説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】膜応力の小さい低誘電率の絶縁膜を形成できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理室内へ無機シリコンガスと酸素含有ガスを供給している状態で、励起エネルギーを処理室内へ供給して、基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、処理室内へ有機シリコンガスを供給している状態で、励起エネルギーを処理室内へ供給して、基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、を行うことにより、処理室内の基板表面に絶縁膜を形成するよう、基板処理装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理用ガスを紫外光等により励起し、基板上に薄膜を形成する薄膜形成技術に関するものであり、例えば、半導体集積回路(以下、ICという。)が作り込まれる半導体基板(例えば、半導体ウエハ)に、酸化膜等を堆積(デポジション)して成膜等する上で有効な基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造においては、ICの高集積化に伴い、ICを構成する素子の微細化が求められている。例えば、DRAMやNAND型フラッシュメモリにおけるトタンジスタの素子分離法として、寸法の制御性に優れ、かつ占有面積の小さいSTI(Shallow Trench Isolation)法が用いられている。STI法は、トタンジスタ素子を電気的に分離するために、半導体基板に細い溝(トレンチ)を形成した後、絶縁材料である酸化シリコン(SiO)で溝を埋めるものである。STI法には、TEOS(テトラエトキシシラン)とO(オゾン)を用いた常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、TEOSを用いたプラズマCVD法等が用いられてきた。
【0003】
しかし、最近ではますますICの高集積化が進み、素子分離溝の幅や孔の開口寸法が0.1μm以下となり、さらに、素子分離溝の深さと幅との比であるアスペクト比(溝の深さ/溝の幅)が5を超えて増大してきている。そのため、従来使用されてきた上記常圧CVD法や、成膜スパッタとエッチングを組み合わせたHDP―CVD(High Density Plasma CVD)法や、SA−CVD(Sub-Atom spare CVD)法では、素子分離溝中に、ボイドやシームを作らずに、絶縁膜を埋め込むことが困難となっており、特に、65nm node以降では極めて困難である。
ここで、ボイドとは、溝内の奥部へ絶縁膜を十分埋め込む前に、溝内の開口部が絶縁膜で塞がれて形成される空隙であり、シームとは、溝の両側の側壁から成長する成膜の継ぎ目に発生するスリット状の欠陥である。
【0004】
そこで最近、溝部等の奥部へ絶縁膜を十分埋め込むために、真空紫外光を用いた光励起(Photo Induced)CVD法等が用いられている。真空紫外光を用いた光励起CVD法においては、例えば、基板を載置した処理室内に有機シリコンガス等の材料ガスを供給しつつ真空紫外光を照射して、基板上にシリコン酸化膜を形成するものである。
例えば、100℃以下での低温域で光励起CVD法により薄膜を形成する場合、材料として例えば、TEOSやOMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン:Octamethylcyclotetorasiloxane)、HMDS(ヘキサメチルジシラン:hexamethyldisilane)等のポリシロキサン系材料を用いた有機シリコンガスと、例えば酸素ガス等の酸化剤とを用いることにより、流動性の高い膜の形成が可能であり、微細な溝等への埋め込みが可能となった。
【0005】
しかし、光励起CVD法は、成膜温度が低温であることや、光源がプラズマのような高いエネルギー源ではないため、光励起CVD法で形成した膜の密度は低く、また、成膜した際に下地のシリコン基板との界面における密着力不足や膜の密度差によるストレス(応力)が発生する。このストレスは、リーク電流の原因となるクラックを発生させ、また、極細の溝に絶縁膜を形成するSTIでは、形成した絶縁膜が崩れる原因となる。また、有機基を含む材料を用いるため、膜中にC(炭素)やH(水素)といった有機成分が多く残存する。
膜密度を向上し、また、膜中の有機成分を脱離するために、光励起CVD法で形成した膜に対して、熱処理等により改質処理することが行われるが、熱処理を行うと、膜応力により局所的に膜破壊が発生したり、界面からの膜剥がれ等が発生しやすくなる。また、膜中の有機成分が脱離することによる膜密度の減少や膜の収縮が発生し、クラックが生じる可能性が高くなる。
【0006】
下記の特許文献1には、有機シリコンガスに真空紫外光を照射して、高アスペクト比で狭い幅の溝内に、シリコン酸化膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−87475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、流動性の高い膜の形成が可能な有機シリコンガスを用いて、基板上に膜応力の小さい低誘電率の絶縁膜を形成することのできる基板処理装置、基板処理方法及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための、本発明に係る基板処理装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
基板を処理する処理室と、
無機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
有機シリコンガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第3のガス供給部と、
前記処理室内へ励起エネルギーを供給する励起部と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
前記第1のガス供給部、前記第2のガス供給部、前記第3のガス供給部、前記励起部、前記排気部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1のガス供給部及び前記第3のガス供給部から前記処理室内へ前記無機シリコンガスと酸素含有ガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、前記第2のガス供給部から前記処理室内へ前記有機シリコンガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程とを行うことにより、前記処理室内の基板表面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【0010】
また、上記の課題を解決するための、本発明に係る半導体装置の製造方法の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
基板を処理室内へ搬入する工程と、
無機シリコンガスと酸素含有ガスとを前記処理室内へ供給するとともに、前記処理室内へ励起エネルギーを供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、
有機シリコンガスを前記処理室内へ供給するとともに、前記処理室内へ励起エネルギーを供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
このように基板処理装置や半導体装置の製造方法を構成すると、有機シリコンガスを用いて、基板上に膜応力の小さい低誘電率の絶縁膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における基板処理装置の垂直断面図である。
【図2】本発明の実施形態における成膜工程を示す図である。
【図3】本発明の実施形態におけるサイクル成膜時の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態における基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態における基板処理装置の垂直断面図である。図1において、1は、その内部で基板を処理する基板処理室(以下、処理室)である。処理室1内は、後述する真空ポンプ10により、1Pa未満の低圧状態に減圧することができる。2は処理対象の基板であり、本実施形態では、シリコンウエハであって、1度の処理において1枚の基板が処理される。3は、基板2を処理する際に、基板2を載置する基板支持部である。基板支持部3は、基板2の温度を検出する温度検出器3aと、基板2を加熱するヒータユニット3bを内蔵し、回転機構(不図示)により、水平方向に回転するよう構成されている。4は、材料ガスを分解するための励起エネルギーを供給する励起部である。励起部4は、本実施形態では、紫外光を発光する発光部であり、光源ランプ4aを基板2に対向させて配置している。5は、発光部4から発光された紫外光を、処理室1内に透過させる透過窓であり、本実施形態では石英から構成される。透過窓5は、処理室1の内と外とを隔てる隔壁の一部として構成され、1Pa未満の低圧に耐えられる機械的強度を有する。
【0014】
本実施形態においては、発光部4は、波長域100nmから400nmの紫外光を発光する。材料ガスを分解するためには、一定値以上の光エネルギーが必要であり、材料ガスに応じて光の波長を選択する必要がある。
本実施形態においては、発光部4の内部には、光源ランプ4aとしてエキシマランプを備えるとともに、ヘリウム(He)ガス、窒素(N2)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)等の光源ランプ4aを冷却するガスが封入されている。
また、光源ランプ4a内にはAr、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスが封入されている。これらの希ガスを光源ランプ4a内に封入することにより、紫外光の波長を設定することができる、例えば、Arを封入した場合は波長126nmの紫外光、Krを封入した場合は波長146nmの紫外光、Xeを封入した場合は波長172nmの紫外光を発生することができる。本実施例では、Xeを封入して紫外光を発生させる。なお、光源ランプ4aとして発光の中心波長が185nmの低圧水銀ランプを用いることもできる。
【0015】
発生した紫外光は、石英製の透過窓5を通して、処理室1内に供給される。処理室1と発光部4とは、石英製の透過窓5により、気密に分離されている。したがって、発光部4の内部のガスは、処理室1に流出しないようになっている。また、光源ランプ4aが破損したとしても、光源ランプ4aを構成する部品が、処理室1内に暴露することが無く、光源ランプ4aに封入された希ガスも処理室1内に流入しないようになっている。また、処理室1内の材料ガス等が、発光部4内に流入することもない。
【0016】
次に、材料ガス等のガス供給部について説明する。ガス供給部は、後述する第1〜第4のガス供給部から構成される。図1に示すように、処理室1のガス導入管6には、材料ガスである無機シリコンガスを供給するガス供給管6a、材料ガスである有機シリコンガスを供給するガス供給管6b、酸素含有ガスを供給するガス供給管6c、不活性ガスを供給するガス供給管6dが接続されている。
【0017】
ガス供給管6aには、ガス流れの上流から順に、無機シリコンガスを供給する無機シリコンガス源15a、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)14a、及び開閉バルブ13aが設けられている。本実施形態においては、無機シリコンガスは、例えば、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、テトラシラン(Si10)などのうち、少なくとも1種類のガスを用いることができる。
ガス導入管6、ガス供給管6a、材料ガス源15a、MFC14a、開閉バルブ13a等から、材料ガス供給部である第1のガス供給部が構成される。
【0018】
ガス供給管6bには、ガス流れの上流から順に、有機シリコンガスを供給する有機シリコンガス源15b、MFC14b、及び開閉バルブ13bが設けられている。本実施形態においては、有機シリコンガスは、例えば、TEOS、OMCTS、HMDSなどのポリシロキサン系材料のうち、少なくとも1種類のガスを用いることができる。
ガス導入管6、ガス供給管6b、材料ガス源15b、MFC14b、開閉バルブ13b等から、材料ガス供給部である第2のガス供給部が構成される。
【0019】
ガス供給管6cには、ガス流れの上流から順に、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス源15c、MFC14c、及び開閉バルブ13cが設けられている。本実施形態においては、酸素含有ガスは、材料ガス中や堆積膜中のシリコンを酸化するための酸化剤として使用する酸化ガスであり、例えば、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガスなどのうち、少なくとも1種類のガスを用いることができる。
ガス導入管6、ガス供給管6c、酸素含有ガス源15c、MFC14c、開閉バルブ13c等から、酸素含有ガス供給部である第3のガス供給部が構成される。
【0020】
ガス供給管6dには、ガス流れの上流から順に、不活性ガスを供給する不活性ガス源15d、MFC14d、及び開閉バルブ13dが設けられている。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス等を用いることができる。
ガス導入管6、ガス供給管6d、不活性ガス源15d、MFC14d、開閉バルブ13d等から、不活性ガス供給部である第4のガス供給部が構成される。
【0021】
なお、ガス導入管6には、高周波印加部11のような第2の励起部を設けてもよい。高周波印加部11は、例えば、周波数400kHz、電力5kWで、ガス供給管6cからガス導入管6に流れる酸素含有ガスに高周波電力を印加し、該流れるガスをプラズマ状態にする等により、酸素含有ガスを活性化することができる。あるいは、ガス供給管6aからガス導入管6に流れる無機シリコンガスや、ガス供給管6bからガス導入管6に流れる有機シリコンガスに高周波電力を印加し、該流れるガスをプラズマ状態にする等により、無機シリコンガスや有機シリコンガスを活性化することができる。
【0022】
MFC14a〜14d及び開閉バルブ13a〜13dは、制御部12に電気的に接続されている。制御部12は、処理室1内に供給するガスの種類が所定のタイミングにて所定のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所定のタイミングにて所定の流量となるよう、MFC14a〜14d及び開閉バルブ13a〜13dを制御する。
【0023】
次に、処理室1内の雰囲気(ガス)を排気する排気部について説明する。図1に示すように、処理室1内の雰囲気を排気するガス排気管7には、ガス流れの上流から順に、圧力計8、圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ9、真空排気装置としての真空ポンプ10が設けられている。真空ポンプ10は、大気圧からの荒引き用のポンプと高真空に排気するためのターボ分子ポンプとを備え、処理室1内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう、処理室1内を真空排気するように構成されている。
【0024】
APCバルブ9および圧力計8は、制御部12に電気的に接続されている。制御部12は、処理室1内の圧力が所定のタイミングにて所定の圧力となるように、圧力計8により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ9の開度を制御するように構成されている。
ガス排気管7、圧力計8、APCバルブ9、真空ポンプ10等から排気部が構成される。
【0025】
処理室1に隣接して、基板搬送室(不図示)が設けられている。基板搬送室内には、処理室1内へ基板2を搬入し、また、処理室1内から基板2を搬出する基板搬送ロボット(不図示)が設けられている。基板搬送ロボットは、搬送アームと基板載置部を備え、基板搬送室内で基板2を一定時間保持しておくことができる。基板搬送室は、基板搬送室用の真空ポンプ(不図示)に接続されており、大気圧から100Pa程度まで減圧可能である。また、窒素等の不活性ガスを供給して、任意の圧力に調整できるようになっている。
【0026】
制御部12は、図示しない操作部、表示部、入出力部等を備えていて、基板処理装置の各構成部に電気的に接続されており、各構成部を制御する。制御部12は、レシピ(成膜プロセス等の制御シーケンス)に基づき、処理室1内の圧力制御、各処理ガス等の流量制御、および処理室1内への基板搬入等の機械駆動制御等を行う。また、制御部12は、ハードウェア構成として、CPU(中央演算ユニット)と、CPUの動作プログラムやレシピ等を格納するメモリとを備えるものである。
【0027】
次に、本実施形態に係る基板処理装置を用いた半導体装置の製造方法を、図2と図3を用いて説明する。図2は、本実施形態における絶縁膜の成膜工程を示す図である。図3は、本実施形態におけるサイクル成膜時の状態を示す模式図である。なお、以下に説明する基板処理装置の動作は、制御部12により制御される。
【0028】
(A)基板搬入工程(ステップS1)
まず、図2のステップS1に示すように、処理対象である1枚の基板2を、基板搬送ロボットによって基板処理装置外部から基板搬送室内へ搬入する。基板搬送室内は、不活性ガスが供給されて該不活性ガスに置換されるとともに、基板搬送室用の真空ポンプによって100Pa程度の低圧雰囲気にされている。基板2には、前工程で溝が形成されている。
また、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給され、不活性ガスにより処理室1内が置換されるとともに、APCバルブ9によって処理室1内が100Pa程度に調圧される。それから、基板搬送ロボットによって、基板2が、図1に示す基板処理装置の基板搬入口(不図示)から、処理室1内の基板支持部3に載置される。なお、本実施形態では基板の加熱を行っていないが、必要に応じてヒータユニット3bにより、基板2を所定の温度(25℃〜100℃)に昇温して維持しても良い。
【0029】
(B)シリコン酸化膜形成工程(ステップS2)
次に、図2のステップS2に示すように、第1のガス供給部及び第3のガス供給部から処理室1内へ無機シリコンガスと酸素含有ガスを供給し、該無機シリコンガスと酸素含有ガスを供給している状態で、励起部である発光部4から励起エネルギーである紫外光を処理室1内へ供給して、処理室1内の基板2の表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程を行う。
【0030】
このシリコン酸化膜形成工程においては、真空ポンプ10により処理室1の内部が減圧され、ジシラン等の無機シリコンガスが、無機シリコンガス源15aからMFC14aを通って1〜300sccm、例えば200sccmの流量に調節された後、ガス導入管6を介して処理室1内へ供給される。これに並行又は遅延して、酸素ガス等の酸素含有ガスが、酸素含有ガス供給源15cからMFC14cを通って1〜600sccm、例えば400sccmの流量に調節された後、ガス導入管6を介して処理室1内へ供給される。このとき同時に、窒素ガス等の不活性ガスが、キャリアガス又は希釈ガスとして、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給されるようにしてもよい。
無機シリコンガスと酸素含有ガスが、処理室1に供給されている状態において、APCバルブ9により処理室1内を所定の圧力(1〜100Pa、例えば1Pa)に調整し、処理室1内の無機シリコンガスと酸素含有ガス及び基板2に向けて、発光部4から紫外光を約1〜60秒間、例えば20秒間照射する。無機シリコンガスは、紫外光照射により、分解、励起されて気相中や基板表面上で反応し、基板2上に約100〜300nm、例えば200nmの膜厚のシリコン酸化膜が形成される。このとき基板2の温度は、特に加熱しないが、例えば約30℃に保たれる。
なお、ガス導入管6を通過する無機シリコンガスや酸素含有ガスに対し、高周波印加部11からエネルギーを加えて、無機シリコンガスや酸素含有ガスをより活性化するようにしてもよい。
【0031】
この(B)シリコン酸化膜形成工程によって形成されるシリコン酸化膜は、後述の(D)シリコン膜形成工程で形成されるシリコン膜よりも、含有するシリコン原子の割合が多いシリコンリッチな膜である。
このシリコン酸化膜が基板2の表面に直接形成され、基板2表面のシリコン下地に接するので、後述の(D)シリコン膜形成工程で形成されるシリコン原子の割合の少ないシリコン膜を基板2の表面に直接形成する場合に比べて、基板2の表面に直接形成されたシリコン酸化膜の応力は小さい。したがって、基板2との界面におけるシリコン酸化膜の密着性が向上し、膜剥がれの発生を抑制することができる。
【0032】
図3(a)は、このときの成膜状態を示す模式図である。図3(a)に示すように、基板2には予め溝30が形成されており、基板2のシリコンの下地31の表面には、(B)シリコン酸化膜形成工程によってシリコン酸化膜32が形成されている。シリコン酸化膜32は、図3(a)に示すように、段差被覆性のよい堆積膜となっている。
【0033】
(C)第1の排気工程(ステップS3)
図2のステップS3に示すように、(B)シリコン酸化膜形成工程の後、紫外光照射を停止し、無機シリコンガスと酸素含有ガスの供給を停止して、排気部により処理室1内の雰囲気を排気する第1の排気工程を行う。このとき同時に、窒素ガス等の不活性ガスを、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給して、処理室1内の雰囲気を不活性ガスで押し出すことが好ましい。
第1の排気工程を行うことにより、次の(D)シリコン膜形成工程において、有機シリコンガスと、(B)シリコン酸化膜形成工程で用いた無機シリコンガスや酸素含有ガスとが混ざらないようにすることができる。混ざらないようにすることで、ステップS2で形成する膜とステップS4で形成する膜の組成制御を、より厳密に行うことができるので、第1の排気工程を行うことが好ましい。
【0034】
(D)シリコン膜形成工程(ステップS4)
次に、図2のステップS4に示すように、第2のガス供給部から処理室1内へ有機シリコンガスを供給している状態で、励起部である発光部4から励起エネルギーである紫外光を処理室1内へ供給して、処理室1内の基板2の表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程を行う。
【0035】
シリコン膜形成工程においては、HMDS等の有機シリコンガスが、有機シリコンガス源15bからMFC14bを通って1〜300sccm、例えば200sccmの流量に調節された後、ガス導入管6を介して処理室1内へ供給される。このとき同時に、窒素ガス等の不活性ガスが、キャリアガス又は希釈ガスとして、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給されるようにしてもよい。
有機シリコンガスが、処理室1に供給されている状態において、APCバルブ9により処理室1内を所定の圧力(1〜100Pa、例えば1Pa)に調整し、有機シリコンガスと基板2に向けて、発光部4から紫外光を約1〜60秒間、例えば20秒間照射する。有機シリコンガスは、紫外光照射により、分解、励起されて気相中や基板表面上で反応し、基板2上に約50〜300nm、例えば200nmの膜厚のシリコン膜が形成される。このとき基板2の温度は、特に加熱しないが、例えば約30℃に保たれる。
なお、ガス導入管6を通過する有機シリコンガスに対し、高周波印加部11からエネルギーを加えて、有機シリコンガスをより活性化するようにしてもよい。
また、本実施形態の(D)シリコン膜形成工程においては、酸素原子を含有するシリコン膜の形成を目的として、有機シリコンガスとは別に酸素含有ガスを流してもよい。例えば、HMDS((CH)Si‐Si(CH)のような酸素(O)原子を含まない有機シリコンガスを用いる場合は、酸素含有ガスを流してもよいが、TEOS(Si(OC)やOMCTS([(CHSiO])のような酸素(O)原子を含む有機シリコンガスを用いる場合は、酸素含有ガスを流さない。その理由は、HDMSのような酸素を含まない原料を用いる場合は、別途供給する酸素含有ガスの供給量によって、酸素原子を含有するシリコン膜の酸素含有量を調整することができ、誘電率を微調整することができる。TEOSやOMCTSのような酸素を含んでいる原料の場合は、酸素原子を含有するシリコン膜中の酸素原子量が多くなり、シリコン酸化膜が形成され、流動性の低い膜が形成される可能性があるからである。
【0036】
この(D)シリコン膜形成工程によって形成されるシリコン膜は、前述の(B)シリコン酸化膜形成工程で形成されるシリコン酸化膜よりも流動性が大きいので、STI等の溝の中を埋めることが容易である。また、有機シリコンガスから形成したシリコン膜は、無機シリコンガスから形成したシリコン酸化膜よりも、有機成分の割合が大きいので、誘電率が低い。
図3(b)は、このときの成膜状態を示す模式図である。図3(b)に示すように、シリコン酸化膜32の上にシリコン膜33が形成されている。シリコン膜33は、シリコン酸化膜32よりも流動性が大きいので、溝30内を埋めることがシリコン酸化膜32よりも容易であるのが分かる。
【0037】
(E)第2の排気工程(ステップS5)
図2のステップS5に示すように、(D)シリコン膜形成工程の後、紫外光照射を停止し、有機シリコンガスの供給を停止して、排気部により処理室1内の雰囲気を排気する第2の排気工程を行う。このとき同時に、窒素ガス等の不活性ガスを、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給して、処理室1内の雰囲気を不活性ガスで押し出すことが好ましい。
第2の排気工程を行うことにより、次に(B)シリコン酸化膜形成工程を行う場合において、無機シリコンガスや酸素含有ガスと、(D)シリコン膜形成工程で用いた有機シリコンガスが混ざらないようにすることができる。混ざらないようにすることで、ステップS4で形成する膜とステップS2で形成する膜の組成制御を、より厳密に行うことができるので、第2の排気工程を行うことが好ましい。
【0038】
(F)繰り返し工程
次に、前述した(B)〜(E)工程を1回(1サイクル)行うにより所定の膜厚の絶縁膜が形成されてない場合は(ステップS6でNo)、ステップS2に戻り、ステップS2〜ステップS5の工程、すなわち、前述した(B)シリコン酸化膜形成工程、(C)第1の排気工程、(D)シリコン膜形成工程、(E)第2の排気工程からなる一連の工程を所定の回数(サイクル)繰り返し行う。この繰り返しにより、シリコン膜層をシリコン酸化膜層で挟み、シリコン酸化膜層とシリコン膜層が交互に形成された構造の絶縁膜(シリコン酸化膜)を、基板2上に所定の膜厚で形成することができる。
【0039】
図3(c)は、2回目の(B)シリコン酸化膜形成工程を行った後の成膜状態を示す模式図である。図3(c)に示すように、シリコン膜33の上にシリコン酸化膜34が形成されている。
図3(d)は、2回目の(D)シリコン膜形成工程を行った後の成膜状態を示す模式図である。図3(d)に示すように、シリコン酸化膜34の上にシリコン膜35が形成され、溝30内が全て埋められている。
図3(e)は、3回目の(B)シリコン酸化膜形成工程を行った後の成膜状態を示す模式図である。図3(e)に示すように、シリコン膜35の上にシリコン酸化膜36が形成されている。
【0040】
前述した(B)〜(E)工程を1サイクル又は複数サイクル行うことにより所定の膜厚の絶縁膜が形成された場合は(ステップS6でYes)、そのプロセスの必要に応じて、(B)シリコン酸化膜形成工程と(C)第1の排気工程を行い、シリコンリッチなシリコン酸化膜でキャップ層を形成する(ステップS7)。前述の図3(e)は、シリコン膜35の上にキャップ層であるシリコン酸化膜36が形成されたものである。
このキャップ層を形成すると、基板2上に形成された絶縁膜の最上層が、有機成分の割合の少ないシリコンリッチなシリコン酸化膜となるので、本実施形態の絶縁膜形成後にフッ化水素(HF)等によるエッチング工程を行う場合に、基板2上に形成された絶縁膜の最上層が有機成分の割合の少ないシリコン膜である場合に比べて、エッチングに対する耐食性が向上する。
【0041】
なお、ステップS7のキャップ層形成を行わなかった場合は、基板2上に形成された絶縁膜の最上層が有機成分の多いシリコン膜となるので、基板2上に形成された絶縁膜の最上層がシリコンリッチなシリコン酸化膜に比べて、基板2表面の撥水性が向上する。撥水性の高いシリコン膜を、ICや発光デバイスのキャップ層やコーティングに用いることで、外界の水分や湿気から保護することができる。
このように、ステップS7のキャップ層形成は、そのプロセスに応じて、実施又は不実施となる。
【0042】
(G)酸化改質処理工程(ステップS8)
次に、そのプロセスの必要に応じて、図2のステップS8に示すように、励起部である発光部4から励起エネルギーである紫外光を処理室1内へ供給する酸化改質処理工程を行う。この酸化改質処理工程においては、第3のガス供給部から処理室1内へ酸素含有ガスを供給することなく発光部4から紫外光を処理室1内へ供給するか、又は、第3のガス供給部から処理室1内へ酸素含有ガスを供給している状態で、発光部4から紫外光を処理室1内へ供給する。
【0043】
この(G)酸化改質処理工程において酸素含有ガスを供給する場合は、酸素ガス等の酸素含有ガスが、酸素含有ガス供給源15cからMFC14cを通って1〜600sccm、例えば400sccmの流量に調節された後、ガス導入管6を介して処理室1内へ供給される。このとき同時に、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給されるようにしてもよい。
酸素含有ガスを供給しない場合は、窒素ガス等の不活性ガスが、MFC14dを通って1〜600sccm、例えば400sccmの流量に調節された後、ガス導入管6を介して不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給される。
【0044】
酸素含有ガス又は不活性ガスが処理室1に供給されている状態において、APCバルブ9により処理室1内を所定の圧力(1〜100Pa、例えば1Pa)に調整し、基板2の表面に向けて、発光部4から紫外光を約1〜60秒間、例えば20秒間照射する。このとき基板2の温度は、特に加熱しないが、例えば約30℃に保たれる。
【0045】
この紫外光照射の励起エネルギーにより、シリコン膜の酸化とシリコン酸化膜の改質を行うことができる。すなわち、有機シリコン原料で形成されたシリコン膜は、励起エネルギーにより、シリコン膜中の有機成分であるC(炭素原子)やH(水素原子)が脱離し、シリコン膜の体積が縮小するとともに、上下のシリコン酸化膜や処理室1内の雰囲気から酸素が供給されてシリコン酸化膜となる。また、無機シリコン原料で形成されたシリコン酸化膜は、酸化処理を施すと酸素が供給されて体積が膨張するので、シリコン膜の体積縮小を補うことができ、膜応力を小さくすることができる。
このように、シリコン膜とシリコン酸化膜を隣接させて形成した後に、酸化改質処理を行うと、シリコン膜の膜密度低下の抑制や膜密度変化による膜ストレスを緩和することができ、ボイドの発生を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、シリコン膜層をシリコン酸化膜層で挟んでいるので、励起エネルギーにより、シリコン膜層に隣接する上下両側のシリコン酸化膜層中の酸素がシリコン膜層へ拡散し、シリコン膜を酸化することが容易となる。
また、本実施形態では、基板2の表面にシリコン酸化膜層を形成し、次にシリコン膜層を形成しているので、シリコン膜層の最下層は、上下両側のシリコン酸化膜層で挟まれる構造となるか、又は、シリコン酸化膜層と酸素含有ガスで挟まれる構造となる。したがって、基板2の表面にシリコン膜層を形成し、次にシリコン酸化膜層を形成する場合に比べ、シリコン膜層の最下層をより酸化することができる。
また、最上層をシリコン膜層とした場合においても、酸素含有ガスを供給することにより、最上層のシリコン膜は、その上下両側から酸素を供給されるので、最上層のシリコン膜を酸化することが容易となる。
【0047】
なお、(G)酸化改質処理工程において、酸素含有ガスを供給しなくても、ある程度、シリコン膜の酸化とシリコン酸化膜の改質を行うことができるが、酸素含有ガスを供給する方が、よりシリコン膜の酸化とシリコン酸化膜の改質を行うことができるので好ましい。
【0048】
(H)基板搬出工程(ステップS9)
次に、図2のステップS9に示すように、窒素ガス等の不活性ガスが、不活性ガス供給源15dから処理室1内へ供給され、不活性ガスにより処理室1内が置換されるとともに、APCバルブ9によって処理室1内が100Pa程度に調圧される。それから、やはり100Pa程度に調圧されている基板搬送室内へ、基板搬送ロボットにより、基板2を搬送する。その後、基板搬送室内へ窒素ガス等の不活性ガスを供給し、基板搬送室内が大気圧に復帰した後に、基板搬送ロボットにより、処理済みの基板2が処理室1の外部に搬出される。
【0049】
前述の(H)基板搬出工程の後、処理室1から搬出された基板2の表面に、金属含有膜又は半導体膜を用いた回路配線を形成する工程を行うこともできる。このようにすると、本実施形態で作成した層間絶縁膜の誘電率が低いので、金属含有膜又は半導体膜により電子回路の配線を作製するときに、CR(静電容量・抵抗)時定数の小さい回路を作製することができる。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、少なくとも次の(1)〜(8)の効果を得ることができる。
(1)無機シリコンガスを用いて形成したシリコン酸化膜と、有機シリコンガスを用いて形成したシリコン膜とを隣接した構造としているので、膜応力が小さく低誘電率であって電気的絶縁性に優れた絶縁膜を形成することができる。
(2)有機シリコンガスを用いて形成したシリコン膜を、無機シリコンガスを用いて形成したシリコン酸化膜で挟む構造としているので、さらに、膜応力が小さく低誘電率であって電気的絶縁性に優れた絶縁膜を形成することができる。
(3)シリコン酸化膜形成工程とシリコン膜形成工程とを含む絶縁膜形成工程を、2サイクル以上繰り返すので、膜応力が小さい低誘電率の絶縁膜を、所定の膜厚に形成することが容易となる。
(4)シリコン膜形成工程よりも先にシリコン酸化膜形成工程を行うので、基板と絶縁膜の密着性を向上でき、また、有機シリコンガスで形成したシリコン膜の応力を緩和することが容易となる。
(5)シリコン酸化膜とシリコン膜から構成される絶縁膜の形成後に、励起エネルギーを供給する酸化改質処理工程を行うので、シリコン酸化膜の改質とシリコン膜の酸化を行うことができる。
(6)酸化改質処理工程において酸素含有ガスを供給することにより、更に絶縁膜の質を向上することができる。
(7)励起部として紫外光を発生する光源を用いるので、低温のまま材料ガスを分解することができ、低温での成膜が可能となる。
(8)処理室から搬出された基板表面に、金属含有膜又は半導体膜を形成する工程を行うことにより、金属含有膜又は半導体膜により電子回路の配線を作製するときに、CR(静電容量・抵抗)時定数の小さい回路を作製することができる。
【0051】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
前記実施形態では、基板を1枚ずつ処理したが、複数の基板を同時に処理するようにしてもよい。
前記実施形態では、1つの処理空間で無機シリコンと有機シリコンの成膜を行ったが、別々の処理空間を構成して別々に成膜を行ってもよい。
前記実施形態において、第1の排気工程(ステップS3)と第2の排気工程(ステップS5)は、省略することもできるが、ステップS2で形成する膜とステップS4で形成する膜の組成を厳密に制御するためには、実施することが好ましい。
前記実施形態では、半導体装置の素子分離膜について説明したが、半導体装置の層間絶縁膜や、トランジスタのゲート絶縁膜や、抵抗、キャパシタ等にも適用できる。
前記実施形態では、励起部として紫外光による励起エネルギーを処理室内に供給する発光部を設けたが、高周波電力やマイクロ波による励起エネルギーを処理室内に供給するプラズマ生成部や、熱による励起エネルギーを処理室内に供給する加熱ランプを有する発光部等により励起部を構成してもよい。
前記実施形態では、酸化改質処理工程(ステップS8)を行うようにしたが、プロセス内容によっては、酸化改質処理工程を省略することもできる。
【0052】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。すなわち、第1の発明は、
基板を処理する処理室と、
無機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
有機シリコンガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第3のガス供給部と、
前記処理室内へ励起エネルギーを供給する励起部と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
前記第1のガス供給部、前記第2のガス供給部、前記第3のガス供給部、前記励起部、前記排気部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1のガス供給部及び前記第3のガス供給部から前記処理室内へ前記無機シリコンガスと酸素含有ガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、前記第2のガス供給部から前記処理室内へ前記有機シリコンガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程とを行うことにより、前記処理室内の基板表面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【0053】
第2の発明は、前記第1の発明の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記シリコン酸化膜形成工程と、前記シリコン膜形成工程とを各1回行う1サイクルの絶縁膜形成工程を、2サイクル以上繰り返すよう制御するものである基板処理装置。
【0054】
第3の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記シリコン酸化膜形成工程の後に、前記排気部により前記処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程を行い、前記シリコン膜形成工程の後に、前記排気部により前記処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【0055】
第4の発明は、前記第1の発明ないし前記第3の発明の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記絶縁膜形成工程において、前記シリコン膜形成工程よりも先に、つまり最初の成膜工程として、前記シリコン酸化膜形成工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【0056】
第5の発明は、前記第1の発明ないし前記第4の発明の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記絶縁膜形成工程の後、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給する酸化改質処理工程を行うか、又は、前記第3のガス供給部から前記処理室内へ酸素含有ガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給する酸化改質処理工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【0057】
第6の発明は、前記第1の発明ないし前記第5の発明の基板処理装置であって、
前記励起部は紫外光を発生する光源である基板処理装置。
【0058】
第7の発明は、
基板を処理室内へ搬入する工程と、
無機シリコンガスと酸素含有ガスとを前記処理室内へ供給するとともに、前記処理室内へ励起エネルギーを供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、
有機シリコンガスを前記処理室内へ供給するとともに、前記処理室内へ励起エネルギーを供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0059】
第8の発明は、前記第7の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン酸化膜形成工程と、前記シリコン膜形成工程とを各1回行う1サイクルの絶縁膜形成工程を、2サイクル以上繰り返す半導体装置の製造方法。
【0060】
第9の発明は、前記第7の発明又は前記第8の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン酸化膜形成工程の後、前記処理室内の雰囲気を排気する第1の排気工程と、
前記シリコン膜形成工程の後、前記処理室内の雰囲気を排気する第2の排気工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0061】
第10の発明は、前記第7の発明ないし前記第9の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン膜形成工程よりも先に、前記シリコン酸化膜形成工程を行う半導体装置の製造方法。
【0062】
第11の発明は、前記第7の発明ないし前記第10の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン酸化膜形成工程と前記シリコン膜形成工程の後、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給する酸化改質処理工程を行うか、又は、前記シリコン酸化膜形成工程と前記シリコン膜形成工程の後、前記第3のガス供給部から前記処理室内へ酸素含有ガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給する酸化改質処理工程を行う半導体装置の製造方法。
【0063】
第12の発明は、前記第7の発明ないし前記第11の発明における半導体装置の製造方法であって、
前記基板を前記処理室から搬出する工程の後、
前記処理室から搬出された基板表面に、金属含有膜又は半導体膜を形成する工程を行う半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0064】
1…処理室、2…基板、3…基板支持部、4…励起部(発光部)、5…透過窓、6…ガス導入管、6a〜6d…ガス供給管、7…ガス排気管、8…圧力計、9…APCバルブ、10…真空ポンプ、11…高周波印加部、12…制御部、13a〜13d…開閉バルブ、14a〜14d…MFC、15a…無機シリコンガス源、15b…有機シリコンガス源、15c…酸素含有ガス源、15d…不活性ガス源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
無機シリコンガスを処理室内へ供給する第1のガス供給部と、
有機シリコンガスを処理室内へ供給する第2のガス供給部と、
酸素含有ガスを処理室内へ供給する第3のガス供給部と、
前記処理室内へ励起エネルギーを供給する励起部と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
前記第1のガス供給部、前記第2のガス供給部、前記第3のガス供給部、前記励起部、前記排気部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記第1のガス供給部及び前記第3のガス供給部から前記処理室内へ前記無機シリコンガスと酸素含有ガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、前記第2のガス供給部から前記処理室内へ前記有機シリコンガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程とを行うことにより、前記処理室内の基板表面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された基板処理装置であって、
前記制御部は、前記絶縁膜形成工程において、前記シリコン膜形成工程よりも先に、前記シリコン酸化膜形成工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された基板処理装置であって、
前記制御部は、前記絶縁膜形成工程の後、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給する酸化改質処理工程を行うか、又は、前記第3のガス供給部から前記処理室内へ酸素含有ガスを供給している状態で、前記励起部から励起エネルギーを前記処理室内へ供給する酸化改質処理工程を行うよう制御するものである基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載された基板処理装置であって、
前記励起部は紫外光を発生する光源である基板処理装置。
【請求項5】
基板を処理室内へ搬入する工程と、
無機シリコンガスと酸素含有ガスとを前記処理室内へ供給するとともに、前記処理室内へ励起エネルギーを供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成工程と、
有機シリコンガスを前記処理室内へ供給するとともに、前記処理室内へ励起エネルギーを供給して、前記処理室内の基板表面にシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55179(P2013−55179A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191454(P2011−191454)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】