説明

基板処理装置及びインピーダンスマッチング方法

【課題】プラズマ工程において、インピーダンスをマッチングする基板処理装置及びインピーダンスマッチング方法が提供される。
【解決手段】本発明の一実施形態による基板処理装置は、高周波電力を発生させる高周波電源と、前記高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行する工程チャンバーと、前記工程チャンバーの変化するインピーダンスを補償するマッチング回路と、前記工程チャンバーと前記マッチング回路との間に配置されて前記工程チャンバーのインピーダンスを減衰させるトランスフォーマと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置及びインピーダンスマッチング方法に関し、より詳細には、プラズマ工程においてインピーダンスをマッチングする基板処理装置及びインピーダンスマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマで基板を処理するプラズマ工程において、プラズマの生成には高周波電力が利用されるため、インピーダンスマッチング(impedance matching:インピーダンス整合)が必須である。インピーダンス整合とは、効果的に電力を伝送するために、電力の送信側と受信側とのインピーダンスを同様に調整することである。プラズマ洗浄工程においては、高周波電力を提供する電源と、これを受信してプラズマを生成及び維持するチャンバーとの間で、インピーダンス整合が要求される。
【0003】
プラズマのインピーダンスは、ソースガスの種類、温度、圧力を含む多様な変数によって決定されるため、チャンバーのインピーダンスは、工程が進行される間において持続的に変化する。したがって、プラズマ工程におけるインピーダンス整合は、キャパシターやインダクタで構成される回路を有するマッチング回路によって、変化するチャンバーのインピーダンスを補償する方式で行われる。
【0004】
しかし、このように靜電容量や誘導容量を調節してインピーダンスを補償する方式では、応答速度に限界があるため、インピーダンス整合に遅延時間(time delay)が発生する。特に、工程の初期において、プラズマが生成されながら、チャンバーのインピーダンスが大幅に変わる場合、インピーダンスが急激に変化する。この場合、チャンバーのインピーダンス変化に速やかに対応できないため、発生する反射波等によって、チャンバーにアークが発生し、チャンバー内のプラズマの密度に偏りが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第1999/014855号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、速やかにインピーダンス整合を遂行する基板処理装置及びインピーダンスマッチング方法を提供することである。
【0007】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、広い周波数帯域の高周波電力に対してインピーダンス整合を遂行する基板処理装置及びインピーダンスマッチング方法を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述した課題に制限されるものではなく、言及されなかった課題は、本明細書及び添付された図面から、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は基板処理装置を提供する。
【0010】
本発明の一実施形態による基板処理装置は、高周波電力を発生させる高周波電源と、前記高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行する工程チャンバーと、前記工程チャンバーの変化するインピーダンスを補償するマッチング回路と、前記工程チャンバーと前記マッチング回路との間に配置されて前記工程チャンバーのインピーダンスを減衰させるトランスフォーマと、を含む。
【0011】
前記トランスフォーマは、ルスロフ(Ruthroff)型トランスフォーマであり得る。
【0012】
前記ルスロフ型トランスフォーマは、インピーダンス変換比が1:4のアンアン(unbalanced−to−unbalanced:不平衡−不平衡)トランスフォーマであり得る。
【0013】
前記基板処理装置は、前記工程チャンバーのインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、反射電力を測定する反射電力測定器と、前記インピーダンス測定器及び前記反射電力測定器の測定値に基づいて前記マッチング回路を制御する制御器と、をさらに包含できる。
【0014】
前記マッチング回路は、互いに並列に配置される複数のキャパシター及び前記複数のキャパシターに各々連結された複数のスイッチを含み、前記制御器は、前記測定値に基づいて制御信号を生成し、前記マッチング回路は、前記制御信号にしたがって前記複数のスイッチを開閉することができる。
【0015】
前記マッチング回路は、逆Lタイプ(inverse−L−type)の回路であり得る。
【0016】
前記工程チャンバーは、前記プラズマ工程が遂行される空間を提供するハウジング及び前記高周波電力を利用して前記ハウジングにプラズマを提供するプラズマ発生器を包含できる。
【0017】
前記プラズマ発生器は、前記ハウジングの内部に互いに離隔されて配置される複数の電極を含む容量結合形プラズマ(CCP:Capacitively coupledplasma)発生器であり得る。
【0018】
前記高周波電源、前記マッチング回路及び前記トランスフォーマは、複数であり、前記高周波電源は、互いに異なる周波数の高周波電力を発生させ、前記複数の電極には、前記互いに異なる周波数の高周波電力が印加され、前記高周波電力が印加される電極毎に前記マッチング回路及び前記トランスフォーマが連結され得る。
【0019】
本発明はインピーダンスマッチング方法を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態によるインピーダンスマッチング方法は、高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行する基板処理装置においてインピーダンスをマッチングする方法であって、マッチング回路と工程チャンバーの間に配置されたトランスフォーマが、前記プラズマ工程が進行される間における工程チャンバーのインピーダンスの変化量を減衰し、前記マッチング回路が減衰されたインピーダンスの変化量を補償してインピーダンス整合を遂行する。
【0021】
前記トランスフォーマは、インピーダンス変換比が1:4のトランスフォーマであり、前記マッチング回路は、前記工程チャンバーのインピーダンスの変化量の1/4を補償してインピーダンス整合を遂行できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マッチング回路がトランスフォーマを通じて減衰されたインピーダンス変化量を補償することによって、工程チャンバーにおいてインピーダンスが大幅に変化した場合でも、速やかにマッチングが可能となる。
【0023】
本発明によれば、インピーダンス整合が速やかに行われるため、遅延時間が減少し、反射波を除去できる。その結果、工程チャンバーにおけるアーク放電等を除去でき、工程の効率を向上できる。
【0024】
本発明によれば、ルスロフ型トランスフォーマを利用するたね、広い帯域幅の多様な周波数の高周波電力に対してインピーダンスを整合することができる。
【0025】
本発明の効果は、上述した効果に制限されるものではなく、言及されなかった効果は本明細書及び添付された図面から、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略図である。
【図2】図1の基板処理装置の概略構成図である。
【図3】図2のマッチング回路の概略回路図である。
【図4】図2のマッチング回路の他の実施形態の概略回路図である。
【図5】図2のマッチング回路のさらに他の実施形態の概略回路図である。
【図6】図2のトランスフォーマの概略回路図である。
【図7】図6のトランスフォーマの平面図である。
【図8】図6のトランスフォーマが複数個連結された様子を示した図面である。
【図9】図6のトランスフォーマによる電流の変化に関するグラフである。
【図10】図6のトランスフォーマによる電圧の変化に関するグラフである。
【図11】図6のトランスフォーマによるインピーダンスの変化に関するグラフである。
【図12】図1の基板処理装置の変形例の構成図である。
【図13】図1の基板処理装置の変形例の構成図である。
【図14】図1の基板処理装置の変形例の構成図である。
【図15】図14の基板処理装置におけるインピーダンス整合の様子を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用される用語と添付された図面は、本発明を容易に説明するためのものであり、本発明が用語と図面とによって限定されるものではない。
【0028】
本発明に利用される技術の中で、本発明の思想と密接な関連がない公知の技術に関する詳細な説明は省略する。
【0029】
以下では、本発明の一実施形態による基板処理装置100に関して説明する。
【0030】
基板処理装置100は、プラズマ工程を遂行する。プラズマ工程は、プラズマ蒸着工程、プラズマ蝕刻工程、プラズマアッシング工程、プラズマクリーニング工程等であり得る。このようなプラズマ工程において、プラズマは、ソースガスに高周波電力を加えて形成され得る。勿論、本発明による基板処理装置100は、上述した例以外にも多様なプラズマ工程を遂行できる。
【0031】
ここで、基板は、半導体素子や平板ディスプレイ(FPD:flat panel display)及びその他の薄膜に回路パターンが形成された物の製造に利用される基板を全て含む包括的な概念である。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100の概略図である。
【0033】
図1を参照すれば、基板処理装置100は、工程チャンバー1000、高周波電源2000、インピーダンスマッチング装置3000、及び伝送ラインを包含できる。工程チャンバー1000は、高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行する。高周波電源2000は、高周波電力を発生させる。伝送ラインは、高周波電源2000と工程チャンバー1000とを連結して工程チャンバー1000へ高周波電力を伝送する。インピーダンスマッチング装置3000は、高周波電源2000と工程チャンバー1000との間でインピーダンスをマッチング(整合)させる。
【0034】
以下では、本発明の一実施形態による基板処理装置100に関して説明する。
【0035】
図2は、図1の基板処理装置100の概略構成図である。
【0036】
工程チャンバー1000は、ハウジング1100及びプラズマ発生器1200を含む。
【0037】
ハウジング1100は、プラズマ工程が遂行される空間を提供する。
【0038】
プラズマ発生器1200は、ハウジング1100へプラズマを提供する。プラズマ発生器1200は、ソースガスに高周波電力を加えてプラズマを生成する。
【0039】
プラズマ発生器1200としては、容量結合形プラズマ発生器(CCPG:capacitively coupled plasma generator)1200aが使用され得る。容量結合形プラズマ発生器1200aは、ハウジング1100の内部に位置する複数の電極を包含できる。
【0040】
例えば、容量結合形プラズマ発生器1200aは、第1電極1210と第2電極1220とを包含できる。第1電極1210は、ハウジング1100の内部の上部に配置され、第2電極1220は、ハウジング1100の内部の下部に配置され、第1電極1210と第2電極1220とは、互いに平行に上下に配置され得る。両電極1210、1220のうち、いずれか1つへ伝送ライン110を通じて高周波電力が印加され、他の1つは接地され得る。高周波電力が印加されると、第1電極1210と第2電極1220との間に電場が形成される。両電極1210、1220の間にあるソースガスは、電場から電気エネルギーを受けてイオン化され、プラズマ状態に成り得る。このようなソースガスは、外部のガス供給源(図示せず)からハウジング1100へ流入され得る。
【0041】
高周波電源2000は、高周波電力を発生させる。ここで、高周波電源2000は、高周波電力をパルスモードで発生させ得る。高周波電源2000は、特定周波数の高周波電力を発生させ得る。例えば、高周波電源2000は、周波数が2Mhz、13.56Mhz、100Mhzなどの高周波電力を発生させ得る。勿論、高周波電源2000は、上述した周波数以外の他の周波数の高周波電力を発生させることもあり得る。
【0042】
伝送ライン110は、高周波電源2000から工程チャンバー1000へ高周波電力を伝送する。
【0043】
このように、伝送ライン110を通じて高周波電力が伝送される際に、その電力の送信側と受信側とのインピーダンスが不一致となる場合には、反射波が発生して反射電力が発生し得る。高周波電力の場合には、その伝送過程でキャパシターやインダクタのような非消耗性回路において遅延電力が発生し、位相差によって反射波が発生する。このような反射波が発生すれば、電力の伝送効率が低下するのみでなく、高周波電源2000から工程チャンバー1000へ伝達される電力が不均一になる。その結果、不均一なプラズマが生成されるか、或いはプラズマを均一な密度に維持することが難しくなる。また、工程チャンバー1000に反射波が蓄積されれば、アーク放電を誘発して基板Sに直接的な損傷を与えることがあり得る。
【0044】
インピーダンスマッチング装置3000は、インピーダンスをマッチングすることができる。インピーダンスがマッチングされれば、反射波が発生せず、電力が効率的に伝送され得る。
【0045】
インピーダンスマッチング装置3000は、マッチング回路3100、トランスフォーマ(変成器またはトランス)3200、制御器3300、インピーダンス測定器3400、及び反射電力測定器3500を包含できる。
【0046】
マッチング回路3100は、工程チャンバー1000側と高周波電源2000側とのインピーダンスをマッチングさせる。マッチング回路3100は、キャパシターやインダクタのような回路素子を含む。マッチング回路3100の回路素子は、その全部や一部が可変回路素子であり得る。
【0047】
図3は、図2のマッチング回路の概略回路図である。
【0048】
本実施形態において、マッチング回路3100は、可変キャパシター3110とインダクタ3120とから構成され得る。図3を参照すれば、可変キャパシター3110は、In端子とOut端子とを結ぶ伝送ラインに並列に連結され、インダクタ3120は直列に連結され得る。このようなマッチング回路3100は、可変キャパシター3110の靜電容量を調節してインピーダンスをマッチングすることができる。
【0049】
可変キャパシター3110は、複数のキャパシター3111及び複数のスイッチ3112を包含できる。複数のキャパシター3111は、互いに並列に連結され得る。複数のスイッチ3112は、複数のキャパシター3111の各々に連結され、後述する制御器3300の制御にしたがって開閉(オンオフ)され得る。
【0050】
スイッチ3112は、制御器3300からの制御信号にしたがってキャパシター3111と高周波伝送ラインとの短絡を調節する。複数のキャパシター3111は、各々のキャパシター3111の短絡を調節するスイッチ3112に連結される。例えば、制御器3300は各スイッチ3112の開閉を制御する制御信号を送信し、スイッチ3112はこれによって各キャパシター3111の短絡を調節することができる。
【0051】
このようなスイッチ3112としては、デジタルスイッチが使用され得る。例えば、スイッチ3112としては、高周波リレー(RF relay)、PINダイオード(PIN diode)、MOSFET(metal−oxide semiconductor field effect transistor)等が利用され得る。このようなデジタルスイッチはオンオフ(ON/OFF)信号にしたがってそれに対応するキャパシター3110を短絡させるので、機械的に駆動されるスイッチに比べて速い応答速度でインピーダンスを補償できる。したがって、インピーダンス整合の応答速度が向上され、遅延時間が減少し、その結果、反射波を除去できる。
【0052】
このような可変キャパシター3110の靜電容量は、スイッチ3112の状態の組み合わせによって決定され得る。即ち、可変キャパシター3110の靜電容量は、並列に連結されたキャパシター3111の中で、連結されたスイッチ3112が閉じているキャパシター3111の靜電容量の和によって決定され得る。
【0053】
ここで、複数のキャパシター3111は、全て同一の靜電容量を有することができる。又は複数のキャパシター3111は、その靜電容量の比が各々1:2:3:…:nになるように提供され得る。或いは、複数のキャパシター3111は、その靜電容量の比が1:21:22:…:2nになるように提供され得る。
【0054】
可変キャパシター3110の総靜電容量は、連結されたキャパシター3111の和の組み合わせであるので、キャパシター3111が上述した数値のような静電容量を有すれば、可変キャパシター3110の靜電容量を容易に制御し、広い範囲の静電容量に対応することができる。
【0055】
以上では、1つの可変キャパシター3110とインダクタ3120とから構成されたマッチング回路3100に関して説明したが、マッチング回路3100を構成する回路素子の種類、数、連結関係は、これと異なり得る。
【0056】
図4は、図2のマッチング回路の他の実施形態の概略回路図であり、図5は図2のマッチング回路のさらに他の実施形態の概略回路図である。
【0057】
図4を参照すれば、マッチング回路3100は、In端子とOut端子とを結ぶ伝送ラインに並列に連結される可変キャパシター3110aと、直列に連結されるキャパシター3110b及びインダクタ3120とを含む、Lタイプ(L type:L型)の回路として具現され得る。なお、図5を参照すれば、マッチング回路3100は、伝送ラインに直列に連結されるインダクタ3120と、並列に連結される可変キャパシター3110a及びキャパシター3110bとを含むパイタイプ(π type:パイ型)の回路としても具現され得る。勿論、マッチング回路3100は、上述した例以外にも、逆Lタイプ(inverse L type:逆L型)の回路、多様な公知の回路、または必要によって適切に変更された回路として具現され得る。
【0058】
トランスフォーマ3200は、伝送ライン上に設置されて入力側と出力側とのインピーダンスを変換する。
【0059】
図6は、図2のトランスフォーマの概略回路図であり、図7は、図6のトランスフォーマの平面図である。
【0060】
図6を参照すれば、トランスフォーマ3200としては、ルスロフ型トランスフォーマ(Ruthroff transformer:ルスロフ型伝送線路トランス)が使用され得る。ルスロフ型トランスフォーマは、広い帯域幅に対してインピーダンス変換が可能であり、伝送効率に優れるという長所がある。図6及び図7は、インピーダンス変換比1:4のアンアン(unbalanced−to−unbalanced:不平衡−不平衡)ルスロフ型トランスフォーマを図示している。図7に示したように、インピーダンス変換比1:4のルスロフ型トランスフォーマ(1:4ルスロフ型トランスフォーマ)は、ブートストラップ原理を利用して撚線を環形のコアに巻いて製作できる。この時、第1番目のコイルL1と第2番目のコイルL2との値が同一である場合には、入力側に対する出力側のインピーダンスの変換比が1:4になる。
【0061】
このようなルスロフ型トランスフォーマにおいて、コアに巻く撚線の数を増加させれば、インピーダンスの変換比が変化する。ルスロフ型トランスフォーマは、3つの撚線である場合には、インピーダンス変換比1:2.25のアンアントランスフォーマとして作動し、4つの撚線である場合には1:1.78のインピーダンス変換比を有するようになる。
【0062】
一方、このようなルスロフ型トランスフォーマを直列に連結すれば、さらに大きい変換比を有することができる。
【0063】
図8は、図6のトランスフォーマが複数個連結された様子を示した図面である。
【0064】
図8を参照すれば、1:4アンアンルスロフ型トランスフォーマ2つを直列に配置すると、入力側に対する1次出力側のインピーダンス変換比が1:4になり、1次出力側に対する最終出力側のインピーダンス変換比がさらに1:4になるので、結局、入力側に対する最終出力側のインピーダンス変換比は1:16になる。
【0065】
基板処理装置100においては、伝送ラインが高周波電源2000から工程チャンバー1000に連結され、その間にマッチング回路3100とトランスフォーマ3200とが連結され得る。即ち、伝送ラインは、高周波電源2000、マッチング回路3100、トランスフォーマ3200、及び工程チャンバー1000を順に連結することができる。
【0066】
したがって、トランスフォーマ3200を基準にすると、トランスフォーマ3200の入力側には高周波電源2000とマッチング回路3100とが置かれ、出力側には工程チャンバー1000が置かれ得る。したがって、トランスフォーマ3200は、工程チャンバー1000側のインピーダンスを減衰させ得る。
【0067】
一般的に、高周波電源2000は、固定されたインピーダンス、例えば50Ω(Ohm)を有する。一方、工程チャンバー1000は、プラズマ工程が進行される過程において、数Ω(Ohm)から300Ω(Ohm)程度のインピーダンスを有する。このような工程チャンバー1000のインピーダンスは、トランスフォーマ3200を経て入力側に伝達される際に、1:4アンアントランスフォーマの場合には、約70Ω(Ohm)に減衰される。その結果、トランスフォーマ3200の入力側に連結されたマッチング回路3100は、工程チャンバー1000のインピーダンスが数百Ω(Ohm)程度の大きな幅で変化した場合でも、トランスフォーマ3200の変換比にしたがって減少されたインピーダンスを調節すればよい。それによって、工程チャンバー1000と高周波電源2000との間のインピーダンスを整合することができる。
【0068】
特に、プラズマ工程の初期においては、工程チャンバー1000にはパルスモードの電力が供給されつつ、高速のパルスによってプラズマが生成され、インピーダンスが大幅に変化する。その場合、マッチング回路3100は、トランスフォーマ3200によって変化幅が減衰されたインピーダンスを補償してインピーダンスを整合すればよいため、インピーダンスの整合速度が向上され得る。
【0069】
図9は、図6のトランスフォーマによる電流の変化に関するグラフであり、図10は、図6のトランスフォーマによる電圧の変化に関するグラフであり、図11は図6のトランスフォーマによるインピーダンスの変化に関するグラフである。
【0070】
図9乃至図10を参照すれば、1:4アンアンルスロフ型トランスフォーマを使用した場合において、周波数2Mhzの高周波電力を使用した場合、工程チャンバー1000側に比べて、高周波電源2000側の電流と電圧の値は2倍に増加し、インピーダンスは1/4に減衰されていることが分かる。
【0071】
但し、トランスフォーマ3200は、必ずしも上述した例に限定されるものではなく、ルスロフ型トランスフォーマは、それと同一又は類似する他の機能を遂行するトランスフォーマで代替されてもよい。
【0072】
制御器3300は、インピーダンス測定器3400及び反射電力測定器3500の測定値に基づいて、インピーダンスを補償するための制御信号を生成し、これをマッチング回路3100へ送出してマッチング回路3100を制御する。ここで、インピーダンス測定器3400は、工程チャンバー1000のインピーダンスを測定し、その測定値を制御器3300へ送信する。また、反射電力測定器3500は、反射波による反射電力を測定し、その測定値を制御器3300へ送信する。
【0073】
例えば、制御信号は、マッチング回路3100の複数のスイッチ3112を開閉(オンオフ)する制御信号であり得る。マッチング回路3100では、制御信号にしたがってスイッチ3112が開閉されることにより、その靜電容量が調節され得る。
【0074】
このような制御器3300は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組合を利用してコンピューター又はこれと類似な装置によって具現され得る。
【0075】
ハードウェアとしては、制御器3300は、ASICs(application specific integrated circuits)、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、プロセッサー(processors)、マイクロコントローラ(micro−controllers)、マイクロプロセッサー(microprocessors)やこれらと類似な制御機能を遂行する電気的な装置によって具現され得る。
【0076】
また、ソフトウェアとしては、制御器3300は、1つ以上のプログラム言語で書かれたソフトウェアコード又はソフトウェアアプリケーションによって具現され得る。ソフトウェアは、ハードウェアとして具現された制御部によって実行され得る。尚、ソフトウェアは、サーバー等の外部機器から、上述したハードウェア構成に送信されることによって導入され得る。
【0077】
以上では、単一の周波数の高周波電力が印加される容量結合形プラズマ発生器1200aを具備する工程チャンバー1000を基準として、基板処理装置100に関して説明したが、基板処理装置100は、これと異なって構成されることもあり得る。
【0078】
図12乃至図14は、図1の基板処理装置の変形例の構成図である。
【0079】
図12を参照すれば、基板処理装置100において、工程チャンバー1000には、容量結合形プラズマ発生器1200aの代わりに、誘導結合プラズマ発生器(ICPG:inductively coupled plasma generator)1200bが使用され得る。誘導結合形プラズマ発生器1200bは、工程チャンバー1000へソースガスが流入される部分に設置され、誘導電場を形成できる。これによって、工程チャンバー1000へ流入されるソースガスは、誘導電場によってイオン化され、プラズマ状態に成り得る。
【0080】
また、基板処理装置100において、工程チャンバー1000は、同時に互いに異なる周波数の高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行できる。プラズマエッチング工程の場合には、複数の互いに異なる高周波電力を使用してプラズマ工程を遂行すれば、単一の周波数の高周波電力を利用する場合より優れたエッチング効果を得られる。
【0081】
図13を参照すれば、基板処理装置100において、容量結合形プラズマ発生器1200aの両電極1210a、1210bは、各々互いに異なる周波数の高周波電力を発生させる2つの高周波電源2000a、2000bに各々連結され得る。これによって、第1電極1210aと第2電極1210bには、互いに異なる高周波電力が印加され、同時に2つの互いに異なる周波数の高周波電力を利用してプラズマ工程を進行することができる。
【0082】
図14を参照すれば、基板処理装置100では、3つ以上の互いに異なる周波数を利用することもできる。例えば、工程チャンバー1000には、ハウジング1100内の上部に第1電極1210aが配置され、その下に離隔されて第2電極1210bと第3電極1210cとが配置され得る。この時、互いに異なる第1高周波電力、第2高周波電力、第3高周波電力を発生させる高周波電源2000a、2000b、2000cが各々電極1210a、1210b、1210cに連結され得る。これによって、工程チャンバー1000では、同時に3つの高周波電力によってプラズマ工程が遂行できる。例えば、第1高周波電力、第2高周波電力、第3高周波電力の周波数は、各々2Mhz、13.6Mhz、100Mhzであり得る。一方、場合によっては第2電極1210bと第3電極1210cとが一体として提供され得る。
【0083】
このように、同時に広い帯域幅の周波数を利用する場合には、インピーダンスの変化を予測するのが難しく、また帯域幅が異なるため、インピーダンスを整合するのが難しい。この場合、ルスロフ型トランスフォーマは、広い帯域幅に対してインピーダンス変換が可能であるため、効果的に利用され得る。
【0084】
図15は、図14の基板処理装置におけるインピーダンス整合の様子を示したグラフである。
【0085】
図15を参照すれば、1:4アンアンルスロフ型トランスフォーマを利用する場合に、周波数2Mhz、13.6Mhz、100Mhzの3つの帯域幅において同時に、インピーダンスが、高周波電源2000側の固定インピーダンスである50Ω(Ohm)に整合されていることが分かる。
【0086】
以下では、本発明による基板処理装置100を利用したインピーダンスマッチング方法に関して説明する。但し、インピーダンスマッチング方法は、上述した基板処理装置100以外にも、これと同一又は類似な他の装置を利用して遂行できる。また、このようなインピーダンスマッチング方法は、これを遂行するコード又はプログラムの形態としてコンピューター読出し可能記録媒体に格納され得る。
【0087】
インピーダンスマッチング方法では、先ずガス供給源(図示せず)から工程チャンバー1000へソースガスが流入される。ソースガスが流入されると、高周波電源2000が高周波電力を発生させ、伝送ラインを通じて高周波電力がプラズマ発生器1200へ伝送される。プラズマ発生器1200は、高周波電力を利用してソースガスをイオン化させてプラズマを形成する。プラズマが形成されると、工程チャンバー1000は、プラズマを利用して基板を処理する。このように、プラズマを生成し基板を処理する過程において、基板から発生する異物質や、プラズマの密度、ソースガスの種類、工程チャンバー1000の内部温度や内部圧力等の多様な工程条件によって、プラズマインピーダンス又は工程チャンバー1000のインピーダンスは変化する。特に、パルスモードで高周波電力を供給するプラズマ工程の初期においては、そのインピーダンスが急激に変化する。
【0088】
インピーダンス測定器3400は、工程チャンバー1000のインピーダンスを測定し、その測定値を制御器3300へ送信する。また、インピーダンスが変化することによってインピーダンス整合が失われて反射波が発生することがあるため、反射電力測定器3500は、高周波電源2000側の反射電力を測定し、その測定値を制御器3300へ送信する。
【0089】
制御器3300は、インピーダンス測定器3400及び反射電力測定器3500から測定値を取得して制御信号を生成し、生成された制御信号をマッチング回路3100へ送信する。
【0090】
マッチング回路3100においては、複数のスイッチ3112が制御信号にしたがって開かれるか、或いは閉められる。可変キャパシター3110は、その靜電容量が、複数のスイッチ3112の中で閉められたスイッチ3112に連結されたキャパシター3111の靜電容量の和によって調節される。これによって、高周波電源2000側と工程チャンバー1000側とのインピーダンス整合が遂行できる。但し、マッチング回路3100の回路構成は、可変キャパシター3110に限定されるものではなく、他の構成である場合にも、これと同様に制御信号にしたがってインピーダンスを補償して整合できる。
【0091】
このようなインピーダンスの整合過程において、制御器3300は、デジタル信号による制御信号を送信する。そして、ダイオードやトランジスター等で具現されたデジタル方式のスイッチ3112は、デジタル信号による制御信号にしたがってオンオフされるため、機械的な駆動方式のスイッチに比べて迅速にインピーダンスを補償できる。
【0092】
ここで、マッチング回路3100は、実際に工程チャンバー1000で変化するインピーダンスの変化量の代わりに、トランスフォーマ3200を経て減衰されたインピーダンスの変化量を補償することにより、インピーダンスをマッチングすることができる。トランスフォーマ3200は、マッチング回路3100と工程チャンバー1000との間に配置され、マッチング回路3100側に対して工程チャンバー1000のインピーダンスを減衰させ得る。1:4アンアンルスロフ型トランスフォーマが使用される場合、工程チャンバー1000のインピーダンスは、1/4に減衰される。したがって、マッチング回路3100は、工程チャンバー1000のインピーダンス変化量の1/4大きさのインピーダンスを補償することにより、インピーダンスをマッチングすることができる。
【0093】
特に、プラズマ工程の初期において、パルスモードで電力が供給される過程では、工程チャンバー1000のインピーダンスが急激に変化するため、マッチング回路3100がデジタル方式のスイッチを使用しても、最小限の遅延時間が発生する。そのため、このようにインピーダンスの変化幅を減衰させることにより、マッチング回路3100の応答速度が向上でき、反射波の発生を最少化することができる。
【0094】
以上で言及された本発明の実施形態は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者の本発明に対する理解を助けるために記載されたものであるので、本発明が上述した実施形態によって限定されるものではない。
【0095】
したがって、本発明は、上述した実施形態及びその構成要素を選択的に組み合わせるか、公知の技術を加えて具現でき、さらに本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で修正、置換及び変更された形態の全てを含む。
【0096】
また、本発明の保護範囲は下の特許請求の範囲によって解釈されなければならす、それと均等な範囲内にある発明は全て権利範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0097】
100 基板処理装置、
110 伝送ライン、
1000 工程チャンバー、
1100 ハウジング、
1200 プラズマ発生器、
1210 電極、
2000 高周波電源、
3000 インピーダンスマッチング装置、
3100 マッチング回路、
3200 トランスフォーマ、
3300 制御器、
3400 インピーダンス測定器、
3500 反射電力測定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力を発生させる高周波電源と、
前記高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行する工程チャンバーと、
前記工程チャンバーの変化するインピーダンスを補償するマッチング回路と、
前記工程チャンバー及び前記マッチング回路間に配置されて前記工程チャンバーのインピーダンスを減衰させるトランスフォーマと、を含む基板処理装置。
【請求項2】
前記トランスフォーマは、ルスロフ(Ruthroff)型トランスフォーマである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ルスロフ型トランスフォーマは、インピーダンス変換比が1:4のアンアン(unbalanced−to−unbalanced:不平衡−不平衡)トランスフォーマである請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記工程チャンバーのインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、
反射電力を測定する反射電力測定器と、
前記インピーダンス測定器及び前記反射電力測定器の測定値に基づいて前記マッチング回路を制御する制御器と、をさらに含む請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記マッチング回路は、互いに並列に配置される複数のキャパシター及び前記複数のキャパシターに各々連結された複数のスイッチを含み、
前記制御器は、前記測定値に基づいて制御信号を生成し、
前記マッチング回路は、前記制御信号にしたがって前記複数のスイッチを開閉する請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記マッチング回路は、逆Lタイプ(inverse−L−type)の回路である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記工程チャンバーは、前記プラズマ工程が遂行される空間を提供するハウジング及び前記高周波電力を利用して前記ハウジングにプラズマを提供するプラズマ発生器を含む請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生器は、前記ハウジングの内部に互いに離隔されて配置される複数の電極を含む容量結合形プラズマ(CCP:Capacitively coupled plasma)発生器である請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記高周波電源、前記マッチング回路及び前記トランスフォーマは、複数であり、
前記高周波電源は、互いに異なる周波数の高周波電力を発生させ、
前記複数の電極には、前記互いに異なる周波数の高周波電力が印加され、
前記高周波電力が印加される電極毎に前記マッチング回路及び前記トランスフォーマが連結される請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
高周波電力を利用してプラズマ工程を遂行する基板処理装置においてインピーダンスをマッチングする方法であって、
マッチング回路と工程チャンバーとの間に配置されたトランスフォーマが、前記プラズマ工程が進行される間における工程チャンバーのインピーダンスの変化量を減衰し、前記マッチング回路が減衰されたインピーダンスの変化量を補償してインピーダンス整合を遂行するインピーダンスマッチング方法。
【請求項11】
前記トランスフォーマは、インピーダンス変換比が1:4のトランスフォーマであり、
前記マッチング回路は、前記工程チャンバーのインピーダンスの変化量の1/4を補償してインピーダンス整合を遂行する請求項10に記載のインピーダンスマッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−98177(P2013−98177A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237914(P2012−237914)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【出願人】(500376449)セメス株式会社 (61)
【氏名又は名称原語表記】SEMES CO., Ltd
【住所又は居所原語表記】278, Mosi−ri, Jiksan−eup, Seobuk−gu, Cheonan−si, Chungcheongnam−do 330−290, Republic of Korea
【Fターム(参考)】