説明

基板処理装置及びその処理方法、並びに記憶媒体

【課題】 ダミー基板を使用しても、製品の生産を中断することなく、製品の生産を続けることができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】 被処理基板Wに処理を施す処理室21a又は21bを備えた処理部2と、処理室21a又は21bに、被処理基板Wを搬入出する搬入出室31と、搬入出室31に設けられ、被処理基板Wを収容する被処理基板キャリアCが取り付けられる被処理基板用ロードポート32a乃至32cと、搬入出室31に設けられ、ダミー基板Wdを収容するダミー基板キャリアCdが取り付けられるダミー基板用ロードポート33と、搬入出室31に設けられ、ダミー基板Wdを格納するダミー基板格納部34と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理基板に、成膜処理等の処理を施す基板処理装置に係わり、特に、被処理基板への処理を始める前、又は被処理基板への処理を終えた後、処理室にダミー基板を投入する基板処理装置及びその処理方法、並びにその処理方法を基板処理装置に実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、半導体ウエハ等の被処理基板に成膜等の処理を施す。
【0003】
基板処理装置は、被処理基板への処理を始める前、又は被処理基板への処理を終えた後、処理室にダミー基板が投入される。ダミー基板を処理室内にある基板載置台上に載置した状態で、処理室の内部に堆積された膜のエッチング除去(クリーニング)、あるいは処理室の内部に予め膜を堆積するプリデポジション、あるいはメンテナンス後に実施されるバーンイン(慣らし運転)、あるいは成膜処理がスパッタ処理である場合には、膜源となる金属ターゲットの表面コンディショニング等が行われる。
【0004】
このようなダミー基板を使用する基板処理装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平9−143674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダミー基板は、ダミー基板を使用する処理の際に、外部から基板処理装置に搬入し、処理室に対して出し入れし、処理後は基板処理装置の外部に搬出することが一般的である。この点、特許文献1は、基板処理装置の内部にダミー基板を収容する収容室を備え、この収容室からダミー基板を処理室に対して出し入れする。このような構成を備えることで、特許文献1に記載された基板処理装置は、外部と基板処理装置との間でのダミー基板の搬入及び搬出作業を減らせる、という利点を得ることができる。
【0006】
しかしながら、収容室に収容されたダミー基板が使用限度に達した時点で、基板処理装置における製品処理を続けることができなくなり、新しいダミー基板に交換されるまで、製品の生産が一時中断されることとなる。
【0007】
この発明は、ダミー基板を使用しても、製品の生産を中断することなく、製品の生産を続けることができる基板処理装置及びその処理方法、並びにその処理方法を基板処理装置に実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の態様に係る基板処理装置は、被処理基板に処理を施す処理室を備えた処理部と、前記処理室に、前記被処理基板を搬入出する搬入出室と、前記搬入出室に設けられ、前記被処理基板を収容する被処理基板キャリアが取り付けられる被処理基板用ロードポートと、前記搬入出室に設けられ、ダミー基板を収容するダミー基板キャリアが取り付けられるダミー基板用ロードポートと、前記搬入出室に設けられ、前記ダミー基板を格納するダミー基板格納部と、を具備する。
【0009】
この発明の第2の態様に係る基板処理方法は、被処理基板に処理を施す処理室を備えた処理部と、前記処理室に、前記被処理基板を搬入出する搬入出室と、前記搬入出室に設けられ、前記被処理基板を収容する被処理基板キャリアが取り付けられる被処理基板用ロードポートと、前記搬入出室に設けられ、ダミー基板を収容するダミー基板キャリアが取り付けられるダミー基板用ロードポートと、前記搬入出室に設けられ、前記ダミー基板を格納するダミー基板格納部と、を具備した基板処理装置の処理方法であって、前記基板処理装置の稼働中、前記ダミー基板格納部に使用可能なダミー基板を格納しておくとともに、前記ダミー基板用ロードポートに取り付けられた前記ダミー基板キャリアに使用可能なダミー基板を収容しておく。
【0010】
この発明の第3の態様に係る記憶媒体は、コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、前記第1の態様に係る基板処理装置の処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ダミー基板を使用しても、製品の生産を中断することなく、製品の生産を続けることができる基板処理装置及びその処理方法、並びにその処理方法を基板処理装置に実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0013】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、一実施形態に係る基板処理装置1は、被処理基板Wに処理を施す処理部2と、この処理部2に被処理基板Wを搬入出する搬入出部3と、装置1を制御する制御部4とを備えている。
【0015】
本例に係る基板処理装置1は、クラスターツール型(マルチチャンバータイプ)の半導体製造装置であり、被処理基板Wは半導体ウエハである。
【0016】
処理部2は、本例では、被処理基板Wに処理を施す処理室(PM)を二つ備えている(処理室21a、21b)。これらの処理室21a及び21bはそれぞれ、内部を所定の真空度に減圧可能に構成され、例えば、処理室21a及び21bにおいては、高真空(低圧)での処理であるPVD処理、例えば、スパッタリング処理が行われ、被処理基板W、例えば、半導体ウエハ上に所定の金属又は金属化合物膜の成膜処理が実施される。処理室21a及び21bは、ゲートバルブG1、G2を介して、一つの搬送室(TM)22に接続されている。
【0017】
搬入出部3は、搬入出室(LM)31を備えている。搬入出室31は、内部を大気圧、又はほぼ大気圧、例えば、外部の大気圧に対してわずかに陽圧に調圧可能である。搬入出室31の平面形状は、本例では、平面から見て長辺、この長辺に直交する短辺を有した矩形である。矩形の長辺は上記処理部2に隣接する。本例では長辺に沿った方向をY方向、短辺に沿った方向をX方向、高さ方向をZ方向と呼ぶ。搬入出室31は、被処理基板Wが収容されているキャリアCが取り付けられる被処理基板用ロードポート(LP)と、ダミー基板Wdが格納されているキャリアCdが取り付けられるダミー基板用ロードポート(LPd)と、を備えている。本例では、搬入出室31の処理部2に相対した長辺に、三つの被処理基板用ロードポート32a、32b、及び32cがY方向に沿って設けられ、短辺の一つに、一つのダミー基板用ロードポート33が設けられている。本例においては、被処理基板用ロードポートの数、及びダミー基板用ロードポートの数を、それぞれ三つ、及び一つとしているが、これらに限られるものではなく、数は任意である。被処理基板用ロードポート32a乃至32c、及びダミー基板用ロードポート33には各々、図示せぬシャッターが設けられており、被処理基板Wを格納した、あるいは空のキャリアC、及びダミー基板Wdを格納した、あるいは空のキャリアCdがこれらのロードポート32a乃至32c、及び33に取り付けられると、図示せぬシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ、キャリアC、及びCdの内部と搬入出室31の内部とが連通される。さらに、本例の搬入出室31は、ダミー基板Wdを一時的に格納するダミー基板格納部(DS)34を備えている。本例では、ダミー基板用ロードポート33が備えられた短辺に相対する短辺に、ダミー基板格納部34が設けられている。
【0018】
処理部2と搬入出部3との間にはロードロック室(LLM)、本例では二つのロードロック室51a及び51bが設けられている。ロードロック室51a及び51bは各々、内部を所定の真空度、及び大気圧、もしくはほぼ大気圧に切り換え可能に構成されている。ロードロック室51a及び51bは各々、ゲートバルブG3、G4を介して搬入出室31の、被処理基板用ロードポート32a乃至32cが設けられた一辺に対向する一辺に接続され、ゲートバルブG5、G6を介して搬送室22の、処理室21a及び21bが接続された二辺以外の辺のうちの二辺に接続される。ロードロック室51a及び51bは、対応するゲートバルブG3又はG4を開放することにより搬入出室31と連通され、対応するゲートバルブG3又はG4を閉じることにより搬入出室31から遮断される。また、対応するゲートバルブG5又はG6を開放することにより搬送室22と連通され、対応するゲートバルブG5、又はG6を閉じることにより搬送室22から遮断される。
【0019】
搬入出室31の内部には搬入出機構35が設けられている。搬入出機構35は、被処理基板用キャリアCに対する被処理基板Wの搬入出、及びダミー基板用キャリアCdに対するダミー基板Wdの搬入出を行う。これらとともに、ロードロック室51a及び51bに対する被処理基板W及びダミー基板Wdの搬入出、並びにダミー基板格納部34に対するダミー基板Wdの搬入出を行う。搬入出機構35は、例えば、二つの多関節アーム36a及び36bを有し、Y方向に沿って延びるレール37上を走行可能に構成されている。多関節アーム36a及び36bの先端には、ハンド38a及び38bが取り付けられている。被処理基板W、又はダミー基板Wdは、ハンド38a又は38bに載せられ、上述した被処理基板W及びダミー基板Wdの搬入出が行われる。図2に、図1中のII−II線に沿った搬入出室31の概略的な断面を示しておく。
【0020】
搬送室22の内部には、処理室21a及び21b、並びにロードロック室51a、51b相互間に対して被処理基板W又はダミー基板Wdの搬送を行う搬送機構24が設けられている。搬送機構24は、搬送室22の略中央に配設されている。搬送機構24は、回転及び伸縮可能なトランスファアームを、例えば、複数本有する。本例では、例えば、二つのトランスファアーム24a及び24bを有する、トランスファアーム24a及び24bの先端には、ホルダ25a及び25bが取り付けられている。被処理基板W又はダミー基板Wdは、ホルダ25a又は25bに保持され、上述したように、処理室21a及び21b、並びにロードロック室51a、51b相互間に対する被処理基板W及びダミー基板Wdの搬送が行われる。図3に、処理室21a又は21b(図3中では参照符号21のみで表記)の一例を概略的に示す断面を示す。
【0021】
図3に示すように、一例に係る処理室21は、PVD処理装置(物理的気相蒸着方式の成膜装置)70の一部をなしており、その内部において、被処理基板W上への、例えば、金属又は金属化合物のスパッタリング成膜が行われる。このような処理室21の内部には、被処理基板Wを載置する載置台71がほぼ中央部に配置されている。本例の載置台71は、静電チャックを含んでおり、載置台71に載置された被処理基板W又は、ダミー基板Wdを静電チャックにより固定される。載置台71上方領域はシールド部材72により覆われている。処理室21の上部には開口211が形成されている。開口211には、例えば、コニカル形状のスパッタリングターゲット部材73が取り付けられ、スパッタリングターゲット部材73の頂部に設けられた開口は、例えば、石英からなる誘電体天板74で覆われている。このように、スパッタリングターゲット部材73と誘電体天板74とが処理室21の天壁を構成している。スパッタリングターゲット部材73には直流電源75のマイナス極が接続されている。スパッタリングターゲット部材73の上方には複数の固定磁石76が設けられている。誘電体天板74の上方には、処理室21の内部に誘導結合プラズマ(ICP)を形成するための誘導コイル77が配置されている。誘導コイル77には高周波電源78が接続されている。また、載置台71には高周波電源79が接続されている。
【0022】
処理室21の側壁にはシールド部材72の内部に至るガス導入口80が設けられており、このガス導入口80にはガス供給配管81が接続されている。ガス供給配管81には、本例では、不活性ガス、例えば、Arガスを供給するためのArガス供給源82が接続されている。処理室21の内部には、Arガス供給源82からガス供給配管81を介してArガスが供給可能に構成されている。処理室21の底部には、排気配管83が接続されており、排気配管83には真空ポンプ84が接続されている。処理室21の内部の圧力は、真空ポンプ84を作動させることにより、例えば、1×10−7〜1×10−3Pa(約1×10−9〜10×10−5Torr)程度の圧力に保持することが可能になっている。
【0023】
載置台71には、ウエハ搬送用の3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン85が載置台71の表面に対して突没可能に設けられている。これらウエハ支持ピン85は支持板86に固定されている。そして、ウエハ支持ピン85は、エアシリンダ等の駆動機構88によりロッド87を昇降することにより、支持板86を介して昇降される。ロッド87は、処理室21の内部から外部にかけて設けられ、処理室21の外部において駆動機構88に接続される。ロッド87のうち、処理室21の外部に設けられた部分は、ベローズ89により覆われている。処理室21の側壁には、基板搬入出ポート212が形成されている。被処理基板W又はダミー基板Wdの処理室21と搬送室22との間の搬入出は、ゲートバルブGを開けた状態で行われる。
【0024】
スパッタリング成膜を行う際、処理室21の内部を、真空ポンプ84を用いて排気して高真空とする。さらに、直流電源75からスパッタリングターゲット部材73に負の直流電圧を印加し、かつ、固定磁石76により処理室21内に磁界を形成する。このような処理室21の内部にArガスを導入し、内部の圧力を、上記圧力範囲に維持することで、スパッタリングターゲット部材73の近傍に、上記磁界に閉じこめられたプラズマが形成される。このプラズマ中のArイオンが陰極のスパッタリングターゲット部材73に衝突し、スパッタリングターゲット部材73を構成する材料の金属原子がたたき出される。
【0025】
同時に、誘導コイル77に高周波電圧を印加することで、チャンバ内に誘導結合プラズマ(ICP)を形成する。たたき出された金属原子は、形成された誘導結合プラズマの中を通過する際にイオン化される。ここで、本例では、載置台71に高周波電圧を印加する高周波電源79が接続されている。高周波電源79を利用して載置台71に高周波電圧を印加してRFバイアスを生成しても良い。RFバイアスを生成すると、例えば、載置台71に載置された被処理基板Wに入射する金属原子イオンの非垂直成分を抑制でき、例えば、微小ホールへの成膜の際に形成されるオーバーハングが抑制され、ステップカバレージの良い金属膜又は金属化合物膜を形成できる。
【0026】
処理部4は、プロセスコントローラ41、ユーザーインターフェース42、及び記憶部43を含んで構成される。
【0027】
プロセスコントローラ41は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなる。
【0028】
ユーザーインターフェース42は、オペレータが基板処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。
【0029】
記憶部43は、基板処理装置1において実施される処理を、プロセスコントローラ41の制御にて実現するための制御プログラム、各種データ、及び処理条件に応じて基板処理装置1に処理を実行させるためのレシピが格納される。レシピは、記憶部43の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体はコンピュータ読み取り可能なもので、例えば、ハードディスクであっても良いし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば、専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。任意のレシピはユーザーインターフェース42からの指示等にて記憶部43から呼び出され、プロセスコントローラ41において実行されることで、プロセスコントローラ41の制御のもと、基板処理装置1において被処理基板Wに対する処理が実施される。
【0030】
次に、一実施形態に係る基板処理装置1を用いた処理方法を説明する。
【0031】
まず、図4A及び図4B、並びに図5A及び図5Bを参照して参考例を説明する。
【0032】
図4Aに示すように、参考例に係る装置100は、ダミー基板格納部34を搬送室22に有するものである。ただし、装置100は、ダミー基板用ロードポートは備えていない。ダミー基板Wdは格納部34に格納されており、ダミー基板Wdを使用するときには、ダミー基板Wdを、格納部34から搬送室22を介して処理室(本例では処理室21a)に搬送する。処理終了後、図4Bに示すように、ダミー基板Wdは処理室21aから搬出され、搬送室22を介して格納部34に戻される。
【0033】
ダミー基板Wdには使用限度がある。ダミー基板Wdが使用限度に達したら、ダミー基板Wdを交換する。この交換は、ダミー基板Wdを、搬送室22、ロードロック室51a又は51b、及び搬入出室31を介してロードポート32a乃至32cのいずれかに取り付けたダミー基板用キャリアCdに移送し、収容する。収容後、キャリアCdごと交換場所まで移送し、交換場所において使用済みのダミー基板Wdを、使用可能なダミー基板、例えば、未使用のダミー基板Wdに交換する。
【0034】
このとき、図5Aに示すように、ダミー基板格納部34にダミー基板Wdが無い状態であっても、被処理基板Wを処理することは可能である。しかしながら、ダミー基板Wdが無い状態で、ダミー基板搬送要求が通知された場合にはこの限りではない。ダミー基板搬送要求は、数ロット処理する毎、あるいは通知が必要な際に通知される。ダミー基板搬送要求が通知されたときにダミー基板Wdが無いと、図5Bに示すように、ダミー基板Wdを用いた処理が行えず、製品の生産は、例えば、未使用のダミー基板Wdを収容したダミー基板用キャリアCdが装置100に届くまで中断してしまう。
【0035】
対して、一実施形態に係る基板処理装置1は、図1に示したように、ダミー基板用格納部34と、ダミー基板用ロードポート33とを備えている。しかも、装置1は、その稼働中、例えば、製品を生産している間、使用可能なダミー基板Wdを格納部34に格納しておくとともに、ダミー基板用ロードポート33に取り付けられたダミー基板キャリアCdにも、使用可能なダミー基板Wdを収容しておくように構成されている。
【0036】
もちろん、ダミー基板Wdは使用限度があるので、装置1においてもダミー基板Wdは使用限度に達した時点で交換しなければならない。この交換の際には、使用限度に達したダミー基板Wdをダミー基板用キャリアCdに戻す。そして、ダミー基板用キャリアCdから使用可能なダミー基板Wd、例えば、未使用のダミー基板Wdを取り出し、搬送室22を介して格納部34に移送し、新たに格納する。
【0037】
このように一実施形態に係る装置1によれば、その稼働中、例えば、製品を生産している間、格納部34に使用可能なダミー基板Wdを常に格納しておくことが可能である。
【0038】
また、ダミー基板用キャリアCdに収容された使用可能なダミー基板Wdが少なくなった、又は全くなくなった場合には、ダミー基板用キャリアCdは交換される。交換の際には、ダミー基板用キャリアCdはダミー基板用ロードポート33から取り外される。しかしながら、図6Aに示すように、格納部34には使用可能なダミー基板Wdが格納されているから、製品の生産を継続して行うことができる。
【0039】
しかも、ダミー基板用キャリアCdがダミー基板用ロードポート33から取り外されている状態でダミー基板搬送要求が通知されたとしても、図6Bに示すように、使用可能なダミー基板Wdが格納部34に格納されているから、製品の生産を中断すること無く、ダミー基板Wdを使用した処理を行うことができる。
【0040】
このように、この発明の一実施形態によれば、ダミー基板を使用しても、製品の生産を中断することなく、製品の生産を続けることができる基板処理装置を提供できる、という利点を得ることができる。
【0041】
次に、基板処理装置1を用いた処理方法のより詳細な一例を説明する。
【0042】
図7A乃至図14Aは基板処理装置1を概略的に示す平面図、図7B乃至図14Bは図7A乃至図14A中の7B−7B線…14B−14B線に沿う断面図である。
【0043】
図7A及び図7Bには、使用可能なダミー基板Wdを収容したダミー基板用キャリアCdが、ダミー基板用ロードポート33に取り付けられる状態を示している。
【0044】
本例では、キャリアCdに収容可能なダミー基板Wdの収容数を、格納部34に格納可能なダミー基板Wdの格納数よりも多くしている。本例では、一例として格納部34の格納数は“2”、キャリアCdの収容数は“9”とするが、格納数、及び収容数はこれに限らない。例えば、格納数を“6”、収容数を“25”等のように任意に設定可能である。キャリアCdがダミー基板用ロードポート33に取り付けられた後、使用可能なダミー基板Wdを格納部34に移送する移送作業が開始される(図8A及び図8B)。
【0045】
本例では、キャリアCdから使用可能なダミー基板Wdを2枚取り出し、2枚の使用可能なダミー基板Wdを格納部34に格納する。このような処理は、基板処理装置1を用いた製品生産の開始前に行われ、生産開始後は、格納部34及びキャリアCdの双方に、使用可能なダミー基板Wdを収容、又は格納しておくようにする。
【0046】
また、本例では、格納部34が搬入出室31に備えられている。このため、格納部34が搬送室22に備えられている場合に比較して移送作業を迅速に行える、という利点もある。例えば、格納部34が搬送室22にあると、ダミー基板Wdを一枚搬送する毎に、ロードロック室51a(又は51b)において大気圧状態から減圧状態への圧力調整が必要となる場合がある。対して、格納部34を搬入出室31に備えておけば、移送作業は、圧力調整を必要とすることなく、全て大気圧状態で行えるので、迅速に行うことができる。
【0047】
次に、ダミー基板搬送要求が通知されたとする。搬送要求の一例は、成膜装置の膜源となる金属ターゲットの表面コンディショニングである。例えば、図3に示したように、一例に係る処理室21は、被処理基板W上に、例えば、金属又は金属化合物のスパッタリング成膜を行うPVD処理装置70であった。このようなPVD処理装置70においては、アイドル時間が長くなると、膜源である金属ターゲット(図3中のスパッタリングターゲット部材73に対応)の表面が酸化される。表面が酸化されたまま、成膜を行うと、安定した成膜が難しくなる。このため、表面の酸化被膜を除去する処理が必要である。これが金属ターゲットの表面コンディショニングである。この表面コンディショニングの際、載置台71の上をカバーしておかないと、載置台71に含まれる静電チャックが破壊されてしまう。このカバーに、ダミー基板Wdを使用する。
【0048】
表面コンディショニングの際、図9A及び図9Bに示すように、1枚のダミー基板Wdを格納部34から取り出し、搬入出室31、ロードロック室51a(又は51b)、搬送室22を介して処理室21a(又は21b)へ搬送される。そして、処理室21a(又は21b)において、ダミー基板Wdを使用した処理、本例では表面コンディショニングが行われる。
【0049】
ダミー基板Wdを使用した処理が終了したら、図10A及び図10Bに示すように、ダミー基板Wdを処理室21a(又は21b)から取り出し、搬送室22、ロードロック室51a(又は51b)、搬入出室31を介して格納部34へ搬送し、格納部34に再格納する。
【0050】
ダミー基板Wdを使用した処理には、ダミー基板Wdを一回限り使用する処理と、使用限度に達するまで複数回繰り返し使用する処理とがある。後者の場合には、使用限度に達していない場合には、使用可能なダミー基板Wdとして取り扱い、格納部34に再格納する。複数回繰り返し使用する処理としては、表面コンディショニングの他、処理室の内部に堆積された膜のエッチング除去(クリーニング)、及び処理室の内部に予め膜を堆積するプリデポジション等を挙げることができる。また、一回限り使用する処理としては、処理室のメンテナンス後、あるいは金属ターゲット交換後に実施されるバーンイン(慣らし運転)を挙げることができる。
【0051】
ダミー基板Wdが使用限度に達した場合には、使用済ダミー基板Wdとして取り扱い、図11A及び図11Bに示すように、処理室21a(又は21b)から取り出した後、搬送室22、ロードロック室51a(又は51b)、搬入出室31を介してキャリアCdへ搬送し、キャリアCdに収容する。
【0052】
格納部34に格納された使用可能なダミー基板Wdが少なくなった、又は全くなくなった場合には、図12A及び図12Bに示すように、使用可能なダミー基板Wdを、キャリアCdから取り出し、搬入出室31を介して格納部34へ搬送し、格納する。これにより、格納部34には使用可能なダミー基板Wdが再格納、又は補充される。
【0053】
この再格納、又は補充作業も、格納部34が搬入出室31に備えられているので、圧力調整を必要とすることなく、全て大気圧状態で行うことができ、迅速に行える。
【0054】
ダミー基板Wdを使用した処理に使用されるダミー基板Wdは、格納部34から搬送されるばかりでなく、図13A及び図13Bに示すように、キャリアCdから搬送することも可能である。キャリアCdから搬送する例としては、ダミー基板Wdを一回限り使用する処理、例えば、バーンインである。このような処理に使用したダミー基板Wdは一回で使用済となる。このような場合には、格納部34から搬送するよりもキャリアCdから搬送し、処理後は、図14A及び図14Bに示すように、そのまま、キャリアCdに使用済ダミー基板Wdとして戻すことが良い。
【0055】
また、バーンインは、ダミー基板Wdが一回で使用済となるため、バーンインの際には、未使用のダミー基板Wdを、外部から内部に搬入しなければならなかった。このため、バーンインの際には、基板処理装置による製品の生産を中断するか、稼働を停止しなければならなかった。この点、基板処理装置1は、ダミー基板用ロードポート33に取り付けられたキャリアCdに、使用可能なダミー基板Wd、例えば、未使用のダミー基板Wdを収容しているので、これを利用してのバーンインが可能となる。また、このバーンインの際、処理室を複数備えている場合には、例えば、図15に示すように、一つの処理室21aでは製品の生産を続け、もう一つの処理室21bにおいては並列してバーンインを行う、ということも可能である。即ち、基板処理装置1によれば、製品の生産を中断することなく、バーンインが可能となる、という利点も得ることができる。
【0056】
キャリアCdの交換時期は、キャリアCdに収容された使用可能なダミー基板Wdの枚数に基づいて、例えば、残数がわずか、又は残数無しに基づいて決定されれば良い。使用可能なダミー基板Wdの残数が規定された枚数に達したら、キャリアCdの交換要求を、例えば、プロセスコントローラ41に通知する。プロセスコントローラ41は通知を受領したら、図示せぬ搬送ロボットにキャリアCdの交換を命令することで、キャリアCdを交換することができる。
【0057】
使用可能なダミー基板Wdの残数を把握するには、プロセスコントローラ41を用いて、例えば、ダミー基板Wdの取り出し枚数をカウントしておくようにソフトで対応することもできるし、例えば、図16に示すように、キャリアCdに収容された使用可能なダミー基板の枚数を監視する監視手段、例えば、センサー90を備えるなど、ハードで対応することも可能である。
【0058】
このように、一実施形態によれば、ダミー基板を使用しても、製品の生産を中断することなく、製品の生産を続けることができる基板処理装置及びその処理方法、並びにその処理方法を基板処理装置に実行させるプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供できる。
【0059】
以上、この発明を一実施形態により説明したが、この発明は上記一実施形態に限定されることなく、この発明の思想の範囲内で種々変形可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0060】
例えば、上記実施形態では処理室を2つ備えた例を示したが、処理室は1つでも良く、また、2つ以上備えていても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、基板処理としてPVD処理を例示したが、基板処理はPVDに限らず、CVD処理等、ダミー基板を使用するものであれば、如何なる成膜処理にも適用することが可能である。もちろん、成膜処理に限らず、ダミー基板を使用するものであれば、エッチング処理等に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す平面図
【図2】図1中のII−II線に沿う概略的な断面図
【図3】処理室の一例を概略的に示す断面図
【図4】図4A及び図4Bは参考例に係る処理方法を示す平面図
【図5】図5A及び図5Bは参考例に係る処理方法を示す平面図
【図6】図6A及び図6Bは一実施形態に係る処理方法の一例を示す平面図
【図7】図7Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図7Bは図7A中の7B−7B線に沿う概略的な断面図
【図8】図8Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図8Bは図8A中の8B−8B線に沿う概略的な断面図
【図9】図9Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図9Bは図9A中の9B−9B線に沿う概略的な断面図
【図10】図10Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図10Bは図10A中の10B−10B線に沿う概略的な断面図
【図11】図11Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図11Bは図11A中の11B−11B線に沿う概略的な断面図
【図12】図12Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図12Bは図12A中の12B−12B線に沿う概略的な断面図
【図13】図13Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図13Bは図13A中の13B−13B線に沿う概略的な断面図
【図14】図14Aは一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図、図14Bは図14A中の14B−14B線に沿う概略的な断面図
【図15】一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す平面図
【図16】一実施形態に係る処理方法のより詳細な一例を示す断面図
【符号の説明】
【0063】
2…処理部、21、21a、21b…処理室、31…搬入出室、32a、32b、32c…被処理基板用ロードポート、33…ダミー基板用ロードポート、34…ダミー基板格納部、W…被処理基板、C…被処理基板用キャリア、Wd…ダミー基板、Cd…ダミー基板用キャリア。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に処理を施す処理室を備えた処理部と、
前記処理室に、前記被処理基板を搬入出する搬入出室と、
前記搬入出室に設けられ、前記被処理基板を収容する被処理基板キャリアが取り付けられる被処理基板用ロードポートと、
前記搬入出室に設けられ、ダミー基板を収容するダミー基板キャリアが取り付けられるダミー基板用ロードポートと、
前記搬入出室に設けられ、前記ダミー基板を格納するダミー基板格納部と、
を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板処理装置の稼働中、前記ダミー基板格納部に使用可能なダミー基板を格納しておくとともに、前記ダミー基板用ロードポートに取り付けられた前記ダミー基板キャリアに使用可能なダミー基板を収容しておくように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ダミー基板キャリアに収容されるダミー基板の収容枚数が、前記ダミー基板格納部に格納されるダミー基板の格納枚数よりも多いことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ダミー基板が使用限度に達したとき、使用限度に達したダミー基板を前記ダミー基板キャリアに収容するとともに、このダミー基板キャリアから前記ダミー基板格納部へ使用可能なダミー基板を搬送し格納するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ダミー基板キャリアの交換が、前記ダミー基板格納部に使用可能なダミー基板を格納した状態で行われることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ダミー基板キャリアに収容された使用可能なダミー基板の枚数を監視する監視手段を有し、
前記ダミー基板キャリアに収容された使用可能なダミー基板の枚数に基づいて、前記ダミー基板キャリアの交換要求が通知されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
ダミー基板を使用限度に達するまで繰り返し使用する処理の際、前記ダミー基板格納部に格納された使用可能なダミー基板を使用し、
ダミー基板を一回限り使用する処理の際、前記ダミー基板キャリアに収容された使用可能なダミー基板を使用することを特徴とする請求項2乃至請求項6いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理室を複数備え、
前記処理室の少なくとも一つにおいて、前記被処理基板に対する処理を行い、
前記処理室の少なくとも他の一つにおいて、前記ダミー基板を用いて、ダミー基板を一回限り使用する処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
被処理基板に処理を施す処理室を備えた処理部と、
前記処理室に、前記被処理基板を搬入出する搬入出室と、
前記搬入出室に設けられ、前記被処理基板を収容する被処理基板キャリアが取り付けられる被処理基板用ロードポートと、
前記搬入出室に設けられ、ダミー基板を収容するダミー基板キャリアが取り付けられるダミー基板用ロードポートと、
前記搬入出室に設けられ、前記ダミー基板を格納するダミー基板格納部と、
を具備した基板処理装置の処理方法であって、
前記基板処理装置の稼働中、前記ダミー基板格納部に使用可能なダミー基板を格納しておくとともに、前記ダミー基板用ロードポートに取り付けられた前記ダミー基板キャリアに使用可能なダミー基板を収容しておくことを特徴とする基板処理装置の処理方法。
【請求項10】
前記ダミー基板キャリアに収容されるダミー基板の収容枚数を、前記ダミー基板格納部に格納されるダミー基板の格納枚数よりも多くすることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置の処理方法。
【請求項11】
前記ダミー基板が使用限度に達したとき、使用限度に達したダミー基板を前記ダミー基板キャリアに収容するとともに、このダミー基板キャリアから前記ダミー基板格納部へ使用可能なダミー基板を搬送し格納することを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置の処理方法。
【請求項12】
前記ダミー基板キャリアの交換が、前記ダミー基板格納部に使用可能なダミー基板を格納した状態で行われることを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置の処理方法。
【請求項13】
前記ダミー基板キャリアに収容された未使用のダミー基板の枚数を監視し、
前記ダミー基板キャリアに収容された未使用のダミー基板の枚数に基づいて、前記ダミー基板キャリアの交換要求を通知することを特徴とする請求項12に記載の基板処理装置の処理方法。
【請求項14】
ダミー基板を使用限度に達するまで繰り返し使用する処理の際、前記ダミー基板格納部に格納された使用可能なダミー基板を使用し、
ダミー基板を一回限り使用する処理の際、前記ダミー基板キャリアに収容された使用可能なダミー基板を使用することを特徴とする請求項9乃至請求項12いずれか一項に記載の基板処理装置の処理方法。
【請求項15】
前記処理室を複数備え、
前記処理室の少なくとも一つにおいて、前記被処理基板に対する処理を行い、
前記処理室の少なくとも他の一つにおいて、前記ダミー基板を用いて、ダミー基板を一回限り使用する処理を行うことを特徴とする請求項14に記載の基板処理装置の処理方法。
【請求項16】
コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、前記請求項9乃至請求項15いずれか一項に記載の基板処理装置の処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板処理装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−123733(P2010−123733A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295673(P2008−295673)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】