説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】平流しの基板搬送路上で被処理基板に供給した第1の処理液を分別回収して第2の処理液に置き換える動作を効率よくスムーズに行い、現像斑の発生を抑制する。
【解決手段】被処理基板Gに第1の処理液Dを供給する第1の処理液供給手段9と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、所定のガス流を吹き付ける気体供給手段21と、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液Sを吐出する第2のリンス手段23と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段22と、前記基板搬送路上において、前記第1のリンス手段により供給された第2の処理液によって、基板幅方向に延びる液溜まり部を形成する液溜まり形成手段27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を平流し方式により搬送しながら液処理を行う基板処理技術に係り、特に平流しの基板搬送路上で被処理基板に供給した第1の処理液を分別回収して第2の処理液に置き換える基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造に使用されるレジスト塗布現像処理システムにあっては、ガラス基板の大型化に有利に対応できる方式として、コロを水平方向に敷設した搬送路上で基板を搬送する、いわゆる平流し方式が普及している。この平流し方式では、基板を水平方向に搬送しながら現像、リンス、乾燥などの一連の現像処理工程を行うもので、基板を回転運動させるスピンナ方式と較べて、大型基板の取り扱いが簡単であり、ミストの発生ないし基板への再付着が少ない等の利点がある。
しかしながら、前記平流し方式による現像処理工程にあっては、基板上の現像液をリンス液(一般に純水)で置換する際、現像液を除去してからリンス液が供給されるまでの時間が長すぎると、基板表面内における外観上の相違(現像斑と呼ぶ)が発生するという課題があった。
【0003】
そのような課題に対し、本願出願人は、基板に液盛りされた現像液を除去し、リンス液に置き換えるリンス部において、メインのリンスノズルの手前にプレリンスノズルを配置した構成を特許文献1に開示した。
図12に、特許文献1に開示したリンス部200の構成を示す。尚、図12(a)はリンス部200の平面図、図12(b)はその側面図である。
図示するリンス部200の構成において、複数のコロ201が敷設された山なりの搬送路202が設けられている。前段処理において現像液Dが液盛りされた基板Gが平らな搬送路202の区間N1から次第に上り斜面となる区間N2を搬送されると、基板G上の現像液Dは後方(搬送方向上流)に流れ落ちる。さらに、区間N2の後部付近に設けられたエアノズル203によって基板上にカーテン状のエアが吹き付けられ、その吹き付け位置で現像液Dが堰き止められるため、その位置から前方に進む基板上からは現像液Dが殆ど除去される。
【0004】
また、リンス液供給ノズル205よりも上流側には、プレリンスノズル204が設けられており、図13に示すようにエアノズル203によって現像液Dが除去された基板面に直ぐさまリンス液Sが供給され、基板面が乾燥することによる現像斑の発生が抑制されるようになっている。
そして、基板Gが山なりの搬送路202を下る区間N3に入ると、上方に配置された基板幅方向に延びるリンス液供給ノズル205からリンス液Sが基板G上に供給され、基板Gが区間N3,N4を通過する間に現像液Dが完全にリンス液Sに置き換えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−199150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように基板G上において現像液Dが除去された領域は、直ぐさまプレリンスノズル204から供給されるリンス液Sに覆われ、続けて、リンス液供給ノズル205から供給されるリンス液Sによって液盛りされる。このため、基板面の乾燥による現像斑の発生は、略全面にわたり抑制することができる。
しかしながら、図14に示すように、基板Gにおいて最初にエアノズル203により現像液Dが除去される先端部領域G1にあっては、基板先端がプレリンスノズル204の直下(吐出位置)に達するまでの間(搬送方向距離Lの区間)にリンス液Sが供給されないため、基板面の乾燥による現像斑が生じる虞があった。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、平流しの基板搬送路上で被処理基板に供給した第1の処理液を分別回収して第2の処理液に置き換える動作を効率よくスムーズに行い、現像斑の発生を抑制することのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る基板処理装置は、基板搬送路を平流し搬送される被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理装置であって、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に第1の処理液を供給する第1の処理液供給手段と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、該被処理基板が搬送されることによって、その先端側から後端側にわたり所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付ける気体供給手段と、前記気体供給手段よりも基板搬送方向下流側に設けられ、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液を吐出する第2のリンス手段と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段と、前記基板搬送路上において、前記第1のリンス手段により供給された第2の処理液によって、基板幅方向に延びる液溜まり部を形成する液溜まり形成手段とを備え、前記被処理基板の先端部は、その基板面に前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられ、前記液溜まり形成手段に形成された液溜まり部の中を通過し、さらにその基板面に前記第1のリンス手段により第2の処理液が供給されることに特徴を有する。
尚、前記液溜まり形成手段は、前記基板搬送路を搬送される被処理基板よりも低い位置において基板幅方向に延設されたテーブル部材であって、前記テーブル部材の上面に前記第2の処理液が液盛りされ、前記液溜まり部が形成されることが望ましい。
【0009】
また、本発明に係る基板処理装置は、基板搬送路を平流し搬送される被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理装置であって、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に第1の処理液を供給する第1の処理液供給手段と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、該被処理基板が搬送されることによって、その先端側から後端側にわたり所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付ける気体供給手段と、前記気体供給手段よりも基板搬送方向下流側に設けられ、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液を吐出する第2のリンス手段と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段と、前記基板搬送路上において、前記第1のリンス手段の下方に設けられ、基板幅方向に延びる第2の処理液の液溜まり部を形成する液溜まり形成手段とを備え、前記液溜まり形成手段は、前記基板搬送路を搬送される被処理基板よりも低い位置において基板幅方向に延設されると共に、上面に前記第2の処理液の吐出孔が形成されたテーブル部材と、前記テーブル部材に形成された吐出孔から前記第2の処理液を吐出させる第2の処理液供給手段とを有し、前記第2の処理液供給手段により前記第2の処理液が前記テーブル部材の上面に供給されて前記液溜まり部が形成され、前記被処理基板の先端部は、その基板面に前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられ、前記液溜まり形成手段に形成された液溜まり部の中を通過し、さらにその基板面に前記第1のリンス手段により第2の処理液が供給されることに特徴を有する。
【0010】
尚、前記第2のリンス手段は、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板の基板面に対し、前記第1のリンス手段よりも高流速で前記第2の処理液を吐出することが望ましい。
また、前記気体供給手段により前記被処理基板の基板面に吹き付けられるガス流は、基板幅方向に直線状に延びるカーテン状のガス流であることが望ましい。
【0011】
このように構成することにより、第1の処理液が盛られて平流し搬送される被処理基板が到達する前において、液溜まり形成手段に第2の処理液の液溜まり部が形成される。そして、被処理基板は、気体供給手段からのガス流によりその先端部の領域から第1の処理液が除去されると、直ぐさま前記先端部が前記液溜まり形成手段の液溜まり部の中を通過する。これにより被処理基板の先端部領域にあっては、第1のリンス手段から吐出された第2の処理液が基板面に当たる前に、液溜まり形成手段に溜まっていた第2の処理液によって覆うことができる。また、被処理基板に第1のリンス手段から第2の処理液が供給されるようになると、気体供給手段により第1の処理液が除去された領域に、前記第1のリンス手段から第2の処理液を直ぐさま供給することができ、時間を殆ど空けずに基板上の第1の処理液を第2の処理液に置換することができる。即ち、基板の全面において、乾燥を防止し、基板面乾燥による現像斑の発生を抑制することができる。
【0012】
また、前記液溜まり形成手段において、前記液溜まり部が形成される面は、基板搬送方向の上流側下方に所定角度傾斜し、前記液溜まり形成手段により形成される液溜まり部において、基板搬送方向の上流側端部は、前記気体供給手段から吹き付けられるガス流により堰き止められることが望ましい。
このように構成することによって、液溜まり部の第2の処理液が流れ落ちることが無く、基板先端部が通過しやすい厚みを有する液溜まり部を形成することができる。
【0013】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る基板処理装置は、基板搬送路を平流し搬送される被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理装置であって、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に第1の処理液を供給する第1の処理液供給手段と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、該被処理基板が搬送されることによって、その先端側から後端側にわたり所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付ける気体供給手段と、前記気体供給手段よりも基板搬送方向下流側に設けられ、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液を吐出する第2のリンス手段と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段とを備え、前記第1のリンス手段は、前記第2の処理液を吐出するリンスノズルと、前記リンスノズルから吐出された第2の処理液を、被処理基板上の基板搬送方向上流側の所定位置まで導出すると共に、減速された状態で前記所定位置に供給する邪魔板を有することに特徴を有する。
【0014】
このような構成によれば、気体供給手段からのガス流の吹き付け位置に近接した基板上の所定位置に、前記リンスノズルから吐出された第2の処理液を減速させた状態で供給することができる。
これにより、被処理基板の先端部領域においても気体供給手段からのガス流により第1の処理液が除去されると、直ぐさま第2の処理液を供給することができ、基板面の乾燥を防止し、乾燥による現像斑の発生を抑制することができる。
【0015】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る基板処理方法は、被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理方法であって、基板搬送路において前記被処理基板を平流し搬送し、基板上に第1の処理液を供給すると共に、その下流側の基板搬送路上において、基板幅方向に延びる前記第2の処理液の液溜まり部を形成するステップと、前記第1の処理液が供給された前記被処理基板の先端部の基板面に対し、所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付け、吹き付けた領域から前記第1の処理液を除去するステップと、前記ガス流が吹き付けられて第1の処理液が除去された被処理基板の先端部を、前記液溜まり部の中に通過させるステップと、前記被処理基板の先端部の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出し供給するステップとを実行することに特徴を有する。
【0016】
このような方法によれば、被処理基板の先端部領域にあっては、吐出された第2の処理液が被処理基板の基板面に当たる前に、前記液溜まり部を形成していた第2の処理液によって覆うことができる。即ち、被処理基板の先端部領域における乾燥を防止し、基板面の乾燥による現像斑の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、平流しの基板搬送路上で被処理基板に供給した第1の処理液を分別回収して第2の処理液に置き換える動作を効率よくスムーズに行い、現像斑の発生を抑制することのできる基板処理装置及び基板処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、図1の現像ユニットが具備するリンス部の主要部の平面図であり、図2(b)は、その側面図である。
【図3】図3は、図2のリンス部に配置されるプレート部材と被処理基板との配置関係を示す平面図である。
【図4】図4は、図2のリンス部に配置されたエアノズル、第1のリンスノズル、プレート部材の相互の配置関係をより具体的に示す側面図である。
【図5】図5(a)〜(e)は、図2のリンス部を搬送される被処理基板に対する処理液置換の状態を示す側面図である。
【図6】図6は、図2のリンス部が具備する第1のリンスノズルの変形例を示す側面図である。
【図7】図7は、図2のリンス部が具備する第1のリンスノズルの他の変形例を示す側面図である。
【図8】図8は、図2のリンス部が具備するテーブル部材の変形例を示す断面図である。
【図9】図9(a)は、図2のリンス部が具備するテーブル部材の他の変形例を示す平面図であり、図9(b)は、その正面図である。
【図10】図10は、図2のリンス部が具備するテーブル部材の他の変形例を示す断面図である。
【図11】図11は、液溜まり形成手段の他の形態を示す側面図である。
【図12】図12(a)は、従来のリンス部の概略構成を示す平面図であり、図12(b)は、その側面図である。
【図13】図13は、図12のリンス部による処理液置換の動作を説明するための側面図である。
【図14】図14は、図12のリンス部による処理液置換の動作における課題を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の基板処理装置及び基板処理方法にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。本発明の基板処理装置は、例えばFPD用のガラス基板を被処理基板(以下、単に基板と呼ぶ)とし、FPD製造におけるフォトリソグラフィ工程中の洗浄、レジスト塗布、プリベーク、現像およびポストベーク等の各処理を行う塗布現像処理システムの一部構成に適用することができる。
より具体的には、基板上にフォトレジストが塗布され、マスクパターンを介して露光処理が施された基板に現像及びリンス処理を施す現像ユニットに適用することができる。
以下、図を参照して本発明を現像ユニットに適用した一実施形態を説明する。
【0020】
図1に、この実施形態における現像ユニット1の全体構成を示す。現像ユニット1は、図示するように、プロセスラインAに沿って水平方向(X方向)に延びる平流しの搬送ライン2(基板搬送路)を設置しており、この搬送ライン2に沿って上流側から順に現像部3、リンス部4及び乾燥部5が設けられている。
搬送ライン2は、基板Gを、その被処理面を上に向けた仰向けの姿勢(いわゆる平流し方式)として所定速度(例えば60mm/s)で搬送するためのコロ6(搬送体)を搬送方向(X方向)に一定間隔(例えば100mm間隔)で敷設してなる。各コロ6は、例えば電気モータを有する搬送駆動部(図示せず)に歯車機構またはベルト機構等の伝動機構を介して接続されている。
この搬送ライン2は、搬送方向(X方向)において始点から終点まで略同じ高さ位置で続いていてもよいが、本実施の形態にあっては、リンス部4及び乾燥部5の所定箇所において、コロ6の配置により異なる高さ位置となされている。具体的には、隆起部2aと段差部2bとを有している。
【0021】
また、図1に示すように、搬送ライン2は、基板Gへの処理段階に応じて8つの搬送区間M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7,M8に区分できる。
第1の搬送区間M1は、前段の処理部から、現像部3内の出口よりも少し手前(上流側)の位置に設定された第1の区間変更点P1までの区間であり、所定の高さ位置を保ったまま、略水平一直線に延びる水平搬送路を有している。
【0022】
第2の搬送区間M2は、前記第1の区間変更点P1から、リンス部4内に入り、リンス部4の入口よりも少し下流側の位置に設定された第2の区間変更点P2までの区間であり、前記第1の搬送区間M1と同様に略水平搬送路を有している。
第3の搬送区間M3は、リンス部4内において、前記第2の区間変更点P2から、内奥の所定位置に設定された第3の区間変更点P3までの区間であり、前記第2の搬送区間M2と同様に水平搬送路を有している。
【0023】
また、第4の搬送区間M4は、リンス部4内において、前記第3の区間変更点P3からそれよりも所定の距離だけ下流側の位置に設定された第4の区間変更点P4までの区間であり、それまでの搬送路高さよりも所定量(例えば10〜25mm)高い隆起部2aの頂上まで所定の傾斜角で上る上り傾斜の搬送路を有している。
第5の搬送区間M5は、リンス部4内で前記第4の区間変更点P4からそれよりも所定の距離だけ下流側の位置に設定された第5の区間変更点P5までの区間であり、前記隆起部2aの頂上からそれよりも所定量(例えば10〜25mm)低い位置まで所定の傾斜角で下る下り傾斜の搬送路を有している。
【0024】
また、第6の搬送区間M6は、リンス部4内において前記第5の区間変更点P5からそれよりも所定の距離だけ下流側の位置、即ち出口より少し手前の位置に設定された第6の区間変更点P6までの区間であり、水平一直線に延びる水平搬送路を有している。
第7の搬送区間M7は、前記第6の区間変更点P6からリンス部4と乾燥部5との境界付近に設定された第7の区間変更点P7までの区間であり、前記第6の搬送路M6よりも所定量(例えば4〜25mm)高い段差部2cの上段位置まで所定の傾斜角で上る上り傾斜の搬送路を有している。
【0025】
また、第8の搬送区間M8は、前記第7の区間変更点P7から乾燥部5及び後段の処理部まで至る区間であり、前記段差部2bの上段位置の高さを一定に保ったまま水平一直線に延びる水平搬送路を有している。
【0026】
また、現像部3においては、第1の搬送区間M1内の所定位置に、搬送ライン2上をコロ搬送で移動する水平姿勢の基板Gに向けて、上方から基準濃度の現像液(第1の処理液)を吐出する現像液供給ノズル(第1の処理液供給手段であり、以下、現像ノズルと呼ぶ)9が配置されている。現像ノズル9は、基板幅方向に延びる例えばスリット状の吐出口または1列に配置された多数の微細径吐出口を有する長尺型のノズルからなり、図示しない現像液供給源から配管を介して現像液を給液されるようになっている。
【0027】
現像部3内には、搬送ライン2の下に落ちた現像液を受け集めるためのパン10が設けられている。このパン10の排液口は排液管11を介して現像液再利用機構12に通じている。現像液再利用機構12は、現像液ノズル9により基板G上に現像液を盛る際にこぼれ落ちた現像液をパン10および排液管11を介して回収し、回収した現像液に原液や溶媒を加え、基準濃度に調整したリサイクルの現像液を前記現像液供給源に送るようになっている。
【0028】
また、現像部3の出口付近の第2の搬送区間M2において、その上方位置には、搬送方向下流側に向けて所定のガス流、具体的には基板幅方向に直線状に延びるカーテン状のガス流を噴出するエアノズル21(気体供給手段)が設けられている。このエアカーテン状のガス流が形成されることによって、その下を通過する基板G上の現像液は、ガス流が吹き付けられる位置で堰き止められ、基板後方から流れ落ちる。即ち、基板上においては、前記ガス流が吹き付けられた位置より前方(下流側)の領域には、現像液が殆ど残らない状態とすることができる。
【0029】
また、第2の搬送区間M2において、前記エアノズル21よりも下流側には、現像液が流れ落ちた基板G上に、直ぐさま純水等のリンス液(第2の処理液)を供給するための第1のリンスノズル22(第1のリンス手段)が設けられている。この第1のリンスノズル22は、基板Gに残る現像液が波打たないように低流速でリンス液を吐出するもので、その時のインパクト(衝撃)が小さいものとなされている。
尚、この第1のリンスノズル22から基板上に供給されたリンス液は、前記エアノズル21により形成されるガス流のエアカーテンによって、その位置から上流側に流れないよう堰き止められる。
【0030】
また、第1のリンスノズル22の下方には、基板搬送方向の断面が逆台形状のテーブル部材27(液溜まり形成手段)が配置されている。このテーブル部材27は、第1のリンスノズル22の直下に配置され、搬送される基板Gが到達するまでに、第1のリンスノズル22から供給されたリンス液を上面に液盛りし、液溜まり部を形成するために設けられている。尚、少なくとも第1のリンスノズル22からのリンス液供給位置よりも上流側に前記液溜まり部は形成される。
また、第2の搬送区間M2において、前記リンスノズル22の下流側には、より高流速で、即ち吐出時のインパクトがより大きくなる流速で、液置換(現像停止)用のリンス液を供給する第2のリンスノズル23(第2のリンス手段)が配置されている。
【0031】
また、中心部の第4の搬送区間M4内の所定位置に、搬送ライン2の隆起部2aの上り斜面を通過する基板Gに向けて上方から洗浄用のリンス液を吐出する第3のリンスノズル24が搬送方向に沿って配置されている。
また、その下流側隣の第5の搬送区間M5内の所定位置に、搬送ライン2の隆起部2aの下り斜面を通過する基板Gに向けて上方から仕上げ洗浄用のリンス液を吐出する第4のリンスノズル25が搬送方向に沿って配置されている。
【0032】
さらに、出口付近にて第7の搬送区間M7内の所定位置に、搬送ライン2の上り段差部2bを上る基板Gに向けて上方から最終洗浄用のリンス液を吐出する第5のリンスノズル26が搬送方向に沿って配置されている。各リンスノズル22〜26は、前記現像液ノズル9と同様の構成を有する長尺型ノズルからなり、リンス液供給源(図示せず)から配管を介してリンス液を給液されるようになっている。
【0033】
また、リンス部4内には、搬送ライン2の下に落ちたリンス液を受け集めるためのパン17が設けられている。このパン17の排液口は排液管18を介してリンス液回収部(図示せず)に通じている。図示省略するが、搬送ライン2の下から基板Gの下面に対して洗浄用のリンス液を噴き掛ける下部リンスノズルを設けることもできる。
【0034】
乾燥部5においては、第8の搬送区間M8の始端付近の所定位置に、搬送ライン2の前記段差部2bを上ってきた直後の基板Gに向けて上方から搬送方向と逆向きに液切りないし乾燥用の高圧ガス流(通常はエア流)を当てる長尺型のガスノズルまたはエアノズル20が搬送方向に沿って1本または複数本配置されている。搬送ライン2の下から基板Gの下面に向けて液切りないし乾燥用の高圧ガス流を当てる下部エアノズル(図示せず)も設置可能である。また、乾燥部5内で搬送ライン2の下に落ちた液を受け集めるためのパン(図示せず)を設けてもよい。
【0035】
尚、現像ユニット1は、一体的なハウジング30内に現像部3,リンス部4および乾燥部5を収容しており、異なる処理部間の境界には搬送ライン2に沿った周囲の空間を上流側と下流側とに隔てるための鉛直方向に延在する隔壁30a,30bを設けている。より詳細には、現像部3とリンス部4との境界つまり第2の搬送区間M2付近に隔壁30aが設けられ、リンス部4と乾燥部5との境界つまり第7の搬送区間M7と第8の搬送区間M8との境界付近に隔壁30bが設けられる。各隔壁30a,30bには、搬送ライン2を通す開口31,32がそれぞれ形成されている。
【0036】
また、この現像ユニット1において、各処理部3,4,5内の空間は隔壁30a,30bの開口31,32を介して相互に連通している。現像部3および乾燥部5では、室外の空気を引き込むためのファン33,34と、これらのファン33,34からの空気流を除塵するエアフィルタ35,36とによって、天井から清浄な空気がダウンフローで室内に供給されるようになっている。このうち、現像部3の天井から供給される清浄空気は、現像処理時に発生する現像液のミストを巻き込むようにして前記隔壁30aの開口31を通ってリンス部4の室内に流入する。
【0037】
一方、乾燥部5の天井から供給される清浄空気は、乾燥(液切り)処理で発生するリンス液のミストを巻き込むようにして前記隔壁30bの開口32を通ってリンス部4の室内に流入するようになっている。リンス部4の底部には、たとえば排気ポンプまたは排気ファンを有する排気機構37に通じる排気口38が設けられている。
前記のようにして現像部3側から流入してきたミスト混じりの空気と、乾燥部5側から流入してきたミスト混じりの空気は、リンス部4内で発生するミストをも巻き込んで左右から合流して排気口38から排出されるようなっている。
【0038】
続いて、第2の搬送区間M2における液処理の構成について、さらに詳しく説明する。
図2(a)は、搬送区間M1〜M3を通過する基板Gの状態を示す平面図であり、図2(b)はその側面図である。図3は、搬送区間M2に配置されるプレート部材27と基板Gとの配置関係を示す平面図である。また、図4は、前記搬送区間M2に配置されたエアノズル21、第1のリンスノズル22、プレート部材27の相互の配置関係をより具体的に示す側面図である。
【0039】
図2(b)に示すように、搬送区間M2の上方において、基板幅方向に延びる長尺型のエアノズル21、第1のリンスノズル22、第2のリンスノズル23が基板搬送方向に沿って順に配置されている。
前記エアノズル21は、搬送区間M2を搬送される基板Gに対し、所定の高圧ガス流を搬送方向下流側に向けて吹き付けるように、基板面から例えば5〜15mmの高さ位置に配置されている。具体的には、エアノズル21は、搬送区間M2の上方において、その噴射方向が、垂直下方(鉛直方向)を0°として下流側に所定角度(例えば10°)傾斜した状態で設けられている。
【0040】
このエアノズル21により、搬送される基板Gの先端側から後端側にわたり、基板幅方向に直線状に延びるカーテン状の高圧ガス流が、基板搬送方向(下流側)に向けて所定流量(例えば300〜500リットル/min)で吹き付けられる。これにより、エアノズル21からの高圧ガス流の吹き付け位置において、基板G上の現像液Dが堰き止められ、前記ガス流の吹き付け位置から前方(基板G上の下流側領域)には現像液Dが殆ど残らない状態となされる。また、前記ガス流を、基板搬送方向(下流側)に向けて吹き付けることにより、現像液Dの波打ちを防止し、微小な現像斑の発生を抑制するようになされている。
尚、エアノズル21からのガス流の吹き付け位置に基板Gが到達していない状態では、図4に示すように、第1のリンスノズル22からテーブル部材27上に供給されたリンス液S(液溜まり部)が上流側から流れ落ちないよう、エアノズル21からのガス流によって堰き止められる。
【0041】
また、エアノズル21の下流側に配置された第1のリンスノズル22は、基板G上におけるエアノズル21からのガス流吹き付け位置から前方の領域、即ち現像液Dが除去された領域に、直ぐさま低流速(例えば0.0247〜0.074m/s)でリンス液Sを吐出供給し、基板上で液切れする領域を極力小さくするために設けられている。
この第1のリンスノズル22は、基板面から例えば2mmの高さに配置され、その吐出方向は、略垂直下方(垂直下方を0°として±10°傾斜)に向けられている。
【0042】
また、第1のリンスノズル22の下流側に配置された第2のリンスノズル23は、搬送区間M2を搬送される基板Gに対し、より高流速(例えば1.7581m/s)でリンス液Sを吐出供給し、現像液Dを完全にリンス液Sに置換するためのノズルである。
この第2のリンスノズル23は、例えば基板面から10〜30mmの高さに配置され、その吐出方向は、基板搬送方向(下流側)となるよう配置されている。即ち、第2のリンスノズル23は、搬送区間M2の上方において、その噴射方向が、垂直下方(鉛直方向)を0°として下流側に所定角度(例えば0°〜70°)傾斜した状態で設けられている。
【0043】
また、第1のリンスノズル22の直下に配置されるプレート部材27は、図3に示すようにコロ6Aとコロ6Bとの間において、基板搬送方向に所定の幅を有し、且つ基板幅方向において基板Gの幅寸法よりも長く延設されている。このプレート部材27の上面は、例えば親水性の高い合成樹脂により形成され、リンス液が液盛りされた際にリンス液が流れ落ち難くなっている。
また、図4に示すように、プレート部材27は、コロ6Aとコロ6Bとの間においてフレーム部材28によって支持され、その位置は固定されている。図示するように、プレート部材27は、基板搬送方向の断面が逆台形状であるため、その前後縁部はコロ6A、6Bの上方に位置している。即ち、コロ6A,6Bの間において、基板Gに臨むプレート面積が大きく確保されている。
【0044】
また、プレート部材27の高さ位置は、その上方を搬送される基板Gが、プレート部材27に接触しない高さに設定されている。また、その場合、搬送される基板Gの先端が、図4に示すようにプレート部材27上に盛られたリンス液S(液溜まり部)中を通過するよう、基板Gとプレート部材27との間の隙間は小さいものとなされる。
【0045】
また、前記のようにプレート部材27は、その上面にリンス液を液盛りするために設けられるが、その工夫として、図4に示すようにプレート部材27の上面は、基板搬送方向の上流側下方に所定角度θ(例えば2°)だけ傾斜した状態で設置されている。さらにプレート部材27の後端部(プレート部材27の上面において基板搬送方向上流側)にエアノズル21からのガス流が吹き付けられるようになされている。
この構成により第1のリンスノズル22からプレート部材27上に供給されたリンス液Sは、プレートの傾斜によって基板搬送方向上流側に流れようとするが、エアノズル21からのガス流によって堰き止められる。即ち、図4に示すようにプレート部材27上において、その上流側により多くのリンス液Sが盛られ、厚みのある液溜まり部が形成される。
【0046】
また、基板G上において、エアノズル21により噴出されるガス流の吹き付け位置と第1のリンスノズル22によるリンス液の供給位置との距離は、例えば20〜40mm(好ましくは30mm)に設定されている。また、基板G上において、エアノズル21により噴出されるガス流の吹き付け位置と第2のリンスノズル23によるリンス液の供給位置との距離は、例えば150〜350mm(好ましくは200mm)に設定されている。
【0047】
続いて、この現像ユニット1における全体の動作を、図1の全体構成図、及び図5の状態遷移図を適宜用いて説明する。尚、図5は搬送区間M2を搬送される基板Gに対する処理液置換の状態を示す側面図である。
前段処理部を搬出された基板Gが一定速度(例えば60mm/s)のコロ搬送で現像ユニット1に搬入されると、図1に示すように最初に現像部3において、基板Gが搬送ライン2の第1の搬送区間M1内を水平姿勢で移動する間に定置の現像ノズル9より現像液Dを供給される。基板G上には基板前端から基板後端に向かって搬送速度と等しい走査速度で現像液Dが盛られる。基板Gからこぼれた現像液Dはパン10に受け集められる。
【0048】
前記のように基板Gに現像液Dが盛られる一方、第2の搬送区間M2においては、第1のリンスノズル22からプレート部材27の上面に対し、所定量のリンス液Sが供給される。また、エアノズル21からのガス流によりプレート部材27からリンス液Sが流れ落ちないように堰き止められる。これにより、プレート部材27上には、上流側ほど液量が多く厚みのある状態でリンス液Sが液盛りされる。
【0049】
また、図5(a)に示すように、現像液Dが盛られた基板Gは、直後に第2の搬送区間M2に搬送される。
基板Gが第2の搬送区間M2に入ると、図5(b)に示すように、先ずエアノズル21により、基板Gの先端部領域に対し、所定流量(例えば300〜500リットル/min)の高圧ガス流が吹き付けられ、基板Gの先端部領域からは現像液Dが除去される。また、直ぐさま基板Gの先端部は、プレート部材27に液盛りされたリンス液S(液溜まり部)の中を通過し、それにより、基板G上の先端部領域はリンス液Sで覆われる。即ち、基板Gの先端部領域が第1のリンスノズル22の下に達する前にリンス液Sが供給され、基板Gの先端部領域における基板面の乾燥が防止される。
【0050】
図5(c)に示すように、基板先端が第1のリンスノズル22の下方に達すると、第1のリンスノズル22からは低流速(例えば0.0247〜0.074m/s)、即ち吐出時のインパクトが小さくなる流速でリンス液Sが基板Gに供給される。
これにより基板Gの先端部領域にあっては、基板先端が第2のリンスノズル23の下方(リンス液供給位置)に達するまでの間、第1のリンスノズル22からリンス液Sが供給されることとなる。
【0051】
また、前記のように第1のリンスノズル22から、基板Gにリンス液Sが直接供給されるようになると、搬送される基板G上には、エアノズル21からのガス流によって堰き止められた現像液Dの先端部分(現像液Dが除去される部分)から、殆ど距離を空けずにリンス液Sの膜が形成される状態となる。即ち、基板G上の現像液Dとリンス液Sとの間に形成される液切れ領域の基板搬送方向の幅は現像斑の発生に影響しない微小なものとなる。尚、エアノズル21から噴射されるエアカーテン状のガス流は、基板搬送方向(下流側)に向けられているため、現像液Dが波打つこともなく、微小な現像斑の発生が抑制される。
【0052】
また、図5(d)に示すように、基板Gが第2のリンスノズル23の下方に達すると、前記第1のリンスノズル22からリンス液Sが供給された基板Gには、リンス液Sが途切れないように第2のリンスノズル23からさらに高流速(例えば1.7581m/s)で、即ち吐出時のインパクトがより大きくなる流速でリンス液Sが供給される。これにより基板G上にはリンス液Sが途切れることなく現像液Dと置換される。
【0053】
このようにして基板Gが第2の搬送区間M2を搬送されるにしたがい、基板上の現像液Dはリンス液Sに置換されていく。
即ち、図5(e)に示すように基板Gの全体が第2の搬送区間M2を通過する時点では、基板Gの上面は全てリンス液Sに置換され、現像が停止する。尚、基板Gから流れ落ちた現像液Dおよびリンス液Sはパン17に受け集められる。
【0054】
このように基板G上の処理液を現像液Dからリンス液Sに置き換える処理においては、エアノズル21から吹き付けられるエアカーテン状の高速ガス流によって、現像液Dはその吹き付けられた位置で堰き止められ、基板Gの搬送に伴い基板後端側から流れ落ちる。
そして、基板G上におけるガス流の吹き付け位置より前方、即ち現像液Dが除去された領域には、直ぐさま第1のリンスノズル22、及び第2のリンスノズル23によってリンス液Sが供給される。特に、基板Gの先端部領域にあっては、現像液Dが除去されると、直ぐさまテーブル部材27上の液溜まり部によってリンス液Sが供給され、続けて、第1のリンスノズル22、及び第2のリンスノズル23によってリンス液Sが供給される。
このため、基板Gの全面において、時間を殆ど空けずに基板上の現像液Dをリンス液Sに置換することができ、液切れ領域を微小なものとすることができる。
【0055】
現像処理を終えた基板Gは、水平な第3の搬送区間M3を通過し、次の第4の搬送区間M4で隆起部2aの上り傾斜路を上る。この時、基板G上に残っている置換用のリンス液Sが基板前端側から後方へ重力で移動して基板後端から流れ落ちる。さらに、上方のリンスノズル24より基板G上に一次洗浄用のリンス液が供給され、古いリンス液を追い出しながらこの新たなリンス液も基板後端から流れ落ちる。
基板の後方に流れ落ちたリンス液はパン17に受け集められる。こうして、隆起部2aの頂点を越える基板Gは、その上面に一次洗浄用のリンス液が薄い液膜で残っている状態で、隆起部2aの下り傾斜路(第5の搬送区間M5)に差し掛かる。
【0056】
次いで、隆起部2aの下り傾斜路(M5)を基板Gが下りる際には、上方のリンスノズル25により基板G上に二次洗浄用の新たなリンス液が供給され、基板G上に薄く残っていた一次洗浄液を前方に追いやりながら新たなリンス液も基板前端から流れ落ちる。基板Gの前方に流れ落ちたリンス液はパン17に受け集められる。
【0057】
前記のようにしてリンス処理を終えた基板Gは、水平な第6の搬送区間M6を通過し、次の第7の搬送区間M7で上り段差部2bの傾斜路を上る。この時、基板G上に残っている仕上げ用リンス液が基板前端側から後方へ重力で移動して基板後端から流れ落ちる。さらに、上方のリンスノズル26より基板G上に最終洗浄用のリンス液が供給され、古いリンス液を追い出しながらこの新たなリンス液も基板後端から流れ落ちる。基板Gの後方に流れ落ちたリンス液はパン17に受け集められる。
【0058】
そして、基板Gが段差部2bを上り、乾燥部5側つまり第8の搬送区間M8内の上段搬走路に入ると、エアノズル20が基板Gに対して搬送方向と逆向きに高圧ガス流を当てることにより、基板G上の残っていたリンス液が基板後方へ寄せられて基板後端から追い出される(液切りされる)。基板Gの後方に飛ばされたリンス液はパン17に受け集められる。
こうして現像ユニット1内で一連の現像処理工程を終えた基板Gは、そのまま搬送ライン2上をまっすぐ移動して後段の処理部に送られる。
【0059】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、現像液Dが盛られて平流し搬送される基板Gが到達する前において、プレート部材27上にリンス液Sの液溜まり部が形成される。そして、基板Gは、エアノズル21からのガス流によりその先端部の領域から現像液Dが除去されると、直ぐさま基板先端部が前記プレート部材27上のリンス液S(液溜まり部)の中を通過する。
これにより基板Gの先端部領域にあっては、第1のリンスノズル22から吐出されたリンス液Sが基板面に当たる前に、プレート部材27上のリンス液Sによって覆うことができる。また、基板Gに第1のリンスノズル22からリンス液Sが供給されるようになると、エアノズル21により現像液Dが除去された領域に、前記第1のリンスノズル22からリンス液Sを直ぐさま供給することができ、時間を殆ど空けずに基板上の現像液Dをリンス液Sに置換することができる。即ち、基板Gの全面において、乾燥を防止し、基板面乾燥による現像斑の発生を抑制することができる。
【0060】
尚、前記実施の形態においては、第1のリンスノズル22の基板Gに対する吐出方向は、垂直下方とする構成としたが、本発明にあっては、それに限定されるものではない。
例えば、図6に示すように第1のリンスノズル22において、吐出されたリンス液Sを基板G上の任意の位置まで導出する邪魔板29Aを設けてもよい。図6の構成の場合、第1のリンスノズル22の吐出方向が上流側に向けられ、吐出されたリンス液Sは邪魔板29Aにぶつかり、減速された状態で基板上に供給される。ここで、基板上のリンス液Sの供給位置は、エアノズル21からのガス流の吹き付け位置に近接している。
即ち、エアノズル21からのガス流の吹き付け位置に近接した基板上の所定位置に、第1のリンスノズル22により直接的にリンス液Sを吐出すると、吐出速度が速いために液面が波打ち、それが現像斑の原因となる虞があるが、本構成によれば、減速させつつ前記所定位置にリンス液Sを供給することができる。
また、この構成により、第1のリンスノズル22から吐出されるリンス液Sは、エアノズル21からのガス流の吹き付け位置に近接した基板上の所定位置に吐出されるため、エアノズル21のガス流で現像液Dを液切りした後、直ぐにリンス液Sで置換することができる。
【0061】
また、この場合、前記実施の形態で説明したプレート部材27と共に併用することにより、基板Gの先端部領域における現像液Dからリンス液Sへの置換をより確実に行うことができる。また、プレート部材27を設けない場合であっても、前記のように、基板G上において、エアノズル21からのガス流の供給位置に近接した位置に、弱い勢いでリンス液Sを供給することができる。
尚、図6においては、邪魔板29Aによりリンス液Sが垂直下方に供給される構成を示しているが、図7の邪魔板29Bのように、その先端部を基板面に対して任意の角度で傾斜させ、リンス液Sの供給位置を調整することもできる。
【0062】
また、前記実施の形態においては、現像液Dが盛られた基板Gが到達するまでに、第1のリンスノズル22及びエアノズル21を用いてプレート部材27上にリンス液Sを液盛りする構成とした。
しかしながら、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、基板搬送方向の断面が逆台形状のプレート部材27において、例えば中央に基板幅方向に延びるスリット状のリンス液吐出孔27aを設け、前後縁部に、それぞれ基板幅方向に延びるスリット状のエア噴出孔27b、27cを設けてもよい。
そして、図示するようにリンス液供給源41(第2の処理液供給手段)からリンス液吐出孔27aにリンス液Sを供給してプレート上面にリンス液Sを吐出させ、ガス供給源42からエア噴出孔27b、27cに高圧ガスを供給してプレート上にガス流を形成することにより、プレート上からリンス液Sが流れ落ちないように液盛りすることができる。
尚、この場合、プレート部材27は基板搬送方向上流側下方に所定角度(例えば、水平面に対し下方に2°)傾斜させることが望ましく、それによりプレート部材27上において上流側により多くのリンス液Sが盛られ、厚みのある液溜まり部を形成することができる。
また、図示するようにプレート部材27の前後縁部にエア噴出孔27b、27cを設けてよいが、少なくとも基板搬送方向上流側のエア噴出孔27bを設けることによって、プレート部材27上において上流側からリンス液Sが流れ落ちないようにすることができる。
【0063】
また、前記実施の形態においては、プレート部材27の上面は面一(平面)として説明したが、図9(a)に平面図、図9(b)に正面図を示すように、その両端において上方に突出する堰27dを設けてもよい。そのように構成することにより、プレート部材27の両端においては堰27dによってリンス液Sが堰き止められ、より均一な厚みでリンス液Sをプレート上に液盛りすることができる。
【0064】
また、前記実施の形態においては、プレート部材27は、基板搬送方向の断面が逆台形状とし、その上面が上流側下方に傾斜しているものとしたが、傾斜せずに水平な状態であっても本発明による効果を充分に得ることができる。
また、プレート部材27を上流側下方に任意の角度で傾斜させる機構をフレーム部材28(図4参照)などに持たせてもよい。
或いは、図10に示すようにプレート部材27の上面27eを、基板搬送方向の断面が山なりになるよう形成してもよく、その場合には、山なりの傾斜によってリンス液Sをプレート後部に集めることができる。
【0065】
さらに、前記実施の形態においては、液溜まり形成手段として、プレート部材27を具備する構成としたが、本発明にあっては、それに限定されるものではない。
例えば、図11に示すように、コロ6Aとコロ6Bとの間にベルト43を掛架し、ベルト43上に、第1のリンスノズル22からリンス液Sを供給して液盛りする構成を液溜まり形成手段としてもよい。
【0066】
また、前記実施の形態に示した各リンスノズルは、基板幅方向に延びる長尺型のノズルとして示したが、それに限定されず、微細径吐出口をそれぞれ有する複数のノズル(例えばスプレータイプのノズル)を基板幅方向に並べて構成するようにしてもよい。
【0067】
また、前記実施の形態においては、第1のリンスノズル22による吐出時のインパクトが、第2のリンスノズル23の吐出よりも小さくなるよう、吐出流速を規定したが、第1のリンスノズル22と第2のリンスノズル23のノズル形状が同一であれば、吐出流量により規定することもできる。
【0068】
また、前記実施の形態では、エアノズル21は、搬送区間M2の上方において、その噴射方向が、垂直下方(鉛直方向)を0°として下流側に所定角度(例えば10°)傾斜した状態で設けられた構成としたが、それに限らず、噴射方向が垂直下方に向いた状態の構成としてもよい。
【0069】
また、前記実施の形態にあっては、第2の搬送区間M2は、略水平の搬送路の区間としたが、上り傾斜の搬送路と下り傾斜の搬送路とからなる隆起部を有する構成としてもよい。その場合、エアノズル21、第1のリンスノズル22、プレート部材27は、前記隆起部の頂点上方に配置され、第2のリンスノズル23は下り傾斜の搬送路の上方に配置される。この構成により、上り傾斜の搬送路において、基板G上の現像液Dを、基板前端側から後端側まで順次(基板後端側から)流し落とすことができる。また、下り傾斜の搬送路において、第1のリンスノズル22と第2のリンスノズル23から供給されたリンス液Sにより、基板前端までを覆うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 現像ユニット(基板処理装置)
2 搬送ライン(基板搬送路)
2a 隆起部
2b 段差
3 現像部
4 リンス部
5 乾燥部
6 コロ
9 現像液供給ノズル(第1の処理液供給手段)
10 パン
11 廃液管
12 現像液再利用機構
21 エアナイフ(気体供給手段)
22 第1のリンスノズル(第1のリンス手段)
23 第2のリンスノズル(第2のリンス手段)
27 プレート部材(液溜まり形成手段)
41 リンス液供給源(第2の処理液供給手段)
43 ベルト(液溜まり形成手段)
D 現像液(第1の処理液)
G ガラス基板(被処理基板)
S リンス液(第2の処理液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送路を平流し搬送される被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理装置であって、
前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に第1の処理液を供給する第1の処理液供給手段と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、該被処理基板が搬送されることによって、その先端側から後端側にわたり所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付ける気体供給手段と、前記気体供給手段よりも基板搬送方向下流側に設けられ、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液を吐出する第2のリンス手段と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段と、前記基板搬送路上において、前記第1のリンス手段により供給された第2の処理液によって、基板幅方向に延びる液溜まり部を形成する液溜まり形成手段とを備え、
前記被処理基板の先端部は、その基板面に前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられ、前記液溜まり形成手段に形成された液溜まり部の中を通過し、さらにその基板面に前記第1のリンス手段により第2の処理液が供給されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液溜まり形成手段は、前記基板搬送路を搬送される被処理基板よりも低い位置において基板幅方向に延設されたテーブル部材であって、前記テーブル部材の上面に前記第2の処理液が液盛りされ、前記液溜まり部が形成されることを特徴とする請求項1に記載された基板処理装置。
【請求項3】
基板搬送路を平流し搬送される被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理装置であって、
前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に第1の処理液を供給する第1の処理液供給手段と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、該被処理基板が搬送されることによって、その先端側から後端側にわたり所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付ける気体供給手段と、前記気体供給手段よりも基板搬送方向下流側に設けられ、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液を吐出する第2のリンス手段と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段と、前記基板搬送路上において、前記第1のリンス手段の下方に設けられ、基板幅方向に延びる第2の処理液の液溜まり部を形成する液溜まり形成手段とを備え、
前記液溜まり形成手段は、
前記基板搬送路を搬送される被処理基板よりも低い位置において基板幅方向に延設されると共に、上面に前記第2の処理液の吐出孔が形成されたテーブル部材と、前記テーブル部材に形成された吐出孔から前記第2の処理液を吐出させる第2の処理液供給手段とを有し、前記第2の処理液供給手段により前記第2の処理液が前記テーブル部材の上面に供給されて前記液溜まり部が形成され、
前記被処理基板の先端部は、その基板面に前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられ、前記液溜まり形成手段に形成された液溜まり部の中を通過し、さらにその基板面に前記第1のリンス手段により第2の処理液が供給されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
前記第2のリンス手段は、前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板の基板面に対し、前記第1のリンス手段よりも高流速で前記第2の処理液を吐出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された基板処理装置。
【請求項5】
前記液溜まり形成手段において、前記液溜まり部が形成される面は、基板搬送方向の上流側下方に所定角度傾斜し、
前記液溜まり形成手段により形成される液溜まり部において、基板搬送方向の上流側端部は、前記気体供給手段から吹き付けられるガス流により堰き止められることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された基板処理装置。
【請求項6】
前記気体供給手段により前記被処理基板の基板面に吹き付けられるガス流は、基板幅方向に直線状に延びるカーテン状のガス流であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された基板処理装置。
【請求項7】
基板搬送路を平流し搬送される被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理装置であって、
前記基板搬送路を搬送される前記被処理基板に第1の処理液を供給する第1の処理液供給手段と、前記第1の処理液が液盛りされた前記被処理基板の基板面に対し、該被処理基板が搬送されることによって、その先端側から後端側にわたり所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付ける気体供給手段と、前記気体供給手段よりも基板搬送方向下流側に設けられ、前記被処理基板の基板面に対し前記第2の処理液を吐出する第2のリンス手段と、前記気体供給手段と前記第2のリンス手段との間に設けられ、前記気体供給手段によりガス流が吹き付けられた前記被処理基板の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出する第1のリンス手段とを備え、
前記第1のリンス手段は、前記第2の処理液を吐出するリンスノズルと、前記リンスノズルから吐出された第2の処理液を、被処理基板上の基板搬送方向上流側の所定位置まで導出すると共に、減速された状態で前記所定位置に供給する邪魔板を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記基板搬送路において、上り傾斜の搬送路と下り傾斜の搬送路とにより隆起部が形成され、前記隆起部の頂点上方に前記気体供給手段と、前記第1のリンス手段とが配置され、下り傾斜の搬送路の上方に前記第2のリンス手段が配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された基板処理装置。
【請求項9】
被処理基板に第1の処理液を供給して所定の液処理を施し、前記第1の処理液を回収して第2の処理液により洗浄する基板処理方法であって、
基板搬送路において前記被処理基板を平流し搬送し、基板上に第1の処理液を供給すると共に、その下流側の基板搬送路上において、基板幅方向に延びる前記第2の処理液の液溜まり部を形成するステップと、
前記第1の処理液が供給された前記被処理基板の先端部の基板面に対し、所定のガス流を鉛直方向乃至搬送方向下流側のいずれかに向けて吹き付け、吹き付けた領域から前記第1の処理液を除去するステップと、
前記ガス流が吹き付けられて第1の処理液が除去された被処理基板の先端部を、前記液溜まり部の中に通過させるステップと、
前記被処理基板の先端部の基板面に対し、所定の流速で前記第2の処理液を吐出し供給するステップとを実行することを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−80808(P2013−80808A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219743(P2011−219743)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】