説明

基板処理装置

【課題】 基板処理装置のさらなるコンパクト化を実現することができるようにする。
【解決手段】 搬送路171に沿って略水平姿勢で搬送されつつある基板Bに所定の処理を施す基板処理装置10であって、搬送中の基板Bに所定の処理液を供給する処理液供給装置としての、供給した処理液を基板Bから回収可能に構成された液回収型ノズル装置20と、前記処理液が供給された後の基板B上に残留している処理液を除去する処理液除去装置としての、基板B上の残留処理液を気流によって吹き飛ばすように構成されたエアナイフ30とが搬送路171に沿って直列に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶や各種の電子部品等がマウントされるガラス基板を含む各種の基板を製造するに際し、これら基板に所定の処理を施す基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に用いられる基板は、その製造に際し処理液の種類毎に複数設けられた処理槽内に当該基板を順番に装入していき、各処理槽内で所定の処理液が供給されることによりそれぞれ独自の処理が施されるのが一般的である。基板に対してかかる処理を施すべく、各処理槽を貫通した搬送路が設けられるとともに、この搬送路に沿って複数の搬送ローラ等の搬送手段が配設され、基板はこの搬送手段に搬送されつつ各処理槽内に順番に送り込まれることになる。
【0003】
基板に処理液が異なる複数の処理を施すときは、上流側の処理液が基板に同伴して下流側の処理槽に持ち込まれるのを防止するべく、処理槽間の距離を十分に確保することが行われるが、これによって基板処理のための占有空間が大きくなり、製造空間の有効利用が阻まれるという不都合が存在する。
【0004】
かかる不都合を解消するべく、搬送路に沿って搬送中の基板に処理液を噴霧ノズルから噴霧する方式が採用される場合がある。かかる処理液噴霧方式によれば、前記のような基板全体に満遍なく処理液を付与することができ、浸漬方式に比べて処理時間が短縮される。
【0005】
ところで、近年、特許文献1に記載されたような、搬送方向の下流側で基板に供給した処理液を上流側で基板上から回収するようにした液回収型ノズル装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−280340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の噴霧ノズル方式では、処理後の基板上に多量の処理液が残留することから、この残留処理液を確実に液切りするために所要の処理長が必要となり、例えば残留処理液がある程度基板上から滴り落ちてから液切り部材で確実に液切りするといった形態が必要であった。また、噴霧ノズル装置が適用された基板処理装置に特許文献1に記載の液回収型ノズル装置を適用しても、両ノズル装置のタイプが大きく異なること、および液回収型ノズル装置は処理液の多くを回収するという相違点があることから、単純に置き換えて適用することは困難である。
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、処理液の効率的な使用を確保した上で、基板処理空間のさらなるコンパクト化を図ることができ、加えて基板処理の効率化をも図り得る基板処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、搬送路に沿って略水平姿勢で搬送中の基板に所定の処理を施す基板処理装置であって、前記搬送中の基板に向けて処理液を供給して基板処理を施すとともに処理後の処理液を基板から回収する液回収型ノズル部と、前記液回収型ノズル部の基板搬送路の直ぐ下流側に基板上の処理液をエアを吹き付けて液切りを行う液切り部とが前記搬送路に沿って直列に配設されていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成を採用したことにより、基板処理装置内に導入された基板は、搬送されつつ、まず液回収型ノズル部から供給された処理液によって処理され、多くの処理液が回収される。そして、処理後の基板は液切り部に到達し、この液切り部によって残りの処理液に対する液切り処理が施される。このため、液回収型ノズル装置の直ぐ下流側の位置に液切り部を配設しても的確な液切り処理が行われる。したがって、液回収型ノズル部と、液切り部とを基板搬送方向に対してコンパクトに配置することができ、かつ、処理効率を高め得る。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記液回収型ノズル部と、前記液切り部とで1単位の基板処理部が形成され、複数単位の基板処理部が前記搬送路に沿って直列に配設され、各単位の基板処理部で異なる種類の処理液が使用されることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成によれば、基板は、搬送路に沿って搬送されることにより、各単位の基板処理部を通過することで複数種類の処理液による処理が施される。しかも、上流側の基板処理部の処理液が基板に同伴して下流側の基板処理部に持ち込まれる量を従来に比べて少なくすることができるため、各基板処理部間の距離を従来に比べて可能な限り短くすることが可能になる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記各基板処理部として搬送路の上流側からエッチング部、洗浄部および乾燥部が設けられ、前記エッチング部は、基板にエッチング処理を施すべく処理液としてエッチング液を使用するものであり、前記洗浄部は、基板を洗浄するべく処理液として純水を使用するものであり、前記乾燥部は、前記液切り部が乾燥用として使用されることを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成によれば、搬送路に沿って搬送されつつある基板は、まずエッチング部においてエッチング液が供給されたエッチング処理が施され、ついで洗浄部において純水が供給されることによる洗浄処理が施され、最後に乾燥部において液切り部から供給される気流により乾燥処理が施されたのち次工程へ向けて排出される。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記液回収型ノズル部および液切り部は、互いに対向した壁面に基板搬入口と基板搬出口とを有するとともに、これら基板搬入口と基板搬出口との間に前記搬送路が形成されてなる処理装置本体内に配設され、前記処理装置本体内に清浄空気を導入する空気導入手段と、前記処理装置本体内の空気を排気する排気手段とを備えて構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、搬送路に沿って基板搬入口から処理装置本体内に導入された基板は、処理装置本体内に設けられた液回収型ノズル部および液切り部へ順次搬送され、各ノズル装置による所定の処理が施されたのち基板搬出口から系外に排出される。そして、処理装置本体内には空気導入手段からの清浄空気が常に導入されるとともに、処理装置本体内の空気は排気手段によって常に排気されるため、たとえ処理装置本体内に処理液の飛沫や浮遊パーティクルが存在しても排気に同伴して系外に排出され、これによって処理装置本体内は、常に清浄な雰囲気が維持される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、基板処理装置内に導入された基板は、搬送されつつ、まず液回収型ノズル部から供給された処理液によって処理され、引き続き液濡れ状態で液切り部に到達し、この液切り部によって液切り処理が施され、これによって濡れた基板に同伴して下流側に持ち込まれる処理液の量を極力少なくすることができるため、基板処理装置の前後長を従来のものに比べて極力短くすることがができる。
【0017】
したがって、基板処理装置のコンパクト化およびランニングコストの低減化のために液回収型ノズル部を採用したにも拘らず、処理液の次工程への持ち込みを極力抑えるために次工程までの距離を長めにせざるを得ない従来の不都合が解消され、基板処理装置のコンパクト化による装置コストおよびランニングコストの低減化に貢献することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、基板は、搬送路に沿って搬送されることにより、各単位の基板処理部を通過することで複数種類の処理液による処理が施され、しかも上流側の基板処理部の処理液が基板に同伴して下流側の基板処理部に持ち込まれる量を従来に比べて少なくすることができるため、各基板処理部間の距離を従来に比べて可能な限り短くして1つの装置本体内で、かつ、仕切りのない状態で基板を処理することが可能になり、複数種類の処理液を用いて基板を処理する基板処理装置の装置コストおよびランニングコストの低減化に貢献することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、搬送路に沿って搬送されつつある基板は、まずエッチング部においてエッチング液が供給されたエッチング処理が施され、ついで洗浄部において純水が供給されることによる洗浄処理が施され、最後に乾燥部において液切り部から供給される気流により乾燥処理が施されるため、基板にこれら各処理部を通過させることで洗浄および乾燥も含めた一連のエッチング処理を施すことができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、処理装置本体内には空気導入手段からの清浄空気が常に導入されるとともに、処理装置本体内の空気は排気手段によって常に排気されるため、たとえ処理装置本体内にパーティクルや処理液の飛沫が浮遊していても、これらパーティクルや飛沫は排気に同伴して系外に排出され、これによって処理装置本体内の雰囲気を常に清浄に維持することができ、基板が処理装置本体内の汚染された雰囲気に起因して汚染されるような不都合を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す断面視の説明図であり、図2は、その平面視の説明図である。この実施形態においては、基板処理装置10として基板にエッチング処理を施すエッチング処理装置を例に挙げている。図1に示すように、基板処理装置10は、直方体状を呈した処理装置本体11内に、基板Bに対してエッチング処理を施すエッチング部12と、このエッチング部12から導出された基板Bに対して洗浄処理を施す洗浄部13と、この洗浄部13から導出された基板Bに対して乾燥処理を施す乾燥部14とを備えて構成されている。
【0022】
前記処理装置本体11の上流側壁111(図1における右方)には、基板搬入口15が開口されているとともに、下流側壁112には、前記基板搬入口15と対向した位置に基板搬出口16が開口されている。そして、これら基板搬入口15と基板搬出口16との間には、基板搬送方向(図1において左方へ向う方向)に等ピッチで複数の搬送ローラ17が並設され、これら複数の搬送ローラ17上に処理装置本体11内で基板Bを搬送するための搬送路171が形成されている。各搬送ローラ17は、図略の駆動モータの駆動で図1における反時計方向に駆動回転するようになっている。
【0023】
したがって、系外から基板搬入口15を介して処理装置本体11内に導入された基板Bは、各搬送ローラ17の駆動回転により搬送路171を下流側へ向けて搬送され、エッチング部12でエッチング処理が施された後、洗浄部13で洗浄処理が施され、最後に乾燥部14で乾燥処理が施された後、基板搬出口16を介して系外に排出されるようになっている。
【0024】
前記洗浄部13は、上流側(図1の右方)の第1洗浄部130と、下流側で第1洗浄部130に隣設された第2洗浄部130′とからなっている。第1洗浄部130は、エッチング部12から導出された基板Bに対して通常の洗浄処理を施すものであるのに対し、第2洗浄部130′は、さらに高度の仕上げ洗浄処理を基板Bに施すものである。
【0025】
前記処理装置本体11内におけるエッチング部12の下方位置には第1ホッパ121が設けられ、同第1洗浄部130の下方位置には第2ホッパ131が設けられ、同第2洗浄部130′の下方位置には第3ホッパ132が設けられ、同乾燥部14の下方位置には第4ホッパ141が設けられている。そして、搬送路171に沿って搬送中の基板Bから滴り落ちた処理液がこれら第1〜第4ホッパ121,131,132,141によって受けられた後、底部の開口から後述する気液分離器181を通って適宜排出されるようになっている。
【0026】
また、エッチング部12および洗浄部13における搬送路171より上方空間には、各部を仕切る仕切り壁が設けられていないのに対し、第2洗浄部130′と乾燥部14との境界位置には、処理装置本体11の天板113から搬送路171の直上方位置まで垂下された上部仕切り壁114が設けられ、この上部仕切り壁114によってエッチング部12および洗浄部13内で生じた水滴等が乾燥部14内に侵入するのを防止するようになされている。
【0027】
また、第2洗浄部130′は、基板搬送方向の長さ寸法が第1洗浄部130の長さ寸法より長尺に設定されている。このようにされるのは、最終的な洗浄処理が施された後の基板Bに対しさらに後述の液保持用ノズル装置40によるパーティクル形成防止処置を施すための空間を確保するためである。
【0028】
そして、処理装置本体11内に導入された基板Bに対し、前記エッチング部12においてエッチング液によるエッチング処理が施され、第1洗浄部130において第1段階の洗浄処理が施され、第2洗浄部130′において仕上げの洗浄処理が施された後、乾燥部14において洗浄処理済の基板Bに対し乾燥処理が施されるようになっている。
【0029】
前記洗浄処理等のために、エッチング部12、第1洗浄部130および第2洗浄部130′には、搬送路171を挟むように上下で対向した一対の液回収型ノズル装置(液回収型ノズル部)20がそれぞれ設けられているとともに、エッチング部12および第1洗浄部130には、液回収型ノズル装置20の直下流側に搬送路171を挟んで上下一対のエアナイフ(液切り部)30がそれぞれ設けられている。これに対し、第2洗浄部130′においては液回収型ノズル装置20の下流側に搬送路171を挟んだ状態で上下一対の液保持用ノズル装置40が設けられている。
【0030】
第2洗浄部130′に液保持用ノズル装置40が設けられているのは、エアナイフ30による本格的な乾燥処理は、乾燥部14によって行われるため、第2洗浄部130′では基板Bを乾燥させる必要はなく、エアナイフ30による乾燥処理を行う必要がないことによる。
【0031】
また、第2洗浄部130′にエアナイフ30が設けられていないのは、液回収型ノズル装置20により最終的な洗浄処理が施された基板Bは、乾燥部14に到達するまでの間に自然乾燥してしまうことがあり、そうなると、基板Bの表裏面にパーティクルが固着したり、ウォータマークが付いた状態になる場合があるため、これを防止するべくさらなる最終的な洗浄処理として液保持用ノズル装置40が設けられているのである。この液保持用ノズル装置40から超純水が基板Bの表裏面に向けて吐出されることによって、乾燥部14における乾燥処理で基板B上にパーティクルやウォータマークが生じないようにすることができる。
【0032】
そして、基板処理装置10の近傍には液回収型ノズル装置20および液保持用ノズル装置40に処理液を供給するための処理液供給源50が設置されている。この処理液供給源50は、エッチング部12の液回収型ノズル装置20にフッ酸を主成分とするエッチング液を供給するエッチング液供給源51と、第1洗浄部130の液回収型ノズル装置20に洗浄水を供給する第1洗浄水供給源52と、第2洗浄部130′の液回収型ノズル装置20に超純水を供給する第2洗浄水供給源53とからなっている。
【0033】
前記乾燥部14には、搬送路171を挟むように配設された上下一対のエアナイフ30が上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。かかる各エアナイフ30は、その吐出口が搬送路171に向うように上流側に向けて斜めに配設されている。かかるエアナイフ30に清浄化処理された加圧エアを供給するエア供給装置60が装置本体11の近傍に設けられている。このエア供給装置60からの加圧エアは、エッチング部12および洗浄部13のエアナイフ30へも供給されるようになっている。
【0034】
そして、乾燥部14に導入された基板Bは、上流側のエアナイフ30によってまず液切りが行われ、引き続き下流側のエアナイフ30によって十分な乾燥処理が施されるようになっている。ここでは、エアナイフ30を斜めに配置することによって、液切りと乾燥とが効果的に行われる。かかる乾燥部14での乾燥処理が完了した基板Bは、基板搬出口16を通って系外に排出され、つぎの工程へ向わせられることになる。なお、この乾燥部14でのエアナイフ30は、上流側の上下一対のものだけで十分に乾燥することができる場合には、下流側のエアナイフ30は設けなくてもよい。
【0035】
図3は、液回収型ノズル装置20、エアナイフ30および液保持用ノズル装置40を説明するための斜視図であり、液回収型ノズル装置20および液保持用ノズル装置40が第2洗浄部130′に、エアナイフ30が乾燥部14にそれぞれ設けられた状態を示している。図3に示すように、液回収型ノズル装置20は、搬送路171の上方側に設けられる上部ノズル装置201と、同下方側に上部ノズル装置201と対向配置された下部ノズル装置202とからなっている。
【0036】
かかる液回収型ノズル装置20は、図4に示すように、基板搬送方向に直交する基板幅方向(図4の紙面に直交する方向)に長尺の直方体状を呈した上下一対のノズル本体21と、各ノズル本体21の基板搬送方向下流側の端部に接続された導入管22と、同基板搬送方向上流側の端部に接続された導出管23と、上下一対のノズル本体21の各対向面に導入管22と連通するように形成された基板搬送方向に直交する基盤幅方向に長尺の細長い液導入口24と、同導出管23と連通するように前記導入口24と対向配置された液導出口25とを備えて構成されている。
【0037】
一方、第2洗浄水供給源53の下流側には、図3に示すように、この第2洗浄水供給源53の超純水を送出する送出ポンプ531が設けられている。この送出ポンプ531は前記各導入管22に接続されているとともに、前記各導出管23は処理装置本体11の近傍に設けられた吸引ポンプ532に接続されている。したがって、送出ポンプ531の駆動で第2洗浄水供給源53からの超純水が各導入管22へ導入されると、この超純水は、上下のノズル装置201,202間に挟持された状態の基板Bの表裏面と上下のノズル本体21の対向面との間に液導入口24を介して供給され、毛細管現象によって基板Bとノズル本体21の隙間から外部に漏洩することなく液導出口25の方向へ向って移動することになる。そして、液導出口25に到達した超純水は、吸引ポンプ532の駆動で導出管23を介して吸引され、系外へ排出される。
【0038】
また、下部のノズル本体21の上面側には、基板Bを支持する複数の支持コロ26が設けられ、基板Bがこれらの支持コロ26に支持されることにより、当該基板Bと下部のノズル本体21の上面との間に超純水を通過させる通路が形成されるようになっている。
【0039】
このような液回収型ノズル装置20を採用することにより、基板Bには必要最小限の超純水を供給することで確実な洗浄処理が実現するため、高価な超純水を用いた基板洗浄処理のランニングコストの低減化に貢献することができる。
【0040】
前記エアナイフ30は、図3に示すように、側面視で五角形状を呈した基板幅方向に長尺のエアナイフ本体31と、このエアナイフ本体31の先端側に形成された先細りのノズル部32と、エアナイフ本体31の基端側に接続されたエア導入管33とを備えている。ノズル部32の先端には、基板幅方向に長尺のエア吹付けスリット321が設けられている。したがって、エア供給装置60の駆動で送出された加圧エアは、エア導入管33を介してエアナイフ本体31内に導入されたのちエア吹付けスリット321から基板Bへ向けて吹き付けられ、これによる加圧気流で基板Bの表裏面に付着している超純水が吹き飛ばされるようになっている。
【0041】
かかるエアナイフ30は、基板Bの搬送方向に対して斜めになるように姿勢設定されている。こうすることでエア吹付けスリット321から吐出された吹き付けエアは、その押圧力が基板Bに付着した洗浄水に対して基板幅方向に向かう分力として作用するため、エア吹付けスリット321が基板搬送方向に対して直交している場合に比較し、基板Bに付着した洗浄水の除去が効率的に行われる。
【0042】
前記液保持用ノズル装置40は、図3に示すように、液回収型ノズル装置20とエアナイフ30との間にあって搬送路171を挟むように上下一対で設けられるものであり、円筒状のノズル管41と、このノズル管41の一端部に接続され、前記送出ポンプ531の駆動で第2洗浄水供給源53からの超純水が導入される導入管42と、各ノズル管41における基板Bに対向した面に長手方向の略全長に亘って等ピッチで穿設された複数のノズル孔43とを備えて構成されている。
【0043】
搬送路171を挟んで上下一対で設けられたかかる液保持用ノズル装置40のノズル孔43から超純水が基板Bの表裏面に噴霧されることにより、液回収型ノズル装置20によって洗浄処理された基板Bは、エアナイフ30に到達するまでに乾燥することが防止されるとともに、液保持用ノズル装置40からの噴霧水によってさらに最終段階の洗浄処理が施されるため、エアナイフ30による基板Bの乾燥処理が実行された状態で、基板Bの表裏面にパーティクルが固着するような不都合の発生が確実に防止される。
【0044】
そして、本実施形態においては、かかる液保持用ノズル装置40は、液回収型ノズル装置20とエアナイフ30との間の中間位置より液回収型ノズル装置20寄りの位置であって、可能な限り液回収型ノズル装置20に接近した位置に設けられている。このようにされるのは、液回収型ノズル装置20では必要最小限の超純水しか基板Bに接触しないため付着水の量が少なく、したがって、基板Bの洗浄されていた部分が液回収型ノズル装置20から外れた瞬間から速やかに自然乾燥が進行してしまうため、これを避けるべく液保持用ノズル装置40は可能な限り液回収型ノズル装置20に近づけて設置されるのである。
【0045】
一方、第1〜第4ホッパ121,131,132,141の低部には、図1に示すように、処理装置本体11内の気液の導出を案内する案内管18が設けられている。各案内管18は、下端部が開放されて処理装置本体11の底部に臨まされているとともに、案内管18の途中には排気管19が分岐されている。案内管18の排気管19に対する分岐位置には、所定の気液分離器181が設けられ、案内管18に集められた清浄空気および処理液は、これらの気液分離器181によって分離された後、処理液は案内管18の下端開口から処理装置本体11の底部へ導出される一方、エッチング部12、洗浄部13および乾燥部14を通過した用済み空気は排気管19へ向わせられるようになっている。
【0046】
前記各排気管19は、その下流端が基板処理装置10の近傍に配設された、工場内各所の排気を吸引するための集中排気管(排気手段)74に接続されている。したがって、気液分離器181で分離された排気管19内の用済み空気は集中排気管74へ集められ、工場内に設置された図略の集塵装置で所定の集塵処理が施された後、系外に排出されることになる。
【0047】
そして、各排気管19内には、吸引風量を調節するための調節ダンパー191がそれぞれ設けられている。この調節ダンパー191は、エッチング部12、第1洗浄部130および乾燥部14においてエアナイフ30から加圧エアが吐出されている場合と吐出されていない場合とで開度を調節するものであり、これによって処理装置本体11内の圧力を常に予め設定された負圧環境にすることができる。
【0048】
すなわち、エアナイフ30から加圧エアが吐出される場合には、このことが所定のセンサによって検出され、この検出信号が図略の制御装置に入力されることにより、当該制御装置からの制御信号が調節ダンパー191へ向けて出力され、この制御信号に基づく調節ダンパー191の開度増大で調節ダンパー191への用済み空気の吸引量が増加される一方、エアナイフ30からの加圧エアの吐出が停止されると、このことが所定のセンサによって検出され、この検出信号に基づく制御装置からの制御信号によって調節ダンパー191の開度が小さくされ、用済み空気の吸引量が減少されるようになっている。
【0049】
かかる調節ダンパー191の開度制御によって、エアナイフ30からの加圧エアの吐出および吐出停止に拘らず、エッチング部12、洗浄部13および乾燥部14内の圧力が常に一定になるようにしている。
【0050】
以上詳述したように、本発明に係る基板処理装置10は、搬送路171に沿って略水平姿勢で搬送されつつある基板Bに所定の処理を施すものであり、搬送中の基板Bに所定の処理液を供給する処理液供給装置としての、供給した処理液を基板Bから回収可能に構成された液回収型ノズル装置20と、前記処理液が供給された後の基板B上に残留している処理液を除去する処理液除去装置としての、基板B上の残留処理液を気流によって吹き飛ばすように構成されたエアナイフ30とが搬送路171に沿って直列に配設されているため、基板処理装置10内に導入された基板Bは、搬送されつつ、まず液回収型ノズル装置20から供給された処理液によって処理され、引き続き液濡れ状態でエアナイフ30に到達し、このエアナイフ30によって液切り処理が施され、これによってエッチング部12と洗浄部130のように隣接して異種の液を使用する部分で処理液を分離し、濡れた基板Bに同伴して下流側に持ち込まれる処理液の量を極力少なくすることができる。
【0051】
したがって、基板処理装置10のコンパクト化およびランニングコストの低減化のために液回収型ノズル装置20を採用したにも拘らず、処理液の次工程への持ち込みを極力抑えるために次工程までの距離を長めにせざるを得ない従来の不都合が解消され、基板処理装置10のコンパクト化による装置コストおよびランニングコストの低減化に貢献することができる。
【0052】
また、液回収型ノズル装置20と、エアナイフ30とで1単位の基板処理部(本実施形態においてはエッチング部12および第1洗浄部130)が形成されるようにし、複数単位の基板処理部が搬送路171に沿って直列に配設され(本実施形態ではエッチング部12と洗浄部13とが直列に配設され)、しかも各単位の基板処理部で異なる種類の処理液が採用されているため(本実施形態ではエッチング部12では処理液としてエッチング液が採用され、第1洗浄部130では処理液として洗浄水が採用されているため)、基板Bは、搬送路171に沿って搬送されることにより、各単位の基板処理部(エッチング部12および第1洗浄部130)を通過することで複数種類の処理液による処理を実行することができる。しかも、処理液供給装置として液回収型ノズル装置20が採用されているため、上流側の基板処理部の処理液が基板Bに同伴して下流側の基板処理部に持ち込まれる量を従来に比べて少なくすることができ、これによって各基板処理部間の距離を従来に比べて可能な限り短くすることが可能になり、複数種類の処理液を用いて基板Bを処理する基板処理装置10の装置コストおよびランニングコストの低減化に貢献することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、各基板処理部として搬送路171の上流側からエッチング部12、洗浄部13および乾燥部14が設けられ、エッチング部12では、基板Bにエッチング処理を施すべく処理液としてエッチング液が使用され、洗浄部13では、基板Bを洗浄するべく処理液として純水が使用され、乾燥部14では、エアナイフ30が乾燥用として使用されるため、搬送路171に沿って搬送されつつある基板Bは、まずエッチング部12においてエッチング液が供給されたエッチング処理が施され、ついで洗浄部13において純水が供給されることによる洗浄処理が施され、最後に乾燥部14においてエアナイフ30から供給される気流により乾燥処理が施される。したがって、基板Bにこれら各処理部(エッチング部12、洗浄部13および乾燥部14)を通過させることで基板Bに対して洗浄および乾燥も含めた一連のエッチング処理を施すことができる。
【0054】
また、液回収型ノズル装置20およびエアナイフ30は、互いに対向した上流側壁111および下流側壁112にそれぞれ開口された基板搬入口15と基板搬出口16とを有するとともに、これら基板搬入口15と基板搬出口16との間に搬送路171が形成されてなる処理装置本体11内に配設されているため、搬送路171に沿って基板搬入口15から処理装置本体11内に導入された基板Bは、処理装置本体11内に設けられた液回収型ノズル装置20およびエアナイフ30へ順次搬送され、各ノズル装置による所定の処理が施されたのち基板搬出口16から系外に排出される。しかも、処理装置本体11内には、清浄空気を導入する清浄空気用ブロア61と、処理装置本体11内の空気を排気する集中排気管74とが備えられているため、処理装置本体11内には清浄空気用ブロア61からの清浄空気が常に導入されるとともに、処理装置本体11内の空気は集中排気管74を介して常に排気される。したがって、たとえ処理装置本体11内に処理液の飛沫や浮遊パーティクルが存在しても排気に同伴して系外に排出され、これによって処理装置本体11内の雰囲気を常に清浄に維持することができ、基板Bが処理装置本体11内の汚染された雰囲気に起因して汚染されるような不都合を確実に防止することができる。
【0055】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0056】
(1)上記の実施形態においては、基板処理装置10として基板Bにエッチング処理を施すものを例として挙げているが、本発明は、基板処理装置10がエッチング処理用のものであることに限定されるものではなく、基板処理装置10の全体を洗浄処理用のものとしてもよい。この場合には、エッチング液供給源51は洗浄水処理源に代えられる。
【0057】
(2)上記の実施形態においては、エッチング部12および第1洗浄部130に液保持用ノズル装置40が設けられていないが、本発明は、エッチング部12および第1洗浄部130に液保持用ノズル装置40を設けないことに限定されるものではなく、基板処理の種類や状況に応じてこれらの基板処理部にも液保持用ノズル装置40を設けてもよい。こうすることによって、エッチング部12および第1洗浄部130内での処理が液回収型ノズル装置20と液保持用ノズル装置40との2段処理になるため、より効果的な基板処理を実現することができる。
【0058】
(3)上記の実施形態においては、第2洗浄部130′における液回収型ノズル装置20を用いた超純水による基板Bの洗浄処理で液回収型ノズル装置20から排出された洗浄処理後の超純水を系外に排出するようにしているが、こうする代わりに、洗浄処理後の超純水を第1洗浄部130へ戻して再利用に供してもよい。
【0059】
(4)上記の実施形態においては、液保持用ノズル装置40に洗浄水を吐出するための円形のノズル孔43がノズル管41に穿設されているが、本発明は、洗浄水を吐出する部分が円形のノズル孔43であることに限定されるものではなく、角孔や多角形状の孔、あるいは星型孔等であってもよいし、孔に代えてスリットを採用してもよいし、所定のノズル部材を取り付けてもよい。
【0060】
(6)上記の実施形態においては、第2洗浄部130′において液保持用ノズル装置40は、液回収型ノズル装置20とエアナイフ30との略中間位置に設けられているが、本発明は、液保持用ノズル装置40が前記中間位置に設けられることに限定されるものではなく、基板Bの種類や操業条件など基板処理に関する各種の状況に基づき適宜設置位置を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す断面視の説明図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の平面視の説明図である。
【図3】液回収型ノズル装置、エアナイフおよび液保持用ノズル装置が第2洗浄部に、エアナイフが乾燥部にそれぞれ設けられた状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液回収型ノズル装置の側面視の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 基板処理装置 11 処理装置本体
111 上流側壁 112 下流側壁
113 天板 114 仕切り壁
12 エッチング部 121 第1ホッパ
13 洗浄部 130 第1洗浄部
130′ 第2洗浄部 131 第2ホッパ
132 第3ホッパ 14 乾燥部
141 第4ホッパ 15 基板搬入口
16 基板搬出口 17 搬送ローラ
171 搬送路 18 案内管
181 気液分離器 19 排気管
191 調節ダンパー 20 液回収型ノズル装置(液回収型ノズル部)
201 上部ノズル装置 202 下部ノズル装置
21 ノズル本体 22 導入管
23 導出管 24 液導入口
25 液導出口 30 エアナイフ(液切り部)
31 エアナイフ本体 32 ノズル部
321 エア吹付けスリット 33 エア導入管
40 液保持用ノズル装置 41 ノズル管
42 導入管 43 ノズル孔
50 処理液供給源 51 エッチング液供給源
52 第1洗浄水供給源 53 第2洗浄水供給源
531 送出ポンプ 532 吸引ポンプ
60 エア供給装置 61 清浄空気用ブロア(空気導入手段)
74 集中排気管(排気手段)
B 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って略水平姿勢で搬送中の基板に所定の処理を施す基板処理装置であって、前記搬送中の基板に向けて処理液を供給して基板処理を施すとともに処理後の処理液を基板から回収する液回収型ノズル部と、前記液回収型ノズル部の基板搬送路の直ぐ下流側に基板上の処理液をエアを吹き付けて液切りを行う液切り部とが前記搬送路に沿って直列に配設されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液回収型ノズル部と、前記液切り部とで1単位の基板処理部が形成され、複数単位の基板処理部が前記搬送路に沿って直列に配設され、各単位の基板処理部で異なる種類の処理液が使用されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記各基板処理部として搬送路の上流側からエッチング部、洗浄部および乾燥部が設けられ、前記エッチング部は、基板にエッチング処理を施すべく処理液としてエッチング液を使用するものであり、前記洗浄部は、基板を洗浄するべく処理液として純水を使用するものであり、前記乾燥部は、前記液切り部が乾燥用として使用されることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記液回収型ノズル部および液切り部は、互いに対向した壁面に基板搬入口と基板搬出口とを有するとともに、これら基板搬入口と基板搬出口との間に前記搬送路が形成されてなる処理装置本体内に配設され、前記処理装置本体内に清浄空気を導入する空気導入手段と、前記処理装置本体内の空気を排気する排気手段とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−19525(P2006−19525A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196045(P2004−196045)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(502266320)株式会社フューチャービジョン (73)
【Fターム(参考)】