説明

基板処理装置

【課題】排気口からの排気に大きな排気能力を必要とせずに、処理チャンバ内の雰囲気を良好に置換させることができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理チャンバ3の天面付近の側壁には、給気ユニット41が配置されている。給気ユニット41の給気口43からは、側壁2に沿って水平方向に流れるクリーンエアが、処理チャンバ3内に供給される。処理チャンバ3内の雰囲気は、処理チャンバ3の底部に配置された排気ユニット51,52の排気口53,54から斜め下方に向けて吸い込まれて排気される。給気ユニット41,42から、処理チャンバ3の内部にクリーンエアが供給されるとともに、排気ユニット51内が強制的に排気されると、処理チャンバ3内に、カップ5のまわりを周回しながら下降する渦状の気流が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの基板に対して処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板に対して処理液や処理ガスを用いた処理が行われる。たとえば、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置では、処理チャンバ内に、筒状のカップと、カップ内に配置され基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の表面に処理液を供給する処理液ノズルとが収容されている。
【0003】
基板に対する処理液処理時には、基板およびスピンチャックの回転によって、スピンチャック周辺に上昇気流が生じるおそれがある。処理液処理時に、その上昇気流によって処理液のミストが舞い上がり、処理液のミストが処理チャンバ内に拡散すると、処理チャンバの内壁や処理チャンバ内の部材が処理液のミストによって汚染される。これが処理室内で乾燥すると、パーティクルとなって雰囲気中に浮遊し、以後に処理される基板を汚染するおそれがある。そこで、処理チャンバの天面の中央部にFFU(ファンフィルタユニット)を設け、このFFUの給気口から、下方に向けてクリーンエアを供給するとともに、カップ底面に形成された排気口からの排気を行い、カップ内に下降気流を形成している。それとともに、カップ外の処理チャンバ内空間での処理液ミスト等の舞い上がりを抑制するために、処理チャンバの底面に形成された排気口から処理チャンバ内雰囲気を排気することにより、排気口へと向かう下降気流を形成して、処理チャンバ内の雰囲気の置換を促進する構成が採用される。
【0004】
処理チャンバ内には、たとえば、スピンチャックに保持される基板の表面(上面)に対向して、その基板の表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断板が収容されている。遮断板は円板状に形成されており、スピンチャックの上方に配置されている。
【特許文献1】特開2006−202983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、FFUの給気口が遮断板の上方に形成されていると、遮断板がクリーンエアの流れを阻害して、処理チャンバ内の気流に乱れが生じ、たとえば、処理チャンバ内で雰囲気の対流が生じる。しかも、スピンチャックの回転中には、前述の上昇気流のために、処理チャンバ内の気流が乱される傾向にある。これらが主要因となって、カップ外の処理チャンバ内空間における安定した下降気流の形成は、必ずしも容易ではない。
【0006】
処理チャンバ内の気流を安定化して、その内部雰囲気の置換を促進するためには、処理チャンバの底部の排気口からの排気に大きな排気能力が必要とされる。しかし、基板処理装置が設置される工場において準備可能な排気用力による制限のために、気流安定化のために必要な排気能力の確保が困難な場合もある。
そこで、この発明の目的は、排気口からの排気に大きな排気能力を必要とせずに、処理チャンバ内の雰囲気を良好に置換させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、側壁(2,72,82)に取り囲まれて、内部で基板(W)を処理するための処理チャンバ(3,71,81)と、前記処理チャンバの内部で基板を保持する基板保持手段(4)と、前記基板保持手段の周囲を取り囲む筒状のカップ(5)と、前記処理チャンバの上方部に配置された給気部(41,42)および前記処理チャンバの下方部に配置された排気部(51,52)を有し、前記処理チャンバ内で渦状の気流が形成されるように、前記給気部から、前記処理チャンバの内部に向けて気体を供給するとともに、前記排気部から、前記処理チャンバの内部の雰囲気を排気する給排気手段(41,42,51,52)とを含む、基板処理装置(1,70,80)である 。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、処理チャンバ内に、渦状の気流が形成される。この渦状の気流は、カップ近くの領域では、カップのまわりを周回しつつ下降する。この渦状の気流が、処理チャンバ内において下降気流を阻害する部材とほとんど干渉しないので、部材との干渉に起因する乱気流(対流)がほとんど発生しない。そのため、たとえば、基板が回転している状況であっても、安定な渦状の下降気流を形成できる。これにより、大きな排気能力を必要とせずに、処理チャンバ内の雰囲気を良好に置換することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記給気部が、横方向(鉛直方向に交差する方向)に向けて気体を供給する横方向給気口(43,44)を含み、前記排気部が、前記処理チャンバ内の雰囲気を、横方向から吸い込んで排気する横方向排気口(53,54)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
この構成によれば、処理チャンバの上方部に配置された横方向給気口から横方向に向けて気体が供給される。また、処理チャンバの下方部に配置された横方向排気口に向けて、横方向から気体が吸い込まれる。これにより、いわばプッシュ・プル型の換気を行うことができる。そして、給気の方向と排気の方向とが、いずれも渦流の形成を促進する方向であるので、処理チャンバ内を周回しながら下降する渦状の気流を効率的に形成することができる。
【0010】
なお、横方向とは、水平方向だけでなく、水平方向に対して所定の角度(0°〜40°)傾斜した傾斜方向をも含む趣旨である。
請求項3記載の発明は、前記給気部が、前記内壁に沿う方向に向けて気体を供給する内壁方向給気口(43,44)を含み、前記排気部が、前記処理チャンバ内の雰囲気を、前記内壁に沿う方向から吸い込んで排気する内壁方向排気口(53,54)を含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0011】
この構成によれば、処理チャンバの上方部に配置された内壁方向給気口から内壁に沿って気体が供給される。また、処理チャンバの下方部に配置された内壁方向排気口に、内壁に沿う方向から気体が吸い込まれる。これにより、処理チャンバ内を周回しながら下降する渦状の気流の形成を促進することができる。
請求項4記載の発明は、前記内壁が、前記給気口から、前記処理チャンバの内部に供給された気体を案内して、前記渦状の気流が形成されるように整流する整流壁(66,67,68,69,72A,82A)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0012】
この構成によれば、給気口から供給された気体が、整流壁により案内されて処理チャンバ内を周回するように整流される。このため、処理チャンバ内を周回する渦状の気流の形成を促進できる。
請求項5記載の発明は、前記整流壁が、外方に凹む水平断面を有する凹湾曲面(66,67,68,69,72A,82A)を含む、請求項4記載の基板処理装置である。
【0013】
この構成によれば、前記給気口から供給された気体が、凹湾曲面により案内されて、この凹湾曲面に沿って湾曲状に整流される。これにより、処理チャンバ内を周回する渦状の気流が形成され易くなる。
請求項6記載の発明は、前記凹湾曲面が、所定の鉛直軸線を中心とする円筒面(72A)である、請求項5記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、給気口から供給された気体が、円筒面により案内されて、円弧状軌道に沿うように整流される。これにより、処理チャンバ内に、渦状の気流がより一層形成され易くなる。
請求項7記載の発明は、前記凹湾曲面が、所定の鉛直軸線を中心とするコーン状面(82A)である、請求項5記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、給気口から供給された気体が、コーン状面により案内されて、円弧状軌道に沿うように整流される。これにより、処理チャンバ内に、渦状の気流がより一層形成され易くなる。コーン状面は、所定の鉛直軸線から凹湾曲面までの水平距離が、下方に向かうに従って狭まるものであってもよい。この場合、処理チャンバの上方部だけでなく、処理チャンバの下方部においても、比較的強い気流を形成することができる。これにより、処理チャンバの全域で、渦状下降気流を安定化することができる。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記給気部が、平面視で前記カップを挟む位置に、一対設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、前記給気部が、前記カップを挟む位置に一対設けられている。一対の給気部によって気体が供給されるので、渦状気流に対して効率的にモーメントを与えることができる。その結果、処理チャンバ内に、より強い渦状気流を形成することができる。
【0017】
請求項9記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板に上方から対向する対向部材(20)をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、給気口から処理チャンバ内に供給された気体は、渦状の下降気流を形成するので、基板保持手段の上方に配置される対向部材とはほとんど干渉しない。したがって、処理チャンバ内に形成される気流には、対向部材との干渉に起因する乱気流(対流)がほとんど発生しないから、処理チャンバ内の渦状下降気流は安定しており、処理チャンバ内の雰囲気を効率よく置換することができる。
【0018】
請求項10記載の発明は、前記基板保持手段が、基板を水平姿勢で保持するものであり、前記対向部材が、前記基板保持手段に保持された基板の上面に対向配置する水平面からなる基板対向面(21)を有した板状の部材である、請求項9記載の基板処理装置である。
この構成によれば、処理チャンバ内に形成される渦状の気流は、水平面からなる基板対向面に沿って流れるので、対向部材とほとんど干渉しない。したがって、処理チャンバ内に、対向部材の干渉に起因する乱気流(対流)が生じることを抑制できるので、処理チャンバ内には安定した渦状下降気流が形成される。
【0019】
請求項11記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板と前記基板対向面との間に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段(24,25,27)をさらに含む、請求項10記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板保持手段に保持された基板の表面と基板対向面との間に、気体が供給される。
【0020】
基板保持手段を取り囲むカップのまわりに渦状の気流が形成されるので、基板の表面と基板対向面との間の空間が、基板の側方領域と比較して負圧になるおそれがある。この場合、その基板の側方領域の雰囲気が、基板の表面と基板対向面との間の空間に流入するおそれがある。
そこで、基板の表面と基板対向面との間に不活性ガスを供給する。これにより、基板の表面と基板対向面との間の空間が、基板の側方領域と比較して負圧になることを防止することができる。このため、処理チャンバ内の気流をより一層安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を概念的に示す断面図である。
基板処理装置1は、クリーンルーム内に設置され、処理液を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)から汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。処理液としては、薬液やDIW(脱イオン化された水)を用いることができる。また、薬液が用いられる場合、この薬液として、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、アンモニア水およびポリマ除去液などを例示することができる。
【0022】
この基板処理装置1は、側壁2により区画されたほぼ直方体状の処理チャンバ3内に、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線CまわりにウエハWを回転させる基板回転手段としてのスピンチャック4と、このスピンチャック4を収容するカップ5と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(上面)に向けて、薬液を供給するための薬液ノズル6と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面にDIWを供給するためのDIWノズル7とを備えている。
【0023】
スピンチャック4は、モータ8と、このモータ8の回転駆動力によって鉛直軸線まわりに回転される円盤状のスピンベース9と、スピンベース9の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材10とを備えている。これにより、スピンチャック4は、複数個の挟持部材10によってウエハWを挟持した状態で、モータ8の回転駆動力によってスピンベース9を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース9とともに回転軸線Cまわりに回転させることができる。スピンチャック4は、図2Aおよび図2Bに示すように、平面視で、処理チャンバ3の中央部に配置されている。
【0024】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
薬液ノズル6は、たとえば連続流の状態で薬液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、スピンチャック4の上方でほぼ水平に延びるアーム11の先端に取り付けられている。このアーム11の基端部は、カップ5の側方においてほぼ鉛直に延びたアーム支持軸12の上端部に支持されている。アーム支持軸12には、ノズル駆動機構13が結合されており、このノズル駆動機構13の駆動力によって、アーム支持軸12を回動させて、スピンチャック4の上方でアーム11を揺動させることができるようになっている。
【0025】
薬液ノズル6には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液供給管14が接続されている。薬液供給管14の途中部には、薬液ノズル6からの薬液の吐出/吐出停止を切り換えるための薬液バルブ15が介装されている。
DIWノズル7は、たとえば、連続流の状態でDIWを吐出するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方で、その吐出口をウエハWの回転中心付近に向けて固定的に配置されている。このDIWノズル7には、DIW供給源からのDIWが供給されるDIW供給管16が接続されている。DIW供給管16の途中部には、DIWノズル7からのDIWの吐出/吐出停止を切り換えるためのDIWバルブ17が介装されている。
【0026】
スピンチャック4の上方には、ウエハWとほぼ同じ径を有する円板状の遮断板(対向部材)20が設けられている。遮断板20の下面には、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(上面)と対向する水平面からなる基板対向面21が形成されている。遮断板20の上面には、スピンチャック4の回転軸線Cと共通の軸線に沿う回転軸23が固定されている。この回転軸23は中空に形成されていて、その内部には、ウエハWの表面の中心部に向けて不活性ガスとしての窒素ガスを供給するための窒素ガス流通路(不活性ガス供給手段)24が形成されている。窒素ガス流通路24は、基板対向面21に開口する窒素ガス吐出口(不活性ガス供給手段)25を有している。この窒素ガス流通路24には、窒素ガスバルブ(不活性ガス供給手段)27を介して窒素ガスが供給されるようになっている。回転軸23は、ほぼ水平に延びて設けられたアーム28の先端付近に取り付けられている。
【0027】
アーム28には、遮断板20を昇降させるための遮断板昇降駆動機構29が結合されている。この遮断板昇降駆動機構29により、遮断板20を、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面に近接する近接位置(図1に二点鎖線で示す位置)と、スピンチャック4の上方に離間する離間位置(図1に実線で示す位置)との間で昇降させることができるようになっている。アーム28には、また、遮断板20をスピンチャック4によるウエハWの回転にほぼ同期させて回転させるための遮断板回転駆動機構30が結合されている。
【0028】
カップ5は、ウエハWの処理に用いられた後の薬液およびDIWを処理するためのものであり、有底円筒容器状に形成されている。カップ5は、その底面から立ち上る円筒部31と、円筒部31の上端から、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cに向けて傾斜する傾斜部32とを備えている。カップ5の上面には、円筒部31の先端により区画されて、ウエハWが通過するための開口33が形成されている。円筒部31と傾斜部32とによって、スピンチャック4の周囲が包囲されて、ウエハWの周縁から飛散した処理液を受けとめることができるようになっている。
【0029】
図2Aは、図1の切断面線C−Cから見た概念的な断面図である。図2Bは、図1の切断面線D−Dから見た概念的な断面図である。
処理チャンバ3の側壁2は、カップ5の外壁を包囲するそれぞれ平面状の第1内側面61、第2内側面62、第3内側面63および平面状の第4内側面64を備えている。第1〜第4内側面61,62,63,64は、平面視で正方形状となるように組み合わされている。互いに隣り合う第1内側面61と第2内側面62との間には、処理カップ5の外壁に対向して、外方に凹む水平断面を有する第1凹湾曲面66が形成されている。互いに隣り合う第2内側面62と第3内側面63との間には、処理カップ5の外壁に対向して、外方に凹む水平断面を有する第2凹湾曲面67が形成されている。互いに隣り合う第3内側面63と第4内側面64との間には、処理カップ5の外壁に対向して、外方に凹む水平断面を有する第3凹湾曲面68が形成されている。互いに隣り合う第4内側面64と第1内側面61との間には、処理カップ5の外壁に対向して、外方に凹む水平断面を有する第4凹湾曲面69が形成されている。
【0030】
第1〜第4凹湾曲面66〜69は、たとえば、水平断面がそれぞれ円弧形状(図2A,図2Bの例では4分の1円弧形状)を有している。この円弧形状の曲率半径は、高さ方向に関して一様であってもよく、この場合には、第1および第4凹湾曲面66〜69は円筒面(部分円筒面)をなすことになる。また、前記円弧形状の曲率半径は、下側ほど小さくなっていてもよく、この場合には、第1および第4凹湾曲面66〜69は倒立円錐面(部分円錐面)をなすことになる。各凹湾曲面66〜69は、図2Aおよび図2Bで示す回転軸線Cよりも外側にある鉛直軸を中心軸とする部分円筒面または部分円錐面をなすように形成されていてもよい。また、第1および第4凹湾曲面66〜69が、たとえば、回転軸線Cを共通の中心軸とする部分円筒面または部分円錐面をなすように形成されていてもよい。
【0031】
以下、図1、図2Aおよび図2Bを参照しつつ説明する。
処理チャンバ3の天面付近の側壁2には、処理チャンバ3内にクリーンエアを供給するための給気部としての一対の給気ユニット41,42(図1では給気ユニット41のみ図示)が配置されている。具体的に説明すると、給気ユニット41は、処理チャンバ3の内部空間に臨む給気口(横方向給気口、内壁方向給気口)43を有している。給気ユニット42は、処理チャンバ3の内部空間に臨む給気口(横方向給気口、内壁方向給気口)44を有している。一対の給気ユニット41,42は、同一の構造、形状、大きさに形成されている。給気ユニット41,42には、その内部に、給気口43に連通する給気路47が形成されている。この給気路47は、それぞれ水平の上面板45および下面板46によって、その上下が区画されている。給気ユニット41,42は、クリーンルーム内のクリーンエアをフィルタによってさらに清浄化して給気するファンフィルタユニット(図示せず)から清浄空気(クリーンエア)の供給を受け、そのクリーンエアを、給気路47を介して、給気口43,44から処理チャンバ3内に供給する構成になっている。そのため、給気口43,44からは、水平方向に向けてクリーンエアが供給される。
【0032】
給気ユニット41は、第3内側面63と第4内側面64とによって形成される隅部に配置されている。また、給気ユニット42は、第1内側面61と第2内側面62とによって形成される隅部に配置されている。つまり、給気ユニット42は、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cに対して、給気ユニット41の反対側に配置されている。言い換えれば、一対の給気ユニット41,42は、処理チャンバ3内で、平面視で対角位置に配置されている。給気ユニット41は、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。また、給気ユニット42も、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。
【0033】
給気ユニット41の給気口43からは、第4凹湾曲面69に向けて、水平方向に沿ってクリーンエアが供給される。給気ユニット41の給気口43からのクリーンエアは、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、第4内側面64に沿って流れる。そして、第4凹湾曲面69に達したクリーンエアは、この第4凹湾曲面69により案内されて、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、第1凹湾曲面66に向けて第1内側面61に沿って流れるようになる。そして、この第1凹湾曲面66に向けて流れるクリーンエアが第1凹湾曲面66に達すると、この第1凹湾曲面66により案内されて、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、第2凹湾曲面67に向けて第2内側面62に沿って流れるようになる。
【0034】
給気ユニット42の給気口44からは、第2凹湾曲面67に向けて、水平方向に沿ってクリーンエアが供給される。給気ユニット42の給気口44からのクリーンエアは、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、第2内側面62に沿って流れる。そして、第2凹湾曲面67に達したクリーンエアは、この第2凹湾曲面67により案内されて、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、第3凹湾曲面68に向けて第3内側面63に沿って流れる。そして、この第3凹湾曲面68に向けて流れるクリーンエアが第3凹湾曲面68に達すると、この第3凹湾曲面68により案内されて、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、第4凹湾曲面69に向けて第4内側面64に沿って流れるようになる。
【0035】
処理チャンバ3の底部には、処理チャンバ3内の雰囲気を吸い込んで排気するための排気部としての一対の排気ユニット51,52(図1では排気ユニット51のみ図示)が配置されている。具体的に説明すると、排気ユニット51は、処理チャンバ3の内部空間に臨む排気口(横方向排気口、内壁方向排気口)53を有している。排気ユニット52は、処理チャンバ3の内部空間に臨む排気口(横方向排気口、内壁方向排気口)54を有している。一対の排気ユニット51,52は、同一の構造、形状、大きさに形成されている。排気ユニット51,52は、図示しない排気配管を介して、排気ユニット51,52内を強制的に排気する図示しない排気処理設備(たとえば、基板処理装置1が設置される工場の排気処理設備)に接続されており、排気口53,54から排気ユニット51,52内に吸い込まれた雰囲気は、排気配管を通して排気処理設備に導かれる構成になっている。
【0036】
図3Aは、図1の矢印Eから見た図である。図3Bは、図3Aの切断面線F−Fから見た概念的な断面図である。各排気ユニット51,52の構成を、排気ユニット51の構成を例に挙げて説明する。
排気ユニット51には、その内部に、排気口53に連通する排気路57が形成されている。この排気路57は、水平面に対して所定角度(たとえば20〜40°)傾斜した上面55および下面56によってその上下が区画されている。上面55および下面56は、回転軸線Cから離れるに従って下方に向けて傾斜している。そのため、排気路57は、回転軸線Cから離れるに従って下方に向かう斜め方向に延び、その途中部において鉛直方向に向けて屈曲して図示しない排気配管に接続されている。処理チャンバ3内の雰囲気は、一対の排気ユニット51,52の排気口53,54から斜め下方に向けて吸い込まれる。
【0037】
排気ユニット51は、第4内側面64と第1内側面61とによって形成される隅部に配置されている。また、排気ユニット52は、第2内側面62と第3内側面63とによって形成される隅部に配置されている。つまり、排気ユニット52は、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cに対して、排気ユニット51の反対側に配置されている。言い換えれば、一対の排気ユニット51,52は、処理チャンバ3内で、平面視で対角位置に配置されている。さらには、この一対の排気ユニット51,52は、給気ユニット41,42が配置されていない隅部、すなわち、平面視で一対の給気ユニット41,42に重複しない位置に配置されている。排気ユニット51は、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。また、排気ユニット52も、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。
【0038】
排気ユニット51の排気口53には、給気ユニット42の排気口44から供給されたクリーンエアが、カップ5の外壁のまわりを周回した後に吸い込まれる。この排気口53には、第4内側面64に沿う方向から第4凹湾曲面69に向けて処理チャンバ3内の雰囲気が吸い込まれる。また、排気ユニット52の排気口54には、給気ユニット41の排気口43から供給されたクリーンエアが、カップ5のまわりを周回した後に吸い込まれる。この排気口54には、第2内側面62に沿う方向から第2凹湾曲面67に向けて処理チャンバ3内の雰囲気が吸い込まれる。
【0039】
対角位置に配置された一対の給気ユニット41,42から、処理チャンバ3の内部にクリーンエアが供給されるとともに、図外の排気処理設備によって、対角位置に配置された一対の排気ユニット51,52内が強制的に排気されると、一対の給気ユニット41,42から水平方向に向けて供給されたクリーンエアは、カップ5のまわりを周回して、一対の排気ユニット51,52に向けて下降するようになる。このため、処理チャンバ3内に、カップ5のまわりを、上方から見て時計回り方向(図2A,図2Bの矢印ARの方向)に周回しながら下降する渦状の気流が形成される。カップ5の外壁の外側の領域には遮断板20などの障害物が少ない。したがって、この渦状の気流には、遮断板20などの障害物との干渉に起因する乱気流(対流)がほとんど発生せず、そのため安定した渦巻き状下降気流が形成される。また、この渦状の気流の周回方向(図2A,図2Bの矢印ARの方向)とスピンチャック4および遮断板20の回転方向とを一致させるのが好ましい。このようにすれば、さらに乱気流(対流)の発生を抑制し、さらに安定した渦巻き状下降気流を形成することができる。
【0040】
とくに、この実施形態(第1実施形態)では、給気ユニット41,42が、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cを挟む位置に一対設けられている。また、排気ユニット51,52が、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cを挟む位置に一対設けられている。そのため、気流に対して効果的にモーメントを与えることができるから、処理チャンバ3内に、より一層強い気流が形成されるようになっており、渦巻き状下降気流のより一層の安定化が図られている。
【0041】
このような構成によって、処理チャンバ3内に安定な渦状下降気流を形成することができ、スピンチャック4の回転によって気流が乱される場合であっても、処理チャンバ3内で対流が生じることを抑制または防止できる。その結果、工場に設けられる排気設備の排気用力が大きくなくても、処理チャンバ3内の気流を安定化できる。これにより、処理チャンバ3内での処理液ミストの巻き上げ等を抑制または防止することができるので、処理チャンバ3内の汚染を抑制できる。したがって、より高品質な(清浄度の高い)基板処理が可能となる。
【0042】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置35を備えている。この制御装置35には、モータ8、ノズル駆動機構13、遮断板回転駆動機構30、遮断板昇降駆動機構29、薬液バルブ15、DIWバルブ17および窒素ガスバルブ27などが制御対象として接続されている。
【0043】
図5は、基板処理装置1で行われる処理例を説明するためのフローチャートである。
ウエハWに対する処理が行われている間、常に、一対の給気ユニット41,42から処理チャンバ3内にクリーンエアが供給されるとともに、図外の排気処理設備によって、一対の排気ユニット51,52内が強制的に排気される。このため、処理チャンバ3内には、カップ5のまわりを周回しながら下降する渦状の気流が形成されている。
【0044】
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって基板処理装置1内に搬入されて、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に保持される(ステップS1)。なお、このウエハWの搬入時においては、その搬入の妨げにならないように、遮断板20が、スピンチャック4のスピンベース7から上方に離間した離間位置に配置されている。
ウエハWがスピンチャック4に保持されると、制御装置35は、モータ8を制御して、スピンチャック4によるウエハW(スピンベース9)の回転を開始させて、ウエハWの回転速度を所定の液処理速度(たとえば1500rpm)まで上昇させる。また、制御装置35は、ノズル駆動機構13を制御してアーム10を揺動し、薬液ノズル6を、スピンチャック4の側方の退避位置からウエハWの上方位置へと移動させる。さらに、制御装置35は、窒素ガスバルブ27を制御して、窒素ガス吐出口25から窒素ガスを吐出させる(ステップS2)。これにより、ウエハWの表面と遮断板20の基板対向面21との間の空間に窒素ガスが供給されて、当該空間がウエハWの側方領域よりも負圧になることが防止されている。
【0045】
ウエハWの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置35は、薬液バルブ15を開いて、薬液ノズル6の吐出口からウエハWの表面の回転中心に向けて薬液を吐出させる。ウエハWの表面に供給された薬液は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に薬液を用いた薬液処理が施される(ステップS3)。
【0046】
ウエハWへの薬液の供給開始から所定の薬液処理時間が経過すると、制御装置35は、薬液バルブ15を閉じて、薬液ノズル6からの薬液の吐出を停止させる。また、制御装置35は、ノズル駆動機構12を制御してアーム10を揺動させて、薬液ノズル6を、ウエハWの上方位置からスピンチャック4の側方の退避位置に退避させる。
ウエハWへの薬液の供給が停止されると、制御装置35は、DIWバルブ17を開いて、DIWノズル7の吐出口から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けてDIWを吐出させる。ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着している薬液がDIWによって洗い流される(ステップS4)。
【0047】
DIWの供給開始から所定のリンス時間が経過すると、制御装置35は、DIWバルブ17を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止させる。その後、制御装置35は、遮断板昇降駆動機構29を制御して、遮断板20を、離間位置(図1に実線で示す位置)から近接する近接位置(図1に二点鎖線で示す位置)まで下降させる(ステップS5)。遮断板20が近接位置まで下降されると、ウエハWの表面と基板対向面21との間に狭空間が形成される。窒素ガス吐出口25からの窒素ガスの吐出は継続されているため、ウエハWの表面と基板対向面21との間の狭空間に窒素ガスが供給される。
【0048】
また、制御装置35は、モータ8を制御して、ウエハWの回転速度をスピンドライ回転速度(たとえば3000rpm)まで上げる。これにより、リンス処理後のウエハWの表面に付着しているDIWを遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライ処理が実施される(ステップS6)。
さらにまた、スピンドライ処理時には、制御装置35は、遮断板回転駆動機構30を制御して、遮断板20をウエハWの回転に同期して、ウエハWの回転方向と同方向に回転させる。これにより、ウエハWの表面と遮断板20との間の狭空間に安定気流が形成される。
【0049】
スピンドライ処理が所定のスピンドライ時間にわたって行われると、制御装置35は、モータ8を制御して、スピンチャック4の回転を停止させるとともに、遮断板回転駆動機構30を制御して、遮断板20の回転を停止させる。また、制御装置35は、窒素ガスバルブ27を閉じ、窒素ガス吐出口25からの窒素ガスの吐出を停止させる(ステップS7)。さらに、制御装置35は、遮断板昇降駆動機構29を制御して、遮断板20を離間位置まで上昇させる(ステップS7)。その後、図示しない搬送ロボットによってウエハWが搬出される(ステップS8)。
【0050】
図6Aは、本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る基板処理装置70の処理チャンバ71の構成を概念的に示す斜視図である。図6Bは、基板処理装置70の構成を概念的に示す横断面図である。
この第2実施形態において、図1〜図5に示す実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。また、カップ5の内部の構成および処理液供給系の構成については、必要に応じて、図1を併せて参照する。
【0051】
この第2実施形態に係る基板処理装置70は、ほぼ円筒状の側壁72により区画されたほぼ円柱状の処理チャンバ71を備えている。側壁72の内面は、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cを中心とする円筒面72Aに形成されている。処理チャンバ71内には、前述の第1実施形態と同様に、スピンチャック4(図1参照)、カップ5、薬液ノズル6(図1参照)、遮断板20などが収容されている。
【0052】
処理チャンバ71の天面付近の側壁72には、処理チャンバ71内にクリーンエアを供給するための給気ユニット41が配置されている。給気ユニット41は、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。給気ユニット41の給気口43からは、水平方向に向けて、側壁72の円筒面72Aに沿うようにクリーンエアが供給される。給気ユニット41の給気口43からのクリーンエアは、側壁72の円筒面72Aにより案内されて、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cを中心として円弧を描くように流れるようになる。
【0053】
処理チャンバ71の底部には、処理チャンバ71内の雰囲気を吸い込んで排気するための排気ユニット51が配置されている。具体的に説明すると、排気ユニット51は、正面視で、給気ユニット41のスピンチャックによるウエハWの回転軸線Cに対して反対側に配置されている。排気ユニット51は、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。排気ユニット51の排気口53には、円筒面72Aに沿う方向(渦状の気流の回転方向)から、処理チャンバ71内の雰囲気が吸い込まれる。
【0054】
給気ユニット41から、処理チャンバ71の内部にクリーンエアが供給されるとともに、図外の排気処理設備によって、排気ユニット51内が強制的に排気されると、給気ユニット41から水平方向に向けて供給されたクリーンエアは、カップ5のまわりを周回した後、排気ユニット51に吸い込まれる気流を形成する。このため、処理チャンバ3内に、カップ5のまわりを周回しながら下降する渦状の気流が形成される。カップ5の外壁の外側の領域には遮断板20などの障害物が少ない。したがって、この渦状の気流には、遮断板20などの障害物との干渉に起因する乱気流(対流)がほとんど発生せず、そのため安定した渦巻き状下降気流が形成される。
【0055】
また、この実施形態(第2実施形態)では、給気口41から供給された気体が、円筒面72Aにより案内されて、円弧状に整流される。これにより、処理チャンバ71内に、渦状の気流がより一層形成され易くなる。
図7Aは、本発明の他の実施形態(第3実施形態)に係る基板処理装置80の処理チャンバ81の構成を概念的に示す斜視図である。図7Bは、基板処理装置80の構成を概念的に示す横断面図である。
【0056】
この第3実施形態において、図1〜図5に示す実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。また、カップ5の内部の構成および処理液供給系の構成については、必要に応じて、図1を併せて参照する。
この第3実施形態に係る基板処理装置80は、たとえば下方に向かうに従って狭くなる倒立円錐台状の処理チャンバ81を備えている。処理チャンバ81は、コーン状(倒立円錐状)の側壁82により区画されている。側壁82の内面は、スピンチャック4によるウエハWの回転軸線Cを中心とするコーン状面(倒立円錐面)82Aに形成されている。処理チャンバ81内には、前述の第1実施形態と同様に、スピンチャック4(図1参照)、カップ5、薬液ノズル6(図1参照)、遮断板20などが収容されている。
【0057】
処理チャンバ81の天面付近の側壁82には、処理チャンバ81内にクリーンエアを供給するための給気ユニット41が配置されている。給気ユニット41は、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。給気ユニット41の給気口43からは、水平方向に向けて、側壁82のコーン状面82Aに沿うようにクリーンエアが供給される。給気ユニット41の給気口43からのクリーンエアは、側壁82のコーン状面82Aによって案内されて、平面視でカップ5の外壁の外側の領域を、スピンチャック4(図1参照)によるウエハWの回転軸線Cを中心として円弧を描くように流れるようになる。
【0058】
処理チャンバ81の底部には、処理チャンバ81内の雰囲気を吸い込んで排気するための排気ユニット51が配置されている。具体的に説明すると、排気ユニット51は、正面視で、給気ユニット41のスピンチャックによるウエハWの回転軸線Cに対して反対側に配置されている。排気ユニット51は、平面視で、カップ5の外壁よりも外側に位置している。排気ユニット51の排気口53には、コーン状面82Aに沿う方向(渦状の気流の回転方向)から、処理チャンバ81内の雰囲気が吸い込まれる。
【0059】
給気ユニット41から、処理チャンバ81の内部にクリーンエアが供給されるとともに、図外の排気処理設備によって、排気ユニット51内が強制的に排気されると、給気ユニット41から水平方向に向けて供給されたクリーンエアは、カップ5のまわりを周回して、排気ユニット51に吸い込まれる気流を形成する。このため、処理チャンバ81内に、カップ5のまわりを周回しながら下降する渦状の気流が形成される。カップ5の外壁の外側の領域には遮断板20などの障害物が少ない。したがって、この渦状の気流には、遮断板などの障害物20との干渉に起因する乱気流(対流)がほとんど発生せず、安定した渦巻き状下降気流が形成される。
【0060】
また、この実施形態(第3実施形態)では、給気ユニット41の給気口43から供給されたクリーンエアが、コーン状面82Aにより案内されて、円弧状に整流される。これにより、処理チャンバ81内に、渦状の気流がより一層形成され易くなる。
さらに、コーン状面82Aが下方に向かうに従って狭まっているので、処理チャンバ81の天板付近だけでなく、処理チャンバ81の底部付近においても、比較的強い気流が形成される。これにより、処理チャンバ81内により強い気流を形成することができる。
【0061】
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
前述の3つの実施形態では、給気ユニット41,42の給気口43,44から、水平方向に向けてクリーンエアが供給されるものとして説明したが、給気ユニット41,42の給気口43,44から、斜め下方に向けてクリーンエアが供給されるものであってもよい。
【0062】
前述の3つの実施形態では、排気ユニット51,52の排気口53,54から、処理チャンバ3,71,81内の雰囲気が、斜め下方に向けて吸い込まれるものとして説明したが、排気ユニット51,52の排気口53,54から、処理チャンバ3,71,81内の雰囲気が水平方向から吸い込まれるものであってもよい。
前述の第1実施形態では、給気ユニット41,42を一対設け、排気ユニット51,52を一対設ける構成を例に挙げて説明した。しかしながら、給気ユニットを3つまたは4つ設けることもできる。この場合、そのうち2つの給気ユニットを、処理チャンバ3の隅部に平面視で対角に配置し、残りの給気ユニットを、処理チャンバ3の残りの隅部に配置してもよい。むろん、5個以上の給気ユニットを設けてもよい。
【0063】
また、第1実施形態において、排気ユニットを3つまたは4つ設けることもできる。この場合、そのうち2つの排気ユニットを、処理チャンバ3の隅部に平面視で対角に配置し、残りの排気ユニットを、処理チャンバ3の残りの隅部に配置してもよい。むろん、5個以上の排気ユニットを設けてもよい。
また、第1実施形態では、平面視でそれぞれ対角に配置された一対の給気ユニット41,42および一対の排気ユニット51,52を、重複しない位置に配置したが、平面視で重複する位置に配置してもよい。
【0064】
また、前述の第1実施形態において給気ユニットを一対設ける場合、一対の給気ユニットを、隣接する隅部に配置してもよい。さらに、排気ユニットを一対設ける場合、一対の排気ユニットを、隣接する隅部に配置してもよい。
また、第1実施形態において、凹湾曲面66〜69を、下方に向かうに従って幅広になる形状とすることもできる。この場合、処理チャンバ3の底部付近では、内壁の形状を、平面視で円形に近づけることができる。この構成が採用されることで、渦流を効率的に整流できるので、処理チャンバ3の底部付近でも、比較的強い気流を形成することができる。
【0065】
また、前述の第2および第3実施形態では、排気ユニット51を、平面視で、給気ユニット41と回転軸線Cに対して反対側に配置する構成としたが、排気ユニット51と給気ユニット41との平面視における相対位置はこれに限られない。たとえば、排気ユニット51を、平面視で給気ユニット41と同位置に配置(すなわち、給気ユニットおよび排気ユニットを上下方向に配置)することもできる。
【0066】
また、前述の第2および第3実施形態では、給気ユニット41と排気ユニット51とをそれぞれ1つずつ配置する場合を例に挙げて説明した。しかし、給気ユニット41を2つ以上としてもよい。この場合、給気ユニット41は、回転軸線Cまわりに等角度間隔(つまり、円筒面72Aまたはコーン状面82Aの周方向に沿って等間隔)に配置されることが好ましい。また、排気ユニットを2つ以上としてもよい。この場合、排気ユニット51は、回転軸線Cまわりに等角度間隔(つまり、円筒面72Aまたはコーン状面82Aの周方向に沿って等間隔)に配置されることが好ましい。
【0067】
また、処理チャンバ3,71,81の側壁2,72,82の内面に螺旋状の凸条や凹溝が形成されていて、これらの凸条や凹溝によって、給気ユニットから処理チャンバ3,71,81内に供給されたクリーンエアが案内されて渦状に整流されるようになっていてもよい。
また、第1実施形態では、処理チャンバ3の壁面を整形し、この整形後の壁面を用いて渦状の気流を整流する構成を例に挙げて説明したが、板状の整流部材を、処理チャンバ3の隅部(角部)に配置し、かかる整流部材で処理チャンバ3内の気流を整流する構成を採用することもできる。
【0068】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図2A】図1の切断面線C−Cから見た概念的な断面図である。
【図2B】図1の切断面線D−Dから見た概念的な断面図である。
【図3A】図1の矢印Eから見た図である。
【図3B】図3Aの切断面線F−Fから見た概念的な断面図である。
【図4】前記基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】前記基板処理装置で行われる処理例を説明するためのフローチャートである。
【図6A】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の処理チャンバの構成を概念的に示す斜視図である。
【図6B】前記第2実施形態の基板処理装置の構成を概念的に示す横断面図である。
【図7A】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の処理チャンバの構成を概念的に示す斜視図である。
【図7B】前記第3実施形態の基板処理装置の構成を概念的に示す横断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1,70,80 基板処理装置
2,72,82 側壁
3,71,81 処理チャンバ
4 スピンチャック
5 カップ
20 遮断板(対向部材)
21 基板対向面
24 窒素ガス流通路(不活性ガス供給手段)
25 窒素ガス吐出口(不活性ガス供給手段)
27 窒素ガスバルブ(不活性ガス供給手段)
41,42 給気ユニット(給気部)
43,44 給気口(横方向給気口、内壁方向給気口)
51,52 排気ユニット(排気部)
53,54 排気口(横方向排気口、内壁方向排気口)
66 第1凹湾曲面
67 第2凹湾曲面
68 第3凹湾曲面
69 第4凹湾曲面
72A 円筒面
82A コーン状面
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に取り囲まれて、内部で基板を処理するための処理チャンバと、
前記処理チャンバの内部で基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段の周囲を取り囲む筒状のカップと、
前記処理チャンバの上方部に配置された給気部および前記処理チャンバの下方部に配置された排気部を有し、前記処理チャンバ内で渦状の気流が形成されるように、前記給気部から、前記処理チャンバの内部に向けて気体を供給するとともに、前記排気部から、前記処理チャンバの内部の雰囲気を排気する給排気手段とを
含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記給気部が、横方向に向けて気体を供給する横方向給気口を含み、
前記排気部が、前記処理チャンバ内の雰囲気を、横方向から吸い込んで排気する横方向排気口を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記給気部が、前記内壁に沿う方向に向けて気体を供給する内壁方向給気口を含み、
前記排気部が、前記処理チャンバ内の雰囲気を、前記内壁に沿う方向から吸い込んで排気する内壁方向排気口を含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記内壁が、前記給気口から、前記処理チャンバの内部に供給された気体を案内して、前記渦状の気流が形成されるように整流する整流壁を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記整流壁が、外方に凹む水平断面を有する凹湾曲面を含む、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記凹湾曲面が、所定の鉛直軸線を中心とする円筒面である、請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記凹湾曲面が、所定の鉛直軸線を中心とするコーン状面である、請求項5記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記給気部が、平面視で前記カップを挟む位置に、一対設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板保持手段に保持された基板に上方から対向する対向部材をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段が、基板を水平姿勢で保持するものであり、
前記対向部材が、前記基板保持手段に保持された基板の上面に対向する水平面からなる基板対向面を有した板状の部材である、請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板保持手段に保持された基板と前記基板対向面との間に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段をさらに含む、請求項10記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−246163(P2009−246163A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91444(P2008−91444)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】