6は、水平に配置された環状のフレーム61と、このフレーム61に同心円状に配置された複数のリフトピン62と、フレーム61を昇降させるソレノイド63とを備える。複数のリフトピン62は、支持テーブル4の複数の貫通孔4bを下方から臨むように形成されている。したがって、ソレノイド63がフレーム61を上昇させると、これに伴ってリフトピン62が貫通孔4b、5bを下方から貫通して、基板Wを突き上げる。こうして、基板Wは、粘着シート5から離間する。なお、ソレノイド63の動作は、制御部100によって制御される。
【0022】
また、基板処理装置1は、支持テーブル4の支持平面4fで開口する配管口4aに連通する配管31を減圧・加圧する圧力調整機構7を備える。具体的には、配管31には、減圧バルブ71を介して吸引ポンプ72が接続されている。そして、配管31内の減圧は、吸引ポンプ72を稼動させた状態で、減圧バルブ71を調整することで実行される。つまり、制御部100が減圧バルブ71を開くと、吸引ポンプ72が配管31内の排気を開始して、配管31内が減圧される。一方、制御部100が減圧バルブ71を閉じると、吸引ポンプ72の排気動作が停止して、配管31内は大気圧に戻る。
【0023】
さらに、配管31には、加圧バルブ73を介して窒素ガス供給源74が接続されている。そして、配管31内の加圧は、配管31内の加圧は加圧バルブ73を調整することで実行される。つまり、制御部100が加圧バルブ73を開くと、窒素ガス供給源74が配管31内への窒素ガスの供給を開始して、配管31内が加圧される。一方、制御部100が加圧バルブ73を閉じると、窒素ガス供給源によるガス供給動作が停止して、配管31内は大気圧に戻る。
【0024】
また、この基板処理装置1は、スピンコート法によってフォトレジストを塗布するフォトレジスト塗布機構8を備える。このフォトレジスト塗布機構8では、フォトレジストを吐出するノズル81に調整バルブ82を介してフォトレジスト供給源83が接続されている。したがって、制御部100が調整バルブ82を開くと、液状のフォトレジストがフォトレジスト供給源83からノズル81に供給されて、ノズル81からフォトレジストが吐出される。一方、制御部100が調整バルブ82を閉じると、フォトレジスト供給源83からノズル81へのフォトレジストの供給が停止して、ノズル81からのフォトレジストの吐出が停止する。
【0025】
ノズル81は、支持テーブル4の中央部上方の吐出位置(図1中の実線位置)と、支持テーブル4の上方から外れた退避位置(図1中の破線位置)との間を移動可能に構成されている。そして、基板Wにフォトレジストを塗布する際には、支持テーブル4に伴って回転する基板Wの中央部上方(つまり吐出位置)で、ノズル81がフォトレジストを吐出する。これによって、基板Wの中央部に吐出されたフォトレジストが遠心力によって基板Wの全体に塗り広げられる。一方、基板Wへのフォトレジストの塗布を停止する際には、ノズル81がフォトレジストの吐出を停止して退避位置へと移動するとともに、支持テーブル4の回転が停止する。
【0026】
また、この基板処理装置1は、基板Wの周縁部Eからフォトレジストを除去するためのレジスト除去機構9を備える。このレジスト除去機構9は、フォトレジスト塗布に先立って基板Wの周縁部Eに被覆剤を塗布しておき、フォトレジスト塗布後にこの被覆剤を窒素ガスで吹き飛ばして被覆剤とともにフォトレジストを除去するものである。
【0027】
具体的には、このレジスト除去機構9では、光硬化性の液状の被覆剤を基板Wの周縁部Eに向けて吐出するノズル91に、調整バルブ92を介して液状被覆剤供給源93が接続されている。したがって、制御部100が調整バルブ92を開くと、液状の被覆剤が液状被覆剤供給源93からノズル91に供給されて、ノズル91から液状の被覆剤が吐出される。なお、この被覆剤の吐出は、支持テーブル4に伴って基板Wを回転させながら実行され、これによって基板Wの周縁部Eの全周に渡って被覆剤が塗布される。こうして塗布された被覆剤は、光照射部94から照射される光(紫外線)によって硬化される。一方、制御部100が調整バルブ92を閉じると、液状被覆剤供給源93からノズル91への液状の被覆剤の供給が停止して、ノズル91からの液状の被覆剤の吐出が停止する。
【0028】
さらに、このレジスト除去機構9では、窒素ガスを噴射するノズル95が、基板Wの裏面側に相当する位置に設けられている。このノズル95は、基板Wの裏面Wrの下でかつ基板Wの周縁部Eの内側(基板Wの中心側)に配置され、斜め上方の周縁部Eに向けて、基板Wの周縁部Eに窒素ガスを吹き付けるものである。つまり、このノズル95に調整バルブ96を介して窒素ガス供給源97が接続されている。したがって、制御部100が調整バルブ96を開くと、窒素ガスが窒素ガス供給源97からノズル95に供給されて、ノズル95から窒素ガスが噴射される。なお、この窒素ガスの噴射は、支持テーブル4に伴って基板Wを回転させながら実行され、これによって基板Wの周縁部Eの全周にから被覆剤が除去される。一方、制御部100が調整バルブ96を閉じると、窒素ガス供給源97からノズル95への窒素ガスの供給が停止して、ノズル95からの窒素ガスの噴射が停止する。
【0029】
以上が、この実施形態にかかる基板処理装置1の概略構成である。続いては、基板処理装置1が実行する動作について説明する。図3は、図1の基板処理装置が実行する動作を示すフローチャートである。図4は、図3のフローチャートにおける各ステップでの動作を説明するための動作説明図である。図4では、鉛直方向に並ぶ支持テーブル4、粘着シート5および基板Wの一部が拡大されて示されている。なお、以下で適宜示すz軸は鉛直方向に相当し、x軸は水平方向に相当するものとする。
【0030】
ここで説明する動作では、支持テーブル4に載置された基板Wに対してフォトレジストの塗布が実行される。この際、支持テーブル4への載置によって、基板Wにパーティクルが付着することが無いように、基板Wは粘着シート5を介して支持テーブル4に載置される。つまり、図3、図4に示すように、ステップS101では、基板Wがその裏面Wrを粘着シート表面5fに向けて、この粘着シート表面5fに載置される。この状態では、基板Wは、自重により粘着シート表面5fに接しているに過ぎず、基板Wは支持テーブル4に固定されていない。
【0031】
続くステップS102では、制御部100が減圧バルブ71を開いて、配管31内の気体を吸引ポンプ72により吸引する。これによって、基板裏面Wrと粘着シート表面5fの間の気体が、通気孔5aを介して配管口4aへと吸引される。そして、配管口4aから粘着シート5を介して吸引される基板裏面Wrが粘着シート表面5fに押し付けられて、基板裏面Wrと粘着シート表面5fが密着する。この際、粘着シート5の通気孔5a周縁の粘着シート5は、鉛直方向に押し潰されることで、水平方向にはみ出して通気孔5aを塞ぐ。その結果、気体吸引前には通気孔5aが形成されていた部分においても、気体吸引後には基板裏面Wrと粘着シート表面5fが密着することとなる。
【0032】
なお、吸引ポンプ72による吸引が継続する間、基板Wは粘着シート5に密着されるのみならず、支持テーブル4に固定されることとなる。つまり、基板Wには粘着シート5からの粘着力と吸引ポンプ72からの吸引力が働くため、これらの力によって基板Wが支持テーブル4にしっかりと固定される。そして、こうして基板Wを支持テーブル4に固定した状態で、回転モーター21が始動する(ステップS103)。これによって、支持テーブル4が基板Wを水平に保持しつつ回転を開始する。つまり、支持テーブル4はスピンチャックとして機能する。
【0033】
ステップS104では、支持テーブル4と一体的に回転する基板Wの周縁部Eに対して、ノズル91が液状の被覆剤を吐出する。これによって、基板Wの周縁部Eの全周に渡って液状の被覆剤が塗布される。そして、ステップS104が完了すると、ノズル81が液状のフォトレジストRを基板表面Wfに吐出する。こうしてスピンコート法によって、基板表面Wfの全面にフォトレジストRが塗布される。この際、図5を用いて後に詳述するように、基板Wの周縁部Eでは、既に塗布された被覆剤の上にフォトレジストRが塗布される。
【0034】
続いて、光照射部94からの光照射を受けて被覆剤が硬化するとともに(ステップS106)、ヒーター41の加熱によってフォトレジストRが乾燥して硬化する(ステップS107)。そして、これら被覆剤およびフォトレジストRの硬化が完了すると、基板の裏面Wrの下でかつ基板Wの周縁部Eの内側(基板Wの中心側)に配置され、斜め上方の周縁部Eに向けて、ノズル95が基板Wの周縁部Eに窒素ガスを噴射する。これによって、被覆剤がフォトレジストRとともに基板Wの周縁部から除去される(ステップS108)。なお、被覆剤の塗布(ステップS104)から被覆剤の除去(ステップS108)までの動作の詳細については、図5を用いて後に詳述する。
【0035】
ステップS109では、回転モーター21が停止して、支持テーブル4の回転が停止する。そして、ステップS110では、制御部100が、減圧バルブ71を閉じて配管31内の排気を停止するとともに、加圧バルブ73を開いて配管31内に窒素ガスを供給する。これによって、基板裏面Wrと粘着シート表面5fの間に、配管口4aから通気孔5aを介して窒素ガスが圧入される。具体的には、配管口4aから流出する窒素ガスは、閉塞していた粘着シート5の各通気孔5aを押し開けるのに続いて、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとの間を押し広げながら水平方向に進む。こうして、圧入された窒素ガスによって、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとが剥離されて、これらの密着性が解消される。
【0036】
ここで、「剥離」とは、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとの間に圧入されたガスによって、これらの密着状態が解消された状態を示すものであり、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとが離間していることまでを意味するものではない。
【0037】
ステップS111では、制御部100がソレノイド63に上昇指令を出して、ソレノイド63に各リフトピン62を上昇させる。これによって、粘着シート5から剥離された基板Wが、各リフトピン62によって押し上げられて、粘着シート5から離間する。そして、これらステップS101〜S111を経てフォトレジストRが塗布された基板Wは、後のフォトリソグラフィ等の処理に供されることとなる。
【0038】
上述のとおり、図3に示したフローチャートでは、フォトレジスト塗布に先立って基板Wの周縁部Eに被覆剤を塗布しておき、フォトレジスト塗布後にこの被覆剤を窒素ガスで吹き飛ばして被覆剤とともにフォトレジストを除去するといった処理が実行される。なお、このフォトレジストの除去処理は、基板Wの周縁部Eからフォトレジストを除去するのみならず、基板Wの周縁部Eに付着するパーティクルも同時に除去するものである。続いては、このフォトレジストの除去処理の詳細について説明する。
【0039】
図5は、フォトレジスト除去処理の動作を模式的に示す動作説明図であり、基板Wの周縁部Eの近傍の断面を拡大して示したものである。図5の「被覆剤塗布前」の欄に示すように、被覆剤Cが塗布される前(つまり、上記ステップS101〜S103の状態)における基板Wの周縁部Eには、パーティクルPが付着している。ちなみに、この基板Wの周縁部Eには、基板Wの主面Wf、Wrに垂直な平面状の端面Bpと、端面Bpの上端から基板表面Wfにかけて傾斜するフロントベベルBfと、端面Bpの下端から基板裏面Wrにかけて傾斜するバックベベルBrとが形成されている。
【0040】
そして、上記のステップS104では、この基板Wの周縁部Eに対して液状の被覆剤Cが塗布される(図5の「被覆剤塗布」の欄参照)。この際、液状の被覆剤Cは、基板Wの表面Wfから裏面Wrにかけて基板Wの周縁部Eを覆うように形成される。より具体的には、液状の被覆剤Cは、フロントベベルBfから端面Bpを介してバックベベルBrまでを完全に覆うように塗布される。これによって、基板Wの周縁部Eに付着していたパーティクルPは、液状の被覆剤Cによって覆われることとなる。
【0041】
続いて、上記のステップS105では、こうして被覆剤Cが塗布された基板Wの表面Wfに液状のフォトレジストRが塗布される(図5の「レジスト塗布」の欄参照)。これによって、基板Wの周縁部Eでは被覆剤Cの上に重ねて液状のフォトレジストRが塗布されることとなる。そして、被覆剤CおよびフォトレジストRの塗布が完了すると、上記のステップS106、S107ではこれらが硬化される。これによって、被覆剤CとフォトレジストRが互いに接着するとともに、被覆剤Cに覆われていたパーティクルPが、硬化された被覆剤Cの中に捕捉されることとなる。
【0042】
そして、上記のステップS108では、被覆剤Cの除去が実行される。具体的には、基板Wの裏面Wr側から基板Wの斜め外側に向けて噴射される窒素ガスGnが、基板裏面Wrにおいて露出する被覆剤Cの端に吹き付けられる(図5の「ガス噴射」の欄参照)。そして、被覆剤Cは、窒素ガスGnの圧力を受けて基板Wの周縁部Eから離脱した後に、窒素ガスGnによって吹き飛ばされるようにして基板Wの周縁部Eから除去される(図5の「除去」の欄参照)。この際、被覆剤Cの上に重ねて塗布されたフォトレジストRは、基板表面Wf上のフォトレジストRからちぎれて、基板Wの周縁部Eから除去される。つまり、被覆剤Cは、その内部にパーティクルPを捕捉しつつフォトレジストRとともに基板Wの周縁部Eから除去される。
【0043】
このように図5に示した一連の動作は、基板Wを回転させながら基板Wの周縁部Eに対して実行される。したがって、パーティクルPおよびフォトレジストRの除去は、基板Wの周縁部Eの全周に渡って実行されることとなる。
【0044】
以上のように、この実施形態では、基板Wの周縁部Eに液状の被覆剤Cが塗布される。これによって、基板Wの周縁部Eに付着したパーティクルP(塵)は、液状の被覆剤Cによって覆われる。そして、基板Wの周縁部Eに付着したパーティクルPを覆う被覆剤Cを硬化させることで、当該パーティクルPを硬化された被覆剤Cの内部に捕捉することができる。したがって、硬化された被覆剤Cを基板Wの周縁部Eから除去することで、併せて基板Wの周縁部EからパーティクルPを除去することができる。しかも、この実施形態では、基板Wの周縁部Eに被覆剤Cを塗布した後に、基板表面WfにフォトレジストRが塗布されるため、基板Wの周縁部Eでは、フォトレジストRは被覆剤Cの上に塗布されることとなる。したがって、基板Wの周縁部Eから被覆剤Cを除去した際には、被覆剤Cの上に塗布されたフォトレジストRも被覆剤Cとともに基板Wの周縁部Eから除去される。こうして、この実施形態では、硬化された被覆剤Cを除去することで、パーティクルPおよびフォトレジストRを基板Wの周縁部Eから同時に除去することが可能になっている。
【0045】
また、上記実施形態では、ノズル95が吹き付けた窒素ガスGnによって被覆剤Cを基板Wの周縁部Eから除去している。このようにガスの吹き付けによって基板Wの周縁部Eから被覆剤Cを除去する構成では、被覆剤Cの除去のために機械的な部材を基板Wに接触させる必要が無いため、基板Wの損傷を抑えつつ、基板Wの周縁部Eから被覆剤Cを除去することができる。
【0046】
ちなみに、窒素ガスGnの吹き付けによる被覆剤Cの除去を迅速に行うためには、被覆剤Cの端に対して効率的に窒素ガスGnを吹き付けることが好適となる。そこで、この実施形態では、基板Wの周縁部Eの表面Wfから裏面Wrにかけて被覆剤Cを塗布した上で、基板Wの裏面Wr側から窒素ガスGnを吹き付けて、被覆剤Cを基板Wの周縁部Eから除去している。このように基板Wの表面Wfから裏面Wrにかけて被覆剤Cを塗布した場合、基板表面Wf側では被覆剤Cの端はフォトレジストRに覆われて露出しないが、基板裏面Wr側では被覆剤Cの端が露出する。したがって、基板Wの裏面Wr側から基板Wの周縁部Eに窒素ガスGnを吹き付けることで、被覆剤Cの端に対して効率的に窒素ガスGnを吹き付けることができ、その結果、被覆剤Cの除去を迅速に行うことが可能となる。
【0047】
<その他>
このように、上記実施形態では、基板処理装置1が本発明の「基板処理装置」に相当し、ノズル91、調整バルブ92および液状被覆剤供給源93が協働して本発明の「被覆剤塗布手段」として機能し、ノズル81、調整バルブ82およびフォトレジスト供給源83が協働して本発明の「レジスト塗布手段」として機能し、光照射部94が本発明の「被覆剤硬化手段」に相当し、ノズル95、調整バルブ96および窒素ガス供給源97が協働して本発明の「除去手段」として機能し、基板Wが本発明の「基板」に相当し、被覆剤Cが本発明の「被覆剤」に相当し、フォトレジストRが本発明の「レジスト」に相当する。また、支持テーブル4が本発明の「基板保持部」に相当し、ノズル91が本発明の「被覆剤吐出ノズル」に相当し、ノズル95が本発明の「ガス噴出ノズル」に相当し、窒素ガスGnが本発明の「ガス」に相当する。また、ステップS104の液所被覆剤塗布が本発明の「被覆剤塗布工程」に相当し、ステップS105のフォトレジスト塗布が本発明の「レジスト塗布工程」に相当し、ステップS106の被覆剤硬化が本発明の「被覆剤硬化工程」に相当し、ステップS108の被覆剤除去が本発明の「除去工程」に相当する。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、窒素ガスGnを噴射して被覆剤Cの除去を実行していた。しかしながら、被覆剤Cの除去のために噴射されるガスは窒素ガスGnに限られず、例えば空気でも良い。
【0049】
また、上記実施形態では、窒素ガスGnを基板裏面Wr側から吹き付けて、被覆剤Cの除去を行っていた。しかしながら、窒素ガスGnを基板表面Wf側から吹き付けるように構成することもできる。この場合であっても、例えば窒素ガスGnを吹き付ける圧力や角度等を適宜調整することで、被覆剤Cの除去を行うことができる。
【0050】
また、被覆剤Cの除去を実行する具体的方法は、上述のようなガスの噴射に限られない。具体的には、例えば特開2009−123764号公報に記載されているような半導体基板のベベルを洗浄するブラシを、ステップS108において基板Wの周縁部Eに接触させて、被覆剤Cの除去を行なっても良い。あるいは、このブラシに代えて、粘着剤層が外周面に形成された粘着ローラーを、ステップS108において基板Wの周縁部Eに接触させて、粘着ローラーの粘着力によって被覆剤Cの除去を行なっても良い。さらには、これらを組み合わせることもできる。具体的には、ガス噴射とブラシとを併用したり、ガス噴射と粘着ローラーとを併用したりすることができる。また、被覆剤Cを機械的な部材によって掴んで除去するように構成することもできる。
【0051】
また、上記実施形態では、フォトレジストRを硬化させた後に、被覆剤Cの除去を行っていた。しかしながら、フォトレジストRを硬化させる前に、被覆剤Cの除去を行うように構成しても良い。この場合であっても、被覆剤Cの上に重ねて塗布された液状のフォトレジストRを、被覆剤Cとともに基板Wの周縁部Eから除去することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、光硬化性の被覆剤Cが用いられていた。しかしながら、これに代えて、例えば熱硬化性の被覆剤Cを用いることもできる。この場合、ステップS106において、液状の被覆剤Cを加熱することで、被覆剤Cを硬化させれば良い。さらには、ヒーター41によってフォトレジストRの硬化と被覆剤Cの硬化を並行して行うように構成しても良い。これによって、これらの処理を効率的に実行することが可能となる。
【0053】
あるいは、ステップS106において、被覆剤Cの溶剤を揮発させることで、被覆剤Cを硬化させても良い。また、この場合においても、ヒーター41によってフォトレジストRの硬化と被覆剤Cの硬化(つまり、溶剤の揮発の促進)を並行して行って、これらの処理を効率的に実行するように構成しても良い。
【0054】
また、上記実施形態において図3のフローチャートに示したステップの順序は一例であって、適宜変更可能である。したがって例えば、ステップS106(被覆剤硬化)とステップS107(フォトレジスト硬化)の順序を入れ換えたり、これらを並行して行ったりしても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、半導体基板である基板Wに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、本発明を適用可能な基板Wの種類は半導体基板に限られない。
【0056】
また、上記実施形態では、平面(支持平面4f)で基板Wを支持していたが、基板Wの支持態様はこれに限られない。したがって、例えば多数のピンで基板Wを支持するように構成しても良い。
【0057】
また、粘着シート5から基板Wを剥離する際に圧入する気体の種類は、上述の窒素ガスに限られず、例えば空気であっても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、通気孔5aを貫通形成することで粘着シート5の通気性を確保していた。しかしながら、このような通気孔5aを形成する代わりに、多孔質性の材料で粘着シート5を構成することで、粘着シート5の通気性を確保しても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、支持平面4fに開口する複数の配管口4aは、いずれも吸引ポンプ72と窒素ガス供給源74の両方が接続されており、気体の吸引および圧入の両方を実行できるものであった。しかしながら、吸引ポンプ72が接続されて気体の吸引を行う吸引用配管口4a(通気口)と、窒素ガス供給源74が接続されて気体の圧入を行う圧入用配管口4a(通気口)とを別々に支持平面4fに開口して形成しても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、粘着シート5を介して支持テーブル4に基板Wを載置するスピンチャック機構によって基板Wを固定する場合について説明した。しかしながら、基板Wを固定する方法はこれに限られない。そこで、例えば粘着シート5を用いない機構によって基板Wを固定するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般に付着したパーティクル等の汚染物質を除去する基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…基板処理装置
4…支持テーブル
41…ヒーター
8…フォトレジスト塗布機構
81…ノズル
82…調整バルブ
83…フォトレジスト供給源
9…レジスト除去機構
91…ノズル
92…調整バルブ
93…液状被覆剤供給源
94…光照射部
95…ノズル
96…調整バルブ
97…窒素ガス供給源
W…基板
E…周縁部E
C…被覆剤
R…フォトレジスト
P…パーティクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部に液状の被覆剤を塗布する被覆剤塗布手段と、
前記周縁部に前記被覆剤が塗布された前記基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布手段と、
前記被覆剤を硬化させる被覆剤硬化手段と、
前記被覆剤硬化手段により硬化された前記被覆剤を、前記被覆剤の上に塗布された前記レジストとともに前記基板の前記周縁部から除去する除去手段と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記被覆剤塗布手段は、前記基板を水平に保持しつつ回転する基板保持部と、前記基板の前記周縁部に液状の前記被覆剤を吐出する被覆剤吐出ノズルとを有し、前記基板保持部に伴って回転する前記基板の前記周縁部に前記被覆剤吐出ノズルから液状の前記被覆剤を吐出する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記除去手段は、前記基板の前記周縁部にガスを吹き付けるガス噴出ノズルを有し、前記ガス噴出ノズルが吹き付けた前記ガスによって前記被覆剤を前記基板の前記周縁部から除去する請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記被覆剤塗布手段は、前記基板の前記周縁部の前記表面から裏面にかけて前記被覆剤を塗布し、前記除去手段の有する前記ガス噴出ノズルは、前記基板の裏面側から前記ガスを吹き付けて、前記被覆剤を前記基板の前記周縁部から除去する請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記被覆剤は、熱硬化性の性質を有しており、前記被覆剤硬化手段は、液状の前記被覆剤を加熱することで、前記被覆剤を硬化させる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記被覆剤は、光硬化性の性質を有しており、前記被覆剤硬化手段は、液状の前記被覆剤に光を照射することで、前記被覆剤を硬化させる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板の周縁部に液状の被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程と、
前記被覆剤塗布工程で、前記周縁部に前記被覆剤が塗布された前記基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
前記被覆剤を硬化させる被覆剤硬化工程と、
前記被覆剤硬化工程で硬化された前記被覆剤を、前記被覆剤の上に塗布された前記レジストともに前記基板の前記周縁部から除去する除去工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74126(P2013−74126A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212220(P2011−212220)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】