説明

基板処理装置

【課題】基板の上面に対向し近接して押付部材を配置し基板の処理を行う場合に、高温の処理液を使用するときでも、基板の面内温度の均一性を高め、押付部材の下面と基板上面とで挟まれる空間における温度の上昇を抑えることができる装置を提供する。
【解決手段】基板Wの上面に対向し近接して配置される雰囲気遮断板のプレート部60の内部に、その中央領域から周辺領域の気体噴出口80に向かって気体を流通させる気体通路84を形成し、気体通路の途中を部分的に狭隘にし、その狭隘通路部分126とプレート部の下面側とを連通させる吸引細孔128を形成して、気体通路にエジェクタ部116を設け、吸引細孔の、プレート部の下面に開口する吸い込み口130を、気体噴出口よりプレート部下面の中心寄りに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置(LCD)用/プラズマディスプレイ(PDP)用のガラス基板、磁気/光ディスク用のガラス/セラミック基板、電子デバイス基板等の各種の基板に対して洗浄、エッチング等の処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいて、基板の下面へ薬液、純水等の処理液を供給して、基板の下面に対しエッチング、洗浄、リンス等の処理を行うとともに、基板の下面から基板の周端面を伝ってその上面(デバイス形成面)へ処理液を回り込ませ、基板の上面周縁部を処理(ベベル処理)することが行われる。このような処理に使用される基板処理装置は、鉛直軸回りに回転自在に支持されたスピンベース、スピンベースの上面に一体的に固設され基板の下面に当接して基板をスピンベースの上面から離間させ水平姿勢に支持する複数個のベースピン、スピンベース上に保持される基板の上面に対向し基板に近接して配置される雰囲気遮断板などを備えて構成される。雰囲気遮断板の下面周縁部には、複数の気体噴出口が円周上に等配して形設されており、複数の気体噴出口からスピンベース上の基板の周縁部に向けて気体を噴出して、その噴出する気体の圧力で基板をベースピンに押し付けることにより、摩擦力で基板をベースピンに対し固定して、回転するスピンベースに保持するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図6は、従来の基板処理装置を使用して基板の処理が行われているときの様子を示す部分拡大断面図である。基板Wは、スピンベース(図示せず)の上面に固設された複数個のベースピン1によって水平姿勢に支持され、スピンベースおよびベースピン1と一体となって鉛直軸回りに回転している。また、雰囲気遮断板2も、スピンベースと同一の軸心回りに、例えばスピンベースと同期して同一方向へ同一速度で回転している。そして、外部の気体供給源から供給されて雰囲気遮断板2の内部に形成された気体通路3へ流入した気体、例えば常温の窒素ガスが、雰囲気遮断板2の下面周縁部に設けられた複数のガス噴出口4からスピンベース上の基板Wの上面に向けて噴出し、その噴出する気体の圧力によって基板Wがベースピン1に押し付けられる。これにより、基板Wは、摩擦力でベースピン1に対し固定されて、回転するスピンベースに保持される。また、雰囲気遮断板2のガス噴出口4を通して雰囲気遮断板2の下面と基板Wの上面とで形成される隙間へ窒素ガスが供給されることにより、その隙間へ処理液が流入することが防止される。基板Wの下面には、図示していないがスピンベースに一体に連接された回転支軸に設けられた処理液供給ノズルから処理液5が供給され、その処理液5は、基板Wの下面から基板Wの周端面を伝ってその上面へ回り込む。このようにして、基板Wの下面および周縁部の処理が行われる。
【特許文献1】特開2006−32891号公報(第5−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板処理装置を使用して上記したような処理を行う場合において、基板Wの下面へ供給される薬液が常温であるときは特に問題を生じない。ところが、高温の薬液を使用して上記処理を行う場合においては、ノズルから基板Wの下面中心部に向けて高温の薬液が吐出されるため、基板Wの中心部が温まりやすくなり、基板Wの周辺に向かうほど基板Wの温度が低下してしまう。しかも、常温の窒素ガスが、雰囲気遮断板2の周縁部に設けられたガス噴出口4から基板Wの上面周縁部に向けて噴出されるため、特に基板Wの周縁部ではその温度が急激に下がってしまう。このようにして基板Wに温度分布を生じる結果、例えばエッチング処理では、エッチングレートが基板Wの半径方向における位置によって変化し、均一なエッチング処理を行うことができなくなる。また、雰囲気遮断板2の下面と基板Wの上面とで形成される隙間は、雰囲気遮断板2のガス噴出口4を通して供給される窒素ガスによって雰囲気的にシールされた状態であり、その空間では気体の入れ替わりがないため、高温となってしまう(80℃の温度の薬液を使用して行った実験では、当該空間の温度が73℃となった)。この結果、通常は塩化ビニル製である雰囲気遮断板2に変形等の不具合を生じる原因となる。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、基板保持部材上に保持された基板の上面に対向し基板に近接して押付部材を配置し基板の処理を行う場合において、高温の処理液を使用するときであっても、基板の面内温度の均一性を高めることができるとともに、押付部材の下面と基板の上面とで挟まれる空間における温度の上昇を抑えることができ、もって、処理の均一性を向上させるとともに、押付部材に変形等の不都合を生じることもない基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、鉛直軸回りに回転自在に支持され、基板の下面に当接する少なくとも3個の基板支持部が上面に一体的に設けられ、前記基板支持部によって基板を上面から離間させ水平姿勢に支持する基板保持部材と、この基板保持部材を回転させる回転手段と、前記基板保持部材上の基板に対し処理液を供給する処理液供給手段と、基板に対応する平面形状を有しかつ基板と同等もしくは同等以上の大きさを有するプレート部、および、このプレート部の中央部に一体的に連接された回転軸部から構成され、鉛直軸回りに回転自在に支持された押付部材と、この押付部材の内部流路へ気体を供給する気体供給手段と、を備え、前記押付部材の前記プレート部が前記基板保持部材上の基板の上面に対向し基板に近接して配置され、前記プレート部の周縁部下面側に、前記基板保持部材上の基板の周縁部に向けて気体を噴出しその噴出する気体の圧力によって基板を前記基板支持部に押し付ける気体噴出口が円周上に形設され、前記押付部材の内部に前記気体噴出口へ気体を供給するための流路が形成された基板処理装置において、前記プレート部の内部に、その中央領域から周辺領域の前記気体噴出口に向かって気体を流通させる気体通路を形成して、その気体通路の途中を部分的に狭隘にするとともに、その狭隘通路部分と前記プレート部の下面側とを連通させる吸引細孔を形成して、前記気体通路にエジェクタ部を設け、前記吸引細孔の、前記プレート部の下面に開口する吸い込み口を、前記気体噴出口よりプレート部下面の中心寄りに配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の処理装置において、エジェクタ部の吸引細孔の吸い込み口を、プレート部の下面中心を中心とする円周上に等配して複数配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の処理装置において、エジェクタ部の吸引細孔の吸い込み口を、基板保持部上の基板の中心に対向して配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の処理装置において、プレート部の周縁部下面側に設けられる気体噴出口が、円周上に等配して形設された複数個の細孔であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の処理装置において、押付部材の気体導入路へ供給される気体が常温であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の基板処理装置においては、押付部材の内部の流路に導入され気体通路を通ってプレート部の周縁部の気体噴出口へ送給される気体がエジェクタ部を通過する際に、ベンチュリ効果によって狭隘通路部分が減圧状態となる。この狭隘通路部分に生じた負圧により、プレート部の下面と基板の上面とで挟まれた空間の雰囲気気体が吸引細孔を通して、狭隘通路部分を流れる気体中に流れ込み、その結果として吸い込み口付近は常に減圧状態となる。そして、吸い込み口は、プレート部の周縁部の気体噴出口よりプレート部下面の中心寄りに位置しているため、例えば基板の下面中心部に向けて高温の処理液が吐出される場合に、温まりやすくなっている基板の中心部付近の雰囲気気体が吸引細孔を通して狭隘通路部分へ吸引される。このため、基板の中心部における温度上昇が抑えられることとなる。また、狭隘通路部分を通過する気体中に、基板の中心部付近の温まった雰囲気気体が流れ込むことにより、プレート部の周縁部の気体噴出口から基板の上面周縁部に向けて噴出される気体の温度が上昇する。このため、基板の周縁部における急激な温度低下が抑えられることとなる。さらに、プレート部の下面と基板の上面とで挟まれた空間の雰囲気気体の一部が吸引細孔を通して吸引されるとともに、減圧状態となっている吸い込み口付近に、プレート部の気体噴出口から噴出された気体の一部が流れ込むこととなり、前記空間で気体の入れ替わりが行われる。
したがって、請求項1に係る発明の基板処理装置を使用すると、高温の処理液を使用する場合であっても、基板の面内温度の均一性を高めることができ、この結果、処理の均一性を向上させることができるとともに、押付部材の下面と基板の上面とで挟まれる空間における温度の上昇を抑えることができ、この結果、押付部材に変形等の不都合を生じることを防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の処理装置では、複数の吸い込み口を通して、押付部材の下面と基板の上面とで挟まれた空間の雰囲気気体を円周方向において均等に吸引することにより、基板の面内温度の均一性を高めることができる。
【0013】
請求項3に係る発明の処理装置では、例えば基板の下面中心部に向けて高温の処理液が吐出される場合に、基板の中心に対向した吸い込み口を通して、最も温まりやすくなっている基板の中心部付近の雰囲気気体を吸引することにより、請求項1に係る発明の上記効果を確実に奏することができる。
【0014】
請求項4に係る発明の処理装置では、押付部材の周縁部の複数個の細孔から基板保持部材上の基板の上面周縁部に向けて噴出される気体の圧力により基板を複数の基板支持部に均等に押し付けて、基板を基板支持部に対し良好に固定することができる。
【0015】
請求項5に係る発明の処理装置では、押付部材の気体噴出口から常温の気体を噴出することにより、押付部材の下面と基板の上面とで挟まれた空間の雰囲気気体の温度上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1ないし図3は、この発明の実施形態の1例を示し、図1は、基板処理装置の要部を縦断面で示す正面図であり、図2は、その装置の構成要素である雰囲気遮断板のプレート部の右半分を示す縦断面図であり、図3は、そのプレート部の四半分を示す図2のIII−III矢視平面図である。
【0017】
この基板処理装置は、基板Wを水平姿勢で保持する基板保持部材10を備えている。基板保持部材10は、円板状のスピンベース12、および、このスピンベース12の上面側周縁部にその円周方向に等配して固設された複数本のベースピン14により構成されている。スピンベース12の中心部には貫通孔(図示せず)が形成されており、その貫通孔に連通するように中空の円筒状回転支軸16が垂設されて、スピンベース12に円筒状回転支軸16が固着されている。円筒状回転支軸16の中空部には、軸心部に通液路20が形成されたノズル18が挿通されており、ノズル18の上端の吐出口22が、基板保持部材10に保持された基板Wの下面中心に対向するように配置されている。このノズル18の吐出口22からは、基板保持部材10上の基板Wの下面中心部に向けて薬液や純水等のリンス液などの処理液が吐出される。円筒状回転支軸16の内周面とノズル18の外周面との間には円環状の隙間が形成されており、その隙間が窒素ガス等の不活性ガスや清浄空気などの気体(以下では、気体が窒素ガスであるとして説明する)を供給するための通気路24となっている。通気路24の上端のガス吐出口26からは、基板保持部材10上の基板Wの下面に対して窒素ガスが吐出される。
【0018】
円筒状回転支軸16の周囲には、基台板28上に固着された有蓋円筒状のケーシング30が配設されている。そして、円筒状回転支軸16は、基台板28およびケーシング30に、それぞれ軸受32、34を介して鉛直軸回りに回転自在に支持されている。ケーシング30の内部には、基台板28上に固定されたモータ36が配設されている。モータ36の回転軸には駆動側プーリ38が固着され、一方、円筒状回転支軸16には従動側プーリ40が嵌着されていて、駆動側プーリ38と従動側プーリ40とにベルト42が掛け回されている。これらの機構により、円筒状回転支軸16が回転させられ、基板保持部材10に保持された基板Wが水平面内で鉛直軸回りに回転させられる。
【0019】
ケーシング30の周囲には、それを取り囲むように同心円状に配置された3つの円筒仕切り壁44a、44b、44c、および、円筒仕切り壁44a、44b、44cと一体に形成されケーシング30の円筒部外周面の下端部に連接した底壁部46が、基台板28上に固着されて配設されている。そして、各円筒仕切り壁44a、44b、44cとケーシング30と底壁部46との組合せによって形成される3つの空間が、それぞれ排液槽48a、48b、48cとなる。また、これらの排液槽48a、48b、48cの上方には、上面が大きく開口したカップを構成するスプラッシュガード50が、基板保持部材10に保持された基板Wの周囲を包囲するように配設されている。スプラッシュガード50は、円筒状回転支軸16の軸線方向に沿った鉛直方向に昇降自在に保持されており、昇降機構52によって上下方向へ往復移動させられる。このスプラッシュガード50は、基板保持部材10と同心円状に径方向の内側から外側に向かって配置された2つのガードを備えている。そして、昇降機構52によってスプラッシュガード50を段階的に昇降させることにより、回転する基板W上から周囲へ飛散する薬液やリンス液などを分別して排液させることができるようになっている。また、排液槽48aの底部には、底壁部46および基台板28に形成された排気孔54が設けられており、排気孔54に、図示しない排気装置に流路接続された排気管56が連通接続されている。この構成により、排気管56を介して排液槽48aの内部、ならびに、スプラッシュガード50で囲まれ基板保持部材10に保持された基板Wの薬液洗浄、リンス、乾燥などの各種処理が行われる処理空間を排気することができる。
【0020】
基板保持部材10の上方には、本願発明で言うところの押付部材として機能する雰囲気遮断板58が配設されている。雰囲気遮断板58は、基板Wに対応する平面形状を有しかつ基板Wと同等もしくは同等以上の大きさを有するプレート部60、および、このプレート部60の中央部に一体的に連接された回転軸部62から構成されている。そして、プレート部60が、基板保持部材10に保持された基板Wの上面全体を覆うように基板Wの上面に対向し基板Wに近接して配置される。回転軸部62は、円筒状保持枠64の内部に配設され、軸受66を介して回転自在に支持されている。円筒状保持枠64の内部には、回転用モータ68が固設されている。この回転用モータ68によって回転軸部62が、円筒状回転支軸16と同一の軸心回りに回転させられ、例えば基板保持部材10上の基板Wと同期して同一方向へ同一速度で雰囲気遮断板58が回転する。雰囲気遮断板58および円筒状保持枠64は、一体となって回転軸部64の軸線方向に沿った鉛直方向に昇降自在に支持されており、昇降機構70によって上下方向へ往復移動させられる。そして、昇降機構70によって雰囲気遮断板58を昇降させることにより、雰囲気遮断板58を基板保持部材10上の基板Wに対し近接および離間させることができる。
【0021】
また、円筒状保持枠64の内部には、気体導入路74およびこの気体導入路74に連通した環状接続口76が形成された回転シール部材72が固設されている。そして、雰囲気遮断板58の回転軸部62に、回転シール部材72の環状接続口76に連通する気体供給路78が円筒状に形成されている。雰囲気遮断板58のプレート部60には、その下面周縁部に、図2および図3に示すように、プレート部60の下面中心を中心とする円周上に複数個の細孔からなる気体噴出口80が円周方向に等配して形設されている。なお、気体噴出口は、複数個の細孔に代えて、例えば1本の円環状スリットとしてもよい。プレート部60の上面側中央部には、回転軸部62の気体供給路78との流路接続部82が円環状に設けられている。また、プレート部60の内部には、流路接続部82と気体噴出口80とを流通させる気体通路84が形成されている。このような構成により、図示しない気体供給源から気体、例えば常温の窒素ガスが回転シール部材72の気体導入路74へ供給されると、回転する雰囲気遮断板58の回転軸部62の気体供給路78を通ってプレート部60の気体通路84内へ窒素ガスが流入するようになっている。そして、窒素ガスは、気体通路84内をプレート部60の中央領域から周辺領域に向かって流れ、プレート部60の下面周縁部の気体噴出口80から、回転する基板保持部材10に保持された基板Wの上面に向けて噴出する。この噴出する窒素ガスの圧力によって基板Wが基板保持部材10のベースピン14に押し付けられることにより、基板Wは、摩擦力でベースピン14に対し固定されて、基板保持部材10と一体になって回転する。
【0022】
また、雰囲気遮断板58のプレート部60の周縁部には、貫通孔86が形設されている。そして、貫通孔86に下端吐出口が対向するように移動ノズル88が配設されている。移動ノズル88は、雰囲気遮断板58と一体的に旋回可能に保持されている。この移動ノズル88には、気・液供給管90が連通接続されており、気・液供給管90は、液体供給管92とガス供給管94とに分岐し、液体供給管92はさらに、薬液供給源96に流路接続され開閉弁98が介挿された薬液供給管100と、リンス液供給源102に流路接続され開閉弁104が介挿されたリンス液供給管106とに分岐している。ガス供給管94は、窒素ガス供給源108に開閉弁110を介して流路接続している。また、薬液供給源96に流路接続され開閉弁98が介挿された薬液供給管100と、リンス液供給源102に流路接続され開閉弁104が介挿されたリンス液供給管106とは、ノズル18の通液路20に連通接続された液体供給管112に合流して接続されている。さらに、窒素ガス供給源108には、開閉弁110が介挿されたガス供給管114を通して円筒状回転支軸16の通気路24が流路接続されている。
【0023】
上記したような流路構成により、ノズル18の吐出口22から、回転している基板保持部材10上の基板Wの下面中心部に向けて薬液またはリンス液が選択的に切り替えられて吐出され、また、移動ノズル88から雰囲気遮断板58のプレート部60の貫通孔86を通して基板保持部材10上の基板Wの上面周縁部へ薬液またはリンス液が選択的に切り替えられて供給される。また、円筒状回転支軸16の通気路24のガス吐出口26から、回転している基板保持部材10上の基板Wの下面に対して乾燥用の窒素ガスが吐出され、また、移動ノズル88からプレート部60の貫通孔86を通して基板保持部材10上の基板Wの上面周縁部へ窒素ガスが供給されるようになっている。そして、基板Wの下面に対して薬液処理やリンス処理が行われ、また、基板Wの上面周縁部がベベル処理され、それらの処理後に基板Wの乾燥処理が行われる。
【0024】
そして、この処理装置には、図2および図3に示すように、雰囲気遮断板58のプレート部60の内部に形成されている気体通路84の途中にエジェクタ部116が設けられている。すなわち、プレート部60を形成する下側プレート120に、気体噴出口80と流路接続部82とを流通させる気体通路84を遮るように円環状壁部122が設けられ、その円環状壁部122の上面に、放射状に複数本の溝124が形成されている。複数本の溝124は、円周方向において等間隔に設けられている。そして、円環状壁部122に、プレート部60を形成する上側プレート120の下面と溝120の内面とで囲まれた狭隘通路部分126とプレート部60の下面側とを連通させる吸引細孔128が形成されている。吸引細孔128の、プレート部60の下面に開口する吸い込み口130は、気体噴出口80よりプレート部60下面の中心寄りに配置され、複数の吸い込み口130は、プレート部60の下面中心を中心とする円周上に等配して設けられる。
【0025】
上記した構造を有するエジェクタ部116においては、気体通路84内をプレート部60の中央領域から周辺領域に向かって流れようとする窒素ガスが狭隘通路部分126を通過するときに、流路が狭くなっているため窒素ガスの流速が大きくなり、ベンチュリ効果によって狭隘通路部分126が減圧状態となる。この狭隘通路部分126に生じた負圧により、プレート部60の下面と基板Wの上面とで挟まれた空間の雰囲気気体が吸引細孔128を通して、狭隘通路部分126を流れる窒素ガス中に流れ込む。この結果として、プレート部60下面の吸い込み口130付近は常に減圧状態となる。この場合において、ノズル18の吐出口22から高温の薬液132が基板Wの下面中心部に向けて吐出されていると、基板Wの中心部付近の雰囲気気体の温度も上昇することになるが、基板Wの中心部付近の雰囲気気体は、吸引細孔128を通して狭隘通路部分126へ吸引されるため、基板Wの中心部における温度上昇が抑えられる。また、狭隘通路部分126を通過する窒素ガス中に、基板Wの中心部付近の温まった雰囲気気体が流れ込むことにより、気体噴出口80から基板Wの上面周縁部に向けて噴出されるガスの温度が上昇する。このため、基板Wの周縁部における急激な温度低下が抑えられる。したがって、基板Wの面内温度の均一性が高まることとなる。また、プレート部60の下面と基板Wの上面とで挟まれた空間の雰囲気気体の一部が吸引細孔128を通して吸引されるとともに、減圧状態となっている吸い込み口130付近に、気体噴出口80から噴出された気体の一部が流れ込むことにより、プレート部60の下面と基板Wの上面とで挟まれた空間で気体の入れ替わりが行われる。したがって、当該空間における温度の上昇が抑えられることとなる。このとき、吸引細孔128を通して吸引される雰囲気気体の流量と減圧状態となっている吸い込み口130付近に流れ込む気体の流量とはほぼ同じであるので、気体通路84へ供給される窒素ガスの一部が循環することとなる。したがって、窒素ガスの供給量を抑えることができる。そして、気体噴出口80から基板Wの上面周縁部に向けて噴出されるガスの流量は変化しないので、基板Wを基板保持部材10と一体に回転させるために基板Wをベースピン14に押し付ける力はほとんど変動しない。
【0026】
次に、図4は、エジェクタ部の別の構成例を示す縦断面図である。
このエジェクタ部146も、雰囲気遮断板のプレート部134の内部に形成されている気体通路144の途中に設けられる。すなわち、プレート部134を形成する下側プレート138に、気体噴出口140と流路接続部142とを流通させる気体通路144を遮るように、中央部側がテーパー状周壁面150とされた円環状壁部148が設けられている。円環状壁部148の上面には、図3に示した装置と同様に、放射状に複数本の溝が円周方向において等間隔に形設されており、円環状壁部148に、プレート部134を形成する上側プレート136の下面と溝の内面とで囲まれた狭隘通路部分152が形成されている。また、円環状壁部148には、狭隘通路部分152とプレート部134の下面側とを連通させる吸引細孔154が形成されている。吸引細孔154は、プレート部134の下面中心に向かって下向きに傾斜するように設けられ、吸引細孔154の、プレート部134の下面に開口する吸い込み口156が、基板保持部材10上の基板Wの上面中心に対向するように配置されている。そして、複数の吸い込み口156は、プレート部134の下面中心を中心とする円周上に等配して設けられている。
【0027】
図4に示した装置においても、図2および図3に示した装置と同様の上記作用効果が奏されるが、ノズル18の吐出口22から高温の薬液132が基板Wの下面中心部に向けて吐出されているときに最も温まりやすくなっている基板Wの中心部付近の雰囲気気体が、基板Wの上面中心に対向した吸い込み口156を通して吸引されるので、基板Wの中心部に対する冷却効果をより高めることができる。
【0028】
次に、図5は、エジェクタ部のさらに別の構成例を示す縦断面図である。
このエジェクタ部170も、雰囲気遮断板のプレート部158の内部に形成されている気体通路168の途中に設けられる。すなわち、プレート部158を形成する上側プレート160と下側プレート162との間に、気体噴出口164と流路接続部166とを流通させる気体通路168を遮るように、着脱自在のエジェクトノズル部材172が取り付けられている。このエジェクトノズル部材172は、全体形状が円環状をなしている。そして、エジェクトノズル部材172には、流路接続部166側の内周壁面に、円筒形状で先細りの導入部174が形成され、気体噴出口164側の外周壁面に、ラッパ状に先端側が拡張した放出部176が形成されている。このエジェクトノズル部材172では、導入部174の先細りの先端部分が狭隘通路部分として機能し、導入部174の先端が放出部176の開口部に対向している。また、エジェクトノズル部材172には、導入部174の先端と放出部176との間の空間に連通する連通部178が形成されている。この連通部178および下側プレート162に形成された孔180を介して前記空間とプレート部158の下面側とが連通しており、連通部178および孔180が吸引細孔として機能する。この導入部174および放出部176の一組が、エジェクトノズル部材172の全周方向において等間隔に複数形成されている。また、導入部174および放出部176の一組がそれぞれ分割体として形成され、その分割体を円周方向において複数連接して円環状とすることにより、エジェクトノズル部材172を構成するようにしてもよい。そして、孔180の、プレート部158の下面に開口する吸い込み口182が、プレート部158の下面中心を中心とする円周上に等配して設けられている。
【0029】
図5に示した装置においても、図2および図3に示した装置と同様の上記作用効果が奏される。
【0030】
なお、上記した実施形態では、常温の窒素ガスを雰囲気遮断板58の気体通路84内へ供給するようにしているが、常温より温度の高い窒素ガスを供給して気体噴出口80から基板Wの上面周縁部に向けて噴出させるようにしてもよい。この場合には、基板の周縁部における温度低下がより抑えられる。また、吸引細孔の吸い込み口を、基板の温度分布データに合わせて、基板の上面中心部や上面中央部に対向するように適宜配置するようにしてもよい。さらに、雰囲気遮断板の下面と基板の上面とで挟まれた空間の雰囲気気体を掻き混ぜて温度の均一性をより高めるために、雰囲気遮断板の下面に攪拌羽根を付設したり、雰囲気遮断板の回転数と基板の回転数とに差をつけたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1ないし図3は、この発明の実施形態の1例を示し、図1は、基板処理装置の要部を縦断面で示す正面図である。
【図2】図1に示した基板処理装置の構成要素である雰囲気遮断板のプレート部の右半分を示す縦断面図である。
【図3】図1に示した基板処理装置の構成要素である雰囲気遮断板のプレート部の四半分を示す図2のIII−III矢視平面図である。
【図4】この発明の別の実施形態を示し、基板処理装置の構成要素である雰囲気遮断板のプレート部の右半分を示す縦断面図である。
【図5】この発明のさらに別の実施形態を示し、基板処理装置の構成要素である雰囲気遮断板のプレート部の右半分を示す縦断面図である。
【図6】従来の基板処理装置を使用して基板の処理が行われているときの様子を示す雰囲気遮断板の右半分を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 基板保持部材
12 スピンベース
14 ベースピン
16 円筒状回転支軸
18 ノズル
20 通液路
22 ノズルの吐出口
24 通気路
26 ガス吐出口
30 ケーシング
32、34、66 軸受
36 モータ
58 雰囲気遮断板
60、134、158 雰囲気遮断板のプレート部
62 雰囲気遮断板の回転軸部
64 円筒状保持枠
68 回転用モータ
72 回転シール部材
74 気体導入路
76 環状接続口
78 気体供給路
80、140、164 気体噴出口
82、142、166 流路接続部
84、144、168 気体通路
92 液体供給管
94 ガス供給管
96 薬液供給源
100 薬液供給管
102 リンス液供給源
106 リンス液供給管
108 窒素ガス供給源
110 液体供給管
114 ガス供給管
116、146、170 エジェクタ部
118、136、160 プレート部の上側プレート
120、138、162 プレート部の下側プレート
122、148 円環状壁部
124 溝
126、152 狭隘通路部分
128、154 吸引細孔
130、156、182 吸い込み口
132 薬液
172 エジェクトノズル部材
174 エジェクトノズル部材の導入部
176 エジェクトノズル部材の放出部
178 エジェクトノズル部材の連通部
180 孔
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直軸回りに回転自在に支持され、基板の下面に当接する少なくとも3個の基板支持部が上面に一体的に設けられ、前記基板支持部によって基板を上面から離間させ水平姿勢に支持する基板保持部材と、
この基板保持部材を回転させる回転手段と、
前記基板保持部材上の基板に対し処理液を供給する処理液供給手段と、
基板に対応する平面形状を有しかつ基板と同等もしくは同等以上の大きさを有するプレート部、および、このプレート部の中央部に一体的に連接された回転軸部から構成され、前記プレート部が前記基板保持部材上の基板の上面に対向し基板に近接して配置され、前記プレート部の周縁部下面側に、前記基板保持部材上の基板の周縁部に向けて気体を噴出しその噴出する気体の圧力によって基板を前記基板支持部に押し付ける気体噴出口が円周上に形設され、内部に前記気体噴出口へ気体を供給するための流路が形成されて、鉛直軸回りに回転自在に支持された押付部材と、
この押付部材の内部の流路へ気体を供給する気体供給手段と、
を備えた基板処理装置において、
前記プレート部の内部に、その中央領域から周辺領域の前記気体噴出口に向かって気体を流通させる気体通路を形成して、その気体通路の途中を部分的に狭隘にするとともに、その狭隘通路部分と前記プレート部の下面側とを連通させる吸引細孔を形成して、前記気体通路にエジェクタ部を設け、前記吸引細孔の、前記プレート部の下面に開口する吸い込み口を、前記気体噴出口よりプレート部下面の中心寄りに配置したことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記吸い込み口は、前記プレート部の下面中心を中心とする円周上に等配して複数配置されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記吸い込み口は、前記基板保持部上の基板の中心に対向して配置されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記気体噴出口は、円周上に等配して形設された複数個の細孔であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記押付部材の気体導入路へ供給される気体は常温であることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−238986(P2009−238986A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82605(P2008−82605)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】