説明

基板処理装置および方法

【課題】処理対象基板の一面の基板処理領域のみを簡単かつ迅速に基板処理溶液で処理することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置100は、溶液保持容器130に収容されている基板処理溶液TLに処理対象基板PBが浸漬される。このような状態の処理対象基板PBの基板処理領域TSに溶液供給機構が基板処理溶液TLを圧送するとともに吸引する。このため、処理対象基板PBの一面の基板処理領域TSは圧送されるとともに吸引される基板処理溶液TLにより処理されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板などの処理対象基板を基板処理溶液で処理する基板処理装置に関し、特に、処理対象基板の一面の基板処理領域のみ処理する基板処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体回路の製造工程の一つとしてプリント配線基板などの処理対象基板を基板処理溶液で処理することがある。ただし、処理対象基板の一面の基板処理領域のみ処理したい場合には、例えば、処理しない他面を基板支持治具などで密閉し、処理しない基板処理領域の周囲を封止材で封止することになる。
【0003】
現在、上述のような基板処理装置として各種の提案がある(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−052702号公報
【特許文献2】特開2005−286162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように処理対象基板の処理しない他面を基板支持治具などで密閉することや、処理しない基板処理領域の周囲を封止材で封止することは、作業が煩雑で半導体回路の生産性を低下させることになる。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、処理対象基板の一面の基板処理領域のみを簡単かつ迅速に処理することができる基板処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板処理装置は、基板処理溶液を収容していて処理対象基板が浸漬される溶液保持容器と、浸漬された処理対象基板の一面の基板処理領域に基板処理溶液を圧送するとともに吸引する溶液乱流機構と、を有する。
【0008】
従って、本発明の基板処理装置では、溶液保持容器に収容されている基板処理溶液に処理対象基板が浸漬される。このような状態の処理対象基板の基板処理領域に溶液供給機構が基板処理溶液を圧送するとともに吸引する。このため、処理対象基板の一面の基板処理領域は圧送されるとともに吸引される基板処理溶液により処理されることになる。
【0009】
また、上述のような基板処理装置において、溶液乱流機構は、複数の溶液吐出口から基板処理溶液を処理対象基板の一面の基板処理領域に圧送するとともに複数の溶液吸引口から基板処理溶液を吸引してもよい。
【0010】
また、上述のような基板処理装置において、溶液乱流機構は、溶液吐出口と溶液吸引口とが所定の順番に配列されていてもよい。
【0011】
また、上述のような基板処理装置において、溶液乱流機構は、溶液吐出口と溶液吸引口とが交互に配列されていてもよい。
【0012】
また、上述のような基板処理装置において、溶液保持容器の基板処理溶液に浸漬された処理対象基板を上下方向に揺動させる基板揺動機構を、さらに有してもよい。
【0013】
また、上述のような基板処理装置において、処理対象基板が挿入される挿入口が上面に形成されているとともに基板処理領域が露出する開口孔が一面に形成されているボックス状の基板保持部材と、基板保持部材の他面内側に配置されていて挿入された処理対象基板を開口孔の外周内面に圧接させる拡縮自在なバルーン部材と、を有してもよい。
【0014】
本発明の基板処理方法は、溶液保持容器に収容されている基板処理溶液に基板保持部材を浸漬させ、浸漬された基板処理領域の一面に基板処理溶液を圧送するとともに吸引する。
【0015】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板処理装置では、処理対象基板の一面の基板処理領域は圧送されるとともに吸引される基板処理溶液により処理されることになる。このため、乱流となる基板処理溶液により処理対象基板の一面の基板処理領域のみを簡単かつ迅速に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の基板処理装置を示す模式的な分解斜視図である。
【図2】基板処理装置の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図3】基板処理装置の構造を示す模式的な正面図である。
【図4】基板処理装置の基板保持部材に処理対象基板をセットする工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように上下方向以外にも前後左右の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0019】
本発明の基板処理装置100は、図1に示すように、基板処理溶液TLを収容していて処理対象基板PBが浸漬される溶液保持容器130と、浸漬された処理対象基板PBの一面OFの基板処理領域TSに基板処理溶液TLを圧送するとともに吸引する溶液乱流機構151と、を有する。
【0020】
処理対象基板PBは、一面OFの基板処理領域TSのみ基板処理溶液TLで処理されるものであり、その処理としては、例えば、バンプめっき(絶縁層にビアがあきその底部に顔を出している通電層を起点に、ビアを電解銅/Ni/半田めっきでボトムアップする)や無電解金めっき(半田ボール搭載ランド)等がある。処理対象基板PBは、例えば、500×500mmなどに形成されている。
【0021】
基板処理溶液TLは、例えば、処理が前述したバンプめっきの場合、硫酸銅/Ni/半田、などが利用され、電解めっきの場合は、シアン金などが利用される。これら薬液は処理したくない部分に接液するだけで無用な腐食溶解、また無用なめっき膜が付くなど、不具合が発生する。
【0022】
基板保持部材110および溶液保持容器130は、耐薬性と剛性とが必要となるため、例えば、PVC(polyvinyl chloride)などのエンジニアリングプラスチック等で形成されている。
【0023】
溶液乱流機構151は、複数の溶液吐出口152から基板処理溶液TLを処理対象基板PBの一面OFの基板処理領域TSに圧送するとともに複数の溶液吸引口153から基板処理溶液TLを吸引する。この溶液乱流機構151は、溶液吐出口152と溶液吸引口153とが交互に配列されている。
【0024】
なお、ここでは横長のスリット状の溶液吐出口152を上下方向に配列しているが、例えば、内径1〜5mmの円形の溶液吐出口を、間隔1〜20mmで行列形状や千鳥形状に配列させて形成してもよい(図示せず)。
【0025】
さらに、本実施の形態の基板処理装置100は、図1ないし図4に示すように、処理対象基板PBが挿入される挿入口112が上面に形成されているとともに基板処理領域TSが露出する開口孔111が一面に形成されているボックス状の基板保持部材110と、基板保持部材110の他面内側に配置されていて挿入された処理対象基板PBを開口孔111の外周内面に圧接させる拡縮自在なバルーン部材121と、処理対象基板PBを他面で支持する基板支持治具122と、も有する。
【0026】
このバルーン部材121は、例えば、直径10mm×t1のシリコンチューブからなる。バルーン部材121は拡張により処理対象基板PBを押圧するとともに、処理対象基板PBが挿入されるときには負圧で収縮される。
【0027】
このため、バルーン部材121は拡縮する特性が要求される。ただし、ここでは拡縮部材としてシリンジチューブからなるバルーン部材121を例示するが、このような拡縮部材としてベローズやエアシリンダを利用することもできる(図示せず)。
【0028】
より具体的には、溶液乱流機構151は、図1および図2に示すように、水平方向に扁平な複数の溶液吐出口152および溶液吸引口153からなり、その複数の溶液吐出口152から基板処理溶液TLを処理対象基板PBの一面の基板処理領域TSに圧送するとともに、この圧送された基板処理溶液TLを溶液吸引口153から吸引する。
【0029】
このような基板処理溶液TLの圧送および吸引は、例えば、ポンプ機構などにより実行される。このように圧送および吸引される基板処理溶液TLは、順次新品と交換されてもよく、交換されることなく循環されてもよく、循環させながら適宜新品と交換してもよい。
【0030】
また、基板保持部材110は、図2および前面に処理対象基板PBの基板処理領域TSに対応した矩形の開口孔111が形成されており、図3に示すように、その後方には矩形の環状のバルーン部材121が配置されている。
【0031】
このバルーン部材121には、例えば、柔軟なチューブ部材で空気ポンプが連結されており(図示せず)、正圧により拡張される。なお、この正圧は空気ポンプにより維持されてもよく、チューブ部材の閉鎖により維持されてもよい。
【0032】
基板保持部材110の開口孔111の内面外周には、図2および図4に示すように、処理対象基板PBに密着するシール材123が装着されている。このシール材123は耐薬性が必要なため、例えば、EPDM(Ethylene Propylene Methylene Linkage)やFKM(Fluorocarbon rubber)などのゴムスポンジからなる。
【0033】
シール材123は、連続気孔では基板処理溶液TLが漏出するので、不連続気孔が必要とされる。また、押し付けてシールするために柔軟性も必要とされる。このため、ゴムシートでは潰れないのでシールとして利用は困難である。
【0034】
しっかりシールするには、ラップ幅は基板外周最低5mm程度以上は必要で、ラップ幅が大きいほどシール信頼性は上がるが、基板処理有効面積が狭まるので、小さいのが本来理想である。
【0035】
基板支持治具122は単純に処理対象基板PBを支持するだけの板材からなり、処理対象基板PBの他面を密閉するようなものではない。ただし、バルーン部材121に押圧されても破損しない強度は要求される。
【0036】
上述のような構成において、本実施の形態の基板処理装置100による処理対象基板PBの処理方法を以下に説明する。まず、図4(a)に示すように、処理対象基板PBが基板処理領域TSの一面OFを前方として基板支持治具122に装着される。
【0037】
つぎに、図4(b)に示すように、この基板支持治具122とともに処理対象基板PBが基板保持部材110の内部に挿入口112から挿入される。このとき、バルーン部材121は縮小されているので、処理対象基板PBの挿入は円滑に実行される。
【0038】
つぎに、図4(c)に示すように、バルーン部材121が拡張されることにより、処理対象基板PBが基板保持部材110のシール材123に密着される。このとき、基板保持部材110の開口孔111に基板処理領域TSが位置することになる。
【0039】
そして、上述のように処理対象基板PBがセットされた基板保持部材110が、図1および図2に示すように、基板処理溶液TLを収容している溶液保持容器130に浸漬される。
【0040】
すると、基板保持部材110の開口孔111から処理対象基板PBの基板処理領域TSのみが基板処理溶液TLで処理されることになる。このような状態で、溶液乱流機構151の溶液吐出口152から基板処理溶液TLが溶液保持容器130に圧送され、この圧送された基板処理溶液TLが溶液吸引口153から吸引される。
【0041】
このため、基板処理溶液TLが処理対象基板PBの表面を乱流となって流動することになり、この乱流となった基板処理溶液TLで処理対象基板PBの基板処理領域TSが処理される。
【0042】
上述のような処理対象基板PBの基板処理領域TSの処理が完了すると、上述の作業を反対に実行することで、基板処理領域TSのみ処理された処理対象基板PBを獲得できることになる。
【0043】
本実施の形態の基板処理装置100では、上述のように溶液保持容器130に収容されている基板処理溶液TLに処理対象基板PBが浸漬される。このような状態の処理対象基板PBの基板処理領域TSに溶液供給機構が基板処理溶液TLを圧送するとともに吸引する。
【0044】
このため、処理対象基板PBの一面OFの基板処理領域TSは圧送されるとともに吸引される基板処理溶液TLにより処理されることになる。従って、乱流となる基板処理溶液TLにより処理対象基板PBの一面OFの基板処理領域TSのみを簡単かつ迅速に処理することができる。
【0045】
特に、溶液乱流機構151は複数の溶液吐出口152から基板処理溶液TLを圧送するとともに、複数の溶液吸引口153から基板処理溶液TLを吸引するので、基板処理溶液TLの処理対象基板PBの表面で基板処理溶液TLが良好に乱流となり、その処理が迅速に良好に実行される。
【0046】
しかも、上述のような複数の溶液吐出口152と複数の溶液吸引口153とが交互に配列されているので、処理対象基板PBの基板処理領域TSを乱流の基板処理溶液TLで均質に処理することができる。
【0047】
しかも、本実施の形態の基板処理装置100では、上述のように処理対象基板PBがセットされた基板保持部材110を溶液保持容器130に収容されている基板処理領域TSの基板処理溶液TLに浸漬することにより、処理対象基板PBの基板処理領域TSのみに基板処理溶液TLを供給することができる。このため、処理対象基板PBの一面OFの基板処理領域TSのみを簡単かつ迅速に基板処理溶液TLで処理することができる。
【0048】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では溶液保持容器130の基板処理溶液TLに浸漬された処理対象基板PBを静止させておくことを想定した。
【0049】
しかし、このように溶液保持容器130の基板処理溶液TLに浸漬された処理対象基板PBを上下方向に揺動させる基板揺動機構(図示せず)を有してもよい。この場合、複数の溶液吐出口143の離間による基板処理溶液TLの圧送ムラを揺動により低減することができる。
【0050】
また、上記形態では基板保持部材110に基板処理領域TSに対応した矩形の開口孔111が形成されており、その後方に矩形の環状のバルーン部材121が配置されていることを例示した。
【0051】
しかし、このバルーン部材121は、処理対象基板PBを基板保持部材110の開口孔111に圧接させて密着させることができればよく、例えば、一個の大型のバルーン部材や、上下二個のバルーン部材、左右二個のバルーン部材、等でもよい(図示せず)。
【0052】
また、上記形態ではボックス状の基板保持部材110に処理対象基板PBをセットして一面の基板処理領域TSのみを基板処理溶液TLで処理することを例示した。しかし、処理対象基板PBの他面を基板支持治具122に密閉させて装着し、この基板支持治具122とともに処理対象基板PBを基板処理溶液TLに浸漬させて一面の基板処理領域TSを処理してもよい。
【0053】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
100 基板処理装置
110 基板保持部材
111 開口孔
112 挿入口
121 バルーン部材
122 基板支持治具
123 シール材
130 溶液保持容器
143 溶液吐出口
151 溶液乱流機構
152 溶液吐出口
153 溶液吸引口
OF 一面
PB 処理対象基板
TL 基板処理溶液
TS 基板処理領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理溶液を収容していて処理対象基板が浸漬される溶液保持容器と、
浸漬された前記処理対象基板の一面の基板処理領域に対して前記基板処理溶液が圧送されるとともに吸引される溶液乱流機構と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記溶液乱流機構は、複数の溶液吐出口から前記基板処理溶液を前記処理対象基板の一面の基板処理領域に圧送するとともに複数の溶液吸引口から前記基板処理溶液を吸引する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記溶液乱流機構は、前記溶液吐出口と前記溶液吸引口とが所定の順番に配列されている請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記溶液乱流機構は、前記溶液吐出口と前記溶液吸引口とが交互に配列されている請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記溶液保持容器の前記基板処理溶液に浸漬された前記処理対象基板を上下方向に揺動させる基板揺動機構を、さらに有する請求項1ないし4の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理対象基板が挿入される挿入口が上面に形成されているとともに前記基板処理領域が露出する開口孔が一面に形成されているボックス状の基板保持部材と、
前記基板保持部材の他面内側に配置されていて挿入された前記処理対象基板を前記開口孔の外周内面に圧接させる拡縮自在なバルーン部材と、
を有する請求項1ないし5の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
溶液保持容器に収容されている基板処理溶液に基板保持部材を浸漬させ、
浸漬された前記基板処理領域の一面に前記基板処理溶液を圧送するとともに吸引する、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82448(P2012−82448A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227121(P2010−227121)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】