説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の表面に付着する付着物を効率良く除去する。
【解決手段】氷体532がDIWの液膜LFを介して基板Wの表面Wfに近接した状態で0℃よりも低い温度に冷却された窒素ガスが氷体532の下面の外周縁近傍に供給され、基板Wの表面Wfと氷体532とに挟まれるDIWが凝固して凝固領域FRが形成される。これによって、凝固領域FRでは、氷結の形成による体積膨脹によって基板Wの表面Wfに対するパーティクルPTなどの付着物の付着力が弱まるとともに、付着物が凝固領域FRに取り込まれる。そして、凍結ヘッド53が基板Wに対して相対移動することで凝固領域FRが基板Wの表面Wfから剥離され、パーティクルPTも一緒に基板Wの表面Wfから除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板の表面に付着する付着物を除去する基板洗浄技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板からパーティクルなどの付着物を除去するために種々の技術が提案されており、そのうちの1つとして、例えば特許文献1では洗浄用氷体を用いる技術が記載されている。この特許文献1に記載の装置は、回転する基板の周縁部に対して洗浄用氷体を接触させることで、基板に対する氷体の摩擦作用および氷体の溶融液によって基板の周縁部に付着する付着物を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように特許文献1に記載された洗浄技術は基板の周縁部を洗浄対象とするものであるが、その洗浄技術を基板の表面を洗浄する装置にそのまま適用することも可能である。そこで、本願発明者は、特許文献1に記載された洗浄技術を用いて基板の表面を洗浄し、洗浄効率としてパーティクル除去効率(Particle Removal Efficiency:PRE)を計測したところ、期待した効果が得られず、従来より多用されている基板洗浄技術と同程度のPREしか得られなかった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の表面に付着する付着物を効率良く除去することができる基板洗浄技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するために、表面に液体が付着した基板に対し、液体を介して近接する近接体と、基板の表面と近接体とに挟まれる液体を凝固させて凝固体を形成する凝固手段と、凝固体によって基板の表面と一体化された近接体を基板に対して相対的に移動させることで、凝固体を近接体と一体化させたまま基板の表面から剥離させる駆動部とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するために、表面に液体が付着した基板に対し、液体を介して近接体を近接させる工程と、基板の表面と近接体とに挟まれる液体を凝固させて凝固体を形成することで、凝固体を介して基板の表面および近接体と一体化させる工程と、近接体を凝固体と一体化させたまま基板に対して相対移動させて凝固体を基板の表面から剥離させる工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理装置および基板処理方法)では、近接体が液体を介して基板の表面に近接した状態で基板の表面と近接体とに挟まれる液体が凝固して凝固体が形成される。これによって、凝固体が形成された基板の表面領域では、凝固体の形成による体積膨脹によって基板の表面に対するパーティクルなどの付着物の付着力が弱まるとともに、付着物が凝固体と一体化される。そして、この凝固体が基板の表面から剥離されることで付着物も一緒に基板の表面から除去される。
【0009】
ここで、液体を介して基板の表面に近接する近接体の近接面については、基板の表面よりも狭くなるように構成してもよい。このように近接面の面積を小さくすることで凝固体を介して基板の表面に対して近接体が接着する面積も小さくなる。このため、近接体を基板に対して相対移動させて近接体を基板の表面から剥離する際に、基板に対して過大な応力がかかるのを防止することができ、基板にダメージを与えるのを防止することができる。
【0010】
また、凝固手段として、近接面の外周縁の近傍に液体の凝固点よりも低い温度の冷却ガスを供給して凝固体を形成する冷却ガス供給部を用いてよく、この場合、近接面と基板の表面との間に挟まれた液体は冷却ガスにより直接的に冷却されて凝固される。また、別の凝固手段として、液体の凝固点よりも低い温度に近接体を冷却する近接体冷却部を用いてもよく、この場合、近接体の温度低下によって近接面と基板の表面との間に挟まれた液体は冷却されて凝固される。このように種々の冷却態様で凝固体を形成することが可能である。
【0011】
また、近接面が基板の表面よりも狭い場合には、凝固体の形成と駆動部による近接体の相対移動とを並行または交互に繰り返して行うことで、付着物が除去される基板の表面領域が広がり、基板の表面全体から付着物を除去することができる。
【0012】
また、凝固体を形成するときに冷剤供給部から基板の裏面に冷剤を供給して基板の温度を低下させてもよく、これによって凝固体の体積膨脹が増大されて基板表面からの付着物の除去が促進され、除去率をさらに向上させることができる。
【0013】
また、基板の表面に液体を供給して付着させる液体供給部をさらに設けてもよく、液体供給部によって例えば基板の表面全体に液体の液膜を形成してもよい。
【0014】
さらに、液体としては水を用いてもよく、この場合、近接体を氷体で構成することで凝固手段によって形成される凝固体、つまり氷結体は氷体としっかりと一体化される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、基板の表面と近接体とに挟まれる液体を凝固させて凝固体を形成し、この凝固体と一体化された近接体を基板に対して相対移動させて凝固体を基板の表面から剥離するため、基板の表面に付着する付着物を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の部分平面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】凍結・剥離処理を模式的に示す図である。
【図6】本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図7】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の部分平面図である。さらに、図3は図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着したパーティクルなどの汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。なお、図1および図2では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示される。
【0018】
この基板処理装置は、基板Wよりも若干大きな平面サイズを有するスピンベース11を有している。また、スピンベース11の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン12が立設されている。チャックピン12は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース11の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン12は、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン12は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間で切り替え可能となっており、装置全体を制御する制御ユニット2からの動作指令に応じて状態切替が実行される。
【0019】
より詳しくは、スピンベース11に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン12を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン12を押圧状態とする。各チャックピン12を押圧状態とすると、各チャックピン12は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース11から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向けた状態で保持される。このように本実施形態では、スピンベース11とチャックピン12とで基板Wを保持しているが、基板保持方式はこれに限定されるものではなく、例えば基板Wをスピンチャックなどの吸着方式により保持するようにしてもよい。
【0020】
スピンベース11には、図1に示すように、回転軸31が連結されている。この回転軸31はベルト32を介してモータ33の出力回転軸34と連結されている。そして、制御ユニット2からの制御信号に基づきモータ33が作動すると、そのモータ駆動に伴って回転軸31が回転する。これによって、スピンベース11の上方でチャックピン12により保持されている基板Wはスピンベース11とともに回転軸心Pa回りに回転する。
【0021】
こうして回転駆動される基板Wの表面Wfに対してDIW(deionized water:脱イオン水)を供給するためのDIW吐出ノズル41がスピンベース11の上方位置に配置されている。このDIW吐出ノズル41に対してDIW供給部42が開閉バルブ43を介して接続されている。この開閉バルブ43は常時閉成されており、後述するように基板WへのDIWの液膜形成時および基板Wのリンス処理時には制御ユニット2からの開指令に応じて開閉バルブ43が開成する。また、このDIW吐出ノズル41は水平に延設された第1アーム44の先端部に取り付けられている。この第1アーム44の後端部が、鉛直方向Zに延設された回転軸45により回転中心軸J1周りに回転自在に支持されている。そして、回転軸45に対してノズル駆動機構46が連結されており、制御ユニット2からの動作指令に応じて回転軸45が回転中心軸J1周りに回転駆動されて第1アーム44の先端部に取り付けられたDIW吐出ノズル41が図2の点線に示すように基板表面Wfの上方側で移動し、また同図の実線に示すように基板Wから離れた待機位置に移動する。
【0022】
また本実施形態では、第1アーム44の他に、第2アーム52が水平に延設されており、その先端部には凍結ヘッド53が取り付けられる一方、後端部にはヘッド駆動機構51が連結されている。このヘッド駆動機構51は図1に示すように回転モータ511を有している。そして、回転モータ511の回転軸512がアーム部材52の後端部に連結されており、制御ユニット2からの制御信号に応じて回転モータ511が作動すると、回転中心J2の周りにアーム部材52が揺動して凍結ヘッド53を基板Wの表面中央部の上方位置と退避位置との間で往復移動させる。なお、本明細書では、凍結ヘッド53が退避位置から基板Wの表面中央部の上方位置に移動する動作および方向をそれぞれ「往路動作」および「往路方向」と称する一方、逆に基板Wの表面中央部の上方位置から退避位置に移動する動作および方向をそれぞれ「復路動作」および「復路方向」と称する。
【0023】
回転モータ511を搭載している昇降ベース514は、立設されたガイド515に摺動自在に嵌め付けられているとともに、ガイド515に並設されているボールネジ516に螺合されている。このボールネジ516は、昇降モータ517の回転軸に連動連結されている。また、この昇降モータ517は制御ユニット2からの制御信号に応じて作動してボールネジ516を回転させて凍結ヘッド53を上下方向に昇降させる。このように、ヘッド駆動機構51は凍結ヘッド53を昇降および往復移動させる機構である。
【0024】
この凍結ヘッド53は、氷体ホルダ531、氷体532および冷却ガス吐出ノズル533を有している。凍結ヘッド53では、第2アーム52の先端部に固着された氷体ホルダ531により柱状の氷体532の上端が保持されており、氷体ホルダ531から氷体532が鉛直方向Zに垂下している。そして、上記往路動作により凍結ヘッド53が基板Wの表面中央部の上方に位置決めされ、さらに下降されると、氷体532の下面が基板表面Wfに近接する。また、氷体532に対して復路方向の上流側で、冷却ガス吐出ノズル533が第2アーム52の先端部に取り付けられており、その冷却ガス吐出ノズル533の吐出口は氷体532の下面の外周縁近傍に向けられている。この冷却ガス吐出ノズル533に対して冷却窒素ガス供給部54が開閉バルブ55を介して接続されている。この開閉バルブ55は常時閉成されており、後述するように凍結・剥離処理を行う間、制御ユニット2からの開指令に応じて開閉バルブ55が開成し、0℃よりも低い温度に冷却された冷却窒素ガスを近接部に吐出する。
【0025】
また、液膜形成処理、凍結・剥離処理およびリンス処理などの基板処理装置による各種処理を行っている間に、DIWが基板Wおよびスピンベース11の周辺に飛散するのを防止すべく、飛散防止カップ61がスピンベース11を取り囲むように設けられている。すなわち、制御ユニット2からの制御信号に応じてカップ昇降駆動機構62がカップ61を所定位置に位置決めすることで、図1に示すようにカップ61はスピンベース11およびチャックピン12で保持された基板Wを側方位置から取り囲み、スピンベース11および基板Wから飛散するDIWを捕集可能となっている。
【0026】
なお、装置全体を制御する制御ユニット2は、主として、CPU(Central Processing Unit)21と、RAM(Random Access Memory)22と、ROM(Read Only Memory)23と、モータ33、DIW供給部42や冷却窒素ガス供給部54などを駆動制御する駆動制御部24とを有している。これらのうちROM23は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、装置各部を制御するためのプログラムを格納している。そして、CPU21がROM23に格納されているプログラムに従って装置各部を制御することによって装置は次に説明する基板処理動作を実行する。
【0027】
図4は図1に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット2が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の処理が実行される。ここでは、予め基板Wが表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが基板処理装置にローディングされ、チャックピン12によって保持される。
【0028】
基板Wの搬入後、制御ユニット2はチャック回転機構22を駆動させてスピンベース11を回転させるとともに、ノズル駆動機構46によって第1アーム42を回動させてノズル41を基板Wの回転軸心Pa近傍に移動し、ノズル41の吐出口(図示省略)を基板表面Wfの回転中心部に向けて位置決めする。そして、制御ユニット2はDIW供給部42および開閉バルブ43を制御してDIW供給部42からDIWをノズル41から吐出させる。基板表面Wfの中央部に供給されたDIWは基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板表面Wfの全面にわたってDIWの液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜LFが形成される(液膜形成処理:ステップS1)。なお、液膜形成に際して、上記のように基板表面Wfに供給されたDIWを振り切ることは必須の要件ではない。例えば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板表面Wfに液膜LFを形成してもよい。なお、本実施形態では、ノズル41を基板表面Wfに向けたまま次のステップS2に進むが、液膜形成完了後、第1アーム42を逆方向に回動させてノズル41を基板Wの上方位置から退避位置(図2の実線位置)に移動させておき、後述するようにリンス処理を行う際に、再びノズル41を移動させて位置決めしてもよい。
【0029】
次のステップS2では、制御ユニット2はヘッド駆動機構51によって第2アーム52を往路方向に回動させて凍結ヘッド53を基板表面Wの回転中心部の直上位置に移動させ、氷体532の下面を基板表面Wfの中央部と対面させるとともに、図2に示すように冷却ガス吐出ノズル533を氷体532に対して復路方向の上流側に位置させる。そして、制御ユニット2はさらにヘッド駆動機構51を制御して第2アーム52全体を下降させて、氷体532の下面を液膜LFを介して基板表面Wfの回転中心部と近接させる。また、これと同時あるいは若干遅れて制御ユニット2は冷却窒素ガス供給部54および開閉バルブ55を制御して冷却ガス吐出ノズル533からの冷却窒素ガスの吐出を開始する(ステップS3)。こうして、凍結・剥離処理が開始される。
【0030】
図5は凍結・剥離処理を模式的に示す図である。この凍結・剥離処理(ステップS4)では、同図(a)に示すように、冷却窒素ガスの供給によって氷体532の復路方向(同図中の白抜き矢印で示す方向RD)の上流側部分でDIWが凍結して凝固領域FRが形成され、当該凝固領域FRを介して氷体532が基板表面Wfと一体化される。このとき、この凝固領域FRの形成時の体積膨脹によって凝固領域FRで基板表面Wfに付着しているパーティクルPTは基板表面Wfから剥離されるとともに凝固領域FR内に取り込まれる。
【0031】
また、凍結・剥離処理では、基板Wが回転軸心Pa回りに回転するのに対し、凍結ヘッド53が復路方向RDに移動するため、凝固領域FRは氷体532と一体化されたまま移動し、基板表面Wfから剥離される。その結果、同図(b)に示すように、基板表面Wfに付着していたパーティクルPTは元の付着位置(点線で示す位置)から離間して基板表面Wfから除去される。
【0032】
凍結ヘッド53の移動によって凝固領域FRの下方部は基板表面Wfとの摩擦によってDIWに戻るが、本実施形態では凍結ヘッド53の移動と窒素ガス供給とは同時に行っているため、同図(c)に示すように、窒素ガス供給によって摩擦によって溶融したDIWは新たに窒素ガスが供給された領域のDIWと一緒に凝固されて新たな凝固領域FRが形成される。この凝固領域FRにおいても、先の凝固領域FRと同様に、凝固領域FRの形成時の体積膨脹によって凝固領域FRで基板表面Wfに付着している別のパーティクルPTが基板表面Wfから剥離されるとともに凝固領域FR内に取り込まれる。そして、復路方向RDへの凍結ヘッド53の移動により、同図(d)に示すように、基板表面Wfに付着していたパーティクルPTは元の付着位置(点線で示す位置)から離間して基板表面Wfから除去される。
【0033】
このように、氷体532を液膜LFを介して基板表面Wfに近接させるとともに0℃よりも低い温度に冷却された窒素ガスを氷体532の下面の外周縁近傍に供給しながら、凍結ヘッド53を基板Wに対して相対移動させているため、上記した凍結動作と剥離動作が繰り返されて基板表面Wfに付着するパーティクルが基板表面Wfから除去される。この凍結・剥離処理は、基板表面Wfの全体に対して実行されるまで、つまり制御ユニット2がステップS5で「YES」と判断するまで、継続される。
【0034】
こうして、凍結・剥離処理が完了すると、制御ユニット2は開閉バルブ55を閉成して窒素ガスの吐出を停止するとともに開閉バルブ43を開成してDIWを基板表面Wfに供給する。DIW吐出ノズル41から供給されたDIWは遠心力によって流水となって基板表面Wfに広がり、その流水の一部は氷体532の下面に達して氷体532と基板表面Wfとの間に形成された凝固体を解凍する(ステップS6)。それに続いて、制御ユニット2はヘッド駆動機構51によって凍結ヘッド53を基板Wから離れた退避位置に移動させる(ステップS7)。
【0035】
また、ノズル41からのDIW供給を継続させて基板表面Wfに対してリンス処理を施し、凍結・剥離処理によって基板表面Wfから除去されたパーティクルをDIWとともに基板表面Wfから洗い流す(ステップS8)。このリンス処理が完了すると、制御ユニット2は開閉バルブ43を閉成してDIW供給を停止するとともに、ノズル駆動機構46によってノズル41を基板Wから離れた退避位置に移動させた後、スピン乾燥させる(ステップS9)。
【0036】
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、凍結・剥離処理を実行することで基板表面Wfに付着するパーティクルPTなどの付着物を効果的に除去することができ、パーティクル除去効率(PRE)を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、図1や図2から明らかなように、氷体532の下面は基板Wの表面Wfよりも狭く、氷体532と基板表面Wfとの間でDIWを凍結して形成される凝固領域FRも小さい。その結果、当該凝固領域FRを介して基板Wの表面Wfに対して氷体532が接着する面積も小さく、凝固領域FRを基板表面Wfから剥離する際に、基板Wに対して過大な応力がかかることなく、基板Wにダメージを与えるのを防止することができる。なお、上記のように凝固領域FRを小さく制限しているものの、基板Wに対して凍結ヘッド53を相対移動させて基板表面Wfの全体に対して凍結・剥離処理を施しているため、基板表面Wfをもれなく洗浄することができる。
【0038】
このように第1実施形態では、DIWが本発明の「液体」に相当するとともに、氷体532およびその下面がそれぞれ本発明の「近接体」および「近接面」に相当している。また、氷体532と基板表面Wfとの間にDIWを冷却窒素ガス供給部54からの冷却窒素ガスにより凝固させており、冷却窒素ガス供給部54がそれぞれ本発明の「凝固手段」および「冷却ガス供給部」に相当している。また、モータ33により基板Wを回転させるとともにヘッド駆動機構51により凍結ヘッド53を往復移動させており、これらが本発明の「駆動部」として機能している。さらに、DIW供給部42が本発明の「液体供給部」に相当している。
【0039】
図6は本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、基板Wの裏面Wbに対して基板Wを冷却する冷剤を供給する点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。そこで、同一構成については、同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に図6を参照しつつ説明する。
【0040】
この第2実施形態では、回転軸31は中空軸であり、その内部には、基板Wの裏面Wbに冷剤およびDIWを供給するための供給管35が挿通され、チャックピン12に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けて冷剤およびリンス用DIWを吐出する下面ノズル37が設けられている。この供給管35には冷剤供給部71が接続されている。そして、凍結・剥離処理を実行する際に、制御ユニット2からの開閉指令に応じて開閉バルブ72を開成することで基板Wを冷却する冷剤が冷剤供給部71から開閉バルブ72、供給管35および下面ノズル37を介して基板Wの裏面Wbに供給される。これによって、凍結・剥離処理中に基板Wが冷却されて凝固領域FRの体積膨脹が増大してパーティクルPTの除去率を向上させることができる。
【0041】
なお、冷剤としては、凝固点の低いものが好適であり、例えばIPA(イソプロピルアルコール:isopropyl alcohol、凝固点:−89.5℃)、エチルアルコール(凝固点:−114.5℃)、メチルアルコール(凝固点:−98℃)およびこれらとDIWとを混合させた混合液がある。また、凍結・剥離処理に続くリンス処理によりDIWと併存することとなるため、冷剤を分離回収して再利用を可能とするためにはDIWと不溶なものを用いるのが好適であり、例えばHFE(Hydrofluoroether:ハイドロフルオロエーテル)を主成分とするHFE液、より具体的には住友スリーエム株式会社製の商品名ノベック(登録商標)7100(凝固点:−135゜C)を用いることができる。なお、HFE液としては、同製の商品名ノベック(登録商標)シリーズのHFE、つまりノベック7200、ノベック7300などを用いることができる。
【0042】
また、供給管35には、冷剤供給部71以外に、開閉バルブ73を介してDIW供給部42が接続されており、リンス処理時には、制御ユニット2からの開指令に応じて開閉バルブ73を開成することでDIWがリンス液として開閉バルブ73、供給管35および下面ノズル37を介して基板Wの裏面Wbに供給される。
【0043】
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様にして凍結・剥離処理を実行しており、同様の作用効果が得られるが、凍結・剥離処理中に基板Wの裏面Wbに冷剤が供給されるため、パーティクル除去効率をさらに向上させることができる。
【0044】
図7は本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、凍結態様であり、その他の構成は基本的に同一である。すなわち、第3実施形態では、氷体532に対して冷剤を供給することで氷体532の温度を低下させて凍結・剥離処理を行う。より詳しくは、図7に示すように、氷体532の内部に対して冷剤供給管534の一方端部が挿入されるとともに、その他方端部は冷剤供給部74に接続されており、制御ユニット2からの開指令に応じて開閉バルブ535を開成することで冷剤供給部74からの冷剤を氷体532に供給して氷体532の温度を低下させる。これによって、同図(a)に示すように、氷体532の下面直下のDIWが凍結されて凝固領域FRが形成される。これによって、当該凝固領域FRを介して氷体532が基板表面Wfと一体化され、このときの凝固領域FRの体積膨脹によって凝固領域FRで基板表面Wfに付着しているパーティクルPTは基板表面Wfから剥離されるとともに凝固領域FR内に取り込まれる。また、凍結ヘッド53が復路方向RDに移動することで、凝固領域FRは氷体532と一体化されたまま移動し、基板表面Wfから剥離される。その結果、同図(b)に示すように、基板表面Wfに付着していたパーティクルPTは元の付着位置(点線で示す位置)から離間して基板表面Wfから除去される。
【0045】
以上のように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に凍結・剥離処理によって同様の作用効果が得られる。この第3実施形態では、冷剤供給部74が本発明の「近接体冷却部」に相当している。
【0046】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、DIWを本発明の「液体」として用いるとともに氷体532を本発明の「近接体」として用いて凍結・剥離処理を実行しているが、液体と近接体との組み合わせはこれに限定されるものではない。
【0047】
近接体として、基板Wに対する凝固領域FRの付着力(上記実施形態では、着氷力)よりも高い付着力(着氷力)を有する材料で近接体を構成することができる。例えば、本発明の「液体」としてDIWを用い、基板Wがシリコン基板である場合について考察する。シリコン基板の着氷力を計測したところ、3.3[kgf/cm]であるため、これよりも着氷力が大きな材料により近接体を構成してもよい。例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート:Polymethyl methacrylate)などの樹脂材料や板ガラスなどを用いることができる。
【0048】
また、本発明の「液体」としては、DIW以外に大気圧下で常温付近に融点を有する物質、例えばtert−ブチルアルコール(tert-butyl alcohol、融点:25℃)、炭酸エチレン(ethylene carbonate、融点:34〜37℃)などを用いることができる。
【0049】
また、上記実施形態での凍結・剥離処理では、凝固領域FRの形成と、基板Wに対する凍結ヘッド53の相対移動とをともに連続的に実行しているが、これらを交互に繰り返すことで凍結・剥離処理を行ってもよい。
【0050】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、DIWを凍結して凝固領域FRを形成するために冷却窒素ガスを用いているが、ガス種についてはこれに限定されるものではなく、酸素ガスや二酸化炭素ガスなどの一般的な基板処理プロセスで用いられる冷却ガスを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板などの基板の表面に付着する付着物に除去する基板処理装置および方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
51…ヘッド駆動機構
53…凍結ヘッド
54…冷却窒素ガス供給部(冷却ガス供給部)
71…冷剤供給部
74…冷剤供給部(近接体冷却部)
532…氷体(近接体)
FR…凝固領域
LF…液膜
PT…パーティクル
W…基板
Wb…(基板の)裏面
Wf…(基板の)表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に液体が付着した基板に対し、前記液体を介して近接する近接体と、
前記基板の表面と前記近接体とに挟まれる液体を凝固させて凝固体を形成する凝固手段と、
前記凝固体によって前記基板の表面と一体化された前記近接体を前記基板に対して相対的に移動させることで、前記凝固体を前記近接体と一体化させたまま前記基板の表面から剥離させる駆動部と
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記近接体は、前記液体を介して前記基板の表面に近接する近接面を有しており、
前記近接面は前記基板の表面よりも狭い基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記凝固手段は、前記近接面の外周縁の近傍に前記液体の凝固点よりも低い温度の冷却ガスを供給して前記凝固体を形成する冷却ガス供給部を有する基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記凝固手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度に前記近接体を冷却する近接体冷却部を有する基板処理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の基板処理装置であって、
前記凝固体の形成と、前記駆動部による前記近接体の相対移動とを並行または交互に繰り返して行う基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記凝固手段により凝固体を形成するときに前記基板の裏面に冷剤を供給して前記基板の温度を低下させる冷剤供給部をさらに備える基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記基板の表面に前記液体を供給して付着させる液体供給部をさらに備える基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記液体は水であり、前記近接体は氷体である基板処理装置。
【請求項9】
表面に液体が付着した基板に対し、前記液体を介して近接体を近接させる工程と、
前記基板の表面と前記近接体とに挟まれる液体を凝固させて凝固体を形成することで、前記凝固体を介して前記基板の表面および前記近接体と一体化させる工程と、
前記近接体を前記凝固体と一体化させたまま前記基板に対して相対移動させて前記凝固体を前記基板の表面から剥離させる工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74232(P2013−74232A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213937(P2011−213937)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】